前置きの多いラブ・ストーリー(桐谷美玲)御注文はお決まりですか(山﨑賢人)
本題に入る前の前置きを退屈と感じる人は多い。
いきなり本題に入るのは時に効果的な手法である。
しかし・・・落語に枕はつきものだし、歌にも前奏はついてくる。
水泳の前には準備運動が不可欠だ。
すべては・・・本番をスムーズに行うためである。
すぐに・・・話が進まないと苛立つ人は早漏の傾向があるわけである。
下ネタかっ。
このプログのレビューのこの部分も・・・そういう部分である。
これから・・・テレビドラマの感想を語るわけだが・・・それなりに考えて語っているのでよろしくお願いします。
・・・ということである。
挨拶に意味があるのか・・・ないのか・・・それは永遠の課題なんだな、
で、『好きな人がいること・第9回』(フジテレビ20160912PM9~)脚本・大北はるか、演出・田中亮を見た。このドラマの前口上では・・・三人の男たちとひと夏の同居・・・彼女が選ぶのは誰か・・・というようなことが述べられていた。スピードのメンバーが12才年下の男と交際する時代である・・・時代なのか・・・だから・・・あまり年齢とは関係なく・・・優しい男、強引な男、ちゃらんぽらんな男とかいう性格分けでもよかったのかもしれない。だが・・・結局はパティシエの櫻井美咲(桐谷美玲)とシェフの柴崎夏向(山崎賢人)が主軸であることはキャスティングの段階で明らかなのである。
つまり・・・選択肢は幻なのである。
そういう意味で・・・長男の千秋(三浦翔平)はまだしも・・・三男の柴崎冬真(野村周平)にはまるで第三の男としての可能性がなかったわけだ。
だから・・・前口上は・・・嘘だったことになる。
本当に三人の誰を選ぶのかがお楽しみのドラマにするなら・・・やはり・・・年齢設定から訂正する必要があるだろう。
主人公の(27)が動かないなら・・・優しい男(29)・・・強引な男は(27)で同い年・・・そしてちゃらんぽらんな男は(25)ぐらいという・・・年上、同級生、年下で分けた方がぐっと差別化ができたと考える。
どうせ、なんちゃって年齢キャスティングなので・・・このままで対応できるはずである。
実年齢は桐谷美玲(26)、山崎賢人(22)、野村周平(22)、三浦翔平(28)なのである。
しかし・・・もはや・・・そういう時代ではないのかもしれない。
先入観は前口上の一種である・・・主人公の(27)という設定は・・・ある意味で適齢期を過ぎた女である。もう若くないのだ・・・そういうのは許されない時代であるにしてもな・・・だから・・・失敗できないと考えてもおかしくない。
そうでなければ・・・主人公の恥じらいは異様なのである。
「~したら話したいことがある」ってどんだけもったいつけるんだようである。
もちろん・・・すべての精神の在りようをカテゴライズするならば・・・主人公は一種の発達障害や・・・注意欠陥・多動性障害の疑いもある。
「好きな人に好きと言うのは大変なことだ」とわかっていて・・・「好きな人が自分を好きかどうかで悩むことは辛いことだ」とわかっていて・・・「相手をどれだけ待たせても平気」というのはどう考えても精神に欠陥があるわけである。
もちろん・・・ほとんどの人間がそうだと言うのなら・・・凄い時代になっちゃったんだなあと思う他ないわけである。
相思相愛というゴールを目指してなんだかんだもたつく・・・それがラブストーリーなのでございますけれどもねえ。
突然・・・同級生の高月楓(菜々緒)よりも・・・美咲の方が魅力的だと気がついてしまった千秋は・・・発情した獣のように・・・美咲を抱きしめる。
すでに・・・夏向に気持ちが傾いている美咲だったが・・・激しく動揺するのである。
よくわからないが・・・女心というものらしい。
