« 彼岸島 Love is over(白石隼也)今度は私が守る!(桜井美南) | トップページ | 黒い十人の女(成海璃子)人間のクズたち(バカリズム) »

2016年9月29日 (木)

望郷(山口まゆ)お母さんはみんな人殺しです(平祐奈)ひこうき雲は蜘蛛の糸なのかもしれないね(井頭愛海)

倫理観というものは危ういものだ。

道徳教育を国家が管理する危険を説くものの倫理観も疑わしく感じることがある。

不文律であれば・・・それはなんでもいいことになるからな。

答えなどないということになればルールは成立しない。

湊かなえの世界がキッドの心に妙に馴染むのは・・・そういう「ゆらぎ」が常に内在しているからである。

人殺しや戦争が悪いことだと心から信じられる人を信じることができない・・・魔性の倫理。

生れてから一度も・・「悪」についてまともな説明をされたことのないやり場のない気持ち。

何故かと問うことも許されない・・・絶対的な倫理。

それを信じられる人は・・・馬鹿だが幸福なんだな。

母親はすべて殺人者である。

何故なら・・・いつか必ず死ぬとわかっている人間をこの世に産みおとす。

そういう恐ろしい前提で人類は繁栄しているのだ。

どうして・・・そんなに簡単なことが理解されないのだろう。

で、『湊かなえサスペンス・望郷』(テレビ東京20160928PM9~)原作・湊かなえを見た。六本木3丁目移転プロジェクト(テレビ東京本社屋移転を記念するプロジェクト)の第二弾である。先週の「宮部みゆき」が第一弾だったのか。「宮部みゆき」の作品にも善悪の揺らぎは登場するがずっと大人しい。どちらかといえば勧善懲悪である。二つ並べるとよくわかる気がするが・・・お茶の間レベルでは大差ないのかもしれない。こちらはオムニバス形式の三本立てである。共通点は・・・母親が殺人者(二本目は死因が曖昧にされているが・・・)ということである。凄いなっ。

みかんの花」脚本・浅野妙子、演出・新城毅彦である。

瀬戸内海のみかん農家に暮らす富田安江(倍賞美津子)と娘夫婦・・・。

富田家に・・・ベストセラー作家となった長女の笙子(水野美紀)が東京から帰ってくる。

妹の美里(山口まゆ→広末涼子)は十五歳の頃から・・・姉に対してわだかまりを抱えていた。

美里の娘の美香子(田辺桃子)は有名人の帰還に心が沸騰しているのだ。

「私も東京に行きたいな」

「何・・・甘いこと言ってるの」

娘を嗜める美里だったが・・・それは・・・姉の笙子が・・・妹の美里に言った言葉だった。

美里が十五歳だった頃。

姉妹の父親は不倫旅行中に不慮の死を遂げた。

男手が失われたのでみかん畑の一部を売却した。

母娘の手元には父親の代わりに八百万円の預金通帳が残った。

「私・・・東京の大学に行きたい」

「何・・・甘いこと言ってるの」

笙子は美里を嗜めた。

恥さらしな父親を失った母子家庭は健気に生きていた。

そこに蜜柑泥棒が現れる。

奥寺健一(田中圭)は自転車で旅行中の若者だった。

「お金がなくなったら・・・アルバイトをして・・・旅を続けています」

爽やかな感じに・・・騙されて母娘は・・・健一を受け入れる。

「U2」を愛するケンイチさんに・・・心を奪われる美里・・・。

しかし・・・健一は笙子と家を出て行ったのだった。

父親の遺産である預金通帳とともに・・・。

失恋と姉の裏切りに愕然とした・・・美里。

結局・・・美里は母とともに蜜柑畑を守りながらこの街で家庭を持ったのだ。

その母も・・・最近では認知症を発していた。

そして・・・有名人となった姉が突然・・・帰って来たのである。

「ケンイチさんは・・・どうしたの」

「すぐ・・・別れたわ・・・あの人はあなたが思っていたような人じゃなかったの」

「・・・」

釈然としない美里。

美里は・・・モニュメントの工事現場で・・・笙子が若い頃に交際していた宮下邦和(水橋研二)と佇んでいるのに気がつく。

「大丈夫だ・・・基礎から掘り起こすわけじゃない・・・それが気になって帰って来たんだろう」

「・・・」

美里は・・・恐ろしいことに気がつく。

そこに何かが埋まっているのかもしれない。

何が?

