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2016年10月31日 (月)

天下人の子であって愛の結晶ではない(竹内結子)

久しぶりのヒロイン・高梨内記の娘きり(長澤まさみ)の未登場回である。

歴史上の主役と言える淀殿こと茶々(竹内結子)が前面に出て、主人公の真田信繁(幸村)への「死の呪い」を深める展開である。

浅野家滅亡における小谷城落城と、柴田家滅亡における北ノ庄城落城によって父と母を失いながら脱出して生存してきた茶々にとって・・・籠城は・・・それほど恐ろしいことではなかったとも推測できる。

いざとなったら・・・迎えが来ると考えたのかもしれない。

何故なら・・・攻め手の将軍秀忠の正室は妹の江であり・・・城内には豊臣秀頼の正室として・・・将軍と江の娘である千姫もいる。

ドラマでは・・・「滅亡」に萌える茶々の姿が描かれるが・・・史実としては楽観があったのかもしれない。

浅井三姉妹の一人、常高院(はいだしょうこ)の嫡男・京極忠高は幕府陣営にいるが・・・その正室は千姫の妹の初姫である。

豊臣家と将軍家は・・・血縁で結ばれているのである。

それゆえに・・・淀殿・秀頼母子の「死」は徳川幕府の作る太平の世に・・・暗い影を落すとも言える。

ドラマでは・・・淀殿こと大広院の乳母・大蔵卿局とその子・大野治長や・・・大広院の叔父で織田信長の弟・織田有楽斎が・・・城方として牢人衆と対立するわけだが・・・そもそも・・・大蔵卿局は末子・治純を家康の人質としているのである。

大蔵卿局にも「楽観」はあっただろう。

織田有楽斎に至っては五男の尚長が大和柳本藩一万石の大名として家系を明治まで繋ぐ。

つまり・・・大坂城での有楽斎は幕府の間者だったのである。

一方、大坂城には牢人衆の他に秀吉時代からの七手組(ななてぐみ)という親衛隊があった。

筆頭は速水守久で浅井家の旧臣であり最後は秀頼に殉じる。青木一重は夏の陣には参加せず、摂津麻田藩一万石の大名として存続する。つまり間者である。伊東長実は戦後、備中国岡田藩一万石の大名となる。つまり間者である。中島氏種は夏の陣で落城前に自刃。野々村幸成は落城中に自刃。木村重成の妻となった青柳の父である真野頼包は消息不明。堀田盛重(正高)は自害もしくは討ち死にである。

淀殿の叔父が間者、七人の親衛隊の内・・・二人が間者である。

徳川家康の忍びとして腕が冴えわたっている。

で、『真田丸・第43回(NHK総合20161030M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・小林大児を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣秀頼の母にして大坂城のお上様・・・淀殿の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。妖艶かつ哀愁の淀殿の魅力全開でございますねえ。秀吉の武具庫には埃が積もり・・・武具は散乱していた。戦を忘れて十余年・・・城の支配者は・・・武士ではなく・・・姫である。しかも・・その姫は少し精神を病んでいる。真田幸村の前途に暗雲が立つという感じでごさいました。しかし・・・幸村にとって・・・大坂城は青春そのものでございます。そこに帰ってきてしまったのだから・・・もう仕方ないのでございますよねえ。しかし・・・歴史というのは不思議なものでございます。敗者に過ぎない真田幸村の栄光が物語られるわけですからねえ。すべてが幸村を輝かせるための舞台であったとも考えられる・・・そして・・・ついに幸村は役割を演じ始めるわけでございます。いつもは・・・敵役の大野治長さえ・・・少し男前になり・・・籠城は・・・戦略ではなく・・・政治だったという流れでしたね。そもそも・・・京都攻略は最初の一手とも言うべき基本であり・・・それが実行されなかったのは・・・出陣準備が間に合わなかったか・・・やはり・・・攻略部隊の寝返りを懼れたかのどちらかなのでしょうね。とにかく・・・五人衆が戦隊ヒーロー的で華やいでまいりました~。ああ・・・もう十一月ですなあ。

Sanada43 米一石は人間が一年に消費する米の量である。豊臣秀頼はおよそ六十万石ほどの大名であったから単純計算では六十万人を養えることになる。しかし、実際には兵力を維持するためには一族郎党の糊口をしのぐ必要があり、豊臣政権時代の軍役は一万石あたり二百五十人とされた。四万石で千人、四十万石で一万人の計算である。つまり、豊臣秀頼の常備軍はおよそ一万五千人ということになる。もちろん・・・これには兵種の問題がある。槍兵よりも騎兵や銃兵の方が予算がかかるわけである。大坂の陣において将軍秀忠の定めた軍法では一万石の大名は鉄砲20丁、弓10張、槍50本、馬上14騎となっている。およそ百名であり、兵種によって補助兵としての従者や輸送部隊員が加わり倍以上の人数になっていく。このことから・・・牢人衆が十万人も集まればたちまち兵糧は尽きることが予想される。大坂や堺は米の集積場であったために城方は周辺の米蔵を収奪し、城内に蓄えた金銀により米商人から高値で購入もした。そのために周辺の物価は鰻登りとなったという。家康が偵察部隊として大和に派遣した藤堂高虎は伊賀・伊勢(一部)二十万石の大名であり動員兵力は五千人だったが・・・その配下には大和・伊賀・甲賀の忍びのものが多数属していた。

大坂城内にある真田幸村は・・・摂津、大和、山城、近江に進出する積極策を否定される前から籠城における前衛要塞としての真田丸の築城を進めるとともに・・・真田忍軍を京方面と奈良方面に放っている。

京周辺には真田昌幸の娘である桔梗の血を引く真田幸経、真田幸朝の兄弟が、奈良周辺には真田佐助と霧隠才蔵が潜んでいた。

下忍たちは裏街道を渡り、刻々と変化する情勢を幸村に伝える。

幸村の義兄弟である堀田興重、吾妻忍び衆の棟梁である横谷重氏、上田城を抜けだしてきた家老の真田勘解由信昌、真田権太夫輝幸、高木内記・主膳父子などが・・・幸村を補佐していた。

幸村の家臣と言えるものは五十人ほどである。この他に幸村配下に入った真田忍軍は数百人を数える。

大坂城に集まった牢人衆のうち五千人ほどが幸村に割り当てられていた。

「大御所が二条城で公家衆と面談したようでごいす」

「京周辺は加賀の前田や越前の松平の軍勢であふれているところに・・・東軍諸勢が続々と到着し、ごった返しておりまする」

「真田丸の南にある篠山に鉄砲衆を忍ばせました」

「真田丸と篠山の地下道は開通しておりやす」

「紀伊の一揆は鎮圧されて浅野勢が出陣しましたぞ」

「将軍は近江に到着とのこと」

「山陽道には池田の軍勢が出てまいりました」

「茨木攻めをした大野勢が引き上げて参るとのこと」

「淀川堤の破壊は・・・不首尾にて」

幸村は情報を吟味しながら嫡男・大助を振り返る。

「大和路はどうした」

「才蔵と佐助から便りが途絶えております」

「・・・」

奈良周辺には藤堂配下の犬神衆が結界を張っていた。

佐助の配下の軒猿たちが・・・犬神衆との暗闘を繰り広げている。

忍びの技では真田忍軍が犬神衆を凌駕していたが・・・狼に変化する犬神衆の嗅覚は・・・軒猿たちの穏行を許さないのである。

嗅ぎつけられた軒猿は・・・大和の鉄砲忍びの包囲によって射殺されていく。

才蔵とはぐれた佐助は・・・包囲の輪が閉じられていくことを察知していた。

「わしとしたことが・・・」

佐助は術の衰えを感じる。

その耳元で・・・忍びが囁いた。

「佐助殿・・・」

「む・・・」

「それがしは・・・石田様に恩を受けた身でございます」

「石田様に・・・」

「関ヶ原の一戦の後・・・犬神衆は・・・藤堂様の配下となりましたが・・・それがしは・・・秀頼様にお味方つかまつる・・・」

「しかし・・・おいそれと信じるわけにはいかぬ・・・」

「心配ご無用・・・命を持って証まする」

「なに・・・」

「南にそれがしの持ち場がございます」

「お主・・・名は・・・」

「忍びに名など無用でござろう」

森の中を佐助が飛んだ瞬間・・・背後で爆発が起きる。

「微塵隠れか・・・」

佐助は無心の境地で破れた結界の裂け目を抜けていく。

名もなき忍びの報恩のわけもまた秘された。

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2016年10月30日 (日)

男と女が乞い求め生まれた私(武井咲)

人はみな粗ぶる魂を心に秘めている。

粗忽なのである。

うっかりしていない人間などいないのだ。

テロリズムはそういう人の粗忽さの別名である。

殿中で刃傷沙汰を起こした浅野内匠頭長矩はまさにテロリストである。

さらに・・・主君の無念を晴らすために吉良上野介義央を惨殺した赤穂浪士はテロリスト・グループだ。

なぜ・・・そんなテロリズムの物語が・・・これほどに愛されるのか。

なぜならば・・・人はみな・・・テロリズムを心に飼っているからなのだ。

「それ」を発露しない多くの人々は・・・実行犯たちの物語を眺める。

そして・・・ついうっかりしてしまうことの恐ろしさを噛みしめるとともに・・・自分の中にある粗忽を封じ込めるのである。

だから・・・赤穂浪士の本懐はつねにせつないのだった。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第6回』(NHK総合201610291810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・清水一彦を見た。浅野内匠頭長矩(今井翼)の勅使饗応役が果たされた後に側用人・礒貝十郎左衛門正久(福士誠治)との婚礼を夢見ていた侍女・きよ(武井咲)だったが・・・長矩が刃傷沙汰の末に切腹し、お家断絶の憂き目となり・・・すべての約束は潰えつつあった。

きよの後見人である仙桂尼(三田佳子)らの勧める縁談を断る口実で・・・落飾して瑤泉院となった長矩の正室・阿久里(田中麗奈)への女中奉公の延長を申し出たきよは・・・瑤泉院に信頼され・・・探索の任務を仰せ付かる。

きよは瑤泉院のくのいちとなったのである。

一方、赤穂藩江戸屋敷を失った元藩士たちは・・・次々と国許である播州赤穂に旅立っていく。

浅草唯念寺の住職・勝田玄哲(平田満)の元に戻ったきよの前に・・・縁談の相手である村松三太夫(中尾明慶)が現れた。

「これより・・・赤穂に参る・・・江戸に残す母のことをお頼み申す」

「承りました」

縁談のことをなかったことにしたい・・・と本人に言い出せなかったきよは・・・父に甘えるのだった。

「村松様との縁談はなかったことにしてください」

きよを許嫁と慕う三太夫の三枚目ぶりが半端ないのである。

考えようによっては酷い話だが・・・これは「恋」の話なのである。

恋なんて大体、酷いものだ。

浪人となった元赤穂藩士たちはそれぞれに住居を準備する。

きよは両国米沢町に転居した堀部家の手伝いに出る。

堀部安兵衛(佐藤隆太)はすでに赤穂に向っていた。

Takuminokamimap2江戸と播州赤穂は遠い。現在では東京駅から姫路駅まで新幹線で三時間、姫路から播州赤穂駅までは三十分で四時間足らずの鉄道の旅だが・・・基本、徒歩の時代である。早駕籠でも一週間と言われる遠さである。物見遊山なら片道一ヶ月は欲しいところなのである。

「赤穂は遠い・・・しかし・・・赤穂に行かなければ話にならん」

隠居した堀部弥兵衛(笹野高史)は遠い目をする。

「赤穂では・・・殿に殉じて切腹か・・・それともお城の引き渡しを拒んで城を枕に討ち死にか・・・」

弥兵衛の言葉に身が竦むきよだった。

「心配ではないのですか」

きよは弥兵衛の娘で・・・安兵衛を婿に迎えたほり(陽月華)に問う。

「武士であるからには・・・主君のために命を投げ出すのは当然のことですから」

武士の娘であり・・・武士の妻であるほりは覚悟を示すのだった。

元武士の娘であるきよの心は迷う。

三月十四日、主君の浅野長矩の江戸城松之大廊下における刃傷沙汰の報せを受けて、第一の早駕籠を使い、馬廻役の早水藤左衛門満尭と中小姓の萱野三平重実が赤穂に向う。昼夜を問わずに東海道を進み、京、大坂を経て赤穂にたどり着いたのは三月十九日の早朝だったという。強行軍である。

さらに・・・浅野長矩の切腹とお家断絶の報せを持って十四日の夜、江戸を出発した第二の早駕籠には足軽頭の原惣右衛門元辰(徳井優)と馬廻役の大石瀬左衛門信清が乗っていた。二人もまた強行軍で十九日の夕刻には赤穂城に到着した。

「何・・・殿が切腹・・・」

報告を受けた大石内蔵助は郡奉行の吉田忠左衛門兼亮(辻萬長)や次席家老の大野九郎兵衛知房(越村公一)と顔を見合わせる。

大野九郎兵衛は忠臣蔵における悪役である・・・穏健派として切腹に反対し・・・開城恭順を主張し藩内で孤立して最後は逐電する。

テロに屈しない世界では当然、穏健派として存在が擁護される傾向がある。

だが耐えがたきを耐えない世界では「卑怯者」と謗られるのである。

開城恭順か・・・篭城かで議論が続き、大石内蔵助は折衷案とも言える「大手門での切腹」を提示し・・・非恭順派の同志を募っていく。

三月二十五日、主君を泉岳寺に埋葬した側用人の片岡源五右衛門高房(新納慎也)や物頭の礒貝十郎左衛門正久(福士誠治)、田中貞四郎(田上晃吉)らが赤穂城に到着し、遺言を内蔵助に伝える。

「吉良の生死が定かではありません」

「何・・・」

「切腹では・・・殿の無念が晴らせぬことも・・・」

喧嘩両成敗の御法度に反し・・・吉良が無傷では・・・浅野家の武家としての名誉に関わるのである。

つまり・・・事件が単なる主君の乱心になってしまうのだった。

赤穂浪士に新たなる道が示された瞬間だった。

きよの本心を知らずに「瑤泉院の耳」を支援する仙桂尼は従兄弟で材木商の木屋孫三郎(藤木孝)を動かし、江戸呉服橋の吉良屋敷に女中としてちさ(二宮郁)を送りこんでいた。

きよはちさから・・・吉良上野介義央(伊武雅刀)が健在であるという情報を入手する。

実家である赤坂の三次浅野家屋敷に謹慎中の瑤泉院に「吉良の存命」を報告するきよ。

「なんじゃと・・・吉良が生きておると・・・それでは・・・殿があまりにも」

瑤泉院は夫の刃傷沙汰の裏に・・・「吉良の悪口雑言」と「夫の屈辱」を察するのだった。

「悪口は刃傷よりも卑怯なことです」

瑤泉院の武家の妻としての怒りに気圧されるきよだった。

瑤泉院からの文を受け取った仙桂尼は案ずる。

「この報せを受けた国許の男たちは・・・さぞや血気に逸ることでしょう・・・しかし・・・女には女の務めがございます」

「女の務め・・・」

「命を費やすばかりではなく・・・伝手を用いて・・・浅野家存続を目指すのです」

暴発か・・・忍従か・・・きよは選択を迫られるのだった。

何故か・・・礒貝十郎左衛門ときよの間を取り持つ・・・勝田善左衛門(大東駿介)である。

きよの挙動に不審を覚えた勝田玄哲は不肖の息子に問い質すのだった。

玄哲は亡き妻・さえ(大家由祐子)の墓前にきよを導く。

「互いに家を捨て・・・夫婦になったことが・・・良かったのかどうか・・・儂には未だにわからぬ・・・」

「・・・」

「思いを遂げることは・・・綺麗事ばかりでは済まぬ・・・さえには慙愧の思いがあっただろう」

「・・・」

「さえは子を残して家を出たのだ」

「私は・・・父上と母上の娘でございます・・・そのことを父上は悔いると申すのですか」

「・・・」

「父上と母上の恋を恥じるのでございますか」

「きよ・・・お前は母親に似たようだ」

「・・・」

「小石川へ参れ・・・磯貝殿が江戸に戻ったそうだ」

不肖の父親は・・・娘の恋を認める覚悟を定めたのだった。

小石川には徳川家康の母・於大の方の菩提寺である伝通院や「こんにゃくえんま」で知られる源覚寺などかあるが・・・きよと礒貝十郎左衛門の密会の場所は小石川白山権現社(白山神社)であろう。

そもそも・・・この場にきよを呼び出す礒貝十郎左衛門は悪人と言えるのだった。

「吉良が生きていることを探索されたこと・・・お手柄でござった」

「・・・」

「拙者は・・・これより亡き殿のために・・・命を捨てる覚悟でござる・・・拙者のことはお忘れくだされ」

「お側にいとうございます」

礒貝十郎左衛門の胸に飛び込むきよ。

その身体を抱かずにはいられない・・・礒貝十郎左衛門だった。

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2016年10月29日 (土)

美しい王女と醜い魔女そして平凡な村の女(山田孝之)

女優・木南晴夏は「勇者ヨシヒコシリーズ」のムラサキを演じる由緒正しいヒロインなのである。

抜群の存在感と・・・独特の萌えるセクシーさで爆走してきたわけだが・・・今作では三十路に突入している。

ああ・・・永遠のヒロインであり続けることの難しさよ。

そう思う瞬間がないことを祈るばかりである。

いや・・・ゾンビにされたり、エフエフな人々に嘲笑されたりしつつ・・・まだまだキュートである。

前回、もう一人のヒロインであるヒサ(岡本あずさ)がとんがり帽子にマント姿をした武闘家の才能を持つ姫(中川翔子)に変身後に「ひとつ前の世界」に言及した時・・・パロディー元との関連で揺らぎが生じたように感じたのだが・・・・

よく考えれば・・・ヨシヒコのコスチュームは最初から「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」のパロディーだったのである。

つまり・・・基本は「V」なので「ひとつ前の世界」は「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」であり・・・そこに登場するアリーナが「ひとつ前の世界の登場人物」のパロディーであることに問題はなかったのだ。

おふざけの中での整合性も大切だからねえ。

「V」の発売は平成四年(1992年)である。

それでも二十年以上前の話なんだよなあ・・・。

時は過ぎ去っていくよなあ。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第4回』(テレビ東京201610290018~)脚本・演出・福田雄一を見た。恒例の前座コーナーである山中の盗賊との遭遇では盗賊の前説(サンドウィッチマンの富澤たけし)が登場する。マエセツとは主に視聴者公開番組で・・・観客となる壁の花の皆さんに担当者が番組について前もって説明する段取りや説明者そのものを指す。番組収録は・・・あえて言えば「ハレの空間」である。日常(ケ)と非日常(ハレ)の転換のために・・・マエセツは・・・ケの衆にハレの世界の心得を明示しつつ・・・そこが晴舞台であることの暗示をかけていく。人気者が出てきたら必要以上に盛り上がらなくてはいけない空気を生み出すために・・・。マエセツは最近ではそれほど売れていない芸人の役回りである。もちろん・・・魔法使いとしての才能が要求される職種であることは言うまでもない。

「え~、これから山賊様が登場しますので・・・よろしくお願いします」

「何をだよ!」と勇者ヨシヒコ(山田孝之)を除く仲間たち・・・戦士ダンジョー(宅麻伸)、魔法使いのメレブ(ムロツヨシ )、村の女ムラサキ(木南晴夏)は不貞腐れてツッコミを入れるのだった。

「山賊様は登場しますと・・・それなりに武勇伝などを披露しますので・・・おそれいっていただけると幸いです」

「どうしてだよ!」

「当然、戦闘になりますので・・・適当に負けていただき・・・金品などを差し出して命乞いという段取りになっていますが・・・ここは土下座でお願いします」

「ふざけんな!」

しかし・・・ヨシヒコだけは一生懸命マエセツの指示に従う努力をするのだった。

仕方なく・・・ダンジョーはヨシヒコのいざないの剣で・・・マエセツを眠りに誘うのだった。

もっと「前もっての説明」を聞きたそうなヨシヒコを促し・・・旅を進める一行だった。

ヨシヒコ、かわいいよ、ヨシヒコである。

仏(佐藤二朗)が登場する。

なぜか・・・カップヤキソバ(大)と顔面を比較する仏だった。

「ペヤングフェイス」

「ペヤングって言うな」

「見分けがつきません」

「アフレコになっちゃうよ」

「アフレコとかいうな」

ボケとツッコミの判別し難いワールドである。

「タマを持つ人っていう言い方ね・・・修正したいと思います」

「なんでだよ」

「タマを持つ人って言ってみ」

「タマを持つ人」とムラサキ。

「そういうことが言える年齢になったのね」

二夜連続AV女優ではない女優に恥ずかしい言葉を言わせる脚本である。

バカリズムも福田雄一も品性において通じるところがある。

男だからだろ。

「玉を持つ人はギョクジンににります」

玉人を求めてサラゴナの村へ向かうヨシヒコたち。

ゲーム「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」においては大富豪ルドマンが娘のフローラと暮らすサラボナの街が登場する。

サラゴナの村には王のルドラン(大和田伸也)がいて娘のフロリア姫(山本美月)は病によって一年以上眠っているのだった。

フロリアはピンクの玉を持つ玉人だった。

巷の噂では山本美月は山田孝之の好みのタイプの芸能人らしい。

うっとりとフロリアの寝顔を見つめるヨシヒコなのである。

ダンジョーとメレブはたちまち・・・ヨシヒコの一目惚れを察知し、ムラサキはむかつくのだった。

「フロリアを目覚めさせるためには北の山のまもののにゃみだが必要なのだ・・・手に入れたものとフロリアを結婚させる」

言いづらい「魔物の涙」を入手してフロリアと結婚する気満々のヨシヒコである。

「魔物の涙を手に入れてフロリアと結婚しようレース」ではフライング気味に飛び出すヨシヒコだった。

「じゃあ・・・俺たちも行こうか」

「私・・・だるいから・・・行かない」

拗ねるムラサキにダンジョーとメレブは同情するのだった。

ゲーム「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」では主人公が花嫁として・・・幼馴染のビアンカとフローラのどちらかを選ぶ選択イベントがあるのだった。

何故か一部女性プレイヤーは萌えるらしい。腐ってやがる。

選択について「幼馴染を選ばないと風あたりが」などと言及するメレブである。

仕方なく男三人で魔物に対する。

森の中ではかわいいけれど兇悪な太鼓の達人のようなミミックに襲撃される三人。

「ブラズーレ」が有効だったらしい。

一方、スナック「メグ」で飲んだくれるムラサキ。

「メグ」のママは魔女(水野美紀)で恋仇の抹殺を唆す。

食べると十年眠る「ねむねむの実」をフロリアに食べさせようと「悪い女」の隈取を顕わにするムラサキだった。

しかし・・・「ねむねむの実のジュース」を作る間に時間切れとなってしまう。

正体を露わにした魔女は・・・「フロリアの血液を飲んで二十歳ぐらいに若返り、広瀬すずのようになるつもりだったのに・・・仕方ないから・・・お前の血で間に合わせる」

魔女によって緊縛されるムラサキである。

二夜連続・水野美紀だ。

雪乃さん愛好家もまた歳月を感じるのだった。

広瀬すずみたいな時もあったのになあ・・・。

「デスノート」のミサミサの監禁プレイ・ノーカット放映後の出来事だった。

サービスにつぐサービスだな。

北の山では実力派の魔物にアニメ・ヴァージョンで挑む三人。

新呪文「チアーズ」で山形県の女子大生チアガールを召喚するが目に見える効果はなかった。

仕方なく、作戦変更である。

「暮れもおしせまったある日・・・蕎麦屋に親子連れがやってきてだな」とダンジョー。

「泣かせる話攻撃か」とメレブ。

「蕎麦を二杯くれ」

「え」

「すみません・・・今日は完売で」

「ええっ」

「じゃあ・・・今から蕎麦の実から作れよ」

「えええ」

そんな話でも泣いてしまうヨシヒコだった。

ダンジョーの長い話は続き・・・。

「蕎麦の実を撒いた畑には・・・女の死体が埋まっていた」

「ひえええええええ」

「もう・・・泣ける話でもなんでもないからあ」

しかし・・・長い話に退屈した魔物はあくびをして涙がこぼれるのだった。

「チャンチャンかよっ」

こうして・・・ヨシヒコは「魔物の涙」を手に入れ・・・フロリア一点買いで・・・いつもの神父の教会で結婚式である。

なにしろ実写でメーテルになれる素材だからな。

どんなアップにも耐えるよね。

むしろアップで悩殺されるわ。

ダンジョーとメレブは魔女を撃退し、ムラサキを救出する。

「今なら間に合う」

「もういいよ」

「あきらめたらバタフライは聞けないぜ」

「魔王を倒すためだかんね」

結婚式場へと走るムラサキだった。

しかし、毎度お馴染みの「卒業」展開で・・・教会の扉をノックするのは・・・フロリアと結婚の誓いをしていた村の青年ラクトル(ガリガリガリクソン)だった。

「フロリア」

「ラクトル」

手に手をとって駆け落ちする二人である。

茫然と見送るヨシヒコだった。

ピンクの玉は残念賞だったらしい。

失意のヨシヒコと新たなる目的地を目指す仲間たち。

ヨシヒコの妹のヒサ(岡本あずさ)は今回・・・変化の杖で「全身ピンクの派手な衣装を着て写真を撮りまくる女」(林家パー子)に変身するのだった・・・。

いいぞ・・・ドラマ全体がいざないの剣と化している。

おやすみ前の一時に・・・毎日欲しいくらいだ・・・。

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2016年10月28日 (金)

火鍋の季節に口から出任せの風が吹き抜ける場所で笑う女(成海璃子)

清々しい朝の「べっぴんさん」で四葉のクローバーが手をとりあう。

集まった四枚の小葉が集う時・・・重ねた手を上にあげてくるくる回り出したらエフエフの村である。

あふれた涙が一同爆笑に変わるので困ったものだな。

そういう健気な女たちの後で・・・どす黒い十人の女たちがやってくる。

いや・・・彼女たちだって・・・世が世なら健気な女たちなのである。

愛を捜してたどりついた場所が不倫だっただけで・・・せつないことには変わりがない。

だが・・・しかし・・・地獄はどこまで行っても地獄だから地獄なんだけどな。

で、『黒い十人の女・第5回』(日本テレビ201610272359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・山本大輔を見た。ついに十人勢揃いである。内容は澱みまくっているが澱みない展開なんだな。人間の物語ばかりが素晴らしいとは思わないが・・・澱んだ人の心を毒々しく描く脚本家の手腕は凄みがある。徹底した論理構成と・・・一筋縄ではいかない人間のいい加減さ・・・この両輪が・・・爛れた地獄のハイウエイを突っ走るのだ。悪魔として敬服に値するドラマである。そして・・・船越英二の子は船越英一郎だったのだ。なんのこっちゃ。

整理してみよう。

一番、風睦(若村麻由美)・・・レストラン経営者・・・本妻。

二番、如野佳代(水野美紀)・・・劇団「絞り汁」の所属女優・・・愛人。

三番、弥上美羽(佐藤仁美)・・・東西テレビアソシエイトプロデューサー・・・子持ちの未亡人。

四番、卯野真衣(白羽ゆり)・・・アロママッサージ店経営者・・・人妻。

五番、皐山夏希(MEGUMI)・・・脚本家・・・愛人。

六番、水川夢(平山あや)・・・ヘアメイク担当者・・・愛人歴三年。

七番、文坂彩乃(佐野ひなこ)・・・アロママッサージ店勤務・・・ヒロインの女友達。

八番、相葉志乃(トリンドル玲奈)・・・アイドル女優・・・セックスフレンドありの愛人。

九番、長谷川冴英(ちすん)・・・芸能プロダクション・マネージャー・・・途中まで高井という役名だった気がする志乃のマネージャー。気のせいじゃないか。重田だった気もする。まあ・・・台本チェックは校閲じゃないしな。まして妄想レビューだしな。

十番、神田久未(成海璃子)・・・東西テレビの受付嬢・・・ヒロイン。

愛人番号は正妻を排除してマイナス1となります。

一夫一婦制度において不倫は・・・反社会的行為であるが・・・すべての犯罪がそうである以上、発覚しなければ趣味の範囲である。

ど根性ガエルでプロポーズを待ち過ぎた女によく似た卯野真衣は人妻であるが・・・結婚三年で・・・夫からの性交渉が途絶え・・・火照る身体をもてあましたらしい。

夫はドラマ「淡い三人の男」のキャスティング担当プロデューサーである火山(山田純大)であり、本名は火山真衣なのだろう。

凝りに凝った脚本だが・・・初歩的なミスがいくつかあるよね。

そういうことってあるよね。

まあ・・・とにかく・・・文月と長月が揃ってカレンダーが十月まで完成したのである。

黒い十人の女カレンダー2017年・・・販売してくれ。

十一月は・・・カフェwhite店員たちと池上穂花(新田祐里子)と我修院麗子(西崎あや)で。

十二月はオールスターでいいぞ。

中学生の息子がいる未亡人でありながら・・・上司である東西テレビのドラマ班プロデューサー風松吉(船越英一郎)の後妻を目指す美羽はライバルを蹴落とすために暴走する。

美羽にセックスフレンドの志乃と松吉との不倫関係を吹き込まれ、東西テレビバラエティ班プロデューサーの浦上紀章(水上剣星)は・・・独占欲に着火するのだった。

「志乃ちゃんと別れてください」

「どうして」

「だって不倫でしょう」

「君には関係ないことだろう」

「俺が志乃ちゃんを好きだからです」

「それは僕とは関係がないことだ」

「関係あるでしょう」

「だって・・・君より僕の方が好きなのは志乃ちゃんの問題だろう」

「え」

「だから・・・志乃ちゃんに君の気持ちを伝えるべきで・・・僕に言われても困る」

「だって不倫じゃないですか」

「それは僕と志乃ちゃんの問題で君には関係がないことだ」

「ばらしますよ」

「好きにしたまえ・・・それが君の愛の形ならね」

「う」

スキャンダルの露呈により・・・志乃の女優生命が断たれることになれば・・・浦上の立場は加害者的な色彩を帯びる。

つまり・・・ストーカー・ポジションへの転落である。

浦上の正論は・・・松吉の邪論に・・・論破されてしまうのだった。

言論なんてそんなものだからな。

ああ言えばこう言う奴は無敵なのだ。

口からは風が出る。

吐息である。

愛撫の方法としてはもっともソフトである。

松吉はおそらく様々な女たちの秘所をそっと吹いているのだろう。

フウフウしてハアハアなのである。なんのこっちゃ。

浦上を返り討ちにした松吉の前にヒロインの久未が現れる。

「話があるんです」

「いいよ」

局内の人気のない場所で対峙する二人。

「私と別れてください」

「そうか・・・仕方ないね」

「え」

「残念だけど」

「少しも残念な感じがしないんですけど」

「そんなことないよ・・・だって・・・久未ちゃんともう会えなくなるんだもの」

「連絡もしないでください」

「わかった」

「連絡先も削除して」

「うん」

「うんって」

「どうしたの?」

「なんだか納得できない」

「どうして?」

「どうしてって」

「別れたいのでしょう」

「別れたい・・・けど」

「別れないの?」

「・・・」

「わかった・・・今度美味しいもの食べよう」

「はい」

「何が食べたいの?」

「火鍋」

立ち去る松吉を見送る久未の顔に浮かぶ微笑み。

絶望の螺旋は久未の離脱を許さないのだった。

レストラン「カチューシャ」で松吉の妻である睦と歓談する佳代。

「でも・・・皆さんと仲良くするなんて無理があるでしょう」

「だけど・・・憎しみあっても仕方ない・・・被害者同志だし」

「被害者は私でしょう」

「睦さんがいけないのよ・・・あんな不倫モンスターを自由にさせて」

「え」

「愛人なんて熊に襲われた犠牲者みたいなものよ」

「そういえば・・・この間、二番(美羽)と九番(久未)が来たわよ」

「睦さん・・・全員把握しているの」

「ええ・・・まあ」

睦は愛人秘録を所持していた。

登録されたメンバーは佳代から美羽に伝わるのだった。

愛人全員と友達になりたい佳代・・・。

愛人全員を排除したい美羽・・・。

同じ不倫中の女でも目指す場所は様々である。

美羽は攻撃的である。

おそらく・・・自分に自信がないのだろう。

ライバルを排除しなければ生き残れないと感じているらしい。

松吉の全愛人を把握した攻撃を開始するのだった。

(おしっこいきたい)

炸裂する脚本家の言葉責めである。

一部愛好家には垂涎のセリフを言わされた志乃はトイレに向う廊下で美羽と遭遇する。

通常モードで挨拶する美羽に・・・潜在的な脅威を嗅ぎとる志乃だった。

志乃の担当マネージャー長谷川を捕獲した美羽・・・。

「志乃さん・・・不倫してますよ・・・でも・・・長谷川さんも不倫してますよね・・・私も不倫しているんです」

少しずつ常軌を逸していく美羽である。

やはり・・・破滅コースに乗っているのか。

松吉に返り討ちにあった浦上は仕方なく志乃にアタックするのだった。

「不倫は・・・よくないよ」

「誰に聞いたんですか」

「風さんとは別れた方がいい」

「少し・・・時間をください」

「不倫なんて・・・誰も幸せにしないよ」

「そんなこと言われなくてもわかっています・・・別れたくても別れられないから苦しいんです」

「別れようと思えば別れられるだろう」

「何も知らないくせに」

決裂である。

なにしろ・・・志乃は・・・浦上より松吉を愛しているのだ。

だからといって浦上が嫌いというわけではない。

人の作った制度がすべての人にフィットするとは限らないわけである。

浦上の車から一度は下車した志乃だが・・・浦上が引き返してくればまた乗車するのだ。

浦上の謝罪を期待する志乃。

しかし・・・浦上は・・・。

「悪いものは悪いんだよ・・・妻帯者と不倫したら奥さんを傷つけるってわかっててやってるなら加害者でしかないんだよ・・・悲劇のヒロインぶってんじゃねえよ」

「降ろして」

「嫌だ・・・俺は君を家まで送って行く」

家の前から去っていく浦上を見送り・・・胸が疼く志乃なのだった。

(いい・・・私ってエム・・・)

