味方は十万、敵は三十万、けれど情熱で勝る私たち(長澤まさみ)
気分で戦に勝てるかどうかは・・・やってみないとわからないわけである。
もちろん・・・同じ戦力であれば戦意や士気が高い方が有利だとも言える。
だが・・・竹槍と重爆撃機では勝負にならないことが多いようだ。
勝負には絶対はないが・・・いくつかの勝利のセオリーはある。
たとえば・・・先手必勝である。
先に相手を殺してしまえば・・・いかなる反撃も受けないのである。
昌幸は信繫に・・・討って出ることを推奨したが・・・史実ではそうならない。
どうして・・・そうなってしまったか・・・ドラマではいくつかの伏線が張られ始めているようだ。
次に情報戦である。
敵を知り己を知れば百戦危うからずなのである。
大坂城には多数の間者(スパイ)が潜入していたという。
なにしろ・・・戦力のほとんどが・・・浪人なのである。
浪人ということは・・・何者か不明ということなのである。
しかし、間者は浪人ばかりではない。
豊臣家の頂点には豊臣秀頼がいるが・・・その上には淀殿がいる。
淀の母親の出自は織田氏であるために・・・そこには織田家の関与がある。
淀の従兄弟であった織田信雄(常真)は放逐された家老の片桐且元とともに大坂城を去った。
つまり・・・徳川の間者だったのである。
淀の叔父である織田長益(有楽斎)は城内にあるが・・・長益は徳川との交渉役である。
つまり・・・徳川の間者なのだ。
秀忠と江の娘である千は・・・豊臣家に輿入れしてきたが・・・当然、お付のものは皆、忍びである。
大坂城の情報は筒抜けなのである。
圧倒的な不利に立ち向かい・・・真田幸村の戦が始る。
で、『真田丸・第42回(NHK総合20161023M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は黒田官兵衛・長政父子の元家臣・後藤又兵衛基次の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。五人衆誕生で・・・大坂城ゴレンジャー的な感じが醸しだされてきましたな。つまり真田幸村はレッドのポジション。後藤ブルー、長宗我部イエロー、毛利グリーン、明石ピンクという感じでございましょうかああああああ。定番では・・・奸臣としての大野兄弟、良将仲間の幸村と又兵衛という関係が・・・ここまでは・・・割と一生懸命な大野治長・・・非常に面倒くさい後藤又兵衛という描写になっており・・・一同爆笑につぐ爆笑でございまする。まあ・・・ちゃんとした人間ならば・・・浪人していないという考え方もあるので・・・こういう感じに描かれていてもまったく不自然ではないですよねえ。又兵衛の場合は実の息子の長政より黒田勘兵衛に愛されて・・・結局、ここにいるわけですから・・・。関ヶ原では四十才になったばかりの又兵衛は石田勢相手に猛将ぶりを発揮したわけですが・・・すでに五十半ばとなっており・・・老いの気配は隠せなかったでしょうしねえ・・・。それでも・・・幸村は・・・おそらく・・・又兵衛の心を掴んでいくのでしょうな。それが・・・真田幸村だから。十万人がいる大坂城というスペクタクルは見せられないにしても・・・むさ苦しさ抜群の城内が本当に楽しいですねえ。
慶長十九年
(1614年)十月十五日、豊臣方は大坂城下に放火。ついで片桐且元の茨木城を攻めるが撤退。大坂城周辺を泥土化するために淀川の堤防の破壊を開始する。すでに幕府軍が進出し、破壊工作をする豊臣方と散発的な戦闘状態に突入する。十一月朔日、淀川堤で一昼夜に渡る銃撃戦が展開し、両軍の銃弾が尽きて終息。二日、豊臣方が天王寺方面に放火。幕府軍の先鋒、藤堂高虎は河内から木津川口に進出。福島正則の一族である福島正守、福島正鎮が大坂城に入城。三日、徳川秀忠は岐阜城に着陣。軍勢の集結を待つ。四日、徳川家康は且元を二条城に呼び出し密談。