有名なレストラン・プロデューサー大橋尚美(池端レイナ)の主催するダイニングアウト(出張レストランの共演)に参加するためのメニューが完成したお祝いに二人で食事をしようと言い出したのは美咲だったのだが・・・千秋に抱きしめられたことですべては白紙に戻ってしまったのである。
帰宅した美咲は・・・料理を作って待っていた夏向への謝罪もほとんどないままに・・・「お腹が痛い」と小学生のような挙動不審さで・・・自室に籠ってしまう。
唖然とするしかない・・・夏向だった。
美咲は・・・夏向の心情を思いやるでもなく・・・広島カープ優勝のための歓喜が反映されていない(こういうところが中途半端なんだよな・・・スピード優勝だったからな)石川若葉(阿部純子)に恋愛相談である。
「突然抱きしめられちゃった」
「それは・・・千秋さんが先輩を好きってことですよね」
「さびしかったってことはない」
「さびしかったら抱きしめていいってことになったらこの世から性犯罪は根絶されますよ」
「・・・」
「夏向さんはどうするんです」
「それどころじゃなくて」
「返事をのばしてるって・・・相手をじらしてるってことだけど・・・わかってますか」
「そんなつもりないもの」
つまり・・・美咲は・・・配慮というものに欠けている女なのである。
まあ・・・女は基本そうだけどな・・・おいおいおい。
鈍感で嫌な女だよな・・・そんなすごい性格設定を・・・今回、強引にねじ伏せていく桐谷美玲なんだけどな。
翌朝・・・一人でダイニングアウトの会場の下見に出かけて行った夏向を追い掛ける美咲。
「水臭いじゃない」
「具合が悪そうだったから」
屈託のない夏向に安堵する美咲である。
やはり・・・相手の鬱屈を推量する能力に欠けているわけである。
仕事のパートナーとしても・・・ダイニングアウトを成功させたいと願う美咲なのである。
美咲と夏向は「夢」について語り合う。
「夏向は・・・夢を叶えて凄いと思う」
「お前だって・・・そうだろう」
「私だって昔は海外で修業したいとか・・・思ってたんだ」
「・・・」
美咲にはどこか思いこみの激しさがある。
「団子屋の娘としてはこれが精一杯」
和菓子も洋菓子も菓子に違いはないわけだが・・・美咲の精神にはそういう統合性が欠けているのである。
「自分の限界を感じるのよ・・・」
美咲は夏向のくれたラムネの壜を見つめる。
「昔・・・この中のビー玉が欲しくてしょうがなかったけど・・・結局、捨てるしかなくて・・・なんだかさびしかった」
夏向はラムネの飲み口を外してビー玉を取り出す。
「え」
「これで・・・夢がひとつ叶ったろう・・・大事にしろよ」
「あんたって・・・凄いわね」
美咲は・・・夏向を愛しく思う。
「ダイニングアウトが成功したら・・・話したいことがあるの」
「また・・・それかよ」
「またって・・・」
美咲は・・・夏向をじらしているとは・・・夢にも思わないのだった。
美咲は・・・ただ何もかもが恥ずかしい年頃なのである。
一方・・・千秋は・・・美咲に向う準備として楓を呼び出していた。
「話したいことがあるんだ」
お前もか・・・。
しかし・・・すべてを察している風の楓は・・・千秋を八景島シーパラダイスに誘うのだった。
「私・・・もうすぐ三十路だけど・・・遊園地が大好きなの」
「え」
最後のデートを楽しむ楓である。
もちろん・・・千秋はまったくエンジョイできないのだ。
なにしろ・・・心がないのである。
夜の海で別れを切り出そうとする千秋に先手を打つ楓。
「私・・・ボストンにもう一度留学するつもり」
「え」
「だから・・・別れて」
「すまない・・・ありがとう」
「あなたの好きな人のところへ・・・行きなさい」
走り出す千秋をそっと見送る楓である。
サーフショップ「LEG END」の経営者・日村信之(浜野謙太)と奥田実果子(佐野ひなこ)の出番を確保するために楓を慰めるのだった。
ダイニングアウトの前なのに・・・なぜか単独行動の多い美咲と夏向。
その隙をついて・・・千秋は美咲をキャッチするのだった。
