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2016年11月30日 (水)

火曜日よりの逃亡者(新垣結衣)

セリフが良いドラマのレビューの問題は再現性の高まりまくりへの対処だよな。

もう・・・そのまんまでいいじゃんという衝動がね。

昔はどんどんやっていたのだが・・・最近・・・自嘲的な自重体制に移行しているよな。

つまり・・・一度、視聴しただけではセリフが記憶しきれなくなっているんだよな。

レビューの途中でセリフを確認する必要が生じるようでは妄想ではなくなってしまうからな。

面白いよ、このドラマ、面白いよという気持ちに不純な要素がまざるわけだよな。

しかし・・・それを言い出すとレビューという行為そのものが成立しないぞ。

そういう気分にさせるドラマは・・・恐ろしいな。

まあ・・・いいじゃないか・・・個人的な感想なんだから。

そこかっ。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第8回』(TBSテレビ20161129PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・石井康晴を見た。計算と思考が同じものだという感覚を強く感じるものとそうでないものの比率は不透明であるが・・・因数分解と素因数分解の違いがわかる人間とわからない人間の比率は割とはっきりしていると思う。このドラマの主人公は自分を小賢しいと自己分析しているわけだが・・・「小賢しさ」に「計算高い」という要素が含まれてはいないのであろう。だから・・・「因数分解」をたとえとして使うと・・・アルゴリズムを日常としている数学男子に言葉として適切なのは「素因数分解」と訂正されてしまうわけである。複雑な数学的思考を駆使できることと問題解決能力の間には溝があるわけだが・・・直観力という超計算力が・・・結局は・・・計算につぐ計算に過ぎないのかどうか・・・科学はまだ明らかにしていない。

「セックスしてもいいですよ」

「無理です」

恐ろしい言葉の応酬である。

「据え膳食わぬは男の恥」という格言に基けば性交拒絶をした津崎平匡(星野源)は男として恥ずかしい存在なのだが・・・何故かといえば・・・相手に恥辱を与えているからである。

つまり・・・身悶えするほどの「恥ずかしさ」は・・・「はしたないことを言ってしまった上に拒まれた」森山みくり(新垣結衣)にあるのだ。

もちろん・・・そういうことが日常茶飯事の人はいるだろう。

なにしろ・・・男性は勃起しなければ出来ないわけである。

だが・・・まあ・・・ある程度のテクニックがあれば・・・対応は可能だ。

そういう意味で・・・みくりは未熟なのである。

だから・・・玉砕した上で己の未熟を恥じるという恥の上塗りをし続けることになる。

思い出すと「ああああああ」と叫ばずにはいられない「恥ずかしさ」・・・。

何にたとえたらいいのだろう・・・エレベーターの中で突然脱糞してしまった上に地震で緊急停止して片思いの相手と閉じ込められちゃった感じか・・・想像できないぞ。

しかし・・・一種のパンチドランカーである・・・みくりは・・・屈辱に耐え・・・平静を装う。

「告白」しては「スルー」されることの積み重ねが・・・みくりの「小賢しさフィールド」をそれなりに強化しているのである。

しかし・・・人間は忘れようとすればするほど忘れられなくなる記憶システムを完備しているのだった。

従業員としての妻みくりは・・・雇用主としての夫・ヒラマサに対して・・・新月が半月になるまでの間・・・「何事もなかったように勤務」を続けるのであった。

だが・・・「あの夜」を思い出させる飲みかけのアイスワインを美処女の百合(石田ゆり子)に返却するみくりだった。

「美味しくなかった・・・?」

「美味しかった・・・でも・・・あることを思い出して死にたくなっちゃうので・・・」

「え」

何があったの・・・とは恐ろしくて問えない伯母さんの百合ちゃんである。

あの日の屈辱を振り返る・・・。

決勝戦で・・・童貞に敗れ去ったあの日。

選手として全みくりの期待を一身に背負った恋愛47㎏級代表として・・・インタビューに応えないわけにはいかないのだ。

「この一戦を振り返っていかがですか」

「まあ・・・対戦相手が・・・強敵であることはわかってましたから・・・」

「惜しい試合でしたよね」

「もう少し・・・手数を出してから・・・勝負に出るべきでした」

「しかし・・・ファンの皆さんには伝わっていると思いますよ」

「次があるかどうか・・・わかりませんが・・・準備していきたいと思います」

「応援してくれた皆さんに一言」

「ありがとうございました」

滂沱の涙のみくりに全みくりが泣いた!

もはや・・・「303号室」そのものが・・・屈辱の記憶を思い出させる呪われた場所になってしまったのだ。

いや・・・ヒラマサ本人が屈辱の思い出の起爆剤である。

そして・・・火曜日はハグの日・・・ハグ・・・キス・・・「あああああああああ」なのである。

その時・・・みくりの窮状を見かねた運命の神は・・・館山の古民家に住んでいるみくりの母親・森山桜(富田靖子)を庭の脚立から落下させ・・・足を骨折させるのだった。

みくりの兄・ちがや(細田善彦)は「母親の負傷」をみくりに伝えるのだった。

舞い降りた「火曜日からの脱走」のための「大義名分」にみくりは縋りついた。

「身内の不幸」こそ・・・「欠勤」の言いわけに相応しいのである。

みくりは・・・火曜日から・・・303号室から・・・ヒラマサから逃げた。

(うまくできなかったら)

(十歳年下の女子に)

(童貞であることで)

(蔑まれたら)

(二度と立ち直れない)

(だから仕方なかった)

(だって私は童貞なんだし)

(童貞だって税金払ってるんだし)

(童貞だって誰にも迷惑かけていないし)

(童貞だって生きているんだ)

(童貞なんだから・・・許されるべきだ)

しかし・・・火曜日にみくりが・・・部屋にいなかったことで・・・ヒラマサの心は・・・一度死んだのである。

(絶望だ絶望だ絶望だ・・・これでいいのだ・・・童貞だもの)

冷蔵庫には職務に忠実なみくりのレンジでチンするだけの夕食セットが用意されていたが・・・ヒラマサは無視した。

そして・・・ランチにコンビニのおにぎりを食べた。

その頃・・・「3Iシステムソリューションズ」の社内では・・・「一つの危機」が発生していた。

「売春?」

「買収です」

「何を・・・」

「秘密です」

「私に秘密なんて通じると思うなよ」

営業職の密会を個人的な趣味で嗅ぎまわっていた沼田は・・・経営危機問題にたどり着いてしまったのだった。

「得意先が買収されたんだよ」と社長がセキュリティ・システムの守護神の脅迫に負ける。

「なんだって・・・」

「もしも・・・契約打ち切りになれば・・・四割の収入源だ」

「経営危機じゃないか」

「場合によっては・・・リストラなどで対応する」

「おいこら」

「この事実は拡散禁止だ」

「なに・・・」

「インサイダー取引発生の危惧があるだろう?」

「・・・」

沼田は秘密を抱えてしまったのだった。

みくりの就職は・・・ヒラマサの経済力に支えられている。

その根本を揺るがせかねない問題だが・・・今はそれどころではない二人なのだった。

(ハグとか・・・キスとか・・・あんなことをしなければ)

懊悩するヒラマサだが・・・「しないこと」が問題だったとは思わないのである。

自尊心の欠如による自己否定は・・・自己憐憫を伴う自己肯定に過ぎないのだ。

結局・・・人間は自分のことしか考えられない生物なのである。

回想、妄想が入り乱れてある程度・・・お茶の間に視聴力を要求するドラマだが・・・そういう人々は全員見ている感じである。

恋愛のおいしいところで躓いて職場放棄をしたみくりだったが・・・館山の実家では・・・身体の不自由な専業主婦が家事の出来ない夫・栃男(宇梶剛士)に苛立っており・・・熟年離婚の危機のようなものが発生している。

仕事と家事に携わる男と女の立場の変遷が俯瞰される展開である。

「ゴミ出しをしていた」とか「月に二回の風呂掃除」とかで「家事を手伝った」と思う「家事をしない夫たち」にダメを出す専業主婦の母。

そこに・・・男女雇用機会均等法に基づくちがやの妻・葵(高山侑子)が加わる。

ちがやは・・・父と同じで・・・家事をしない夫なのである。

しかし・・・保育園の見つかった葵は職場復帰を控えているのである。

「仕事をして育児をして家事をして・・・その上、夫の面倒となると憂鬱になる」のだった。

さらに・・・桜から手作りジャムのレシピを学ぶために・・・みくりの親友の田中安恵(真野恵里菜)もやってくるのだった。

「あ・・・ヤンキーのやっさん・・・みくりは夫婦喧嘩で家出か」

「ちがや・・・いい加減にしなさい」

自己肯定感の強すぎるちがやはときめかない壁ドンの洗礼を妻から受けるのだった。

にぎやかな・・・森山家である。

無料奉仕で家事をする主婦たちに・・・給料もらって家事をしているとは言えないみくりなのだった。

港には触らせてくれる野良猫がいる。

ぬるま湯気分に浸るみくり・・・。

無職の妄想大陸は・・・ゲーム三昧のスエット上下の頭かゆいみくりをサービスする。

パジャマを着ないみくりである。

このままではいけないと思ったみくりの前に26才の市議会議員・野口まゆ(櫻井はな)・・・奇しくもみくりと同い年である。

情熱が大陸している実在の人物に激しく感化されるみくりだった。

その夜・・・焼酎「二四六」を飲みながら夫の手料理を「星ひとつ」とコネタで桜が処理した後・・・・「あくまで生テレビ」で・・・みくりの市会議員立候補を妄想する女たち。

「女に生めと言ったり働けと言ったり・・・要求しすぎなのよ」

「いつ産めばいいのよねえ」

「高校で出産をすますというのはどうでしょう」

「産休による欠席は夏休みで補修してね」

「少子化て空いた教室に保育室を作って」

「高校聖夫婦だけしか進学できんのか」

「教室の授乳風景が微笑ましいという・・・」

「まあ・・・それを政策にして立候補は無理よねえ・・・」

娘が・・・夫婦間の問題で悩んでいると知ってか・・・知らずか・・・夫婦円満の秘訣を話す母である。

「もし・・・私が先に死んだら・・・あの人・・・どうなるのかと思って」

「・・・」

「無償の愛なんて注げないわよ・・・他人なんだし」

「ひでぶ」

「愛してるわよ・・・お互いに努力してね」

「ひでぶ」

「運命の相手ってよく言うけど・・・私、そんなのいないと思うのよ」

「ひでぶ」

「運命の相手に・・・するのよ」

「・・・」

「そうしよう・・・そうしたいって意志とか希望とかがないと・・・長続きしないでしょう・・・仕事も・・・家庭も・・・」

母の言葉が沁みるみくりである。

無傷ではいられないが・・・軽傷の連続でもダメージは蓄積する・・・諦めてしまいたくもなる。

しかし・・・欲しいと思わなければ何かを手に入れることはできないのである。

そして人間は棘の道を歩み出すのだ。

一方・・・家族サービスから解放された日野秀司(藤井隆)のために・・・居酒屋に集う男たち。

「みくりさんは日雇い妻」と疑う沼田。

「二人はラブラブだ」と本人たち以上に洞察する風見(大谷亮平)・・・。

「みくりさんに会いたいなあ」と日野。

「それは無理かもしれません」とヒラマサ。

「あの人は・・・そんなに簡単に・・・諦めたりしませんよ」と風見・・・。

「こんなところで・・・自信満々に皮肉を言える・・・あなたには・・・わからない」

「・・・」

ヒラマサは痛飲した。

百合は送迎員として召喚された。

ヒラマサは酔い潰れたのだった。

「まったく・・・いい年して・・・」

「僕も付き合います」と同情する風見。

「あなたたち・・・車・・・持たないわよね」

「都会では・・・必要を感じないから」

「でも・・・意外と遠くまで行けるのよ」

「僕は・・・最初の恋人にふられているんです」

「・・・」

中学時代の風見の恋人は・・・ゆかり(奥田こころ)だった。

「僕は・・・モテモテで・・・文武両道のイケメンで・・・彼女は地味なタイプでした・・・ある日、彼女から別れをきりだされました・・・僕がモテモテで・・・文武両道で・・・イケメンなのに・・・彼女は地味で・・・お似合いじゃないとみんなから言われると・・・そう言われて・・・僕はなんと言えばよかったんでしょう・・・世界中がどしゃぶりでも・・・このままどこか遠くへ連れて行ってくれないか・・・とでも」

「・・・」

狸寝入りをしていたヒラマサは・・・モテモテとそうではない人の壁を一瞬・・・乗り越えて共感してしまった。

(あの日・・・僕は自分を守ることで精一杯だった・・・みくりさんは・・・どんな思いを抱えていたのだろうか・・・バレンタイデーにチョコレートをくれた女の子に冷たくしていた奴・・・僕は・・・いつの間にかそんな奴だったのか・・・ああああああああ)

ヒラマサは・・・みくりの残して行った手作りの料理をチンした。

あの日から・・・二週間が過ぎ・・・月は満ちた。

みくりの携帯端末にヒラマサから着信がある。

「ごめんなさい」

「ごめんなさいでお腹いっぱいなんですけど」

「すいません・・・いや・・・ごめんなさい・・・でも言いたいことがあるのです」

「私も・・・色々考えて・・・因数分解して・・・一つのファクターに・・・」

「ただ一通りに決定したなら・・・それは素因数分解ですね・・・とにかく・・・電話をしたのは僕なので先に僕の話を聞いてください」

「はい」

「僕は童貞なのです」

「知ってました・・・というか・・・そうじゃないかと思ってました」

「こわかったのです・・・けして・・・あなたを拒んだのではありません・・・だけど・・・その時・・・あなたがどう思うのか・・・全く・・・考えていませんでした・・・そのことをあやまりたかったのです」

「私・・・市議会議員になろうと思いました」

「え」

「でも・・・そういう生き方もあると思ったら・・・気が楽になったんです・・・だから・・・私の戻る場所は・・・303号室しかないと・・・」

「火曜日の分のハグをしましょう」

「はい」

走り出す二人・・・。

のだめなら千秋先輩は「来ちゃった」なのだが・・・。

ヒラマサはみくりの実家に・・・みくりはヒラマサのマンション前に到着しているのだった。

壮絶なすれちがいだった。

みくりの父親に激しくハグされるヒラマサ。

みくりの両親に・・・みくりの全記録を強制閲覧させられるヒラマサだった。

《明日には帰ります》

《待ってます》

《待っていてください》

何か素晴らしいことが待っている明日を・・・。

ヒラマサが洗った食器の美しさを愛でながら・・・みくりはうっとりと夢見るのだった。

相思相愛で専業主婦になって給料をもらい続ける夢を・・・。

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2016年11月29日 (火)

あなたのすべてを見せてください(山田涼介)

おバカドラマに徹しているな。

おバカな感じだが・・・基本的にはシリアスである。

シリアスなおバカってある意味、凄いな。

夕闇の海岸で年上の女の顔に触れて・・・ただ見つめ合う・・・。

翌朝、何事もなかったようにホテルのロビーで待ち合わせである。

何事もなかったのかどうかは・・・秘密のまま、進行なのである。

そして・・・ドラマチックなことなど何もないのに過剰にドラマチックなBGM・・・なんじゃあこりゃあなのだが・・・そういうお茶の間の反応は一切無視して・・・話をどんどん進めていくのだ。

まさに・・・人の話を聞かないタイプである。

その傍若無人な態度に圧倒されて・・・ズルズルと引きずられていく感じ・・・。

本当になんだか・・・凄いぞ。

凄いものを見せられている気がするぞ。

で、『カインとアベル・第7回』(フジテレビ20161128PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・谷村政樹を見た。原案は「旧約聖書 創世記 カインとアベル」である。「主」として登場する聖書の中の神は「自らを存在と名乗る」・・・唯一絶対の神として知られる。神はすべての人間を愛するが、人間が愛していいのは神だけなのである。神以外の何かを人間が愛すれば堕落であり、人類の多くは洪水で滅んだり、硫黄の雨で焼かれたりするのだった。そういう残酷な神が支配する精神世界が前提なのである。そういう「教え」の延長線上に原子力爆弾は存在するのである。

「僕の前ではすべてをさらけ出してください」

「・・・」

「もっとあなたのことが知りたい」

見つめ合った二人だったが・・・一夜あければ・・・高田優(山田涼介)と矢作梓(倉科カナ)は何事もなかったように・・・米国の高級リゾート経営企業「Draymond Hotel & Resort」」との提携事業についてのプレゼンテーション会場の準備を開始する。

「Draymond Hotel & Resort」の最高責任者スティーブン・ホールが来日し、高田総合地所株式会社とのビシネスについて交渉するのだ。

優は父親の高田貴行社長(高嶋政伸)から全権を委任されているのだった。

長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)は弟の優が・・・婚約者の矢作梓(倉科カナ)と行動を共にしていることに激しく苛立ち・・・父親の寵愛が自分以外に向けられることに嫉妬しながら・・・進言する。

「今からでも・・・私が参加しましょうか」

「いや・・・この件は優に任せるのだ」

「しかし・・・交渉が失敗すれば・・・高田の将来に禍根が・・・」

「確かに・・・これは高田の将来を左右するビッグ・ビジネスだ・・・失敗すれば大変なことになる・・・しかし・・・成功すれば・・・優は英雄になる・・・高田一族にとって・・・素晴らしい戦力が誕生するのだ」

「・・・」

(つまり・・・私だけでは充分ではない・・・というのか・・・社運を賭けてまで・・・優に手柄をたてさせたいということか・・・)

幼い頃から・・・すべてを犠牲にして・・・父親の期待に応えようとしてきた隆一にとって・・・貴行の態度は・・・自分をないがしろにしているとしか思えない。

狭窄した視野の中で・・・不出来な弟は・・・魔性の存在として微笑みかける。

その禍々しさに・・・隆一は戦慄する。

・・・主はアベルとその供え物とを顧みられた。

しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。

会場にものものしくスティーブン・ホールが到着した。

英語と日本語が超時空間で交錯する挨拶がかわされる。

「私の名前は高田優です」

「長男のほうが来ると思ったが・・・私には次男で充分ということか」

梓は優秀な部下として上司を持ちあげる。

「彼は・・・わが社のホープなのです・・・大器晩成タイプとして絶大な信頼を受けています」

「おやおや・・・そうかね」

スティーブン・ホールは冷徹な視線を優にむける。

会場において・・・リゾートホテルのコンセプトについてあらためて説明する優。

「自分だけの空間・・・自分だけの自然・・・これを表現するリゾート施設を提供し・・・ドレイモンドにホテルに運営をお任せします」

「それについては・・・一応了解している」

続いて・・・接待的な会食が始る。

「美しい器だな」

「そうですね・・・和のテイストとして・・・こういうものをホテルでも使用できたらと思います」

「それは・・・契約条件に含まれるのかね」

突然、緊張した空気に戸惑う優。

「いいえ・・・これは彼の個人的な感想です・・・契約条件とは無関係なので・・・御安心ください」

梓は的確に軌道修正を行うのだった。

スティーブンの部下であるエリックは囁く。

「今の処・・・ボスの気持ちは揺れている・・・特に・・・立地について納得していないようだ」

「なぜ・・・ここか・・・ということですね」

翌日は現地視察のスケジュールが組まれていた。

ホテルのバーで優と梓は一息入れる。

「物凄く・・・緊張しました」

「いいえ・・・立派だったわよ・・・ただ・・・器の話は不味かったわ」

「そうですか?」

「ええ・・・ホテル経営はそこで使用される食器も含めてトータルでデザインされている。優くんの発言は・・・相手の領域に土足で踏み込んだことになるのよ」

「あ・・・そうか・・・迂闊でした・・・兄に叱られるところだった・・・」

「・・・リーダーとしての自覚を持ってね」

優は「兄の存在」によって梓の表情が曇ったことを見逃さない。

「梓さん・・・本当に仕事を辞めるのですか・・・こんなに仕事が好きなのに・・・」

「仕事と同じように家庭も大切よ・・・家庭を運営するのも一種のビジネスなんだから」

「本当にそうなんですか」

「私は・・・隆一さんに従うと決めたの・・・でも・・・彼は優くんに嘘をついているの・・・私、まだ迷っているの・・・」

「え」

「でも・・・彼は優くんには・・・そう思わせたいのね・・・私が・・・仕事を辞めることを選ぶ・・・それが彼の望みだから・・・でも・・・私は迷っている・・・確かに今の仕事にやりがいを感じるし・・・今という時も私にとっては喜びだから・・・こんな時間がなくなってしまうと思うと怖いもの」

「僕はもっと梓さんと仕事がしたいのです・・・今日だって梓さんがいなかったら・・・」

見つめあう二人。

見つめあう二人。

見つめあう二人。

まさかと思うが笑わせようとしているのか?

「ごめん・・・私・・・もう寝るね」

小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)は柴田ひかり(山崎紘菜)を慰める。

「御守り・・・渡せなかったのね」

「まあ・・・クラブ活動の選手とマネージャーじゃないんで」

「あなたの場面だけ・・・学生サークルの話みたいなのよね」

「たぶん・・・ティーンエイジャーの共感を求めているんだと思います」

「それか脚本家が中高生レベルなのよね」

「えへへ」

「片思いでいいの?」

「仕方ないんです・・・彼は神の寵愛を受けるスーパースターだから」

「まあ・・・アベルは早すぎたイエスのようなものだから・・・」

「何の話ですか」

「何でもないのよ」

リゾートホテルの建設予定地にスティーブンを案内する優と梓である。

そこには現地のホテルスタッフによって手配されたらしい剥きだしのベッドルームがあった。

「これが・・・コンセプトの具体的な提示です」

「君は・・・私のホテルの客に野宿をさせるのか」

「そうです・・・これこそが・・・あなたのホテルの客が・・・感じる最高のもてなしなのです」

「・・・」

ベッドに倒れ込む優。

「うわあ・・・最高だ」

「・・・」

「さあ・・・あなたもどうぞ・・・」

仕方なく・・・ベッドに身を横たえるスティーブン。

そこに神の息吹・・・風が吹き抜ける。

「あ・・・」

「どうです・・・素晴らしいでしょう・・・壁なんていらないんですよ」

「いい風だ」

冬の装いに身を包み・・・どうしても寒そうに見えるが・・・神の恩寵によって・・・時空間は楽園モードに調節されているのである。

神に愛されている優には・・・あらゆる人間が魅了されてしまうのである。

ただ一人・・・同じく神に愛されている隆一だけが・・・優から反射する神の光の恩恵に浴さないのである。

理不尽なほどに神に愛されている優は・・・あらゆるビジネス相手を魅了して・・・虜にしていくのだった。

利益配分の交渉に入る両者。

「こちらの取り分は30%でいいかな」とスティープン。

「15%で」

「それでは25%では」

「15%で」

「20%・・・これ以上は譲れない」

「・・・15%です」

「ええええええ」

交渉決裂である。

報告を受けて戸惑う貴行・・・。

「なぜ・・・20%で妥協しなかった」

「だって・・・儲けが出ません・・・みんながんばったし・・・」

「損して得とれという言葉を知らないのか・・・」

そこへ・・・スティープンからの連絡が入る。

「お前の息子には驚かされた」

「すまない」

「負けたよ・・・15%で妥結する」

「ええええええ・・・マジですか」

「私はジョークが嫌いだ」

神の力は偉大なり!