脚本家、やりたい放題である。

女優として伸び悩んでいる相手だからいいのかもしれないが・・・基本的には個人的な趣味なのだろう。

しかし・・・そういう女もいるだろうことは・・・経験豊富であればあるほど男にも納得できるのだった。

美羽の暴走は止まらない。

真衣の夫である火山にもリーク攻撃である。

「奥さん・・・不倫してますよ」

「なんてラッキーなんだ」

「え」

「ちょうど離婚したかったんだけど・・・簡単には行かないものな」

「ええ」

「妻が浮気したとなれば・・・有利な立場で離婚できる」

「えええ」

何故か・・・美羽は・・・浮気された男が全員「逃げれば追う心理」になると思い込んでいるらしい。

「教えてくれてありがとう・・・御礼に今度奢るよ・・・何がいい」

「火鍋で・・・」

みんなヒーヒー言いたいのだな。

「なんか・・・思ってたのと違う・・・」

美羽は・・・世界が自分の思い通りにならないことを・・・忘れようとしているらしい。

ますます・・・破滅に向っているようだな。

友愛路線を続ける佳代・・・。

もちろん・・・愛人同志仲良くしようと考えるのも・・・大奥でもあるまいし・・・充分に奇妙な思考です。

大奥だってドロドロだけどな。

カフェ「white」で愛人仲間を待つ佳代。

偶然・・・店にやってきた久未・・・。

そこへ・・・現れたのは・・・文坂彩乃だった。

あんなに・・・不倫なんてやめなよって・・・言ってた親友が・・・。

愛人仲間だったのだ。

しかも・・・打順から言って・・・打順ってなんだよ・・・愛人として先輩かもしれないのだった。

信じていた世界が崩壊する音を・・・聞いている顔の久未であった。

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2016年10月27日 (木)

べっぴんさん(芳根京子)四葉のクローバーZ(百田夏菜子)戦争が天使のドレスを作らせたのさ(谷村美月)

谷間かっ。

谷間です。

水曜日は谷間ということで・・・まずは連続テレビ小説から。

毎日でも書きたいくらいだぞ・・・それはちょっと。

まあ・・・前作があまりにもひどかったのでお口直し的にはちょうどいいよね。

売れない芸人の書いたコントみたいな半年だったよな。

まあ・・・楽しめた人もいるんだから・・・いいじゃないか。

それもそうだ。

一方・・・今回は素晴らしいヒロイン、ねっとりした脚本、終戦ではなく敗戦の気配が濃厚な演出。

天国のような朝ドラだよな。

しかも・・・姉妹になかよしトリオに宿命のライバルと・・・ヒロイン周辺要素もバッチリである。

笑いの止まらない朝ドラだよねえ。

某ドラマの悪徳弁護士が語る朝ドラヒロインから逸脱したヒロインは結構いる。

たとえば・・・「あまちゃん」は苛められっ子である。

「ちりとてちん」ではB子だ。

「ゲゲゲの女房」は売れ残り・・・おいおいおい。

しかし・・・それなりにたくましさはあった。

今回は・・・脚本家が変態なので・・・ヒロインの口が重いという・・・画期的な攻め口である。

素晴らしいの一語に尽きるな。

言いたいことが言えないヒロインで・・・すでに四週目に突入中である。

毎朝が素敵な感じになりましたねえ。

で、『べっぴんさん・第1~22話』(NHK総合20161003AM8~)脚本・渡辺千穂、演出・梛川善郎(他)を見た。ある意味で・・・長い前フリが今朝終わったのである。振り返ってみよう・・・主人公である坂東すみれ(芳根京子)は貴族院議員で服飾商社「坂東営業部」の経営者である父親・五十八(生瀬勝久)と天国からすみれを見守っている母親・はな(菅野美穂)の娘である。すみれより8歳年上の幼馴染・野上潔(高良健吾)に憧れを抱くが、気の強い姉・ゆり(蓮佛美沙子)に奪われても文句も言えずに無口でおとなしく几帳面な性格の紀夫(永山絢斗)を婿養子に迎える。時代は十年戦争の末期に突入。男たちは出征し、すみれはさくら(乾沙蘭→河上咲桜)を出産する。やがて大日本帝国は連合軍に無条件降伏し・・・お嬢様だったすみれは・・・あらゆるものを鬼畜米英に奪われてしまう。母親の形見のウェディングドレスさえ・・・焼け焦げてしまったのだ。

茫然とするすみれだったが・・・元々・・・茫然としているのでマイペースで前へと進み始める。

復員した潔は子分の岩佐栄輔(松下優也)を連れて戦後の闇市で商売を開始する。

目指すのは「坂東営業部」の復活である。

一方・・・坂東家の女中と夫の帰りを待つすみれは貯金を切り崩して糊口をしのぐ日々。

「いつまでも・・・小嬢ちゃんではいられないんやで」

潔に言われたすみれはもがくように前に進み始める。

すみれに「ものづくり」の素晴らしさを教えてくれた靴店「あさや」の主人・麻田茂男(市村正親)の店で手芸雑貨の販売を始めるのだが・・・食うや食わずの焼け跡時代なので需要はないのだった。

すみれの心にあるのは特別な誰かのために・・・特別な思いで作る一品・・・つまり「べっぴん」である。

やがて・・・すみれからすべてを奪った敵国人である新聞社通訳のジョン・マクレガー(ドン・ジョンソン)と身重の妻エイミー(シャーロット・ケイト・フォックス)と遭遇したすみれは・・・憂鬱なエイミーのためにおしめを売ろうとするが・・・西洋人には和風のおしめは受け入れ難いものだった。

西洋人のおしめを求めて・・・すみれは女中のマツ(中島ひろ子)の娘で・・・看護師の小野明美(谷村美月)に頼る。

しかし・・・かねてから「お嬢様」を憎悪していた明美は簡単には応じないのだった。

「甘いで」

だが・・・母親の示した「四葉のクローバー」の福音が・・・すみれを加護しているのである。

霊的アイテムとしての四つ葉のクローバーはそれぞれの葉に希望・誠実・愛情・幸運を宿している。

(ドラマでは母親は勇気、愛情、信頼、希望と言い換えています・・・本来の三つ葉は信仰の杖を示すもので従順(愛)、謙虚(潔白)、忠実(不変)を示すもの・・・これでも敬虔な信者として生きるには充分ですが四枚目が加わることは奇跡を現します・・・つまり、それが幸運なのでございます)

明美はすみれの「希望」なのである。

死んだ妹の代わりにすみれを愛する栄輔はすみれが「西洋風のおしめの生地」を求めればどこからか調達してくる使い魔である。

すみれはそういう「幸運の持ち主」なのである。

やがて・・・高級腕時計に導かれ・・・すみれは女学校時代の手芸倶楽部の仲間である「誠実」な良子(百田夏菜子)と再会する。

雨漏りをどんぶりで受ける掘立小屋で愛児とともに夫の帰りを待つ良子は・・・裁縫の達人であった。

すみれと良子は・・・最後の一人・・・「愛情」の君枝(土村芳)を訪ねる。

姑の村田琴子(いしのようこ)のガードをかいくぐり・・・邂逅する仲良しトリオ。

君枝は天才「デザイナー」だったのである。

「西洋風のおしめの生地」で英語の話せる看護師・明美を攻略したすみれは・・・エイミーの赤ちゃんのための「べっぴん」の発注を獲得する。

母の形見であるウェディングドレスの焼け残った部分の生地を使い・・・「商品」を再生しようと試みるすみれ・・・。

お嬢様ゆえに・・・自分が商売をすることに抵抗がある良子と君枝も・・・大好きな手芸行為にたちまち我を忘れるのだった。

君枝がデザインし、パタンナー(造型者)の良子が型紙を作り縫製し、すみれが仕上げに刺繍をする。

四葉のクローバーの魔法の光の中に・・・天使のドレスが誕生するのである。

「楽しい」

「楽しいわ」

「楽しいぜえっと」

幼児を抱える若き母親たちは・・・針と糸と布で・・・戦後を開拓するのである。

人間の営みは複雑である。

時には希望を持たなければならない。

時には何かを愛さなければならない。

時には何かを信じなければならない。

時には勇気を持たなければならない。

人と人とはそれぞれに立場を変えて営みを行う。

その果てに・・・幸福が成立することがある。

それが幸運なのである。

物語には・・・これくらい魔法がかかってないとね。

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永遠のぼくら sea side blue

モンタージュ 三億円事件奇譚

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2016年10月26日 (水)

いただきますとごちそうさまの間に(新垣結衣)

食事の時の挨拶である。

二つの言葉には違うニュアンスがある。

最初の「いただきます」には省略がある。

何をいただくのかをあえて省いて言うのである。

省かれているのは「いのち」である。

植物にしろ動物にしろ・・・「食べ物」は命のあったものである。

他の命を殺して食べることに謝するのが「いただく」ということである。

殺していることを一々思い出していると食欲が進まない人がいるので省略されているわけである。

これに対して「ごちそうさま」は「ご馳走様」なのである。

馳せ走ること・・・これは食材を調達し、調理することを意味する。

つまり・・・料理人に対するねぎらいの言葉なのである。

だから・・・奢ってくれた人にも「ご馳走様」を言うわけだ。

つまり・・・いただきますは・・・生き物全体に・・・あるいは神に・・・ごちそうさまは・・・人間に言っている言葉なのである。

いただきますとごちそうさまの間に・・・調理者が「おねだり」をするのは理にかなっている。

相手に感謝される前に・・・とりひきをすましてしまうことは・・・大切なのである。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第3回』(TBSテレビ20161025PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・土井裕泰を見た。就職活動の果てにいろいろとこじらせた無職の二十五歳・・・森山みくり(新垣結衣)は独身男の津崎平匡(星野源)の専業主婦として雇用され・・・性生活なしの同居生活を入籍しない結婚生活としてスタートする。みくりにとってヒラマサは理想の雇用者・・・ヒラマサにとってみくりは理想の従業員だったのだが・・・独身のプロを称するヒラマサの中で・・・みくりから発するフェロモンによる化学変化が起こっていることを・・・みくりはまだ知らないのだった。

表面上は穏やかな朝食風景。

しかし・・・みくりの香りが残った寝具で眠った夜を境に・・・ヒラマサの中で・・・みくりを異性として意識する側面が膨張しているのだった。

「たかが残り香、されど残り香」なのである。

朝食中にみくりは従業員として「炊飯器の購入」を提案する。

みくりと会話することが「異性との交流」になった瞬間から・・・心穏やかではいられないヒラマサは緊張に耐えきれず・・・会話にも消極的なのである。

「おまかせします」

素っ気なく言って食卓からヒラマサは撤退するのだった。

プロの独身は・・・恋愛のど素人だったのである。

雇用主の鑑だったヒラマサの「変化」に戸惑う従業員のみくりである。

テレビ番組に激しく感化されているみくりはたちまち「大改造!!劇的ビフォーアフター」的妄想で状況を検討するのだった。

劇的なアフターの理由・・・それは・・・。

同性愛者的傾向のある沼田(古田新太)と一夫一婦制度の消極的否定者である風見涼太(大谷亮平)によりお宅訪問されてしまった夜・・・ベッドの中で・・・みくりがヒラマサを異性として意識したことを悟られてしまったから・・・。

しかし・・・ヒラマサが超能力者である可能性は低いのでそんなわけはない。

次なる劇的なアフターの理由・・・それは・・・。

洗濯物に混じっていたヒラマサのパンツを洗ってしまったこと。

従業員としてみくりは「信頼の証」を得たと喜び勇んで選択したのだが・・・。

ヒラマサは動揺し・・・「つい、うっかり」とパンツを回収したのだった。

「ヒラマサさんにとってパンツは自意識の壁として・・・防衛すべきものだったのかも」と心理学的に分析するみくりだったが・・・。

早い話が「女性に自分の下着を見られることに不慣れな」ヒラマサだったのである。

みくりは・・・そのことから・・・ヒラマサが・・・女性との性的交渉の未経験者である可能性を類推するが・・・雇用者のプライバシーに関わることなのでそれ以上は踏み込まない。

っていうか・・・みくり・・・自分が女である自覚に乏しい傾向があるぞ。

伯母の百合ちゃんと同じで・・・「処女」なのか。

少なくとも男性のパンツには命の残滓がこびりついているという意識はないようだ。

津崎家にいるのは童貞と処女なのか・・・そういう偽夫婦なのかとお茶の間はニヤニヤするしかないのだった。

家からもってきたレンジでチンする炊飯器ではなくて・・・まぜご飯や五穀米が炊ける炊飯器を求めて開店35周年の家電店に出張する従業員みくりだった。

そこそこハイスペックな炊飯器を購入である。

その帰り道「専業主婦を夢見る女性の敵ナンバーワン」のセックスハンター風見がみくりをキャッチするのだった。

百合にとっては「悪いイケメン」だが・・・あらゆる男を異性として意識しないらしいみくりにとっては合理的で思いやりのある人間に映る風見らしい。

重い炊飯器を家まで運んでくれた風見に素直に感謝するみくりなのである。

もちろん・・・風見にも悪意はない・・・ただもてるだけなのである。

ヒラマサの勤務先「3Iシステムソリューション」では家庭訪問に参加できなかった妻子持ちの日野(藤井隆)が家族ぐるみのお付き合いのための「ぶどう狩り」をヒラマサに提案する。

頼まれると断れないタイプのヒラマサはまたしても同意してしまう。

そして・・・みくりを異性として意識してから一方的に自分が気まずい状況から逃避するためにあえて残業も引き受けるヒラマサだった。

(このままでは・・・いけない・・・いっそのこと疑似恋愛モードでのりきろう)

二次元相手の恋愛経験さえ不足しているのではないかと推測されるヒラマサ・・・三十五歳・・・彼女いない歴三十五年・・・独身のプロである。

「おかえりなさい・・・」

「ただいま・・・もどりました」

混ぜご飯を炊いたみくりは・・・屈託なく・・・風見との出会いについて話す。

疑似夫モードだったヒラマサは・・・たちまち嫉妬の虜になって自分を見失う。

そして・・・自分の部屋へ撤退するのだった。

ヒラマサの心理を読み切れないみくり。

まさか・・・ヒラマサが自分と風見の仲を勘ぐるなどということは想定外らしい。

ヒラマサは自分の心の闇に向きあい絶望するのだった。

ヒラマサは「恋愛」についての経験とそこに発生した感情の深くて苦い複合体を精神に秘めている・・・つまり・・・恋愛行為に関して劣等性のあるコンプレックスを持っていた。

風見は・・・恋愛において優越した憧れの存在であり・・・その存在と自分を比較することは嫌悪を伴って激しく自分を苛む劣等感を顕在化させるのだ。

ヒラマサは理性で劣等感をねじ伏せ・・・契約結婚に新たなる一項を付加する。

「恋愛は自由」

「契約については秘匿」

「雇用中は世間体を憚る」

「雇用関係を恋愛相手に伝える場合は互いの許可を得ること」

「恋愛の結果、結婚する場合は契約を解除する」

ヒラマサは雇用者として暗澹たる思いで・・・従業員に向きあうのだった。

みくりは・・・従業員として解雇される可能性に・・・不安を感じるのである。

つまり・・・二人の心は・・・すれちがっています。

身体が結ばれてもいないのにか・・・。

一同大爆笑である。

そして・・・ついに辛抱しきれなくなったヒラマサは2LDKに転居してみくりを家政婦部屋に隔離することを決意するのだった。

転居大作戦である。

従業員として物件めぐりに参加するみくり。

結局・・・新居探しというデートをする二人だった。

就職した社会人として親友の田中安恵(真野恵里菜)はみくりの遥か先を暴走中の元ヤンキーである。

結婚して一児の母だが・・・夫の浮気を疑って・・・壁ドン威圧説教をアイドリングしている。

「積極的な男は・・・浮気にも積極的だかんね」

「消極的な男は・・・墓場まで消極的かもね」

雇用者が「死ぬまで童貞であること」に言及するみくりだった。

そして・・・「ぶどう狩り」当日・・・子供が風邪をひいてまたしても日野がキャンセルを申し出・・・沼田と風見がやってくる。

そして・・・足として召喚される百合だった。

休日出勤で・・・勝沼ぶどう郷あたりの楽しい一時を体験するみくり。

みくりにその気はないのだが・・・風見と親しげに話しているのを見るだけで・・・目の前が暗くなるヒラマサだった。

大学時代の同期生のイケメン田島(岡田浩暉)から手軽な浮気相手として求められ憤慨中の百合は風見に手厳しい対応をするが・・・みくりは雇用者の職場の後輩でもある風見をそれとなくフォローするのである。

たちまち・・・ドス黒い劣等感に苛まれるヒラマサ。

和気藹々で会話する男女に・・・慣れないヒラマサは・・・蒙古襲来の頃からの寺院である甲州・大善寺の国宝・薬師堂に逃避する。

雇用主の不在を察知し・・・追いかけるみくり。

二人は平安初期の作と考えられている薬師三尊像の前で厳粛な気持ちになる。

「こういうところでは・・・嘘がつけない気がします」

「ですね」

「僕は・・・風見くんのようにはなれないので・・・地味なので」

つい・・・引け目を口にするヒラマサ。

「でも・・・私はヒラマサさんが一番好きです」

「え」

「つまり・・・雇用者として・・・」

「・・・」

しかし・・・ヒラマサの心に・・・沁み込みまくる「好き」の一言だった。

「もしも・・・みくりさんが誰かと結婚したとしても時々・・・うちの家事をしてもらいたいと考えます」

「はあ・・・」

その言葉に何故か「淋しさ」を感じるみくりだった。

それはね・・・二人がもう恋をしているからだよと叫びたいお茶の間だったが・・・お茶の間の声は登場人物には届かないのが前提である。

疑似夫婦に置き去りされたイケメンとこじらせた処女と津崎夫妻を同性愛者同志の擬装夫婦と疑う沼田はそれなりに余暇を楽しむのだった。

もやもやした二人に・・・見晴らしのいい舞台が用意される。

「なぜなの・・・教えておじいさーん」

ハイジとなるみくりだった。

「浸透力・・・・半端な~い」

ヒラマサの心はすでにみくりの「好き」で満ちていたのだった。

急いで引っ越す必要はないと考えるヒラマサ。

「好き」が浸透して空気が清浄化されたらしい。

みくりの炊きこみご飯は美味しいのだ。

雇用者は従業員にリクエストできるのだ。

それでいいじゃないか。

高望みなんて・・・もっての他である。

諦念かよっ。

後日・・・外資系の化粧品会社「ゴタールジャパン」の同僚たちと風見に遭遇する百合。

風見に芽生えた好意は「交際相手をゴミのように捨てた男」の記憶によって粉砕されるのだった。

百合に蘇る「イケメンは悪の鉄則」である。

まあ・・・悪意のない悪ほど始末の悪いものはないからな。

「大麻が悪だなんていう世間の方が愚かなんだ」なんて言って・・・愚かな人を悪の道に引きずり込むタイプである。

「世間が悪だと言えば悪なんだからねえ」

「悪ってそういうものだよねえ」

「喫煙の方がマリファナより健康に悪いよねえ」

おいおいおい。

マリファナの成分は確実に脳細胞を破壊する毒物です。

日常を取り戻したかのように見える雇用者と従業員によって構成される津崎家。

しかし・・・悪の権化である風見は・・・二人に目をつけていたのである。

「契約結婚なんでしょう」

ヒラマサは・・・苦手な相手につけこまれたらしい。

道端で・・・風見に声をかけられるみくり。

そもそも・・・待ち伏せしているわけだよな。

恐ろしいな悪いイケメンは・・・。

「シェアの話・・・どうですか」

「え」

どうやら・・・みくりはヒラマサと風見によってシェアされるらしい。

ゲシュタルト(人格)崩壊を発症したみくりはサザエさんと化すのだった。

人妻をシェアするって・・・つまり3Pじゃないか。

おいおいおいおい。

何をみくりに咥えさせるつもりだ。

いや・・・みくりはサザエさんになったのであってどら猫になったわけではないぞ。

ヒラマサはどうしてみくりが風見にいただきますされてごちそうさまされることに同意しちゃったんだよう。

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2016年10月25日 (火)

バベルの塔で抱きしめて(山田涼介)

兄弟に確執があり、兄が弟を殺す話は定番である。

たとえば本年度の大河ドラマ「真田丸」は兄の真田信之が弟の真田信繁を殺す話である。

戦国時代にはありふれた話で織田信長は弟の織田信行を殺しているし、信長の子の信雄は弟の信孝を殺している。

江戸時代になって間もなく徳川家光は弟の徳川忠長を殺す。

そういう意味では兄弟というものは殺し合うものなのである。

聖書におけるカインとアベルの場合・・・世界にはたった四人しか人間がいない。

両親であるアダムとイヴと・・・その子であるカインとアベルの兄弟である。

イヴが人類史上、初めて生んだのがカインで・・・次に生んだのがアベルなのだ。

その兄が弟を殺したのだから・・・人類は三人になってしまったのである。

そしてこの時点では兄が弟を殺す確率は百パーセントなのだ。

もちろん・・・あくまでユダヤの教典の世界の話である。

ドラマでは現代社会という人類が繁殖しまくった社会の話になっているので・・・その点の処理がなかなかに難しい。

特に・・・「兄の伴侶を弟が慕う話」に傾斜しているわけである。

この手の話も定番である。

古代オリエントの神話には「二人兄弟の話」がある。

兄のアヌプが畑で働き、弟のバタが羊飼いであることはカインとアベルと同じ。

しかし、アヌプには妻がいて・・・この妻が夫の留守中に夫の弟であるバタを誘惑する。

バタは義理の姉の誘惑を拒絶する。

するとアヌプの妻は夫に・・・弟に乱暴されたし虚偽の申告をする。

アヌプは弟を殺そうとし・・・バタは仕方なく逃亡するのである。

今の処・・・「カインとアベル」よりは「アヌプとバタ」よりの展開ですな。

で、『カインとアベル・第2回』(フジテレビ20161024PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・葉山浩樹を見た。「聖書」においてアベルを殺したカインは神によってエデンの東から追放されてノドの地に住む。兄弟を失ったアダムとイヴは三番目の子供セツを生む。一方でカインはノドで妻を得る。もちろん・・・女がイヴしかいないのでカインの妻は同母妹なのである。カインの妻は懐妊しエノクを生む。時は流れてアダムの子孫、カインの子孫、セツの子孫によって世界に人が満ちて行く。

地に満ちた人は奢り高ぶり・・・神に対して挑戦的になる。

シンアルの地の人々は天に届くほどの塔を作りはじめる。

神を畏れぬ振る舞いに神は人々の言葉に混乱を与えた。

人々はお互いの意志疎通が困難になり・・・離散した。

そして塔作りは放棄された。

その地はバベル(ちんぷんかんぷん)と名付けられ・・・バベルの塔は・・・人間の傲慢の象徴となった。

高田総合地所株式会社の経営者一族の子供として自由奔放に育った高田優(山田涼介)は敬語もろくにつかえない社会人だが・・・後継者の一人として優遇されているダメ人間である。

しかし・・・バカな子ほど可愛いので父親で社長の高田貴行(高嶋政伸)や祖父で会長の高田宗一郎(平幹二朗)は優を甘やかす。

弟の優と違い、後継者候補として厳しく育てられた長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)は兄として弟を可愛いと思う気持ちもあったが・・・それだけではすまない複雑な感情も心に忍ばせていた。

後継者教育の一環として・・・営業部・第5課から営業部長・団衛(木下ほうか)が率いるプロジェクトチームに派遣される優。

アウトレットモール開発のために・・・名店確保の任務についた優は周囲のアドバイスを無視する独断により一度は失敗する。

しかし・・・同僚の矢作梓(倉科カナ)のアシストにより逆転勝利を治めるのだった。

梓は隆一の恋人であるが二人の交際は秘匿されている。

隆一には橋本衆議院議員の娘である綾乃(宮地真緒)との縁談があった。

父・貴行の勧める縁談を無碍に断ることができず・・・隆一は梓との交際を公表する機会を窺っていた。

折悪く・・・高田総合地所がタイ国で勧める合併事業にトラブルが発生する。

合併相手であるバンコクのデペロッパー「BDC」に巨大な負債があり計画の見直しを迫られたのである。

「場合によっては撤退してもいい」と言う貴行に「危機を回避してみせます」と応ずる隆一。

隆一は新たなる融資先を開拓し・・・十億円以上の資金を獲得することで・・・父親に梓との交際を承認させる覚悟なのである。

そういう父や兄の苦労は知らず・・・梓に仄かな恋心を抱いた優は仕事になんとなく前向きになるのだった。

社長の息子である優に配慮した団部長は・・・優と梓にコンビを組ませ・・・アウトレットモールの設計に関与させる。

そのために設計部から長谷川守(小林隆)というお目付役も添えるのだった。

長谷川はアウトレットモールのラフ・デザインを描いた設計士である。

団部長はアウトレットモールの本設計を・・・大御所建築家の神谷仁(竜雷太)に依頼することを三人に命ずる。

実は神谷仁は宗一郎会長の学友だった。

原案的には「神」にあたる存在である宗一郎は・・・孫に対する慈愛に基づき・・・神谷仁に根回しを行う。

「孫が担当になったんだよ」

「私はビジネスに私情は持ち込まないぞ」

「もちろんさ・・・ただ・・・孫について君の意見を聞きたいのだ」

「酒の肴ということだ」

「そうだ・・・孫は可愛いからなあ」

ちなみに宗一郎を演じる平幹二朗はオンエア当日、故人となった。

まさに・・・神なる存在となってしまったのである。

ご冥福を祈ります。

神谷仁はアウトレットモールのイタリア広場に「バベルの塔」のようなものを設置した素晴らしい設計図を仕上げる。

このドラマの美術スタッフの腕前は明らかに微妙だった。

しかし・・・「本場トスカーナの石材を使用しろ」などと・・・大御所は予算を度外視した発言で優たちを困惑させるのだった。

設計段階で躓き・・・行程表に遅滞が生じる事態である。

責任をとって長谷川はプロジェクトチームから外されるのだった。

父親の貴行から・・・「相手は大御所・・・素人が下手に説得しようとするな・・・妥協点を探るんだ」とアドバイスされる優。

アドバイスに従い本物とイミテーションの混合という案を提示する優だったが・・・大御所の反応は鈍い。

あせった優は「どうしても先生のお名前が必要なんです」と失言をしてしまうのだった。

「あれはまずかったわね・・・」と梓。

「必要だから必要だと言っただけなのに・・・」と何が悪かったのかよくわからない優だった。

そういう空気の読み方は知らない男なのである。

「弟はどうかな」

寝物語に恋人に問う兄だった。

「なかなかユニークね」

恋人の好意的な答えに戸惑う兄なのである。

「父に紹介する話だが・・・もう少し待ってくれないか」

「ええ」

優から悪気がないとはいえ・・・兄の見合い話について聞かされた梓の心は微かに揺れていた。

宮地真緒(32)は「まんてん」(2002年)、倉科カナ(28)は「ウェルかめ」(2009年)で共に連続テレビ小説の主人公を演じている・・・いわゆる朝ドラヒロイン対決である。

半年で一人、毎年、二人(場合によっては三、四人)ずつ誕生するからサバイバルも大変だよな。

難航する大御所との交渉。

「あまり定石にこだわらず・・・自由にやっていいのじゃないかしら」

「そうかな」

お姉さん的立場の梓におだてられてその気になる優だった。

チームから外れた長谷川は・・・秘策を優に授けるのだった。

大御所の作品歴を分析して・・・建材の変更を目指す優。

そのために・・・即席で・・・建築学を学ぶ姿をお茶の間にアピールするのだった。

もう少し・・・「何を学ぼうとしているのか」・・・示すべきだよね。

とにかく・・・実は「違いのわかる天才性」を備えているらしい優は・・・大御所の作品の前で待ち伏せをするのだった。

「そんなに建築が好きだったのか?」

「僕は素人ですが・・・素晴らしいものとそうでないものはわかります・・・これは素晴らしい」

「・・・」

「一つ、提案があります」

「私を説得するつもりか」

「はい」

大御所はガラスを素材として愛していた。

「ガラスで・・・設計してください・・・予算の範囲内で」

「よかろう」

こうして・・・バベルの塔はガラスの塔になったのだった。

神々の夕べ。

「どうだった・・・」

「さすがはお前の孫だ・・・抜群に可愛かったぞ」

「そうか」

「若い頃のお前にそっくりだった」

「おいおい・・・よせよ」

「まんざらでもないだろう」

ニヤニヤする会長と大御所である。

計画遅延の責任をとらされ群馬県に飛ばされることになった長谷川。

「ひどいじゃないですか」

「人事のしたことだ・・・」

「でも・・・」

「仕方がない・・・お前が手柄をたててしまったからな」

「・・・」

小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)と呼び出した梓に甘える優。

「理不尽じゃないですか」

「仕方ないわ・・・会社ですもの」

「そんなあ」

「誰かにとって正しいことが・・・誰かにとって理不尽なことなんて・・・よくあることよ」

「・・・」

「よつ葉銀行」の頭取・田島文彦(須永慶)などと交渉を重ねた隆一は・・・ついに資金調達に成功する。

「バンコクの件は・・・なんとかなりそうです・・・実は・・・結婚したい女性がいるのです」

「なんだって」

手柄を盾に・・・おねだりをする長男に折れる父親だった。

何故か・・・梓に呼び出されウキウキ気分の優。

しかし・・・レストランには梓とともに優の父親と兄が待っていた。

「優・・・実は彼女とは結婚を前提に交際している」

「え」

兄に告げられて戸惑いを隠せない優だった。

優は衝撃を感じたのかもしれないが・・・よくわからないのだった。

まあ・・・もうすぐ殺されてしまう可哀想な子だと思えばたいていのことは許せるよね。

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2016年10月24日 (月)

味方は十万、敵は三十万、けれど情熱で勝る私たち(長澤まさみ)

気分で戦に勝てるかどうかは・・・やってみないとわからないわけである。

もちろん・・・同じ戦力であれば戦意や士気が高い方が有利だとも言える。

だが・・・竹槍と重爆撃機では勝負にならないことが多いようだ。

勝負には絶対はないが・・・いくつかの勝利のセオリーはある。

たとえば・・・先手必勝である。

先に相手を殺してしまえば・・・いかなる反撃も受けないのである。

昌幸は信繫に・・・討って出ることを推奨したが・・・史実ではそうならない。

どうして・・・そうなってしまったか・・・ドラマではいくつかの伏線が張られ始めているようだ。

次に情報戦である。

敵を知り己を知れば百戦危うからずなのである。

大坂城には多数の間者(スパイ)が潜入していたという。

なにしろ・・・戦力のほとんどが・・・浪人なのである。

浪人ということは・・・何者か不明ということなのである。

しかし、間者は浪人ばかりではない。

豊臣家の頂点には豊臣秀頼がいるが・・・その上には淀殿がいる。

淀の母親の出自は織田氏であるために・・・そこには織田家の関与がある。

淀の従兄弟であった織田信雄(常真)は放逐された家老の片桐且元とともに大坂城を去った。

つまり・・・徳川の間者だったのである。

淀の叔父である織田長益(有楽斎)は城内にあるが・・・長益は徳川との交渉役である。

つまり・・・徳川の間者なのだ。

秀忠と江の娘である千は・・・豊臣家に輿入れしてきたが・・・当然、お付のものは皆、忍びである。

大坂城の情報は筒抜けなのである。

圧倒的な不利に立ち向かい・・・真田幸村の戦が始る。

で、『真田丸・第42回(NHK総合20161023M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は黒田官兵衛・長政父子の元家臣・後藤又兵衛基次の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。五人衆誕生で・・・大坂城ゴレンジャー的な感じが醸しだされてきましたな。つまり真田幸村はレッドのポジション。後藤ブルー、長宗我部イエロー、毛利グリーン、明石ピンクという感じでございましょうかああああああ。定番では・・・奸臣としての大野兄弟、良将仲間の幸村と又兵衛という関係が・・・ここまでは・・・割と一生懸命な大野治長・・・非常に面倒くさい後藤又兵衛という描写になっており・・・一同爆笑につぐ爆笑でございまする。まあ・・・ちゃんとした人間ならば・・・浪人していないという考え方もあるので・・・こういう感じに描かれていてもまったく不自然ではないですよねえ。又兵衛の場合は実の息子の長政より黒田勘兵衛に愛されて・・・結局、ここにいるわけですから・・・。関ヶ原では四十才になったばかりの又兵衛は石田勢相手に猛将ぶりを発揮したわけですが・・・すでに五十半ばとなっており・・・老いの気配は隠せなかったでしょうしねえ・・・。それでも・・・幸村は・・・おそらく・・・又兵衛の心を掴んでいくのでしょうな。それが・・・真田幸村だから。十万人がいる大坂城というスペクタクルは見せられないにしても・・・むさ苦しさ抜群の城内が本当に楽しいですねえ。

Sanada42慶長十九年 (1614年)十月十五日、豊臣方は大坂城下に放火。ついで片桐且元の茨木城を攻めるが撤退。大坂城周辺を泥土化するために淀川の堤防の破壊を開始する。すでに幕府軍が進出し、破壊工作をする豊臣方と散発的な戦闘状態に突入する。十一月朔日、淀川堤で一昼夜に渡る銃撃戦が展開し、両軍の銃弾が尽きて終息。二日、豊臣方が天王寺方面に放火。幕府軍の先鋒、藤堂高虎は河内から木津川口に進出。福島正則の一族である福島正守、福島正鎮が大坂城に入城。三日、徳川秀忠は岐阜城に着陣。軍勢の集結を待つ。四日、徳川家康は且元を二条城に呼び出し密談。豊臣勢と幕府軍が平野付近で対峙。六日、紀伊和歌山の浅野長晟勢一万が住吉に着陣。家康は天王寺の焼却を命ずる。七日、伊達政宗が二条城に出仕。備前岡山の池田忠継(家康の外孫)の兵一万が中島に進出。守備をしていた織田有楽斎は撤退。十日、秀忠の先鋒隊が伏見城に到着。大坂城では出陣か篭城かの軍議が続き、篭城と決する頃には京、奈良に幕府軍が続々到着し、摂津、大和、河内に流入が開始される。城方は片桐且元の茨木城を攻めるが撤退。大坂城周辺の村落に火付けし焼き払った後で、天満川、木津口の合流地点の野田、福島、木津川口、博労淵、大和川の鴫野、今福、そして東南の攻め口にそれぞれ砦の構築を開始する。 十一日、家康と秀忠が二条城で対面。十三日にそれぞれ出陣と定める。