豊臣勢と幕府軍が平野付近で対峙。六日、紀伊和歌山の浅野長晟勢一万が住吉に着陣。家康は天王寺の焼却を命ずる。七日、伊達政宗が二条城に出仕。備前岡山の池田忠継(家康の外孫)の兵一万が中島に進出。守備をしていた織田有楽斎は撤退。十日、秀忠の先鋒隊が伏見城に到着。大坂城では出陣か篭城かの軍議が続き、篭城と決する頃には京、奈良に幕府軍が続々到着し、摂津、大和、河内に流入が開始される。城方は片桐且元の茨木城を攻めるが撤退。大坂城周辺の村落に火付けし焼き払った後で、天満川、木津口の合流地点の野田、福島、木津川口、博労淵、大和川の鴫野、今福、そして東南の攻め口にそれぞれ砦の構築を開始する。
十一日、家康と秀忠が二条城で対面。十三日にそれぞれ出陣と定める。
真田幸村は真田丸の築城に着手する。
大坂城の本丸、二の丸、三の丸の外に堀があり・・・その先の寺町に幸村は着目していた。 背後には谷間があり、前方に篠山と呼ばれる丘陵がある。
真田丸の西側は守備側にとって弱点と考えられる。
そこをカバーするための砦である。
全国各地から真田の忍びたちが続々と集結している。
彼らは渡りの大工衆を伴っていた。
幸村は淀殿から・・・金銀を授かっている。
「金に糸目はつけんぞ・・・」
普請の支配を任された幸村の従兄弟にあたる真田采女正信倍は城作りの名人だった。
上田城はもちろん、伏見城や大坂城の普請にも加わっている。
合戦において戦場での普請は必要不可欠のものであった。
秀吉の墨俣築城のように敵地で付け城を構築するためにはそれなりの作法が必要となるのである。
天守閣から遠望する秀頼は目の前で町屋が城に変貌していく様子に感嘆した。
「なにやら・・・幻術のようじゃな」
「あれもまた・・・真田の秘術と申せましょう」
秀頼の側衆に混じり・・・控えた後藤又兵衛が応じる。
「見よ・・・いつの間にか家が消えたと思ったら・・・そこに櫓が立っている」
「家屋は解体されると同時に建材となるのでございます」
「おそらく・・・前もって改造されていたのでしょう」
毛利勝永が推測を口にする。
「なに・・・」
「真田殿が入城する前から・・・あの村は・・・砦とされるために・・・改装準備されていたのです」
「なんと・・・」
「おそらく・・・地下には蔵が作られていたと思われまする」
「お・・・また・・・あらたな人手があらわれたぞ・・・まるで寺に人がたかっているようじゃ」
又兵衛は板塀の内側に鉄板が張られていることに気がつく。
真田丸は鉄甲砦だった。
土掘り人足たちがたちまち・・・砦を堀で囲んでいく。
堀は深く長い・・・。
そして・・・堀の内にさらに柵が構築されていく。
又兵衛は・・・攻め手となって・・・砦の攻略を想像していた。
堀と柵にはばまれ右往左往する兵を見下ろす銃眼。
(これは・・・攻めれば・・・死体の山ができるわいな・・・)
真田丸の陣所で瞑目する幸村の前に才蔵が現れた。
「一の陣は返り討ちに遭いました」
「・・・」
先代幸村を惨殺された後・・・真田忍軍は家康暗殺に着手していた。
二条城に公家衆を装って侵入した鎌原衆は服部半蔵の影の軍団と城内で激突。
「半蔵を五人まで倒しましたが・・・鎌原衆は全滅いたしました」
「次はいよいよ・・・大坂への道中じゃな」
「河内に出るか・・・大和に出るか・・・佐助は大和と読んでおりまする」
「軍勢を出して強襲すれば・・・造作もないが・・・城方は・・・篭城に固執しておる」
「真田の鉄砲忍び百人衆で待ち伏せしまする」
「果たして・・・狸親父が罠に飛び込んでくるかのう・・・」
「戦は一か八かでございましょう」
才蔵は微笑んだ。
幸村も笑みを浮かべた。
久しぶりの戦に・・・心が踊り・・・二人は若返ったような心地になるのだった。
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