「優・・・お前は・・・高田優ではなくなった・・・これからは高田の英雄だ」

「だ・・・ダジャレですか」

祝勝会で・・・ひかりは・・・優に語りかける。

「私・・・決めたんだ・・・優を応援する・・・だから・・・どんどん偉くなってね」

ひかりは神への片思い一直線なのである。

隆一と過ごす・・・梓。

「優くんは・・・とんでもない逸材なのかも・・・」

「これで・・・あいつも少しは成長したかもね・・・まあ・・・これからの経験次第だな」

なんとか平静を保とうとする隆一に・・・無遠慮に油を注ぎこむ梓。

梓の目は神の光で眩んでいるのである。

「いいえ・・・優くんは・・・天才なのかもしれない・・・誰もが彼の元に集まってくるもの」

「あいつは・・・自由だから・・・とにかく・・・これで・・・高田の後継者は・・・俺だけのものではなくなった・・・君も乗り換えるなら今だぞ」

「何を言ってるの・・・私は隆一さんと結婚するって決めてるのよ・・・あなたについていくって」

梓は隆一の手をとって囁く。

しかし・・・その言葉にはどこか・・・空虚なものが漂っていた。

梓は優の光に魅かれ・・・同時に隆一の闇に魅かれているかのようだ。

もちろん・・・その闇は梓自身から拡散しているのである。

優は貴行に呼び出された。

「お呼びでしょうか」

「臨時株主総会でお前を取締役に推薦する・・・今後は役員の一人として私の右腕になってほしい」

「え・・・僕が・・・取締役って・・・親父ギャグですか」

「マジだよ・・・優」

なんだろう・・・新しいBLものなのかな。

主人公が親父を落して落しまくるという・・・。

あれだけ兄弟の仲を裂いておいて・・・兄弟が決裂したことに驚く梓だった。

無邪気ということは恐ろしい。

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2016年11月28日 (月)

眠りはないぞ・・・片桐且元は眠りを殺した!(長澤まさみ)

淀殿の妹・常高院の夫・京極高次は慶長十四年(1609年)に亡くなり九万二千石の若狭国小浜藩は側室の子である京極忠高が継承した。

大坂冬の陣での和議の交渉は今里に布陣した京極忠高の陣営地で行われたと言う。

大坂方の代表は常高院と大蔵卿局、徳川方の代表は本多正純と阿茶局である。

家康には多数の側室があるが・・・甲斐武田氏の家臣・飯田直政の娘で、神尾忠重の未亡人である阿茶局は家康の側室となり、小牧・長久手の戦いの陣中で流産した過去を持つ。家康の信任は厚く、天正十七年(1589年)に徳川秀忠と松平忠吉の生母である西郷局が死去するとその養育を任じられた。

すでに正室の清池院、継室の南明院、武田信吉の母・妙真院、督姫の母・蓮葉院、正栄院など数多くの女たちが故人になっており、阿茶局は家康の妻とも言うべきポシションに位置している。

しかし、大坂冬の陣には寵愛中のお夏の方、お梶の方、お六の方などの他の側室も供奉している。

つまり・・・このような場合でも家康は子作りに余念がなかったのである。

徳川義直の母であるお亀の方、松平忠輝の母である茶阿局、振姫の母であるお竹の方、結城秀康の母である小督局、徳川頼宣・徳川頼房の母である蔭山殿も健在である。

豊臣秀吉にはできなかったことを・・・徳川家康は達成しまくっていたのである。

で、『真田丸・第47回(NHK総合20161127M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・小林大児を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はこの年数えで六十歳になる後の雲光院こと阿茶局の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ついにスケバン一位局キターッでございますね。残り話数も少なくなりまして・・・画伯が「誰」を描くのか・・・「誰」を描かないのか・・・気になる今日この頃ですが・・・あくまでマイペースでお願い申しあげます。予想として秀忠は・・・おもえもんとかヒラマサとして年賀状に回される可能性大と妄想しております。ついにきりちゃんがきりきり舞いを披露してあがいた和睦もなってしまい・・・残り三回しかない・・・なんということでしょう・・・まあ・・・今年は総集編もそれなりに楽しい気がいたします・・・。

Sanada47 慶長十九年 (1614年)十二月十七日、元福島正則の家臣・塙団右衛門直之や元・松平忠直の家臣・御宿勘兵衛政友などが本町橋を渡り蜂須賀至鎮の陣に夜襲をしかける。後陽成上皇の命により武家伝奏の権大納言広橋兼勝などが徳川家康に和議を勧告する。十八日、徳川方の京極忠高の陣で、豊臣方の使者である常高院と大蔵卿局、徳川方の阿茶局と本多正純が和議の条件について交渉する。十九日、二の丸、三の丸の破却、外堀の埋め立て、秀頼の本領安堵、淀殿は人質としない、城中の牢人については不問とするなどの条件で双方が合意。二十日、誓書が交わされ和議が成立する。城郭の破却や、堀の埋め立てについては大坂方は儀礼的なものと信じていたという。織田有楽斎は三男の長政を、大野治長は嫡男の長徳を人質として徳川方に引き渡した。真田幸村は家康本陣への奇襲を立案するが実行に至らなかったと言われる。二十四日、松平忠明を総奉行とする外堀埋め立ての準備が開始される。二十五日、家康は茶臼山本陣を出て京都に戻った。同時に十万人以上の人数が埋め立てを開始する。徳川秀忠は二十六日、岡山本陣で大坂城南方の堀がすべて埋められたことを確認する。二十七日、徳川方は内堀の埋め立てを開始した。

長宗我部盛親は・・・土佐一国の主であったこともあり、旧臣たちが集って牢人たちの中では最大の千人の直臣を持っている。

和睦となれば・・・集まった家来を食わせることができないのである。

盛親は・・・豊臣官僚だった幸村に窮状を訴える。

「弱っちょるき・・・」

「私を慕う牢人は三千人です・・・お互い様です」

「しかし・・・こっちはもとからの家来どもだ・・・煩いのだ」

「でしょうね」

戦国武将の基本は郎党の合議制で成り立っている。

「和睦の後はどうなると思う」

「おそらく・・・城は裸にされて・・・春が過ぎたら・・・大御所は・・・豊臣家にいろいろと難題を言ってくるでしょう」

「さもありなん」

「だから・・・最後は野戦をするしかありません」

「そうか・・・」

「真田丸からはめぼしいものはすべて城内に引き上げました」

「なるほど・・・」

「土佐守様の母上は斉藤利三殿の妹御だそうですな」

「よく御存じじゃ・・・」

「明智忍軍を用いて・・・大坂の町屋に物質を隠匿しておくことをお勧めしますよ」

「おお・・・そんなことまで」

「春まで食いつなげばいいのです・・・」

「やはりそういうことになるかのう・・・」

「お城の米蔵の鍵を御貸しします」

「かたじけない」

長宗我部軍に属する・・・明智忍びの生き残りたちは・・・大坂城の米蔵から・・・米を運びだした。

真田佐助は協力し・・・密かに用意した大坂城下の地下蔵に米を運び入れさせる。

戦国武将の基本は・・・一族郎党を飢えさせないことに尽きるのである。

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2016年11月27日 (日)

スニッファー 嗅覚捜査官(阿部寛)離婚できた男の娘(水谷果穂)

Sniffer(英語)とはくんくん嗅ぐ人で転じて匂い探知機の意味を持つ。

原作はウクライナ制作である。

スラブ圏には人狼の伝説があり・・・特殊な嗅覚という発想はそのあたりにあるのだろう。

しかし、「デカワンコ」は森本梢子の原作コミックが2008年、多部未華子主演のドラマが2011年でかなり先行している。

もちろん・・・ウクライナ人がパクったという証拠はどこにもない。

特殊な嗅覚を持つというのは「匂ったこと」のある人ならそれほど飛躍的な発想ではないのだろう。

認知症の母は嗅覚を失い・・・何も匂わない。

子供たちの喫煙をたちまち嗅ぎつけたあの頃が懐かしい。

で、『スニッファー 嗅覚捜査官・第1~6回』(NHK総合20161022PM10~)脚本・林宏司(他)、演出・堀切園健太郎(他)を見た。フィギュア・スケートによる谷間である。「忠臣蔵の恋」が一回お休みなのだった。いつの間にか日本女子陣が衰退しているな。世界のどこに天才が生れるか・・・は神の領域だが・・・それをどのように育成するかは人の問題である。日本は今・・・なんか・・・なんかな・・・的過渡期にある。革命は突然、嵐のようにやってくるものだ。

華岡信一郎(阿部寛)は超人的な嗅覚を持ち、「匂い」の研究を続ける変人である。警視庁特別捜査支援室からの要請を受け、犯罪現場に残された匂いを嗅ぎ、事件解決に協力するコンサルタントとして契約しているらしい。

警視庁と民間の協力者の関係は秘密のベールに包まれているのが一般的である。

警視庁特別捜査支援室を統括しているのは上辺一郎(野間口徹)で、黒野昌平(竹森千人)、細井幸三(馬場徹)、早見友梨(高橋メアリージュン)などの捜査官が配置されている。

北千住警察署から出向し、華岡のお守り役として配属されたのが小向達郎刑事(香川照之)である。

離婚歴のある華岡と婚期を逃した小向は凸凹コンビを組み、難事件に挑むのだが・・・相手は元エリートのテロリストや、元陸上自衛官のスナイパー、贋作すり替え美術品窃盗犯、新興宗教教団における連続殺人事件、人気キャスターの隠し子誘拐事件など・・・警視庁がどういう意図で発注しているのかはよくわからない。

捜査が難航するとたちまち・・・無関係を装う上辺一郎室長の立場もよくわからないのだった。

連続ドラマとして・・・ラスボス臭を漂わせながら・・・美人耳鼻咽喉科医師の末永由紀(井川遥)が華岡の恋のお相手として登場する。末永医師は「華岡の特殊な嗅覚」にも関心を抱いているらしい。

一方、母親の昌子(吉行和子)と暮らす小向刑事は昌子から「早期結婚」を奨励されている。

華岡には十数年以上前に結婚三年で離婚した元妻・片山恵美(板谷由夏)がいて・・・恋愛結婚だったが・・・今は当時のような「恋の匂い」は感じないらしい。一人娘で高校生の美里(水谷果穂)は母親が養育しているが・・・どうやら・・・美里は母親を煩わしく感じる年頃らしい。

そして・・・なにやら・・・よからぬ男と交際してる気配である。

高校を無断欠席して・・・母親を恐慌に陥らせたりしていたが・・・ついに殺人容疑で逮捕されてしまうのだった。

「男の人を刺したって・・・警察から連絡が・・・」

「殺人なんて・・・そんな馬鹿な・・・」

錦糸町署の鬼島刑事(尾美としのり)が美里の取調を担当していた。

「黙秘するのか・・・」

「・・・」

小向刑事は事件の概要を華岡に伝える。

「24日の未明・・・飲食店従業員・・・槇田翔太23歳が雑居ビルの空き室で・・・ナイフで胸を刺されて死亡・・・死体の側で片山美里が酩酊状態で凶器を握って倒れていたそうだ・・・痴情のもつれのあげくということで・・・彼女は重要参考人として事情聴取を受けているが・・・黙秘しているらしい」

小向刑事は顔見知りの鬼島刑事から面会の便宜を取り付けようとするが拒否される。

元妻は華岡を責めたてる。

「何のために警察に協力してるのよ」

「・・・」

警察関係者の家族から殺人犯が出ることは好ましいとは言えないので上辺室長は無関係を主張するのだった。

立場が不鮮明な鏑木参事官(徳重聡)に突然、取り入りはじめるのだった。

廊下ですれ違った華岡は鏑木参事官から嫌味を言われる。

「君が鼻男か」

「朝からゴルフですか」

「何?」

「この時期に枯れてないのは西洋芝だ。ゴルフ場で数時間過ごした直後でしょう」

「失礼な男だな」

「この男は警察組織とは無関係ですから」と上辺室長。

「しかし・・・娘が殺人犯となると・・・責任問題は発生する・・・君も首を洗っておきたまえ」

「滅相もございません」

呆れながら・・・独自捜査を開始する華岡と小向刑事だった。

鑑識課に変装して現場調査の強行である。

華岡は嗅いだ。

「被害者は誰かと話をしていた。そこへ・・・別の男と美里が来た」

「現場に・・・四人いたのか」

「時間経過が・・・大きい・・・捜査や鑑識の人間が匂いを・・・待てよ・・・現場にもう一人きた」

「え」

華岡は匂いから男の行動を脳内で再現する。

壁の隠し扉を発見する華岡。

「ここから・・・何かを持ち去った」

「そんなことまでわかるのかよ」

お茶の間で同意の声が沸き上がるのだった。

「ここに何かがあった・・・だが・・・何の匂いかわからない」

吸引機で残量物質を収集した華岡は研究室で分析を開始する。

元妻は泥酔していた。

「飲みすぎだろう」

「飲まなきゃやってられないわ」

「あの子と君は似ているな・・・」

「・・・」

「慎重そうに見えて・・・時々、馬鹿をする」

「あの子が人を殺して・・・娘が殺人容疑で逮捕されたのに母親が飲酒しているってこと」

「そんなことより・・・匂いだ・・・現場には残された匂いが問題だ」

「この匂い馬鹿・・・」

鬼島刑事は・・・華岡から事情聴取を求めた。

「十四年前に別れた後は母親まかせか」

「ケアはしていた」

「ケアか・・・被害者のことは知ってたのか」

「知らん・・・別れた妻も知らないと言っていた」

「聞くだけ無駄か」

パチンコ店で捜査をしていると闇金経営者に見えないこともない早見刑事が捜査結果を報告する。

「片山美里が被害者の槇田翔太と交際していたのは間違いないよね。槇田翔太は高校中退で・・・禁止薬物取締法違反の前科がある半グレよ」

「半グレって」

「不良以上ヤクザ未満のチンピラってことよ」

「美里は・・・そんな奴と付き合ってたって言うのか」

「お嬢様とチンピラの交際は定番じゃない」

「・・・」

「あそこで・・・麻薬の取引があって・・・トラブルになり・・・美里ちゃんは巻き込まれて濡れ衣を着せられたんじゃ・・・」

そこへ・・・上辺室長がやってくる。

「娘さん・・・自白したよ」

「なんだって・・・」

「殺人は認めたが・・・動機については黙秘しているらしい」

突然、警視庁の捜査一課から家宅捜査を受ける華岡の研究室。

「いくらなんでも・・・被疑者の親の家宅捜査って・・・」と小向刑事が捜査員に質す。

「所轄より先にやれって・・・上からのお達しなんだよ」

「どういうことだ」

「錦糸町署には麻薬の横流しの噂があるんだよ」

「なんだって・・・」

美里を取り調べる鬼島刑事に対する疑惑が浮上するのだった。

早見刑事は・・・美里と被害者の関係を交友関係からさらに調べあげていた。

「一年くらい前から真剣に交際していたみたいですね・・・被害者の部屋にも出入りしていたみたいです」

「・・・」

「男親は・・・娘の交際相手について聞くだけでも嫌なのに・・・相手がタトゥー入ってる奴なんだよ・・・その辺で勘弁してやれよ」

「被害者は昼間の仕事を探していたと言います・・・美里ちゃんとの交際が影響していたという証言もあります」

「つまり・・・娘は不良と付き合って・・・それで不良が真面目になろうとしていたと」

「まあ・・・楽観的に考えればそうですね」

恵美が倒れ・・・末永医師が介抱する。

「過労と寝不足ですね」

「娘が・・・こんなことになって・・・どうしてあんな男と交際していたのか」

「好きになるのに理由なんかないでしょう」

「僕がこの人と出会った時・・・特別な匂いがしたって言いましたよね」

「ええ」

「人は緊張すると代謝が変わる・・・彼女の体臭と代謝の変化が僕の体臭と代謝の変化と合わさってある種の匂いを生み出す・・・それが恋の匂いの正体だ」

「・・・」

「そして・・・美里が生れた・・・美里は一種の残り香です」

「まあ・・・娘さんにはせめて愛の結晶と言った方がいいですよ」

被害者の働いていたクラブの防犯カメラの映像が届いた。

「美里ちゃんが映っています」

「何」

再生される動画・・・美里が席を立った隙に・・・男が美里の飲み物に何かを投入する。

「ああ・・・美里・・・飲むな」

「これ・・・録画ですから」

「ああ・・・飲んじゃった」

「だから・・・録画ですから」

「お・・・昏睡したぞ」

「この時間・・・犯行時間直前です」

「あの状態で・・・人は刺せないな・・・」

「じゃ・・・なんで自白なんか・・・」

ついに・・・「現場の匂い」が「笑気ガス(亜酸化窒素)」であることを突き止める華岡。

「笑気ガス」は危険ドラッグの成分として利用可能の物質だった。

そして・・・その匂いは・・・鏑木参事官から立ち上る。

華岡は・・・鬼島刑事に通報した。

鬼島刑事は・・・正義の味方だったのだ。

「参事官には麻薬の横流しについての疑惑があった・・・別荘が怪しいと思うが・・・捜査令状はとれない・・・」

「どうしろと・・・」

「善意の第三者が発見すればいい」

「無茶苦茶だな」

別荘に侵入する小向刑事と華岡・・・。

「嗅げ!」

華岡は・・・「ブツ」を発見した。

鏑木参事官のゴルフのお伴をしている上辺室長。

そこに・・・警察車両が集結する。

「鏑木参事官・・・あなたを危険ドラッグの押収物横領および槇田翔太殺人教唆容疑で逮捕します」

「これで人生・・・パーですね」

上辺室長は掌を返した。

美里は無罪放免となった。

「なんで・・・自白なんてしたんだ」

「彼は・・・真面目になろうとしていた・・・私は家を出て・・・彼と結婚したかった・・・でも・・・彼はまともな仕事に就職できなくて・・・お金のことで喧嘩になって・・・ヤバイクスリでも売ればいいのにって・・・つい言っちゃって・・・それで・・・こんなことに・・・私が彼を殺したのよ」

「・・・」

「・・・」

馬鹿な子供に馬鹿とは言えない両親だった・・・。

そして・・・二人には復縁する気はないらしい。

一件落着して・・・華岡は末永医師に告白する。

「いい匂いがします・・・恋の匂いです」

末永医師は微笑んだ。

そして・・・最終回には兇悪なサイコパスが待っているのだった。

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2016年11月26日 (土)

桃太郎と白い犬のブルース(山田孝之)

お伽噺の「桃太郎」は「伝承」の集合体であって・・・何が正しいのかはよくわからない。

「物語」には様々な「効果」があるが・・・それぞれの立場によって好ましさは変わってくる。

桃は「どんぶらこどんぶらこ」と流れてくる。

おじいさんは山へ柴刈に行きおばあさんは川でせんたくをする。

桃を発見したおばあさんは・・・交番には届けず・・・ネコババをする。

桃を割ると桃太郎が誕生する。

子供のいない老夫婦は養子縁組をする。

桃太郎は・・・働き者に育ったり怠け者に育ったりする。

鬼が島の「鬼」が「悪さ」をするという「噂」がある。

異端者である桃太郎が「鬼退治」をすることになる。

おじいさんとおばあさんは「黍団子」を兵糧として与える。

出陣した桃太郎は・・・兵糧の分配により、犬、猿、雉と同盟する。

鬼が島に突入した桃太郎は大戦果をあげる。

鬼の収集していた「金銀財宝」を戦略品として持ち帰る。

おじいさんとおばあさんは投資が成功したことに喜ぶ。

親はいなくても子は育つという話である。

桃太郎が好戦的で侵略的で勝利者であることが好ましくないと感じる人も多い。

そういう人は消極的で、引き籠りで敗北者であるからである・・・おいおいおい。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第8回』(テレビ東京201611260018~)脚本・演出・福田雄一を見た。恒例の前座コーナー・・・女盗賊クレア(片瀬那奈)が付き人(金子伸哉)に日傘を差させスタンバイしている。「私がこうして待っていたんだから金と食糧は置いて行きなさい」と言う。村の女ムラサキ(木南晴夏)を除く勇者ヨシヒコ(山田孝之)、戦士ダンジョー(宅麻伸)、魔法使いのメレブ(ムロツヨシ )は相手が美女と些少は認める姿勢を示す。夏の高校野球PR女子高生に選ばれたムラサキとしては水着キャンペーンガールの片瀬那奈には負けられないのである。

「食糧は譲れないが・・・食事の後でちょちょっと」と交渉するダンジョー。

「米粒一粒たりとも渡さん」とムラサキ。

仕方なく大薙刀を取り出すクレアだった。

「女は斬りたくないが・・・」と戦闘モードに入るヨシヒコ。

「ちょっと待って・・・今、殺陣師の先生呼ぶから」

薙刀の先生(鎌倉太郎)がコーチングを開始するが・・・日傘が邪魔でふりかぶれない。

「今日は曇りだし・・・傘はいらないんじゃ」

「曇りの日の紫外線対策が重要なのよ」

「はあ・・・そうですか」

「やっぱ・・・あれね・・・私、ラブロマンスが専門だからこういう野蛮な感じなのはちょっとね」

「ウシジマくんで大久保千秋やってましたよね・・・変態仮面シリーズの色丞魔喜も」

「次は・・・しっかり台本読んでおきますから」

去っていくクレア。

「何も盗らずに行ったか・・・」

「クレアさんから・・・みたらし団子の差し入れいただきました」

「差し入れしてくれたよ!」

「女優ってこれだから・・・」

「そうだぞ・・・結婚したりすると大変だぞ」

賀来千香子と夫婦だった男(2012年離婚)のセリフである。

仏のお題発表コーナーである。

しかし・・・見慣れぬ仏(内田朝陽)が登場する。

ヨシヒコも裸眼で視認可能である。

「仏四号謹慎中のため・・・私が担当します・・魔王退治の勇者ヨシヒコさん御一考ですね」

「なんだか・・・事務的ね」

「いつもの仏より有能そうだ」

「え・・・今日で謹慎期間終了なの?・・・少々・・・お時間ください」

タプレットでデータを確認するエリート仏がフレームアウトすると・・・やつれた仏四号(佐藤二朗)が後光枠内に登場する。

「私・・・充分に反省しています・・・仏という職業についているものが不倫をするのは好ましくないということを理解しております」

「どんな職業でも不倫はダメだよなあ」

突然、天空の記者団が囲み取材を開始。

「サンズリバー大学を卒業したのは嘘だったんですか」

「私は・・・通信制で」

「下界指導コンサルタントの資格も取得していないんですよね」

「・・・学歴詐称もしていたのかよ」

「無資格仏なんですよね」

「いいじゃないか・・・無免許の仏で何が悪い」

「仏・・・いいから目的だけ教えてくれ」

「質問に答えてください」

「バボル村」

「ごまかさないでください」

「仏が嘘をついたことに対してどう責任をとるんですか」

「嘘も方便じゃあああああ・・・アルバイトしないで生きていけるんじゃああああ・・・妻は学生時代埴輪と呼ばれていたんじゃああああああ・・・息子は私の全部が好きなんじゃあああああ」