真田幸村は真田丸の築城に着手する。

大坂城の本丸、二の丸、三の丸の外に堀があり・・・その先の寺町に幸村は着目していた。 背後には谷間があり、前方に篠山と呼ばれる丘陵がある。

真田丸の西側は守備側にとって弱点と考えられる。

そこをカバーするための砦である。

全国各地から真田の忍びたちが続々と集結している。

彼らは渡りの大工衆を伴っていた。

幸村は淀殿から・・・金銀を授かっている。

「金に糸目はつけんぞ・・・」

普請の支配を任された幸村の従兄弟にあたる真田采女正信倍は城作りの名人だった。

上田城はもちろん、伏見城や大坂城の普請にも加わっている。

合戦において戦場での普請は必要不可欠のものであった。

秀吉の墨俣築城のように敵地で付け城を構築するためにはそれなりの作法が必要となるのである。

天守閣から遠望する秀頼は目の前で町屋が城に変貌していく様子に感嘆した。

「なにやら・・・幻術のようじゃな」

「あれもまた・・・真田の秘術と申せましょう」

秀頼の側衆に混じり・・・控えた後藤又兵衛が応じる。

「見よ・・・いつの間にか家が消えたと思ったら・・・そこに櫓が立っている」

「家屋は解体されると同時に建材となるのでございます」

「おそらく・・・前もって改造されていたのでしょう」

毛利勝永が推測を口にする。

「なに・・・」

「真田殿が入城する前から・・・あの村は・・・砦とされるために・・・改装準備されていたのです」

「なんと・・・」

「おそらく・・・地下には蔵が作られていたと思われまする」

「お・・・また・・・あらたな人手があらわれたぞ・・・まるで寺に人がたかっているようじゃ」

又兵衛は板塀の内側に鉄板が張られていることに気がつく。

真田丸は鉄甲砦だった。

土掘り人足たちがたちまち・・・砦を堀で囲んでいく。

堀は深く長い・・・。

そして・・・堀の内にさらに柵が構築されていく。

又兵衛は・・・攻め手となって・・・砦の攻略を想像していた。

堀と柵にはばまれ右往左往する兵を見下ろす銃眼。

(これは・・・攻めれば・・・死体の山ができるわいな・・・)

真田丸の陣所で瞑目する幸村の前に才蔵が現れた。

「一の陣は返り討ちに遭いました」

「・・・」

先代幸村を惨殺された後・・・真田忍軍は家康暗殺に着手していた。

二条城に公家衆を装って侵入した鎌原衆は服部半蔵の影の軍団と城内で激突。

「半蔵を五人まで倒しましたが・・・鎌原衆は全滅いたしました」

「次はいよいよ・・・大坂への道中じゃな」

「河内に出るか・・・大和に出るか・・・佐助は大和と読んでおりまする」

「軍勢を出して強襲すれば・・・造作もないが・・・城方は・・・篭城に固執しておる」

「真田の鉄砲忍び百人衆で待ち伏せしまする」

「果たして・・・狸親父が罠に飛び込んでくるかのう・・・」

「戦は一か八かでございましょう」

才蔵は微笑んだ。

幸村も笑みを浮かべた。

久しぶりの戦に・・・心が踊り・・・二人は若返ったような心地になるのだった。

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2016年10月23日 (日)

未亡人の耳となった女(武井咲)

人間の暮らしには「衣食住」が必要だと言う。

ドラマでも「衣食住」はテーマと成り得るポイントである。

最近では安易に「食」にスポットがあてられて・・・今季も「給食のおばさん」とか「コック警部」とかが主人公になったりしている。

夏ドラマで「家売るオンナ」がヒットした関係で「住」へのシフトもあり月9の主人公はデベロッパーだし、深夜ドラマに不動産屋がいたりもする。

そして・・・朝ドラ「ぺっぴんさん」は・・・今は戦後まもなくで食う寝るところが重要だが・・・これからは「衣」が重要な要素となっていくのである。「校閲ガール」のヒロインはファッションバカだしな。

江戸時代という・・・徳川家が作り上げた閉鎖空間では・・・「お家」が重要になる。

戦乱を避けるための・・・平和至上主義社会は・・・完全な牢獄社会でもあった。

揺るぎない階級制度を前提に・・・武家が民を統率する社会である。

農民から年貢を収奪し・・・武家は米を流通させる。

藩主は幕府から・・・領地の管理を委任されているが・・・それを取り上げられれば・・・一族郎党は路頭に迷うのである。

「忠臣蔵」はまた・・・「お家断絶」によって「衣食住」を取り上げられた人々の物語でもある。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第5回』(NHK総合201610221810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・黛りんたろうを見た。全二十話予定なので起承転結の四分割でいえば「起」の部分の最終話ということになる。赤穂事件の発端となる浅野内匠頭の切腹と播州赤穂浅野家の改易が幕府によって命じられ・・・赤穂藩士は赤穂浪士となったのだった。

Photo浅野内匠頭長矩(今井翼)の正室・阿久里(田中麗奈)は落飾して瑤泉院(ようぜんいん)となった。

そして・・・実家である備後国三次(みよし)藩の江戸屋敷(赤坂)に隠遁する。

浅野家は・・・豊臣秀吉の正室・高台院の親戚筋である。

本家は浅野長政の子・長晟を初代藩主とする安芸国広島藩四十二万石である。

長晟の後は光晟 - ­綱晟 - ­綱長と続いている。

四代藩主の綱長は延宝元年(1673年)に家督を相続している。

長晟の弟である長重の子・長直は播磨国赤穂藩五万石の初代藩主となる。

赤穂浅野家は長友 - ­長矩と相続した。

本家二代目の光晟の庶兄である長治は備後国三次藩五万石の初代藩主となる。

瑤泉院は長治の娘なのである。

長治には男子がなく三次浅野家は・・・本家から光晟の子、長照を養子として家督を継がせる。

後継となった長照にも男子がなく・・・本家から綱晟の子で綱長の弟の長澄を養子に迎えて隠居する。

瑤泉院の実父・長治は延宝三年(1675年)に死去しているが・・・瑤泉院は長照の養女となっており・・・隠居中の養父の元に出戻ったことになる。

娘婿の浅野内匠頭長矩の刃傷事件により連座制度に基づき、長照は江戸城登城禁止処分を受けている。

三次浅野家の当主である長澄は国許にあったという。

長澄の兄である浅野本家の浅野綱長は連座の恐怖に慄いた。

親戚筋においても浅野内匠頭長矩の凶行は明らかなのである。

まして・・・浅野内匠頭長矩の家臣一同の困惑は・・・凄まじいものであったと思われる。

罪人として・・・藩主としての葬儀も許されず泉岳寺に葬られた長矩の墓前で・・・側用人の片岡源五右衛門高房(新納慎也)や物頭の礒貝十郎左衛門正久(福士誠治)は殉死寸前に住職に説得され、髻を切るに留める。殉死もまた幕府の禁じるところ・・・すなわち御法度に触れる行為だった。

生前の長矩の勘気を受けて浪人となっていた不破数右衛門(本田大輔)も泉岳寺にやってくる。

家臣たちは不破数右衛門を制止するが・・・。

「お家断絶となれば・・・誰もが浪人・・・かっての恩に報いようとする心を止められぬはず」と泣く数右衛門だった。

それほどに重い主従の「情」なのである。

つまり・・・捨て犬も飼い主を慕うわけである。

先代・長友、先々代・長直と三代に渡って浅野家に仕えた前江戸留守居である隠居した堀部弥兵衛金丸(笹野高史)も片岡源五右衛門や礒貝十郎左衛門に詰め寄る。

「せめて・・・一目お会いしたかった」

「殿の亡骸は・・・お見せすることも惨い有様でござった」

「しかし・・・」

「揉めても詮無きことでしょう」

堀部弥兵衛の娘・ほり(陽月華)を妻として養子となった堀部安兵衛(佐藤隆太)は義父を宥。

しかし・・・古参の藩士たちからは「新参者に何がわかる」と声があがる。

「お家断絶」の前に動揺する元・赤穂藩士たち・・・。

墓前で瞑目する安兵衛に・・・堀内道場の四天王の一人で浪人の佐藤條右衛門(皆川猿時)は言葉をかける。

「主を失うのは哀しいものだ・・・もっとも俺には失うべき主もいないがな」

飼い犬を羨ましく感じる野良犬である。

その頃・・・浅野屋敷では・・・屋敷を引き渡す準備が整っていた。

侍女たちは暇を出されるのである。

しかし、老女の滝岡(増子倭文江)はきよ(武井咲)とつま(宮崎香蓮)を瑤泉院の部屋へ誘う。

「妾は・・・これより・・・実家に戻る・・・つまにはついてきてもらいたい・・・そして・・・きよには妾の耳となることを頼みたい」

「お引き受けいたします」

「耳」とは・・・密偵になるということである。

墓前に参ることも憚られる瑤泉院に代わり・・・成瀬(押元奈緒子)とともに泉岳寺に参るきよだった・・・。

男たちは殺気だっていた。

十郎左衛門さえも・・・「女には無関係のこと」と冷たく言い放つ。

しかし・・・きよも言わずにはいられない。

「私は・・・瑤泉院様の耳になるのです」

絶句する十郎左衛門だった。

その言葉を聞いた仙桂尼(三田佳子)はきよの覚悟を確かめるのだった。

「耳になるとは・・・生涯を忠義に尽くすということですよ」

「そのつもりでございます」

きよは・・・十郎左衛門への愛のために・・・用いられた瑤泉院への義を誠にする他はないのだった。

瑤泉院の心には・・・吉良上野介義央(伊武雅刀)の始末があった。

夫の犯した刃傷沙汰とはいえども・・・そこに夫の遺恨があったことは明らかである。

喧嘩両成敗という御法度がある以上・・・吉良上野介に咎めがないことは看過できないのである。

武士の本懐を遂げること・・・つまり吉良上野介の殺害は・・・瑤泉院にとって避けられぬ道であった。

きよはそのための「耳」となったのだが・・・まだ実感はないのだろう。

とりあえず父・勝田玄哲(平田満)のいる浅草唯念寺に戻るきよであった。

そこに兄の勝田善左衛門(大東駿介)が現れる。

「磯貝十郎左衛門は・・・国許に戻るそうだ」

兄はきよの心を知ってか知らずか幼馴染の噂をする。

きよは急ぎ・・・十郎左衛門を訊ねるのだった。

「国許で・・・御家老に・・・殿の御最後を伝えねばならぬ」

「江戸にお戻りなされますね」

「それは・・・わからぬ・・・しかし・・・きよ殿が江戸におることは忘れぬ」

きよと十郎左衛門の恋は・・・風前の灯のように・・・揺れている。

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2016年10月22日 (土)

嘲笑された村の女に桃色のドレスを(山田孝之)

夢は身近な異世界である。

定番の状況を持つ人も多いだろう。

トイレやテストにまつわる夢は・・・現実世界の残滓である。

レンタルビデオの延滞についての夢を見る人はいるだろうか。

とっくにつぶれたレンタルビデオ店のビデオケースを発見して背筋が寒くなるのである。

夢の中では・・・その店は何故か健在なのである。

そして・・・返済日はなぜか一年以上過ぎているのだ。

とんでもない延滞料金が発生しているのである。

しかも・・・そのビデオを借りた覚えがないのだった。

そういう事件があったのだ。

ルールにルーズな同居人が・・・勝手に借りて放置したのである。

頭が爆発しそうな怒りを覚えて・・・あまりの激怒に目が覚めるのだった。

そして・・・思うのだった。

人生は山あり谷ありだと。

で、『勇者ヨシヒコと導かれし七人・第3回』(テレビ東京201610220018~)脚本・演出・福田雄一を見た。ゲーム「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」では世界に散らばっている「6つのオーブ」を手に入れることが勇者たちの冒険の目的となっている。こちらでは七つの玉の持ち主を捜すことが「魔王を倒すために必要な条件」として仏(佐藤二朗)に示される。

世界を滅亡させる魔王を倒すために三度目の冒険の旅に出た勇者ヨシヒコ(山田孝之)と仲間たち・・・戦士ダンジョー(宅麻伸)、魔法使いのメレブ(ムロツヨシ )、村の女ムラサキ(木南晴夏)だった。

つまり・・・ドラマ「勇者ヨシヒコと導かれし七人」とゲーム「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」はまったく無関係なのである。

無関係なのだが・・・なんとなく関連しているという前提なのだ。

意味がわからない・・・。

そういう関係しているのかしていないのか微妙なところが「魅力」というものなのである。

つまりアレだ。

ちなみに・・・仏を見るためのウルトラアイや・・・ドラクエシリーズや・・・ファイナルファンタジーシリーズに関連している円谷プロダクションやスクウェア・エニックスはクレジット的に協力しています。

いつもの森の中を抜けると・・・盗賊B(渡辺いっけい)が現れた!

「金と食糧をいただく」

「金も食糧もないのです」

「俺は血に飢えた盗賊だ・・・とにかく殺す」

剣を構えた盗賊Bはヨシヒコやダンジョーと互角に渡り合う。

「なかなか・・・やるな・・・」

そこへ・・・盗賊Bの弟であるシゲ(太賀)がやってくる。

「兄貴・・・大変だ・・・レンタルビデオを返し忘れているよ」

「俺は血に飢えた盗賊だ・・・知ったことではない」

「だって・・・延滞料金は倍額だし・・・借りたのは十本で・・・もう九日も延滞しているんだぜ」

「え」

メレブは計算してみた。

「レンタル料の相場って300ゴールドだろう・・・その倍なら600ゴールド、十本を一日延滞すると6000ゴールド・・・それが九日間なら54000ゴールドだよ」

「・・・」

「この世界の最大持ち金が65535ゴールドなのに・・・」

「後・・・二日で66000ゴールドになって支払い不能になってしまうわね」

「すぐに返却しないとシステム的に・・・拙いことになるよ」

「システムとは何ですか?」

「兄貴・・・」

「俺は血に飢えた盗賊だ・・・しかし・・・今日はビデオを返却しに行く」

盗賊たちは立ち去った。

「なんだか・・・大変そうなので手伝ってきます」

「おい・・・ヨシヒコ・・・そんなのいいから」

しかし・・・心のピュアなヨシヒコは盗賊たちの後を追うのだった。

そんなこんなで・・・体力を消耗した一同。

「もう・・・HPが限りなくゼロに近い気がする」

「HPとは何ですか?」

「もうすぐ村よ」

そこへ・・・スライムが現れた。

「逃げよう」

しかし、スライムは回りこんだ。

スライムに囲まれてしまった一同。

そして・・・スライムは転移の呪文「ルーラ」のような攻撃を仕掛けてきた。

気がつくと一同は村の入り口に立っていた。

「エフエフvillage」と書かれたゲート。

「なんだか・・・妙な雰囲気だな・・・」

メレブは違和感を感じる。

「妙な雰囲気とは?」

「エフエフの村って・・・なんだか・・・何処かで聞いた事がある気がする」

「そうなんですか」

「何かの略称のような・・・」

「ファイナルファンタジー的な・・・」

「ようこそ・・・エフエフの村へ」

スタイリッシュな下唇を軽く噛むVの発音に拘るヴァリー(城田優)がエレガントにお茶を飲んでいた。

「私はVァリーです」

「Bァリーさん」

「いいえVァリー」

ヨシヒコはなんとかヴァリーを発音しようとするがネズミみたいな顔になるばかりでバリーになってしまうのだった。

「なにか用ですか」

「見たところ・・・歴戦の勇士のようだ・・・我々、反乱軍の戦いに参加してもらえませんか」

「反乱軍?」

「そうです・・・この国は悪政を布く国王によって民が苦しんでいるのです」

「我々には大切な目的があるのだ」とダンジョーは協力を拒む。

「待ってください・・・反乱軍の中に玉を持っている人がいるかもしれません」とヨシヒコ。

一同は・・・反乱軍の戦士ヴァリーによって反乱軍のアジトに導かれる。

ドラクエシリーズよりも・・・洗練されたエフエフシリーズの世界に・・・うっとりするムラサキだった。

しかし・・・ヨシヒコは壺を壊し、樽も壊す。

「何故壊すのですか」

「調べる必要があるので・・・」

「よせ・・・ヨシヒコ・・・ここではしらべるシステムが違うみたいだ」

「しらべるシステム?」

ヴァリーの仲間は・・・スタイリッシュなモンク(武闘家)であるバッシア(平山祐介)、スタイリッショな白魔道士のアーシュ(石田ニコル)、スタイリッシュな黒魔道士のバルフロア(水田航生)である。

ダンジョーはアーシュにたちまち魅了される。

「ベースケ(助兵衛)か」とムラサキ。

ヨシヒコは引き出しを調べてアーシュの下着を入手した!

ちなみに・・・ゲーム「ファイナルファンタジーXII」の世界には・・・主人公のヴァン (Vaan) 、徒手空拳の使い手バッシュ・フォン・ローゼンバーグ、ヒロインのアーシェ・バナルガン・ダルマスカ、隕石使いのバルフレアが登場する。

つまり・・・彼らはエフエフシリーズのアレなのだ。

「皆さんのジョブは何ですか」

「ジョブとは?」

「つまり・・・役割というか・・・職業的な」

勇者ヨシヒコ、戦士ダンジョー、魔法使いメレブの後で・・・。

「村の女・・・ムラサキよ」

「村の女・・・あはははは」

思わず爆笑するエフエフの戦士たち。

ムラサキは屈辱を感じるが・・・相手がスタイリッシュなので言いかえせない。

「それで・・・敵というのは?」

「別荘で休養中の・・・圧政の王グラミスガンナバルドールを暗殺するのです」

「敵の名前もスタイリッシュだ」と圧倒されるメレブ。

ちなみに「ファイナルファンタジーXII」に登場するのはアルケイディア帝国第11代皇帝グラミス・ガンナ・ソリドールである。

スタイリュッシュな回転ドア的セレモニーに参加しようとするが・・・なかなか輪に加われないヨシヒコ。

メレブが誘導するが・・・高身長なエフエフの住人に・・・ヨシヒコの背丈は足りないのだった。

出発前に女店員(山野海)のいるフルーツ屋で食糧を調達しようとしたヨシヒコたち。

しかし・・・エフエフの村の通貨はギルで・・・ゴールドは流通していないのだった。

「この世界のどこかに・・・両替屋があるはずだが・・・」

「とにかく出発しましょう」

ヨシヒコたちにとって見慣れぬモンスターが現れる。

「これは・・・」

何故か・・・初期のエフエフシリーズの戦闘画面になる。

「なぜ・・・ななめなのですか」

「こういうものです」

「数字が出ます」

「ダメージです」

「メレブ・・・食らいすぎだろ・・・防御力どうなってんの」

「あなたのアビリティは何ですか」

「アビリティーとは?」

「このままでは勝てません・・・ここはチョコバを召喚します」

アーシュは人間が二人で演じているようなチョコボに似た馬を召喚する。

「チョコバ遅い」とムラサキ。

「掛け声が聞こえますね」とヨシヒコ。

「足並み揃えないとね」とメレブ。

スタイリッシュな晩餐。

「野営のシステムが凄い」

「システムとは・・・」

「そちらの世界ではモンスターが違うのですか」

メレブはスライムを描いた!

「かわいい」とアーシュ・・・。

メレブは呪文を披露する。

今回は電撃系で・・・小さな磁力により・・・肩こりをほぐすチョイデインである。

しかし・・・ピュアなヨシヒコは肩こりをしない体質なので効果がないのだった。

エフエフ戦士たちは・・・役に立たない魔法だと侮る。

メレブは「ブラズーレ」で復讐するのだった。

アーシュに対しては一種のセクシャル・ハラスメントで・・・ヨシヒコの下着略奪と併せてお茶の間サービスである。

チョコバ騎乗もセクシーだったぞ。

いよいよ・・・敵の別荘に接近する一同。

「この玉を知りませんか」

唐突に切り出すヨシヒコ・・・。

「見覚えがある」とヴァリー。

しかし・・・またしてもルーラ効果が発動し・・・ヨシヒコたちは別の世界に転移する。

そこでは巨大な肉が調理されていた。

「いい匂い・・・」

だが・・・目の前に出現するカプコンの「モンスターハンター」シリーズに登場するドドブランゴのような巨大なモンスター。

巨大な武器を持つ大男(勝矢)が現れる。

「手伝ってくれ」

「わかりました」

「待て・・・ヨシヒコ」

一同の制止を振り切り・・・狩りに参加するヨシヒコだった。

そこで・・・またルーラ効果が発動し・・・ヨシヒコ意外の三人はまたも次元を越える。

メレブたちの目の前に現れるドラクエモンスター。

「非常に危険なのに何故かホッとする」

ダンジョーの攻撃。

モンスターはダメージを受ける。

「チョイデイン」

モンスターたちは強くなった。

「やっぱり・・・」とムラサキ。

やがて・・・メレブたちはエフエフの村にたどり着く。

「どうやら・・・地続きだったようだ」

「どういう意味だ」

「つまり・・・経営している会社が」

そこへ・・・モザイクになったヨシヒコが現れる。

「おい・・・それは」

明らかに任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」的なキャラクターだとモザイクでもわかるドット絵仕様である。

「むこうの世界でお金を稼ぎましょう・・・ムラサキにはももいろのドレスを」

「うれしい」

「ピーチ姫か」

「ジャンプしてしがみつくだけでいいんです」

「ボス面に行ってないんだな」

「弟もできました」

モザイクの緑色の類似したキャラクターが登場する。

誰がゲストなのかも不明の状態である。

兄弟はメレブの制止を振り切ってカートのある世界へ走り去る。

そこへヴァリーが青のオーブを持って登場する。

「家の倉庫にあった・・・」

「魔王を倒すために・・・あなたを召喚したい」

「魔王・・・噂には聞いたが・・・本当に存在するのか」

「します」

「わかった・・・協力を惜しまない」

「感謝する」

「しかし・・・うちの主人公が行方不明なのだ」

「主人公?」

途方に暮れるメレブたち。

しかし・・・仏がヨシヒコを強制召喚するのだった。

「ヨシヒコ・・・主人公としての自覚を持て」

キョトンとするヨシヒコ。

「そんな可愛い顔しないでっ」

「しかし・・・コインを稼いで・・・強力な武器を」

「そういうことは・・・地道にコツコツね・・・楽をしようとしないで」

「はい」

「次は・・・北へと向いなさい」

「ざっくりしてんなあ・・・」

「パズルをするだけでドラゴンを倒せる世界もあったんだ」

「え~・・・楽しそう~」

例によって一同を見守る心優しいヒサ(岡本あずさ)・・・。

どうやら・・・変化の杖を入手できたらしい。

いろいろと妄想させる夜があったわけである。

「兄さま・・・もう許可的なものでプロデューサーを困らせるのはやめないと・・・」

そして・・・ヒサは・・・なんとなく・・・「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」のおてんば姫アリーナ(中川翔子)に似た「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」のムーンブルクもしくはサマルトリアの王女に変身する。

「ひとつ前の世界の姫だから・・・兄様にはわからないはず・・・」

アリーナ姫の撮影は三分で済んだが・・・中の人はヨシヒコたちと記念写真を撮影したくて二時間残留したと言う。

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2016年10月21日 (金)

愛の破片を集めて都合よくまとめるなんて無理(成海璃子)

糧を得るために働くのが人生だが・・・そうでない人もいるのが世界というものだ。

交配相手を求めて忙しないのが人間だが・・・そうでない人もいるのが個性というものだ。

職を求めて愛を捜して人々は今日も地上を彷徨う。

よりよき未来を求めて・・・代表者たちは会議をする。

たとえば停戦交渉。

優位に立つ相手は戦闘継続を希望する。

不利な状況の打開のために時間を稼ぎたいものがいる。

幼い子供たちの危機に心をいためる第三者がいる。

戦後の利益配分に興味のあるものがいる。

背後から銃口を突き付けられているもの。

既得権益の維持を目指す者。

幻想の名声を夢見るもの。

怪しい正義が手を挙げることを・・・この物語は醸しだす。

で、『黒い十人の女・第4回』(日本テレビ201610202359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・瑠東東一郎を見た。原作の映画「黒い十人の女」(1961年)にはいくつかのどんでん返しが用意されている。女たちによる風殺害計画。風の死んだフリ。ロミオとジュリエット的後追い自殺。離婚。ある愛人の勝利。そういう流れを知らずに見ても充分に楽しいが知っていても大丈夫である。「いっそ死んでくれればいいのに」・・・というフレーズは・・・やがて「風殺害計画」が立案されそうな暗示である。しかし・・・そういうものがなくても充分に面白いとも思える。すでに充分ブラック。コメディーである。

一番の悪役風になっている第三の女である弥上美羽(佐藤仁美)は映画では自殺してしまうポジションなのである。

そう思うと・・・すでに・・・憐れで泣ける配役なのだが・・・ドラマではこのまま狂気を秘めて怖くて嫌な女のままなのかもしれない。

たとえば・・・弥上美羽は・・・自分が一番愛されていることを前提で・・・風松吉(船越英一郎)とアイドル女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)との仲を裂くために・・・東西テレビバラエティ班プロデューサーの浦上紀章(水上剣星)を利用しようとする。

そのために・・・松吉と志乃の不倫関係を浦上に打ち明けるのである。

自分が不倫中であるために・・・そういう関係が・・・「汚れ」であることを忘れてしまっているのである。

浦上が・・・不倫で汚れている志乃を忌避するとは思わないのである。

さらに言えば・・・それを知りつつ・・・志乃をより不幸にすることができればいいという本末転倒状態に陥っている。

つまり・・・美羽はすでに発狂しているのだ。

それを示す不気味に歪んだ表情・・・見事だな。

松吉の一番古い愛人である劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)の芝居「孤独の牢獄」観劇のために・・・ヒロインである九番目の愛人・東西テレビの受付嬢・神田久未(成海璃子)と小劇場にやってきた美羽。

「きっとものすごい自己満足を見せられることになるわよ」

「三時間以上もですか」

「ものすごくつまらないけどあの人たちにとってそれが芸術なのよ」

「芸術・・・」

「とにかく・・・独特だったと言う他ないわ」

「独特・・・」

「それが・・・あの人たちにとって最高の褒め言葉だから」

プロフェッショナルとアマチュアの隙間に存在するアーティストたちを嘲笑する話である。

まあ・・・そんなものにもファンが存在するのがこの世の不思議というものなんだな。

松吉と同伴するのでは楽屋で佳代と気まずくなるという美羽だったが・・・。

松吉は五番目の女である脚本家の皐山夏希(MEGUMI)と同伴でやってくるのだった。

松吉は気まずさとは無縁の男なのである。

愛人の松吉と三人の恋仇が見守る中・・・佳代の熱演が始るのだった。

「崩壊よ・・・崩壊・・・崩壊・・・何もかもが崩壊するの・・・あはははははははは」

地獄の責め苦のような舞台の後で差し入れの菓子折りを持って楽屋を訪ねる久未と美羽。

「どうだった」

「独特でした」

久未と美羽の次に松吉と夏希が楽屋を訪問する。

「どうだった」

「わけがわからなかったよ」

松吉の正直さに・・・久未はニヤニヤするのだった。

久未は流されやすい性格だが・・・「お笑い」を解する女だった。

夏希は松吉と食事をするつもりだったが・・・松吉には「用事」があるのだった。

松吉に電話をした佳代は・・・ある計画を秘めて夏希を食事に誘う。

久未と美羽はいつものカフェ「white」に先着している。

自分以外の女を松吉から排除する野望に燃える美羽は・・・志乃を呼び出し引導を渡す腹心算である。

その頃・・・志乃は新月10ドラマ「淡い三人の男」でヘアメイク担当する水川夢(平山あや)から美羽もまた松吉の愛人であることを告げられていた。

夢が松吉の愛人と知った志乃は・・・何故か・・・浦上ではなく松吉を選んでいるのだった。

夢に対しては友情を感じる志乃だったが・・・腹黒い美羽には敵愾心を燃やしている。

美羽に呼び出された志乃は・・・夢とタッグを組んで敵地に乗り込むのだった。

そして・・・カフェ「white」の入り口で・・・志乃と夢は・・・佳代と夏希に遭遇する。

ワンペアとツーペアでスリーペアである。

その頃・・・松吉は・・・新登場の愛人・卯野真衣(白羽ゆり)とデート中だった。

一月(睦月)は本妻の風睦(若村麻由美)・・・。

二月(如月)は舞台女優の如野佳代。

三月(弥生)はアシスタント・プロデューサーの弥上美羽。愛人歴五年。

四月(卯月)は卯野真衣・・・新登場!

五月(皐月)は脚本家の皐山夏希。

六月(水無月)はメイキャップ・アーチストの水川夢。愛人歴三年。

七月(文月)は未確定だが・・・久未の友人に文坂彩乃(佐野ひなこ)がいる。

八月(葉月)はアイドル女優の相葉志乃。愛人歴一年。

九月(長月)は未確定。

十月(神無月)は神田久未・・・愛人歴半年である。

カフェ「white」の店員である夏美(森田涼花)は愛人たちの相関関係をノートにまとめて同僚の春江(寺田御子)や秋子(松本穂香)に解説するのだった。

愛人が九人いることを知っているものから自分だけが愛人だと思っているものまで六人の愛人たちの晩餐会がスタートする。

なんていうか・・・公開なのか。

公開愛人の宴なのか。

「・・・というわけで・・・私たちは・・・淡い三人の男・・・略してアワオトコ仲間なのよ」

(ダサッ)と毒づく久未だった。

「そして・・・みんな風さんの愛人なの」

(ええええええええええ)

驚く久未を尻目に美羽は志乃に踊りかかる。

「でも・・・志乃さんは私たちと立場が違うから・・・この間言ったのは・・・親切心からなのよ」

(おお・・・この期に及んで)

「だけど・・・風さんだってプロデューサーという立場があるじゃないですか」

(そうきたか)

「あなたは・・・商品でしょう・・・スキャンダルで商品価値が下がるのよ」

「私もだけどね」

思わず口をはさむ女優の佳代だった。

「中古品は黙ってて」

ついに本音が炸裂する美羽。

思わずコップに手がかかる佳代を押しとどめる久未。

テーブルには危険な焼きたて餃子が乗っていた。

思いとどまる佳代。

「嘘ですよね・・・私、聞いてましたよ」

水川夢は・・・自分以外の愛人を排除しようとする美羽の言葉を盗み聞きしていた。

「まあまあ・・・そんなに喧嘩腰にならないで・・・悪いのは風・・・そしてそんな風を好きになってしまった私たちなんだから・・・仲良くしましょうよ」

佳代は・・・愛人仲良しクラブ路線を維持するのだった。

「ふざけんな・・・みんな・・・気持ち悪い・・・何ほざいてんだよ」

沈黙を破り・・・自分以外に愛人が八人の衝撃から抜けだそうとする夏希である。

「風さんは私のことが好きにきまってるだろう・・・みんな消えろ・・・みんな死ね」

「まあまあ・・・」

「だまれ・・・くそばばあ・・・こんなところで油売ってないでセリフの一つも覚えてろ」

ついにコップの水を夏希にぶっかける佳代。

しかし・・・明らかに元ヤンキーの夏希はあんかけヤキソバを佳代にぶっかけるのだった。

「・・・あんかけは・・・反則だろう」

「・・・」

「セリフなんて・・・とっくに覚えたよ・・・セリフみっつだもの・・・いらっしゃいませ・・・御注文は・・・あありがとうございました・・・読むなり覚えたよ・・・口惜しかったら・・・もっとセリフよこせよ・・・」

あまりにも悲しい佳代の言葉に・・・沈黙する一同。

思わず・・・同情する久未・・・。

そこへ・・・サプライスのバースデー・ケーキが登場する。

「夏希様・・・夏希様・・・お誕生日おめでとうございます」

思わずろうそくを吹き消す夏希。

「佳代さんの・・・セッティングですか」

「フェイス・ブックで・・・」

その頃・・・松吉は卯野真衣を送りだしていた。

真衣の帰った家には・・・二十代の若い愛人と不倫中だと松吉に打ち明けた・・・東西テレビのドラマ班キャスティング担当プロデューサーの火山(山田純大)だった。

「遅かったね」

「学生時代の友達と会ってたの・・・」

真衣の言葉を聞き流す火山は・・・愛人とメール中だったらしい。

久未はと彩乃と池上穂花(新田祐里子)に修羅場の件を報告する。

「あんかけはひどいよね」

「前はカフェラテだったし」

「私・・・絶望の螺旋から抜け出す気になった」

「二度目だけどね」

「螺旋だからね」

その頃・・・松吉の前に浦上が思い詰めた表情で立ちはだかる。

愛はますますもつれていくのである。

それが愛と呼ばれるのに相応しいのかどうかは別として。

じゃ・・・愛人の愛は愛じゃないのかよ。

不倫と知ってやめられない人は自己正当化の代わりに愛に縋るのだった。

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2016年10月20日 (木)

カインとアベル(山田涼介)あきらめない女(倉科カナ)

原案が「旧約聖書 創世記 カインとアベルより」である。

そういう「話」はどこにでも転がっていて・・・何故・・・今、それなのかがよくわからない。

たとえば小説「エデンの東/ジョン・スタインベック」(1952年)があって、エリア・カザンが監督し、ジェームズ・ディーンが主演した映画「エデンの東」(1955年)がある。

「エデンの東」は・・・何度も舞台化されているわけである。

そもそも・・・兄のカインが弟のアベルを殺す話である。

アベルは殺されて兄を呪うが・・・カインはその後の人生を全うする。

カインとアベルの話は・・・ほぼカインの話なのである。

弟であるアベルを主人公とするということは・・・最終回まで殺されないか・・・殺された後でゾンビになって復活するかしかないわけである。

そもそも信仰の話なのであって・・・安易にドラマ化したら・・・痛い目にしか遭わないと思うぞ。

そういう意味でまったく先が読めない・・・初回なのだった。

で、『カインとアベル・第1回』(フジテレビ20161017PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・武内英樹を見た。兄弟の葛藤はすべて「カインとアベル」的な要素を持っている。早い話が「あさが来た」だって・・・真面目な姉とそうでもない妹の「カインとアベル」である。ただ姉が妹を殺したりしないだけだ。親の愛をめぐる兄弟間の心の葛藤はカインコンプレックスと名付けられたが・・・そもそも・・・カインが嫉妬するのは・・・「神の愛」に対してであり・・・父親のアダムにではない。そう考えるのは・・・つまり・・・無神論者なのであって・・・「旧約聖書」に登場するヤハウェ(神)の存在を無視しているわけである。

カインとアベルは・・・アダムとイヴから生れた人類最初の兄弟であり・・・カインは人類史上、最初の殺人者である。

少なくとも旧約聖書の世界ではそういうことになっている。

つまり・・・人類は誕生して二世代目に・・・すでに殺人を起こし・・・兄が加害者、弟が被害者という凶悪さを示しているのだ。

加害者の親であり、被害者遺族でもあるアダムとイヴは・・・。

「あああああああああああ」

・・・と叫んだことだろう。

旧約聖書の面白さはここにあるわけである。

とりあえず・・・初回から・・・そういう面白さはあまり感じられなかったな。

「旧約聖書・創世記」

・・・蛇の誘惑により罪を犯したアダムとイヴは・・・神によってエデン(楽園)を追放される。

エデンの東で暮らし始めたアダムは農耕で食糧を生産し、イヴは出産する・・・

アダムとイヴは性交した。

イヴはカインを産んだ。

アダムとイヴはまた性交した。

イヴはカインの弟アベルを産んだ。

カインはアダムと共に土を耕し、アベルは羊を飼った。

カインは神にパンを捧げた。

アベルは神に子羊と羊のステーキを捧げた。

神はステーキを食べパンを残した。

カインは神の依怙贔屓に怒りを感じた。

神はそれを見抜いて言った。

「神に邪な心を抱けば恐ろしいことになる・・・それが嫌なら悔い改めよ」

カインの怒りはアベルへと向う。

カインはアベルを野原に呼び出した。

そして兄は弟を殺害した。

大地はアベルの血で染まった。

大手デベロッパー(土地開発業者)であるらしい高田総合地所株式会社の創立50周年の記念パーティー・・・。

盛会である。

社長の高田貴行(高嶋政伸)と・・・貴行の長男である副社長の隆一(桐谷健太)は来賓の応対に忙しい。

しかし・・・物陰で営業部・第5課の社員である貴行の次男・優(山田涼介)は・・・たまたま胸を触ってしまった年上の女性社員・矢作梓(倉科カナ)とひっそりと飲酒していた。