東京に帰る笙子をフェリー乗り場まで送り・・・家に戻った美里は正気に返ったような母親の言動で真実を知る。

ケンイチさんは・・・蜜柑泥棒だった・・・そして・・・貯金通帳を盗もうとしたのだ。

阻止しようとして母親はケンイチを包丁で刺殺した。

姉と姉の交際相手は・・・ケンイチを工事中のモニュメントの下に埋めた。

そして・・・駆け落ちのフリをして・・・姉は故郷を捨てたのだった。

「あの子は・・・私の罪を・・・」

真相を知った妹は・・・波止場へと向う。

「お姉ちゃん」

妹は手を振った。

船の上で姉は手を振り返した。

殺人事件が見事に隠蔽されているわけだが・・・一部お茶の間は蜜柑泥棒は殺しても構わないとも思うわけである。

海の星」脚本・大島里美、演出・中前勇児である。

「ちょっと煙草を買ってくる」

そう言って家を出た父親の浜崎秀夫(橋本じゅん)はそれきり行方知らずになった。

残された息子の洋平(加藤清史郎→伊藤淳史)と洋平の母親・佳子(若村麻由美)は秀夫の帰りを待ちわびる日々を過ごす。

家計の助けにしようと海釣りをする洋平。

ある日・・・洋平は「おっさん」(椎名桔平)に声をかけられる。

おっさんは漁師の真野幸作で・・・洋平に釣りあげた魚を分けてくれるのだった。

やがて・・・浜崎家に出入りするようになった幸作は・・・近所で・・・「洋平の新しいお父さん」と噂されるのだった。

思春期の洋平は・・・どす黒い怒りを感じる。

ある日・・・花束を持ってきた「おっさん」は・・・秀夫は死んだものとして・・・新しい人生を生きるべきだと・・・佳子に言う。

しかし・・・佳子は拒絶する。

「そんなことを言われるなら・・・あなたに魚をもらうべきじゃなかった」

「すみませんでした」

詫びて・・・家を去った「おっさん」を憐れに思った洋平は堤防で座り込む「おっさん」に声をかける。

「海の星・・・見たことあるか」

「ない」

「そうか」

幸作は海の水をすくい上げると海面にぶちまけ・・・プランクトンを刺激して発光させる。

美しい海の星に心を奪われる洋平だった。

歳月が過ぎ・・・都会で家庭を持った洋平に一通の葉書が届く。

妻の友美(紺野まひる)を安心させるために・・・「おっさん」の話をする洋平。

葉書の送り主は「おっさん」の娘の真野美咲(平祐奈→平山あや)だった。

父親のことで・・・話があるという美咲に合う洋平。

「お父さん・・・ガンで手術することになって・・・ずっと黙ってたことを白状したの」

「え」

「溺死者が漁師の網にかかるって知ってる」

「聞いたことあるけど・・・滅多にはないだろう」

「本当はやたらとあるのよ・・・だけど・・・警察に届けると面倒だから・・・キャッチ・アンド・リリースしているの」

「え」

「うちのお父さん・・・あなたのお父さんを・・・キャッチ・アンド・リリースしたのよ」

「ええっ」

「でも・・・街であなたのお父さんの尋ね人のポスターを見て・・・気が咎めたのよ・・・それでなんとか・・・あなたのお父さんが死んでいることを伝えようとしたんだけど・・・ついに言えなかったみたい・・・」

