火鍋の季節に口から出任せの風が吹き抜ける場所で笑う女(成海璃子)
清々しい朝の「べっぴんさん」で四葉のクローバーが手をとりあう。
集まった四枚の小葉が集う時・・・重ねた手を上にあげてくるくる回り出したらエフエフの村である。
あふれた涙が一同爆笑に変わるので困ったものだな。
そういう健気な女たちの後で・・・どす黒い十人の女たちがやってくる。
いや・・・彼女たちだって・・・世が世なら健気な女たちなのである。
愛を捜してたどりついた場所が不倫だっただけで・・・せつないことには変わりがない。
だが・・・しかし・・・地獄はどこまで行っても地獄だから地獄なんだけどな。
で、『黒い十人の女・第5回』(日本テレビ201610272359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・山本大輔を見た。ついに十人勢揃いである。内容は澱みまくっているが澱みない展開なんだな。人間の物語ばかりが素晴らしいとは思わないが・・・澱んだ人の心を毒々しく描く脚本家の手腕は凄みがある。徹底した論理構成と・・・一筋縄ではいかない人間のいい加減さ・・・この両輪が・・・爛れた地獄のハイウエイを突っ走るのだ。悪魔として敬服に値するドラマである。そして・・・船越英二の子は船越英一郎だったのだ。なんのこっちゃ。
整理してみよう。
一番、風睦(若村麻由美)・・・レストラン経営者・・・本妻。
二番、如野佳代(水野美紀)・・・劇団「絞り汁」の所属女優・・・愛人。
三番、弥上美羽(佐藤仁美)・・・東西テレビアソシエイトプロデューサー・・・子持ちの未亡人。
四番、卯野真衣(白羽ゆり)・・・アロママッサージ店経営者・・・人妻。
五番、皐山夏希(MEGUMI)・・・脚本家・・・愛人。
六番、水川夢(平山あや)・・・ヘアメイク担当者・・・愛人歴三年。
七番、文坂彩乃(佐野ひなこ)・・・アロママッサージ店勤務・・・ヒロインの女友達。
八番、相葉志乃(トリンドル玲奈)・・・アイドル女優・・・セックスフレンドありの愛人。
九番、長谷川冴英(ちすん)・・・芸能プロダクション・マネージャー・・・途中まで高井という役名だった気がする志乃のマネージャー。気のせいじゃないか。重田だった気もする。まあ・・・台本チェックは校閲じゃないしな。まして妄想レビューだしな。
十番、神田久未(成海璃子)・・・東西テレビの受付嬢・・・ヒロイン。
愛人番号は正妻を排除してマイナス1となります。
一夫一婦制度において不倫は・・・反社会的行為であるが・・・すべての犯罪がそうである以上、発覚しなければ趣味の範囲である。
ど根性ガエルでプロポーズを待ち過ぎた女によく似た卯野真衣は人妻であるが・・・結婚三年で・・・夫からの性交渉が途絶え・・・火照る身体をもてあましたらしい。
夫はドラマ「淡い三人の男」のキャスティング担当プロデューサーである火山(山田純大)であり、本名は火山真衣なのだろう。
凝りに凝った脚本だが・・・初歩的なミスがいくつかあるよね。
そういうことってあるよね。
まあ・・・とにかく・・・文月と長月が揃ってカレンダーが十月まで完成したのである。
黒い十人の女カレンダー2017年・・・販売してくれ。
十一月は・・・カフェwhite店員たちと池上穂花(新田祐里子)と我修院麗子(西崎あや)で。
十二月はオールスターでいいぞ。
中学生の息子がいる未亡人でありながら・・・上司である東西テレビのドラマ班プロデューサー風松吉(船越英一郎)の後妻を目指す美羽はライバルを蹴落とすために暴走する。
美羽にセックスフレンドの志乃と松吉との不倫関係を吹き込まれ、東西テレビバラエティ班プロデューサーの浦上紀章(水上剣星)は・・・独占欲に着火するのだった。
「志乃ちゃんと別れてください」
「どうして」
「だって不倫でしょう」
「君には関係ないことだろう」
「俺が志乃ちゃんを好きだからです」
「それは僕とは関係がないことだ」
「関係あるでしょう」
「だって・・・君より僕の方が好きなのは志乃ちゃんの問題だろう」
「え」
「だから・・・志乃ちゃんに君の気持ちを伝えるべきで・・・僕に言われても困る」
「だって不倫じゃないですか」
「それは僕と志乃ちゃんの問題で君には関係がないことだ」
「ばらしますよ」
「好きにしたまえ・・・それが君の愛の形ならね」
「う」
スキャンダルの露呈により・・・志乃の女優生命が断たれることになれば・・・浦上の立場は加害者的な色彩を帯びる。
つまり・・・ストーカー・ポジションへの転落である。
浦上の正論は・・・松吉の邪論に・・・論破されてしまうのだった。
言論なんてそんなものだからな。
ああ言えばこう言う奴は無敵なのだ。
口からは風が出る。
吐息である。
愛撫の方法としてはもっともソフトである。
松吉はおそらく様々な女たちの秘所をそっと吹いているのだろう。
フウフウしてハアハアなのである。なんのこっちゃ。
浦上を返り討ちにした松吉の前にヒロインの久未が現れる。
「話があるんです」
「いいよ」
局内の人気のない場所で対峙する二人。
「私と別れてください」
「そうか・・・仕方ないね」