優は・・・優秀な兄に対して引け目を感じる・・・屈折した若者だった。

しかし・・・優をなんとなく可愛いと感じる梓である。

父の期待に応えるために・・・努力を重ねてきた兄の隆一にも・・・弟に対する特殊な感情がある。

父は兄には厳しかったが・・・弟には甘かったのだ。

弟を可愛いと思う気持ちと・・・憎らしいと思う気持ちが鬩ぎ合う隆一なのである。

やんちゃな弟は・・・自転車通勤である。

営業部・第5課には佐々木課長(日野陽仁)と同期入社で・・・明らかに玉の輿を狙っている柴田ひかり(山崎紘菜)がいる。・・・山崎紘菜は第7回東宝「シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞した。グランプリの上白石萌歌の姉で同じく審査員特別賞の上白石萌音はアニメ「君の名は。」で一躍脚光を浴びている。そろそろなんとかしたい今日この頃である。

「アウトレットモールのプロジェクトチームからお呼びがかかったぞ」

父や兄の威光によるものであることは明らかだった。

そういうことにも鬱屈する優だった。

プロジェクトチームのリーダーは営業部長の団衛(木下ほうか)である。

「コンペでの勝利を目指そう」と熱く語る団部長。

チームには横浜支社から本社へ異動してきたばかりの梓も加わっていた。

競合する他社に勝つために有名店の出店獲得が目標となる。

優が担当するのは有名なピザ店。

梓は老舗蕎麦屋担当だった。

周囲が次々と目標をクリアする中・・・難航する二人の交渉。

兄の隆一は「支度金のサービス」で口説けとアドバイスするが・・・優は「金がすべて」のビジネスに含むところがあるタイプだった。

そんな優を「意外性がある」と評価する父に・・・隆一の心は軋む。

優は徹夜でアウトレットモールの模型を作り・・・交渉の手段にしようと考える。

梓は興味を持って優を手伝うのだった。

「なんだか文化祭みたいね」

「どうしてそんなに熱心なんです」

「諦めるなんてもったいないからよ」

ついにはダンボールを布団にして眠ってしまう梓だった。

そんな二人に・・・ひかりは嫉妬メラメラである。

ちょっと・・・恥ずかしい展開だな。

梓は・・・蕎麦に使う「水」がネックになっているらしい。

「パイプひいちゃえばいいのに」

「何を馬鹿なこと言ってるの」

しかし・・・梓はそれをヒントにタンクローリーによる水輸送作戦を発想する。

最後の一人となった優は・・・ピザ屋が・・・他社の支度金に買われてしまったことを知る。

しかし・・・それ以外の出店を勝ち取った高田総合地所はコンペに勝利する。

負け犬として・・・第5課に戻ってくる優。

だが・・・梓のアシストによって・・・ピザ屋は方向を転換する・・・そもそも・・・他社の計画は頓挫しているのだ。

「君の熱意に負けたよ・・・君のところに出店するよ」

辛勝した優だった。

梓が優に優しかったのには・・・理由があったようだ。

梓は・・・隆一の恋人だったのである。

「優はどうだった」

「なかなか面白い子ね」

恋人の言葉に隆一の心は軋む。

カインが隆一、アベルが優とすれば・・・アダムは兄弟の父親・貴行である。

では・・・神の存在はどうなるのだろう。

それは創業者である兄弟の祖父にあたる高田宗一郎会長(平幹二朗)なのだろうか。

そして・・・なんだか・・・とても危険な香りのする兄弟の伯母・桃子(南果歩)はアダムに罪を犯させるイヴのポジションか。

とても・・・安易で神を畏れぬ翻案と言う他ないがな。

キッドは悪魔なので微笑むしかないのである。

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オルトロスの犬

金田一少年の事件簿N

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2016年10月19日 (水)

逃げるが勝ちだが恥ずかしい(新垣結衣)

千年の歴史を持つマジャル人の国家ハンガリー・・・。

そこで諺とされる「Szégyen a futás, de hasznos.」である。

「Szégyen(恥とされる)a futás(逃げること)、de(だけど) hasznos.(有効だ)」・・・これが「逃げるは恥だが役に立つ」である。

「義を見てせざるは勇なきなり」と言えない人の言いわけの言葉とも言える。

前提として「逃走は恥辱」なのである。

これに対して、「死んで花実が咲くものか」は潔い死という「逃避」を戒めるわけである。

どちらの立場で生きて行くか・・・あるいは死んで逝くかはそれぞれの自由なのだな。

ハンガリーは第二次世界大戦における日本の同盟国で・・・つまり敗戦国である。

西側に支配された日本と東側に支配されたハンガリーでは立場が異なるが・・・昔の仲間だ。

ハンガリーが同盟国だった頃の物語「この世界の片隅に」がアニメ化されて来月公開予定である。

主演のすずを演じる声優がのん(本名:能年玲奈)である。

今朝のNHK総合の「おはよう日本」でアニメの劇場公開が伝えられ・・・のんに対するインタビューが放送された。それはある意味、画期的なことだったわけだが・・・。

自称公共放送のアナウンサーののんの紹介の仕方が・・・「すずを演じるのがこの人です」である。

なんという逃げ腰だろうか。

「のん」とも「能年玲奈」とも言えないわけなのか。

それほどに・・・「騒動」には触れないでおこうという姿勢・・・ある意味、天晴だな。

もしも・・・アニメ「この世界の片隅に」が大ヒットした場合・・・各局はどう対応するのか・・・楽しみだなあ。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第2回』(TBSテレビ20161018PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。もちろん・・・のんと騒動を起こしている事務所に所属している女優と「騒動」は無関係であるとも言えるし、そうでないとも言える。そもそも「虚構」に対して「黒子」が見え隠れすること自体が厄介なのである。素晴らしい女優の素晴らしい演技を楽しみたいだけなのである。長谷川京子や新垣結衣、川島海荷や清水富美加たちが商品として沈黙を守っていることに何の問題もない。なんだか少し恥ずかしいのではないかと思うだけである。

ハンガリーは内陸国である。キリスト帝国やイスラム帝国、モンゴル帝国、オスマン帝国やナチスドイツ、さらにはソビエト連邦と様々な絶対主義者たちに服従を強いられた国家でもある。

その諺に「逃げるは恥だが役に立つ」があるのは誠に合点がいく。

就職活動の果てにいろいろとこじらせた無職の二十五歳・・・森山みくり(新垣結衣)は独身男の津崎平匡(星野源)に「就職としての専業主婦」を提案し、津崎は「事実婚」を申し出る。

入籍はせずに同居し・・・津崎はみくりを住み込みの家政婦として雇用する・・・ただし・・・周囲には「結婚」として報告する・・・二人はある意味・・・秘密結社を結成したのであった。

つまり・・・就職はするが繁殖はしない・・・二人の関係は・・・夫婦ではなく・・・雇用者と従業員なのである。

どこか・・・おかしい感じもするが・・・本人たちがそれでいいならよろしいのですな。

まあ・・・隣の部屋にガッキーが眠っていて・・・何もしない男は人間ではないと言う他ないわけだが。

演じているのが妖怪カワウソをノーメイクでできる俳優ナンバーワンなので違和感はないな。ちなみに二位と三位は柄本兄弟だ。・・・おいおいおい。

もちろん・・・未婚の男女が同居することは世間体が悪いので・・・森山家と津崎家と・・・津崎の職場には・・・「結婚」と報告するので・・・二人は嘘をつくことになる。

その「嘘」をなるべく小さくするために・・・「結婚式」は行わない結論に達する二人だった。

ここまでのまとめを・・・今回は平成元年から紆余曲折あって続く「NEWS23」のパロディーで展開する。

筑紫哲也が二十年前「TBSは今日、死んだに等しいと思います」と述べた番組である。

それは「TBSビデオ問題」(1996年)に関連した発言である。

「TBSビデオ問題」という呼称もまた「逃げるは恥だが役に立つ」の一種であろう。

本来は「オウム真理教による坂本堤弁護士一家殺害事件の発端となったTBSビデオ問題」なのである。

「坂本堤弁護士一家殺害事件」が「TBSビデオ問題」という言葉の中に隠蔽されているのだ。

まあ・・・人間が生きて行くというのはそういうものなのだな。

風に吹かれて・・・風化していくあれこれの中で・・・生きて行く・・・それが人間の営みだ。

「NEWS23」の中のローカルニュース枠穴埋め企画だった「異論!反論!OBJECTION」・・・街頭インタビューという古典的手法・・・のパロディーで結婚式についての職場の意見が紹介される。

「それは・・・やるべき・・・楽しいし」と既婚者の日野秀司(藤井隆)、「結局、自己満足だろう」と独身の風見涼太(大谷亮平)、「カミングアウトの儀式・・・覚悟の証」と心にあばずれ女を飼っている沼田頼綱(古田新太)・・・。

「統計的には・・・結婚式をあげないカップルもいる」と説得の論点を述べる津崎。

「二人の覚悟と言う方が・・・波風が立ちません」と応じるみくりである。

結果として・・・両家の顔合わせの場である「お食事会」を設定する二人だった。

津崎家からは・・・平匡の両親である宗八(モロ師岡)と知佳(高橋ひとみ)・・・。

森山家からは・・・みくりの両親である栃男(宇梶剛士)と桜(富田靖子)に加えて、桜の姉で独身で処女の面倒くさい伯母さんの土屋百合(石田ゆり子)、みくりの兄であるちがや(細田善彦)とその妻・葵(高山侑子)そして二人の愛児が参加する。

同居するが・・・婚姻はしない・・・結婚のことは両家にはあくまで秘密なのである。

二人は・・・「みくりさん」と「ひらまささん」と名前で呼ぶことから練習するのである。

「ひらまささん・・・」

「みくりさん・・・」

「・・・」

照れくさい二人だった。

お互い・・・恋愛相手が見つかったら・・・契約解消という契約を交わしている二人なのである。

もちろん・・・このままゴールでなくちゃ・・・お茶の間が許さないと考える。

小学生の時、三十路前だった百合に「伯母さんは一生結婚できない」と言い放った暴言王・ちがやは「結婚は二人だけのものじゃない」「結婚式は面倒くさい」「伯母さんは結婚したことない」などと「いつか刺される」言動を連発するが・・・「二人がよければそれでいいと思う」という百合の言動で結婚式をあげないことが承認される。

こうして・・・「指示が具体的で明確、無駄がない・・・突拍子もない提案にも対応してくれる」理想の上司と・・・「(家事が)万能」の部下は・・・契約結婚を開始する。

「おめでとう」とみくりをサンドイッチ・ハグする森山の両親。

「お前が・・・一家を構える覚悟を持つ日が来るとは・・・今宵の酒は美味そうだ」と山口から上京したヒラマサの父親。

ちなみにソウハチはアカガレイの一種。ヒラマサはアジの仲間で最大種である。

ついでにミクリもチガヤも雑草である。

ただし、チガヤは萱葺小屋、ミクリには台所の意味も含むと思われる。

息子と娘が結婚したことを素直に喜ぶ両親の姿に・・・二人は少し後ろめたさを感じるのだった。

新婚初夜である。

津崎家は1LDK・・・。

ヒラマサは寝室で・・・みくりはリビングで就寝する。

「では・・・寝ます」

「ヒラマサさん・・・おやすみなさい」

ありえないことだが・・・危険を感じないみくり。

草食系・・・だからではなく「逃げるが恥だが役に立つ」と言うヒラマサは・・・人の嫌がることは絶対にしなさそうだったから。

そういう人が一番危険なんだけどな。

ありえないことだが・・・ぐっすりと寝つくヒラマサ。

安全牌だからでもあるが・・・みくりが寄せては返す波のように自然体だったからである。

もちろん・・・ドラマだからである。

ちなみに・・・若いが中身は老けているというのは役年令25才で実年齢28才ということだ。・・・おいっ。

ガッキーが実年齢よりも若い年齢を演じる時代になったんだなあ・・・。

ヒラマサは家事から解放され・・・みくりは得意な家事を仕事として生活する。

二人の充足した秘密の暮らし。

しかし・・・人生を暇つぶしと考える沼田は・・・風見を連れて・・・新婚家庭を奇襲するのだった。

ゲイかもしれない沼田は・・・ヒラマサを逃がした獲物と考えている風である。

休日出勤で事態に対応するみくりだった。

みくり・・・私物はどうしてるんだ。

沼田は・・・恋仇のように・・・みくりをチェックするのである。

一種のストーカーなんだな。

みくりの料理のレシピは・・・素晴らしいインターネットの世界で公開された沼田のレシピだったらしい。

風見は風見で・・・さりげなくみくりにアプローチして・・・好意を抱く。

なにしろ・・・人妻だがガッキーなのである。

そして・・・風見は油断のならない男である。

突然・・・襲う雷雨・・・台風情報はどうしたっ。

泊まって行くという二人に・・・パニックに襲われる新婚擬装夫婦。

寝室にはシングルベッドのみ。

「ためしに寝てみますか」

「え」

「冗談です」

「・・・」

もし・・・風見が沼田に襲われたらどうしようと余計な心配までするヒラマサ。

結局・・・男三人でリビングに眠ることになる。

「どうして・・・三人で・・・」

「風見の貞操を心配したのね」

「まさか・・・合意がなくちゃね」

「ストレートに愛を育めるってうらやましい」

「俺はストレートですけど育んでません」

「少しは育みなさいよ」

カワウソ寝入りをするヒラマサ。

その頃・・・みくりは・・・ヒラマサの残留思念を意識しすぎて眠れなくなっていた。

つまり・・・みくりの深層心理はすでに・・・ヒラマサを愛すべき人と認識していたのである。

休日を・・・24時間・・・来客と過ごしたみくりとヒラマサは・・・漸く平穏を取り戻していた。

「今日は・・・ゆっくり眠れそうです」

「昨日・・・眠れなかったの・・・何か問題があったのかな・・・雇用主として問題があれば解決したいと思う」

「いえ・・・コーヒーを飲み過ぎただけです」

秘密は秘密を生むのである。

その日・・・みくりは自分の布団で安眠した。

しかし・・・シングルベッドのシーツ交換を忘れたのである。

ホテルのベッドでは眠れない人がいるが・・・ヒラマサは・・・みくりの残り香に悩まされるのだった。

甘く・・・せつない・・・女のフェロモン的な・・・体臭の残滓。

(き・・・危険だ)

ヒラマサは眠れない夜を過ごすのだった。

楽しい・・・楽しいぞ・・・この契約結婚は。

もう・・・恋は始っているわけだし。

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2016年10月18日 (火)

口で言うより手の方が早い男とその妻(壇蜜)

「忠臣蔵の恋 四十八人目の忠臣」の主人公はきよである。

「夏目漱石の妻」の主人公は鏡子だが実名はきよである。

「真田丸」のヒロインはきりだが・・・高梨氏には高梨清秀や高梨頼清などがおり・・・高梨内記の娘の名がきよでもおかしくはないのである。

そうなれば・・・三夜連続きよのレビューである。

・・・だからなんだよ。

何でもありません。

三夜連続が好きなんだな。

とにかく・・・コレのおかげで(月)のレビューが来週からどうなるか未定になってしまった。

それでなくても・・・秋ドラマは・・・微妙な作品の連打なんだよな。

ここまで一番楽しめたのは「警視庁 ナシゴレン課」(テレビ朝日)だからな。

それは単にぱるる(島崎遥香)が可愛かっただけだろうが。

かわいいと思うな思えば負けだ・・・そういう話か・・・。

カ、カニチャーハンが食べたい。

で、『夏目漱石の妻・最終回(全4話)』(NHK総合20161015PM9~)原案・夏目鏡子・松岡譲、脚本・池端俊策、演出・柴田岳志を見た。フィクションなので史実の夏目漱石とはいろいろと行動が前後するわけだが・・・史実だってフィクションなので別に構わないわけである。幕府が崩壊して・・・四十年・・・明治という時代も終盤にさしかかる。慶応三年(1867年)に生れた漱石こと夏目金之助(長谷川博己)も四十代になっている。夢を叶えて小説家となった金之助・・・その夢を支える妻の鏡子(尾野真千子)は明治四十三年(1910年)までに長女・筆子(五戸みう)、次女・恒子(根本真陽)、三女・栄子(南郷蘭奏)、四女・愛子(長谷川愛鈴)、長男・純一、次男・伸六を生んでいて・・・三月には五女・雛子を出産する。明治十年生れの鏡子は数えで三十四歳になる。

愛しあってるかい?・・・と問われればある意味愛しあっているわけである。

「坑夫/夏目漱石」が朝日新聞に掲載されるのは明治四十一年(1908年)一月である。

「文鳥/夏目漱石」が大坂朝日新聞に掲載されるのは六月である。

十月早稲田に移る。伽藍のような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖で支えていると、三重吉が来て、鳥を御飼いなさいと云う。

漱石が早稲田に転居したのは明治四十年(1907年)である・・・ここは虚実の入り混じる幻想空間なのである。

三重吉が間もなく小説家としてデビューする鈴木三重吉(黒木真二)なのかどうかも不明なのである。

ドラマの世界では小説「坑夫」のモデルとなった荒井伴男(満島真之介)が・・・花嫁修業のための家事手伝いとして夏目家に住み込んでいる鏡子の従妹である山田房子(黒島結菜)をうっとりさせるわけである。

女性問題で家出をした放蕩息子の気配に・・・「危険」を察知する鏡子だった。

お嬢様育ちの鏡子は・・・自分以外の「甘えている人間」に厳しいのである。

「平家物語」を熱唱する金之助の「いい気分」を害しても「心配事」を解決しなければならないのだ。

繊細な金之助にとって・・・そういうガサツさは・・・不愉快なことであったが・・・我慢できないことではなかったらしい。

「房子が・・・戻らないのです・・・あなた・・・何か用事を頼みましたか」

「いや・・・」

房子は・・・社会主義者と関わっているらしい伴男とちょっとしたアヴァンチュール(冒険)を楽しんでいた。

幸徳秋水らが結成した社会主義結社「平民社」の週刊新聞「平民新聞」は明治三十六年(1903年)から刊行されていた。明治三十七年には「共産党宣言」の日本語訳を掲載している。しかし、日露戦争非戦の主張を唱えたために明治三十八年には廃刊に追い込まれている。

官憲に弾圧されるうちに・・・非戦論者たちは・・・暴力革命的になっていくのだった。

人間の辿る道筋は時代を越えるらせん階段のようなものである。

伴男を連れて戻って来た房子に釘を刺す鏡子。

「面白い人なんですよ・・・筆子ちゃんも勉強教えてもらって喜んでいるし」

「面白がったり・・・喜んだりするのはいいけれど・・・好きになってはいけない人よ」

鏡子は・・・伴男の心の闇を見透かしていた。

文鳥はまもなく死んだ。

漱石は家族が死んだように悲しみ・・・「たかが文鳥」と侮った鏡子を殴打する。

しばらくすると裏庭で、子供が文鳥を埋るんだ埋るんだと騒いでいる。庭掃除に頼んだ植木屋が、御嬢さん、ここいらが好いでしょうと云っている。

自分は机の方へ向き直った。そうして三重吉へはがきをかいた。「家人が餌をやらないものだから、文鳥はとうとう死んでしまった。たのみもせぬものを籠へ入れて、しかも餌をやる義務さえ尽くさないのは残酷の至りだ」と云う文句であった。

三重吉から返事が来た。文鳥は可愛想な事を致しましたとあるばかりで家人が悪いとも残酷だともいっこう書いてなかった。

ある日・・・漱石の留守中に・・・後に「閑さや岩にしみ入蝉の声」に出てくる蝉がアブラゼミかニイニイゼミかという問題で齋藤茂吉と論争したり、東京音楽学校校長となって邦楽科を廃止しようとする・・・少し軽薄な傾向のある小宮豊隆(柄本時生)が・・・金之助の理想の女と・・・鏡子が思いこんでいる・・・小説家の大塚楠緒子(壇蜜)を伴って現れる。

「夏目の家内でございます」

精いっぱいの猫なで声で対抗する鏡子だった。

自分が蔑まれていることを察した伴男は・・・鏡子に・・・漱石の書きかけの小説を使って意地悪をする。

「ここには・・・先生の理想の女が描かれているんですよ」

昔、美しい女を知っていた。この女が机にもたれて何か考えているところを、うしろから、そっと行って、紫の帯上の房になった先を、長く垂らして、頸筋の細いあたりを、上から撫で廻したら、女はものうげに後を向いた。その時女の眉は心持八の字に寄っていた。それで眼尻と口元には笑が萌ざしていた。同時に恰好の好い頸を肩まですくめていた。文鳥が自分を見た時、自分はふとこの女の事を思い出した。

誰よりも金之助を愛する鏡子にとって・・・大塚楠緒子は永遠のライバルなのである。

漱石の研究家によれば・・・この「美しい女」のモデルは大塚楠緒子ではないとされている。

伴男は・・・「おでん屋」の開業資金と偽って・・・房子や書生たちから金を集め・・・あげくの果てに社会主義者の騒動に巻き込まれ・・・警察に留置されて・・・身元引受人に金之助を指名するのだった。

伴男は・・・漱石の悪口も言いふらしている。

「言いたいことがあったら私に直接いいたまえ」

「私は冷たい家を捨て・・・先生の小説を読んで・・・暖かい家を求めて・・・この家にやってきたのです」

「・・・」

「ところが・・・先生は暴君だし・・・子供たちは父親を恐れている」

「余計な御世話だ」

「父も同じことを言いましたよ・・・父の冷たさを私が詰った時に・・・先生は・・・奥様を愛していると言えますか」

「・・・」

「この人にそんなことを訊ねても無駄ですよ・・・この人の頭には小説のことしかないのですから」

鏡子が夫に代わって答えたのだった。

筋金入りのお嬢様は・・・甘ったれた青年の主張には興味がないのである。

しかし・・・鏡子の嫉妬心は納まらない。

「文鳥を読みたいのです」

「そんなものは読む必要がなない」

「あなたの理想の女のことが書かれているんでしょう」

「・・・」

「文鳥より価値のない妻として・・・読む権利があります」

「さっきのお前の答えな・・・」

「はい?」

「なかなかいいと思ったよ」

夫婦には・・・夫婦にしかわからない・・・あれやこれやがあるのである。

大塚楠緒子は大阪朝日新聞に「雲影」を連載していた。

明治四十三年一月、幸徳秋水らは千駄ヶ谷の平民社で「明治天皇暗殺計画」を練っていた。

二月、伊藤博文暗殺犯(安重根)に死刑判決が下る。

三月、五女・雛子誕生。映画監督となる黒澤明も生れている。

四月、武者小路実篤・志賀直哉らによって文芸誌「白樺」が創刊される。

五月、永井荷風らによって文芸誌「三田文学」が創刊される。

六月、幸徳秋水・管野スガらが「大逆事件」の容疑で検挙される。

金之助は胃潰瘍のため内幸町長与胃腸病院に入院する。

食事制限にも関わらず見舞いのクッキーなどを貪り食う。

見舞いに来た娘たちに「手が汚い」と言われる。

「娘たちがみんな無愛想だ」と鏡子に呟く金之助である。

八月・・・主治医である松根東洋城(西地修哉)の勧めで伊豆の修善寺に転地療養に出かける金之助。

しかし・・・そこで大吐血を起こし・・・電報を受けた鏡子は東京から修善寺に駆けつける。

再び吐血した金之助は・・・生死の間を彷徨う危篤状態に陥る・・・。

「あなた・・・」

「一句できた・・・ふとゆるる 蚊帳の吊り手や 今朝の秋」

「あなた・・・」

「妻・・・妻はどこですか」

「あなた・・・」

「大丈夫だ・・・私は・・・」

「あなた・・・」

「家に帰ろう」

金之助は一度は死線を越えて・・・カンフル剤で戻って来た。

九月、御船千鶴子が千里眼の公開実験を行う。

十月、 江ノ島電鉄線藤沢駅・鎌倉駅間全線が開通する。

十一月、大塚楠緒子は流行性感冒に肋膜炎を併発し、娘三人と息子を残し、大磯の別荘で死去した。

金之助は「あるほどの菊投げ入れよ棺の中」という句を詠んだ。

十二月、秋水ほか26人に関する大逆事件の大審院第1回公判が開廷される。鈴木梅太郎が世界初のビタミンであるアベリ酸の発見を発表した。

房子は名古屋に嫁いで行った。

結婚十五年目の明治四十四年・・・。

一月に幸徳秋水ら11人の死刑が執行された。

八月・・・金之助と鏡子は旅に出る。

「坊ちゃんのばあやのきよって私のことですよね」

「まあ・・・そういうことにしておこう」

「坊ちゃん」は漱石が妻のきよに書いたラブレターだったらしい。

朝日新聞社主催の講演旅行中・・・大坂で胃潰瘍が再発し・・・金之助はまた入院した。

十一月、五女・雛子は早世した。

夫婦には夫婦にしかわからない喜びと悲しみがあるものだ。

それが人生の伴侶というシステムなのである。

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2016年10月17日 (月)

大坂城よ・・・私は帰ってきた!(長澤まさみ)

元ネタは「お気に召すまま/シェイクスピア」の「この世は舞台、人はみな役者」である。

・・・明らかに違うだろう・・・ジオン残党のあの人だろう。

まあ・・・パロディーの原点なんてどうでもいいさ。

続々と入城する牢人たち・・・。

真田幸村を迎え入れた大野修理大夫治長は母が大蔵卿局で淀殿の乳母である。

つまり、淀殿とは乳兄妹・・・ほぼ同時期の生れである。

治長も秀吉の馬廻衆だが天正十七年(1569年)には丹後大野一万石の大名となっている。

この頃、真田幸村こと信繫は秀吉の人質となっている。

その後、秀吉の馬廻衆となった信繫は知行二万石の大名扱いであり、文禄三年(1594年)には大野治長とともに伏見城の普請をしており・・・顔見知りだったわけである。

大野治長は関ヶ原の合戦では東軍に属しており・・・片桐且元とともに・・・家康家臣として秀頼の家老を勤めていたのである。

大坂城には治長の弟の治房と道犬斎治胤がいる。

末弟の治純は徳川家の人質を経て家康の旗本となっている。

牢人の受付をしていた木村重成の母は宮内卿局で秀頼の乳母である。

つまり、重成と秀頼は乳兄弟なのである。

淀殿の乳兄弟が大野三兄弟で、秀頼の乳兄弟が木村重成ということである。

重成が受け付けた後藤又兵衛基次や毛利勝永の他に名簿には数人の名が見えた。

京極備前は京極高次の従兄弟とされる謎の武将である。

仙石豊前守秀範は仙石秀久の次男で西軍に与したために父から勘当されて牢人となった。

仙石家と真田家は信濃支配をめぐりこの後、いろいろともつれる仲である。

大谷大学助吉治は幸村の正室の弟である。つまり、大谷吉継の子である。

長岡与五郎興秋は細川忠興の次男だが徳川家の人質となるのを嫌い出奔した過去を持つ。

長宗我部土佐守盛親は西軍に属し、領国を没収されている。

幸村、基次、勝永、盛親に明石全登を加えて牢人五人衆である。

年末にかけて長丁場の大坂の陣・・・。

名前だけでなく・・・本人が登場するのか・・・興味深い。

で、『真田丸・第41回(NHK総合20161016M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は何代目なのか不明な伊賀忍者・服部半蔵の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。秘術・押し通るデターッ!・・・でございましたね。八方塞の場合、正面突破はお約束でございますな。夕方のガンダムアニメでもやってましたぞ。北に川、西に海、東に広田という大坂城。攻め口となることが予想される南側に突出する真田丸もまた・・・一種の正面突破でございますよねえ。攻守が混然となる戦場の妙と申せましょう。「私の好きだった真田家の次男坊はどこへ行ったの」というきりの言葉を受けて・・・監視役に酒を飲ませ、一族郎党で雁金踊り。脱出して集結してまた脱出。変装して大坂城入り。父の手柄は息子の手柄。やんちゃな源次郎復活でございましたねえ。人生の最後で輝く人の物語・・・その終盤戦が始ったのですな。これは楽しいですねえ。一方・・・まだまだ長い人生の残っている兄の信之一家。歴史資料的な曖昧さをついて・・・正室の子と側室の子の葛藤を見事に物語に仕立ててきました・・・本当にのりにのっておりますねえ。大坂の陣で敗走する真田の若き兄弟の麗しいシーンが目に浮かびまする。さあ・・・真田丸はいつお目見えするのか・・・期待で胸が高鳴ります!

Sanada41慶長十九年(1614年)十月二日、徳川家康は旗本・大野治純に大坂城の探索を命じる。 四日、徳川義直(家康九男)が尾張名古屋城に進発。 五日、京都所司代・板倉勝重が駿府に米の買い占めなど大坂城の合戦準備状況を急報。真田幸村ら牢人衆が大坂城に入城。七日、奥州仙台の伊達政宗に家康よりの出馬命令が届く。八日、藤堂高虎が大和へ進発。十日、政宗が出陣。大坂城には秀頼配下の三万人の他、牢人衆が六万人、子女などを合わせると十万を越える人数が集結していた。大野治長は西の博労ヶ淵、北の福島、東の今福など大坂城の周囲に砦の構築を開始する。牢人衆は周囲の砦作りには反対したが南方に出城を作ることが急務と上申する。江戸に出府中だった紀伊和歌山城主・浅野長晟、土佐高知城主・山内忠義らが駿府に出仕。家康は出馬を命令。十一日、大御所・家康が駿府を出陣。十二日、掛川城の家康の元に一万騎が集結。大野道犬斎が堺を奇襲。堺奉行芝山正親は岸和田城に脱出。十四日、片桐且元の家臣・多羅尾半左衛門らが堺に救援に赴くが包囲殲滅される。十六日、義直、名古屋城を出陣。十七日、家康が名古屋着。京に大坂方の山賊が侵入、板倉勝重が撃退。京に越前の松平忠直(家康の孫)と加賀の前田利光が着陣。二十日、家康が近江柏原に着陣。江戸より伊達勢一万、上杉景勝五千が先手として出陣。二十三日、徳川秀忠が江戸を出陣。二十四日、家康が京都二条城に着陣。本田正純が秀忠に「出遅れていること」を注進。

大坂城は熱気を帯びていた。

信繫は城内の真田屋敷が十四年前と同じようにその場にあることに驚いた。

大野治長の好意で・・・住んでいた家臣は別の屋敷に移されたらしい。

「懐かしゅうござろう」

「難波のことが・・・つい昨日のように思い浮かびまする」

「太閤殿下の馬廻衆として・・・左衛門佐殿には・・・申しわけなき歳月でござった」

「すべては・・・定めでござろう」

「片桐様を討とうとしたこと・・・今思えば・・・愚策でござった」

「駿府の大御所は・・・何れにしろ・・・秀頼様の存在を・・・お許しあるまい」

「千姫様・・・あっても・・・であろうか」

「無論のこと・・・お家のために・・・わが妻、わが子の命を惜しまないお方ゆえ」

「・・・」

「ついに・・・戦のなき世をお作りになられた・・・その仕上げをせずにはいられまい」

「豊臣家は・・・どうなるのであろう」

「まずは・・・戦に勝てぬまでも・・・負けぬことです」

「・・・」

「そして・・・大御所の寿命の尽きるのを待つしかありませぬ」

「大御所様の・・・」

「さすれば・・・将軍は・・・秀頼様の舅・・・お上様は・・・御台所の姉君となります」

「つまり・・・豊臣家の生きる道が残されるということか」

「戦はやってみなければ・・・わかりませぬゆえ・・・」

真田信繫は・・・京の方角から・・・東へと目を転じた。

秀忠の雑兵にまぎれた真田幸村は・・・東海道を西へ向かう秀忠から距離を置いていた。

江戸を発つと一日で藤沢に着いた秀忠は・・・強行軍で三日後には掛川を通過していた。

総勢六万人の大軍勢を置き去りにして秀忠は近臣数十騎と突出していた。

秀忠の周囲は・・・江戸城お庭番の忍びが結界を張っている。

大軍勢に紛れ込んでいなければ・・・さすがの真田忍びの頭も・・・網にかかってしまうのである。

江戸と京都の間には一里ごとに早飛脚が置かれている。

大御所と将軍の間には忙しく通信が行きかう。

将軍は・・・「開戦をお急ぎなさるな」と懇願し・・・大御所は「遅し」と応じるのである。

吉田の宿で・・・幸村を大坂から「繋ぎ」に来た霧隠才蔵が待っていた。

「信繫様は・・・はや大坂城に入りました」

「大御所は」

「二条城で・・・軍勢を待っております・・・北国から三万、東海道から三万が・・・すでに伏見に先着しておりました」

「将軍は・・・いささかあわてておるの」

「十一月朔日には岡崎を発ち・・・岐阜にむかっておりまする」

「殺って殺れぬわけではないが・・・将軍を殺しても詮無いからのう」

「信繫様から・・・京に将軍到着の後は・・・幸村様には京に残ってもらいたいとのこと」

「才蔵・・・」

「は」

「信繫に・・・幸村を名乗るように伝えよ」

「お頭・・・」

「儂は・・・隠居する」

「・・・」

「負け戦になった時には・・・殿(しんがり)が必要だわい」

「それでは・・・京の真田屋敷に・・・」

「信繫には・・・城中の忍びに用心を怠るなと伝えよ」

「幸村様も・・・お達者で・・・」

「儂は今日から真田源心坊じゃ」

才蔵は秋の野を駆け去った。

旅の僧侶となった真田忍びの元頭はふらりと立ち上がる。

元の真田幸村は・・・急速な身体の衰えを感じていた。

(術も落ちたわ・・・)

浜に真田水軍衆の小舟が待っているはずだった。

しかし・・・周囲には殺気が満ちている。

(お・・・これは・・・)

血の匂いが潮にまぎれて漂う。

次の瞬間・・・三人の忍びが殺到し・・・旅の僧侶の首が舞う。

将軍配下の柳生忍びたちは死体を放置して立ち去った。

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2016年10月16日 (日)