「えええ」

真野幸作の手術は成功した。

帰郷した洋平は・・・幸作の罪の意識に許しを与えるのだった。

洋平の母親は・・・他界して・・・すでに希望通りに海へ散骨した。

洋平は思う・・・母親は何故・・・父親が海に眠っていることを知っていたのかと。

雲の糸」脚本・小寺和久、演出・藤井道人である。

磯貝律子(麻生祐未)は精神に異常を来たし暴力を振るう夫を刺殺する。

残された生れたばかりの磯貝宏高(濱田岳)と幼い姉の磯貝亜矢(井頭愛海)は父親を殺した母親の子供たちとして・・・故郷で蔑まれて育つ。

出所した母親は・・・故郷を出ることが出来ずに働いて二人を育てた。

苛められ出血する宏高を姉の亜矢は慰める。

「何を見ているの」

「ひこうき雲って・・・ロープみたい」

「雲の糸ね」

「雲の糸じゃなくて・・・蜘蛛だろう」

「いいことをすれば・・・地獄にも救いの手があるってことよ」

「本当かな」

人殺しの子供として苛め続けられた宏高は学校を卒業すると逃げるように都会に出た。

そこで山崎まさよしと出会った宏高は眠っていた才能を開花させる。

ストリート・ミュージシャンとなった宏高は芸能界からスカウトされて・・・黒崎ヒロタカというスターになったのだった。

しかし・・・ある日・・・いじめっ子だった的場裕也(大野拓朗)から電話がかかってくる。

故郷で一番の鉄工所の社長である裕也の父親(西岡徳馬)は地元の名士だった。

裕也は「過去」をちらつかせて・・・父親の主催するパーティーに花を添えることをヒロタカに強要するのだった。

一人だけ極楽に行くことを許さない地獄の亡者たち。

母親もまた・・・亡者たちの一人だった。

裕也に電話番号を教えたのは・・・母親だったのだ。

「人殺しの子供を大切に育ててやった恩」を押しつけてくる偽善に満ちた地獄の故郷がヒロタカを飲みこみ・・・ついに暗い海へ突き落とす。

生死の境から目覚めたヒロタカはすべてが明らかになったことを姉から聞かされる。

「結局・・・地獄から逃げられなかった」

「そんなことないわよ」

「え」

「あんたが・・・人を殺したわけじゃないし・・・歌なんかに夢中になる人は・・・麻薬中毒患者にだって甘いものよ」

「・・・」

「あんたのファン・・・前より増えてるわよ」

「え」

「お母さんのことなんか・・・気にする必要ないわ・・・あんたを守るためにお父さんを殺したにせよ・・・そうなるまで・・・放置していたのはお母さんだしね」

「ええ」

「あんたは自慢の弟よ・・・だから・・・もっと歌って稼ぎなさいよ」

「姉ちゃん・・・」

この世は偽善者で満ちている。

偽善者を偽善者と蔑む偽善者も含めて・・・。

そして・・・すべての母親はその最たるものである。

そうでもなければ人類はこれほどまでに繁栄しなかったのだろう。

偽善を前提としたお茶の間向けドラマに絶妙にフィットする原作者の作品。

夏と秋の谷間に咲く一輪の花・・・。

関連するキッドのブログ→白ゆき姫殺人事件

|

« 彼岸島 Love is over(白石隼也)今度は私が守る!(桜井美南) | トップページ | 黒い十人の女(成海璃子)人間のクズたち(バカリズム) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/83353/67713354

この記事へのトラックバック一覧です: 望郷(山口まゆ)お母さんはみんな人殺しです(平祐奈)ひこうき雲は蜘蛛の糸なのかもしれないね(井頭愛海):

« 彼岸島 Love is over(白石隼也)今度は私が守る!(桜井美南) | トップページ | 黒い十人の女(成海璃子)人間のクズたち(バカリズム) »