「君が好きだ・・・君の気持ちが誰に向いているかは・・・知っている・・・それでも君が好きだ」
「・・・」
「返事は急がなくていい」
美咲が即答しないことが前提である。
なにしろ・・・まだ最終回じゃないからな。
そして・・・またしても揺れる美咲なのだった。
さらに・・・あれほど弟思いだった心情が嘘だったように・・・大事なイベントを控える夏向に宣戦布告する千秋。
「美咲ちゃんに告白した・・・返事はもらってないけど・・・お前だけには言っておきたかった」
もはや・・・暴走機関車である。
ついに・・・我慢が限界に達する夏向。
「昨日の夜も兄貴に逢ってたのか」
「・・・はい」
「なんで嘘をついた」
「それは・・・」
「よかったな・・・夢が叶って・・・」
「え」
「ずっと・・・兄貴と両思いになりたかったんだろう」
「何でそんなこと言うの」
「図星だろう」
「最低・・・あんなっていつもそうね・・・人の話を聞かないで・・・何でも決めつけて・・・私の気持ちなんてわかろうともしない」
いやあ・・・それ・・・あなたのことでしょうとざわめくお茶の間。
「他人の気持ちをわかろうとしないのは・・・お前の方だろうが」
「ひどい」
「お前なんかと出会わなければよかった」
「こっちのセリフよ」
決裂である。
売り言葉に買い言葉ってレベルじゃないよねえ。
これはもう・・・年上の女と年下の男の組み合わせという時代じゃない宣言なのか・・・。
発達障害同志の激突だよな。
だが・・・美咲は出て行くわけでもなく・・・無言のまま・・・業務を続ける。
気配を察した冬真は・・・美咲にアドバイス。
「もっと・・・素直になった方がいいんじゃない」
「・・・」
二人の会話を聞いていた二宮風花(飯豊まりえ)は嫉妬したりしないで・・・冬真を褒めるのだった。
ダイニングアウト当日・・・行方不明となる美咲。
メインデッシュぎりぎりの時間に現れて「どうしても旬のカボスを使ってもらいたかった」と言い出すのである。
連絡ぐらいしろよな・・・という話だが・・・もうおわかりですね。
美咲は明らかに発達障害で・・・精神に些少問題がある人格設定なのです。
そういうすべてを受け入れた風の夏向。
美咲の提案を受けて・・・メインディッシュのソースを変更する。
そして・・・結果として素晴らしい料理が出来上がったらしい。
さらに・・・美咲のデザートもトレビアンな仕上がりだったのである。
ダイニングアウトは大成功・・・シェフとしてスピーチを求められた夏向は壇上にあがり・・・。
「今日の料理は予想以上の仕上がりになりました・・・すべて・・・パートナーのおかげです・・・彼女がこんなに・・・素晴らしいパートナーになったのも想定外のことです・・・いまとなっては私の料理にかかせない・・・かけがいのないパティシエなのです」
愛の告白に戸惑う会場の皆さん。
千秋は・・・敗北を認める。
「お話しなければいけないことが・・・」
「あいつは・・・君を待っているよ」
「え」
千秋は美咲を送りだした。
バトンを受け取り・・・走り出す美咲である。
その頃・・・夏向は・・・一本の電話を受けていた。
キッチンにたどり着いた美咲は・・・。
「話したいことがあるの」
もう・・・それはわかったから・・・。
しかし・・・冷たい態度の夏向。
「聞いてよ・・・私は夏向が好きです」
強制アヒル口のお返しをしながら・・・夏向の唇を奪う美咲である。
だが・・・夏向は・・・。
「遅いよ・・・もう・・・お前のこと好きじゃなくなった」
何故なら・・・来週が最終回だからである。
つまり・・・恋愛パラリンピックなのか。
東京パラリンピックをそれなりに成功させるために・・・全身全霊をあげてプッシュということなのか・・・おいおいおいおおいおいおい・・・。
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