「番組が違いますよ」

旅を進める一行はお馴染みのダーマ神社に寄り道をする。

書類申請だけで・・・転職可能な場所である。

「私・・・リセットされて村の女に戻されちゃったから・・・魔法使いに転職する」とムラサキ。

「我々は・・・上級職に転職だ」

「上級職?」

「俺はバトルマスターになる」とダンジョー。

「私は賢者になる」とメレブ。

「けけけ賢者?・・・あんたがけけけ賢者?」とムラサキはからむのだった。

ヨシヒコは「パラディン」(聖なる騎士)を選択する。

しかし・・・「パ」と書いたところで・・・いざないの剣の盗難事件が発生し・・・筆が滑る。

泥棒を追いかけて確保し説諭しているところにムラサキがやってくる。

「魔法使いになれたよ」

魔法使いになるとなんだか少しかわいいムラサキだった。

それは個人的感想じゃないか。

「私はまだ途中で・・・」

言いかけたヨシヒコはドロンと消失してしまう。

書き損じた書類の文字が「犬」に見えたために・・・「犬」に転職してしまったヨシヒコである。

「ヨシヒコが消えちゃった!」

消えたヨシヒコは白い犬(サモン)となって荒野を彷徨っていた。

「私は・・・犬になってしまったのか」

そこへ・・・桃太郎(山田孝之)が通りかかる。

「黍団子食べたら・・・家来になってね」

「黍団子など私は・・・おいしい・・・犬としての私は黍団子がとんでもなく美味しい」

仕方なく・・・桃太郎と行動を共にするヨシヒコ犬(声・山田孝之)・・・。

「本当に鬼を退治するのですか」

「じいちゃんとばあちゃんに言われたから・・・」

「そうなのですか」

「昨日まで大根の種蒔いてたのに・・・急にだぜ・・・ゆとり世代には重荷だよ」

「ゆとり世代・・・」

「でも桃から生れた俺には・・・育ててもらった恩があるから」

「桃から?」

「うん」

「あなたは騙されています」

「え」

「桃から生れる人などいません」

そこへ・・・猿(柳楽優弥)がやってくる。

ヨシヒコは思わず犬猿の仲となるのだった。

「猿ですがなにか」

「なんだか・・・敵意がみなぎってくる」

「俺は・・・そうでもないなあ・・・仲良くできそうな気がする」

ドラマ「アオイホノオ」ではとんこさんをめぐる恋敵の二人だった。

さらに大衆演劇のチビ玉三兄弟として知られる雉(若葉竜也)が加入する。

「キジは戦力としては弱すぎます」

「スズメよりはやれます」

「このままでは鬼退治は無理だ・・・もっと黍団子で買収しまくり、戦力を増強させましょう」

ゆとり色の強いメンバーにアドバイスするヨシヒコ犬だった。

一方、ヨシヒコ抜きでバボル村に到着したムラサキたち。

村では「漢祭り」が開催されていた。

「カン祭り?」

「オトコ祭りじゃ」

男子強制参加のイベントである。

宿でヨシヒコの安否を案ずるムラサキ・・・。

そこへ・・・「ウルトラマンネクサス」のポンジ(川久保拓司)が現れた。

「勇者ヨシヒコと魔王の城・第8話」の登場人物である。

彼もまた「アオイホノオ」におけるとんこさん関係者である。

ほとんどのゲストが出オチの展開だが・・・出演希望者が殺到しているのか。

「遊び人レベル99からスーパースターに転職したっす」

「ウザさが増量されているな」

「キモい」

「PJと呼んでほしいっす」

「泥はねNGなんだな」

メレブ(賢者)

ダンジョー(バトルマスター)

ムラサキ(魔法使い)

ポンジ(スーパースター)

・・・というパーティーである。

しかし・・・「漢祭」ではダンジョーしか役に立たないのだった。

主催者である村長(山下真司)は賞品として「紫色の玉」を提示する。

是が非でも入手したい一同。

最初の競技は亭主関白行列であった。

「メシ、フロ、ネル」と叫びながら行進する男たちに女たちが石を投げつける。

倒れたら負けだが・・・ダンジョーは直撃を受けて転倒。

第二の競技「毛抜き我慢大会」を前に脱落である。

ドラマ「スクール☆ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜」(1984~5年)の熱血教師・滝沢賢治のように鉄拳でカツを入れる村長・・・。

「くやしくないのか・・・イソップ」

「イソップって言っちゃったよ」

イソップは本名・奥寺浩(高野浩和)・・・早世した伝説のラグビー部員である。

三十年前の話だぞ・・・もう誰も知らないんじゃないか。

コテコテなんだろう・・・。

しかし・・・呪文を習得するメレブ。

「どんな呪文だ」

「ヒャダイン」

「凍らせるやつですね」

「いや・・・アイドルの楽曲提供者になれる呪文だ」

「え」

「もしも・・・アイドルが売れようものならば漫画家のおばさんと深夜番組を任されるようになる」

「久保みねヒャダこじらせナイト・・・みたいな」

「まんまじゃねえか」

最後の試練は・・・「鬼退治」だった。

鬼の棲み家に辿り着くまでにドロヌーバやマドハンドなど泥系のモンスターと戦闘する一行。

「泥いや~ん」

「殺す」

「いぶシルバー」

結局、合流するヨシヒコたち。

「ヨシヒコ・・・犬になったのか」

「真実の姿を映し出すラーの鏡が必要でしょうか」

「いや・・・ダーマ神殿で勇者に転職すれば元の姿に戻れるだろう」

「しかし・・・私はこのまま犬でもいいと思っています」

「何故?」

「どこでも自由にウンコが出来るのです・・・素晴らしい解放感です・・・これこそが真の自由と言えるものでしょう・・・魔王を倒すことより道端でウンコをすることの方が」

「それはともかくとして・・・この人たちは」

「買収しました」

「これは・・・英雄の皆さん・・・」

桃太郎と猿と雉の他に・・・浦島太郎(鎌倉太郎)、金太郎(金子伸哉)、黒人(副島淳)が加わっていた。

「これは・・・まさにエーユー的な」

「エーユーですか」

「いや・・・ヨシヒコはどちらかというとソフト・・・」

「お父さん・・・この人たちは誰ですか」と黒人が問う。

「バンクだから・・・特にヨシヒコをお父さんと言ったらアウトだから」

恐ろしい唸り声をあげる鬼だったが・・・桃太郎とヨシヒコ犬、ゆとり猿、チビ玉雉、賢者、バトルマスター、魔法使い、金太郎などの波状攻撃の前に敗れ去ったらしい。

ネタ入れすぎて・・・戦闘シーン割愛の方向だな。

せっかく手に入れた玉は偽物だった・・・。

「犬のままならカボイの村に連れ帰れたのに・・・」

ヒサ(岡本あずさ)は兄の身を案じつつ変化の杖で・・・裏かぶりによるダブル・ブッキングを気にするタモリのものまねをする男(コージー富田)に変身する。

関東ローカルの裏番組は「タモリ倶楽部」である。

残り一つで・・・偽物オーブの回・・・なかなか理にかなった時間稼ぎだな・・・。

次回は・・・学園物かっ。

また、なんちゃって高校生かっ。

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2016年11月25日 (金)

スタンプとスタンプの間の殺人(成海璃子)

素晴らしいインターネットの世界で社会的ネットワークを構築可能にするサービスの一種における絵文字機能の使用によって楽しませるドラマである。

基本的にコミュニケーションのツールというものは危険なものである。

早い話、口論から殺人事件に至ることはままあることだ。

平和愛好家たちが「武器よさらば」と口にするのはたやすいが結局、誰かが開発し、生産し、所有してしまうので「非武装の世界」は実現しない。

「しゃべるな」と言ってもしゃべるのが人間なのである。

理想は理想として・・・現実に折りあうことは常に大切である。

グローバル化によって富とともに貧困も流入する。

人類を殺すウイルスは地球を循環する。

耐震設計の想定外の巨大地震は発生する。

機械化された労働力によって人間の仕事は奪われる。

一人の小さな手は何もできないが・・・みんなが手をにぎったらとんでもないことになるのが定番なのである。

自由とは破壊であり平和とは管理なのだ。

個人的なコミュニケーションツールは・・・情報操作の温床なのである。

そういう意味で不倫をする人間は殺人もするのだった・・・おいおいおい。

で、『黒い十人の女・第9回』(日本テレビ201611242359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・山本大輔を見た。東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)はプロデューサー・風松吉(船越英一郎)との不倫関係を完全に清算するために正妻の風睦(若村麻由美)と九人の愛人で結成された「風の会」の総意に従い・・・十二時間の間に全量摂取すれば死に至る薬剤を十等分して所持し・・・それぞれが責任を持って松吉に摂取させることで松吉を殺害することを決意するのだった。

一年前の久未の設定

殺人 OFF

不倫 OFF

半年前の久未の設定

殺人 OFF

不倫 ON

現在の久未の設定

殺人 ON

不倫  ON

・・・ということである。

風松吉殺害計画実行の朝・・・。

目覚めた久未は思う。

(私はきっとおかしくなっているのだろう)

「風の会」は素晴らしいインターネットの世界で戦線を構築していた。

スポッ!おはようおはようおはようおはようおはようおはようございます。(≧∇≦)

トップバッターは三番目の愛人・卯野真衣(白羽ゆり)である。

松吉は朝九時に真衣の経営するアロママッサージ店に予約を入れていたのだった。

「お疲れのようねえ」

「そうなんだよ」

「左側がとくに凝っているわ」

最後のアロママッサージを入念に施術する真衣・・・。

松吉は気持ちよく寝入ってしまう。

「終了したわよ」

「気持ちよかった」

「いつものハーブティー、お飲みになる」

「うん」

いつものハーブ・ティーには死ぬ薬1./10が混入されていた。

「撮影、今日で終わりでしょう」

「うん」

「今夜はゆっくり眠れるわね」

「だね」

(永遠にね)

スポッ!任務完了1st stageクリアGOOD LUCK!!おめでとうおつかれさまでした。(≧∇≦)

不倫の終わりが命の終わりに直結することはよくあることだ。

●○○○○○○○○○

松吉がプロデューサーを務める東西テレビのドラマ「淡い三人の男」は前代未聞の低視聴率のために八話で打ち切りが決まっていた。

ゴールデンタイム(月曜午後10時)で平均視聴率*2.4%か・・・腰が抜けるな。

二番手はマネージャーの長谷川冴英(ちすん)である。

彼女は愛飲しているグリーンスムージーに毒を仕込んでいた。

「健康にいいんですよ」

「俺・・・青臭いの苦手なんだよ」

「飲んでください」

(そして・・・死んでください)

●●○○○○○○○○

スポッ!2nd stage clearやったね乙ですおめでとうございます。(≧∇≦)

三番手は愛人歴一年の女優・相葉志乃(トリンドル玲奈)・・・。

手作りクッキーをスタッフに差し入れつつ・・・松吉のためには特別の品(毒入り)を用意している。

「ありがとう・・・後で食べるね」

「今食べてください・・・食べているところを見たいから」

(そして死んでください)

●●●○○○○○○○

すかさず、四番手のヘアメイク・スタッフの水川夢(平山あや)が紙コップ入りの紅茶を差し出す。

「気が利くね」

しかし・・・飲み干さない松吉である。

仕方なく追跡する夢。

「どうしたの?」

「飲み終わったカップをいただこうと思って」

「大丈夫・・・自分で捨てるから」

「私・・・男の人の喉仏が動くところが好きなんです」

「え・・・そんな趣味あったの」

難航する夢の任務遂行・・・そこへ脚本家の皐山夏希(MEGUMI)が救援に駆けつける。

「私も好きだなあ・・・風さんの喉仏」

「え・・・」

「みせてくださいよ」

「しょうがないなあ」

「わあ・・・素敵」

●●●●○○○○○○

五番手の夏希は冷たいお茶で連続攻撃である。

「もう一回見たい」

「もう・・・無理だよ」

「アンコール」

(死ね)

「アンコール」

(死ね)

「アンコール」

(死ね)

●●●●●○○○○○

「うわあ・・・もう・・・腹がジャブジャブで・・・」

しかし・・・任務を終えた二人の女は足早に去っていくのだった。

「淡い三人の男」はスタジオ・セットで最後の撮影に入っていた。

「ご注文は・・・」

「アイスキャラメルラテで」

「私もそれでいいわ」

「それから・・・カニラーメン」

「まるでラーメンドラマみたい」

「ラーメンドラマだろう」

「不倫ドラマです」

「沖田くん・・・何とか云いなさいよ」

「近藤さんにまかせています」

「切腹よ」

「幕末感醸しだしてますね」

「ここだけてみたら意味不明ですよね」

「全編見ても意味不明よ」

「脚本書いててわけわからなかったもの」

「低視聴率脚本家のレッテルが・・・」

「超低視聴率で逆に話題に」

「ここまで悪いとCM契約的にも苦しくなるんですよね」

「このドラマの場合は出演者に問題ないわ」

「でも・・・ほとんどの人が見ていないので結果だけが独り歩きするんですよ」

「あるある」

六番目のヒットマンは・・・仕事が雑と周囲に指摘されているAPの弥上美羽(佐藤仁美)である。

仕出し弁当のから揚げに薬をふりかけようとするが失敗。

薬は床に・・・。

かっては修羅場を演じた冴英がフォローする。

「大丈夫・・・ゴミが入っているけど」

「平気です・・・どうせ・・・死ぬんですから」

しかし・・・毒入り弁当は・・・他のスタッフの元へ・・・。

「うわあ・・・なんだこれ・・・ジャリジャリしている」

「大丈夫かしら」

「1/10ですから」

ポスッ!失敗しましたBBABBABBAヽ(#゚Д゚)ノ┌┛)`Д゚)・;

ポスッ!予備をバイク便で着払い了解です。(゚▽゚*)

「遥かなるサンフランシスコ」のチラシと共に薬が到着。

しかし・・・再び失敗する美羽。

ポスッ!失敗しましたBBABBABBAヽ(#゚Д゚)ノ┌┛)`Д゚)・;何してんだコラ!

ポスッ!予備をバイク便で着払い了解です。(゚▽゚*)

倍増した「遥かなるサンフランシスコ」のチラシと共に薬が到着。

調整室で口を開けて眠る松吉。

夢の中で・・・松吉は口の中に虫が飛びこむ夢を見る。

(直接かよ)

(直接か)

(直接)

美羽の雑な仕事ぶりに唖然とする愛人仲間たち・・・。

「ゲホッ」

咽かえる松吉・・・美羽は紙コップのお茶で強引に流し込ませる。

●●●●●●○○○○

「はあ・・・死ぬかと思ったよ」

(死ぬんだけどね)

スポッ!任務終了BBAハラハラさせやがる!(゚▽゚*)(o^-^o)(≧∇≦)

夕暮れのカフェで松吉を待つ七番手の久未と八番手の文坂彩乃(佐野ひなこ)・・・。

「二人で風さんを待つなんて・・・不思議な感じ」

「時間通りに来るかな」

「割と時間には正確だもの」

「じゃなきゃ・・・九人も愛人作れないよね」

「彼といて幸せだったことってある?」

「旅行とかも行ったけど・・・彼がお泊まりして・・・朝ごはんとか一緒に食べた時かな・・・いってらっしゃいって送り出して」

「私も・・・夫婦ごっこみたいな」

「こうやって結婚できない女が生み出されるのよね」

「略奪するほど根性ないしね」

「・・・今でも彼のこと・・・愛しているの?」

「愛してる」

「でも殺すの?」

「愛してるから」

「・・・私もだよ」

「お待たせ~」

到着した松吉は身体の不調を訴える。

「私・・・元気が出るクスリ持ってますよ」

久未はストレートに薬を出して・・・彩乃は水に薬を混入する。

●●●●●●●○○○

●●●●●●●●○○

「ありがとう・・・」

「風さんにとって私との一番楽しかった思い出ってなんですか」

「久未ちゃんとは温泉に行ったよね」

「私は?」

「彩乃ちゃんとは海に行ったよね」

「行きましたね」

「これからも・・・仲良くしようね・・・友達として」

「それじゃあ・・・私たち、行きますね」

「え・・・もう行くの」

「風さんはゆっくり休まないと」

「・・・」

「さようなら」

「またね」

「私たち・・・今でも風さんのことが好きですよ」

「死ぬまでね」

(風さん・・・永遠に・・・さようなら)

久未と彩乃は胸を張って店を出る。

晴れ晴れとした別離・・・。

スポッ!任務終了御苦労様(^^)/コングラッチュレーション(≧∇≦)(≧∇≦)(゚▽゚*)

レストランで待っている九番目の刺客は最初の愛人・・・売れない女優・・・如野佳代(水野美紀)である。

重ねてきた誕生日サプライズのラスト・ターゲット!

「ハッピーバースデイトゥユウ・・・」

「え・・・」

バースデーケーキと共に花束を抱えた松吉。

「なんでこんなことするのよ・・・」

「まあまあ・・・ろうそくを吹き消して」

松吉が席を外した隙にゴブレットに薬を投入する佳代。

「私のどこが好きだったの」

「一緒にいて楽しいところ・・・」

「割と普通ね」

「君こそ・・・僕のどこがよかったの・・・」

「最初は優しさに魅かれたの・・・結婚したいとも思った・・・でも・・・美和さんを愛人にしたりして・・・それから九人も愛人を作ったりして・・・とんでもない男だと思ったけど・・・嫌いにはなれなかった・・・むしろ・・・どんどん好きになって・・・今でも殺したいほど愛しているの」

「今までありがとう・・・これからも・・・末永く・・・仲良くしてよ・・・」

●●●●●●●●●○

スポッ!ミッション終了!最後はよろしくお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますおまかせあれ。

松吉は帰宅した。

睦は笑顔で出迎える。

「おかえりなさい」

「ただいま」

「お疲れのようね」

「なんだが動悸が」

「お薬飲みますか・・・」

「うん」

●●●●●●●●●●

スポッ!完了しました既読既読既読既読既読既読既読既読・・・。

風は血を吐いて倒れた。

女たちは「風の会」の通信記録を削除した。

佳代は「遥かなるサンフランシスコ」の舞台稽古に熱中していた。

「遅いんだよ・・・心のパスポートの有効期限が切れてんだよ・・・心の住民票からやりなおしやがれええええええ」

「はい・・・そこまで・・・いいね」

久未は受付嬢として飄々と過ごしている。

昨夜は合コンで・・・新しい出会いを求めて・・・二日酔いである。

その時・・・一通のメールが届く。

《風は生きている》

「え?」

なにしろ・・・最終回は来週なのである。

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2016年11月24日 (木)

レンタル救世主(沢村一樹)なんちゃって高校生祭りyeah!(志田未来)

水曜日の谷間である。

昔、日本テレビには「俺たちの旅」(1975年)という青春群像ドラマがあって・・・そこそこ一世風靡したわけである。

そういうものを狙ってくるのは企画者の宿命のようなものだ。

同じように刑事ドラマの金字塔に「太陽にほえろ!」があって・・・その延長線上に「THE LAST COP/ラストコップ」がある。

けれど・・・時代は変わり・・・必ずしも・・・お茶の間の求めているものと過去の名作の本質は一致せずに・・・結果としてなんとなくズレた感じが生じるわけである。

それでも・・・それなりに面白ければいいわけである。

だが・・・今回は・・・いろいろとアレなんだな。

なんだよ・・・歯切れが悪いな。

なんて言うか・・・頑張ってる人は叩き辛いよ。

そのセリフがもう・・・叩いてるぞ。

で、『レンタル救世主・第1~7回』(日本テレビ201610092230~)脚本・渡辺雄介、演出・菅原伸太郎(他)を見た。小学生レベルの精神しか持たない明辺悠五(沢村一樹)は勤めていた会社の元同僚に騙されて1億円超えの借金を背負い、会社も解雇されてしまう。ハワイ旅行を楽しみにしている妻の紫乃(稲森いずみ)や娘の彩芽(莉帝)に事実を打ち明けることが出来ず・・・借金を肩代わりしてくれるという「レンタル救世主」に就職し・・・「なんとかする会社」的なことにチャレンジするのだった。

基本的にファンタジーと言えるくらい・・・「レンタル救世主」の経営状況は小学生レベルである。

つまり・・・小学生向けドラマなのである。

いや・・・今の小学生はもう少しシビアかもねえ。

「レンタル救世主」の社長は黒宇(大杉漣)でつまりブラックである。

だから明辺悠五はレッドなのだ。

その他のメンバーは・・・父が有名な覆面レスラーの葵伝二郎(藤井流星)でブルー。

資産家令嬢だが落ちこぼれの百地零子(志田未来)のピンク。

メカニック担当の紀伊ロイ(勝地涼)はイエローである。

要するに・・・小学生向けの戦隊ヒーローものなのである。

本当は大人向けの戦隊ヒーローものがやりたかったのかもしれないが・・・そういう風にはあまり見えないのだ。

「レンタル救世主」の秘書は秦野いろは(中村アン)で・・・ボランティアでカウンセラーをやっているために・・・豊富な人脈を持っている。

その中には警察署長の碧山(神尾佑)もいて・・・犯罪スレスレの「レンタル救世主」の業務をフォローしたりもするのである。

レンタルレッドに家族がいるように・・・メンバーのそれぞれの人間関係が本筋とリンクする群像劇である。

レンタルブルーにはレンタル彼氏としての顧客である葉石りさ子(福原遥)がいたり、レンタルピンクにはIT企業「イカソリッシュ」を経営する兄の千太郎(小出恵介)やコインランドリー友達である女装趣味の薫(稲葉友)がいたりするのだ。

基本的にはトラブルを解決するために・・・レンタルレッドがいつも「死にそうな目に遭う」ということなる。

第7回では・・・いろはの高校時代のしがらみがクローズアップされ・・・かなり無理のあるなんちゃって青春群像が展開される。

いろはは・・・高校時代、スキップして歩行する「いろはっち」と呼ばれるチアリーディング部「ラバーズ」の部員だった。

「ラバーズ」のメンバーの一人・愛乃(藤井美菜)は・・・明るすぎたいろはっちが・・・ミステリアスな女になった事情を話す。

「ラバーズ」のキャプテンである星子(菊地亜美)がクラスメートからいじめを受けるいろはっちのために暴力をふるい、止めようとしたメンバーの一人・香世子(村川絵梨)の顔に大きな傷を残してしまったのである。

時は流れ・・・星子は市会議員になっていた。

「バーガー村」という市営施設の移転問題で業者から賄賂を受け取ったと噂される問題市議である。

一方、香世子は「バーガー村移転」に反対するすし職人である。

香世子のすし店は立ち退き対象になっていたのだった。

対立する二人に心を痛めるいろはっちなのである。

そんな折・・・星子は・・・「自分が賄賂を受け取ったことを立証してほしい」とレンタル救世主に依頼するのだった。

星子は・・・「バーガー村移転」を阻止しようとしていたのだが・・・決定を覆すことができず・・・あえて泥をかぶるために・・・賄賂を要求したのである。

yeah,yeah

月は巡り

日を巡り

ラバーズの友情もうない

虚しく日常ALL NIGHT

だけどYO

嘘だYO

汚職でかくした自己犠牲

自爆で白紙にする姿勢

check it out,yeah

星子の意図を見抜いたレンタルヒーローたちは・・・彼女の願いを叶えるのだった。

最後の思い出に・・・ラバーズは再結成され・・・逮捕される星子にエールを贈るのだった。

時が流れて行くことを・・・認められないのは・・・人間の欠点だが・・・美点でもあると言いたいんだよね・・・きっと。

とにかく・・・毎回、そんな感じです。

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2016年11月23日 (水)

拗らせた童貞につけるくすりはない(新垣結衣)

まさに性の不一致だよな。

人間の繁殖の問題はデリケートな問題だからな。

「つなみ!にげろ」という呼びかけが適切かどうかと言い出す輩がいるからな。

もたもたしていて逃げ損うよりはいいということだろう。

しかし、逃げたくても逃げられなかった人もいれば、あらゆる責任から逃げたい人もいる。

原子力帝国からは逃げたくても逃げられない。

高齢者の暴走から逃げられない場合もあるし、暴走する自動運転の車からも逃げられない。

すでに破綻した原子力発電所を海外に輸出しようとするビジネスからも逃げられない。

電力不足からも逃げられない。

コストパフォーマンスからも逃げられない。

しかし・・・目の前にガッキーがいてOKが出ているのに逃げ出すことは許されないのではないか。

そこかっ。

いろいろと混ぜすぎて危険な言動だが・・・何を今さらだしなあ。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第7回』(TBSテレビ20161122PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。ついに恋愛の生々しい局面に踏み込んだ前回。主人公とヒロインのキスに・・・これは妄想だ・・・これは夢だ・・・と現実逃避をしようとする一部お茶の間の願いも虚しく・・・従業員としての妻・森山みくり(新垣結衣)と雇用主としての夫・津崎平匡(星野源)は伊豆箱根鉄道車内において接吻行為に没入したのであった。

なぜなら・・・みくりはとっくにヒラマサに恋をして・・・あの手この手で小賢しく挑発行動を繰り返し・・・ヒラマサもとっくにみくりに恋をしているが童貞なのでどうしていいかわからなかったのである。

しかし・・・人間もケダモノの一種である。

遥かなる自然の呼び声に応え・・・辛抱たまらん野生が発動するのである。

それだけの話である。

犬だって猫だって猿だってカピバラだって十姉妹だってしていることだ。

だが・・・プロの独身を名乗る傷つくことを惧れて童貞のまま三十代になったヒラマサはたちまち・・・パニックに陥るのだった。

(ここはどこ・・・わたしはだれ・・・そしてなにをしている!)