風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにとかせむ(武井咲)

浅野内匠頭長矩の母親は父・長友の正室で志摩鳥羽藩主・内藤忠政の娘・波知である。

寛文七年(1667年)に長矩を・・・寛文十年に長広を出産した後、寛文十二年に世を去っている。

波知の弟の内藤忠勝は父を継いで第三代鳥羽藩主となるが、延宝八年(1680年)に第四代将軍・徳川家綱の七十七日法要に際し、芝増上寺で遺恨のある丹後宮津藩主の永井尚長を刺殺し、幕府より切腹を命じられお家は断絶している。

それから・・・二十一年・・・内藤忠勝の甥にあたる長矩が同様の刃傷沙汰を起こすのである。

血筋に遺伝的精神疾患という問題があったと・・・疑わずにはいられないエピソードと言えるだろう。

少なくとも事件を知る浅野家の家臣たちは・・・長矩が癇癪を爆発させる度に背筋が凍りついたと思われる。

長矩が刃傷沙汰を起こした時・・・「ああ・・・おそれていたことが・・・ついに現実になった」と思わずにはいられなかったのではないか。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第4回』(NHK総合201610151810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。半世紀もドラマを見ていれば始る前に大方の予想はつくものだ。まして忠臣蔵である。しかし、どれだけわかりきっていることでも・・・新鮮な切り口に驚かされることもあるし、わかっているからこそ深みを感じて面白いこともある。そういう意味でこの「忠臣蔵」はなかなかに楽しめるのだった。

赤穂事件という史実が・・・忠臣蔵という虚構になって三世紀が過ぎた今。

何がただの虚構で・・・何が歴史と言う虚構なのか渾然一体となって判別不可能なのである。

なにしろ・・・後半物凄いことになってくるからな。

元禄十四年(1701年)三月・・・播磨国赤穂藩の藩主夫人・阿久里(田中麗奈)は・・・勅使饗応役となった夫の浅野内匠頭長矩(今井翼)の帰りを・・・江戸鉄砲洲の浅野家上屋敷で待っていた。

Takuminokamimap浅野家上屋敷は現在の東京都中央区の聖路加国際大学の辺りにあったという。江戸城の東南である。

接待の最終日は三月十四日(1701年4月21日)である。現在で言えば桜の見ごろは終わっていてもおかしくない季節だが・・・劇的な意味で・・・桜吹雪も舞うわけである。

役目が終われば夫が帰ってくる。

勅答の儀が行われる直前・・・巳の下刻(正午前)である。

阿久里は不吉な花の嵐を幻視するのだった。

松の廊下こと江戸城本丸大廊下では内匠頭が勅使饗応指南役である高家衆筆頭の吉良上野介義央(伊武雅刀)に斬りかかっていた。

内匠頭は吉良上野介の額と背中に浅い傷を負わせたところで留守居番・梶川頼照に確保されてしまう。

「殿中でござる」

「せめて・・・もう一太刀」

乱心ではないと内匠頭は証言したというが・・・相手を殺害した叔父と違い・・・殺す気があれば斬るのではなく刺すべきだったわけである。

武士としては心得不足だったと言える。

内匠頭は江戸城内において取調を受けるが・・・その内容は定かではない。

未の下刻・・・午後四時前に陸奥一関藩主・田村右京大夫建顕の藩士に護送され、内匠頭は田村屋敷に移送される。

感情が激した時に胸が苦しくなる「痞(つかえ)」という気の病を病んでいたとも言われる内匠頭は・・・この時、胸のつかえがとれていたのだろう。

将軍・綱吉は朝廷と将軍家との儀式を台無しにされたことに激怒し、長矩の切腹と赤穂浅野家五万石の取り潰しをすでに決めていたと言う。

大老格側用人・柳沢吉保は即日切腹という処分を通達した。

田村屋敷は芝愛宕下・・・現在の港区新橋四丁目あたりにあったとされる。

愛宕山の東の大名屋敷で江戸城から見れば南である。

内匠頭は阿久里の待つ浅野屋敷とは違う方角へ運ばれていった。

事件勃発から・・・上意は・・・浅野屋敷に伝送されたはずである。

阿久里は養嗣子として迎えている内匠頭の弟・浅野大学長広(中村倫也)から恐ろしい報せを受け取っていた。

「殿中で・・・刃傷沙汰・・・」

阿久里の侍女であるきよ(武井咲)は・・・役目が終わったら祝言をあげようと言った礒貝十郎左衛門(福士誠治)の言葉を思い出す。

役目は・・・どうなったのだろう・・・。

申の下刻・・・午後六時過ぎ・・・田村屋敷に・・・幕府の正検使役として大目付・庄田安利らが到着する。

「不調法ゆえに・・・いかようにもおおせつけられるところ・・・切腹とは有り難く存じ候」

罪人として斬首されてもおかしくないのに・・・切腹を申しつけられ感謝した内匠頭であった。

辞世の歌を認めた内匠頭は田村家の藩士に家臣への伝言を託したとされる。

事件発生からおよそ七時間・・・田村屋敷の庭先で・・・幕府徒目付の磯田武大夫の介錯により内匠頭は切腹して果てた。

その報せが浅野屋敷に届く。

「そんな・・・早すぎる・・・せめて・・・一目お逢いしたかった」

阿久里は一瞬・・・我を失うが・・・次の瞬間には藩主夫人として動きだす。

屋敷は即刻・・・幕府に明け渡さなければならないのだ。

準備にとりかかる侍女たち。

きよと十郎左衛門の仲を知る堀部安兵衛の妻・ほり(陽月華)がまたしても囁く。

「皆さまは・・・殿の御遺骸を引きとりに出るそうです・・・今しかありませぬ」

きよは・・・事情を察する。

側用人である十郎左衛門は殉死する可能性があるのだった。

胸騒ぎを感じながら・・・屋敷内の桜の御神木へと向うきよ。

十郎左衛門はきよを待っていた。

「きよ殿・・・すべては無になった」

「十郎左衛門様・・・死なないでください」

「きよ殿・・・私のことは・・・忘れてくだされ」

「・・・」

田村藩士は・・・遺体を引きとりにきた十郎左衛門と片岡源五右衛門(新納慎也)に内匠頭の伝言を伝える。

「此の段、兼ねて知らせ申すべく候得共、今日やむことを得ず候故、知らせ申さず候、不審に存ず可く候」

前もって知らせるべきであったが・・・知らせることなくやってしまった・・・知らせなかったことをおかしく思われてもしかたない・・・。

自分のしたことを・・・すべて許せという藩主としての最後の命令であった。

内匠頭の遺体は浅野家臣に引き渡され・・・田村屋敷よりさらに南の泉岳寺に運ばれ、そのまま埋葬された。

十郎左衛門と源五右衛門は主君の遺体をあらためて涙する。

「肩にお傷を召されている」

「急なお沙汰で・・・介錯人の手元が狂ったのだろう」

「おいたわしや・・・」

男たちは殉死の相を浮かばせる。

浅野屋敷では・・・阿久里が落飾のために髪をおろしていた。

仙桂尼(三田佳子)は経文を唱える。

村松三太夫(中尾明慶)は父の喜兵衛とともに凶報を持って国元へと向う。

赤穂で留守を守る家老・大石内蔵助(石丸幹二)はまだ変事を知らない。

そして・・・きよと十郎左衛門の恋は・・・。

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2016年10月15日 (土)

ゾンビに噛まれて(山田孝之)

なんていうか・・・十年に一度の傑作タイトルだな。

「風に吹かれて/ボブ・ディラン」(1963年)の単なるパクリじゃないか。

そう思いたい奴にはそう思わせておけばいい。

第一、風に吹かれたらどうなると思うんだ。

風化するよな。

つまり・・・答えははすべて風化するんだよ。

風化する答えを求めて・・・問いかけを続ける愚かな人間は・・・ゾンビに噛まれればいいと思う。

道に何人の浮浪者が倒れていれば・・・通行人は救急車を呼ぶ気になるのか。

救急隊員がやってきてゾンビだと気がついた時には手遅れだ。

悲鳴が聞こえても見て見ぬフリで通りすぎるのが悪だとしても責めてはいけない。

生存者は逃げ足が速いものなのだ。

忘却しなければ人生は辛すぎるし、風化しなければ世界は邪魔くさいのだから。

いつだってゾンビは噛むものだ。

で、『勇者ヨシヒコと導かれし七人・第2回』(テレビ東京201610150018~)脚本・演出・福田雄一を見た。(水)の「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」のオープニング・テーマ「12月の雨/chay」は荒井由実の4thシングル(1974年)のカヴァー曲である。「時は・・・昨日を物語に変える」というのは・・・「風に吹かれて」のアンサーソングと考えられる。風に吹かれた答えがどうなるのかという一つの答えなのである。「学生街の喫茶店/GARO」(1972年)でさえボブ・ディランの歌は過去のものだったのである。時は流れたのだ。そして作曲者のすぎやまこういちは1986年「ドラゴンクエスト」のゲーム音楽を手掛けるのだった。・・・そこかっ。

世界を滅亡させる魔王を倒すために三度目の冒険の旅に出た勇者ヨシヒコ(山田孝之)と仲間たち。

仏(佐藤二朗)によって・・・ヨシヒコたちの能力はリセットされたらしいが・・・レベルは下がっても・・・過去の冒険の旅によって深まった絆はそのままらしい。

お互いのことを知りつくした様子は・・・「敵と戦う組織」としてはそれなりに成熟を感じさせる。

ムラサキ(木南晴夏)が強力な攻撃魔法「メラゾーマ」を習得したままなのかどうかは別として・・・メレブ(ムロツヨシ )は「ヨシズミ」や「スイーツ」よりもかなり高等な感じの「スモーデ」や「ワキガンテ」を習得するのも・・・歳月を感じさせるのだ・・・そうなのか。

仏が現れ、ヨシヒコはウルトラアイを効果音付で装着する。

円谷プロダクション公認である。

「それ・・・仏が怪獣みたいな気になる」

「怪獣みたいなもんじゃねえか」

仏の世界に宅配便が到着し、応対に出る仏に代わり仏の子さとし(小山春朋)が登場する。

ドラマ「まれ」(NHK総合)で紺谷希(土屋太鳳)と圭太(山﨑賢人)の間に生れた長男を演じた小山春朋は佐藤二朗似と一部お茶の間で噂されたことからの虚構間フィード・バックである。

「好きなものあるの」

「肉」

「肉にもいろいろあるでしょう」

「肉全般」

「・・・」

「まれをやってるとき・・・二朗さんは山﨑賢人くんとデスノートやってた」

「まれとはなんですか」

真面目なヨシヒコは楽屋話につっこむのだった。

この手の楽屋話は低俗なので忌避するべきだが・・・このドラマはほぼ低俗な成分で成立しているので許容するしかないのだった。

ドラマ「デスノート」(日本テレビ)ではL(山﨑賢人)で捜査一課主任・模木完造(佐藤二朗)というキャスティングだった。

二時間サスペンスによく出るもみあげのおっさんに似ていると指摘された戦士ダンジョー(宅麻伸)も熱血漢として苦言を呈するのだった。

「誰が法医学教室の事件ファイルだ」

「仏に似ていることでいじめられたりしないのか」

「それはないです」

宅配便は要冷凍のワケアリカニノアシだったらしい。

仏の導きによって・・・ヨシヒコたちは「導かれし玉人」を求めていつもの村のようなカルバド村に到着する。

しかし・・・昼日中だというのに・・・村には人影がなかった。

「これ異常だな」とメレブ。

「シェスタ(午睡)かもよ」とムラサキ。

空腹に耐えかねたムラサキとダンジョーは食堂の料理に手をつける。

「あ・・・それ絶対に拙いやつだ」

「なにがよ」

「お前たちブタになるぞ」

「誰が室井佑月になるって」

木南晴夏が豚化すると1970年生れの小説家で高橋源一郎の不倫が原因で離婚した室井佑月似になるらしい。

食べて豚になるのは長編アニメ「千と千尋の神隠し」へのオマージュである。

「俺は名前取られちゃってメイとかメレとかメルになって働かせられちゃうの・・・顔があるのにない感じの魔物とお使いにいくよ」

「食べて寝たら牛になるんだろう」

「ウシヒコ」か・・・。

悪を越えたウシジマくんとお人好しすぎて悪いヨシヒコの合体か・・・闇金勇者ウシヒコくんか。

みんな豚になるが・・・それは夢だった。

誰もいない村の誰もいない宿に宿泊する一行。

しかし・・・ゾンビが襲来するのだった。

「ゾンビとはなんですか」

「腐った死体だよ」

「それは・・・当然なのでは」

「彷徨う死者だ」

この物語では貧乳設定のムラサキは・・・胸の薄さでピンチを脱する。

ダンジョーはゾンビを斬り倒すが・・・もちろん・・・たちまち復活してしまうのである。

「死んでるから死にません」

「何かがおかしいだろう」

「デッドがウォーキングなので」

「意味がわからない」

続々と現れるゾンビの群れからなんとか逃れる一同である。

夜明けを迎えたが・・・いつの間にかゾンビに咬まれたムラサキは・・・死霊化しつつあった。

「メイクに金がかかっている」

「なんだかんだ・・・予算増えてるよな」

「タイアップ的なものか」

しかし・・・ムラサキは半分ゾンビでも元気いっぱいだった。

「なんとかしなさいよ」

「わかった」

しかし・・・ムラサキをあからさまに避けるヨシヒコだった。

そこに・・・カルバド村のゾンビ処理係ロビン(滝藤賢一)が現れる。

「そんな係が・・・」

「この先の山にいる噛みの神に噛んでもらうと浄化されます」

「ゾンビが治るのですか」

「ですね・・・噛まれてから三日を過ぎるとダメですけど」

「ブラックな言葉をさらっと言い放つ人だ」

一行は魔物と戦いながら山を目指す。

「くさったしたい」が現れた。

「ゾンビ系じゃないか」

「ムラサキ・・・行け・・・お前ならもうゾンビにならない」

しかし・・・くさったしたいはムラサキを避けた!

野宿をする一行。

メレブの呪文を覚えたタイムである。

「ブラズーレ」は男女に関わりなくブラジャーがずれたことが気になって仕方がなくなる呪文。

「ああ・・・気になる」とムラサキ。

「ああ・・・気になる」とヨシヒコ。

「ああ・・・気になる」とダンジョー。

男は当然のようにオネエ化するらしい。

夜が明けると・・・全員がゾンビ化しているのだった。

睡眠中に空腹を感じたムラサキが全員を噛んでしまったらしい。

メレブとダンジョーは普通にゾンビ化したが・・・ヨシヒコはゾンビ菌が噛まれた右腕から左手に直進し突出してしまったらしい。

左手で知性化したゾンビ菌は言葉を用いる。

「お前・・・しゃべれるのか」

「シャベレル」

「ヨシヒコがしゃべっているようにしか見えないが・・・」

「オレハヨシヒコジャナイ」

「じゃあ・・・名前を付けなければ」

「左手だから・・・ヒダリーというのはどうだ」

「イイナマエダ・・・オレハヒダリー」

ちなみに偶然よく似た感じの寄生獣はミギーである。

もはや・・・ドラクエのパロディーじゃないよな。

巨大化したヒダリーのために黒子が登場するが・・・ドラマ的には黒子なので登場していない。

噛みの神の祠にたどり着いた一行。

しかし・・・噛みの神(片岡愛之助)はゾンビ化していた。

「何故・・・神がゾンビに・・・」

六代目片岡愛之助は女優・藤原紀香と結婚したばかりだが・・・これまでにも隠し子騒動や愛人騒動など女好きで知られている歌舞伎役者である・・・おいおいおい。

祠から爆乳ゾンビ(手島優)が現れた。

充分に間をとって事情を察する一行。

「神よ・・・エッチなことをしたのですか」

「神様だって・・・ムラムラする」

「絶望だ」

「この先に行けばゾンビ菌を浄化するカラクリがあるぞよ」

「え」

「魔物が護ってるので・・・誰も近寄れないがな」

カラクリを守護する魔物と対決する一行。

ヒダリーは鎌化して貴重な戦力となる。

ついに魔物は退治され・・・カラクリが起動するのだった。

「プラズマクラスタアアアアア!」

シャープの空気清浄器である。

タイアップなのか。

たちまち・・・ゾンビ菌は駆逐され・・・村人たちも人間に戻る。

「ヒダリーお別れだ」

「サヨナラヨシヒコ」

哀しい別れである。

導かれし玉人はゾンビ処理係のロビンだった。

股間から所持する緑のオーブを取り出すロビン。

陰毛つきのオーブでいつでもロビンを召喚することが出来るらしい。

二人目の導かれし玉人を求めて旅立つヨシヒコたち・・・。

そんなヨシヒコを心優しい妹のヒサはこっそり陰から見守っている。

そこへ怪しい魔物が現れた!

「何にでも化けられる変化の杖があるよ」

「それなら兄さまに見つからないですみますね」

「一杯つきあってくれたらあげるよ」

「はい」

「一杯だけだからね・・・やらしいことはしないから」

またもや・・・疑うことを知らないヒサに・・・慶応大学広告研究会的な魔手が迫るらしい。

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2016年10月14日 (金)

流されやすい人間の器は風に吹かれて転がる石のように女の如く(成海璃子)

ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。

文学は謳われるものだから・・・当然のことなのだ。

しかし・・・今かよっという思いはあるだろう。

あの頃・・・世界は混迷を極めていたが・・・今も同じだということなのだろう。

世界一の強国のリーダーが不人気競争を繰り広げ、集団的独裁者の支配する国が欲望を高めて行く。

戦火をまき散らす強欲な国家元首を国賓として招く世界で一番平和な国。

年老いたリーダーたちはこの世を去っていく。

武器と弾薬、自然災害、疫病が死を拡散する。

人々は救いを求めて神に祈る。

そして・・・相変わらず答えは風に吹かれているのだった。

で、『黒い十人の女・第3回』(日本テレビ201610132359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・瑠東東一郎を見た。原作の映画「黒い十人の女」(1961年)は退屈な作品と言えないこともないと思う。男性の猟色は「源氏物語」から不変のものであるし、人間としても性別を越えて多様性を求める傾向は否めないだろう。しかし・・・実際に繁殖に耽溺することはなかなかに困難なものである。法治国家においては奔放な性欲の解放は犯罪と紙一重なのである。鬼畜の如く沸騰した欲望を行動に移せばけしからんことになるわけだ。

しかし・・・下衆で屑な皆さんにとって・・・それは憧れの世界でもあるのだな。

新しい女体と触れあうことが何よりも重要だったあの頃・・・何もかもが懐かしい。

何人の彼女と一夜を明かしたら真実の愛を勝ち取ることができるのか・・・友達よ・・・その答えは風に吹かれている・・・のだった。

東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)がドラマプロデューサーの風松吉(船越英一郎)と深い関係になってしまったのは・・・23才の時、やがて風松吉が妻帯者と知り、困惑しつつ不倫関係を続けた久未は・・・24才の誕生日を風のもう一人の愛人である劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)に祝福される破目になる。

そして・・・風には正妻と愛人・・・合わせて十人の女がいると知らされる。

ネーミングで・・・十人の女には月名が潜んでいると推定される。

一月(睦月)は本妻の風睦(若村麻由美)・・・新登場!

二月(如月)は舞台女優の如野佳代。

三月(弥生)はアシスタント・プロデューサーの弥上美羽(佐藤仁美)・・・。

四月(卯月)は未確定。

五月(皐月)は脚本家の皐山夏希(MEGUMI)・・・。

六月(水無月)はメイキャップ・アーチストの水川夢(平山あや)・・・新登場!

七月(文月)は未確定だが・・・久未の友人に文坂彩乃(佐野ひなこ)がいる。

八月(葉月)はアイドル女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)・・・。

九月(長月)は未確定。

十月(神無月)は神田久未である。

ネーミングでは・・・風の周囲に・・・監督の林(大堀こういち)とキャステイング担当者の火山(山田純大)がいる。

三人合わせて「風林火山」である。

前回は合コンの男性メンバーが松田、竹井、梅本で「松竹梅」だった・・・。

カフェの店長と店員たちで「春夏秋冬」である。

愛人は文坂を(仮)として・・・名前に「卯」の字のある人と・・・「長」の字のある人・・・残り二人である。

風は・・・「妻帯者であること」を「血液型」と同じようなプロフィールの一項目に過ぎないと認識しているらしい。

しかし・・・愛人たちは・・・まだ・・・それぞれが「すべて」を把握しているわけではない。

ただし・・・本妻は・・・そうでもないらしい。

現代社会において・・・公序良俗に反する不倫の輪は歪な形で撓み始めるのだ。

素晴らしいインターネットの世界では久未と彩乃、そして食欲も性欲も旺盛な池上穂花(新田祐里子)が夜の女子会である。

「奥さんに会うの?」

「どうして?」

「断れなくて」

「そういうとこ」

「どういうこと」

「流されやすい」

「ああ・・・」

「水洗便所(スタンプ)」

「私は便かよ」

「便(スタンプ)」

「便(スタンプ)」

「便(スタンプ)・・・」

かわいい便のスタンプに思わずニヤニヤする久未だった。

どんなにつらい現実にも癒されるポイントはあるのだった。

脚本家の部屋で・・・爆睡中の皐山の下着を畳む風。

風は部下の美羽にキャスティングについて指示をする。

「如野佳代に連絡しといて」

美羽は・・・露骨に消極的な態度で佳代に連絡する。

「あまりおいしい役ではないのですが」

「やるわよ・・・役名は」

「店員Bです」

演劇「孤独の牢獄」の公演を控える劇団「絞り汁」の稽古場で佳代は絶句するのだった。

相葉志乃はすでに東西テレビバラエティ班プロデューサーの浦上紀章(水上剣星)の部屋に三回宿泊しているが・・・二、三度性交したくらいでは交際しているとは思わないタイプらしい。

しかし・・・なんとなく浦上の洗濯物を畳むのである。

人間はそれぞれが違うし・・・どこか似ているものだ。

「やる」と「いる」が聞き取りづらいのが今回の発音チェックポイント。

お前が難聴なのでは・・・?

テレビの劇中ワイドショーでは「ゲス不倫中」のミュージシャンの山丘(鶴見和也)が井上公造レポーター(井上公造)に直撃されている。

美羽はオネエなアライグマ(バカリズム)と妄想空間で「よい子のための不倫講座」を展開。

「結婚願望の有無」により・・・「停滞性不倫」と「略奪性不倫」の分化論を語る。

美羽は性欲だけではない「略奪性不倫」を主張して自己正当化を図るが・・・結局、正妻の不幸を前提に・・・自分の幸福を求めるクズであることをオネエなアライグマに看破されてしまう。

まあ・・・いけないことが愛を盛り上げることは間違いないよねえ。

雄ライオンが雌ライオンの尻穴を嗅ぐようにな。

「佳代さんのように・・・愛人の立場に安住したくはないの」

美羽は久未に共闘を申し込む。

「安住ですか」

「そうなのよ・・・佳代さんは居心地がよくなって・・・さらには・・・愛人たち九人で仲良しグループを作ってリーター格に納まる魂胆なのよ」

「な、仲良しグループ」

「1/10は嫌でしょう」

「嫌です」

「だから・・・最後は決勝戦をするけれど・・・まずは二人で手を組んで・・・敵の数を減らすのよ」

「バトルロワイヤルですね」

「なにしろ・・・正妻がいたんじゃ話にならないから・・・本丸から攻略するわよ」

「それは・・・レベルアップなしで・・・ラスボスに挑むヨシヒコが失敗するパターンでは」

だが・・・流されやすい久未は強引な美羽の手下化されるのだった。

何処かの元町を抜けて・・・本妻の経営するレストラン「カチューシャ」に乗り込む二人・・・。

おしゃれで豪華で老舗の風情を漂わす店内で・・・本妻と対峙する愛人たち。

しかし・・・本妻が一番美しく魅力的というセオリーで・・・久未は・・・圧倒されるのだった。

だが・・・美羽はゴリ押しで挑む。

「お二人のことは・・・風から伺っております」

(明日の天気のことを話すようにに愛人のことも話している!)

「五年前に主人が他界して幼い子供と途方に暮れていたところを・・・お世話してもらって」

(子持ちの未亡人かよ!)

「優しい人なので」

「私たち愛人です」

(言うのかよ!)

「存じております」

(知ってるのか!)

「他にも愛人が」

(必殺技だもの!)

「全部で九人ですよね」

(全然・・・効いてない!)

無言のままツッコミ疲れる久未だった。

「離婚しようとは?」

「思いますけど・・・あの人が気になる間は・・・同じことでしょう」

本妻の圧倒的な勝利である。

一方、志乃のヘアメイクを担当する水川はガールズトークを繰り広げる。

浦上との関係を打ち明けた志乃だったが・・・。

妻帯者の店長・冬樹(中山祐一朗)と不倫中の店員・春江(寺田御子)が蠢動するカフェ「white」に舞台は移り・・・。

水川から・・・風と不倫関係にあることを打ち明けられ驚愕する志乃。

そこへ・・・本妻相手に玉砕した二人が乱入する。

腹いせに・・・美羽は・・・志乃に切り込むのだった。

「私は志乃ちゃんの味方だから言うんだけど・・・風さんとは別れた方がいいわよ・・・仕事にいろいろと影響が出たら不味いでしょう」

(最大の敵だよ・・・しかも・・・こんな公衆の面前で暴露かよ!)

「あれだけ・・・言っておけば・・・次はもう一人の男の件でトドメを刺すわよ」

(絶対に敵にしたくない相手!)

戦慄する久未である。

お互いが・・・風の愛人だと知った志乃と水川は・・・仕方なく和むのだった。

「しょうがないよね・・・知らなかったんだもの」

「悪いのは・・・」

風なのである。

そして・・・新月10ドラマ「淡い三人の男」の顔合わせ・・・。

脚本家、AP、女優二人、メイクと五人の愛人が一堂に会するのだった。

皐山と佳代はかって同じ舞台で仕事をしたが・・・皐山は覚えていなかった。

皐山と・・・佳代が仲良しグループを形成するのはかなり困難な模様である。

受付嬢の久未は愛人たちの出入りをチェックする。

いま・・・東西テレビの風の交際相手濃度は6/10で約分すると3/5である。

脚本家、女優、メイクが去った後で・・・一服するプロデューサーの風とアソシエイトの美羽。

「この間・・・奥さんに会ったわよ」

「え」

「敵わないって思った」

「比べるようなものじゃないだろう」

正妻と愛人だからな。

「別に・・・私・・・別れてって言いたいわけじゃないの・・・ただ・・・愛人は私一人にしてほしい」

「ええ」

「ごめん・・・さびしくてつい・・・変なこと言っちゃった」

「埋め合わせはするよ」

風はそれなりに動揺するのだった。

略奪性不倫症という病に冒された美羽の画策は止まらない。

かってドラマ畑にいたので顔見知りの浦上にも切り込む。

「志乃ちゃんと付き合ってるでしょう」

「いや・・・まだはっきり交際しているわけじゃ」

「モタモタしてると・・・ますせいわよ」

「え」

「うちの風とも噂があるから」

「ええ」

「取られちゃうかもよ」

「えええ」

競争心を煽られる男もいるが・・・ガッカリする男もいるのでギャンプル性の強い攻撃である。

「騙されるな」

「もう遅い・・・仲良しグループは崩壊よ・・・崩壊・・・崩壊・・・何もかもが崩壊するの・・・あはははははははは」

稽古に熱が入る佳代だった。

「上演時間三時間四十分は長すぎる」と佳代の芝居に誘われた久未は呻く。

ちなみに・・・佐藤仁美は第20回、平山あやは第23回のホリプロタレントスカウトキャラバングランプリ受賞者である。

時代は変わる・・・のだった。

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2016年10月13日 (木)

呪った相手が溺死する女を追い詰めた私(水谷豊)帰ってきた男(反町隆史)忌々しい女(仲間由紀恵)

東京一部大停電である。

東京も老化が進んでいるのだなあ。

金がいくらあっても足りないフクシマのアレもあるしな。

そもそも・・・そんなところで五輪やって大丈夫かという話だよな。

それでも・・・遠慮したら負けだ・・・というスポーツマンシップで言うべきことを言う人もいる。

ブラジルでも出来たから日本でもできるだろうとは思うが・・・結果として火の車になるかもね。

まあ・・・それはそれで面白いという考え方もある。

国際結婚が国家に対する反逆ではないという前提で・・・世界が一家になれたらいいよね。

父親不在なので・・・マリアはきっと二重国籍じゃないんだよね。

で、『相棒・season15・第1回』(テレビ朝日20161012PM8~)脚本・輿水泰弘、演出・橋本一を見た。「相棒」の初回スペシャルがあると・・・本格的な秋の訪れを感じるわけである。今年は台風が関東を何度も直撃して・・・屋上庭園の盆栽の出し入れが本当に面倒だった。もう勘弁してもらいたいものだ・・・私事すぎるだろう!・・・キッドは悪魔なので基本的に若者が好きである。しかし・・・スターというものはいつしかベテランになっていく。むしろ・・・本当のスターと言えるのはベテランだと言えるかもしれない。ベテランになってしまったスターをどう使うかも・・・ドラマの作り手にとっては重要な問題だ。円熟した存在感と・・・フレッシュでない感じの対立があるものな。朝ドラマでいえば「あまちゃん」の海女三代みんなが主役方式という凄い手があったわけだが、「あさが来た」で波瑠と宮崎あおいというニューフェイスとベテラン両方使っちゃいました・・・もその手の内なんだな。

今回は・・・不動の熱中教師に・・・グレートややんくみが「花の里」に勢揃いするという・・・主演・俳優・女優の乱打戦が展開するわけである。

一方で・・・警視庁警察学校教官になってしまったので・・・鑑識課に米沢守(六角精児)が不在という「相棒ワールド」の変貌もある。

一部お茶の間にとって米沢のいない相棒なんて・・・もはや相棒ではない・・・という感慨も生じているだろう。

だが・・・そういうお茶の間の反応とは関係なく・・・特命係の杉下右京(水谷豊)は自己中心的な正義に基づく自己中心的な捜査を自己中心的に展開していくのだった。

ある意味、右京以外は全部悪という論理なので・・・ダークカイトという相棒が犯罪者という禁じ手までやってしまったので・・・軌道修正が困難になってしまったのだが・・・今回は・・・ベテランの小物である浅利陽介が・・・あらかじめ・・・杉下右京に復讐するために警察官となったというレギュラーの座を確保している。

まあ・・・革命するなら・・・闘士が全員、自衛隊に入隊すればいいというのは大前提だからな。

結局、同志諸君はそこまで本気ではなかったわけだがね。

・・・何の話だよ。

昔の話。

時々・・・そういう流れが醸しだされるこの物語だからな。

法務省のキャリア官僚という地位を投げ捨て・・・警察官となった冠城亘巡査(反町隆史)は・・・刑事部の嫌がらせによって・・・総務部広報課に配置される。

課長はロシア人スパイ・ヤロポロク・アレンスキーの愛人として娘・マリアを秘密裡に出産したシングル・マザー・社美彌子(仲間由紀恵)である。

社は警察庁のキャリア官僚だが・・・現在は警視庁に出向中である。

ロシア人スパイとの関係から、公安調査庁から極秘裏にマークされている危険人物だ。

社に夕食に誘われた冠城は・・・食後に「花の里」に向い・・・右京は月本幸子(鈴木杏樹)との憩いの一時を邪魔されるのだった。

「私に捜査させないのは宝の持ち腐れ」と冠に直訴された警察庁長官官房付の甲斐峯秋(石坂浩二)は・・・警視庁副総監の衣笠藤治警視監(大杉漣)に配置転換を持ちかけるが・・・甲斐に含むところのある衣笠は簡単には応じない。

衣笠は副総監として警視庁サイバーセキュリティー対策本部を発足していた。

そこには・・・警察嫌いの元公務員で・・・右京に意趣返しを目論む青木年男(浅利陽介)が配属されていた。

青木は・・・右京や冠城に親しげに接するが・・・帰宅すると二人の顔写真の目に画鋲を刺す男である。

もう・・・登場人物の人間関係を把握するだけで疲れる人は疲れるな。

捜一トリオから捜一コンビになって久しい伊丹刑事(川原和久)と芹沢刑事(山中崇史)は・・・冠城が昇進試験に合格して階級アップすることを密かに惧れている。

そんな二人の前に・・・「私は人を呪い殺しました」とネイリストの来栖初恵(小野ゆり子)が申し出る。

「呪詛で人を殺しても日本では殺人罪を犯した事になりません」

伊丹刑事は・・・迎えに来た初恵の同居人である梶原脩斗(辻本祐樹)に諭すのだった。

しかし・・・一連の出来事を青木が見ていた!

「オカルト」が趣味の右京は・・・青木から聞いた話に強い関心を示し・・・捜査を開始するのだった。

そして・・・初恵の勤務するネイルサロンで・・・右京は初めてのネイルケアにチャレンジした!

三件の事故死があった。

四日前に三鷹市のスポーツジムインストラクター・宮田太がジョギング中に倒れ用水路で溺死した。

四年前に神奈川県の三浦海岸で釣りをしていたブリーダーの津原が溺死した。

十三年前に青森県立奥羽高校の生徒であった吉村雅美が自転車で首刈峠から転落し川に水没して溺死した。

すべて・・・初恵が呪った結果だった。

吉村雅美は当時十六歳の初恵に対しもてない僻みから執拗ないじめ行為を続けていた。

つまり・・・初恵は現在、二十九歳である。

実年齢二十七歳の小野ゆり子は回想シーンでなんちゃって女子高校生にも対応します。

ブリーダーの津原は・・・無理な交配を続け脆弱なペットを販売していた。

津原から購入した初恵の愛犬も短命だった。

インストラクターの宮田は初恵に対して性的暴行をした上、弁護士を通じて訴えないように圧力をかけてきた。

だから・・・初恵が呪い殺したと言うのだ。

右京の訪問を知って・・・脩斗が面談を申し出る。

「あなたも・・・呪いの存在を信じているのですか」

「彼女の家系は・・・そういう血筋なのです」

脩斗は孤児で・・・幼い時に来栖家に引きとられ・・・初恵を姉と慕っていたのだった。

もはや・・・止まらない好奇心弾道弾となった右京は青森県を訪問する。

初恵の祖母・トヨ(山本陽子)は不思議な力を持つ呪術師だった。

「あなたも・・・人を呪殺なさったのですか」

「何人殺したか・・・数えられん」

「誰のせいでもねえ・・・天の裁きじゃよ」

「溺死の好きな神様なんですねえ」

もちろん・・・右京は・・・事故でも呪いでもなく・・・単なる殺人事件として処理を開始するのである。

捜査一課コンビは・・・右京と冠城とともに・・・唯一の手掛かりである最近死んだ宮田の部屋を訪問する。

「靴がイアン結びです」

「死体に靴を履かせたトリックですね」

「鑑識が入れば・・・何か出るかもしれません」

「しかし・・・何も出なければ誰が責任をとるんです」

「私がとります」

名乗りをあげた冠城だったが・・・巡査にとれる責任はあまりないのだった。

だが・・・不審を感じた伊丹刑事は同期の鑑識員に頼みこむのだった。

「何も出ないだと」

「指紋一つない・・・」

「しかし・・・大家がドアをあけたのに・・・」

「つまり・・・何者かが・・・証拠隠滅をはかったのだ」

それが・・・トヨの犯行であることは・・・大家の証言で明らかになる。

トヨは被害者の孫を装い・・・部屋に侵入していたのだった。

十三年前の事件でも・・・当時の捜査員・西村(鈴木正幸)が事件を隠蔽していたことが判明する。

姉のように慕っていた初恵のために脩斗のした犯行と知り・・・捜査員は目を瞑ったのである。

中学生であった脩斗には責任能力を問えなかった。

だが・・・第二、第三の事件は起こった。

溺死を装うための道具が・・・発見され・・・脩斗は犯行を自白する。

トヨは脩斗の連絡を受け・・・右京たちを監視し・・・証拠隠滅を行ったのだった。

だが・・・証拠隠滅のために・・・すべてを清掃したことが・・・仇となった。

右京はさらなる真相に迫り・・・それが初恵の犯行だったことを突き止める。

そして・・・第三の被害者の弁護人だった宮里弁護士(田窪一世)に初恵に暴言を吐くことを強要し・・・初恵の第四の犯行を誘引する。

もう・・・違法捜査とか・・・そういうレベルではないな。

この世界では右京は何をしても許されるのだ!

