求められたら応じるのが側室の作法でございます(長澤まさみ)
虚構というものを考える時・・・そもそもすべてが虚構であるという認識は大切だ。
真実が虚構であることは間違いないし、事実もほぼ虚構である。
たとえばドラマでは登場人物が何かを食べたり、排泄したり、挿入したり、排出したりする部分はほとんど省略されている。
つまり・・・省略という虚構が導入されているわけである。
ドラマでも歴史的登場人物も相当に省略されている。
たとえば従五位下真田安房守昌幸には信之、信繫、おまつの他にも少なくとも六人の娘がいるとされている。
真田幸政の室、鎌原重春の室、保科正光の室、滝川一積の室、妻木頼熊の室、おらくの六人である。
研究者によって存在の真偽は変動するが定説ではそうなっている。
ドラマで昌幸が死亡した今となっては・・・彼女たちが物語に登場することはおそらくないだろう。
省略・・・つまり虚構上の存在の抹消が行われるのだ。
虚構の創造者・・・つまり、脚本家は常に人殺しなのである。
だが・・・そのことによって話が面白くなれば何の問題もないのが創作の世界なのである。
従五位下真田左衛門佐信繫は主役であるために・・・抹消された姉妹のように抹消されないが・・・その子供たちとなると・・・特に研究者によるさまざまな説を導入することにより・・・虚構化が行われるわけである。
将軍家と六十五万石の大名・豊臣家が手切れとなるのは慶長十九年(1614年)のことである。
つまり・・・信繫の余命もあまりないのである。
最も虚構の世界では信繫が慶長二十年(1615年)の大坂夏の陣で死なない可能性さえあるが・・・なにしろ源義経がジンギスカンにすらなるのだ・・・ともかく定説では余命一年を切っている。
性行為は死ぬまで可能なので元和二年(1616年)の春まで信繫の子供が生れる可能性は残る。
ここまで確認されている「真田丸」の信繫の子供は・・・。
先妻とされる梅の子・・・長女すえ。天正十三年(1585年)に生れたので天正十四年には数えで三十歳。
つまり・・・きりは当時十五歳だとしてもすでに四十五歳である。
人生五十年の時代だ・・・。
春こと竹林院の産んだ三女阿梅、長男大助、次男大八・・・以上である。
きりこと高梨内記の産んだ次女於市、三女阿梅(竹林院の阿梅と重複)・・・。
竹林院の産んだ四女あくり、六女阿昌蒲、七女あかね・・・。
たかこと隆清院の産んだ五女御田姫、三男三好幸信・・・。
名もなき農家の娘の産んだ名もなき八女と九女・・・。
果たして・・・何人が虚構の世界で産声をあげることができるのか。
まあ・・・時間は限られているのだが。
死期が迫ると人間はやたらと子種を残そうとする説もあるからな。
で、『真田丸・第39回』(NHK総合20161002PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・保坂慶太を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は猿飛とは呼ばれないけど透破(すっぱ)ですの佐助描き下しイラスト大公開でお得でございます。ついに忍者キターッ!でございますね。まあ、出浦対馬守は別格として。真田十勇士をどうするかは・・・史実との兼ね合いで悩ましいところですが・・・佐助は最初からさりげなく登場していますし、きりはますます霧隠才蔵めいてきて・・・高梨内記が出家して三好清海入道のポジションに来るとは慧眼でございますねえ。そうなると出浦は三好伊左入道で復活か・・・残るは穴山小助、由利鎌之助、筧十蔵、海野六郎、根津甚八、望月六郎・・・おそらく堀田作兵衛は駆けつけると思いますので穴山小助ポジションあたり・・・。矢沢頼康も史実を無視して来るかもしれませんよねえ。いよいよ・・・真田丸へ・・・高まりまする。半蔵VS佐助とか・・・たまりませんねえ。