一方・・・ヒラマサを見くびっていた上に・・・何も求められないことに不満を感じ・・・自分の性的魅力に自信喪失していたみくりも小賢しさを全開にさせる。

(ヒラマサさんが私にキスを・・・一体どうして・・・?)

「好きだからに決まってるだろう」という一部お茶の間の叫びはみくりの耳には届かない。

(大変なことをしてしまった・・・これは完全なセクシャルハラスメント・・・というより婦女暴行・・・完全に変態の痴漢行為・・・)

「いやいや・・・彼女はそれを待っていたの」という一部お茶の間のアドバイスもヒラマサの耳には届かない・

(ヒラマサさん・・・今のキスはどういう意味ですか?)

(破滅だ!)

(どうしてキスをしたのですか?)

(とりかえしのつかないことをしてしまった!)

(男として女にキスしたのですかああああああ?)

(おわりだあああああああああああああああああ!)

壮絶なすれ違いである。

しかし・・・みくりは素朴な疑問を口にすることはできない。

そして・・・ヒラマサは残りの旅程を狸寝入りでスルーするのだった。

こうして・・・疑似新婚旅行は・・・「?」と「!」を残して終了したのだった。

ヒラマサは記憶喪失を装い・・・キスについては一切触れない。

みくりは・・・そこに「愛」があるのかどうかを・・・怖くて問えないのである。

小美人バスガイドと化したみくりは食卓でミニ観光バスを運行するのだった。

「ごらんください・・・正面に見えますのが・・・勝手に点火してそのまま放置という・・・危険人物ヒラマサ氏です・・・火事になったらどうするのですか・・・不完全燃焼の責任をとる覚悟があるのかどうか・・・放火犯なのか・・・単なる臆病者なのか・・・世間を騒がせている方なのです」

「・・・」

「お味噌汁どうですか」

「いつも通り美味しいです」

高級旅館の料理に触発されたみくりが早起きして鰹節でだしをとったいつもとは違う苦労は報われなかったのである。

「お魚はどうですか」

「美味しいです・・・これは初めてですね」

「焼いたキスです」

「キ・・・・・キス・・・・平泉成は略して平成ですね」

咽て老刑事のようになるヒラマサである。

ヒラマサは惧れていた・・・性的暴行を受けたみくりが・・・怒って退職してしまうのではないかと。

みくりは問いたかった・・・自分のことを・・・ほんの少しでも愛しているのかと。

テレパシーを持たない二人は・・・言葉を使うしかないのだが・・・。

「恋」についてだけは・・・言葉に制動装置がついている・・・面倒な種族なのだった。

特に・・・三十年間・・・恋路を避けて通って来たヒラマサは完全な迷子なのである。

そして・・・小賢しいみくりは・・・迷子案内所を信用しない女なのである。

キスしたのに何も始らない恋愛ドラマにも程があるのだが・・・もちろん・・・水面下ではいろいろと精神が右往左往しているのである。

ヒラマサは自分の犯罪的行為に対するみくりの制裁を惧れているだけだが・・・みくりはその完全なるスルーに自分の精神を疑うのだった。

マッチ売りのみくりはマッチを擦る。 

たちまち暖かなヒラマサのハグが炎の中に浮かびあがる。 

マッチ売りのみくりはマッチを擦る。 

たちまち優しいヒラマサの言葉が炎の中からこだまする。 

マッチ売りのみくりはマッチを擦る。 

たちまち愛おしいヒラマサのキスが蘇る。 

しかし・・・それはみくりの心の中の出来事だったのです。 

雪の降る朝・・・マッチ売りのみくりは冷たくなって横たわっていました・・・。

あまりにも濃密で可愛すぎるみくりの幻想だった・・・。

「3Iシステムソリューションズ」でヒラマサは日野秀司(藤井隆)に未使用の「辛抱たまらんマムシエキスとぐろターボ」を返却するのだった。

「使わなかったの?」

「僕には一生必要のないものです」

日野の脳裏に浮かんだ「絶倫」の二文字・・・。

ヒラマサは考える。

(なぜ・・・あんなことを・・・ハネムーンハイ・・・プロの独身さえも魅了する魔性のイベント・・・こんなことで・・・みくりさんとの申し分のない雇用関係が終わってしまうなんて・・・なんとかなかったことにできないものか・・・平穏な日々を・・・そもそも・・・私はそういうことに無縁なのだ・・・そうだ・・・そういうことに対するガードを下げすきた)

みくりはヒラマサの唇を思い出して昼下がりに濡れる。

(うれしかったなあ)

ヒラマサは叫ぶ。

「あああああああ」

女性原作者で女性脚本家なので・・・男性の自慰行為は基本的に汚らわしいこととしてスルーされるわけだが・・・それはもう・・・お茶の間向けドラマだからだろう。

野生の叫びが男性トイレに響き渡るのだった。

下半身的な精神を鎮静化させるために「数独通信」を購入するヒラマサだった。

(9が入るのは・・・みくりさん・・・8が入るのは・・・みくりさんのく・・・7が入るのは)

火曜日なのである。

火曜日はハグの日だ。

ハグがなかったらどうしようとヒラマサは思う。

いや・・・あんなことをしてしまったのに・・・ハグなんかあるわけはない。

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(みくりさん)

深夜に帰宅したヒラマサは忍び足で自分の部屋へと向う。

しかし・・・みくりは灯りをつける。

「起きていたのですか・・・残業で遅くなると連絡したのに」

「でも火曜日ですから」

みくりは両手を広げる。

ヒラマサは思わず腰を引き・・・おずおずとハグをする。

(なにごともなかったように平穏にハグを処理しなければ)

(まるで義務でしているかのような冷めたハグ・・・)

求めているものは同じだが・・・表現方法がこれほどまでに食い違うという話である。

「おやすみなさい」

「おやすみなさい」

男は禁欲的に我慢するが・・・女はそれを我慢できないと相場が決まっているのである。

なにしろ・・・女は男を愛するために生れるのである・・・基本的には。

みくりは放火され全焼中なのだった。

窓から見える月は欠けていた。

風見涼太(大谷亮平)の部屋に出張サービス中の不機嫌なみくりに探りを入れる涼太。

「新婚旅行はどうでしたか・・・ついに一線を・・・」

「踏み外しましたよ」

「ご機嫌ななめですね」

「いつもは猫を被ってますから・・・被る猫にも限界があるので」

「幸せをシェアするつもりですか・・・いえ・・・僕はそういうみくりさんも好きですよ」

「風見さんなら・・・そういう事言われても・・・テクニックだと思えるんですけど」

思わず・・・みくりをハグする風見。

「ドキドキしますか」

「ほら・・・わかりやすいんです・・・しかし・・・あの人ときたらまるで読めない」

「・・・」

ショックを微笑みで緩和する風見だった。

美処女の百合(石田ゆり子)に「意地悪のお詫び」としてランチを奢ってもらう風見。

「みくりさんにキスしようとしたんですが」

「なんですって」

「いや・・・本気ではなくて・・・だけど・・・何をしたって本気だとは思ってもらえないんですよね」

「イケメンだからね」

「結局、人は外見で判断されたくないと言いつつ外見で判断するんですよね」

「そうねえ・・・私も高嶺の花すぎて・・・相手にされなかったことあるわね」

「そうじゃない人はいいですよねえ・・・真面目な恋ができて・・・」

「美男美女ってそれだけで不幸よねえ」

贅沢な話をしています。

「3Iシステムソリューションズ」でヒラマサは日野秀司に「妻の誕生日」についてのレクチャーを受ける。

「忘れたりしたら大事ですからね」

「そういうものですか」

思わずみくりの誕生日をチェックしたヒラマサはその日が一ヶ月前だったことに蒼ざめる。

「僕は渡しましたよ」

風見が現れた!

「え」

ヒラマサは嫉妬を感じるが・・・キスという経験が彼を少し大人にしていた。

「何を?」

「ちょっと高級な紅茶です」

(あれか・・・)

みくりにふるまわれたのは風見の紅茶だったのだ。

知らぬは亭主ばかりなりである・・・違う意味で。

「最近・・・僕も家事代行業の女性を雇用しているんです・・・それで相談にのってもらってるんです」

「ああ・・・だから最近、二人は仲いいんだ」と日野。

「嘘だろ!」

沼田(古田新太)が現れた!

「君たちはパッションなんだろう」

「いいえ」

沼田の妄想は風に吹かれた。

「わからない人だなあ」とヒラマサは思う。

「いえ・・・沼田さんは沼田さんなんでしょう」と風見は悟ったように呟くのだった。

イケメンもゲイも決めつけられているということでは同じ種族なのだ。

もちろん・・・童貞もな。

しかし・・・ギラギラした童貞もいるし・・・爽やかな童貞もいるのである。

とにかく・・・沼田はパッションを求めているのだ。

それは・・・他人のパッションでも・・・代用できるらしい。

ヒラマサと風見に裏切られた・・・何をだ?・・・沼田は新しいターゲットを求めて彷徨うのだ。

深夜になるとその胸に刑事ぱるるが顔をうずめたりしているけどな。

悶々とするみくりは・・・親友の田中安恵(真野恵里菜)の実家にお邪魔するのだった。

やっさんの実家は・・・八百屋だった。

「八百安」である。

なんだか・・・「面倒くさい」が口癖の息子がいるフルーツパーラーを彷彿させる八百屋だった。

「この店・・・リニューアルしないの」

「そんなお金ないよ」

「自家製ジャムとか作ればいいのに」

「あんた・・・ああしろこうしろって・・・うざいよね」

「う」

「・・・」

やっさんの忌憚のない意見に心をハードヒットされるみくりだった。

「私・・・本当は入籍してないの」

「え」

「キスは一回したのよ」

「なんじゃ・・・そりゃ」

やっさんの愛児は微笑む。

世界とまだ一体の乳幼児である。

母親と父親がこじれてしまったことさえまだ無縁の存在なのである。

性的なことに無縁だったものが・・・清らかであるとすれば・・・充分に清らかなヒラマサは・・・誕生日の贈り物についてリサーチを重ねる。

百合はハンドミキサーのようなものをプレゼントしていた。

(あれか・・・)

またしても思い当たるヒラマサなのである。

(買わなくちゃ・・・みくりさんに誕生日プレゼントを買わなくちゃ)

港急百貨店にやってきたヒラマサ。

アクセサリー、洋服、バッグ、台所用品・・・めくるめく商品の海で溺れるヒラマサ。

もう、メルティーのキッスでいいんじゃないか・・・。

女性に贈る品物という暗礁に乗り上げ・・・はじめてのおつかいよりもハードルの高い苦行であるらしい。

みくりの両親・・・森山栃男(宇梶剛士)&桜(富田靖子)夫妻は「娘の好きなもの」を問われ「すでに天に召された愛犬ペロの思い出に浸る・・・。

妻でも妹でも恋人でもない相手に贈るものは・・・案内嬢も困惑させるのである。

上司が部下にで・・・いいんじゃないか・・・まあ・・・不倫を疑われるけどな。

挫折して帰宅するヒラマサ。

「お話があります」

「はい・・・」

「少し前ですが・・・」

キスの件と思い胸がときめくみくりである。

「誕生日でしたよね」

「かなり前ですね」

「すみません・・・何か贈りたいと思ったのですが・・・雇用主が従業員にプレゼントするというのは不適切な行為かもしれないので・・・賞与を・・・」

現金三万円である。

「感謝の気持ちですので・・・お返しはいりません」

「ボーナス・・・ですか」

「はい・・・それでは御休みなさい」

自分の部屋に退避するヒラマサ。

(これは・・・まさか・・・キスの慰謝料?)

みくりの忍耐は限界に達した。

ヒラマサの携帯電話に着信がある。

《賞与ありがとうございます・・・どうしてキスしたのですか?》

(あああああああああああああああ)

若くもない童貞は二時間苦悩するのだった。

返信がないので就寝するみくり。

しかし・・・消灯の後で着信がある。

《雇用主として不適切な行為でした・・・申しわけありません》

(謝罪じゃなくて・・・私が聞きたいのは・・・キスした時のヒラマサさんの気持ちなの)

《謝る必要はありません》

《しかし・・・一方的でしたし・・・》

(・・・なかったことにしてください・・・と追伸しておくべきか)と地雷を踏みかかるヒラマサ。

しかし・・・送信前に着信がある。

なんだか・・・お茶の間は軽武装のまま重武装の敵に包囲された兵士のような気分である。

ここは紛争地帯のジャングルなのか・・・。

どれだけ手に汗握らせる気だ。

《社員旅行ならセクハラでアウトでしたが・・・新婚旅行で形式的には恋人同志なのでスキンシップの延長線上としてアリだと思います》

(・・・アリなの!)

《ありがとうございます・・・これからもよろしくお願いします》

(何をよろしく?・・・何と返せば正解なの?)

小賢しさが限界に達するみくりである。

パジャマ姿で身悶えるみくり。

(こちらこそよろしくです・・・二回目もお待ちしています・・・いやいや・・・攻めすぎか・・・)

銀河の彼方に突き抜けるみくり。

《こちらこそよろしくお願いします・・・末永く》

スーパー小賢しさアタック!

かわいいよ、みくり、かわいいよと悩殺される一部お茶の間だった。

何かを乗り切ったような二人を美しい満月が見ていた。

月は満ちたら欠けるものである。

宇宙の基本は循環なのだ。

そして始ったものは必ず終わる。

しかし・・・終われば始るのである。

火曜日がやってくる。

期待に膨らむみくりの胸。

「今日は遅くなるので夕食は結構です」

「はい」

浮き沈みするみくりの心。

「今日は火曜日でしたね」

ヒラマサはみくりをハグする。

「今日は・・・ちゃんと先に寝てくださいね」

「はい」

「いってきます」

「いってらっしゃい」

ヒラマサを送りだすと腰からくだけるみくりである。

「ヒラマサさんがスキスキスキスキスキ・・・」

ヒラマサの気遣いにハートを討ち抜かれたみくり。

小賢しい魂はヒラマサ旋風によって昇天したのである。

今月のみくりの心の「ベストテン」に燦然と輝く第一位は・・・。

「今日はちゃんと先に寝てください/津崎平匡・・・9999点!」

「中継です」

「出勤中なのね」

「黒柳さ~ん」

相思相愛のようなものになったみくりとヒラマサ。

ヒラマサは火曜日が楽しみになった。

みくりすでに火曜日のために生きている気分だ。

ヒラマサはみくりが「かわいい女」だと思えてきた。

いつトラックに轢き殺されてもおかしくない心情である。

しかし・・・もし轢死してもゾンビになって帰宅しようと思うヒラマサだった。

なぜなら・・・今日は火曜日だから。

「この年になったらさすがにキスくらいはしています」

嘘ではなく言えるようになったヒラマサだったが・・・その先にあることは・・・月面着陸のような道程なのだった。

勤務先の化粧品会社「ゴダールジャパン」で部下の堀内柚(山賀琴子)が「やる気のないバカ社員」ではなくて・・・「日本語が苦手な帰国子女」だったことを発見し・・・少し高揚した百合ちゃんは・・・「アイスワイン」をみくりにおすそわけする。

土曜日である。

みくりは・・・ヒラマサと飲酒するのだった。

「私・・・ヒラマサさんに雇ってもらって・・・幸せでした」

「こちらこそ・・・」

「それだけでなく・・・」

(ヒラマサさんが好き)と言い出せないみくり。

もちろん・・・ヒラマサも・・・みくりを「好き」とは言わないのである。

仕方なく・・・ヒラマサの肩を借りるみくりだった。

精一杯の愛情表現であるが・・・それは・・・「恋人のおいしいところ」に過ぎないとヒラマサは思っています。

ヒラマサは「二度目のキスのタイミング」について充満した情報に突き動かされていた。

みくりが待ちに待った「二度目のキス」・・・。

もはや・・・みくりの心と体は・・・ヒラマサを求めてやまないのである。

「私・・・ヒラマサさんとなら・・・そういうことをしてもいいですよ」

童貞相手にいろいろと誤解を招く発言である。

最悪・・・商売女のセリフにさえ聞こえてしまうのだ。

何にせよ・・・そういうことの意味するところは・・・生れてから二回しかキスしたことのない男には重すぎたのだった。

「ごめんなさい・・・僕は・・・無理です・・・そういうことがしたいわけじゃ」

ヒラマサは「欲望を処理したいわけじゃない」と言いたかったのかもしれない。

しかし・・・「据え膳食わぬは男の恥」なのは「女に恥をかかせる」ことだからなのである。

みくりは断崖絶壁から墜落するのだった。

「私の方こそ・・・ごめんなさい・・・忘れてください」

穴があったら入りたいほど恥ずかしいみくりである。

なにしろ・・・「挿入お断り」をされた立場なのだ。

愛があると思っていたのになかったような気がするわけだ。

新月は・・・ため息をつく。

お茶の間の絶叫を残し・・・みくりは家から逃げ出すのだった。

これ以上ない恥ずかしさからの脱出・・・。

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2016年11月22日 (火)

汝、兄の婚約者とイチャイチャすることなかれ(山田涼介)

原案である「旧約聖書 創世記 カインとアベル」には人類は四人しかいない。

だから・・・カインとアベルは一人の女を巡って争奪戦を繰り広げたりはしないわけである。

あるとすれば・・・母であるイヴを巡っての争奪戦で・・・別の意味で危険である。

カインはアベルを殺した後でエデンの東を追放され・・・名もなき妻を娶るが・・・女がイヴしかいないので・・・その女は実の妹であることになり・・・別の意味で危険なのだ。

もちろん・・・神話世界の出来事であり・・・アダムとイヴは多くの子女を生み、子女たちは近親婚を重ねて子孫を繁栄させるのでカインの妻は第三世代以後の女かもしれない。

なにしろアダムの寿命は930才である。

昔の人は長命だったのだ。・・・あくまで「聖書」の話である。

だが・・・人が「神の愛を疑ったり」「神の心を裏切ったり」することを表現しようとするとどうしても「恋愛がらみ」にしたくなるわけである。

「カインとアベル」をモチーフにした小説「エデンの東/ジョン・スタインベック」(1952年)では兄弟の母親は売春婦という設定になっている。

映画「エデンの東」(1955年)でも兄の恋人が弟と心を通わせる描写はかかせないわけである。

とにかく・・・現代に置換すれば・・・「神の愛」よりも「色恋沙汰」なのである。

「カインとアベル」の作者であるとされるユダヤの指導者の一人モーセは神から「十戒」を伝授されるわけだが・・・「十戒」も宗派によって些少の差異があるが・・・基本的にはこんな感じである。

一つ、神様と言えるのは私だけ

二つ、気安く神の名を呼ぶな

三つ、日曜日は大切

四つ、親孝行すること

五つ、殺すな

六つ、姦淫するな

七つ、盗むな

八つ、嘘をつくな

九つ、他人をうらやむな

十、アイドル禁止

カトリック教会ではアイドルは禁止しないが・・・「姦淫するなかれ」の上で「隣人の妻を欲してはならない」と不倫を禁じている。

つまり・・・いくらグラマーな兄の恋人の胸を背中に押し付けられても弟は欲情してはいけないということである。

神への信仰を別にすれば・・・現代の日本人の倫理は概ね・・・十戒をそれほど抵抗なく受け入れることだろう。

不倫が叩かれる由縁である。

で、『カインとアベル・第6回』(フジテレビ20161121PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・葉山浩樹を見た。原案を「旧約聖書 創世記 カインとアベル」とする以上、クリスチャンとしての教養は要求されるだろうが・・・あくまでドラマである。ここまで明らかなことは・・・「神の愛への嫉妬」が・・・「親子関係」や「恋人関係」のもつれにレベルダウンしていることは明らかである。まあ・・・神の愛を押しつけられてもお茶の間は困惑するばかりだろうしな。

少なくともキッドは悪魔なので立場上、神の愛は求めていません。

高田総合地所株式会社の社長である父親の高田貴行(高嶋政伸)から米国の高級リゾート経営企業「Draymond Hotel & Resort」」との提携事業についてのプロジェクト・リーダーに抜擢された次男の高田優(山田涼介)は残業中だった。

そこへ・・・長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)の婚約者の矢作梓(倉科カナ)が現れ、優を背後から抱きしめるのである。

淫乱な性格である梓は・・・マリッジ・ブルーに陥り・・・優に甘えているらしい・・・おいおい。

最近・・・ノイローゼという言葉は流行っていないようだが・・・長年に渡って抑圧を受け、人格を歪ませた貴行の破綻しかかった精神状態を何と呼べばいいのだろう。気の迷いか?