だが・・・宮里を殺害するために現れた初恵は・・・右京の追及をかわす。

「私・・・また・・・呪い殺してしまったのですね」

「いいえ・・・あなたは・・・その手で・・・人を殺したんですよ」

呪力により・・・初恵を二重人格化し・・・無垢の魂を守って来た祖母と幼馴染の努力は灰塵に帰した。

留置場で・・・己の犯した罪に向き合った初恵は・・・食器で頸動脈を切断し死へと逃避する。

留置場の鉄格子を思わず叩く右京だった。

その怒りは・・・罪を償わず自殺した初恵に向っていて・・・右京自身には向わないものと思われる。

一部お茶の間は・・・それはどうだろうと首を傾げるのだった。

法務事務次官の日下部(榎木孝明)はかっての部下である冠城に社課長の身辺調査を命じる。

マリアの存在を確認した冠城は社に取引を持ちかける。

「私はあなたの部下でない方がいい」

「なるほど・・・」

社は・・・甲斐峯秋に人事移動を依願する。

甲斐は確執のある衣笠副総監に頭を下げるのだった。

つかの間の優越感を味わった衣笠は・・・冠城の特命係への配置人事を発令するのだった。

こうして・・・特命係は・・・杉下警部と冠城巡査の相棒体制に戻ったのだった、。

社の身辺調査をしていた男は・・・何者かが山中に埋めた。

外交や公安の世界では・・・いつの間にか人がいなくなることは・・・よくあることなのだ。

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2016年10月12日 (水)

逃げるは恥だが役に立つ(新垣結衣)VSメディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断(吉岡里帆)VSそしてデラックスへ(鈴木亮平)

おいおいおい!

まあ・・・序盤なので。

秋ドラマのようなものが次々とスタートしていてスケジュール調整が難しいのである。

不動の(日)から検討してみると・・・。

(日)「真田丸」

(月)「夏目漱石の妻」→来週最終回→未定

(火)←ココ

(水)未定

(木)「黒い十人の女」

(金)「勇者ヨシヒコと導かれし七人」

(土)「忠臣蔵の恋」

・・・ということになっている。

さしあたって(火)は「あまちゃん」でお馴染みののん(本名能年玲奈)とトラブルを抱えている事務所の主軸であるガッキーこと新垣結衣(28)が抜群の安定感である。もはや、あばずれ女優のイメージはない。

脇役に真野恵里菜(25)も配置されていてキャスティング的には渋いのである。

一方、ガッキーの新たなるライバルと妄想できる逸材・吉岡里帆(23)をヒロインに配した「メディカルなんとか」は毒にも薬にもならない陳腐な医療ドラマだが・・・こういうドラマでも抜群の魅力を発揮していてさすがなんだな。ステップアップにはうってつけだが・・・レビューをする必要はあまり感じられなかった。

とにかく・・・九時から吉岡里帆、十時から新垣結衣の二本立てに一部お茶の間はうっとりだな。

で、『彼岸島 Love is over・最終回(全4話)』(TBSテレビ201610120158~)原作・松本光司、脚本・佐東みどり、演出・岩本晶を見た。不老不死で不死身の吸血鬼・雅(栗原類)を倒すために必要な「501ワクチン」を求めて彼岸島の秘密基地に潜入した宮本明(白石隼也)、弓矢の名人であるユキ(桜井美南)、爆弾魔の西山(阿部翔平)、案内人の冷(佐藤めぐみ)だったが・・・死角のない邪鬼の百目に遭遇し、絶体絶命のピンチとなる。そこに現れたのは明の兄である宮本篤(鈴木亮平)だった。

兄弟の絶妙な連携攻撃で百目は血の海に沈む。

「兄貴・・・ありがとう」

しかし、吸血鬼と化した篤は赤い目で弟を見つめるのだった。

「人間にとって・・・吸血鬼が敵であるように・・・吸血鬼にとって人間は敵だ」

「え」

「俺は雅様の命令で・・・お前より先に501ワクチンを手に入れる」

「ええ」

「生き残りたかったら・・・俺を倒せ」

「えええ」

苦悩する明を西山は抱きしめる。

「泣きたい時は泣けばいい」

「なぜ・・・お前の胸で泣かねばならんのだ」

秘密の研究室で捜索活動を続ける明に・・・冷は囁く。

「私はかって・・・吸血鬼たちの命令で・・・あなたたちを島に招いた」

「・・・」

「それをすべて・・・封印を解いた篤さんの責任と・・・詰ったこともあったわ」

「・・・」

「今は・・・そのことを謝りたいの」

「そ・・・それは・・・フラグじゃないか」

前座の帝国陸軍吸血鬼との小競り合いの後でついに発見される「501ワクチン」・・・。

そこに大薙刀を引っ提げた篤が現れる。

スタイリッシュな弁慶VS牛若丸の対決である。

しかし・・・圧倒的な技量を持つ篤の前に打破される明・・・。

振り下ろされる大薙刀の前に冷は身を投げる。

「・・・」

「篤さん・・・ごめんなさい・・・明さんとは戦わないで」

血まみれの冷を抱きとめる明。

篤は「501ワクチン」を回収すると・・・去って行った。

雅の命令は・・・「501ワクチン」の回収であり・・・明の殲滅ではなかったからである。

「みんなを・・・守って」

冷は明の腕の中で息をひきとった。

「二人は先に村に帰ってくれ」

「決心は変わらないの」

ユキは明の胸の中に飛び込んだ。

明は勃起したが・・・西山がいるので・・・それ以上のことはできなかった。

「俺は・・・必ず・・・501ワクチンを手に入れる・・・」

明は単身・・・兄を追うのだった。

そして・・・映画「彼岸島デラックス」へ・・・長いプロモーションだったなあ・・・。

映画もきっと頭悪い感じなんだろうなあ・・・。

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で、『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断・第1回』(フジテレビ20161011PM9~)脚本・田中眞一、演出・星野和成を見た。女医で女医でまた女医である。イケメンが押さえられなかったんだな・・・違うぞ。東光大学病院解析診断部がなぜ女医のみで構成されているのか・・・意味がわからない。東光大学病院の病院長・北畠昌幸(高橋克典)とタレント医師で解析診断部の部長・岩倉葉子(伊藤蘭)との権力闘争の結果なのか・・・。とにかく・・・「病名確定」ものである。それだけでは目新しくないので「女だらけ」にしたみたいだな。なんというお手軽な発想だ!

主人公の橘志帆(吉田羊)は過去に謎を秘めた脳神経外科医である。

しかし・・・手術中に幻覚を見るようになって廃業を決意する。

精神科を受診するべきだよね。

橘は自称・シングルマザーだが・・・娘の真央(藤澤遥)は何故か・・・とても存在感が希薄なのである。

幻覚は・・・混乱した事故現場・・・ストレッチャーで運ばれる重態の患者もしくは死体・・・。

「それ」について記憶が曖昧な橘なのだった。

そんな橘を解析診断部にスカウトする北畠病院長。

内科医の岩倉部長の下には・・・部長の腰巾着で神経内科医の村上夏海(笛木優子)、図体が大きい病理医の植松結衣(滝沢沙織)、救急救命医の里見藍(白鳥久美子)、何故かクールな外科医の新田雪野(相武紗季)という猛者たち・・・そして紅一点の・・・おい・・・研修医・田丸綾香(吉岡里帆)が配されている。

高圧的な岩倉部長に対して橘医師は硬軟とりまぜた対応で斬り込むという趣向である。

第一回のゲスト患者は・・・料理研究家の増山美希(堀内敬子)と保育園児の増山宏太(五十嵐陽向)であり・・・突如、吐血した宏太の消化器から釘が発見され・・・様々な疑惑が浮上する。

しかし・・・釘は忙しい母親にストレスを感じた宏太が「異食」により・・・自ら飲み込んだものだった。

シングルマザーの育児の悲哀を描いて幕というところだが・・・初回延長のためにもうひとひねりがあり・・・母子同時吐血の緊急事態が発生。

岩倉部長は誤診で・・・再生不良性貧血と診断して匙を投げるが橘医師は診断探偵として周辺捜査に挑み・・・病因を保育園で流行中のリンゴ病(伝染性紅斑)の感染によるものと特定するのだった。

正しい診断による適切な処置で母子は命を救われるのだった。

研修医というポジションで主人公のアシスタントを勤めることにより出番を確保するヒロインの・・・おい・・・田丸綾香にうっとりするしかないドラマなのだった。

現在では遅咲きと言える女優だが・・・ゆとりな教育実習生に続き、フレッシュな研修医を見せてもらえたらそれでいいよね。

婚期の遅れた病理医の植松結衣は合コンに夢中なので「私の言うことは絶対だ」と言わないのである。

「そんな病気があったのか」という驚きたい人は別にして・・・どうせなら「コウノドリ」くらいの甘さの方がエンターティメントとしては成功すると考える。

キャッチフレーズが「チーム・バチスタシリーズ」のスタッフが再結集なのだが・・・あれは医療ものというよりはミステリだし・・・そもそも宣伝文句になるほどヒットしていないんじゃないかな。なんだろう・・・自画自賛の一種なのか。

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GM〜踊れドクター

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第1回』(TBSテレビ20161011PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。原作ものの脚本では定評のある脚本家と主演女優のコンビは・・・「空飛ぶ広報室」(2013年TBSテレビ)、「掟上今日子の備忘録」(2015年日本テレビ)に続いて三度目である。最近の若手脚本家としては珍しい展開力である。「コード・ブルー」(脚本・林宏司)と「リーガル・ハイ」(脚本・古沢良太)でヒロインとして新人医師と新人弁護士という知的な役柄を確保した新垣結衣をより魅力的に仕上げた脚本家と言えるだろう。今回も・・・傑作を予感させるスタートである。

「ダメな私に恋してください」「重版出来!」「せいせいするほど、愛してる」とコミック原作を続けてきたこの枠自体も当たり外れは大きいながら一つの特性として馴染んできたよね。

無職の二十五歳・・・森山みくり(新垣結衣)は心理学を専攻とした大学での就職活動が実らず、大学院に進学、臨床心理士の資格を取得したが・・・またしても就職活動が実らず、派遣社員となったが派遣切りに遇い現在に至る。

選ばれなかった女である。

両親である森山栃男(宇梶剛士)と桜(富田靖子)夫妻と同居中なのだ。

気落ちする娘に・・・栃男はかって部下だった独身男の津崎平匡(星野源)の「家事手伝い」という仕事を宛がうのだった。

IT企業に勤めるシステムエンジニアの津崎は繊細な性格だった。

片づけられすぎるのも嫌だし・・・大雑把にやられても苛立つ神経質なタイプだった。

これに対し・・・家事一般を情熱大陸的でプロフェッショナルな仕事の流儀で取り組むみくりの「労働」がフィットしたのであった。

仕事ぶりを津崎に認められ・・・働く喜びを堪能するみくり・・・。

みくりによって快適になった暮らしに潤いを感じる津崎・・・。

二人の距離はゆっくりと縮まるのだった。

二人の周囲には・・・そこはかとなくコミカルな人材が集う。

津崎の同僚には猿飛佐助のような日野秀司(藤井隆)、結婚を必要ないものを買う行為と断じる風見涼太(大谷亮平)、心にあばずれ女を飼っている沼田頼綱(古田新太)などが配置され・・・肩を並べるだけでなんとなく面白いのだった。

みくりには友人で眉毛くっきり系の凛とした田中安恵(真野恵里菜)や・・・母親の姉で化粧品会社勤務の土屋百合(石田ゆり子)がいる。

独身を貫く百合を「百合伯母さん」と呼ぶと本人がショックを受けるので・・・みくには配慮して彼女を「百合ちゃん」と呼ぶのだった。

富田靖子の方が石田ゆり子より一学年上だが・・・ゆり子と靖子の姉妹もなんだかそれだけで面白いぞ。

就職にこだわるみくりは・・・主婦業が給与制なら・・・自分にもできるといつしか妄想していく。

徹夜続きの業務で体調を崩した津崎を家政婦として看護したみくりはうっかり・・・「どうせなら結婚して・・・給料をもらいたい」と漏らしてしまう。

その言葉に激しく心を揺さぶられる津崎だった。

みくりは恥ずかしさでのたうちまわり一人四十八手をサービスするのだった。

そんな折・・・気まぐれな両親が転居することになり・・・みくりの家政婦業にも終止符が打たれることになる。

家政婦の収入では・・・自立できないみくりだった。

業務終了の挨拶に来たみくりに・・・津崎は「事実婚」を申し出る。

入籍はせずに同居し・・・みくりを住み込みの家政婦として雇用するという提案である。

就職の決まった感じにみくりは天国にのぼる気持ちで「雇ってください」と承諾する。

夜の生活は抜きらしい。

そこで給与が発生するともはや「売春」だからな。

引越しの準備万端整った両親に「結婚」を報告する二人。

「お嬢さんをください」とは言えない津崎を「結婚しようと思って」とフォローするみくり。

「なんですってええええええええ」と絶叫する百合伯母さんだった。

こうして・・・「結婚」と称してプロフェッショナルな独身男と同居する処女の家政婦・・・という「物語」の幕が上がったのだった。

ああ・・・なんだか・・・とても愉快だなあ・・・。

どうということのない話なのになあ・・・。

脚本の勝利だよなあ・・・。

(火)は「逃げるは恥だが役に立つ」で決まりだなあ。

高性能な武器相手でも盛って対抗する健気さがすでに萌え要素だからなあ。

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2016年10月11日 (火)

月給二百円の男の妻と義理の舅(尾野真千子)月給四円の男と名前のない猫(黒島結菜)

ついに家を守る女として正しい妻の在り方を示し始めた今回である。

芸術家の妻としては・・・色々と理想的ではないわけであるが・・・漱石の妻として・・・漱石の家庭を守ったことは間違いないわけである。

その証拠に・・・漱石の一族は繁栄しているのだった。

人間の生きる意味が「繁殖」にあるのなら・・・ポンポン子供を産むことは正義なのだった。

そして・・・「有名人」となった漱石を・・・恐ろしい世間から守ることも・・・妻としての素晴らしい業績と言えるだろう。

浮世離れした男と・・・浮世の間に・・・「家」があり・・・漱石の妻は・・・見事にそれを守護したのである。

今回は・・・小説「坑夫/夏目漱石」(1908年)のモデルとなった荒井伴男が登場する。

たちまち「足尾から来た女」が匂い立つのは脚本家が一緒だからだ。

で、『夏目漱石の妻・第3回』(NHK総合20161008PM9~)原案・夏目鏡子・松岡譲、脚本・池端俊策、演出・榎戸崇泰を見た。明治三十八年(1905年)の雑誌「ホトトギス」一月号に発表された連載小説「吾輩は猫である」は人気を博し、夏目金之助(長谷川博己)は突如として小説家「漱石」という著名人となった。すでに長女・筆子(数え七歳)、次女・恒子(数え五歳)、三女・栄子(数え三歳)の母親となっている金之助の妻・鏡子(尾野真千子)は年末に四女・愛子を出産する。

明治三十九年(1906年)の暮れ・・・漱石は千駄木から西片町に転居する。

この頃から鏡子の従妹である山田房子(黒島結菜)が花嫁修業のための家事手伝いとして同居を始めたらしい。

雑誌「ホトトギス」に小説「坊ちゃん」、小説「野分」を続けて発表した漱石は教職を辞し、職業作家になる希望があった。

朝日新聞社から・・・社員として小説を執筆するという話が舞い込む。

「反対です」

鏡子は・・・教職による安定収入を第一に考えていた。

「今だって・・・質屋の世話になっているのですよ」

「・・・」

夫の胃の薬の購入を忘れても・・・占い師の言うことは聞く鏡子だった。

「人形を立たせておくと不吉だ」と言われれば横に寝かせる女である。

迷信深いのである。

そして・・・金之助の周囲には不気味な人影が現れる。

「新聞は素晴らしいではありませんか」

夏目家に来て初めて新聞を読んだ房子は・・・女学校を卒業している。

学校嫌いの鏡子とは少し違う教養を積んでいたらしい。

「あんなもの・・・瓦版みたいなものじゃない・・・賤しい職業よ」

「でも・・・お給料は・・・二百円だそうですよ」

「え」

明治四十年(1907年)四月・・・金之助は一切の教職を辞し・・・朝日新聞社に入社した。

鏡子は第五子を妊娠していた。

貧乏人の子沢山である。

その上・・・金之助の弟子たちが多数出入りし、菓子代も馬鹿にならないのである。

この頃、夏目家には小説「三四郎」のモデルと言われる小宮豊隆、まもなく平塚らいてうと心中未遂事件を起こす森田草平、児童文芸誌「赤い鳥」でおなじみ鈴木三重吉などが群がっていた。

そこへ・・・塩原昌之助(竹中直人)が現れる。

金之助にとって二度目の養父である。

昌之助は夏目家の奉公人・やすと結婚し、金之助を養子としたのである。

しかし、金之助が九歳の時に昌之助とやすは離婚し、金之助は夏目家に戻る。

だが・・・実父の直克の厳しい態度と・・・養父の昌之助の甘い態度の間で・・・金之助は揺れたのだった。

明治二十年(1887年)、金之助の長兄・大助、次兄・栄之助が相次いで逝去し、跡継ぎが三兄の和三郎だけとなった夏目家では・・・「金」で金之助の籍を取り戻したのだった。

優しかった養父が・・・金で自分を売ったことが・・・またまた金之助の虚弱な精神を揺らしたわけである。

その昌之助は「縁切りの後も不実・不人情なくつきあう」という証文を手に「金」の無心に現れたのだった。

胃病に苦しむ金之助の病弱な消化器への負担が高まるのである。

「雨漏りが激しいんだ・・・二百円・・・都合してくれないか」

「そんな金はない」

「お前が馬になれと言えば馬になり・・・食べたいと言ったものは食べさせたじゃないか・・・」

苦悶する金之助。

元養父と元養子の間に割り込む鏡子である。

「今日のところはお帰りください」

「仮病じゃないのか」

「これが仮病にみえますか」

「よしなさい・・・その人は優しいお父さんだったんだ」

金之助の言葉に怯む昌之助だった。

雨の中を立ち去る昌之助を・・・天井裏から取り出したへそくり「百円」を持って追いかける鏡子。

「お金が入用なんでしょう」

「俺だって・・・昔は新宿の名主として・・・羽振りがよかったこともあったんだぜ・・・偉い先生の奥様にはわからないかもしれないが・・・落ちぶれるのは惨めなものさ」

「わかりますよ・・・私の父もそうでしたから」

「そうかい」

「ここに百円あります・・・爪に火を灯して貯めたお金です・・・家だって質屋のお世話になってるんですよ・・・証文と交換です」

「え」

「お金が入用なんでしょう」

濡れそぼり・・・鏡子は夏目家に戻る。

「あの人はもう・・・来ないと思います」

「・・・」

「おさびしいですか」

「私は・・・君ほど強くないからな・・・」

「・・・」

金之助は濡れた証文を破り捨てた。

甘い感傷の名残を・・・。

六月に・・・長男・純一が誕生し、金之助は小説「虞美人草」を連載開始する。

「運命は神の考えるものだ。人間は人間らしく働けばそれで結構だ。日露戦争を見ろ・・・たまたま風邪が癒れば長命だと思ってる」

「日本が短命だと云うのかね」

「日本と露西亜ロシアの戦争じゃない。人種と人種の戦争だよ」

「・・・」

「すべてが喜劇である。最後に一つの問題が残る。――生か死か。これが悲劇である」

「ここでは喜劇ばかり流行る」

九月、夏目家は早稲田に転居する。

近所で迷った猫を連れて・・・荒井伴男(満島真之介)が現れる。

女性問題で・・・出奔した過去を持つ伴男の溢れ出る色気に・・・胸がときめくお年頃らしい房子だった。

しかし・・・薄汚い身なりの伴男に・・・危険な匂いを察知する鏡子である。

「足尾銅山からきた男」は・・・自分の「人生の物語」を金之助に売りに来たのだった。

「家を出た私は・・・地の果てまで潜ってやろうと思ったのです」

金之助は男の「話」に夢中になるのだった。

「あんな汚い男・・・」

「でも・・・算術は得意みたいですよ」

鏡子の警戒警報が耳に入らない房子だった。

やがて・・・小説「坑夫」のモデルとなる荒井伴男は月に四円の給金で飯場の帳附をやっていた男なのである。

夜も更けて鏡子は金之助を手招きする。

「あなた・・・いい加減にして」

「今・・・いいところなんだ」

「あなたの身体が心配なんです」

「君は・・・芸術を解さない女だな」

「あなたを守るのが私の仕事ですから」

泥だらけの足の男は・・・金之助から礼金を受け取ると夜の街へと去って行った。

房子は・・・「運命」を感じたらしい。

そして・・・街で政府転覆を企てる反逆者たちの取り締まりの現場に遭遇した房子は・・・伴男と再会するのである。

房子の心は躍ったらしい・・・。

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2016年10月10日 (月)

皆から望まれること・・・それこそがあなたの望みじゃないの・・・天の恵みを素直に受け取りなさいよ(長澤まさみ)

知ったかぶりというものがある。

本当は知らないけれど知った風に装うことである。

あらゆる・・・歴史に関係する人々は基本的には知ったかぶりである。

だって・・・その場にいたわけじゃないんだから・・・。

つい数年前の2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震によって東京電力の福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融についてさえ・・・現場にいた人間は限られるし・・・現場にいたとしても本当のことをすべて知っている人は一人もいないのである。

なぜならば・・・人は神ではないからだ。

現場の責任者だった吉田昌郎所長も2013年7月9日に・・・現場で浴びた放射能との因果関係はなかったとされる食道癌のため慶應義塾大学病院で死去した。

死者を問いつめることは誰にもできない。

同じように・・・真田信繁を問いつめることもできないのだった。

それでも・・・そこに歴史があったことを知ることは大事なのである。

史実的には「真田幸村」という武将が存在していなかったとしても・・・何故・・・真田信繁が・・・その名で世に知られるようになったのか・・・それを紐解くのもまた・・・歴史に触れる行為なのである。

人というはかない存在が百万年の時を経て・・・現在に至ったことを知るのは・・・時に生きるヒントとなるし・・・なんてったって面白いのである。

大河ドラマに出演するとどうしてもくのいちになってしまう長澤まさみが・・・もう一人の真田信繁として・・・真田幸村を産み落す。

ここに光と影の交錯する人間ドラマがあります。

で、『真田丸・第40回』(NHK総合20161009M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・土井祥平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は豊臣家の家老にして摂津国茨木城主である片桐且元の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。なんだか・・・今までで一番待った気がしますが・・・あくまでマイペースでお願いします。主人公がどこにでも顔を出すことと・・・脇役が主人公に会いに来ることは似て非なるものですねえ。もちろん・・・大坂城脱出後の且元が信繫の勧誘に来るのは少し困難だとは思いますが・・・関ヶ原の合戦の後・・・幽閉された信繫に・・・外交最前線の武将が事情を説明する。しかも・・・信繫と且元には長い長い交際期間があるわけでございます。且元がうっかり漏らした一言で殺されかかったこともある信繫。太閤の死を看取った二人・・・。石田三成も・・・大谷吉継も消えた世界で・・・生き残った二人。一人は主君・秀頼に放逐され・・・一人は天下人・家康に幽閉されている。追われた者が囚われ人に後事を託す・・・すでにそれ自体が前途の多難さを示していますよね。素晴らしい展開です。大坂で知り合った且元によって事情を知り・・・悩む信繫に・・・真田の里以来の側室のようなものが・・・道を示す。実にドラマチックで「きり」が信繫の「背中」を押し始めるともう涙が止まりませんでした。いつだって・・・真田信繁を一番に考えて生きてきた「女」の確信的言動・・・。「女」を大切にはしてこなかったけれど頼りにしてきた男の・・・軽い感謝の言葉。これぞ・・・戦国ロマンでございまする。命よりも大切なものがこの世にある証ですな。

Sanada40 慶長十九年(1614年)九月十二日、片桐且元と大蔵卿局ら駿府を発つ。十七日、且元は上洛。大蔵卿らは大坂に向う。十八日、且元は京都所司代板倉勝重と面談。十九日、且元は大坂に到着。二十日、且元は大坂城で豊臣秀頼に徳川家康の内意について報告する。すでに且元は先着した大蔵卿らによる報告で謀反の疑いをかけられていた。二十二日、大野治長ら秀頼側近は且元の誅殺を決する。城中の織田常真は且元に警告。二十三日、淀殿が且元を召喚するが且元は病と称して応ぜず。二十五日、秀頼側近勢が片桐屋敷を包囲。二十六日、治長は且元討伐を速水守久ら七手組頭に命ずる。速水らはこれを拒否。二十八日、織田有楽斎が仲介し、衝突を避けるために且元と治長は人質を交換。織田常真は大坂城を出奔する。十月朔日、且元は大坂城を退去し、居城である摂津国茨城城へ向かう。この頃、駿府城の家康は大坂城の九月末の騒動を知る。家康に対する取次役である且元を秀頼が放逐することは幕府に対する断交であり宣戦布告を意味していた。家康は井伊直勝、藤堂高虎らに京への進発を命じ、伊勢国亀山城主・松平忠明、桑名城主・本多忠勝らに近江国街道筋の警戒を命ずる。さらに全国の諸大名に陣触を発した。大野治長は九度山の真田信繁に参陣を要請する使者を送る。

真田忍軍は関ヶ原の合戦の後、真田信之の支配下に入っていたが・・・九度山の昌幸を慕うものも多く・・・信之も昌幸の生前には父との連携を保っていた。昌幸が逝去し、東西の手切れが近付く中・・・信之は信繫の自重を促したが・・・配下の忍びたちには選択を許した。忍びたちは掟で縛られているものの自主独立の気風が強い。

忍びは実力を最も尊ぶ。

上忍としての力量は・・・信繫が上と見るものも多かった。

かえって・・・信繫が兄を慮り・・・昌幸死後も九度山に残ろうとする忍びたちの何人かを説得し・・・上田城に戻している。

しかし・・・関ヶ原の合戦以前から・・・大坂、奈良、京都の忍び寺で養育された下忍の多くは信繫を主と仰ぐように洗脳されている。

信之、信繫兄弟の庶兄であり、信繫の影武者でもある真田幸村と庶弟である忍びの達人真田佐助はすでに・・・九度山周辺の農民になりすましていた。

一家が丸ごと入れ替わっていることに親類筋も気がつかない。

真田信繁の監視役を命じられている紀州浅野家も九度山周辺に目付を配置していたが・・・その目付けもまた真田の忍びに入れ替わっていた。

大坂城の名のある武将の郎党や・・・京都の寺院の僧侶にも真田の忍びは浸透していた。

信繫は・・・家康が・・・片桐且元を使い・・・秀頼を追い込んでいく過程をすべて・・・観測していたのだった。

大坂城よりの密使が・・・九度山に到着したのは十月三日の夜明け前のことだった。

「なにとぞ・・・秀頼様ご加勢願いたい」

「承知」

「大坂城にはいつ参られるだろうか」

「これより参る」

「え」

どんでん返しの壁が開くと・・・輿が現れた。

正室の春と幼い子女がすでに腰に乗っていた。

腰を担ぐのは高野聖の装束を身に付けた真田力士衆である。

真田屋敷の外で馬が嘶く。

屋敷を歩み出る信繫に従った大野治長の密使は戦慄する。

屋敷の外には数十騎の武者が出現していた。

修験者姿の信繫は農民姿の真田佐助が轡をとる白馬に騎乗する。

「では・・・参ろうか」

周辺には霧隠才蔵の生じさせた朝靄が立ち込めている。

紀州から摂津へ抜ける街道筋の村々は・・・静まりかえっていた。

真田幸村の率いる忍びの群れが・・・農民たちを眠らせているのである。

辻々で・・・数騎の武者が合流する。

武具を背負った足軽たちが一人また一人と現れる。

国境では妙智院こと昌幸の末弟・真田幸景の率いる根来鉄砲忍びの一団が合流する。

六人の鉄砲頭に率いられた五十人一組・・・三百人の鉄砲放ちである。

紀州浅野藩では事態に気が付き追手を出したがその前途を一揆衆が阻むのだった。

真田忍軍に煽動された農民たちが蜂起したのであった。

無人の野を行くかのように真田信繁の軍団は行軍を続ける。

天王寺に差しかかった軍団はすでに二千人を越えていた。

兄信之の率いる兵の半数ほどが・・・信繫に従っていることになる。

もちろん・・・それは真田藩の員数外・・・影の軍団によるものである。

信繫の手勢は全員が忍びだった。

十月五日・・・真田信繁は威風堂々・・・大坂城に入城した。

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2016年10月 9日 (日)

恋と忠義を秤にかける清らかな一人の女(武井咲)

まもなく衆合地獄、叫喚地獄に堕ちる老婆が妄言を吐いたとしてもどうということはない。

邪淫の罪を犯したものにはそれなりの責め苦が待っている。

愛するものを誰かに奪われた時・・・どのようにふるまうのが正しいのかは人それぞれの心の問題である。

そこには愚かさや賢さの入る余地はない。

死刑制度もまた・・・道具に過ぎない。

人間は過ちを犯す。

過ちだと知れば謝罪をする。

しかし・・・ごめんですんだら警察はいらないのである。

殺してしまったものをどうするのか・・・生きているものたちは考えあぐねる。

罪を犯さぬものなどいない・・・と考えれば人が人を裁くことに躊躇もするだろう。

しかし・・・それでも人は生きて行く。

よりよく生きるために知恵を絞る。

死刑制度は善であり同時に悪である。

史実としての赤穂事件が「忠臣蔵」の物語として語り継がれるのは・・・罪と罰のあらゆる要素が混在しているからである。

「ばかども」と言い放った後で「ごめん・・・言いすぎた」で済めば世の中は平和だ。

「婆さん、口が達者じゃねえか」と苦笑するしかないのである。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第3回』(NHK総合201610081810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。「罪の意識」というのも不思議な精神の作用である。良心の呵責に苦しむ・・・とか・・・心が咎める・・・などという経験をしたことがない人もいるだろうが・・・普通はある。それが・・・基本的には後天的な抑圧による結果だとしても・・・共通認識は可能だろう。そういうものがなければ心に陰影は生じない。たとえば・・・殺人について何の抵抗も感じないサイコパスだったとしても・・・それがタブーに触れているという認識から生ずる何らかの葛藤を持つ可能性はある。人間の精神はその程度には複雑なものである。

播磨国赤穂藩の藩主夫人・阿久里(田中麗奈)は延宝二年(1674年)の生れなので元禄十三年(1700年)には数えで二十七歳になっている。

生れた直後に浅野内匠頭長矩(今井翼)の正室と定められ、天和三年(1683年)に十歳で婚儀に至った。結婚して十七年の歳月が過ぎて・・・子供に恵まれなかったのである。

そのために内匠頭の弟・浅野大学長広(中村倫也)を養嗣子として迎えている。

内匠頭と大学は兄弟でありながら・・・性格に相違があった。

質素倹約好きの内匠頭に対して大学には放蕩三昧の気があったのである。

内匠頭は鬱屈し・・・精神的にも破綻しかかっていた。

そのような不安を抱えている藩主夫人と知りつつ・・・侍女として奉公しているきよ(武井咲)は願わずにはいられなかったのである。

「仙桂尼様から縁談の話がございました」

(しかし・・・私には心に決めた人がいる)・・・とはきよには言えなかった。

「けれど・・・私はお勤めを続けたいのでございます」

きよは・・・阿久里に見つめられ・・・心の奥底を覗かれたような心持になった。

それは・・・きよの希望だったのかもしれない。

「考えておきましょう」

阿久里は微笑んだ。

堀部安兵衛の妻・ほり(陽月華)がまたしても変事をきよに伝える。

きよの兄・・・勝田善左衛門(大東駿介)が姿を現したが・・・礒貝十郎左衛門(福士誠治)に問いつめられ・・・また姿を消したというのである。

その時・・・善左衛門の口から・・・きよと村松三太夫(中尾明慶)の縁談の話が出たというのだった。

(縁談のことを知られてしまった・・・)