「え」
「残念だけど」
「少しも残念な感じがしないんですけど」
「そんなことないよ・・・だって・・・久未ちゃんともう会えなくなるんだもの」
「連絡もしないでください」
「わかった」
「連絡先も削除して」
「うん」
「うんって」
「どうしたの?」
「なんだか納得できない」
「どうして?」
「どうしてって」
「別れたいのでしょう」
「別れたい・・・けど」
「別れないの?」
「・・・」
「わかった・・・今度美味しいもの食べよう」
「はい」
「何が食べたいの?」
「火鍋」
立ち去る松吉を見送る久未の顔に浮かぶ微笑み。
絶望の螺旋は久未の離脱を許さないのだった。
レストラン「カチューシャ」で松吉の妻である睦と歓談する佳代。
「でも・・・皆さんと仲良くするなんて無理があるでしょう」
「だけど・・・憎しみあっても仕方ない・・・被害者同志だし」
「被害者は私でしょう」
「睦さんがいけないのよ・・・あんな不倫モンスターを自由にさせて」
「え」
「愛人なんて熊に襲われた犠牲者みたいなものよ」
「そういえば・・・この間、二番(美羽)と九番(久未)が来たわよ」
「睦さん・・・全員把握しているの」
「ええ・・・まあ」
睦は愛人秘録を所持していた。
登録されたメンバーは佳代から美羽に伝わるのだった。
愛人全員と友達になりたい佳代・・・。
愛人全員を排除したい美羽・・・。
同じ不倫中の女でも目指す場所は様々である。
美羽は攻撃的である。
おそらく・・・自分に自信がないのだろう。
ライバルを排除しなければ生き残れないと感じているらしい。
松吉の全愛人を把握した攻撃を開始するのだった。
(おしっこいきたい)
炸裂する脚本家の言葉責めである。
一部愛好家には垂涎のセリフを言わされた志乃はトイレに向う廊下で美羽と遭遇する。
通常モードで挨拶する美羽に・・・潜在的な脅威を嗅ぎとる志乃だった。
志乃の担当マネージャー長谷川を捕獲した美羽・・・。
「志乃さん・・・不倫してますよ・・・でも・・・長谷川さんも不倫してますよね・・・私も不倫しているんです」
少しずつ常軌を逸していく美羽である。
やはり・・・破滅コースに乗っているのか。
松吉に返り討ちにあった浦上は仕方なく志乃にアタックするのだった。
「不倫は・・・よくないよ」
「誰に聞いたんですか」
「風さんとは別れた方がいい」
「少し・・・時間をください」
「不倫なんて・・・誰も幸せにしないよ」
「そんなこと言われなくてもわかっています・・・別れたくても別れられないから苦しいんです」
「別れようと思えば別れられるだろう」
「何も知らないくせに」
決裂である。
なにしろ・・・志乃は・・・浦上より松吉を愛しているのだ。
だからといって浦上が嫌いというわけではない。
人の作った制度がすべての人にフィットするとは限らないわけである。
浦上の車から一度は下車した志乃だが・・・浦上が引き返してくればまた乗車するのだ。
浦上の謝罪を期待する志乃。
しかし・・・浦上は・・・。
「悪いものは悪いんだよ・・・妻帯者と不倫したら奥さんを傷つけるってわかっててやってるなら加害者でしかないんだよ・・・悲劇のヒロインぶってんじゃねえよ」
「降ろして」
「嫌だ・・・俺は君を家まで送って行く」
家の前から去っていく浦上を見送り・・・胸が疼く志乃なのだった。
(いい・・・私ってエム・・・)
脚本家、やりたい放題である。
女優として伸び悩んでいる相手だからいいのかもしれないが・・・基本的には個人的な趣味なのだろう。
しかし・・・そういう女もいるだろうことは・・・経験豊富であればあるほど男にも納得できるのだった。
美羽の暴走は止まらない。
真衣の夫である火山にもリーク攻撃である。
「奥さん・・・不倫してますよ」
「なんてラッキーなんだ」
「え」
「ちょうど離婚したかったんだけど・・・簡単には行かないものな」
「ええ」
「妻が浮気したとなれば・・・有利な立場で離婚できる」
「えええ」
何故か・・・美羽は・・・浮気された男が全員「逃げれば追う心理」になると思い込んでいるらしい。
「教えてくれてありがとう・・・御礼に今度奢るよ・・・何がいい」
「火鍋で・・・」
みんなヒーヒー言いたいのだな。
「なんか・・・思ってたのと違う・・・」
美羽は・・・世界が自分の思い通りにならないことを・・・忘れようとしているらしい。
ますます・・・破滅に向っているようだな。
友愛路線を続ける佳代・・・。
もちろん・・・愛人同志仲良くしようと考えるのも・・・大奥でもあるまいし・・・充分に奇妙な思考です。
大奥だってドロドロだけどな。
カフェ「white」で愛人仲間を待つ佳代。
偶然・・・店にやってきた久未・・・。
そこへ・・・現れたのは・・・文坂彩乃だった。
あんなに・・・不倫なんてやめなよって・・・言ってた親友が・・・。
愛人仲間だったのだ。
しかも・・・打順から言って・・・打順ってなんだよ・・・愛人として先輩かもしれないのだった。
信じていた世界が崩壊する音を・・・聞いている顔の久未であった。
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