とにかく・・・出来の悪い弟が突然、頭角を現し、父親の愛が分散する可能性に怯える兄は・・・弟と職場を共にする婚約者が・・・自分を裏切る可能性に気が付き疑心暗鬼になってしまった。

社長夫人は専業主婦でなければならないと確信しているわけでもないのに貴行は「俺と弟、どっちを選ぶ」と言い出して・・・結婚もしたいし仕事もしたいという梓を不安に陥れる。

そのあげく・・・梓は心の安定を求めて・・・コントロールしやすい上司に甘えにきたらしい。

そして・・・優もまた・・・仕事にやりがいを感じさせてくれた「目の前の人参」として梓をそこはかとなく慕っているわけである。

「どうしたの」

「わかんない」

「兄と何かあったの」

「わかんない」

「・・・」

「はい・・・ここまで・・・お仕事がんばってください」

お茶の間、騒然である。

いろいろな解釈の仕方があるだろうが・・・梓は神の言いつけに背き蛇の誘惑に踊らされるイヴの末裔と言うことなのだろう。

つまり・・・倫理的に問題のある人格なのである。

だが・・・それは今の処・・・優だけに特別に見せる裏の顔という寸止めにチャレンジする梓なのだった。

しかし・・・優にとっては辛抱たまらん下半身なのであろう。

帰宅した優は・・・兄と梓の関係について立ちいることはしない。

一方・・・隆一は・・・梓と弟の仲を直感的に疑っているので・・・ことさら・・・結婚について強調するのだった。

「今日も結婚式の準備を彼女と進めていたんだ・・・お前も結婚について真剣に考えろ」

「いや・・・僕はまだ・・・結婚なんて」

「彼女はいないのか」

「いませんよ」

「まさか・・・童貞じゃないだろうな」

「ノーコメントです」

タイ国におけるデペロッパー「BDC」との合併事業のための資金調達に躓き、弟の援助によって窮地を脱した兄は・・・人格が崩壊するような精神的危機にあった。

新事業のリーダーを父親が弟に決めたこともダメージとなった。

困難を克服し・・・無理に無理を重ねて築いた人生のすべてを「出来の悪い弟」に奪われる・・・そういう被害妄想が脳内に膨れ上がっている隆一なのである。

これは・・・まさにノイローゼだよねえ・・・。

クレイジーだし・・・精神に問題のある人だよねえ・・・。

人は誰しも狂っているところがあるから・・・そういう言葉は駆逐されやすいんだよねえ。

つまり・・・心が呼吸困難になってチアノーゼ(青紫変色)になってしまったと。

もちろん・・・梓が悪いわけではないが・・・お茶の間的には悪女境界線上の女になっていることは明らかなのである。

隆一は心を安定させるためにあがく・・・。

一つ、梓を弟から切り離すために専業主婦にすること。

二つ、弟の仕事に介入して父親の信頼を独占すること。

だが・・・恋人の梓は「仕事に生きがいを感じている」と言うし、父親の貴行は「あの仕事は優に任せる」と言うのだった。

(何故だ・・・何故なんだ・・・何故・・・俺をないがしろにする)

隆一は「完全無欠」を追及するあまりに・・・「自分を過信」してしまったのである。

神の如く・・・孫の心理を見抜く・・・祖父で会長の高田宗一郎(寺尾聰)は隆一に「経営者にとって一番大切な心得」を説く。

「経営者にとって必要なことは何か」

「孤独に耐える心です」

「自分の周囲に心を許せる人間を多くもつことだ」

「そして・・・韓国の大統領のように傀儡と後ろ指をさされるわけですか」

「・・・」

問題は求心力である。

「君のためなら死ねる心」をどれだけ集めるかだよね。

そうなのか!

それはさておき・・・このドラマではここまで・・・合理的にリスクを回避することは「企業」にとって「悪」で・・・「冒険心」が「善」ということらしい。

まあ・・・百歩譲ってバランスですよね。

この間まで「リスク・マネージメント」を叫んでいたのにね。

しかし、ノイローゼ状態で精神が脆弱な状態になっている隆一は「肩の力を抜け」という慰安の言葉が自分を「全否定」する言葉に聞こえてしまうわけである。

「新しいリゾートホテルのコンセプトは・・・自分だけの空間、自分だけの自然・・・にしようと思うんだ」

「すごくいいですねえ」

優の提案に賛同する営業部 5課の安藤(西村元貴)や三沢(戸塚純貴)の抜擢組。

営業部 5課の佐々木課長(日野陽)は「彼が遠くに行ってしまう」と残留組の柴田ひかり(山崎紘菜)の心を代弁する。

ひかりは再び「映画デート」を申し込んでなんとか優と繋がろうとする。

小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)はひかりに「早く気持ちを伝えなさいよ」と発破をかけるが・・・ひかりにはそんな自信はないのである。

自分が傷つくことが恐ろしいのである。

だが・・・女の勘で・・・優の心が梓にあることは確信しているのだった。

直感的認知と・・・論理的認知の対立も繰り返される主張である。

隆一は梓に・・・「主婦」としての生きがいを提示することが求められるが・・・自分のことを第一に考えてもらいたい一心で・・・自己主張のみを重ねる。

「家庭に入って欲しい」

「私を縛りつけたいから?」

互いに自己保身の応酬をする恋人たちだった。

そもそも・・・梓はそういうことも充分に話し合わないで・・・隆一との結婚を決めているわけである。

しかし・・・「聖書」の世界では基本的に「女」は「愚か者」と相場が決まっているのだ。

なにしろ・・・「新約聖書」は夫ではなく神の子を受胎する聖母の話である。

それ以上はやめておけよ。

貴行は梓との婚約を社内に発表する。

玉の輿のサプライズに沸く社内。

弟の抜擢のニュースに兄が拍手を逡巡したように・・・兄の婚約のニュースに拍手することを逡巡する弟。

そして・・・神がすべてを見ているように・・・ひかりは優の「心の葛藤」を見逃さないのだった。

兄の婚約者に寄せる弟の「誠実だが不誠実な想い」を・・・。

「好きになっちゃったらしょうがない」は恋愛ドラマのセオリーだが・・・「失楽園」の世界では「ハッピーエンド」は許されない風潮もあるのだ。

すべての「愛」はある程度、「妥協」の産物なのである。

その道に踏み込む場合・・・主人公は・・・「邪悪」にならないようにガードをされる。

そのために・・・「女」が「邪悪」になるしかないのである。

梓は・・・隆一との結婚を否定しない上で・・・優にもたれかかってくるのだった。

隆一は弟の失速を求め・・・団衛営業本部長(木下ほうか)にさりげなく言葉をかける。

「弟のことでご心配をかけて・・・」

「いえ・・・なかなかよくやっています・・・私も目が覚める思いです」

隆一の求める言葉を・・・誰も発しないのだった。

父親の貴行も・・・「兄を見習え」と優に言った後で・・・優と親密な打合せを始める。

(この・・・俺の苦労を知りもしない弟が・・・俺から何もかも奪っていくのか)

ノイローゼの隆一の心に黒い渦が発生する。

邪悪なイヴを代表する自由奔放な女・桃子(南果歩)は貴行に思わせぶりな言葉を投げる。

「タイの一件・・・もう少し関心を持った方がいいわよ」

「あれは・・・隆一にまかせてある」

「そう・・・」

優は投資家・黒沢幸助(竹中直人)からの電話を受ける。

「あ・・・俺、俺」

「詐偽ですか」

黒沢に呼び出された人魚が水槽で泳ぐ紳士の社交場・・・。

「お前の兄貴も親父もダメだな」

「何を言っているんです」

「守りに入った経営者なんて食いものにすぎないってことだよ」

「しかし・・・あなたの融資で危機を乗り越えました」

「ガタの来ている車は一度修理したくらいじゃ・・・どうにもならんさ」

「そんな危険な投資を何故したのですか」

「そりや・・・桃ちゃんを愛しているからさ」

「・・・」

「それに・・・俺は優も愛している」

「え」

桃子がイヴなら・・・黒沢は蛇なのである。

その真意は不明だが・・・黒沢と桃子は・・・タイにおけるビジネスについて危惧を感じているらしい。

そのようなビジネスに巨額な投資をしている隆一は・・・守りに入っている経営者と言えないのではないかと考える。

「Draymond Hotel & Resort」の最高責任者スティーブン・ホールに対するプレゼンテーションを準備する優は日本支社のエリックから13点に渡るチェック・ポイントで「ダメ出し」をされる。

表現としてはギリギリの曖昧なビジネス描写の中・・・優は「大変な状況」を仲間とともに乗り切るのだった。

貴行は優に声をかける。

「仕事は順調か」

「楽しいです・・・僕がダメなのでみんながフォローしてくれます」

隆一は歯がゆいものを感じるが貴行は目を細める。

隆一は不条理なほどに「不公平さ」を感じるのだった。

「作戦会議だ」

小学生にもわかる駆け引きのポイントを優に伝授する貴行・・・。

「向こうは・・・ロイヤリティー(上納金)を30%要求してくる・・・そこでこちらは15%と回答する」

「・・・」

「そして・・・20%で折り合いをつけるのだ」

「双方歩み寄ったら20~25%の間になるのでは」

「話がややこしくなるから・・・それはいい」

お茶の間対策らしい。

奮闘するプロジェクトチームには・・・お遊びで木曜日のドラマ「Chef〜三ツ星の給食〜」の登場人物・高山晴子(川口春奈)が「奇跡のスープ」の差し入れを持って登場する。

美少女不足の月9が一瞬輝いたのである。

その分・・・去った後が・・・まあ、いいか。

そして、リゾートホテルの建設予定地を下見する優と梓。

「二人は名コンビです」と団衛営業本部長は貴行に追従する。

二人が行動を共にしていることに黒く染まる貴行の嫉妬心。

明らかに観光地でデート気分の優と梓である。

「気分転換に散歩に行きましょう」

夕闇の迫る海岸である。

「仕事って楽しいよねえ」

「仕事辞めるんでしょう」

「え」

「兄が・・・」

「そうか・・・」

「この間・・・兄と何かあったんですか」

「優くんて・・・不思議よね・・・優くんの前だと素直になれるのよ」

「・・・」

「泣きたい時には泣けちゃうし・・・」

「僕でよかったら・・・いつでも泣いてください」

見つめ合う二人である。

妄想で「あーっ」と叫ぶ隆一だが・・・それはほぼ現実化しているのであった。

「戦いの際中に何をやっている」

「あなたは少佐の邪魔をする悪い人」

「だって僕らはわかりあえるじゃないか」

「あなたが来るのが遅すぎたのよ」

「誰がシャアだって」

ガンダム禁止だと何度言ったら・・・。

地震が発生して津波が到来しているぞ。

ニュージランド地震の直後に東日本地震・・・2011年を思い出す・・・。

もっと重厚な三角関係の「べっぴんさん」のオンエアがないじゃないか。

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2016年11月21日 (月)

天地を揺るがす大蛇の如き長距離砲撃が夢の城を砕く時(長澤まさみ)

慶長五年(1600年)、関ヶ原の合戦を控えた徳川家康は大坂城て豊後国に漂着した英国人・ウィリアム・アダムスを尋問する。

アダムスの知見に感心した家康は彼を外交顧問として活用することになる。

家康の御用商人・馬込勘解由の娘・お雪を妻としたアダムスは三浦按針と名乗り、二百五十石取の旗本となった。

慶長九年(1604年)、安針の外交努力により浦賀にスペイン商船が入港する。

慶長十四年(1609年)、家康は平戸にオランダ東インド会社の商館の開設を許可する。

慶長十八年(1613年)、家康は平戸にイギリス東インド会社の商館の開設を許可する。

家康はキリスト教の布教を禁じつつも、西洋諸国との朱印状による交易には熱心だったのである。

家康は慶長十九年(1614年)六月・・・射程1000~6000メートルと言われるカルバリン砲四門をイギリスから購入することに成功していた。

関ヶ原の陣の勝敗を決する秘密兵器は大坂城北方の備前島にある片桐且元の陣に淀川を経て搬入された。

すべては家康の計画通りだった。

で、『真田丸・第46回(NHK総合20161120M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・保坂慶太を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は江戸幕府・初代征夷大将軍にして大御所様の徳川家康の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。戦が三度の飯よりも好きな牢人衆たち・・・老いたりと言えども矢を手取る佐助、とりもち使いの出浦・・・慧眼の叔父上・・・完全にくのいちのきり・・・一同爆笑につぐ爆笑の素晴らしい展開でございましたねえ。なかでもあの手この手の家康は流石でございました。

大坂冬の陣における賤ヶ岳の七本槍の動向まとめ

脇坂安治・・・次男・安元が幕府方として出陣

片桐且元・・・幕府方として出陣

平野長泰・・・江戸留守居役

福島正則・・・嫡男の福島忠勝が幕府方として出陣

加藤清正・・・死亡

糟屋武則・・・消息不明

加藤嘉明・・・嫡男・加藤明成が幕府方として出陣

まあ・・・勝つ方につくのが基本でございますね。

Sanada46 慶長十九年 (1614年)十二月四日、徳川秀忠は本陣を岡山に移す。真田丸での大敗を受け、秀忠は拙速な攻撃を禁ずる。五日、奇襲を警戒した徳川家康は茶臼山の本陣から住吉に後退。公家衆を迎えて茶の湯を嗜む。大坂城谷町口の織田長頼の陣を藤堂高虎隊が夜襲。八町目口の長宗我部勢が援軍したために藤堂勢は後退する。六日、家康は茶臼山本陣に移動。山頂に館を設け、周囲に堀を巡らせた茶臼山城の周囲を旗本三万人が警護する。その前方に布陣するのは伊達政宗勢一万人である。大坂城南方には徳川方の塹壕が展開し、砲台の構築が行われる。七日、本多忠勝の次男・忠朝は天満に着陣する。忠朝の斥候の報告に不満を抱いた家康は激しく叱責する。毛利秀就、福島正勝が着陣。八日、家康は参陣した外様大名にそれぞれ銀百貫目を贈呈した。城中の織田有楽斎、大野治長らが家康のもちかけた和議交渉に応ずる。十日、家康は真田信繁に調略を仕掛けるが不首尾に終わる。十一日、家康は金掘人足による坑道掘削を開始する。十二日、家康は大坂城北方の天満から備前島にかけての砲台の視察を行う。十四日、阿茶局が和議の準備のために茶臼山に到着。十五日、一斉砲撃のための準備が整う。輸入品、国産品などおよそ百門の大砲が大坂城を射程に捉えていた。十六日、一斉砲撃が開始され、城内は混乱する。

家康の使者として真田丸に忍びこんだ真田信尹は幸村と酒を酌み交わす。

「四日の戦いは見事であったな」

「長篠の戦いを仇を討ったようなものでございます」

「大御所は・・・信繫殿に・・・信濃一国五十万石をそっくり賜るそうじゃ・・・」

「亡き父上が聞けば喜ぶでしょう・・・」

「降らぬか」

「兄上の所領まで奪うわけには参りませぬ」

「そうか・・・噂では近江から京を経て新しきフランキ砲が運び込まれるそうだ」

「フランキ・・・大友宗麟の国崩しのようなものですか・・・」

「その程度の大砲ではないらしい・・・大鉄砲のようなものでもなく・・・十町(およそ千メートル)の先から的を狙い撃つそうだ・・・一里(およそ四千メートル)の彼方でも砲弾が届くという」

「そのようなものが・・・まるで妖術のようでございますな」

「大御所が紅毛の者から購ったらしい」

「大坂の城にある和大砲や大筒の比ではないようですね・・・」

「南蛮(南ヨーロッパ)より・・・紅毛(北ヨーロッパ)の砲術の方が先じておるらしい・・・」

「・・・」

「新しきフランキは明日にも備前島に陸揚げされると言うぞ・・・」

「用心いたします」

幸村に従う河原衆は少なく・・・水軍については・・・お手上げであった。

幸村は猿飛忍軍の投入を決めた。

「佐助・・・川筋に石火矢と大筒で待ち伏せを仕掛けよ」

「御意にごわす」

真田佐助は大猿、木猿、石猿、山猿、白猿の猿飛五人衆を引き連れ、淀川沿いに潜む。

冬の枯野は待ち伏せには不利であった。

才蔵が上流に忍び、カルバリン砲輸送船を発見次第、伝心で知らせる手筈である。

(来たぞ・・・)

それぞれが大鉄砲を構えた猿飛五人衆は河原を走り出す。

「あれだ」

巨大な砲を積んだ軍船を佐助が視野に捉える。

可能な限り接近し、一斉射撃により、撃沈するのが佐助たちの目論みである。

その時、銃声が響きわたる。

「お」

猿飛五人衆は弾幕に包まれた。

石猿、山猿が倒され、仕方なく、残ったものは間近の敵に発砲する。

潜んでいた伊賀者が大猿の放った大鉄砲に上半身を吹き飛ばされる。

(抜かった・・・)

佐助たちは待ち伏せされていたのだった。

半蔵影の軍団が・・・包囲の輪を縮めていた。

逃走を図る佐助たちの背後で戦船が川を下る。

銃声がこだまする・・・。

「河原で騒ぎがあったようじゃの」

大砲輸送の指揮をとる本多美濃守忠政が服部半蔵に声をかける。

「真田の忍びのようでござる」

「カルバリン砲を狙ってきたか」

フランキ砲の指南役である田付四郎兵衛景澄が不安を目に浮かべる。

「ご安心あれ・・・この先の川筋には牧野勢の鉄砲隊が控えておりまする」

「まもなく・・・到着でござる」

案内役の片桐且元の弟・貞隆が告げた。

備前島に構築された砲台では家康の砲術指南役の一人・・・稲富宮内重次が待っていた。

且元は京都大工頭の中井大和守正清の作成した図面を広げている。

「まずは天守閣を狙ってはいかがであろう」

「御意」と幕府鉄炮術方の井上外記正継がすでに設置された和製カノン砲を操作する。

備前島砲台の目付で長島藩主の菅沼定芳はカルバリン砲の揚陸を指揮する。

備前島にはこの他、半カルバリン砲や長砲身型セーカー砲など・・・徳川家康がコレクションした大小様々なフランキ砲、和製フランキ砲が配置されていた。

田付四郎兵衛景澄は設置を終えたカルバリン砲に初弾を装填する。

「では・・・放ちまする」

砲弾は一撃で大坂城天守閣を撃ち抜いた。

戦国時代の終焉を告げる砲声が京の都にまで響く。

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2016年11月20日 (日)

本懐を遂げるまで死んではなりませぬ(武井咲)

仇討ちとは本来、目上の身内の復讐限定だったという説がある。

つまり・・・父や兄の仇討ちが本筋なのである。

家来が主人の仇を討つというのもあってもいいわけだが・・・王道ではないわけだ。

大石内蔵助が浅野大学長広の御家再興を願ったのは・・・仇討ち回避のためではなく・・・仇討ちに「弟が兄の仇討ちをする」という大義を求めたためだという説がある。

つまり・・・浅野家が再興され・・・浅野大学長広が「主君」となった上で・・・家臣に「仇討ち」を命じるという形式にこだわったというのだ。

しかし・・・結局は「仇討ち前」の「お家再興」は実現しなかったのである。

「和」や「秩序」を重んじる人から見れば「復讐など虚しい」ということになるが・・・「義」や「情念」を感じやすい人にとっては「天晴」な気持ちを生じさせる「快挙」である。

損得勘定では計れない・・・赤穂義士の誕生は・・・庶民の心を鷲掴みにするわけである。

その「人気」におされ・・・浅野家再興が実現するという・・・不思議な結末に到達する。

そういうことって「英国のEU離脱」とか「トランプ大統領誕生」とかよくあることなんだな。

「忠臣蔵」を知っていれば・・・何が起きても驚かないんだな。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第9回』(NHK総合201611191810~)原作・諸田玲子、脚本・塩田千種、演出・黛りんたろうを見た。江戸・芝の源助町で酒屋を営み、かりそめの夫婦となるきよ(武井咲)と礒貝十郎左衛門正久(福士誠治)だったが・・・きよの許嫁であった村松三太夫(中尾明慶)が押し掛けてきたために・・・愛の暮らしに終止符が打たれてしまう。十郎左衛門を慕いながら涙をこらえて実家である浅草・林昌軒に戻るきよだった。

元禄十五年(1702年)七月十八日・・・江戸・木挽町の屋敷で謹慎中の浅野大学長広(中村倫也)に幕府の裁定が伝えられる。赤穂浅野家の本家筋にあたる広島藩浅野家(藩主・浅野安芸守綱長)に永預(ながあずけ)である。「永預」は終身赦免なしが前提であり事実上の「お家断絶処置」であった。浅野家再興は絶望的となったのである。

江戸からの報せを受け、京都山科に隠棲していた大石内蔵助(石丸幹二)は七月二十八日、京都円山に主だった家臣を集め、「吉良邸に討ち入る事」を明らかにした。

円山には堀部安兵衛(佐藤隆太)の姿もあった。

新参者の安兵衛と・・・譜代の国家老内蔵助の心が一つになったのだ。

夏の暑さに蒸せる江戸・・・両国米沢町の堀部家で隠居の堀部弥兵衛(笹野高史)は京からの報せを受け興奮していた。

きよと共に佐藤條右衛門(皆川猿時)が堀部家を訪れる。

「條右衛門殿にもお力添えをいただきたい・・・」

佐藤條右衛門は腕の立つ牢人である。

弥兵衛老人は娘で安兵衛の妻であるほり(陽月華)に條右衛門の着物を仕立てさせていた。

すでに「死」を決意した弥兵衛は気前がいいのである。

同席していた毛利小平太(泉澤祐希)はきよに声をかける。

「伝え聞いたところによれば・・・きよ殿は・・・吉良家の奥向きに伝手があるとか」

「・・・」

きよの縁戚である木屋孫三郎(藤木孝)は商人として吉良上野介義央(伊武雅刀)の正室・富子(風吹ジュン)に侍女のちさ(二宮郁)を斡旋していた。

きよもその気になれば・・・同じ立場を得ることができる。

しかし、孫三郎の従妹であり、きよの亡き母・さえ(大家由祐子)の姉である仙桂尼(三田佳子)は姪であるきよの身を案じ、その件に反対していた。

「なにしろ・・・我らは・・・仇の顔さえ見たこともないのでござる」

小平太は嘆く。

きよの心は揺れる。

Takuminokamimap3隅田川(大川)は武蔵国と下総国の国境の川である。

両国に架かる大橋なので両国橋である。

江戸城のある西側を単に両国、橋を渡った川向こうを東両国と言った。

隠居した吉良上野介は東両国の本所松阪に屋敷を拝領していた。屋敷と言っても広さは2550坪と推定される大いなる邸宅である。

堀部家の仮住まいのあった両国米沢町は橋の西側で現在の東日本橋の付近である。

安兵衛は・・・橋を渡った本所相生町に偵察拠点としての道場を開いたと思われる。

浅草在住のきよは基本的に徒歩で移動しているが、時には駕籠や舟を利用しているのだろう。

ちなみに十郎左衛門の酒屋は江戸城の南の芝・・・上野介と別居中の富子が住んでいるのはさらに南の白金にある上杉家下屋敷である。

浅草唯念寺に戻って来たきよに・・・すっかり、きよと十郎左衛門の仲を取り持つ天使となっている兄の勝田善左衛門(大東駿介)が・・・緊急事態の発生を伝える。

「十郎左衛門が重い病だ」

「見舞いに行ったらどうだ」と父の勝田元哲(平田満)も背中を押す。

「私は・・・十郎左衛門様に逢わぬことを申しつけられております」

「もう二度と・・・逢えぬかもしれんぞ・・・」

「そんなにお悪いのですか」

「もう死んでいるかもしれん」

慌てて寺を出て走り出すきよである。

勝田元哲には医術の心得があったともされているので・・・きよにも些少の看護力があったようだ。

「よくきてくだされた」と迎え出たのは三太夫である。三太夫は木屋孫三郎の甥にあたる。つまり・・・きよの元許嫁は親類でもあるのだった。

奥の部屋で伏せる十郎左衛門はうなされている。

「熱が下がらぬのです」

「新しい水を・・・それから着替えはありますか・・・薬湯は」

「喉を通らぬようです」

「お医者様はなんと・・・」

「熱が下がらなければ・・・危ういと」

「・・・」

きよは徹夜で看病を続ける。

病は「あかもがさ」と称される麻疹(はしか)であろうか・・・江戸時代では死に至る病である。

一時は医者も匙を投げる重篤な状態となる十郎左衛門。

「死んではなりませぬ・・・十郎左衛門様」

愛しい男の手を握り涙するきよの姿に・・・三太夫は二人の仲を察するのだった。

「き・・・きらを・・・きらを討たねば」と囈(うわごと)を叫ぶ十郎左衛門・・・。

「そうです・・・吉良様を討たねば・・・お殿様の御無念は晴れませぬ」

「・・・」

「十郎左衛門様・・・」

「今夜が峠でございます」と医者坊主。

「きよ殿・・・少し休まれてはどうか・・・もう二日も寝ておられぬ」と三太夫。

「いいえ・・・お側を離れるわけには参りませぬ」

夜明け・・・十郎左衛門は回復に転じた。

「きよ殿・・・すまぬ」と十郎左衛門は言った。

「詫びることなど・・・」

「せっかく救ってもらった命だが・・・本懐を遂げねばならぬ」

「見くびってもらってはこまります」

「きよ殿・・・」

「本懐を遂げさせるためにこそ・・・お命を御救いしたのでございます」

「・・・」

「きよにも・・・お殿様の御無念を晴らすための覚悟がございますゆえ」

きよは・・・心に決めていた。

くのいちとして・・・吉良家に潜入する覚悟である。

夏の終わり・・・江戸に出た吉田忠左衛門(辻萬長)は隅田川の船宿「今戸屋」に江戸の同志を参集させた。

「月見の宴」を装い・・・「内蔵助の討ち入りの決意」を伝えたのである。

病の癒えた十郎左衛門もやってくる。

きよは仲居を装い接待に勤める。

「吉良の屋敷に入ると聞いた」

「はい・・・」

「身体に気をつけよ」

「私は丈夫でございますから」

きよは微笑んだ。

忠左衛門はきよに告げる。

「都鳥(上方の同志)は秋から冬にかけて次々と参る」

「それまでに・・・調べを尽くして参ります」

「お頼み申す」

きよは小石川無量院の仙桂尼を訪ねた。

「ついに・・・決心したのですね」

「はい」

「私も・・・浅野家先代の正室・内藤波知様にお仕えした身・・・寛文十二年に戒珠院殿理庵栄智大姉となられた奥方様の菩提を弔って三十年・・・浅野家への忠義を忘れたことはありませぬ・・・」

