逃げるが勝ちだが恥ずかしい(新垣結衣)
千年の歴史を持つマジャル人の国家ハンガリー・・・。
そこで諺とされる「Szégyen a futás, de hasznos.」である。
「Szégyen(恥とされる)a futás(逃げること)、de(だけど) hasznos.(有効だ)」・・・これが「逃げるは恥だが役に立つ」である。
「義を見てせざるは勇なきなり」と言えない人の言いわけの言葉とも言える。
前提として「逃走は恥辱」なのである。
これに対して、「死んで花実が咲くものか」は潔い死という「逃避」を戒めるわけである。
どちらの立場で生きて行くか・・・あるいは死んで逝くかはそれぞれの自由なのだな。
ハンガリーは第二次世界大戦における日本の同盟国で・・・つまり敗戦国である。
西側に支配された日本と東側に支配されたハンガリーでは立場が異なるが・・・昔の仲間だ。
ハンガリーが同盟国だった頃の物語「この世界の片隅に」がアニメ化されて来月公開予定である。
主演のすずを演じる声優がのん(本名:能年玲奈)である。
今朝のNHK総合の「おはよう日本」でアニメの劇場公開が伝えられ・・・のんに対するインタビューが放送された。それはある意味、画期的なことだったわけだが・・・。
自称公共放送のアナウンサーののんの紹介の仕方が・・・「すずを演じるのがこの人です」である。
なんという逃げ腰だろうか。
「のん」とも「能年玲奈」とも言えないわけなのか。
それほどに・・・「騒動」には触れないでおこうという姿勢・・・ある意味、天晴だな。
もしも・・・アニメ「この世界の片隅に」が大ヒットした場合・・・各局はどう対応するのか・・・楽しみだなあ。
で、『逃げるは恥だが役に立つ・第2回』(TBSテレビ20161018PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。もちろん・・・のんと騒動を起こしている事務所に所属している女優と「騒動」は無関係であるとも言えるし、そうでないとも言える。そもそも「虚構」に対して「黒子」が見え隠れすること自体が厄介なのである。素晴らしい女優の素晴らしい演技を楽しみたいだけなのである。長谷川京子や新垣結衣、川島海荷や清水富美加たちが商品として沈黙を守っていることに何の問題もない。なんだか少し恥ずかしいのではないかと思うだけである。
ハンガリーは内陸国である。キリスト帝国やイスラム帝国、モンゴル帝国、オスマン帝国やナチスドイツ、さらにはソビエト連邦と様々な絶対主義者たちに服従を強いられた国家でもある。
その諺に「逃げるは恥だが役に立つ」があるのは誠に合点がいく。
就職活動の果てにいろいろとこじらせた無職の二十五歳・・・森山みくり(新垣結衣)は独身男の津崎平匡(星野源)に「就職としての専業主婦」を提案し、津崎は「事実婚」を申し出る。
入籍はせずに同居し・・・津崎はみくりを住み込みの家政婦として雇用する・・・ただし・・・周囲には「結婚」として報告する・・・二人はある意味・・・秘密結社を結成したのであった。
つまり・・・就職はするが繁殖はしない・・・二人の関係は・・・夫婦ではなく・・・雇用者と従業員なのである。
どこか・・・おかしい感じもするが・・・本人たちがそれでいいならよろしいのですな。
まあ・・・隣の部屋にガッキーが眠っていて・・・何もしない男は人間ではないと言う他ないわけだが。
演じているのが妖怪カワウソをノーメイクでできる俳優ナンバーワンなので違和感はないな。ちなみに二位と三位は柄本兄弟だ。・・・おいおいおい。
もちろん・・・未婚の男女が同居することは世間体が悪いので・・・森山家と津崎家と・・・津崎の職場には・・・「結婚」と報告するので・・・二人は嘘をつくことになる。
その「嘘」をなるべく小さくするために・・・「結婚式」は行わない結論に達する二人だった。
ここまでのまとめを・・・今回は平成元年から紆余曲折あって続く「NEWS23」のパロディーで展開する。
筑紫哲也が二十年前「TBSは今日、死んだに等しいと思います」と述べた番組である。
それは「TBSビデオ問題」(1996年)に関連した発言である。
