夏目漱石の妻(尾野真千子)おバカさん(長谷川博己)
結局、これもかよ。
「待ちながら」記事もまだなのに・・・次々とスタートする秋ドラマである。
明治時代のシラスミカの話だ・・・おいおい。
夏目金之助(漱石)と中根鏡子が結婚するのは明治二十九年(1896年)である。
漱石は慶応三年(1867年)の生れであるから数え年で三十歳。
鏡子は明治十年(1877年)の生れなので十歳年下である。
ちなみに大塚楠緒子は明治八年(1875年)の生れで鏡子より二歳年上である。
鏡子は貴族院書記官長の娘で楠緒子は東京控訴院長の娘であり・・・二人ともお嬢様であるが・・・鏡子は尋常小学校卒業で楠緒子は東京女子師範附属女学校(現在のお茶の水女子大学)卒業なのだった。
ただし「しのび音」は明治三十年(1897年)の作品なので・・・時代考証的にはアレである。
楠緒子の夫・大塚保治は漱石より二歳年下だが明治二十八年(1895年)に一足早く結婚している。
美学者の保治は漱石と同じ東京帝国大学の卒業生であるため交流があったのだ。
明治四十三年(1910年)・・・楠緒子は三十六歳で生涯を閉じるが・・・この時、漱石は「あるほどの菊投げ入れよ棺の中」と詠んだのである。
こんな句を詠むから「横恋慕」などと言われるわけである。
ちなみに・・・楠緒子は面長な顔立ち、凛とした一重瞼の美人だったと言われる。
そんな人と比較されたら明治のシラスミカも悶々として当然だ・・・おいおいおい。
で、『夏目漱石の妻・第1回』(NHK総合20160924PM9~)原案・夏目鏡子・松岡譲、脚本・池端俊策、演出・柴田岳志を見た。明治二十七年(1894年)一月、日清戦争開戦。九月、平壌の戦い、黄海海戦。明治二十八年(1895年)一月、樋口一葉が「たけくらべ」の連載を開始。四月、日清講和条約(下関条約)調印。この年、愛媛県尋常中学校(現在の松山東高校)の英語教師・夏目金之助(長谷川博己)は中根鏡子(尾野真千子)と見合いをした。
親友の正岡子規(加藤虎ノ介)は問う。
「どんなおなごぞな」
「大口あけて笑う女だ」
「そんなのがよろしいか」
「金持ちの娘だ」
「・・・」
病身の兄を気遣って子規の妹・律(大後寿々花)は微笑んだ。
結核持ちでは良縁には恵まれないのである。
金之助の望みは東京に新設される帝国図書館に職を得ることだった。
しかし・・・帝国大学の教授職を目指すコースに乗せるために・・・鏡子の父親・重一(舘ひろし)が用意したのは熊本市の第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師の口だった。
鏡子はお茶の間向けに疱瘡による痘痕面の修正されたイケメンに心を奪われていた。
シャーマンである鏡子は・・・鏡を用いたトランス状態で未来を占う魔法を使う。
「鏡よ、鏡よ、鏡さん・・・私の将来の夫はどんな人」
「多くの夢の世界の彷徨い人となるよ」
「あらあら・・・雲にも乗れるかしら」
「それはノンちゃんです」
こうして・・・二人は結婚した。
だが・・・低血圧でお嬢様育ちの鏡子は朝に弱かったのである。
熊本の夏目家に・・・婆やのたか(角替和枝)と嫁入りした鏡子。
しかし・・・鏡子が目覚めると・・・金之助はすでに出勤しているのだった。
「起こしてっていったのに」
「起こしましたよ・・・何度も」
たかが・・・金之助の世話をしたのである。
それが毎日なので・・・金之助も呆れる。
「そんなに・・・起きるのがつらいのかね」
「たっぷり寝ないと生きている気がしません」
「早く寝たらどうかね」
「眠れないのです・・・庭のお墓がうるさくて・・・」
「こわいわっ・・・」
仕方なく・・・下宿先を引っ越す金之助だった。
実力者の娘と結婚するくらいなので・・・金之助は心に闇を抱えている。
幕末の江戸・・・名主の家に生れた金之助だったが・・・末子であったために・・・生れてすぐに養子に出されている。何か・・・出生の秘密があったのかもしれない。
養子先があまりにも貧しかったために・・・優しい姉が一度は連れ帰るが・・・金之助の父は何故か別の家に養子に出してしまう・・・やはり出生の秘密か・・・。
次の養子先は・・・夫婦が離縁したためにまたもや出戻る金之助。
程なく・・・生母が死ぬ。
親の味を知らぬ間に幼少期を終えた金之助は・・・抜群の学力で頭角を現すのである。
長兄の大助は夏目家のために金之助の立身出世を目論んでいたのだった。
その兄も明治二十年(1887年)に他界した。
金之助の心の一部はすでに死んでいたらしい。
友人の長谷川貞一郎(野間口徹)の訪問中、徳利に蝿が混入していたことに激怒する金之助は・・・たかを東京に追い返す。
夏目家の中に・・・「鏡子とたか」という中根家があるという妄想が金之助を苦しめていたのだった。
神経衰弱気味な夫に戸惑う鏡子。
そして・・・まもなく・・・金之助の父親が他界する。
葬儀に列席するために東京へと向う汽車の中で体調を崩す鏡子。
妊娠していることに気付かなかった鏡子は・・・最初の子を流産してしまうのだった。
自分に子供ができたことも知らずにそれを失った金之助の心は乱れる。
金之助は・・・「家族」というものに飢えていたのだった。
鏡子を実家に戻し・・・一人、熊本に戻っていく金之助。
しかし・・・鏡子はたちまち体調を整え・・・金之助を追うのだった。
熊本で待っていたのは地元調達の女中・テル(猫背椿)と住み込みの書生・俣野義郎(松尾諭)だった。
俣野から・・・愛読している小説の作者が・・・夫と結婚の噂があったと聞かされた鏡子は嫉妬の炎を燃やすのだった。
もはや・・・シラスミカがサンチーに嫉妬するレベルである・・・おいおいおいおいおい。
しかし・・・翌日は寝坊である。
弁当を忘れた金之助のために走って届ける鏡子。
「無理をするな」
流産後の妻を労わる金之助だったが・・・その言葉に冷たさを感じる鏡子だった。
中根家にはない・・・孤独に耐えかねた鏡子は・・・金之助の職場を訪問するが・・・金之助は無視をする。
心の折れた鏡子は雨の白川井川淵に投身を図るのだった。
しかし・・・漁師に救われ・・・死にそこなう鏡子である。
「ごめんなさい」
「謝るのは・・・私だ・・・子供のことは残念だったが・・・私に弁当を届けてくれるあなたのことを受け入れることができなくて・・・すまなかった・・・」
「・・・」
「家族を持つことは・・・私の夢だったのに・・・」
「他には・・・どんな夢があるの・・・一つだけ教えてください」
「夢・・・」
「お願いします」
「小説家になることだ・・・笑うなよ」
「うふふ」
こうして・・・夏目家版夫婦漫才が・・・始るのだった。
メリーゴーランドに乗っているようなドラマだな。
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