流されやすい人間の器は風に吹かれて転がる石のように女の如く(成海璃子)
ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。
文学は謳われるものだから・・・当然のことなのだ。
しかし・・・今かよっという思いはあるだろう。
あの頃・・・世界は混迷を極めていたが・・・今も同じだということなのだろう。
世界一の強国のリーダーが不人気競争を繰り広げ、集団的独裁者の支配する国が欲望を高めて行く。
戦火をまき散らす強欲な国家元首を国賓として招く世界で一番平和な国。
年老いたリーダーたちはこの世を去っていく。
武器と弾薬、自然災害、疫病が死を拡散する。
人々は救いを求めて神に祈る。
そして・・・相変わらず答えは風に吹かれているのだった。
で、『黒い十人の女・第3回』(日本テレビ201610132359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・瑠東東一郎を見た。原作の映画「黒い十人の女」(1961年)は退屈な作品と言えないこともないと思う。男性の猟色は「源氏物語」から不変のものであるし、人間としても性別を越えて多様性を求める傾向は否めないだろう。しかし・・・実際に繁殖に耽溺することはなかなかに困難なものである。法治国家においては奔放な性欲の解放は犯罪と紙一重なのである。鬼畜の如く沸騰した欲望を行動に移せばけしからんことになるわけだ。
しかし・・・下衆で屑な皆さんにとって・・・それは憧れの世界でもあるのだな。
新しい女体と触れあうことが何よりも重要だったあの頃・・・何もかもが懐かしい。
何人の彼女と一夜を明かしたら真実の愛を勝ち取ることができるのか・・・友達よ・・・その答えは風に吹かれている・・・のだった。
東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)がドラマプロデューサーの風松吉(船越英一郎)と深い関係になってしまったのは・・・23才の時、やがて風松吉が妻帯者と知り、困惑しつつ不倫関係を続けた久未は・・・24才の誕生日を風のもう一人の愛人である劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)に祝福される破目になる。
そして・・・風には正妻と愛人・・・合わせて十人の女がいると知らされる。
ネーミングで・・・十人の女には月名が潜んでいると推定される。
一月(睦月)は本妻の風睦(若村麻由美)・・・新登場!
二月(如月)は舞台女優の如野佳代。
三月(弥生)はアシスタント・プロデューサーの弥上美羽(佐藤仁美)・・・。
四月(卯月)は未確定。
五月(皐月)は脚本家の皐山夏希(MEGUMI)・・・。
六月(水無月)はメイキャップ・アーチストの水川夢(平山あや)・・・新登場!
七月(文月)は未確定だが・・・久未の友人に文坂彩乃(佐野ひなこ)がいる。
八月(葉月)はアイドル女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)・・・。
九月(長月)は未確定。
十月(神無月)は神田久未である。
ネーミングでは・・・風の周囲に・・・監督の林(大堀こういち)とキャステイング担当者の火山(山田純大)がいる。
三人合わせて「風林火山」である。
前回は合コンの男性メンバーが松田、竹井、梅本で「松竹梅」だった・・・。
カフェの店長と店員たちで「春夏秋冬」である。
愛人は文坂を(仮)として・・・名前に「卯」の字のある人と・・・「長」の字のある人・・・残り二人である。
風は・・・「妻帯者であること」を「血液型」と同じようなプロフィールの一項目に過ぎないと認識しているらしい。
しかし・・・愛人たちは・・・まだ・・・それぞれが「すべて」を把握しているわけではない。
ただし・・・本妻は・・・そうでもないらしい。
現代社会において・・・公序良俗に反する不倫の輪は歪な形で撓み始めるのだ。
素晴らしいインターネットの世界では久未と彩乃、そして食欲も性欲も旺盛な池上穂花(新田祐里子)が夜の女子会である。
「奥さんに会うの?」
「どうして?」
「断れなくて」
「そういうとこ」
「どういうこと」
「流されやすい」
「ああ・・・」
「水洗便所(スタンプ)」
「私は便かよ」
「便(スタンプ)」
「便(スタンプ)」
「便(スタンプ)・・・」
かわいい便のスタンプに思わずニヤニヤする久未だった。
どんなにつらい現実にも癒されるポイントはあるのだった。
脚本家の部屋で・・・爆睡中の皐山の下着を畳む風。
風は部下の美羽にキャスティングについて指示をする。
「如野佳代に連絡しといて」
美羽は・・・露骨に消極的な態度で佳代に連絡する。
「あまりおいしい役ではないのですが」
「やるわよ・・・役名は」
「店員Bです」
演劇「孤独の牢獄」の公演を控える劇団「絞り汁」の稽古場で佳代は絶句するのだった。
相葉志乃はすでに東西テレビバラエティ班プロデューサーの浦上紀章(水上剣星)の部屋に三回宿泊しているが・・・二、三度性交したくらいでは交際しているとは思わないタイプらしい。
しかし・・・なんとなく浦上の洗濯物を畳むのである。
人間はそれぞれが違うし・・・どこか似ているものだ。
「やる」と「いる」が聞き取りづらいのが今回の発音チェックポイント。
お前が難聴なのでは・・・?
