カインとアベル(山田涼介)あきらめない女(倉科カナ)
原案が「旧約聖書 創世記 カインとアベルより」である。
そういう「話」はどこにでも転がっていて・・・何故・・・今、それなのかがよくわからない。
たとえば小説「エデンの東/ジョン・スタインベック」(1952年)があって、エリア・カザンが監督し、ジェームズ・ディーンが主演した映画「エデンの東」(1955年)がある。
「エデンの東」は・・・何度も舞台化されているわけである。
そもそも・・・兄のカインが弟のアベルを殺す話である。
アベルは殺されて兄を呪うが・・・カインはその後の人生を全うする。
カインとアベルの話は・・・ほぼカインの話なのである。
弟であるアベルを主人公とするということは・・・最終回まで殺されないか・・・殺された後でゾンビになって復活するかしかないわけである。
そもそも信仰の話なのであって・・・安易にドラマ化したら・・・痛い目にしか遭わないと思うぞ。
そういう意味でまったく先が読めない・・・初回なのだった。
で、『カインとアベル・第1回』(フジテレビ20161017PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・武内英樹を見た。兄弟の葛藤はすべて「カインとアベル」的な要素を持っている。早い話が「あさが来た」だって・・・真面目な姉とそうでもない妹の「カインとアベル」である。ただ姉が妹を殺したりしないだけだ。親の愛をめぐる兄弟間の心の葛藤はカインコンプレックスと名付けられたが・・・そもそも・・・カインが嫉妬するのは・・・「神の愛」に対してであり・・・父親のアダムにではない。そう考えるのは・・・つまり・・・無神論者なのであって・・・「旧約聖書」に登場するヤハウェ(神)の存在を無視しているわけである。
カインとアベルは・・・アダムとイヴから生れた人類最初の兄弟であり・・・カインは人類史上、最初の殺人者である。
少なくとも旧約聖書の世界ではそういうことになっている。
つまり・・・人類は誕生して二世代目に・・・すでに殺人を起こし・・・兄が加害者、弟が被害者という凶悪さを示しているのだ。
加害者の親であり、被害者遺族でもあるアダムとイヴは・・・。
「あああああああああああ」
・・・と叫んだことだろう。
旧約聖書の面白さはここにあるわけである。
とりあえず・・・初回から・・・そういう面白さはあまり感じられなかったな。
「旧約聖書・創世記」
・・・蛇の誘惑により罪を犯したアダムとイヴは・・・神によってエデン(楽園)を追放される。
エデンの東で暮らし始めたアダムは農耕で食糧を生産し、イヴは出産する・・・
アダムとイヴは性交した。
イヴはカインを産んだ。
アダムとイヴはまた性交した。
イヴはカインの弟アベルを産んだ。
カインはアダムと共に土を耕し、アベルは羊を飼った。
カインは神にパンを捧げた。
アベルは神に子羊と羊のステーキを捧げた。
神はステーキを食べパンを残した。
カインは神の依怙贔屓に怒りを感じた。
神はそれを見抜いて言った。
「神に邪な心を抱けば恐ろしいことになる・・・それが嫌なら悔い改めよ」
カインの怒りはアベルへと向う。
カインはアベルを野原に呼び出した。
そして兄は弟を殺害した。
大地はアベルの血で染まった。
大手デベロッパー(土地開発業者)であるらしい高田総合地所株式会社の創立50周年の記念パーティー・・・。
盛会である。
社長の高田貴行(高嶋政伸)と・・・貴行の長男である副社長の隆一(桐谷健太)は来賓の応対に忙しい。
しかし・・・物陰で営業部・第5課の社員である貴行の次男・優(山田涼介)は・・・たまたま胸を触ってしまった年上の女性社員・矢作梓(倉科カナ)とひっそりと飲酒していた。
優は・・・優秀な兄に対して引け目を感じる・・・屈折した若者だった。
しかし・・・優をなんとなく可愛いと感じる梓である。
父の期待に応えるために・・・努力を重ねてきた兄の隆一にも・・・弟に対する特殊な感情がある。
父は兄には厳しかったが・・・弟には甘かったのだ。
弟を可愛いと思う気持ちと・・・憎らしいと思う気持ちが鬩ぎ合う隆一なのである。
やんちゃな弟は・・・自転車通勤である。
営業部・第5課には佐々木課長(日野陽仁)と同期入社で・・・明らかに玉の輿を狙っている柴田ひかり(山崎紘菜)がいる。・・・山崎紘菜は第7回東宝「シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞した。グランプリの上白石萌歌の姉で同じく審査員特別賞の上白石萌音はアニメ「君の名は。」で一躍脚光を浴びている。そろそろなんとかしたい今日この頃である。
「アウトレットモールのプロジェクトチームからお呼びがかかったぞ」
父や兄の威光によるものであることは明らかだった。
そういうことにも鬱屈する優だった。
プロジェクトチームのリーダーは営業部長の団衛(木下ほうか)である。
「コンペでの勝利を目指そう」と熱く語る団部長。
チームには横浜支社から本社へ異動してきたばかりの梓も加わっていた。
競合する他社に勝つために有名店の出店獲得が目標となる。
優が担当するのは有名なピザ店。
梓は老舗蕎麦屋担当だった。
周囲が次々と目標をクリアする中・・・難航する二人の交渉。
兄の隆一は「支度金のサービス」で口説けとアドバイスするが・・・優は「金がすべて」のビジネスに含むところがあるタイプだった。
そんな優を「意外性がある」と評価する父に・・・隆一の心は軋む。
優は徹夜でアウトレットモールの模型を作り・・・交渉の手段にしようと考える。
梓は興味を持って優を手伝うのだった。
「なんだか文化祭みたいね」
「どうしてそんなに熱心なんです」
「諦めるなんてもったいないからよ」
ついにはダンボールを布団にして眠ってしまう梓だった。
そんな二人に・・・ひかりは嫉妬メラメラである。
ちょっと・・・恥ずかしい展開だな。
梓は・・・蕎麦に使う「水」がネックになっているらしい。
「パイプひいちゃえばいいのに」
「何を馬鹿なこと言ってるの」
しかし・・・梓はそれをヒントにタンクローリーによる水輸送作戦を発想する。
最後の一人となった優は・・・ピザ屋が・・・他社の支度金に買われてしまったことを知る。
しかし・・・それ以外の出店を勝ち取った高田総合地所はコンペに勝利する。
負け犬として・・・第5課に戻ってくる優。
だが・・・梓のアシストによって・・・ピザ屋は方向を転換する・・・そもそも・・・他社の計画は頓挫しているのだ。
「君の熱意に負けたよ・・・君のところに出店するよ」
辛勝した優だった。
梓が優に優しかったのには・・・理由があったようだ。
梓は・・・隆一の恋人だったのである。
「優はどうだった」
「なかなか面白い子ね」
恋人の言葉に隆一の心は軋む。
カインが隆一、アベルが優とすれば・・・アダムは兄弟の父親・貴行である。
では・・・神の存在はどうなるのだろう。
それは創業者である兄弟の祖父にあたる高田宗一郎会長(平幹二朗)なのだろうか。
そして・・・なんだか・・・とても危険な香りのする兄弟の伯母・桃子(南果歩)はアダムに罪を犯させるイヴのポジションか。
とても・・・安易で神を畏れぬ翻案と言う他ないがな。
キッドは悪魔なので微笑むしかないのである。
関連するキッドのブログ→PRICELE$S?あるわけねぇだろ、んなもん!?
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