夢のようでございます(武井咲)どれほどこの日を待ちわびたことか(福士誠治)
全20回であるのでよほど変則的なことがない限り越年するわけである。
2016年の秋ドラマのシーズンは・・・
(土)「忠臣蔵の恋 〜四十八人目の忠臣〜」
(日)「真田丸」
(月)「夏目漱石の妻」
・・・という自称・公共放送三連発レビュー体制である。
しかも・・・元禄・・・慶長・・・明治と・・・時代もの三連打だ。
大きくジャンル分けすれば・・・趣向が同じということである。
それをレビュー対象に選択してしまうということは・・・はめられている気がしないでもないが・・・武井咲・長澤まさみ・黒島結菜と美味しい所を突かれているので仕方ないのだった。
なんだかんだ・・・やるもんだなあ・・・と思う。
お茶の間受けは別として・・・キッドは受けます。
で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第2回』(NHK総合201610011810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。元禄十三年(1700年)は関ヶ原の戦いのあった慶長五年(1600年)から百年後の世界である。慶長八年(1603年)、徳川家康は江戸幕府の初代将軍となる。二代目は徳川秀忠、三代目は徳川家光、四代目は徳川家綱と続き・・・延宝八年(1680年)に五代目・徳川綱吉が将軍となった。家綱と綱吉は兄弟でどちらも家光を父とする。綱吉は正保三年(1646年)の生れでこの年は干支では丙戌となる。所謂、戌年生れである。貞享四年(1687年)から綱吉は俗に「生類憐みの令」と呼ばれる法令を発し始める。「殺生を慎むこと」という穏やかな法令は次第にエスカレートし、元禄四年(1691年)には犬などに芸を教えて見世物にすることが禁じられ、元禄八年(1695年)には住民を強制的に立ち退かせ「犬小屋」を設立、元禄九年(1696年)には犬殺しを密告したものに賞金三十両と発布し・・・元禄十三年には鰻、泥鰌の売買が禁止された。
独裁者の頭が狂い始めるととんでもないことになるという代表例である。
綱吉は宝永六年(1709年)に死ぬが早速、犬小屋は廃止された。
しかし・・・時はまだ・・・元禄十三年である。
頭のおかしな将軍が支配する元禄時代なのである。
そして、鰻重を隠れてこそこそ食さなければいけない御時世なのだ。
播磨国赤穂藩の浅野家は浅野長政を遠祖とする安芸国広島藩の縁戚である。
浅野家は他に備後国三次藩などがあり・・・初代藩主の浅野長治の娘・阿久里(田中麗奈)は浅野内匠頭長矩(今井翼)の正室となっている。
元禄七年(1694年)に内匠頭は弟の浅野大学長広(中村倫也)を養子として幕府旗本として独立させる。
元禄八年(1695年)に内匠頭は疱瘡を患い、一時危篤となったために大学を正式に養嗣子とした。
しかし・・・内匠頭は元禄九年(1696年)には回復し、元禄十一年(1698年)には幕府より神田橋御番を命ぜられる。
一年ごとの参勤交代により・・・元禄十三年・・・内匠頭は播磨国赤穂から江戸鉄砲洲の藩屋敷へ戻る。
襦袢を交換して・・・再会を誓った礒貝十郎左衛門(福士誠治)が帰ってくる・・・そう思うと胸がときめくきよ(堰沢結愛→武井咲)だった。
江戸屋敷の奥でも藩主夫人の阿久里を中心に侍女頭の滝岡(増子倭文江)や成瀬(押元奈緒子)の指図で出迎えの準備が忙しい。
「行列はどのあたりかしら」
「江戸市中に入ったとのこと・・・」
一年間不在だった夫の帰還に阿久里の顔も綻ぶのだった。
その夜は宴が催され・・・きよも琴を披露する。
しかし・・・弟の大学が長崎から取り寄せた金平糖を献上したと知ると・・・癇癪を爆発させる内匠頭である。
「そのような贅沢は無用じゃ・・・う」
自身の怒りで心臓に負担をかける内匠頭・・・。
将軍も狂っているが・・・赤穂藩主の頭もかなりおかしいことになっているのだった。
翌年、起こる悲劇は秒読み段階に入っているのである。
そんな未来を知る由もなく再会を祝す武士たちの宴は続いていた。
礒貝十郎左衛門の姿を求めて・・・廊下を行きつ戻りつするきよ・・・。