「・・・」

「けれど・・・妹のさえが・・・お腹を痛めたお前には・・・命を大切にしてもらいたい」

「伯母さま・・・」

「けして・・・命を粗末にしてはなりませぬよ」

「承知しました」

きよは・・・母の名を借りてさえと名乗り・・・吉良夫人である上杉富子の侍女となった。

富子は白金の上杉家下屋敷に住んでいたが・・・本所松坂町の吉良屋敷との連絡がないわけではない。

吉良屋敷の様子を探り、吉良上野介の動向を調べる・・・密偵としてのきよの日々が始ったのである。

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2016年11月19日 (土)

美女と野獣とベルサイユでサバンナでパンを盗んで歌って踊って豹柄で(山田孝之)

今回はミュージカル風である。

ある意味で・・・世界で最も有名なネズミ関係に足を踏み入れており・・・もっとも危険な回だと言えるな。

なんだろう・・・ギリギリセーフなのか。

劇中歌・割田康彦なのでオリジナルということで押し切るつもりかっ。

まあ・・・そんなことを心配しても仕方ないな。

逆にレビューに気を使うことになるじゃないか。

まあ・・・妄想なので一々、気にしてもいられないわけだが。

内容的には・・・光と闇の攻防を・・・見事に謳いあげて・・・革命前夜の世界にシンクロしていたな。

ある意味でまもなく・・・世界同時革命が現実化する可能性があるのだな。

革命というのはある意味、一番兇悪な犯罪であり・・・成功すれば最も気高い正義になるという不気味なモンスターのようなものだから。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第7回』(テレビ東京201611190018~)脚本・演出・福田雄一を見た。恒例の前座コーナー・・・前回の盗賊C(間宮祥太朗)については公式が修正されているよかったな・・・今回は南国方面にバカンスに出かける直前なのに戦闘を挑んできた盗賊D(やべきょうすけ)である・・・ウシジマくんと柄崎だが特にそれらしい楽屋オチはない・・・勇者ヨシヒコ(山田孝之)を除く仲間たち・・・戦士ダンジョー(宅麻伸)、魔法使いのメレブ(ムロツヨシ )、村の女ムラサキ(木南晴夏)は盗賊Dを気遣って「チェックインのために空港に向うこと」を推奨する。ヨシヒコは戦闘に突入するが・・・盗賊Dが持つ旅行ケースの攻撃に苦戦する。

「そのゴロゴロが邪魔なんじゃないか」とメレブ。

ヨシヒコは実際にダメージを食らうという痛い展開があって「置き引き対策のために手放さないのか・・・外国じゃないから大丈夫だ」と指摘する。

そこへ・・・盗賊の妻(澤真希)と子供(水野哲志)がやってくる。

「ロコモコ食べたい」という子供のおねだりで・・・戦闘を中断し、ハワイに向って出発する盗賊Dだった・・・。

「マカデミンアンナッツを・・・買ってきてね」と叫ぶヨシヒコ。

仏(佐藤二朗)が登場する。

今回の仏は・・・天界における報道機関による直撃取材直前だった。

「今回の玉人は・・・ミュジコの村で捜してください」

そこへ天界の報道陣が殺到。

「仏四号、不倫を認めるのですか」

「彼女とは正月に実家の近所で会っただけです」

「責任をとりますか」

「辞職します」

「どうするつもりですか」

「フラッシュの点滅にご注意ください」

「辞職ではなくて育児休暇です」

「議員か」

「ニューアルバムを」

「ミュージシャンか」

「アホの極みホトケです」

「いろいろ混ぜんな」

「まったく・・・浮気とかとんでもないな・・・もう離婚するしかないよな」とムラサキ。

なぜか・・・視線をそらすダンジョーだった。

ミュジコの村に到着した一同。

「こんな玉を知りませんか」と問いかけるが村人の反応は鈍い。

村人は何故か踊るように移動している。

「祭りが近いのかもしれないね」とメレブ。

しかし・・・何者かが一行を監視している。

「玉を捜しているだと・・・」

「魔王を倒すためだそうです」

「馬鹿な・・・この玉は村を守るためのもの・・・他人などに渡せるか」

「いかがします」

「ミュジコの世界に引き込むのだ」

「ラ・マンチャ」

「トゥモロー」

「エーデルワイス」

ヨシヒコ一行はパン屋の前で立ち止まる。

「たまには・・・パンを食べようか」

パン好きのムラサキはいそいそとパン屋へ・・・。

「こう見えて俺もトースト派だ」とダンジョン。

しかし・・・呪いをかけられたヨシヒコはフランスパンを掴むと走り出す。

「万引きだ」

「えええ」

唖然とするメレブたち。

ヨシヒコは村の警察に逮捕され投獄されてしまうのだった。

「なぜ・・・私はパンなど盗んでしまったのだ」

牢獄の外に警察官(浦井健治・・・「アオイホノオ」の矢野ケンタロー、「ニーチェ先生」の松駒先輩など福田作品の常連である)がやってくる。

「♪・・・万引きしたお前を~・・・マロエル司教がお呼びなのだ~」

(この人はなぜ・・・セリフにメロディーを・・・?)

マロエル司教(今拓哉・・・ミュージカル「レ・ミゼラブル」で共演した岩崎宏美の夫である)はヨシヒコを優しくもてなす。

「♪・・・空腹という悪魔が・・・あなたに万引きをさせた~」

(この人も歌うのか・・・?)

「♪・・・私は魔王を倒すため~旅を続けているのです~」

(私も歌うのか!)

「♪・・・なんと素晴らしいことだ~神があなたを祝福するでしょう~」

十九世紀・・・貧困に耐え切れず、パンを盗んだ罪で服役していたジャン・ヴァルジャンはミリエル司教に暖かく迎え入れる・・・しかし・・・ジャン・ヴァルジャンは銀食器を盗むのだった。

ヨシヒコもまたマロエル司教の銀の皿を盗んでしまう。

警察官が現れた!

「♪・・・情けをかけられたのに・・・銀の皿を盗むとは・・・恩を仇で返すのか~」

「♪ちがうのです・・・誰かが私に・・・魔法をかけているのです~」

「♪問答無用・・・お前は牢屋に逆戻り~」

警察官の迫力ある歌声に魅了されるヨシヒコだった。

宿屋では残された一行が相談中。

「ヨシヒコはバカだが万引きなどはしない」

「誰かの罠に決まっている」

「しかし・・・私は呪文を覚えたよ」

「役に立つのか」

「サバーハ・・・ムラサキ、何歳だっけ」

「レディーに年を聞くなんて」とダンジョー。

「18才だよ」

「嘘をつけ」とダンジョー。

「このように何か聞かれるとサバを読まずにはいられなくなる呪文です」

「・・・」

「ムラサキは何カップ?」

「Fカップだよ」

「サバを読むにも程があるだろう」

一夜あけて・・・手分けをしてヨシヒコの監禁場所を探す一行。

メレブとダンジョーの前には劇団四季のライオンキング風なハイエナが現れる。

続いて子供を追いかけてヌーの大群が暴走してくるのだった。

子供を助けようとしたダンジョーは失神する。

そこへ・・・呪術師のような年老いたマンドリルが現れる。

「この村から出ていけ・・・さもなくば死が待っている」

あわてて逃げ出すメレブだった。

何者かに襲われたムラサキは気がつくと宝塚歌劇団の「ベルサイユのばら」風の衣装に身を包んでいた。

「なんじゃこりゃ!」

「アンドラ・・・気がついたか」

「え・・・あなたは」

「私はオスケルに決まっているだろう」

「オスケル?」

オスケル(壮一帆)はムラサキの手をとって踊りだす。

「私と共に国王軍と戦ってくれ・・・祖国フランスのために」

「え・・・ここはミュジコの村でしょう」

「♪さあ共に戦おう・・・私にはお前が必要なのだ」

「なぜ・・・歌い踊るのです」

「♪これからもずっとそばにいてほしい」

「♪命がけで愛します~・・・なんでええええ!」

「♪愛・・・二人の愛はいつもバラのさだめに生れた~」

「♪愛それは甘く」

「♪愛それは強く」

「♪愛あればこそ~」

「♪めざせバスティーユ」

「♪薔薇のベルサイユ~」

コーラスメンバーには実姉の木南清香も従え・・・オスカルとアンドレのような二人は見事に歌い踊るのだった。

ムラサキ・・・ノリノリだな。

ムラサキの夢をすべて叶える体制なんだな。

一方、目覚めたダンジョーは村人からは変わり者と言われている美女(新妻聖子)と出会う。

そして・・・たちまち野獣のようなものに変身してしまうのだ。

「♪あなたはたくましい」

「♪わたしはたくましんだ~」

「♪わたしの心はうばわれた~」

「♪たちまち恋におちていく~」

「♪あなたの腕の中に~」

美女に魅了された野獣は魅惑のワインを勧められる。

「これは・・・凄く強い酒だ・・・」

酩酊する野獣と化したダンジョーだった。

「レ・ミゼラブル」ならエポニーヌでお馴染みの新妻聖子である。

ヨシヒコも、ムラサキも、ダンジョーもミュージカルのアクター&アクトレスと堂々と渡り合うのだった。

ミュージカル部分の物凄い練習が必要だったので途中経過は「ゲーム画面」と「アニメ」で処理され・・・なんとか赤のオーブを入手したヨシヒコ。

オーブによって玉人を召喚する。

現れたのは・・・レオパルドひとみ(大地真央)だった。

「魔王を倒すために・・・協力してください」

「魔王を倒す・・・馬鹿なことを言うな・・・その玉の力は・・・この村を守る芸術の女神ミューズの宿りしもの・・・貸し出すことなど出来ぬ」

ヨシヒコたちの背後に仲間になったモンスターが現れる。

「やはり・・・お前は魔物の仲間か」

「いいえ・・・この子たちは心を通わせ・・・仲間になったのです」

「そのシステムがいつの間にか導入されたのか」

「倒したモンスターが仲間になるのはドラゴンクエストV 天空の花嫁からのシステムだよね」

「とにかく・・・そういうことなのです」

「そんなこと信じられない」

ここでフィナーレ的ミュージカル・バトルに突入する。

「♪世界で起こる不吉な出来事から目をそらし・・・他人事には関わらない・・・歌と踊りでこの村の平和は守られる~」

「♪魔王の支配はそんなに甘くない~・・・世界から背を向けて~・・・駆けつけ警護さえしなければ~・・・他人の不幸をそのままに・・・ずるい奴だと蔑まれ」

「♪いえいえどんな争いも・・・しないにこしたことはない」

「♪いつしか魔王の手の内で・・・地獄を見ることになるだけさ」

ヨシヒコたちは歌とダンスで・・・村人たちを回心させていくのだった。

「♪さあ・・・力を合わせて魔王を倒そう」

「♪みんな・・・私を裏切るの~」

ヨシヒコはいざないの剣でレオパルドを斬った。

いつのまにか敷かれたレッドカーペットに横たわるタカラジェンヌではなくレオパルド。

すると・・・レオパルドを操っていたモンスターが姿を見せて逃げて行く。

「歌と踊りの好きな魔物に操られていたということか」とメレブ。

メレブ・パートもあったので満足したらしいが声は枯れたのだった。

魔物が去ると豹(レオパルド)柄を来た大阪のおばちゃんになるひとみ・・・。

「お兄ちゃん・・・ええ男やから飴ちゃんお食べ・・・みんなには内緒やで・・・」

こうして・・・ヨシヒコは赤のオープを入手した。

ムラサキはメレブの歌にダメ出しをしたらしい・・・。

ヨシヒコ一行を陰ながら追うヒサ(岡本あずさ)は兄の歌声を賞賛するのだった。

「さすがです・・・兄さま・・・もうすぐ玉がそろいますね」

ヒサは仲間のモンスターになるために・・・くさったしたい(木根尚登)に変身する。

その後を何故か「お前、最近テレビ出過ぎだ」と言いながらベビーサタン(宇都宮隆)が追いかける。

小室氏は来ないらしい・・・。

ここまでヨシヒコが集めたオーブ。

①カルバド村のロビン(滝藤賢一)の緑の玉。

②エフエフの村のヴァリー(城田優)の青の玉。

③ルドランの娘であるフロリア(山本美月)のピンクの玉。

④ダシュウの村の守り神ニッテレン(徳光和夫)の黄色の玉。

⑤盗賊の村ウガスのカンダタ(高嶋政宏)のオレンジの玉。

⑥レオパルドひとみ(大地真央)の赤い玉。

いよいよ・・・七つの玉も残り一つなのだった。

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2016年11月18日 (金)

飲みすぎると死ぬクスリ(成海璃子)

お茶の間の知的水準というものは悩ましい問題だ。

ソクラテスは「人間は基本的に愚かなのだ」という前提から哲学の基本姿勢を示すが・・・お茶の間は基本的に自分を愚かだと思ってはいない愚か者で構成されているわけである。

そもそも・・・賢い人間はお茶の間でテレビなど見ないという・・・意見を持つテレビのスタッフは多い。

特に正社員の縁故入社以外の人はそれなりの高学歴である。

彼らは・・・「視聴率」という「目標」のために手段を選ばない。

その基本は「馬鹿にもわかる番組制作」である。

テレビでは基本的に・・・難しいことをやらないものである。

そして・・・スポーツなどで「勝者」を賞賛すると同時に・・・「人気者」が「落ち目」になれば袋叩きにする。

お茶の間の愚か者たちは「勝者」に自分を投影すると同時に・・・他人の不幸を常に求めているからである。

・・・と多くのテレビのスタッフは思っているのだ。

「馬鹿に受ける発言をするもの」を面白がってお茶の間に届け・・・その凋落を舌舐めずりして待つわけである。

そして・・・ある日、突然、自分たちがそれほど賢くなかったことに気がついて衝撃を受けるのである。

で、『黒い十人の女・第8回』(日本テレビ201611172359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・豊島圭介を見た。東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)はプロデューサー・風松吉(船越英一郎)に口説かれて交際を始めるが風には妻・風睦(若村麻由美)があり、さらに自分の他に愛人が八人いると知って茫然とする。そのうちの一人は・・・親友の文坂彩乃(佐野ひなこ)だったのである。久未は彩乃と死闘の後に和解し、同病相哀れむ仲となった。もう一人の親友・池上穂花(新田祐里子)は彼氏が出来て最近付き合いが悪くなったのだった・・・。

愛人筆頭の・・・如野佳代(水野美紀)から招待状が届いたことをカフェ「white」で報告し合う久未と彩乃だった。

実際に招待しているのは本妻の風睦なので・・・招待状からは典雅な香りが漂う。

「停車場に落ち葉の舞い散る季節となりました。皆さま、いかがお過ごしですか。この度・・・風の会・・・ではささやかなお茶会を催す運びとなりました。つきましては万障お繰り合わせの上、ご出席を賜りたく、お願い申し上げます」

会場のご案内・・・11月24日(木)レストラン「カチューシャ」にて

典雅な香りにうっとりする久未と彩乃だった。

睦の醸しだす貴族的な空気が庶民を包みこむのである。

出番の少ない店員トリオの春江(寺田御子)、夏美(森田涼花)、秋子(松本穂香)までがまったりする強力な波及効果である。

「場の空気」に支配される人間の生態をそれとなく示しているのである。

我に返った彩乃は呟く。

「私たちって・・・風の会なんだ」

「なんか・・・公民館で俳句を読む集いみたいな」

「どうする」

「そうねえ」

こわいものみたさで・・・参加する二人だった。

睦は経営するレストラン「カチューシャ」を貸し切りにして愛人たちを迎え入れる。

かくて・・・ついに一同に会する十人の女たち・・・。

最後の晩餐風に横並びに座った女たちを前に・・・坂本龍馬風の佳代は挨拶をする。

「今日は・・・風のために不幸になった女たちの集いです・・・奥様と九人の愛人たちの集いです」

「え・・・奥様もいらしているのですか」

驚く・・・相葉志乃(トリンドル玲奈)・・・。

「ああ・・・知らない人もいるのね・・・この方が・・・奥様の睦さんよ」

「風と結婚して二十年になります・・・主人がお世話になっております」

ある意味、愛人に対して殺し文句である。

怯えた表情を見せる愛人たち。

全員、正妻に慰謝料を請求されてもおかしくない立場である。

「大丈夫よ・・・睦さんは愛人が九人いることを承知しているから」

「本日は・・・フリードリンクをご用意しましたので・・・」

「修羅場になるような人はこの場には呼ばないから」

「あんた・・・呼ぶでしょう」と弥上美羽(佐藤仁美)・・・。

「確かに・・・」と数々の修羅場を体験した久未も同感である。

「まあ・・・些少はね・・・でも・・・そういうことを乗り越えて・・・今日という日があるのです」

正妻に対して愛人を紹介し始める佳代だった。

「まず・・・私から・・・劇団絞り汁で女優をしている如野佳代です。来年の一月には公演を予定してます」

「遥かなるサンフランシスコ」のポスターを取り出す佳代である。

話が長くなりそうなのでドリンクを一同は飲み物を調達するのだった。

「高知銘菓の土佐日誌もあるから」

「実家に帰ったのですか」

「昨日ね」

しかし・・・あまり人気のない「土佐日誌」である。

「今回は劇団小銭入れの銭屋ゲバ太郎が客演してくださるのです」

小劇団ファンらしい美羽以外は知ったこっちゃないのだった。しかし・・・あくまで芝居の宣伝を続ける佳代だった。

「今度のお芝居の舞台はサンフランシスコなのよ」

「それっておかしくないですか」と脚本家の皐山夏希(MEGUMI)は拘りを見せる。

「サンフランシスコにいるのなら・・・遥かなるって変でしょう」

「それはね・・・サンフランシスコにいるけれどまだサンフランシスコにはたどり着いていないという」

「弥上美羽です・・・」

割って入り自己紹介をする美羽だった。

恒例のメンバー紹介。

妻・レストラン経営者の風睦・・・結婚二十年。

最初の愛人・売れない女優・如野佳代・・・愛人歴八年。

二番目の愛人・弥上美羽・・・職場の部下・・・愛人歴五年。

三番目の愛人・アロママッサージ店経営者・卯野真衣(白羽ゆり)・・・愛人歴四年。

四番目の愛人・皐山夏希・・・愛人歴三年半。

五番目の愛人・水川夢(平山あや)・・・ヘアメイク・スタッフ・・・愛人歴三年。

六番目の愛人・文坂彩乃・・・愛人歴一年半。

七番目の愛人・相葉志乃・・・アイドル女優・・・愛人歴一年。

八番目の愛人・長谷川冴英・・・マネージャー・・・愛人歴九ヶ月。

九番目の愛人・神田久未・・・愛人歴七ヶ月。

美羽の画策により・・・離婚に追い込まれた真衣や・・・恋人に不倫を暴露された志乃にはまだ復讐の炎が燻っている。

しかし、BBAパワー全開でふてぶてしく応じる美羽である。

視聴率対策のために・・・ロールケーキやプリン、どら焼きなどを優雅に用意した睦によって一同は時々、異様に和む。

途中のぶっかけ寸前の修羅場に備えてホットドリンクを退避させる小心者の久未だった。

自己紹介が終わったところで本題に入る佳代である。

「今日皆さんに集まってもらったのは・・・諸悪の根源である・・・風を始末してはどうか・・・ということについて話し合うためです」

「始末って・・・」

「殺すのです」

「ええええええええええ」

どよめく一同である。

「そんな・・・」

「皆さんは・・・いつも言ってるでしょう・・・風が死んでくれればいいのにって」

「でも・・・死ぬのと殺すのとは・・・違うでしょう」

「しかし・・・死ぬのを待っていたら・・・私たちの地獄の日々は終わりません」

久未は恐ろしいことに気がつくのだった。

「まさか・・・佳代さんは・・・そのために・・・私たちに・・・」

「当たり前でしょう・・・何だと思っていたの」

「ただ仲良くなりたいのかと」

「そんなわけないでしょう。わざわざ・・・愛人と仲良くする愛人がどこにるの・・・そんな馬鹿いないでしょう」

「馬鹿なんじゃないかと思ってた」と毒を吐く美羽。

「あんたね・・・とにかく・・・私は風を殺したいと思うのです」

「思うのと実際に殺すのとは違うわよ」

「そうですね・・・殺したら殺人罪です・・・しかし・・・完全犯罪ならどうでしょう」

「完全犯罪・・・」

「私の実家は病院です」

「そうなんだ」

「私は今も仕送りもらっています」

「だから・・・貧乏劇団の女優なのにあんなに贅沢なマンションに」

「クズじゃないか」

アラフォーのすねかじりに殺到するブーイング。

「とにかく・・・私は病院から証拠の残らないように・・・特別な薬を持ちだしてきました」

「特別な薬?」

「はい・・・医師の指示通りに・・・服用すれば薬ですが・・・致死量を摂取すれば毒です」

「・・・」

「ここに十等分してあります・・・これを十二時間の間に全量摂取すれば死に至ります」

「・・・」

「しかも・・・遺体を解剖しても死因は特定できません」

「・・・」

「つまり・・・殺しても罪には問われないのです」

「・・・」

「それに・・・一人でも投与を躊躇えば・・・死は訪れない・・・逆に言えば・・・一人一人は彼を殺すわけではない・・・」

陸、美羽、真衣、夏希の年長者たちの心は・・・「風の始末」に傾くのだった。

「罪に問われないとしても・・・人を殺すなんてできません」

「そうね・・・罪そのものを恐れる気持ちは・・・人として当然よね。でもね・・・このままでは・・・私たちに未来はない。私たちの未来を奪っているのは誰でしょう。つまり・・・あの男は私たちの人生を奪っているのよ。私たちはあの男に殺されているようなもの。これは正当防衛なの。あの男は一人で十人の女を殺している。それに対して私たちはたった十分の一のささやかな抵抗をするだけ・・・」