テレビの劇中ワイドショーでは「ゲス不倫中」のミュージシャンの山丘(鶴見和也)が井上公造レポーター(井上公造)に直撃されている。
美羽はオネエなアライグマ(バカリズム)と妄想空間で「よい子のための不倫講座」を展開。
「結婚願望の有無」により・・・「停滞性不倫」と「略奪性不倫」の分化論を語る。
美羽は性欲だけではない「略奪性不倫」を主張して自己正当化を図るが・・・結局、正妻の不幸を前提に・・・自分の幸福を求めるクズであることをオネエなアライグマに看破されてしまう。
まあ・・・いけないことが愛を盛り上げることは間違いないよねえ。
雄ライオンが雌ライオンの尻穴を嗅ぐようにな。
「佳代さんのように・・・愛人の立場に安住したくはないの」
美羽は久未に共闘を申し込む。
「安住ですか」
「そうなのよ・・・佳代さんは居心地がよくなって・・・さらには・・・愛人たち九人で仲良しグループを作ってリーター格に納まる魂胆なのよ」
「な、仲良しグループ」
「1/10は嫌でしょう」
「嫌です」
「だから・・・最後は決勝戦をするけれど・・・まずは二人で手を組んで・・・敵の数を減らすのよ」
「バトルロワイヤルですね」
「なにしろ・・・正妻がいたんじゃ話にならないから・・・本丸から攻略するわよ」
「それは・・・レベルアップなしで・・・ラスボスに挑むヨシヒコが失敗するパターンでは」
だが・・・流されやすい久未は強引な美羽の手下化されるのだった。
何処かの元町を抜けて・・・本妻の経営するレストラン「カチューシャ」に乗り込む二人・・・。
おしゃれで豪華で老舗の風情を漂わす店内で・・・本妻と対峙する愛人たち。
しかし・・・本妻が一番美しく魅力的というセオリーで・・・久未は・・・圧倒されるのだった。
だが・・・美羽はゴリ押しで挑む。
「お二人のことは・・・風から伺っております」
(明日の天気のことを話すようにに愛人のことも話している!)
「五年前に主人が他界して幼い子供と途方に暮れていたところを・・・お世話してもらって」
(子持ちの未亡人かよ!)
「優しい人なので」
「私たち愛人です」
(言うのかよ!)
「存じております」
(知ってるのか!)
「他にも愛人が」
(必殺技だもの!)
「全部で九人ですよね」
(全然・・・効いてない!)
無言のままツッコミ疲れる久未だった。
「離婚しようとは?」
「思いますけど・・・あの人が気になる間は・・・同じことでしょう」
本妻の圧倒的な勝利である。
一方、志乃のヘアメイクを担当する水川はガールズトークを繰り広げる。
浦上との関係を打ち明けた志乃だったが・・・。
妻帯者の店長・冬樹(中山祐一朗)と不倫中の店員・春江(寺田御子)が蠢動するカフェ「white」に舞台は移り・・・。
水川から・・・風と不倫関係にあることを打ち明けられ驚愕する志乃。
そこへ・・・本妻相手に玉砕した二人が乱入する。
腹いせに・・・美羽は・・・志乃に切り込むのだった。
「私は志乃ちゃんの味方だから言うんだけど・・・風さんとは別れた方がいいわよ・・・仕事にいろいろと影響が出たら不味いでしょう」
(最大の敵だよ・・・しかも・・・こんな公衆の面前で暴露かよ!)
「あれだけ・・・言っておけば・・・次はもう一人の男の件でトドメを刺すわよ」
(絶対に敵にしたくない相手!)
戦慄する久未である。
お互いが・・・風の愛人だと知った志乃と水川は・・・仕方なく和むのだった。
「しょうがないよね・・・知らなかったんだもの」
「悪いのは・・・」
風なのである。
そして・・・新月10ドラマ「淡い三人の男」の顔合わせ・・・。
脚本家、AP、女優二人、メイクと五人の愛人が一堂に会するのだった。
皐山と佳代はかって同じ舞台で仕事をしたが・・・皐山は覚えていなかった。
皐山と・・・佳代が仲良しグループを形成するのはかなり困難な模様である。
受付嬢の久未は愛人たちの出入りをチェックする。
いま・・・東西テレビの風の交際相手濃度は6/10で約分すると3/5である。
脚本家、女優、メイクが去った後で・・・一服するプロデューサーの風とアソシエイトの美羽。
「この間・・・奥さんに会ったわよ」
「え」
「敵わないって思った」
「比べるようなものじゃないだろう」
正妻と愛人だからな。
「別に・・・私・・・別れてって言いたいわけじゃないの・・・ただ・・・愛人は私一人にしてほしい」
「ええ」
「ごめん・・・さびしくてつい・・・変なこと言っちゃった」
「埋め合わせはするよ」
風はそれなりに動揺するのだった。
略奪性不倫症という病に冒された美羽の画策は止まらない。
かってドラマ畑にいたので顔見知りの浦上にも切り込む。
「志乃ちゃんと付き合ってるでしょう」
「いや・・・まだはっきり交際しているわけじゃ」
「モタモタしてると・・・ますせいわよ」
「え」
「うちの風とも噂があるから」
「ええ」
「取られちゃうかもよ」
「えええ」
競争心を煽られる男もいるが・・・ガッカリする男もいるのでギャンプル性の強い攻撃である。
「騙されるな」
「もう遅い・・・仲良しグループは崩壊よ・・・崩壊・・・崩壊・・・何もかもが崩壊するの・・・あはははははははは」
稽古に熱が入る佳代だった。
「上演時間三時間四十分は長すぎる」と佳代の芝居に誘われた久未は呻く。
ちなみに・・・佐藤仁美は第20回、平山あやは第23回のホリプロタレントスカウトキャラバングランプリ受賞者である。
時代は変わる・・・のだった。
関連するキッドのブログ→第2話のレビュー
| 固定リンク
コメント