「TBSビデオ問題」という呼称もまた「逃げるは恥だが役に立つ」の一種であろう。
本来は「オウム真理教による坂本堤弁護士一家殺害事件の発端となったTBSビデオ問題」なのである。
「坂本堤弁護士一家殺害事件」が「TBSビデオ問題」という言葉の中に隠蔽されているのだ。
まあ・・・人間が生きて行くというのはそういうものなのだな。
風に吹かれて・・・風化していくあれこれの中で・・・生きて行く・・・それが人間の営みだ。
「NEWS23」の中のローカルニュース枠穴埋め企画だった「異論!反論!OBJECTION」・・・街頭インタビューという古典的手法・・・のパロディーで結婚式についての職場の意見が紹介される。
「それは・・・やるべき・・・楽しいし」と既婚者の日野秀司(藤井隆)、「結局、自己満足だろう」と独身の風見涼太(大谷亮平)、「カミングアウトの儀式・・・覚悟の証」と心にあばずれ女を飼っている沼田頼綱(古田新太)・・・。
「統計的には・・・結婚式をあげないカップルもいる」と説得の論点を述べる津崎。
「二人の覚悟と言う方が・・・波風が立ちません」と応じるみくりである。
結果として・・・両家の顔合わせの場である「お食事会」を設定する二人だった。
津崎家からは・・・平匡の両親である宗八(モロ師岡)と知佳(高橋ひとみ)・・・。
森山家からは・・・みくりの両親である栃男(宇梶剛士)と桜(富田靖子)に加えて、桜の姉で独身で処女の面倒くさい伯母さんの土屋百合(石田ゆり子)、みくりの兄であるちがや(細田善彦)とその妻・葵(高山侑子)そして二人の愛児が参加する。
同居するが・・・婚姻はしない・・・結婚のことは両家にはあくまで秘密なのである。
二人は・・・「みくりさん」と「ひらまささん」と名前で呼ぶことから練習するのである。
「ひらまささん・・・」
「みくりさん・・・」
「・・・」
照れくさい二人だった。
お互い・・・恋愛相手が見つかったら・・・契約解消という契約を交わしている二人なのである。
もちろん・・・このままゴールでなくちゃ・・・お茶の間が許さないと考える。
小学生の時、三十路前だった百合に「伯母さんは一生結婚できない」と言い放った暴言王・ちがやは「結婚は二人だけのものじゃない」「結婚式は面倒くさい」「伯母さんは結婚したことない」などと「いつか刺される」言動を連発するが・・・「二人がよければそれでいいと思う」という百合の言動で結婚式をあげないことが承認される。
こうして・・・「指示が具体的で明確、無駄がない・・・突拍子もない提案にも対応してくれる」理想の上司と・・・「(家事が)万能」の部下は・・・契約結婚を開始する。
「おめでとう」とみくりをサンドイッチ・ハグする森山の両親。
「お前が・・・一家を構える覚悟を持つ日が来るとは・・・今宵の酒は美味そうだ」と山口から上京したヒラマサの父親。
ちなみにソウハチはアカガレイの一種。ヒラマサはアジの仲間で最大種である。
ついでにミクリもチガヤも雑草である。
ただし、チガヤは萱葺小屋、ミクリには台所の意味も含むと思われる。
息子と娘が結婚したことを素直に喜ぶ両親の姿に・・・二人は少し後ろめたさを感じるのだった。
新婚初夜である。
津崎家は1LDK・・・。
ヒラマサは寝室で・・・みくりはリビングで就寝する。
「では・・・寝ます」
「ヒラマサさん・・・おやすみなさい」
ありえないことだが・・・危険を感じないみくり。
草食系・・・だからではなく「逃げるが恥だが役に立つ」と言うヒラマサは・・・人の嫌がることは絶対にしなさそうだったから。
そういう人が一番危険なんだけどな。
ありえないことだが・・・ぐっすりと寝つくヒラマサ。
安全牌だからでもあるが・・・みくりが寄せては返す波のように自然体だったからである。
もちろん・・・ドラマだからである。
ちなみに・・・若いが中身は老けているというのは役年令25才で実年齢28才ということだ。・・・おいっ。
ガッキーが実年齢よりも若い年齢を演じる時代になったんだなあ・・・。
ヒラマサは家事から解放され・・・みくりは得意な家事を仕事として生活する。
二人の充足した秘密の暮らし。
しかし・・・人生を暇つぶしと考える沼田は・・・風見を連れて・・・新婚家庭を奇襲するのだった。