久未を除いた四人もついに・・・薬を取るのだった。

「久未ちゃん・・・」

「ごめんなさい・・・私にはできません・・・風さんは・・・優しいこともあったし・・・」

「しょうがないわね・・・でも・・・あなたを責めることはできない・・・逆に私たちの罪を止めてくれたわけだし」

「佳代さん・・・」

「みんなが・・・その気になったら・・・やりましょう」と睦が結論する。

緊張から解放される女たち・・・。

そこへ・・・「みんなに優しいのは誰にも優しくないってことですよね」と不倫相手の元夫から月並な指摘を受けて・・・思うところがあったらしい松吉が入店するのだった。

妻と九人の愛人が全員集合していることに驚愕する松吉だったが・・・たちまち平静さを取り戻す。

「せっかくだから・・・みんなが集まっているところで・・・話したいことがある」

「・・・」

「私は・・・君たちをみんな愛している・・・しかし・・・不倫はよくないことだ・・・だから別れよう・・・睦・・・今まですまなかった・・・これからは二度と不倫はしないと誓うよ・・・ということで・・・みなさんごゆっくり」

にこやかに別れの挨拶を終えて退場する松吉だった。

「あの人が何を言ったか・・・わかった・・・?」

「私たち・・・ふられたってことじゃない」

久未の心は噴火していた。

久未はクスリを手にとった。

「ぶっ殺しましょう」

「ちょっと待って・・・私たち・・・地獄から解放されたのだから・・・もう殺す必要はないんじゃないの」

「ゲス野郎だからぶっ殺すんです」

「ちょっと待って・・・奥さんは私たちとは・・・立場が違うから」

睦は微笑んだ。

「もちろん・・・ぶっ殺します・・・今さら何を言ってるのか・・・ですよ」

「では・・・ぶっ殺すということでいいですね」

「ぶっ殺しましょう」

「イエーイ」

こうして・・・致死量の十分の一のクスリをそれぞれが持つ十人の女たちの心は一つになったのだった。

もちろん・・・その心は・・・ドス黒く染められていたのである。

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2016年11月17日 (木)

砂の塔~知りすぎた隣人(菅野美穂)ダーク・タワーの魔女(松嶋菜々子)

世界は常に悪魔に支配されているように思えることがある。

21世紀になっても戦争を抑止しているのは超大国の持つ核兵器である。

あらゆる格差が・・・憎悪を生み・・・暴力による恐怖が・・・社会を蝕む。

戦争が不幸を増殖するものと誰もが理解していながら平和はたちまち駆逐されていく。

技術革新が人々から暮らしを奪い、社会的強者が富を独占する。

政治と経済を研究するものは・・・複雑化したシステムを前に途方に暮れる。

一人の人間のなんと無力なことか。

それでも・・・人は・・・残り少ない「幸福」を求めて・・・あがくのである。

それは・・・おそらく・・・絶望的な闘争と言えるのだ。

で、『砂の塔~知りすぎた隣人・第1回~第5回』(TBSテレビ20161014PM10~)脚本・池田奈津子、演出・塚原あゆ子(他)を見た。サスペンスとしては時々、微妙なところがあるが・・・オリジナル・ストーリーが少し生乾きなのだろう・・・ちょっとお馬鹿な主婦である高野亜紀(菅野美穂)が明らかに魔性の存在である佐々木弓子(松嶋菜々子)に翻弄される豪華さでなんとか凌いでいる前半戦である。

亜紀の家族は中堅食品会社に勤務する夫・健一(田中直樹)、高校生の息子・和樹(佐野勇斗)と幼稚園児の娘・そら(稲垣来泉)である。

事故物件であったタワー・マンションの一室を・・・そうとは知らずに格安で・・・分不相応に購入した高野一家は・・・「夜行観覧車」の遠藤一家の如く・・・一部富裕層による陰湿な格差社会に翻弄される。

分譲マンションでは階数によって納税額も変わる時代である。

貧富の差が耐えがたいほどに高まった時・・・予想外の選挙結果が出現することを支配層に属するマスメディアは驚愕するしかないわけである。

少し鈍感なところのある亜紀は・・・ボス的存在の有閑マダム・阿相寛子(横山めぐみ)のお気に入りである子供のための体操教室のコーチ・生方航平(岩田剛典)と旧知の間柄であったことから逆鱗に触れてしまう。

しかし・・・生方は明らかに人妻の亜紀に対して不純な感情を抱いており・・・その優しさによろめく気配を見せるガードの甘い主人公なのである。

つまり・・・「昼顔要素」も持ち込んでいるのだ。

そんな亜紀に・・・穏やかな表情で救いの手を差し伸べるのが弓子なのである。

生方と密会している間に・・・そらが変質者に誘拐された時も・・・身体を張って救助する弓子なのであった。

だが・・・弓子は・・・密かにマンション中に監視カメラと盗聴器を仕掛け・・・亜紀を監視している異常者なのだった。

その真意は不明だが・・・「子供にすべてを捧げて生きていない母親は悪」というポリシーを持っているらしい。

亜紀もまた心の闇を抱えている。

亜紀の母親・三田久美子(烏丸せつこ)は父親が借金を残して死んだ時に亜紀を残して男と出奔したのである。

そんな母親の血が流れているという意識が・・・亜紀の母親としての自覚を揺るがすらしい。

一方・・・夫の健一は営業成績をあげるために・・・寛子の夫である阿相武文(津田寛治)に接近し・・・いつしか・・・怪しい仕事の片棒を担ぐ破目に陥って行く。

若い女を空港まで運び怪しい男から一千万円を受け取るような仕事である。

しかも・・・健一と・・・弓子の間には何やら因縁があるらしい。

さらに・・・妹思いの心優しい兄だった・・・和樹は亜紀と生方コーチの密会現場を目撃・・・母親の不倫行動に激しく動揺し・・・隠していた別の顔をのぞかせる。

おそらく・・・長期に渡り学校で苛めを受けていたのである。

学校も無断欠席を繰り返し・・・街で盗撮を続けていたのだ。

その画像データを経歴詐称をしてバッシングを受けていた橋口梨乃(堀内敬子)の娘である成美(川津明日香)に盗まれ・・・晒されてしまうのだった。

おわかりだろうか・・・盛りだくさんなのである。

しかも・・・この街には「悪い母親の子供が行方不明になる」という「連続幼児失踪事件」が発生し「ハーメルンの笛吹き事件」と通称され・・・マスメディアが注目している際中である。

刑事の荒又(光石研)たちが事件を追っているのだった・・・。

もう・・・何が何やらである。

いろいろと・・・唖然とする展開があるのだが・・・。

亜紀がマンション内で追い込まれる要因のほとんどが生方コーチによるもなのだが・・・亜紀は平気で生方と密会を繰り返し・・・その生方は・・・突然、弓子を疑い始めるのである。

そして・・・あろうことか・・・寛子を通じて弓子に接近するのである。

寛子は嬉々として弓子を紹介するのだが・・・明らかに弓子は寛子の恋敵候補ではないか。

寛子か脚本家の頭がおかしいとしか思えない。

それはさておき・・・件の写真の件で・・・息子が「ハーメルン事件」の容疑者として取調を受け・・・自分の知らない息子の裏の顔を知り・・・激しく動揺する亜紀なのである。

一方、弓子を尾行中に・・・ストーカーとして警察に連行された生方コーチなのだった。

「俺はストーカーじゃない・・・怪しいのは佐々木弓子の方なんだよ」と叫ぶ生方コーチ。

その声を偶然聞く荒又刑事である。

「佐々木弓子だと・・・」

どうやら佐々木弓子は・・・殺人事件の容疑者だったらしい・・・。

もう何が何だかで・・・非常にたどたどしいが・・・ここから後半戦に突入するらしい。

まあ・・・人間の不完全性を描くということではそこそこ成功している。

スタッフの不完全さが・・・見事に表出しているからな。

・・・おいおいおい。

連続ドラマなので・・・事件が決着した頃の谷間でまた会いましょう。

それにしても何故・・・原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・塚原あゆ子のトリオでやらなかったのだ。ネタ切れか。菅野美穂の松嶋菜々子の二枚を使える原作がなかったのか。

タレント・システムか。

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アルジャーノンに花束を

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2016年11月16日 (水)

小賢しい独身女性は専業主婦の夢を見るか?(新垣結衣)

「据え膳食わぬは独身のプロだから(星野源)」でも良かったけどな。

いや・・・タイトルは譲れん。

恋をしているのかどうかの「ライン」もなかなかに引き辛いものだ。

「恋」とは何かという問題もあるからな。

まず・・・主人公のみくりについて言えば・・・少なくとも「結婚」を口にした時には・・・もう恋をしていたと断定できる。

しかし・・・小賢しいので・・・いろいろと予防線を張っているわけだ。

恋の素人はそういうものに幻惑されて・・・みくりの「恋心」を見抜けないわけである。

恋の素人ってなんだよ。

「抱かれたい」「抱かれてもいい」「抱かれるつもりで」・・・エロかわいい下着を準備した今回・・・身も心も受け入れ態勢整っているということである。

それが・・・信じられないのは恋のお相手を演じるのが星野源だからである。

なぜ・・・ガッキーが星野源と恋に落ちなければならないのかという義憤が一部お茶の間には渦巻いているのである。

一方、ヒロインのヒラマサは・・・みくりを一目見た時から恋をしているわけだが・・・それを現実のものとして受け入れる準備は全くないのである。

つまり・・・恋は双方の合意により成立し・・・みくりが自分に恋することなど金輪際ありえないと確信しているわけである。

だが・・・どんなに理性で自分をコントロールしても・・・ガッキーに「一番好き」って言われたり、何回もハグしたり、一夜を共にしたりして・・・平常心でいられる男などいないのだ。

辛抱たまらんとはこのことなのである。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第6回』(TBSテレビ20161115PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。雇用主としての夫・津崎平匡(星野源)と偽りの新婚生活を続ける従業員としての妻・森山みくり(新垣結衣)・・・しかし・・・みくりの果敢なアタックにより・・・ヒラマサの諦念の海の底に沈んだ恋の情熱は・・・海底火山の爆発の前兆を醸しだしていた。そして・・・星野源の日ではなくて資源ゴミの日は火曜日・・・みくりの待ちに待った「ハグの日」なのである。

同じ部屋にみくりがいることに慣れてきたヒラマサは室内をパジャマ姿でうろつくようになっていた。

野生のカピバラの警戒心を解き・・・餌付けに成功した気分のみくりである。

しかし・・・まだ・・・気軽に撫でさすることは許されない。

なにしろ・・・相手はいつでもDT(童貞)フィールドを全開にできるのだ。

それでも・・・「ハグの日」はみくりの心を浮き立たせるのだった。

そして・・・それはヒラマサの心にも・・・。

みくりは・・・私のお気に入り・・・平和を感じさせるヒラマサを見つめる。

ヒラマサのために作る朝食、ヒラマサのために作る愛妻弁当、ヒラマサのためにお風呂を掃除し・・・ヒラマサのために洗濯をする。なんて素敵な一日だろう。

そして・・・日暮れが来て・・・業務が終了したら・・・ハグが待っているのだ。

みくりは心をこめて・・・夜の紅茶をいれる。

「すみません・・・業務時間外に・・・」

「今日は・・・ハグの日なので」

「しかし・・・今日の分はもう前借りしてしまったのでは」

「ええ・・・お忘れではないかと・・・一応確認を」

まるで・・・御預けプレイのようだが・・・ヒラマサはじらしているのではなく・・・単に真面目なのだった。

「前借りの前借りというのはどうですか」

「そんなことではいつか闇金のお世話になりますよ」

いつもならマツコの時間だが・・・今日は最終予選から客がたくさん流れ込んでくる可能性があるテレビを視聴する二人。

ヒラマサはソファに空席を作る。

「床は冷えますから」

みくりの心は満たされる。

肩を並べてテレビを見る・・・何と言う団欒。何と言う世界平和。何と言う恋人気分。

そこへ・・・美処女の百合(石田ゆり子)が乱入する。

勤務先の化粧品会社「ゴダールジャパン」でイケメンの梅原ナツキ(成田凌)に対する言動がセクシャルハラスメントではないかと告発され・・・コンプライアンス担当で同期入社の仁美(中島ひろ子)から事情聴取を受けたのである。

「お小言おばさんどころか・・・セクハラおばさんになっちゃった」

伯母であり、義理の伯母である百合をソファに腰掛けさせ正座で拝聴する二人である。

しかし・・・百合の訪問理由は・・・クレジットカードのポイント五万点分による「伊豆・修善寺高級旅館」のプレゼントだった。

みくりとヒラマサの夫婦仲を案じる百合の老婆心である。

「新婚旅行に行ってらっしゃい」

「私たち・・・新婚旅行は・・・」

「いつ行くの・・・今でしょう」

新婚予備校の百合講師は金八先生を混ぜながら熱血指導するのだった。

「なんですかあ」

「行かせていただきます」とヒラマサ・・・。

「いいんですか」とみくり。

「社員旅行だと思えば・・・百合ちゃんの好意は無駄にできません」

こうして・・・小賢しい女と独身のプロは温泉を目指すのだった。

辛抱たまらん旅支度

「3Iシステムソリューションズ」ではヒラマサが「旅の宿の睡眠」について思いを巡らせている。みくりの残り香だけで徹夜してしまった過去から・・・ツインベッドとはいえ・・・傍らにみくりを置いて熟睡することには困難が予想されたのである。

休みの日には家族サービスを欠かさない日野秀司(藤井隆)は「温泉旅行?」と忍びよる。

「夜が心配なんです」

最近、うっかり心の声が漏れるヒラマサだった。

みくりという黒船来襲に心揺れる幕末の将軍のようなヒラマサ。

「開国」か「攘夷」かで揺れているのである。

このドラマにはそこはかとなく幕末感が醸しだされているよね。

「じゃ・・・いいものプレゼントするよ」

「沼田さんには言わないでください」

沼田(古田新太)が知れば風見涼太(大谷亮平)にダダ漏れなのである。

(風見さんに知られたら・・・羨ましがられてしまう)

おっと・・・これは・・・心の上から目線じゃないか・・・。

自尊感情が低いあまりに他人の自尊感情の低下に配慮しすぎなんだろう。

隠れ身の術を解いた沼田は風見を抱きしめる。

「けして・・・心変わりしたわけではないと思う」

ヒラマサと風見という自分だけに見える妄想カップルの破局を案ずる沼田だった。

「何の話ですか?」

一方、みくりは親友の田中安恵(真野恵里菜)と横浜中華街で豪華ランチ中である。

給料日かっ。

離婚したやっさんを激励するみくりなのである。

「実家があってよかったよね」

「まあね・・・やさぐれても・・・やどなしにならずにすむからね」

「私も・・・ついに一泊旅行なの」

「まだ・・・やってないの」

「友達以上恋人未満の生温い感じが最高なのよ」

「馬鹿じゃん」

「何見てるの」

「駅前で配ってた・・・勝負下着のバーゲンのチラシ・・・これなんか・・・エロかわいいよ」

「ほんとだ」

「30%オフだよ」

「安い」

「どうする」

「買いますん」

辛抱たまらん伊豆箱根鉄道出発進行

「サウンド・オブ・ミュージック」の「私のお気に入り」が流れ・・・進行方向に向って並んで座り車内で弁当をいただく二人である。

「そうだ・・・京都へ」

「修善寺温泉です」

些細な幸せこそが幸せと信じる二人は・・・日常を忘れる些細な幸せに踏み出している。

出発して帰ることを直線運動と捉えるか円運動と捉えるかは人それぞれである。

実は旅行とは螺旋であるために・・・同じ出発点には戻ってこれない。

旅の終わりに寂寥感が伴うのは・・・それを認識するからである。

雨模様の伊豆地方は・・・二人を旅情へと誘うのだった。

どんどんロマンチックになっていく二人なのである。

そして・・・たどり着いたお二人様一泊五万円の高級旅館。

辛抱たまらんダブルベッド

仲居(宍戸美和公)に導かれた二人を待っていたのは百合が勝手に変更したダブルベッドのお部屋だった。

変更の変更にチャレンジするが・・・ツインルームが満室である。

「申しわけございません」

「そちらに落ち度があるわけではありませんから」

支配人に平静に対応するヒラマサに・・・うっとりするみくりである。

みくりの心は時間を遡行し・・・高校時代の恋愛事情に突入する。

高校時代のみくりの交際相手はカヲルくん(小柳友)だった。

おしゃれなカフェで背伸びしてエスプレッソを注文したカヲルくんはカップの小ささに不満を抱くのだった。

「これは・・・ボクにとって忌むべき存在」

「でも、注文しちゃったから」

「かえてくださ~い」

「ええええええええ」

十年前と変わらぬガッキーの制服姿に騒然となる一部お茶の間。

制服はパパムスか。

みくりの妄想は・・・カヲルくんをヒラマサさんに置換する。

「小さいですね」

「ええ」

「勉強になります」

「はい」

「苦っ」

妄想でさえ平和なのだった。

みくりがこよなく愛する「鎖国されたヒラマサの精神の安寧」がそこにある。

そして・・・時空を越えて・・・恐ろしい偶然で・・・同じホテルにやってくる・・・二十五歳のカヲルなのである。

リリカ(美沙玲奈)は年下の彼女らしい。

相変わらず・・・周囲との摩擦に無頓着なカヲルは・・・フロントでクレームを叫ぶ。

「魚じゃなくてカニにしてよ」

「私は魚もカニも嫌い・・・リリスでもリリンでもなくリリカ」

消去した過去から逃亡するみくりであった。

なぜ・・・カヲルくんと交際することになったのか。

文化祭の季節にみんながどんどんカップル化し・・・カヲルくんから告白されて・・・イケメンだったから・・・了解して。

しかし・・・通行人とぶつかって・・・謝る前に喧嘩腰になるカヲルくんに説教して。

「お前といてもつまらない」

ふられたみくりだった。

この時の失敗からみくりが何も学ばなかったことは・・・シンジくんの時の失敗で明らかなのである。

みくりは曲げられない女。小賢しく頑固な女なのだった。

曲げていれば・・・この旅館に来るのはみくりとカヲルくんだったのかもしれない。

つまり・・・この旅館ではもう一つの別の未来が交錯しているのである。

辛抱たまらんマムシエキスとぐろターボ

部屋に戻った二人。

何故か・・・暑いのである。

「何か・・・冷たいものでも買ってきますね」

みくりが部屋を出たところで・・・日野からのプレゼントを開封するヒラマサ。

精力剤の三本セットだった。

夜の営みを補強する薬剤である。

それは・・・ヒラマサがけして見てはいけないみくりの性的魅力を倍増させる危険物なのである。

慌てたヒラマサはベッドに隠匿。

帰って来たみくりはベッドの具合を確かめる。

「これだけ・・・広ければ端と端で寝れば問題ないですね・・・あれ」

すでにベッドに横たわるだけでヒラマサを辛抱たまらん状態にするみくりは異物に気がつく。

「まむしがいます」

「え」

「いえ・・・まあ・・・虫です」

「大きいのですか」

「深刻な感じの虫です」

「フロントに電話しましょう」

「あ・・・逃げました」

ヒラマサは「危険物」を収納家具の下に隠匿した。

「どこですか」

「そちらに」

思わず後ずさるみくりは仰向けに転倒。

助けようとしたヒラマサも転倒。

正常位で対面するラッキーでスケベでシンジくんどいての状態になる二人だった。

おびただしい発汗。

空調設備の故障だった。

「すみません・・・こちらのお部屋をご用意しました」

辛抱たまらん部屋風呂付ダブルベッド

「これは・・・一泊・・・十万円はしますね」

「お値段はそのままで・・・こちらお忘れ物です」

きちんと包まれた危険物だった。

「素晴らしい気遣いだ・・・」

「なんですか」

「業務上の機密です」

「せっかくだから・・・お風呂・・・二人で入りましょうか」

愛しているのだ。

「なななななななななななな」

「冗談です」

「そそそそそそそそそそそそ」

「浴衣に着替えて仲の良いところを写真に撮って・・・百合ちゃんに送信しましょう」

「はい・・・実際は社員旅行ですが・・・建前としては新婚旅行ですから」

社員旅行の壁にモヤモヤするみくりである。

愛しているのだ。

豪華夕食である。

「豪華ですね」

「美味しそうです」

「いつも手抜き料理ですみません」

「手抜きなんですか」

「どうしても時間的制約がありますので」

「こういう料理はたまに食べるから良いので・・・僕はみくりさんの料理はいつも美味しいです」

晴れ渡るみくりの憂い。

好きな人が褒めてくれるというささやかな幸せ。

愛しているのだ。

先に白濁した温泉につかるヒラマサ。

のぼせた。

その間に・・・うっかり精力剤を発見するみくり。

転ばぬ先の杖・・・非常事態に備えたエロかわいい下着購入が・・・役に立ったのだ。

あの人にそんな度胸はないと思いつつ期待するみくり。

愛しているのだった。

小賢しいお茶の間サービスを終えるみくりである。

しかし・・・先に眠ったフリのヒラマサ。

(あなたの・・・心の壁の中に・・・入れてくれますか)

みくりは・・・おそるおそるヒラマサの背中に手を伸ばす。

しかし・・・ベッドから出たヒラマサは耳栓とアイマスク着用で畳の上で丸くなる。

プロの独身としての完全防御姿勢である。

みくりの小賢しい誘惑は・・・童貞の前に敗れ去ったのだった。

その頃・・・沼田の行きつけのバーのマスター・山さん(古舘寛治)は恋を語る。

「片思いでもいい・・・一方通行でもいい・・・最初はそう思う・・・相手にあわせよう・・・相手の願いを叶えよう・・・最初は我慢する・・・けれどいつか・・・自分だけが・・・自分ばかりが・・・そういう思いが積りに積り・・・恋は破局するのです」