きよの心は乱れるのだった。

かって・・・世は乱れ・・・親子兄弟が殺し合う時代があった。

それから百年が過ぎ・・・戦乱を治めた家康は平和の世を築いた。

そこは世襲を軸とした管理社会である。

支配者として君臨する武家に自由は許されない。

自由意思は争いの源だからである。

阿久里は物心のつく前に配偶者が定められていた。

惚れた女と結ばれるために・・・きよの父親・勝田玄哲(平田満)は武士の身分を捨てなければならなかったのである。

きよが・・・縁談の話を先延ばしにすることがすでに恐ろしいことだったのだ。

それでも・・・きよは・・・ただ・・・礒貝十郎左衛門と結ばれることを願わずにはいられなかった。

やがて・・・阿久里は仙桂尼(三田佳子)に文を届けさせた。

阿久里はきよの願いを聞き届けたのである。

「縁談の先延ばし・・・確かに承知しました」

文を届けたきよに・・・仙桂尼は言葉を続けた。

「忠義というものは・・・殿方のためにだけある言葉ではありませんよ」

きよの心に重くのしかかる「忠義」の二文字である。

主に対して真心で仕えること・・・そこに求められるのは誠心誠意であり・・・偽りがあってはならないのである。

すでにきよの言動には・・・淫らな心が混交しているのだ。

儒教的徳目では主君に対する「忠」と親に対する「孝」が時に対立する。

武士にあっては「孝行」よりも「忠義」が優先されることは言うまでもない。

主君のために切腹することの美しさが讃えられるのだ。

待ちに待った礒貝十郎左衛門との逢瀬の日・・・。

きよは苦しい心情を打ち明ける。

「縁談の話があります」

「事実であったか」

「けれど・・・阿久里様に縁談の先延ばしをお願いしました」

喜びに顔が綻ぶ十郎左衛門。

「私は・・・恩ある仙桂尼様や・・・阿久里様を裏切った気持ちがいたします」

「そなたの心は・・・あいわかった・・・しかし・・・そなたと夫婦になることは私にとってどうしても譲れぬこと・・・」

「・・・」

「もうしばらく・・・心穏やかに・・・待ってもらえぬか」

「はい」

きよは自分の運命を十郎左衛門に委ねる他に道はないのである。

明けて元禄十四年(1701年)・・・内匠頭は二度目となる勅使饗応役を幕府より拝命するのだった。

毎年正月、幕府は京都の天皇に対して年賀を奏上する。

これに対して天皇は、答礼として二月下旬から三月半ばにかけて勅使を江戸へ派遣する。

勅使饗応役とは文字通り・・・勅使を接待し馳走してもてなす役目である。

幕府の役人は内匠頭に対し「質素倹約を旨とせよ」と申し添えた。

内匠頭が天和三年(1683年)に最初の饗応役を勤めた時の予算は四百両だった。

そして・・・前年の饗応役であった豊後国臼杵藩は千二百両を費やした。

今回・・・内匠頭は七百両という予算を計上したのである。

「七百両・・・」

国元で見積もりの報告を受けた赤穂藩家老の大石内蔵助(石丸幹二)は危惧を感じる。

「それでは・・・賄えぬ」

内蔵助は早飛脚で予算の変更を申し入れたが・・・時すでに遅かったのである。

第百十三代天皇である東山天皇は前権大納言柳原資廉と前権中納言高野保春を江戸に派遣していた。

勅使饗応指南役である高家衆筆頭の吉良上野介義央(伊武雅刀)は遅れて京を出る。

内蔵助が案じるのは高家に対して指南料として贈る進物の予算が不足することである。

生真面目な主君の性格が・・・内蔵助の胸を騒がせる・・・。

江戸屋敷には・・・切腹覚悟で・・・主君を諌める忠義のものはいなかったのである。

藩の財政も厳しく・・・藩主が緊縮財政で動くことはむしろ望ましかったのだ。

三月・・・勅使の宿泊する伝奏屋敷に・・・饗応準備のために内匠頭自身が泊まり込む日が迫っていた。

「役目が無事に済んだら・・・願いの儀を聞き入れよう」

内匠頭は・・・遠慮を重ねる十郎左衛門に告げた。

「ありがたき仕合せにございまする」

つまり・・・この戦いが済んだら結婚しなよ・・・ということである。

これ以上ない・・・典型的なフラグが立ったのだった。

伝奏屋敷に向う内匠頭のために茶を点てる阿久里・・・。

「そなたの点てる茶は格別じゃ」

「お体にお気をつけくださいませ」

完全なる永遠の別離が香り立つのだった。

きよは十郎左衛門からの文を受け取る。

「お役目が無事済めば祝言をあげる」

ああああああああ・・・と叫びたいお茶の間の忠臣蔵愛好家一同だった。

上野介が京から戻った。

質素な進物を携えて挨拶に罷り出る内匠頭・・・。

進物を一瞥し上野介は哄笑する。

「ハハハハハハハ・・・ヤマトの諸君!」

高笑いが江戸の春の空に消えて行くのだった。

「やはり・・・最終日の宴は正装するのでございますよね」

「内輪のパーティーだからラフなスタイルでいいのよ」

よくある遺恨の発生である。

運命の三月十四日が迫っていた。

ホワイトデーではありません。

そして・・・きよと十郎左衛門の恋は・・・。

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2016年10月 8日 (土)

勇者ヨシヒコと導かれし七人(山田孝之)四股踏んじゃった(木南晴夏)

ついに・・・福田雄一作品をレギュラーでレビューするのか。

まあ・・・コンプリートを目指す姿勢です。

なにしろ・・・そこそこ面白いので・・・レビューする意味がないという立場じゃなかったのか。

まあ・・・面白い人には面白く・・・そうでない人にはそうでもない作品だからな。

だからまあ・・・あまり深く考えずに・・・妄想していきたいと考えました。

「勇者ヨシヒコと魔王の城」(2011年)、「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」(2012年)に続く第三シリーズである。

本ブログの文中でも前フリなんかではちょこちょこ言及しているからな。

ファミリー・コンピュータの「ドラゴンクエスト」(1986年)から三十年である。

昭和だったか・・・昭和だったねえ。

で、『勇者ヨシヒコと導かれし七人・第1回』(テレビ東京201610080018~)脚本・演出・福田雄一を見た。「物語」には送り手と受け手があるのが基本である。ロールプレイングゲームはそこに「受け手参加型」というひとつの展開を持ちこんだ。本来、語り部と聴衆は「対話」を潜ませているものである。拍手や歓声、野次から・・・質疑応答・・・さらに・・・受け手の解釈まで・・・物語は常に一方通行のものではないのだ。しかし・・・それでも・・・物語の登場人物の行動を受け手が選択できるというシステムは・・・画期的なものだったのである。

物語の中で・・・受け手が生きていく・・・それは恐ろしいことなのである。

それを知ってしまった世代が・・・すでにそのことに郷愁を感じる時代である。

「懐かしくて珍しい」・・・面白さの基本を背負って・・・「ドラクエのパロディー」が開始されたのだった。

ダンジョンを進み・・・魔王の城に乗り込んだ・・・勇者ヨシヒコ(山田孝之)はお馴染みのパーティー(仲間たち)と共に決戦に挑む・・・いきなりクライマックスというネタである。

百戦錬磨の戦士ダンジョー(宅麻伸)、ちょっとした特技を持つ村娘のムラサキ(木南晴夏)、あまり役に立たない魔法使いのメレブ(ムロツヨシ)・・・すでに登場するだけで認知のドーパミンにより気分が高揚するメンバーたちなのだ。

しかし・・・待ちかまえる魔王バルザス(声・中井和哉)は四人を嘲笑う。

「百年早い・・・しかし・・・百年後では寿命が尽きておる」

四人はかごを背負っていて・・・かごの中身は「薬草」である。

メレブは危険を察知する。

「ラスボス相手の対戦で・・・回復アイテムが・・・やくそう・・・ってまずいよね」

「そうなんですか」

ヨシヒコは素直な性格なので・・・メレブのアドバイスは真面目に聞くのだ。

「だって・・・これ・・・ほら・・・回復力最低じゃない・・・ここは逃げるを選択するべきだよ」

「魔王相手に・・・逃げるのですか」

「それは・・・ちょっと無理なんじゃないの」

ムラサキが疑問を呈するのだった。

「いや・・・戦っても死ぬだけだから・・・ここは逃げるに賭けるべきだ」

「逃げましょう」

しかし・・・魔王の攻撃が四人にヒットするのだった。

「逃げられなかったじゃねえか」

「ここはやくそうで回復しましょう」

「しかし・・・こうしてみると・・・やくそうの使い方がわからないな・・・」

「え」

「ほら・・・ドラ・・・クエ・・・ではコマンドでつかうだけだから」

「何の話ですか」

「とにかく・・・ぬるのか・・・それとも飲むのか・・・ムロ鍋にするのか」

「とにかく食べてみよう」

ダンジョーがやくそうを口にする。

「少しも効き目がないな」

「おっさん・・・それ毒消しじゃないの」

「そうか」

「よし・・・私が食べてみます」

ヨシヒコは薬草を食べた!

「どう?」

「少しだけ・・・体力が回復した気がします」

「だから・・・最初から言ってるじゃないか」

しかし・・・攻撃のターンなので無謀にも魔王に剣を振るうヨシヒコ。

魔王はノーダメージである。

「あ」

そして・・・魔王の攻撃を食らった四人は意識を失うのだった。

例の「教会」である。

毒舌の神父の前で三つの棺桶を従えて目覚めるヨシヒコ。

「レベル18で・・・魔王と戦うなんて・・・アホですか」

「レベル18・・・なんとなくスムーズにことが運んだので」

「サクサクですか・・・サクサクするプレイヤーに思わぬ落とし穴で~す」

「サクサク・・・」

「そういうとこ」

「どういうとこですか」

「ダンジョーさんは100ゴールド・・・ムラサキさんは80ゴールド・・・メレブは3ゴールドです」

「お金ありません」

「金も力もないなんて神をも恐れぬ振る舞いで~す」

小銭を稼ぐためにいつものモンスターと戦うヨシヒコだった。

スライムたちはザザザと逃げ、ゴーストはメダパニでヨシヒコを混乱させる。

復活した仲間たちとレベルアップの旅をするヨシヒコの前に例によって盗賊が現れる。

ここまで・・・盗賊と言えば・・・ビドー(細田善彦)、ザジ(青木崇高)、メンタリスト(戸次重幸)、エリザ(指原莉乃)、盗賊D(沢村一樹)、盗賊E(古田新太)などが登場したが・・・今回はいきなり・・・盗賊A(菅田将暉)である。

豪華ゲストは・・・広報しない方針らしい。

鈍感な盗賊Aは背後に・・・自分を暗殺しようとする忍者(戸塚純貴)がいるのに気がつかない。

「後ろにいるだろう」とメレブは忠告するが・・・盗賊Aは目に入らないくりかえしのギャグを展開する。

基本的に・・・あらゆることがチープであることがセールスポイントだが・・・豪華ゲストがくだらないことをするのも範囲内だ。

最後は背中で笑いをこらえる盗賊Aを楽しむのだ。

盗賊はヨシヒコの眠らせる魔力を持つ「いざないの剣」を罵倒する。

「相手を殺さずに眠らせるだけなんて・・・そんな甘いことがこの世界で通用すると思うのか」

ヨシヒコは先に忍者を眠らせる。

「この男は・・・」

「知り合いなの」

盗賊と忍者の関係に興味を持つムラサキ。

「奇跡的な再会だ・・・」

しかし、話の途中で盗賊も眠らせるヨシヒコだった。

「話、聞きたかったのに~」

「先を急がねばならない」

肝心なことはスルーというスカシの笑いも重要な要素である。

キラーマシンの連続攻撃にも対応できるレベルとなった一行。

焚き火を囲んで・・・語りあう夜。

「いくら倒しても魔物は出てくるね」とムラサキ。

「それが世界というものだ」とダンジョー。

「悪を倒し続ければいつか善だけが残る」とヨシヒコ。

「いいムードのところをなんだけど・・・レベルアップした時に新しい呪文を会得した」

「また・・・どうせくだらない呪文でしょう」

「スモーデ」

気に入らないことがあると相撲で決着をつけたくなる呪文である。

たちまち、横綱土俵入りを「テンツクテンテントンストトン」とサービスするムラサキだった。

「新しい呪文とは」

「ワキガンテ」

ヨシヒコの腋臭が増幅し・・・一同悶絶する。

「後はとどめを・・・」

「パーティーが自滅しています」

「改良の余地があるな」

ついにレベルが対魔王戦に対応できるまでにアップする。

再び・・・魔王に挑む四人は・・・武装も華々しい感じになっているのだった。

ヨシヒコとダンジョーの同時攻撃は・・・炎と雷の効果つきである。

ムラサキも攻守双方の強力な呪文で支援する。

メレブも「スイーツ」で花を添える。

「役に立ってないでしょう」とムラサキ。

「炎に焼かれ・・・雷に痺れいる上に・・・甘いものが食べたくてたまらないんだぜ・・・想像してみろよ」

「できんわ」

「甘いものが食べたい・・・」

魔王は最後の叫びを残して滅した。

勝利の余韻にひたる一行の前に・・・仏(佐藤二朗)が現れる。

3D眼鏡、日食グラスに続いてヨシヒコが仏を視るための道具はウルトラアイである。

「デュワッて言うのかと思ったわ・・・あのね・・・いい最終回だったみたいなムードでどうするの・・・初回だからね」

ここから・・・延々と仏のアドリブ独演会である。

「理想のくびれ・・・じゃなくて・・・あの魔王はいわば・・・舛添都知事みたいなものだから・・・本番はこれからよ」

「そうなのですか」

「魔王の七つの弱点を攻撃できる・・・運命に導かれし七人を求めよ・・・これが今回の大筋であ~る」

故郷ガボイに戻るヨシヒコ。

「兄さま・・・お帰りになったのですね」

美しい妹のヒサ(岡本あずさ)が出迎える。

「いや・・・これから旅立つのだ」

「え」

こうして・・・冒険の旅は始った。

「殺したがるばかどもと戦うために・・・私的制裁を加えるのが英雄の務め」なのである。

加害者に極刑を望む被害者遺族と国家による殺人を許さない善意の第三者のすれ違う世界の片隅で・・・物語は始るのだった。

性善説を信じれば詐偽の被害に遭う場合もあるので最後は自己責任で。

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恋の合宿免許っ!

ニーチェ先生

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2016年10月 7日 (金)

二話連続でクローゼットに隠れる女(成海璃子)

濃厚なキスシーンをサービスしながらも・・・クズを演じる二人の女優。

脚本家の心に眠るサディズムが遺憾なく発揮されているようだ。

一方・・・若者たちが修羅場やラブ・シーンに突入している間、飲んだくれる中年女優二人である。

殺伐としていながら哀愁が漂うのだった。

水野美紀といえば・・・様々な役を演じてきたベテランだが・・・つまるところ・・・「踊る大捜査線」」(1997年の柏木雪乃が当たり役である。

今回の役名は如野佳代(ゆきの・かよ)で・・・「雪乃かよっ」ということなのだと妄想できる。

佐藤仁美といえば映画「バウンス ko GALS」(1997年)のジョンコだが・・・あれからもう二十年近く、経つのだなあ。

二人とも・・・二十世紀には可愛かったのになあ・・・。

おいおいおいおい。

で、『黒い十人の女・第2回』(日本テレビ201610062359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・渡部亮平を見た。東京都の市場移転問題がワイド・ショーを含めたニュース・ショーを賑わすけだが・・・地方在住の人々にとっては基本的にどうでもいい問題なのである。そもそもすでに相当な放射能汚染が行われている土地で今さら「食の安全」もクソもない。おいおい。妄想的には・・・盛り土がなされない云々の浮上は2011年の話なのである。つまり、盛る予定の綺麗な土がなくなっちゃったという話ではないか・・・おいおいおい。なぜか・・・人は浮気をしたがるものだ。しかし・・・交際相手の浮気はなんだか許せないのである。そして・・・そういう他人のあれやこれやを面白がる人も一定数いる。同盟国に裏切られたら亡国の危機であるが・・・愛の裏切りも時には人を死の淵に追いやるものだ。けれど・・・冷静に考えれば・・・すべては気の迷いですから。

「でも・・・好きなんでしょう・・・他人の不幸が」

蜜の味だからねえ。

東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)はドラマプロデューサーの風松吉(船越英一郎)と深い関係になってしまうが・・・風松吉は妻帯者だった。

それどころか・・・松吉には九人の愛人がいる・・・と愛人仲間の劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)・・・。

飲み物ぶっかけ能力の高いアソシエイトプロデューサーの弥上美羽(佐藤仁美)もまた風の愛人の一人であると佳代に紹介されて戸惑う久未である。

昔は「浮気は男の甲斐性」などと言い・・・経済力の高さによって愛人数が決まっていたわけである・・・おいっ。

イスラム教徒が一夫多妻を維持するのにも経済力が必要である。つまり・・・イスラム教徒は昔から貧乏で結婚できない男が多いわけである・・・おいおいおい。

しかし・・・現代で正妻の他に愛人九人を維持するのは「男の甲斐性」としてかなり困難なのである。

現在・・・判明している愛人のうち・・・二人は職場恋愛だ。

風にとって久未は勤務先の受付嬢。美羽は上司と部下の関係である。

つまり・・・近場で手をつけている。

風は愛人たちを「食事」に誘うわけだが・・・職業的に・・・「飲食費」を必要経費として計上できる立場である。

つまり・・・「打合せと称する」わけである。

そういう意味で・・・仕事の接点のない久未が一番、金のかかる女なのかもしれない。

次に・・・愛の巣の問題があるが・・・相手が一人暮らしの女性ならばそこで処理するのだろう。

ホテル代がバカにならないんだよねえ。おいっ。

さらに・・・プレゼントは久未の場合、自分のプロデュースしたドラマ「恋人たちの食生活」のコンプリートボックスを風から贈られていた。

そんなもので・・・納得できる女たちだけが・・・風の愛人になる資格を持つのだった。

なんだか・・・泣けてくるよね。

愛人の一人・・・相葉志乃(トリンドル玲奈)は女優である。舞台女優の佳代と同様に仕事関係の相手なのである。

これに今回、明らかになった五人目の愛人・・・脚本家・皐山夏希(MEGUMI)を加えると・・・すべて手近である。

手近じゃないと・・・九人を維持するのは困難だものな。

打合せと称して・・・皐山を訪問した風は「チューしてえ」と迫る愛人の求愛をかわして必要経費でピザを注文し・・・実際に脚本直しの打合せをするのだった。

単なる仕事じゃないか。

いや・・・そこにそこはかとないいちゃいちゃ感があって潤いも生じているのだろう。

下半身を潤わせ執筆する皐山は一種の放置プレーのようなものなのだろう・・・。

やはり・・・サディズムが根底にあるよね。

もう・・・ずっとお預けの愛人だよね。

お預けチームが・・・皐山、佳代、美羽。

やってるチームが久未と志乃というここまでの状況である。

新ドラマ「淡い三人の男」のオーディションに臨む佳代・・・。

風や・・・林監督(大堀こういち)、キャスティング担当の火山(山田純大)の前で格闘技の形を交えた変なダンスを披露するのだった。

テレビドラマでは・・・ここまでその他大勢の実績しかない佳代である。

所属劇団の遍歴を含めて小ネタ満載だがスルーしておく。

結局・・・配役からは漏れるのだった。

受付で・・・久未に挨拶する佳代。

同僚の受付嬢・我修院麗子(西崎あや)から関係を訊ねられた久未は答えに窮する。

皐山との打合せに向う途中で・・・別ドラマを収録中の志乃の楽屋を訪ねる風。

志乃のマネージャーの高井(ちすん)はガードが甘いらしい。

いや・・・高井も愛人候補枠だよな。

残り四人がすでに登場している可能性はあるものな。

マネージャー・タレントどんぶりかっ。おいっ。

局内のちょっとしたスペースでいちゃいちゃを求める志乃である。

「私・・・今日巻きそうなんだけど」

「ごめん・・・これから打合せ」

さりげなくかわす風だった。

そんな二人を美羽が見ていた!

欲求不満になった志乃へとバラエティ・ショー畑の番組プロデューサーである浦上紀章(水上剣星)がアプローチをする。

「食事でもどう」

「私も十九時にはオワルと思うんで」

このオワルのイントネーションが・・・意図的なのかどうかトリンドル玲奈の女優としての力量に関わる問題である。もともと・・・欧風的な顔立ちになんとなく訛っているギャップでスタートしただけに声量の問題と併せて・・・もう少し発声を鍛えるべきだよね。身体を張っているだけになんだかいつも可哀想になるのだ。

今回は心の声は訛っているくらいの冒険をしてもよかったのじゃないかな。

つまり・・・トリンドル玲奈こそ舞台にチャレンジするべきなのである。

いや・・・まだ仕掛けがあるかもしれんがな。

こうして・・・夜の舞台が整った。

風は・・・脚本家・皐山の部屋でピザを食べ・・・その他のメンバーは「もつ鍋屋」へゴーなのである。

もつ鍋屋の個室Aチーム。

不倫に悩む久未のためにアロママッサージ店勤務の文坂彩乃(佐野ひなこ)が用意した合コン会場である。

ちなみに・・・風の正妻は睦(若村麻由美)らしいのだが・・・。

久未に潜む九。志乃に潜む四なのかと思っていたのだが・・・皐山は・・・皐月・・・五月・・・つまり5が潜んでいる。

そうなると睦・・・睦月は一月で1であり・・・如野佳代は如月・・・二月の2、弥上は弥生・・・三月の3、相葉は葉月・・・八月の8、神田は神無月・・・十月の10になるわけだ。文坂は文月・・・七月の7の可能性があるわけである。

数字を並べてみると・・・一月の睦(正妻)、二月の佳代、三月の美羽・・・そして八月の志乃、十月の久未と・・・なんとなく交際順である。

つまり・・・文坂彩乃が七月の女なら・・・愛人としては久未の先輩になるわけである。

残されている月名は・・・卯月(四月)、水無月(六月)、長月(九月)である。

そこはスルーできなかったのか。

すみませんねえ・・・細かいことが気になってしまう悪い癖の人の登場が近いからな。

合コンの女子メンバーには食欲旺盛なスタンプドジッ娘の池上穂花(新田祐里子)もいる。

男性陣は・・・竹井(細田善彦)、松田(石井智也)、梅本(越川みつお)の三人で松竹梅である。

王様ゲーム展開で久未は馬乗りサービスを披露するのだった。

もつ鍋屋個室Bチームは志乃と浦上プロデューサー。

もつ鍋屋個室Cチームは佳代と美羽である。

部屋はCがABに挟まれているものと思われる。

騒々しいAチームを佳代が壁を叩いて黙らせ・・・Bチームが退出する時に美羽が二人を目撃するのだった。

美羽は見てはいけないものをつい見てしまうのだ・・・「リング」かっ。

「オーディション・・・落ちたんだ」

「演技力は尊敬に値するんですけどね」

「テレビ局の受付嬢なんだ」

「見てません」

「君はいい奥さんになれると思うんだ」

「美味しそうに食べるのは得意なんです」

「奥さん・・・知ってるよ」

「愛人は他に女優の志乃さんと脚本家の皐山先生」

「音楽の趣味が合うね」

「意外と大切ですよね」

錯綜するもつ鍋屋だった。

ここからは・・・商社マンの竹井に持ち帰られた久未と・・・浦上プロデューサーに持ち帰られた志乃の・・・ベッド・インまでが同時並行で描かれる。

「シャワーを浴びたい・・・汗かいたから」まではほぼやることは同じである。

志乃は結局・・・やってしまうわけだが・・・独身者との交際で「絶望の螺旋からの離脱」を試みた久未は失敗する。

竹井夫人(長谷川るみ)が挿入前に帰宅したのである。

クローゼットに隠れ・・・素晴らしいインターネットの世界で彩乃に「地獄」を報告する久未だが・・・結局、竹井夫人に発見されてしまう。

激昂する竹井夫人。

夫を責める前に泥棒猫を責めるのは定番である。

なにしろ・・・夫は持ち物なので・・・持ち物に怒っても仕方がないのだ。

持ち物を盗んだ人に怒りをぶつけるのが人情なのである。

「土下座しなさいよ」

「知らなかったんです・・・二度と逢いません」

惨めな久未だった。

打ちのめされた夜の道・・・打合せを終えた風とめぐり会う久未である。

原因とか・・・結果とか・・・そういうことはすべて忘れ・・・ただ風の胸にすがりつき泣き濡れる久未だった。

「かぜさあああああん・・・・おおおいおいおい」

絶望の螺旋で温もりを分け合うクズ二人なのだった。

カフェwhiteでは・・・店員たちが聴き耳を立てる。

眼鏡の夏美(森田涼花)は「不倫女がまた不倫」を察知し、秋子(松本穂香)は「クズはどこまでもクズね」と休憩に入る。

残された春江(寺田御子)は店長の冬樹(中山祐一朗)に囁く。

「私もクズなのかしら・・・」

「え」

お前たちもか・・・。

一方・・・妻帯者である梅本をラブホテルで四回頂上に導いたと豪語する穂花であった。

食欲だけでなく・・・性欲も旺盛だったんだな。

「私・・・そういうの気にしないんで」

最も性病に注意してもらいたい穂花である。

定期的に検査すると結果が出るまでドキドキするよね。

そして・・・久未は・・・美羽から・・・新たなるお誘いを受けるのだった。

「奥さんを見学してみない?」

こうして絶望の螺旋はぐるぐるまわるのである。

成海璃子という素晴らしい女優を堪能できるだけでもこれ以上なく素晴らしいドラマである。

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2016年10月 6日 (木)

地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子(石原さとみ)Lassieならお嬢さんだけどな(本田翼)Lassyだとフェアトライアル系よね(足立梨花)

ラッシーといえば大腸菌じゃないのか。

菱沼聖子かよっ。

・・・・かって文章を書くことは一つの能力だった。

まず・・・他人が読みやすい文字を書く必要がある。

今は・・・打てばどんなフォントも思いのままだ。

企画書を書くのも才能の要求される仕事だった。

今はある程度フォーマットに従えばそれなりのものが書けるらしい。

キッドのバッグは巨大で・・・中に情報源である俳優名鑑とか、広辞苑とか、現代用語の基礎知識とか、20世紀全記録とか、プロ野球データブックとか、オールアイドル大全とか、アニメ年鑑とか、週刊誌の最新号のすべてとかが収納されていたのである。

何しろ・・・出典を求められるのだ。

今はちょっと検索すればいいのである。

なんていう時代だ。

昔はひどかったなあ・・・。

で、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子・第1回』(日本テレビ20161005PM9~)原作・宮木あや子、脚本・中谷まゆみ、演出・佐藤東弥を見た。原作のタイトルは「校閲ガール」である。小説「書店ガール」が「戦う!書店ガール」になったように・・・なんかつけたがるのはそうでもしないと自分の存在感を維持できない人々の哀しい習性のようなものである。平均視聴率が*4.8%だった「戦う!書店ガール」のようにならないことを祈りたい。

お仕事ドラマというものは・・・「北海道の子にゴキブリを見せると感動する」的な「あなたの知らない世界を紹介する」という一つの要素がある。

しかし・・・素晴らしいインターネットの世界で「自分の職種」がとりあげられれば黙っていられない人々がなんだかんだ囁く時代である。

だから・・・あくまでフィクションなのである。

今は・・・テレビ局も出版社も小奇麗になっているが・・・昔はもっと汚い場所だった。

こんなところで・・・あんな華やかなものを作っているのかと思ったりもする。

しかし・・・新築されてテレビ局や出版社がテレビドラマのようなものに変貌してあっと驚いたりもするわけである。

ドラマの中の世界は基本的にあなたの知らない世界なのである。

林真理子が長澤まさみのスタイルを見て遺伝子について自虐するのはリップサービスなのだ・・・なんの話だよ。

田舎の高校生だった河野悦子は景凡社のファッション雑誌「Lassy」を見て・・・おしゃれの世界の虜になり・・・雑誌「Lassy」の編集者を目指して苦節十年・・・気がつけば二十八歳である。

高校を卒業してから十年間・・・景凡社に対する就職活動を続けているフリーターである。

現在はおでん屋「大将」の二階に間借りしている。

悦子の就職活動は景凡社受付の佐藤百合(曽田茉莉江)が知っているほど有名である。

「また君か」

面接官が呆れるほど・・・毎年、就職活動をしているのだ。

しかし・・・新人の受付嬢である今井セシル(足立梨花)は雑誌から抜け出したようなダサいくらいに派手に決めた悦子のファッションセンスに魅了されるのだった。

そもそも・・・校閲部のあるような大出版社に・・・就職するためには・・・ある程度の学歴が必要なのである。

悦子はそういう常識的な部分が抜け落ちているのだった。

世間は狭いので・・・雑誌「Lassy」には悦子の高校時代の水泳部の後輩である森尾登代子(本田翼)が編集者として勤務している。

「がり勉でデブ」だった森尾は大学を卒業して普通に就職をしているのだった。

そのことを再会するまで悦子は知らない。

森尾は・・・悦子の知らない世界を知っている女なのである。

だが・・・文芸編集部から校閲部に移動になり面接に参加した部長の茸原渚音(岸谷五朗)はネクタイピンがピアスだったことを見抜いた悦子に心を奪われる。

そんなことで・・・大手出版社に採用されるかどうかは・・・ともかく・・・悦子は・・・恐ろしいオヤジ転がしの魔性を持っているのである。

おでん屋「大将」に集まる常連客・・・東山(ミスターちん)、西田(長江英和)、北川(店長松本)や大将の尾田大将(田口浩正)は・・・悦子の就職祝いにエディターズ・バッグをプレゼントするくらいなのであった。・・・おいおい。

もちろん・・・高卒でアルバイトしながら・・・ファッション雑誌に掲載されているブランド商品でおしゃれするためには・・・オヤジを転がすしかないではないか。

しかし・・・そこを描く気はないらしい。

配属先が校閲部と知って・・・卒倒しそうになる悦子を・・・茸原部長は猫撫で声で騙す。

「有能だと認められれば希望の職種に転属も夢ではない」

「!」

先輩の校閲部員・藤岩りおん(江口のりこ)は前途多難を予感する。

試みに・・・校閲の第一段階である校正(誤字脱字や文法上のチェック)を悦子に命じると・・・。

小説「黒と赤/是永是之」の作者名を「ぜえいぜえ」と読む悦子。

「これながこれゆき」は実は折原幸人(菅田将暉)のペンネームであるが・・・それは伏されている。

「之をえって読みましたよ」

りおんは部長に報告するが・・・「こうのえつこ」を略してコーエツという「面白さ」にはまっている部長は意に介さない。なにしろすでに転がされたオヤジなのである。

部署には小説の登場人物の住居模型を作り、登場人物の行動チェックするのが趣味の米岡光男(和田正人)なども配置されている。

青木(松川尚瑠輝)、坂下(麻生かほ里)、目黒(高橋修)などその他の部員もいい味出しているのだった。

そして・・・何故か・・・仕事は手抜きをするが・・・校閲部員を見下している嫌な編集者・貝塚八郎(青木崇高)は・・・「ちかえもんの世界」からここに来たわけだな。

雑誌丸暗記という特技を持つ悦子は・・・基礎学力の不足を根性で乗り越えて・・・「有能さを示して編集者に転職するために」・・・残業に次ぐ残業でサービスするのである。

転がされている部長は・・・健気な悦子に目を細め・・・発行部数百万部の大作家・本郷大作(鹿賀丈史)の校閲を任せるのだった。

なにしろ・・・エロティック・ミステリ・・・略してエロミスの作家である本郷はたちまち転がされるのだった。

「そうかあ・・・最近の女子高校生はチョベリグって言わないのか」

「今は・・・地味にスゴイ・・・とか」

「タイトル来たねえ」

つまり・・・このドラマは悦子が男を転がすドラマなのだ。・・・違うぞ。

しかし・・・本郷の新作「武蔵野の情事」にある「立田橋」が二人の関係を危ういものにするのだった。

有能であることを示すために・・・完璧を目指す悦子は・・・それが「立日橋」であると主張する。

なにしろ・・・多摩川に架かる都道149号線の橋は左岸・立川市、右岸・日野市で「立日橋」なのである。

現地に調査に赴いた悦子は写真館で・・・幸せそうな本郷一家の写真を発見し・・・本郷夫人に連絡を取ろうとして・・・作家の逆鱗に触れるのだった。

本郷夫妻は・・・息子がまだ幼い頃に離婚していたのだった。

一時は失職の危機に陥る悦子だったが・・・なにしろ・・・すでに転がしている相手である。

「息子が・・・舌足らずに・・・たったばしと言うのが可愛かったのだ」

甘い心情を吐露するオヤジだった。

作家の別れた息子・・・それはもう大学生になっているのでは・・・。

ある日・・・悦子は折原幸人と出会いがしらに衝突という古典を演じる。

そして・・・突然・・・時が止まった。

就職が決まったので繁殖の季節なのである。

しかし・・・男性をダンサーと発音する舌足らずな森尾は・・・ファッション誌「Lassy」編集長・亀井さやか(芳本美代子)や波多野副編集長(伊勢佳世)に命じられ専属モデルを捜索中に・・・すでに折原をキャッチしていたのである。

そして・・・家なき子である折原に「ウチ、来る?」と誘うのであった。

つまり・・・森尾は・・・悦子の熱望するものを簡単に入手する女なのである。

一言で言うと・・・やり手だ。

この物語は・・・やり手とオヤジ転がしの真田丸なのである。

全然違うわっ。

「世界一難しい恋」「家売るオンナ」と傑作を連打したこの枠だが・・・これは・・・もしかすると少しベタかもしれないね。

この世界には「百恵二世」はたくさんいるわけだが・・・一学年上の別事務所の上戸彩がまもなく出産明けである。

本家ホリプロの「百恵二世」の一人である石原さとみも三十路を目前にして絶対に負けられない戦いをしているとも言える。

2005年の大河ドラマ「義経」でうつぼを演じた上戸彩に対して石原さとみは静御前だった。

この絶妙な対比が・・・醸しだされる色気の差異として存在する。

どうしても色気勝負では石原さとみの方が無理してる感じがするわけである。

持ってる武器の性能差か・・・おいっ。

しかし・・・まあ・・・それもまた「味」だからな。

東京出身の二人の女優の戦いがまた始るのだ。

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2016年10月 5日 (水)

女だからって甘くみたら痛い目に遭うよ(佐藤めぐみ)

さすがのキッドも・・・このドラマについて語る言葉を絞り出すのはかなりの困難を伴う。

基本的に・・・おバカドラマだからな。

今回は・・・その知性のなさをさらにパワーアップしてきた感じだ。

とにかく・・・主人公はいざとなったら戦う。

何が何でも戦う。

ピンチにつぐピンチであるが・・・そもそも・・・自らピンチの中に飛び込んでいくわけである。

人の心を持ちながら・・・吸血鬼になってしまう悲哀というトーンが背景にはあるわけだが・・・なったらなったでなんとかなるわけである。

人間のユキと・・・吸血鬼になってしまったケンとの恋心の葛藤が前作ではそこそこ描かれていたが・・・なにしろ・・・ユキが配役チェンジで脳内変換が忙しいのだった。

このユキは・・・ケンのために血を捧げたユキなんだよなあ・・・といちいち思い出してチェンジをしなければならない。

そういうモタモタは全編にあふれていて・・・長い予告篇という性質を露わにするのです。

で、『彼岸島 Love is over・第3回』(TBSテレビ201610050158~)原作・松本光司、脚本・佐東みどり、演出・岩本晶を見た。吸血鬼伝説の残る「彼岸島」に連れこまれ・・・吸血鬼や邪鬼(オニ)の支配する島でサバイバルを繰り広げる若者たち・・・なのだが・・・ちょっとした修行の結果、超人的な体力を身に付けた主人公はもはや仮面ライダーのようだ・・・。

