俺たち真田兄弟、徳川が勝っても豊臣が勝っても心は一つだってこと(長澤まさみ)
人間は何かを好むものだ。
そういう習性があるらしい。
人間は何かを嫌うものだ。
そういう習性があるわけである。
天下分け目の決戦で・・・人間の好き嫌いが持ち込まれるところが物語である。
義理とか人情が好きな人は地縁・血縁を大切にするわけである。
一か八かが好きな人は危ない橋を渡る。
愛が好きな人はそういう兜をかぶる。
戦が好きな人はゾクゾクするのだな。
戦が嫌いな人は山奥に逃げるしかない。
いくら祈っても平和なんか来ないのだ。
平和とは血と涙と汗と無数の死体の結晶なのである。
お題目を唱えるのが好きな人は南無阿弥陀仏。
真田父子は最高軍師・韓信の蘊蓄で盛り上がる。
そういうあれこれを感じさせてくれる大河ドラマが好きだ。
で、『真田丸・第35回』(NHK総合20160904PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は「犬伏の別離」のいいところを全部持って行った真田信幸の第二弾イラスト描き下ろし大公開でお得でございます。重要なシーンでかっさらっていく役者の力の見せ所ですな。今回はひねった展開が見事にはまりましたねえ。父・昌幸の策を奪っていくだけでなく足駄まで投げてしまった・・・天晴ですな。祖母・河原氏恭雲院の係累である河原右京亮綱家は信幸の筆頭家老なので阿吽の呼吸だったと妄想できます。つまり・・・徳川の間者に真田家の分裂が血なまぐさいものだったと見せつけるためだったのでしょうねえ。まあ・・・妄想的には河原一族は河童なので陸の上では動きが鈍くかわせなかったのかもしれません。一方で実は豊臣秀吉の落胤だったかもしれない大谷吉継(秀吉を継ぐものの意)と結果として秀吉に一生を捧げたことになる佐吉(秀吉を補佐するものの意)こと石田三成の性別を越えた友情・・・いやいや最初から同性だから・・・これには腐臭漂わす乙女でなくてもうっとりでございましたな。いざとなるとダメな男に・・・棺桶に片足つっこみながらエールを送る。こんな凄惨な愛の形は戦国絵巻の中でも絶妙でございますからねえ。美男と美男の再現ドラマで麗しゅうございます。そういう中で・・・ガラシャ事件という石田三成の最初の不手際が発生する。そこに・・・佐助ときりをからませて・・・喜劇要素と活劇要素を同時に発生させる・・・本当に見事な手際ですねえ。金太郎飴のようにどこから切っても「傑作」です。これはもう・・・終わってみれば大河史上の最高傑作になるのかもしれません。そういう予感で満ちておりますな。
慶長五年(1600年)六月二日、徳川家康は会津征伐を号令した。白河口から家康・秀忠父子の率いる本軍が攻め仙道口から佐竹氏、信夫口から伊達氏、米沢口から最上氏、津川口から前田氏が包囲殲滅するという大作戦である。本軍は徳川勢だけで六万、黒田長政、福島正則、細川忠興、浅野幸長などの軍勢が五万・・・これだけで十万越えの大軍勢である。さらに西国大名の十万が後詰となる手筈である。ここに反徳川勢力のつけいる隙が生じるわけである。長束正家、増田長盛、前田玄以の三奉行と毛利輝元、宇喜多秀家、小早川秀秋の三大老の連携を石田三成と大谷吉継が画策するのである。十五日、真田昌幸は大坂を出陣、上田城経由で下野に向う。細川忠興など大坂の諸将も同様に出陣。十六日、家康が大坂を出陣。十七日、家康は伏見城で留守中の指図を行う。十八日、家康は本多忠勝、井伊直政、榊原康政などの最強部隊に守られて大津を経て江戸に向う。七月二日、会津征伐のために敦賀を出陣した吉継は佐和山城の石田三成と密会。十一日、家康弾劾のための謀議が成立する。十六日、毛利輝元は大坂城に入城。十七日、諸将に対し三奉行による家康弾劾文が発せられる。大坂城細川屋敷にて細川ガラシャが家臣の介錯で自死。十九日、秀忠が江戸を出陣。宇喜多軍主力が鳥居元忠が篭城する伏見城を包囲。二十一日、家康が江戸を出陣。二十二日、下野に入った家康の元へ三奉行の密書を受け取った金森長近が大坂の変事を密告する。秀忠傘下の真田父子は犬伏の陣所で密談を行う。