ゲイかもしれない沼田は・・・ヒラマサを逃がした獲物と考えている風である。
休日出勤で事態に対応するみくりだった。
みくり・・・私物はどうしてるんだ。
沼田は・・・恋仇のように・・・みくりをチェックするのである。
一種のストーカーなんだな。
みくりの料理のレシピは・・・素晴らしいインターネットの世界で公開された沼田のレシピだったらしい。
風見は風見で・・・さりげなくみくりにアプローチして・・・好意を抱く。
なにしろ・・・人妻だがガッキーなのである。
そして・・・風見は油断のならない男である。
突然・・・襲う雷雨・・・台風情報はどうしたっ。
泊まって行くという二人に・・・パニックに襲われる新婚擬装夫婦。
寝室にはシングルベッドのみ。
「ためしに寝てみますか」
「え」
「冗談です」
「・・・」
もし・・・風見が沼田に襲われたらどうしようと余計な心配までするヒラマサ。
結局・・・男三人でリビングに眠ることになる。
「どうして・・・三人で・・・」
「風見の貞操を心配したのね」
「まさか・・・合意がなくちゃね」
「ストレートに愛を育めるってうらやましい」
「俺はストレートですけど育んでません」
「少しは育みなさいよ」
カワウソ寝入りをするヒラマサ。
その頃・・・みくりは・・・ヒラマサの残留思念を意識しすぎて眠れなくなっていた。
つまり・・・みくりの深層心理はすでに・・・ヒラマサを愛すべき人と認識していたのである。
休日を・・・24時間・・・来客と過ごしたみくりとヒラマサは・・・漸く平穏を取り戻していた。
「今日は・・・ゆっくり眠れそうです」
「昨日・・・眠れなかったの・・・何か問題があったのかな・・・雇用主として問題があれば解決したいと思う」
「いえ・・・コーヒーを飲み過ぎただけです」
秘密は秘密を生むのである。
その日・・・みくりは自分の布団で安眠した。
しかし・・・シングルベッドのシーツ交換を忘れたのである。
ホテルのベッドでは眠れない人がいるが・・・ヒラマサは・・・みくりの残り香に悩まされるのだった。
甘く・・・せつない・・・女のフェロモン的な・・・体臭の残滓。
(き・・・危険だ)
ヒラマサは眠れない夜を過ごすのだった。
楽しい・・・楽しいぞ・・・この契約結婚は。
もう・・・恋は始っているわけだし。
関連するキッドのブログ→第1話のレビュー
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コメント
いつの間にかチャンネルが変えられたと思って
ガッキーのドラマをみるんだからっ‼︎
と先週も文句を言ってたのに今週もまた引っかかってしまいました^^;
でも情熱大陸はちょっとしつこく感じたので
NEWS23で良かったです^ ^
初回は
同じ脚本家さんだけれど原作力の違いで
仕上がりに多少差が出るのかな
みたいにも思ってしまいましたが
第2話は1時間があっという間で本当に楽しかったです
ダメ恋の楽しさに重版の人生の奥深さみたいなものまで
ちらっと感じさせるセリフ
なんか本当に脚本が素晴らしいし
役者さんも嵌ってますね
もうお兄さんのおばさんへの暴言の数々には
本当に笑わせてもらいました
石田ゆり子さんもとっても良い感じです
2話でやっと逃げ恥の意味がわかりましたが
キッドさんのブログを読んで深い意味まで教えてもらい
この原作もただの恋バナとはちょっと違うのかな
なんて感じてます
2人が一度離れて結ばれるのが必然な気もしますが
答えは風に吹かれているのかな⁇
間違いないと思えるドラマに出会えるのは
本当に嬉しいものですね
夏目漱石の妻もなんとか探して全話見てみたいと思ってます
投稿: chiru | 2016年10月19日 (水) 23時21分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
おしゃれな演出家ですので
少し控えめのパロディーになっているようでございます。
もっと「そのまんま」にもできるのですが
あくまで「一般人の妄想」に抑制しているのだろうと考えます。
それでも騙される人がいるのは幸いなことですねえ。