不老不死で不死身の吸血鬼・雅(栗原類)を倒すためには大日本帝国陸軍の秘密部隊が開発した501ワクチンが必要・・・しかし・・・それは洞窟倉庫に秘匿されており・・・その入口には吸血鬼の村がある。

どれだけ広いのかわからない島の中で・・・吸血鬼から逃れた人間の隠れ里を指揮するお頭こと「死人の面」を装着した巨人・・・師匠(声・石橋蓮司)は陽動突入部隊と隠密侵入部隊のA・B二チームによる「501ワクチン獲得作戦」を決行する。

吸血鬼の村の表通りに師匠率いるAチームが突入し・・・吸血鬼たちを引きつけている間に剣の達人と化した宮本明(白石隼也)、弓矢の名人であるユキ(桜井美南)、爆弾魔の西山(阿部翔平)、案内人の冷(佐藤めぐみ)たちBチームが裏通りを進み・・・洞窟入口へと侵入する作戦だが・・・。

こっそり忍びこんでは主人公が活躍できないために・・・Bチームにもどんどん敵が向ってくる。そして・・・それを殲滅する主人公・・・ほとんど二手に分かれている意味がないぞ。

それでも・・・西山が爆弾を使用すると・・・。

「馬鹿・・・敵を引きつけてしまうじゃないか」と叱責する明なのだった。

明の獅子奮迅の活躍も明らかに敵を引きつけている。

下手をすれば・・・丸太無双の師匠が倒した敵より明の倒した敵の方が・・・多いんじゃないかな。

・・・そういう部分を味わうドラマではないみたいだぞ。

どうしたもんじゃろうのう。

それは・・・ほぼ禁句じゃないか。

本来・・・後方支援攻撃の担い手である射手のユキも接近戦に次ぐ接近戦だ。

しかし・・・絶体絶命になると・・・ユキを見守っている吸血鬼のケン(遠藤雄弥)が現れて・・・対吸血鬼戦闘を行うのだった。

ケンを慕う吸血鬼の紫苑(上間凜子=クレジットでは上間美緒)もまた・・・ケンを助けるために対吸血鬼戦闘を行う。

「なんで・・・お前まで・・・」

「私は・・・あんたが見ていた女を勘違いして吸血鬼にしてやった・・・ひどい女なんだよ」

「お前だって・・・人間がうらやましいと思うだろう」

「そういうことじゃないよ・・・あんたが好きなんだよ」

思わず憐れな紫苑を抱きしめるケンだった。

自分の代わりに吸血鬼になった女・・・田中(森岡龍)の恋人の梢(月岡鈴)を・・・そうとは知らずに顔見知りだからと・・・殺すのを躊躇するユキ・・・。

「躊躇ったら・・・だめだ」とケンはユキを叱責する。

この辺りの葛藤をもう少し丁寧に描きたいところだが・・・予告篇なのでそんな時間はないのだろう。

妄想で補うしかないのだな。

一方・・・雅は・・・ハーレムで椿(高野人母美)、弥生(みすず)、まり子(柳ゆり菜)といったモデル風の女たちに囲まれてのんびりしている。

「どうやら・・・予備のワクチンがあったようです」

「まずいじゃないか・・・お前・・・なんとかしろ」

雅に命じられ・・・人影が揺れる。

人と人ならざるものの戦いは・・・戦争である。

「やめろ」と言われてもやめないのである。

アレッポの市街地を見よ・・・なのだ。

煉瓦で隠された秘密通路への入り口に到着した冷・・・。

しかし、邪鬼が襲ってくる。

堂々と日本刀で巨大な邪鬼と渡りあう明・・・やはり仮面ラ・・・。

地下には広大な洞窟が広がっている。

旧日本軍の秘密基地である。

長く続く回廊・・・彼岸島の面積の謎である。

やがて・・・吸血鬼となった旧陸軍士官の群れが現れる。

どれだけ・・・士官だらけの軍隊なんだよ。

全員、軍刀で武装した軍人なのだが・・・警棒を持った冷は堂々と渡り合う。

相変わらず接近戦で弓術を披露するユキ。

洞窟内で爆薬を使用する西山。

落盤というものについて・・・まあ・・・やめよう。

ユキがピンチになり明が救援している間に・・・ついに冷は拉致されてしまう。

「あいつら・・・なぜ・・・吸血手段がないのに・・・何故・・・邪鬼化しないのだ」

「こんなところに祭壇が・・・」

「お供えは・・・ネズミだ」

「ネズミなんかの血じゃ・・・」

「何か特殊な遺伝子操作をしたネズミなのかも」

「いろいろと・・・便利だなあ」

一方・・・囚われた冷は軍人吸血鬼たちに・・・十字架にかけられようとしていた。

「あいつら・・・何をする気だ」

しかし・・・ミニスカートの冷が十字架拘束サービスをするために・・・しばらく待機する明だった。

準備が整ったところで乱入である。

しかし・・・軍人たちは逃げる。

「何故だ」

「これは・・・生贄の儀式なんじゃ・・・」

たちまち・・・現れる邪鬼の百目・・・。

明は一刀で冷の拘束具を切断するのだった。

「逃げろ・・・」

百目との戦闘に突入する明。

百目は洞窟の天井を突き破り、地上に現れる。

それを跳躍して追う明・・・やはり仮面ラ・・・それより・・・本来の目的は!

全身に視覚器官を持つ百目には死角がないので・・・あらゆる攻撃がかわされてしまう。

地面に叩きつけられ・・・絶体絶命の明は・・・突然、無力な乙女の顔で死を受容する。

しかし・・・そこに・・・明の兄である宮本篤(鈴木亮平)が現れた!

「二人がかりで倒すぞ」

「兄貴・・・」

明は・・・躊躇する・・・篤には・・・吸血鬼の気配が感じられる・・・。

つづくだが・・・どうせ最終回もつづくなのだろう・・・。

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2016年10月 4日 (火)

妄想と妄想の間に戦争がありました(黒島結菜)

朝寝坊の女に次いで片づけられない女らしい・・・夏目漱石の妻である。

一方で夏目漱石本人は・・・精神を病んでいる人だった。

夏目漱石がどれほど深刻な精神状態だったかはともかく・・・全人類が精神を病んでいることは間違いないのでどんな虚構でも問題ないのだった。

精神失調だった夫とその悪妻はいろいろとバランスをとるのである。

頭のおかしいお父さんとダメなお母さん・・・どっちがいいと問われた子供たちは・・・天才だからお父さんにはおかしなところもあるけれど・・・お母さんはそれを支えた優しい人だったと答える他ないものな。

だから・・・ある程度・・・妻が立派な人であるためには夫は少しおかしい人である必要が生じるのである。

もちろん・・・「吾輩は猫である」と成人男性が真剣に主張しはじめたら・・・しかるべき医師に相談する必要があります。

で、『夏目漱石の妻・第2回』(NHK総合20161001PM9~)原案・夏目鏡子・松岡譲、脚本・池端俊策、演出・柴田岳志を見た。明治三十ニ年(1899年)五月、熊本市の第五高等学校の英語教師・夏目金之助(長谷川博己)・鏡子(尾野真千子)夫妻に待望の 長女・筆子が誕生したとナレーション担当の鏡子の従妹・山田房子(安藤美優→黒島結菜)は語るのだった。ついに妻と娘という家族のセットを手に入れた金之助だった。しかし・・・鏡子の父親・中根重一(舘ひろし)の尽力により金之助は大日本帝国文部省から英語教育法研究のための英国留学を命じられるのだった。

甘えん坊の鏡子(尾野真千子)は夫と別れるのが・・・嫌だった。

寂しくなっちゃうのである。

「しかし・・・父上の御采配に応えなければならない」

明治三十三年(1900年)五月、金之助は渡英した。途中、パリ万国博覧会やパリ五輪(第2回夏季オリンピック大会)を見物する。

鏡子は東京の中根邸に娘と共に住む。

金之助は異国での独身生活に心を病んでいくのだった。

「金之助くんからの手紙に返事を書かないそうじゃないか」

鏡子は不精な性質なので筆不精だった。

「金之助くんはロンドンで妻から手紙が届かないとこぼしているそうだ」

「おやおや」

「それから・・・報告書を催促した文部省に白紙の手紙をよこしたそうだ」

「あらまあ」

大陸では義和団の乱が起き日本を含む列強8か国と清が戦争状態に突入していた。

十一月には戦艦「三笠」が英国のバロー=イン=ファーネス造船所にて進水式を行う。

世界は激しく振動し・・・金之助が英国人の母国語を学ぶためにロンドンに派遣されているのも世界情勢とは無縁ではない。

明治三十四年(1901年)一月に鏡子は次女・恒子を出産。五月に伊藤博文内閣が総辞職し、六月に桂太郎内閣が成立する。

備後国福山藩士であった中根重一はどちらかといえば旧幕府系である。

福山藩は七代藩主阿部正弘が老中主座となり日米和親条約を締結している。

名主身分となっていた夏目家も元は幕府旗本の家柄である。

どちらも長州出身の元老・伊藤博文と元老・山縣有朋だが・・・どちらかと言えば山縣有朋の方がより門閥主義である。

桂太郎のバックには山縣有朋がおり・・・桂内閣の発足により・・・重一は貴族院書記官長の職を失う。

野に下り成功するものも多いが・・・重一は実業家向きではなかったらしい・・・投資に失敗して借金を作り・・・中根家は傾き出す。

不安になった鏡子は「金銭的な不自由」を手紙で金之助に訴えるのだった。

物価高のロンドンで生活苦にあえぐ金之助の精神は破綻した。

ますます奇行の噂が高まる金之助について・・・鏡子は金之助の学友だった正岡子規(加藤虎ノ介)に相談する。

余命いくばくもない子規は妹の律(大後寿々花)の介護を受けながら死の床から起きあがる。

「金之助は親に捨てられた怨みが心の奥に沈殿しておる。金之助にとって・・・世間はみな敵じゃ・・・御一新からこっち・・・士族は落ちぶれたとはいえ・・・身分の壁は残っている・・・学問で身を立てるにしても世間の風は冷たい・・・金之助は勉強はできるが・・・それだけではどうにもならんものがあるとついつい考えてしまうんじゃ・・・異国の地で東洋人を蔑む白人たちに囲まれて・・・緊張が高まりまくったのじゃろう・・・」

「私はどうすれば・・・」

「帰ってきたら・・・優しくしておあげ」

明治三十五年(1902年)九月、金之助の帰国を待たず、正岡子規は没した。戦艦「三笠」は金之助より一足早く日本に到着した。

明治三十六年(1903年)一月、英国王エドワード七世がインド皇帝に即位し、金之助は留学を終えて日本に帰国する。

東京の新橋駅に降り立った金之助の目は疑心暗鬼に満ちていた。

鏡子の妹・中根時子(秋月三佳)と結婚した建築家の鈴木禎次は入れ替わるように英仏への留学の途につく。

中根邸では重一や嫡男の倫(中島広稀) や鏡子の妹たち・・・そして従妹の山田房子までもが金之助を熱烈に出迎えるが・・・金之助の反応は鈍い。

金之助の心は冷えていた。

「私は見張られている・・・英国の下宿の女将までが俺を軽蔑しているのだ。英国人たちは皆で私を侮蔑していた。そして・・・油断なく私を監視している・・・今はただ休みたい」

四月、金之助には第一高等学校講師と東京帝国大学文科大学講師を兼任する職が用意されていた。

「ああ・・・十万円が欲しい」

国会議員の年俸が千円の時代である。

十万円は国会議員が百年かけて稼ぐ額だった。

金之助は寝床で呟く。

「十万円あれば・・・すったもんだしなくて済む」

「遊んで暮らせるのね」

しかし、寝床では擦ったり揉んだりする金之助だった。

十月には三女の栄子が誕生するのだった。

そして・・・金之助は女中や娘に暴力を振るうようになる。

「私の読書を妨害するために・・・歌なんか歌いやがって」

「この子たちは歌が好きなんです」

「お前なんか出ていけ」

「出て行きます」

子供たちを連れて実家に戻った鏡子だったが・・・中根家の家計はますます火の車となっていた。

「この家も売らねばならん・・・」

切羽詰まった鏡子は医学博士の呉秀三に相談する。

「金之助君は・・・精神の病です・・・異国での過度な緊張状態が・・・追跡妄想などの統合失調状態をもたらしたようだ」

「では・・・私がいたらぬからではないのですね」

「え」

「病気なら・・・看病しなければ」

鏡子にとって「夫に愛されていること」は最重要だったのだ。

鏡子は別居を切り上げ・・・千駄木の夏目家に戻った。

金之助は一人・・・台所で大根を切っていた。

「何故帰って来た・・・」

「ここが私の家ですから」

「・・・」

明治三十七年(1904年)二月、大日本帝国は日露交渉の打ち切りをロシアに通告、旅順港外で大日本帝国海軍はロシア艦隊を攻撃。

十二月、大日本帝国陸軍は旅順203高地を占領する。

ついに借家住まいとなった中根重一は金策に行き詰まり・・・金之助に保証人になってほしいと鏡子に頭を下げる。

「私を甘やかして育ててくれたお父様を・・・甘やかしてあげたいけれど・・・それはできません」

俯いて泣きだす鏡子だった。

「うつむいて・・・膝をかかえる・・・寒さかな・・・一人で寝たら膝小僧が寒かろうもんね・・・泣かないで~」

父は去った。

立ち聞きしていた金之助の心で何かが溶けて行く。

鏡子が・・・父親よりも自分を大切にしてくれたことが嬉しかったのだ。

「愛されていること」を確かめずにいられないのは厄介な病なのである。

金之助は中根倫を呼び出した。

「保証人になると・・・共倒れになってしまう・・・だから・・・これが精一杯だ」

金之助は倫に四百円を渡した。

やがて・・・夏目家に・・・黒猫が迷いこんで来た。

人間より下等な生き物がいることに気がついた金之助は・・・心が癒されるのだった。

「にゃあお」

「にゃあお」

猫を飼うことを許された子供たちは・・・初めて恐ろしい父親に好感を持ったらしい。

金之助は猫に同化していった。

泥棒に入られたのも気付かぬほどに・・・金之助は筆が走った。

高濱虚子に奨められて創作を始めたのだった。

明治三十八年(1905年)五月、日本海海戦でバルチック艦隊が殲滅される。金之助は処女作「吾輩は猫である」を子規に所縁のある雑誌「ホトトギス」に連載形式で発表していた。

「吾輩は猫である・・・名前はまだない・・・いや漱石だ・・・子規から譲り受けたのだ」

明治三十九年(1906年)、中根重一は五十五年の生涯を閉じた。

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2016年10月 3日 (月)

求められたら応じるのが側室の作法でございます(長澤まさみ)

虚構というものを考える時・・・そもそもすべてが虚構であるという認識は大切だ。

真実が虚構であることは間違いないし、事実もほぼ虚構である。

たとえばドラマでは登場人物が何かを食べたり、排泄したり、挿入したり、排出したりする部分はほとんど省略されている。

つまり・・・省略という虚構が導入されているわけである。

ドラマでも歴史的登場人物も相当に省略されている。

たとえば従五位下真田安房守昌幸には信之、信繫、おまつの他にも少なくとも六人の娘がいるとされている。

真田幸政の室、鎌原重春の室、保科正光の室、滝川一積の室、妻木頼熊の室、おらくの六人である。

研究者によって存在の真偽は変動するが定説ではそうなっている。

ドラマで昌幸が死亡した今となっては・・・彼女たちが物語に登場することはおそらくないだろう。

省略・・・つまり虚構上の存在の抹消が行われるのだ。

虚構の創造者・・・つまり、脚本家は常に人殺しなのである。

だが・・・そのことによって話が面白くなれば何の問題もないのが創作の世界なのである。

従五位下真田左衛門佐信繫は主役であるために・・・抹消された姉妹のように抹消されないが・・・その子供たちとなると・・・特に研究者によるさまざまな説を導入することにより・・・虚構化が行われるわけである。

将軍家と六十五万石の大名・豊臣家が手切れとなるのは慶長十九年(1614年)のことである。

つまり・・・信繫の余命もあまりないのである。

最も虚構の世界では信繫が慶長二十年(1615年)の大坂夏の陣で死なない可能性さえあるが・・・なにしろ源義経がジンギスカンにすらなるのだ・・・ともかく定説では余命一年を切っている。

性行為は死ぬまで可能なので元和二年(1616年)の春まで信繫の子供が生れる可能性は残る。

ここまで確認されている「真田丸」の信繫の子供は・・・。

先妻とされる梅の子・・・長女すえ。天正十三年(1585年)に生れたので天正十四年には数えで三十歳。

つまり・・・きりは当時十五歳だとしてもすでに四十五歳である。

人生五十年の時代だ・・・。

春こと竹林院の産んだ三女阿梅、長男大助、次男大八・・・以上である。

きりこと高梨内記の産んだ次女於市、三女阿梅(竹林院の阿梅と重複)・・・。

竹林院の産んだ四女あくり、六女阿昌蒲、七女あかね・・・。

たかこと隆清院の産んだ五女御田姫、三男三好幸信・・・。

名もなき農家の娘の産んだ名もなき八女と九女・・・。

果たして・・・何人が虚構の世界で産声をあげることができるのか。

まあ・・・時間は限られているのだが。

死期が迫ると人間はやたらと子種を残そうとする説もあるからな。

で、『真田丸・第39回』(NHK総合20161002PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・保坂慶太を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は猿飛とは呼ばれないけど透破(すっぱ)ですの佐助描き下しイラスト大公開でお得でございます。ついに忍者キターッ!でございますね。まあ、出浦対馬守は別格として。真田十勇士をどうするかは・・・史実との兼ね合いで悩ましいところですが・・・佐助は最初からさりげなく登場していますし、きりはますます霧隠才蔵めいてきて・・・高梨内記が出家して三好清海入道のポジションに来るとは慧眼でございますねえ。そうなると出浦は三好伊左入道で復活か・・・残るは穴山小助、由利鎌之助、筧十蔵、海野六郎、根津甚八、望月六郎・・・おそらく堀田作兵衛は駆けつけると思いますので穴山小助ポジションあたり・・・。矢沢頼康も史実を無視して来るかもしれませんよねえ。いよいよ・・・真田丸へ・・・高まりまする。半蔵VS佐助とか・・・たまりませんねえ。

Sanada39慶長十八年(1613年)一月、池田輝政が死去する。四月、大久保長安が死去。八月、浅野幸長が死去。慶長十九年(1614年)一月、大久保忠隣が改易され井伊直孝に御預けの身となる。大仏殿が建立された京の方広寺の梵鐘が完成する。四月、徳川和子の後水尾天皇への入内宣旨。七月、徳川家康が豊臣家家老の片桐且元に大仏開眼供養の延期を命ずる。供養の導師について天台宗と真言宗が対立する。八月、林羅山が梵鐘の銘文に家康呪詛の意図があることを断じる。九月、家康は且元を通じ、豊臣家に「大坂城からの退去」「江戸への参勤」「秀頼の母の江戸住み」内意三条を伝える。秀頼は大蔵卿局に従い、幕府への反逆を決意する。信長の次男・織田常真(信雄)は大坂城の情勢を且元に知らせ、且元は駿府の家康に報じた。且元は茨木城に脱出する。十月朔日、秀頼による且元放逐の情報が駿府に届き、家康は開戦を決意。江戸城修復のために出府していた福島正則は将軍家の監視下に置かれる。豊臣家は全国に密使を放つ。

京に隠棲する見星院は織田信長の長女で徳川家康の嫡男・信康の正室であった「おごとく」である。信長の命に従い家康が信康を自刃に追い込んだ後・・・信長、信雄、秀吉、家康と保護者を変えながら余生を過ごしている。

家康の元に残した二人の娘、登久姫と熊姫はそれぞれ信濃松本藩主の小笠原秀政、本多忠政の正室となっている。

登久姫は六男二女を設けたが慶長十二年(1607年)に逝去している。登久姫の長女・万姫は阿波国徳島藩主・蜂須賀至鎮に、次女・千代姫は小倉藩主細川忠興の世子・忠利に嫁ぐ。

熊姫は健在で三男二女を設けている。

つまり・・・織田信長と徳川家康の孫娘が本多忠勝の嫡男と結ばれているのである。

真田信之の正室が・・・本多忠勝の娘であることから・・・見星院は・・・信之にとって義弟・忠政の義母という関係になる。

信之は小野お通という京の貴婦人たちのサロンの主催者を通じて・・・父・昌幸と弟・信繁の赦免の嘆願を各方面に働きかけていた。

その努力は父の死後も続いている。

隠棲している見星院にも会っていた。

しかし・・・結果は不調であった。

「残念ですが・・・お力にはなれません」

信之より七歳年上の見星院は微笑んだ。

「今は大御所様の九男・義直様から化粧料をいただくしがない婆でございます」

信長の長女という・・・世が世なら淀殿よりも高貴な女性である。

「それに・・・戦国の世に生れ・・・戦のあとで命があるだけで・・・有難いと思いませんとね」

「ごとくの申す通りだぎゃあ」

庵の隣室から坊主が顔を出した。

「兄でございます」

「え・・・それでは常真様・・・」

「拙僧も・・・関ケ原の戦では改易になった身だが・・・今は従妹の生んだ猿めの忘れ形見に出仕する身・・・しかし、大坂の城にいるより・・・京の都でのんびりと風流を楽しむ方がどれだけ心休まることか・・・」

「・・・」

「猿・・・いや、太閤殿下がご存命中に・・・伊豆守がご舎弟には何度かあったものぞ・・・なかなかのご器量であったな・・・しかし、世が世なら・・・一門の武将になったろう者が・・・九度山で余生を過ごすのもまた一興ではないか・・・」

「・・・でしょうか」

「しかし・・・それで終わらないのがこの世の面白いところじゃの」

「・・・といいますと」

「大坂と江戸の手切れは近い・・・」

「・・・」

「ご舎弟は・・・猿に義理立てして・・・死に花を咲かすことになろうの」

「弟が・・・」

「わが父が・・・今川の大軍を相手に・・・大博打を打ったように・・・豊臣家も打ってでれば面白かろうが・・・どう考えても無理じゃろうのう」

「・・・」

「わが父が籠城と決めていれば・・・愚僧も妹も・・・ここで呑気に茶など飲んではいないであろう」

信長の子として生まれた兄と妹は・・・遠い親戚である信之の前で陰惨にも見える笑みを浮かべる。

慶長十九年の夏が過ぎようとしている。

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2016年10月 2日 (日)

夢のようでございます(武井咲)どれほどこの日を待ちわびたことか(福士誠治)

全20回であるのでよほど変則的なことがない限り越年するわけである。

2016年の秋ドラマのシーズンは・・・

(土)「忠臣蔵の恋 〜四十八人目の忠臣〜」

(日)「真田丸」

(月)「夏目漱石の妻」

・・・という自称・公共放送三連発レビュー体制である。

しかも・・・元禄・・・慶長・・・明治と・・・時代もの三連打だ。

大きくジャンル分けすれば・・・趣向が同じということである。

それをレビュー対象に選択してしまうということは・・・はめられている気がしないでもないが・・・武井咲・長澤まさみ・黒島結菜と美味しい所を突かれているので仕方ないのだった。

なんだかんだ・・・やるもんだなあ・・・と思う。

お茶の間受けは別として・・・キッドは受けます。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第2回』(NHK総合201610011810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。元禄十三年(1700年)は関ヶ原の戦いのあった慶長五年(1600年)から百年後の世界である。慶長八年(1603年)、徳川家康は江戸幕府の初代将軍となる。二代目は徳川秀忠、三代目は徳川家光、四代目は徳川家綱と続き・・・延宝八年(1680年)に五代目・徳川綱吉が将軍となった。家綱と綱吉は兄弟でどちらも家光を父とする。綱吉は正保三年(1646年)の生れでこの年は干支では丙戌となる。所謂、戌年生れである。貞享四年(1687年)から綱吉は俗に「生類憐みの令」と呼ばれる法令を発し始める。「殺生を慎むこと」という穏やかな法令は次第にエスカレートし、元禄四年(1691年)には犬などに芸を教えて見世物にすることが禁じられ、元禄八年(1695年)には住民を強制的に立ち退かせ「犬小屋」を設立、元禄九年(1696年)には犬殺しを密告したものに賞金三十両と発布し・・・元禄十三年には鰻、泥鰌の売買が禁止された。

独裁者の頭が狂い始めるととんでもないことになるという代表例である。

綱吉は宝永六年(1709年)に死ぬが早速、犬小屋は廃止された。

しかし・・・時はまだ・・・元禄十三年である。

頭のおかしな将軍が支配する元禄時代なのである。

そして、鰻重を隠れてこそこそ食さなければいけない御時世なのだ。

播磨国赤穂藩の浅野家は浅野長政を遠祖とする安芸国広島藩の縁戚である。

浅野家は他に備後国三次藩などがあり・・・初代藩主の浅野長治の娘・阿久里(田中麗奈)は浅野内匠頭長矩(今井翼)の正室となっている。

元禄七年(1694年)に内匠頭は弟の浅野大学長広(中村倫也)を養子として幕府旗本として独立させる。

元禄八年(1695年)に内匠頭は疱瘡を患い、一時危篤となったために大学を正式に養嗣子とした。

しかし・・・内匠頭は元禄九年(1696年)には回復し、元禄十一年(1698年)には幕府より神田橋御番を命ぜられる。

一年ごとの参勤交代により・・・元禄十三年・・・内匠頭は播磨国赤穂から江戸鉄砲洲の藩屋敷へ戻る。

襦袢を交換して・・・再会を誓った礒貝十郎左衛門(福士誠治)が帰ってくる・・・そう思うと胸がときめくきよ(堰沢結愛→武井咲)だった。

江戸屋敷の奥でも藩主夫人の阿久里を中心に侍女頭の滝岡(増子倭文江)や成瀬(押元奈緒子)の指図で出迎えの準備が忙しい。

「行列はどのあたりかしら」

「江戸市中に入ったとのこと・・・」

一年間不在だった夫の帰還に阿久里の顔も綻ぶのだった。

その夜は宴が催され・・・きよも琴を披露する。

しかし・・・弟の大学が長崎から取り寄せた金平糖を献上したと知ると・・・癇癪を爆発させる内匠頭である。

「そのような贅沢は無用じゃ・・・う」

自身の怒りで心臓に負担をかける内匠頭・・・。

将軍も狂っているが・・・赤穂藩主の頭もかなりおかしいことになっているのだった。

翌年、起こる悲劇は秒読み段階に入っているのである。

そんな未来を知る由もなく再会を祝す武士たちの宴は続いていた。

礒貝十郎左衛門の姿を求めて・・・廊下を行きつ戻りつするきよ・・・。

侍女仲間のつま(宮崎香蓮)はきよの心中を見抜いていた。

「どなたか・・・意中のお方がいるのでしょう・・・当ててみせましょうか・・・礒貝十郎左衛門様」

「え」

「ずっと一緒のお部屋で過ごしているのです・・・わかりますよ」

「・・・」

「でも・・・思うお方と結ばれることなど・・・私たちには無縁でございますよね」

侍女とはいえ・・・きよは藩士の娘ではない・・・浅草唯念寺の住職・勝田玄哲(平田満)の娘として・・・奉公にあがっている身の上である。

それでも・・・そっと部屋を抜けだしたきよは赤い糸の竹垣へと向う。

そこには・・・十郎左衛門が待っていた。

「おきよ」

「十郎左衛門様」

「今度・・・いつ会える」

「お知らせいたします」

二人はきよの外出を狙って逢引するのである。

だが・・・その日を前に・・・きよの周囲では不吉な出来事が起こる。

「大変です・・・」

堀部安兵衛の妻・ほり(陽月華)が変事をきよに伝える。

きよの兄・・・勝田善左衛門(大東駿介)が仲間の元赤穂藩士・不破数右衛門(本田大輔)に誘われて犬小屋の犬で試し斬りをして・・・役人に仕置きされた上・・・唯念寺に逃げ込んできたと言うのだ。

「儂の刀を盗み出し・・・それで試し斬りなど・・・この場で腹を切れ」

「切腹などと・・・まるで武士のようなことを」

「なに」

父と兄の間に割って入るきよ。

「どうか・・・お許し下され」

きよの父である勝田元哲は元は加賀前田藩士だったが・・・人妻に惚れて駆け落ちし、主家を捨てた厄介者だった。

善左衛門ときよは・・・そんな二人の子供だったのである。

色に負けて出奔した父を・・・善左衛門は怨んでいるのだった。

「すべて儂が悪いと申すか」

「そんなことはありませぬ・・・しかし・・・母上はそのことをいつも気に病んでおいででした」

きよが幼い頃・・・他界した母は病床で・・・いつも詫びていたのだった。

「私が母であることで・・・お前たちが苦しむようなことになったら・・・死んでも死にきれぬ」

その母に免じて兄を許してほしいと父親に頼むきよだった。

しかし・・・仕官が上手く進まぬ善左衛門は再び家出をするのだった。

きよが・・・藩主夫人の侍女に奉公にあがった経緯には裏があった。

きよを推挙したのは浅野家の先代夫人に仕えた仙桂尼(三田佳子)だったが、その指図をしたのが仙桂尼の従兄である両国の豪商・木屋孫三郎(藤木孝)だった。

きよの器量を見込んだ孫三郎は・・・弟で赤穂藩士の娘婿になった村松喜兵衛の嫡男・村松三太夫(中尾明慶)に嫁がせようと考えていたのてぜある。

「これはまたとない良縁じゃ」

微笑む木屋孫三郎と仙桂尼の前で・・・「好きな人がいます」とは言えないきよだった。

約束の日・・・寺の境内で落ち合うきよと十郎左衛門。

「この日をどんなに待ちわびたか」

「夢のようでございます」

「私はそなたを妻に迎えたい」

「え」

「どうした・・・兄のことが気になるか」

「あまりに・・・嬉しいお申し出に・・・」

「そなたの兄のことは私がなんとかする」

「私との婚儀などお殿様がお許しくださるでしょうか」

「直談判するつもりだ・・・しかし・・・そのための絶好の機会を待っている・・・だから・・・しばらく待ってくれ」

「・・・」

縁談が持ち上がっているとは口に出せないきよだった。

相手は役付きの藩士・・・自分は父も兄も罪人の身の上なのである。

しかし・・・きよの兄・善左衛門を捜しあてた十郎左衛門は・・・。

「少しは身を慎め」

「そうだなあ・・・きよに縁談もあることだしな・・・」

「縁談?」

「何だ知らんのか・・・相手は村松三太夫だ」

「・・・」

十郎左衛門の心にどす黒い闇が侵入してくるのだった。

一方・・・阿久里に琴を指南するきよは・・・思い詰めた顔で言上する。

「お願いしたいことがございます」

「妾に?」

「私の縁談について」

「縁談とな?」

刻々と迫る・・・お家の一大事を前に・・・。

はたして・・・きよと十郎左衛門の恋の行く末は・・・如何に・・・。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

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2016年10月 1日 (土)

2016年秋ドラマを待ちながら(キッド)

ちっとも待てていないぞ。

どんどん始まってるじゃないか。
 
まあ・・・自称・公共放送は・・・大河ドラマだの朝ドラマだのクールを越える枠を持つ唯我独尊体質だからな・・・それに民放が流されていくんだな。
 
なんとなく・・・デートの待ち合わせ場所で・・・相手が他の人とドライブしているのを目撃した気分だ。
 
最悪の体験じゃないか。
 
それはさておき・・・キッドはPCの交代期に入っているのだが・・・ココログの作成画面と新・PCの相性が最悪なのである。
 
特に改行がおかしなことになる。
 
大河ドラマ記事の行間が変なのはその結果なのだ。
 
なんとか対応してきたことができなくなるのは加齢のためでもあるよな。
 
うまくいかないと面倒くさくなっちゃうしな・・・。
 
時は流れ、素晴らしいインターネットの世界からもどんどん自由が奪われていく。
 
便利なシステムは結局、誰かの都合のいい情報を流通させるためのものだからな。
 
しかし・・・また誰かが新たなる反逆の自由を獲得するだろう。
 
人間は縛られるのが嫌いな生き物だからな。
 
そうでない人もいるらしいぞ。
 
とにかく悪魔はそこに期待したい。
 
で、(月)は「カインとアベル」である。ヒロインが倉科カナで・・・「聖書」がらみのタイトル。王道のラブストーリーではない宣言。そそられるものがないではないが脚本が「マルモのおきて」や「早子先生、結婚するって本当ですか?」の人なので邪道なラブストーリーになる気がまったくしない。単に幼稚なラブストーリーになるのではないかと疑心暗鬼になるわけである。
 
(火)は吉岡里帆の「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」があるのだが・・・「逃げるは恥だが役に立つ」は「掟上今日子の備忘録」の新垣結衣と脚本・野木亜紀子のコンビなのでこちらが本命。それにしても九時から吉岡里帆、十時からガッキーという連続技が早くも実現である。おいおい。ちなみに「彼岸島 Love is over」は短期シリーズなのでレギュラー枠外と考えます。
 
(水)はレビュー対象外の「相棒 season15」があるわけだが・・・「味にスゴイ!校閲ガール」が本当にすごくなるのかが問題だ。脚本が「ディア・シスター」の人なのですごくなる気がすごくしないわけだが。
 
(木)は成海璃子の「黒い十人の女」がすでにスタート・・・不動の四番打者のような君臨ぶりである。
 
(金)は清水富美加の「家政夫のミタゾノ」、菅野美穂の「砂の塔~知りすぎた隣人」、原田知世の「運命に、似た恋」の三つ巴であるが・・・結局は木南晴夏の「勇者ヨシヒコと導かれし七人」になってしまう気がする。
 
 
(土)は恐怖の土曜日である。すでに武井咲の「忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣~」と黒島結菜の「夏目漱石の妻」が2枠も確保しているのだ・・・黒川智花の「THE LAST COP」はすでに敗者復活戦コースなのである。しかも・・・残り2枠だぞ。




(日)は「真田丸」が鉄壁の守備である。土屋太鳳の「IQ246~華麗なる事件簿~」、瀧本美織の「キャリア~掟破りの警察署長~」、志田未来の「レンタル救世主」がまとめて別曜日に転送されるわけだ。しかも・・・残り2枠なのだ。
 
 
もちろん、あけてびっくり玉手箱なので・・・何がレギュラー・レビュー対象になるのか・・・予定は未定です。
関連するキッドのブログ→2016年夏ドラマを待ちながら
 
Hc2016am_3ごっこガーデン。赤い嵐と魔界の冒険ドーム天空ゲームフロアの宴。
 
 
 
 
 
 

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