細川一族は古き忍びの末裔である。下忍の鷹匠が変事を報せるために下野の細川陣屋にたどり着いたのはガラシャの死から四日後の朝だった。
陣中には細川忠興と・・・二人の息子、忠隆と忠秋がいる。
三人はガラシャの死に顔色を変える。
「これで・・・豊臣も終わりじゃ・・・」
「・・・」
「考えてみれば・・・あれは・・・父の仇を討つ覚悟だったのかもしれん」
「・・・千世も死んだか」
忠隆は母の死よりも自分の妻の消息が気になった。
千世は前田利家の七女で忠興の長男・忠隆の正室である。
「千世様は・・・宇喜多屋敷に匿われておりまする」
「なに・・・」
千代の姉で前田利家の四女・豪姫は西軍の主将の一人、宇喜多秀家の正室だった。
忠隆は思わず・・・父・忠興の顔色を窺った。
忠興は無表情のまま・・・忠隆と目を合わせることはなかった。
忠隆は・・・策謀家である父・忠興が暗い時の流れを窺っているのを感じた。
大老だった前田利家の娘を娶り、義兄に同じく大老である宇喜多秀家を持った忠隆の運命がゆっくりと変転していく。
次男の忠秋は・・・父と兄との無言のやりとりを興味深く見つめている。
江戸城では十四才となった忠興の三男・忠利が人質として・・・いつもの変わらぬ朝を迎えている。
この日・・・忠利の運命も大きく変転していたが・・・忠利が母の死という変事を知るのは家康が下野から江戸に戻ってきてからのことだった。
諸将の忍びたちが続々と下野国内の各陣屋に到着している。
細川屋敷炎上に乗じて脱出した人質も多かった。
黒田長政の継室・栄姫は首尾よく脱出している。
黒田長政は・・・安堵を感じ・・・棄教したキリシタン・ダミアンとしてガラシャの死を悼んだ。
大坂真田屋敷には・・・信繫の正室・春だけが残っていた。
全員が忍びでくのいちの真田一族の逃げ足は速かったのである。
西軍の主将の一人である大谷吉継の娘はいわば置き去りにされてしまったのだ。
「皆、行ってしまわれた・・・」
閑散とした真田屋敷の風情が面白くなり・・・春は一人微笑んだ。
関連するキッドのブログ→第34話のレビュー
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コメント
松岡声での「心配ございませんよ!」
着メロか何かにして販売してほしいです(~_~;。
湿地に囲まれた江戸城。最高だ! ((c)完全なるアウェー、最高だ! in『バンビーノ』)
それ以上に新妻聖子のシエも最高に近い感じ(笑)。
「泣いている暇はござらん!」
LINEスタンプにして販売してほしいです。
「聞いておりませぬ!」も欲しい。
投稿: 幻灯機 | 2016年9月 7日 (水) 00時02分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
よからぬ意味での朝ドラマの主人公タイプが皆無の真田丸。
脚本家の女性への屈折した感情が爆発しておりますな。
実に清々しいことでございます。
その中でも天然系でナチュラル猫をかぶっている春姫。
ほんわりジェラシーという独自の境地に達しております。
ほとんど海に浮かぶ江戸城・・・津波に弱そうです。
「お前様はできる子」的圧迫を加える江も最高でございましたな。
現実世界で何があろうと・・・虚構の住人たちに
何の罪もない。
一日も早く・・・そういう世界が来ますように。
投稿: キッド | 2016年9月 7日 (水) 00時39分