侍女仲間のつま(宮崎香蓮)はきよの心中を見抜いていた。
「どなたか・・・意中のお方がいるのでしょう・・・当ててみせましょうか・・・礒貝十郎左衛門様」
「え」
「ずっと一緒のお部屋で過ごしているのです・・・わかりますよ」
「・・・」
「でも・・・思うお方と結ばれることなど・・・私たちには無縁でございますよね」
侍女とはいえ・・・きよは藩士の娘ではない・・・浅草唯念寺の住職・勝田玄哲(平田満)の娘として・・・奉公にあがっている身の上である。
それでも・・・そっと部屋を抜けだしたきよは赤い糸の竹垣へと向う。
そこには・・・十郎左衛門が待っていた。
「おきよ」
「十郎左衛門様」
「今度・・・いつ会える」
「お知らせいたします」
二人はきよの外出を狙って逢引するのである。
だが・・・その日を前に・・・きよの周囲では不吉な出来事が起こる。
「大変です・・・」
堀部安兵衛の妻・ほり(陽月華)が変事をきよに伝える。
きよの兄・・・勝田善左衛門(大東駿介)が仲間の元赤穂藩士・不破数右衛門(本田大輔)に誘われて犬小屋の犬で試し斬りをして・・・役人に仕置きされた上・・・唯念寺に逃げ込んできたと言うのだ。
「儂の刀を盗み出し・・・それで試し斬りなど・・・この場で腹を切れ」
「切腹などと・・・まるで武士のようなことを」
「なに」
父と兄の間に割って入るきよ。
「どうか・・・お許し下され」
きよの父である勝田元哲は元は加賀前田藩士だったが・・・人妻に惚れて駆け落ちし、主家を捨てた厄介者だった。
善左衛門ときよは・・・そんな二人の子供だったのである。
色に負けて出奔した父を・・・善左衛門は怨んでいるのだった。
「すべて儂が悪いと申すか」
「そんなことはありませぬ・・・しかし・・・母上はそのことをいつも気に病んでおいででした」
きよが幼い頃・・・他界した母は病床で・・・いつも詫びていたのだった。
「私が母であることで・・・お前たちが苦しむようなことになったら・・・死んでも死にきれぬ」
その母に免じて兄を許してほしいと父親に頼むきよだった。
しかし・・・仕官が上手く進まぬ善左衛門は再び家出をするのだった。
きよが・・・藩主夫人の侍女に奉公にあがった経緯には裏があった。
きよを推挙したのは浅野家の先代夫人に仕えた仙桂尼(三田佳子)だったが、その指図をしたのが仙桂尼の従兄である両国の豪商・木屋孫三郎(藤木孝)だった。
きよの器量を見込んだ孫三郎は・・・弟で赤穂藩士の娘婿になった村松喜兵衛の嫡男・村松三太夫(中尾明慶)に嫁がせようと考えていたのてぜある。
「これはまたとない良縁じゃ」
微笑む木屋孫三郎と仙桂尼の前で・・・「好きな人がいます」とは言えないきよだった。
約束の日・・・寺の境内で落ち合うきよと十郎左衛門。
「この日をどんなに待ちわびたか」
「夢のようでございます」
「私はそなたを妻に迎えたい」
「え」
「どうした・・・兄のことが気になるか」
「あまりに・・・嬉しいお申し出に・・・」
「そなたの兄のことは私がなんとかする」
「私との婚儀などお殿様がお許しくださるでしょうか」
「直談判するつもりだ・・・しかし・・・そのための絶好の機会を待っている・・・だから・・・しばらく待ってくれ」
「・・・」
縁談が持ち上がっているとは口に出せないきよだった。
相手は役付きの藩士・・・自分は父も兄も罪人の身の上なのである。
しかし・・・きよの兄・善左衛門を捜しあてた十郎左衛門は・・・。
「少しは身を慎め」
「そうだなあ・・・きよに縁談もあることだしな・・・」
「縁談?」
「何だ知らんのか・・・相手は村松三太夫だ」
「・・・」
十郎左衛門の心にどす黒い闇が侵入してくるのだった。
一方・・・阿久里に琴を指南するきよは・・・思い詰めた顔で言上する。
「お願いしたいことがございます」
「妾に?」
「私の縁談について」
「縁談とな?」
刻々と迫る・・・お家の一大事を前に・・・。
はたして・・・きよと十郎左衛門の恋の行く末は・・・如何に・・・。
関連するキッドのブログ→第1話のレビュー
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