街角インタビューは放送メディアにとって原始的な手法ですがそれだけにインパクトがあるのですね。
職場インタビューの場合、もう少し人物アップが基本です。
そういう意味でもおとなしい演出へのこだわりがある気がしましたよ。
昔、「TVスクランブル」の「なんでもベスト5」で街を飛び回っていたころを思い出しました。
人々の意見を集約しながら
お互いの問題を解決しようと話し合う二人。
すでによきパートナーですよねえ。
脚本家は実に計算高いタイプだと考えています。
少し構成が趣味的な部分がありますが
それも個性でございましょうから。
兄、兄嫁、伯母の三つ巴を静止する母が
あの人(最近エキセントリックな役が定番)なのが
またユーモラスでしたね。
昔は清純派だったわけですし~。
ハンガリーはなんといっても・・・キッドにとって
妖艶な国なのでございます。
人狼や吸血鬼の故郷のようなものですし。
まさみとガッキーという
「ドラゴン桜」な二人が毎週見れる秋ドラマ。
幸せを感じます。
別ドラマなので
二人とも幸せになれるチャンスがあるのがよろしいですな。
「真田丸」は主人公死亡が前提なので
コチラのヒロインにはハッピーエンドになってもらいたいものです。
一度別居のための百合さんの家のような気もします。
性別を超えて百合さんと古田のカップル成立を
予感させる雷シーンの応酬でしたな。
夏目の妻はそれなりに名作でございましたよ。
投稿: キッド | 2016年10月20日 (木) 06時41分
じいやちゃま、お誕生日おめでとうございます。
じいやにとって健康でより良い一年になりますように。
じいやの執筆のお供にモンブランの万年筆を取り寄せました。
定番ですけど黒地にゴールドのさし色にしましたわ。
すっかり遅刻しちゃいましてごめんなさい~。
まこちゃまのかまぼこケーキはなかなか味がありましたが、
もしや、アカガレイやヒラマサも含まれていましたか。
さてさてすっかりガッキーの世界にはまってます。
ほんのりと優しいテイストですし、
平穏が何よりという心象風景はアタシの目指す世界でもありますわ。
二人に別の恋が始まった時点でこの雇用関係は消滅といいますが
みくりが外で出会う機会がそうあるとは思えないですもんね。
しかもそうなった場合、この家からデートに行くのも変ですから
誰かと出会った時点で解消することになりますか?
ま、恋は半径1メートル以内に芽ばえるので
あまり心配しなくて良さそうですね。
今夜は栗ごはんにしました!
二度目のケーキですからこちらもモンブランにしちゃったわ。
Kマークのろうそく一本でいいでしょう?
さ、じいや、シャンペンでお祝いしましょうね!!
投稿: エリ | 2016年10月24日 (月) 18時34分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
お祝いいただきありがとうございます。
お嬢様からいただいたモンブランは家宝にいたしますぞ。
ボケてケーキだと思って食べたりしないように気をつけまする~。
まこ様はただいま、鳥取方面に被災者援助に出動なさっているようです。
炊き出しロイド・復興ロイドも派遣いたしまする~。
合衆国の大統領選挙に
前途多難な外交問題・・・
騒がしい世間の中で・・・
ガッキーの家政婦さんは
心のオアシスですな。
メイドロイドもガッキータイプに更新中でございまする。
一家に一台、潤いのガッキーロイド増産中です。
誰もが思うのは
ガッキーを雇用中止にする雇用主が
いるわけない・・・でございますが
そこはドラマでございますからねえ。
今のところ・・・繁殖の問題は圏外のようですが
まあ・・・就職と同時に
心の奥底で・・・恋の時計は動きだしているのでしょうねえ。
他の家に永久就職されようものなら
ヒラマサくんは「逃がした魚は大きい」どころの騒ぎじゃございませんから~。
すっかり定着したハロウィンパーティーのために
お屋敷はお化けモードになっております。
本日のお夜食は
まこ様ご指定の
食べられるお化け屋敷で
パンプキンパイをお召し上がりくださいませ。
投稿: キッドじいや | 2016年10月24日 (月) 21時05分