慶長十八年(1613年)一月、池田輝政が死去する。四月、大久保長安が死去。八月、浅野幸長が死去。慶長十九年(1614年)一月、大久保忠隣が改易され井伊直孝に御預けの身となる。大仏殿が建立された京の方広寺の梵鐘が完成する。四月、徳川和子の後水尾天皇への入内宣旨。七月、徳川家康が豊臣家家老の片桐且元に大仏開眼供養の延期を命ずる。供養の導師について天台宗と真言宗が対立する。八月、林羅山が梵鐘の銘文に家康呪詛の意図があることを断じる。九月、家康は且元を通じ、豊臣家に「大坂城からの退去」「江戸への参勤」「秀頼の母の江戸住み」内意三条を伝える。秀頼は大蔵卿局に従い、幕府への反逆を決意する。信長の次男・織田常真(信雄)は大坂城の情勢を且元に知らせ、且元は駿府の家康に報じた。且元は茨木城に脱出する。十月朔日、秀頼による且元放逐の情報が駿府に届き、家康は開戦を決意。江戸城修復のために出府していた福島正則は将軍家の監視下に置かれる。豊臣家は全国に密使を放つ。
京に隠棲する見星院は織田信長の長女で徳川家康の嫡男・信康の正室であった「おごとく」である。信長の命に従い家康が信康を自刃に追い込んだ後・・・信長、信雄、秀吉、家康と保護者を変えながら余生を過ごしている。
家康の元に残した二人の娘、登久姫と熊姫はそれぞれ信濃松本藩主の小笠原秀政、本多忠政の正室となっている。
登久姫は六男二女を設けたが慶長十二年(1607年)に逝去している。登久姫の長女・万姫は阿波国徳島藩主・蜂須賀至鎮に、次女・千代姫は小倉藩主細川忠興の世子・忠利に嫁ぐ。
熊姫は健在で三男二女を設けている。
つまり・・・織田信長と徳川家康の孫娘が本多忠勝の嫡男と結ばれているのである。
真田信之の正室が・・・本多忠勝の娘であることから・・・見星院は・・・信之にとって義弟・忠政の義母という関係になる。
信之は小野お通という京の貴婦人たちのサロンの主催者を通じて・・・父・昌幸と弟・信繁の赦免の嘆願を各方面に働きかけていた。
その努力は父の死後も続いている。
隠棲している見星院にも会っていた。
しかし・・・結果は不調であった。
「残念ですが・・・お力にはなれません」
信之より七歳年上の見星院は微笑んだ。
「今は大御所様の九男・義直様から化粧料をいただくしがない婆でございます」
信長の長女という・・・世が世なら淀殿よりも高貴な女性である。
「それに・・・戦国の世に生れ・・・戦のあとで命があるだけで・・・有難いと思いませんとね」
「ごとくの申す通りだぎゃあ」
庵の隣室から坊主が顔を出した。
「兄でございます」
「え・・・それでは常真様・・・」
「拙僧も・・・関ケ原の戦では改易になった身だが・・・今は従妹の生んだ猿めの忘れ形見に出仕する身・・・しかし、大坂の城にいるより・・・京の都でのんびりと風流を楽しむ方がどれだけ心休まることか・・・」
「・・・」
「猿・・・いや、太閤殿下がご存命中に・・・伊豆守がご舎弟には何度かあったものぞ・・・なかなかのご器量であったな・・・しかし、世が世なら・・・一門の武将になったろう者が・・・九度山で余生を過ごすのもまた一興ではないか・・・」
「・・・でしょうか」
「しかし・・・それで終わらないのがこの世の面白いところじゃの」
「・・・といいますと」
「大坂と江戸の手切れは近い・・・」
「・・・」
「ご舎弟は・・・猿に義理立てして・・・死に花を咲かすことになろうの」
「弟が・・・」
「わが父が・・・今川の大軍を相手に・・・大博打を打ったように・・・豊臣家も打ってでれば面白かろうが・・・どう考えても無理じゃろうのう」
「・・・」
「わが父が籠城と決めていれば・・・愚僧も妹も・・・ここで呑気に茶など飲んではいないであろう」
信長の子として生まれた兄と妹は・・・遠い親戚である信之の前で陰惨にも見える笑みを浮かべる。
慶長十九年の夏が過ぎようとしている。
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