「・・・仕事の話をしてたのに」と百合ちゃん。

「まあまあ・・・」と沼田。

そこに現れた風見に「二人のラブラブ新婚旅行ショット」を見せつける百合ちゃん。

百合ちゃんは予想外にショックを受けた風見にショックを受けるのだった。

「本気だったの」

「わかりません」

「なんじゃそれは・・・」

新婚旅行にみせかけた社員旅行の夜明けが来た。

「あたらしい 下着むなしい 秋のあさ」

洗面所の鏡に発句するみくりだった。

温泉旅館で同衾したのに何もなかったことが・・・みくりの乙女心を傷つけていたのだった。

相手がヒラマサだったとしても・・・。

愛しているからだ。

いつになく不機嫌になるみくりである。

朝食バイキングで遭遇するカヲルくん。

「すげえ久しぶりじゃん」

「どなたですか」

「高校の同級生です」

「みくりの元カレで~す」

「それは今言うこと・・・」

「どうぞ・・・ごゆっくり」

旧交を温めてくださいモードで席を立つヒラマサ。

(何か言って欲しかったな)

「あれ・・・怒らせちゃったかな」と気遣いを見せるリリカ。

しかし・・・みくりのようにカヲルちゃんを責めたりはしないのだ。

「お前・・・男の趣味変わったな」

「いいえ・・・気がついたの」

自分がどういう男性を求めているかを。

理想の男性であるヒラマサに出会うことで。

愛しているのだが・・・愛されないみくりだった。

辛抱たまらん旅の終わり

進行方向に向って並ぶ二人。

三島駅に着いたら・・・新婚旅行モードも終わりである。

みくりの気分は沈む。

(手をつなぎたいと言ったら・・・つないでくれるだろう・・・でもそれじゃあ嫌なのだ)

(結婚したい)と告白した。

(ハグをしたい)と告白した。

(一緒にお風呂に入りましょう)と告白した。

いろいろと小賢しい理由をつけて・・・冗談にして・・・。

告白するのは私一人・・・あの人が告白することはない。

みくりが気付いてしまった・・・幸せ芝居の舞台裏である。

(疲れちゃったな・・・)

ヒラマサからは見えない左目で涙をこぼすみくりだった。

器用すぎる。

みくりには見えていないがヒラマサは微笑む。

(疲れたけど・・・楽しかったな)

(彼から何か言われても・・・苛立たしくなかったな・・・だって・・・僕は彼の知らないみくりさんを知っているもの・・・その優しさを・・・その温もりを)

(素晴らしいみくりさんを)

すれ違う二人を乗せて列車は走る。

(あと一駅で着いてしまう・・・列車を降りたら・・・いつものように振る舞おう)

(あと一駅で着いてしまう・・・永遠に旅が続けばいいのになあ)

しかし・・・終着駅に到着する伊豆箱根鉄道の車両である。

停車の揺れが二人を揺らす。

みくりは笑顔を繕う。

「降りましょう」

しかし・・・ヒラマサの辛抱はもはや限界だった。

ヒラマサはみくりの手を握り・・・みくりの唇に自分の唇を重ねる。

衝撃に揺れるお茶の間。

珍しくもありありふれてもいる恋の奇跡。

開国してからが本当の幕末なのだ。

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2016年11月15日 (火)

ないものをねだるひとのこころはかなりおかしなことになっています(山田涼介)

人は時々、完全なものを求める。

たとえばテストで百点満点をとること。

たとえばオリンピックで金メダルをとること。

たとえば理想の恋人と結婚すること。

たとえば神になること。

しかし、寿命がある以上、百点満点を取り続けることも、金メダルを取り続けることも、結婚し続けることも不可能なのである。

「理性」はそれに気がつくことができる。

気がつけば・・・不完全であることに対応が可能である。

たとえば・・・達成することが不可能とわかっていても・・・極限まで目標にむかって努力する姿勢もそのひとつだ。

もし・・・目標に達しなくても・・・そこには受け入れの余地がある。

けれど・・・あくまで完全を求めるものには・・・不完全であることは受け入れ難い。

ないものねだりを続ける人間はやがて世界に激怒し世界を憎悪することになる。

完全なる神は・・・そういう人間も受け入れる。

「カインとアベル」は兄弟の葛藤の物語ではない。

唯一無二の絶対神と人間の心のふれあいの話なのである。

で、『カインとアベル・第5回』(フジテレビ20161114PM9~)脚本・山崎宇子、演出・洞功二を見た。原案を「旧約聖書 創世記 カインとアベル」とする物語は多い。たとえば「日本史」の「徳川三代家光と忠長」は「カインとアベル」が原作であると言える。江戸幕府の初代征夷代将軍となった徳川家康は東照大権現という「神」となった。二代秀忠は父親の管理下で実直に責任を果たす。そして、三代家光は両親に愛された弟の忠長を自害させるのである。恐ろしいほど忠実な「カインとアベル」の再現なのである。歴史は繰り返すのだ。今回、脚本家が変わっているが「カインとアベル」をやる限り・・・誰が書いても本質的には同じなのである。

17世紀のオランダの哲学者スピノザは忠長が自害する二年前に生れている。

スピノザは問題を根源に遡って考察する。

「カインとアベル」は愛を乞う者の物語である。

「聖書」はその根源を神による天地創造と人間の創出。そして人間の神に対する不服従という罪。それでも変わらぬ神の慈愛を説くという一点に収縮する。

罪を犯した人間が・・・再び過ちを犯すのが・・・愛を求めすぎた結果だというところが愛らしいのである。

・・・主はアベルとその供え物とを顧みられた。

しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。

そこで主はカインに言われた・・・「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」・・・と。

高田総合地所株式会社の後継者として育成された長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)は父親である社長の高田貴行(高嶋政伸)の期待に応えるために抑圧的な人生を歩んできた。

タイ国におけるデペロッパー「BDC」との合併事業のための資金調達に躓き、絶望の淵に立たされた隆一は・・・突然、現れた海外在住の投資家・黒沢幸助(竹中直人)によって窮地を脱した。

自分が神に祝福された特別な人間であると確信し高揚した隆一に・・・危惧を感じた婚約者の矢作梓(倉科カナ)は「あなたを救ったのは弟の優くん」だと告げる。

隆一にとって次男の高田優(山田涼介)は「父親の期待に応えられない不具者」であり・・・隆一の優越性を維持するための精神的支柱であった。

「心の柱」を砕かれた隆一は・・・現実に存在する優を殴り倒さずにはいられなかった。

隆一の心が誰の目にも映らない以上・・・優に痛みを伝えずにはいられない。

優が隆一を優越することはあってはならないことなのである・・・隆一にとっては。

「俺に・・・恩を売ったつもりか」

「兄貴・・・」

殴られ階段から転げ落ちた優を見下ろし・・・隆一は自分の優越性を回復する。

隆一の目には・・・不甲斐ないがゆえに愛すべき弟が・・・得体の知れない怪物として認識されたのである。

優は一瞬、戸惑った。

しかし・・・不都合なことをし続けた弟は・・・そういうことには慣れていたのである。

翌朝・・・弟は兄に詫びる。

「余計なことをしてすみません」

「・・・」

兄は恐ろしい存在と化した弟から目を背ける。

息子である貴行に会社の経営を任せた高田宗一郎会長(寺尾聰=大河ドラマ「軍師官兵衛」の徳川家康である)は創業者として教育的指導をする。

「バンコクの件はどうなった」

「危機的状況でしたが・・・隆一の判断でリスクを回避することができました」

「リスクか・・・転ばぬ先の杖というが・・・時にはリスクに挑むのも経営者としては必要なことだ」

「お言葉ですが・・・社員の生活を預かっている人間は・・・リスクを最小限に抑えるのが理にかなっています」

「だが・・・ノーリスク、ノーリターンだぞ」

「・・・」

「リスクを惧れていては拡大再生産は不可能なのだ」

「そして東京電力の二の舞ですか」

「競争力を維持するためにはやむを得ないのだ」

そこに隆一がやってくる。

会長は隆一に尋ねた。

「融資を受ける決断を何故したのかね」

「リスクを避ける最善の策と判断したためです」

「それがリスクとならない保証はないがな」

会長は祖父として孫に微笑みかけた。

「・・・」

融資を可能にしたのが自分ではなく優であることが・・・隆一の心を揺らし続ける。

顔に痣を作り出社した優に柴田ひかり(山崎紘菜)は驚く。

「どうしたの」

「自転車で転んだ」

ひかりはあまり詮索はせずにわざとらしいほどのドジッ子ぶりを発揮しながら優に週末の映画鑑賞を持ちかける。

「映画か・・・いいね」

ひかりは昇天した。

しかし・・・梓は事情を察するのだった。

「彼に殴られたの」

「・・・」

「私が悪いのよ・・・彼にあなたのことを話してしまった」

「なるほど」

「でも・・・危機を救ったあなたの功績を隆一さんは知っておくべきだと思ったの」

弱肉強食と相互扶助の両立は可能だが・・・そのためには繊細なシステムが必要なのである。

梓はその点について思慮の欠けた直情性が認められる。

だからこそ・・・輝かしい面だけを向ける隆一に魅かれたわけである。

非常に危険なキャラクターだが・・・アベルが殺されるまで世界には女はイヴしかいないために・・・この世界の女性はすべてイヴ的な要素を持っている。

さらに言えば・・・性的差別の鈍化によって・・・高田兄弟は・・・あたかも高田姉妹のようでもある。

ここから隆一は・・・優秀だが醜い姉となり・・・馬鹿だが美しい妹を嫉妬しまくる感じになっていきます。

貴行のもとへ姉である自由奔放な女・桃子(南果歩)がやってくる。

「たった五分で彼から融資を引きだすなんて・・・優ったら人たらしよね」

「優?」

「あら・・・知らないの・・・百億円の件・・・」

「・・・」

貴行は事情を知り・・・優に対する評価を変えるのである。

優は貴行が受け継がなかった宗一郎の直感力を持っているのかもしれない。

自分の論理性を受け継いだ隆一とは違う可能性を・・・貴行は次男に見出したのだった。

父親から見れば・・・息子に平等に注ぐ愛であるが・・・息子から見れば相対的に愛が薄まると感じることには・・・思いが及ばない貴行である。

貴行にとって桃子は問題外の存在であり・・・宗一郎の継承者は唯一無二の自分であったのである。

貴行は自分の所有物が倍増した気分になった。

優は呼び出され・・・ビジネス目的の会食を命じられる。

貴行は優の服装をチェックし・・・自分の見立てによってドレスアップさせるのだった。

父親と弟が行動を共にしていることに・・・心が騒ぐ貴行。

融資の実状を父親に知られることは・・・兄の優位性を揺らがせる一大事なのである。

(お父さん・・・あなたは私に厳しく・・・優には甘い)

「どちらへ・・・」

「会食に優を連れて行こうと思ってな」

「優を・・・相手はどなたですか」

「なに・・・大した相手じゃないよ」

「・・・」

桃子は梓の職場を急襲する。

桃子が会長令嬢と知る社員は多くないのである。

受付嬢が知らないほどなのだ。

「あなたと話してみたくなったの」

「結婚の件はまだ職場では・・・」

「あらそう・・・」

「日本なので」

「社長夫人になるのは大変よ・・・」

「・・・」

「優は・・・私や父に似て・・・ざっくばらんだけど・・・隆一は張り切っているからねえ」

「・・・」

「昔は繊細な子だったけど・・・英才教育でネジを巻かれ過ぎていつかポッキリ折れちゃうかも」

「・・・」

「あなたが・・・支えてやって欲しいの・・・可愛い甥っこだから」

「はい」

隆一は梓と待ち合わせしていた。

「フランソワ・ジュベールで・・・レストラン・ウェディングを考えている」

「素敵だわ」

「俺たちの結婚式は・・・二人だけのものではない・・・会社にとっての大切なセレモニーでもふるんだ」

「・・・」

「週末には教会を下見したい」

「週末に・・・」

「問題があるかい」

「いえ」

性急な態度の隆一に不安を感じる梓。

隆一からは何か恐ろしいものがあふれ出す気配があった。

隆一がエリートとして振る舞い続けたことにより・・・彼の器には何かよくないものが鬱積していると・・・梓は勘づいている。

しかし・・・イヴである梓は・・・それをなだめる努力よりも・・・ひっくり返して中身を確かめたい好奇心が渦巻いているのである。

会食相手に「高田の御曹司」として紹介され・・・戸惑う優。

しかし・・・人たらしの能力を開花させ・・・場は和む。

「バックパッカーとしての旅行中に財布を紛失し・・・困り果て道端で座ったまま・・・眠りこんでしまったのです・・・目が覚めると目の前にお金がたんまり・・・どうやら瞑想中の僧侶と間違えられてしまったようです」

リゾートホテルの経営者である米国人に気に入られる優なのである。

会食後・・・貴行は社長命令を優に伝える。

「米国の高級リゾート経営企業・・・Draymond Hotel & Resort・・・が日本に進出し、高田は業務提携することになる・・・このプロジェクトのリーダーをお前に任せる」

「え」

父の期待の籠った眼差しに・・・優は心が沸き立つのであった。

役員会で「リゾート開発事業のプロジェクト・リーダー」として脚光を浴びる優。

やんちゃな金髪は・・・黒く染まっていた。

父親が自分に何の相談もなく・・・弟を抜擢したことに我を失う兄。

副社長としてそれらしく振る舞うこともおぼつかないのである。

隆一は貴行に直訴する。

「優には荷が重すぎる・・・私におまかせください」

「お前は海外事業プロジェクトに専念しろ・・・仕事を抱え過ぎるな」

「少なくとも・・・優を私の管轄下におかせてください」

「リゾート開発プロジェクトは優にまかせる・・・これは決定事項だ。お前には結婚式の準備もあるからな」

「・・・」

(後継者として・・・すべてを任せるとおっしゃったではないですか・・・兄の私と同じように弟を愛するというのですか・・・あなたは私だけを愛するべきなのではありませんか)

父親の意向に従うことで・・・父親の愛を独占したいと願っていた隆一の希望は打ち砕かれたのだった。

優はプロジェクト・チームのリーダーとして・・・梓を抜擢した。

「梓さんとなら・・・事業を成功させることが出来る気がします」

「うれしいわ・・・」

「受けてくれますか」

「もちろん・・・」

その他に・・・営業部 5課の安藤(西村元貴)や三沢(戸塚純貴)が抜擢される。

お友達枠かっ。

ひかりは選んでもらえないのか。

それより・・・営業部 5課は・・・佐々木課長(日野陽)とひかりだけでやっていくのか・・・。

「いやあ・・・御曹司をヨイショし続けた成果があったなあ」

「まったくだよなあ」

営業本部長に昇格した団衛(木下ほうか)も祝福する。

「さすが・・・御曹司・・・いつかやってくれると思ってました」

韓国なみのコネクション企業である。

コンプライアンス的に問題あるよね。

ひかりは・・・週末のデートを自主的にキャンセルするのだった。

小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)はひかりの将来を案じるのだった。

しかし・・・お節介はやかないのである・・・イヴは・・・そこまで思慮深くはないのである。

何度も言うが・・・「カインとアベル」の世界にはアベルが死ぬまで・・・女はイヴしかいないのだ。

イヴは・・・人間に嫉妬し、神に反逆した堕天使が化身した蛇に唆され禁断の果実を食べてしまうダメ人間なのである。

そして嫉妬こそが永遠に連鎖する悪魔の罠なのである。

優は・・・新しい仕事の世界に夢中になった。

教会のステンドグラスに描かれるアダムとイヴ・・・そしてカインとアベル。

それを「兄弟の不和」として捉えては主題を見失う。

「兄弟が殺し合うほど大切な神への愛」の話なのである。

「結婚したら・・・家庭に入って欲しい」

「でも・・・優くんのプロジェクトチームに選出されて・・・やりがいを感じているの」

「僕との結婚か・・・プロジェクトチームかじゃない・・・僕より優を選ぶのかどうかだ」

「隆一さん」

「・・・」

ついに・・・精神が破綻し・・・狂気をのぞかせ始める隆一。

隆一は・・・神になろうとしていた。

もちろん・・・人間は神にはなれない。

不可能を追及するものは・・・狂うしかないのである。

梓は混乱した。

その足は・・・優を求め会社へと向う。

自由で・・・純情で扱いやすい・・・年下の男の子。

優は・・・残業中であった。

その背中にそこそこの巨乳を押しつける梓。

「どうしたの・・・兄と何かあったの」

「わからない」

「どうして・・・僕のところに・・・」

「わからない」

都合の悪いことは語らないのもイヴの性分である。

清廉潔白なアダムを罪に導いたのもイヴなのだ。

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2016年11月14日 (月)

高砂やこの浦舟に帆を上げて大海原を血の色に染め(長澤まさみ)

ヒロイン・高梨内記の娘きり(長澤まさみ)が帰って来た。

史実的には・・・真田信繫の残り寿命も僅かであり・・・きりの女盛りもかなり過ぎているわけである。

一説によれば・・・高梨内記の娘の産んだ阿梅は慶長四年(1599年)生れであり、大坂・冬の陣では数えで十六才になっている。

大坂城内で仙台藩の家臣・片倉重長に乱どりされて後妻となる実在性の高い人物である。

ドラマでは大谷吉継の娘とされる正室の春が阿梅を生んだことになっている。

春は藤堂高虎の陣中にあった蒲生郷喜の正室となるあくり、長男の真田大助幸昌、片倉重長の郎党である片倉(田村)定広の正室となる阿昌蒲、茶人の石川貞清の養女となるおかね、次男で片倉守信を名乗る仙台真田家の始祖大八などを生んでいるとされる。

戦後、未亡人となった春は竹林院を名乗り、石川貞清家に身を寄せる。

石川貞清の正室は大谷吉継の妹という説があり・・・春は叔母の夫の元に身を寄せ、おかねを貞清の嫡男・重正に嫁がせたということになるが・・・実際は・・・竹林院が・・・貞清の後妻になったのかもしれない。

戦国時代にはよくあることである。

阿梅とともに仙台伊達藩には阿昌蒲、片倉守信も身を寄せているわけで竹林院の菩提を弔っていることから・・・阿梅の母も竹林院という説もあるわけである。

高梨内記の娘の消息は不明なのだった。

ドラマでは女商人となった豊臣秀次の娘は大奥の女中となり、佐竹義重の四男・岩城宣隆の継室となり、出羽亀田藩第三代藩主となる岩城重隆を生むなほを生んでいる。さらに信繫の死亡時、豊臣秀次の娘は妊娠中で信繫の死後に三男にあたる三好幸信を京都で生んでいる。幸信はなほに引きとられ亀田藩士となった。

豊臣秀次の娘も消息不明なのだった。

この他に信繫が農家の娘に産ませた娘もいたと言われるが・・・大河ドラマでは主人公が側室たちに子供を産ませまくることは・・・何故か秘事とされるのだった。

まあ・・・省略は虚構の基本と言う他はないわけである。

今回は冬の陣、前哨戦での鴫野の戦いにおける上杉景勝の活躍は割愛されているわけである。上杉景勝はさらに今福の戦いで苦戦に陥った佐竹義宣を救援しているのだった。

後藤又兵衛を狙撃したのは上杉勢だった可能性もあるわけである。

しかし・・・このドラマの主役はあくまで真田信繫なのである。

信繫を景勝が褒めないで誰が褒めるという話なのだった。

で、『真田丸・第45回(NHK総合20161113M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・田中正を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は迫真の日本一の兵(つわもの)真田左衛門佐幸村の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。防衛戦では無敵の真田幸村キターッでございました。第一次上田城、第二次上田城、そして真田丸と籠城させたら日本一でございますよねえ・・・。まさに二度あることは三度あるでございました。徳川相手に三戦三勝・・・このまま・・・終われば・・・歴史は変わっていたわけですが・・・そうならないところが・・・歴史を学ぶ意義でございます。しかし・・・敗者がこれほどまでに愛されるというのは・・・日本人の民族的な気質に関係しているのかもしれません。義経、信繫、新撰組・・・みんな敗れて愛されるわけです。まあ・・・勝負ということでは・・・敗者の方が常に多数派ということなのかもしれません。信繫の側室問題に関してはやはり日和見を感じさせる今年の大河ですが・・・その分は信之が頑張っているし、殺して殺しまくってこその戦国武将ということでは真田丸における前田兵、井伊兵の大量虐殺によって・・・達成感がございますな。真田丸の辺りは学校になっていて・・・そこに多数の死体が横たわっていたと考えれば夏の肝試し大会が盛り上がること間違いなしでございますよねえ・・・そこかっ。

Sanada45 慶長十九年 (1614年)十一月十九日、徳川家康のひ孫を正室とする蜂須賀至鎮は家康の孫である池田忠雄とともに守将・明石全登不在の木津川口の砦を急襲しこれを奪取する。二十六日、上杉景勝は斉藤道三の孫である井上頼次の守る大坂城東方の鴫野の砦を急襲し、これを奪取する。上杉勢は反撃を目論む大野治長も撃退する。佐竹義宣は大和川を挟んで鴫野の対岸にある今福の砦を攻撃。江戸重通の孫である戸村義国が守将の矢野正倫を討ち取るが、木村重成、後藤基次の増援に苦戦に陥る。鴫野の砦を攻略した上杉勢は対岸から木村、後藤勢を射撃し、これを撃退する。二十八日、天満川と木津川の合流点に停泊中の大野治胤指揮下の水軍を九鬼守隆らの徳川方水軍が急襲し、これを撃滅する。大坂城北方水域は無防備となる。二十九日、譜代大名の石川忠総と外様大名の蜂須賀至鎮は南北から博労淵の砦を挟撃。守将の薄田兼相は不在で副将の平子正貞は討ち死に。木津川口と博労淵の砦を失い、大坂城の西方は封鎖された。大坂城南方を残し、包囲網を縮めた家康は十二月二日、完成した茶臼山城に本陣を移す。三日、南条元忠の幕府軍に内通が発覚、元忠は切腹。四日、真田丸前面の篠山に籠る真田幸村配下の鉄砲隊を奇襲した前田利光は撤退する真田勢を追撃し、真田丸に殺到する。前田勢に釣られて隣接する松平忠直と井伊直孝は前進し、無防備な側面を真田丸に晒す。真田丸から真田幸村が前田勢、松平勢、井伊勢に猛射を浴びせ千人を射殺する。前田勢二万は半数近くが負傷し撤退。松平勢と井伊勢も戦力を半減させた。家康は井伊直孝の勇猛さを讃え、松平忠直の軍律違反を叱責した。譜代衆に優しく、一門衆に厳しくするのが家康のセオリーである。

前田利光の異母兄であり、養父でもある前田利長は慶長十九年の五月に病没している。

梅毒であったという。

利長は慶長十年(1605年)に隠居し利光に家督を相続させているが・・・若年の利光を陰から支えていた。

利光は後援者を失ってすぐに大坂の陣となったのである。

利光の正室は将軍秀忠の次女・珠姫ですでに一女を出産している。

外様である上杉景勝や蜂須賀至鎮が手柄をあげ・・・利光の中に焦りが生じていた。

利光は数えで二十一才・・・家老の本多政重が側に仕えている。

本多政重は本多正信の次男であり、忍びの者である。

「城中の織田頼長(有楽斎の次男)より忍び矢が届きました・・・真田勢は篠山に鉄砲衆を忍ばせているというこどでございます」

織田頼長は利長の生存中から前田勢と密約を結んだ間者である。

「どうする」

「夜襲をかけて篠山を奪いましょう」

「よきにはからえ」

家康は南方戦線を塹壕戦と考えていた。

塹壕を掘り進め・・・包囲の輪を押し進める作戦である。

篠山の伏兵は・・・真田丸前面に塹壕を掘る前田勢にとって障害となる。

前田勢は篠山奪取のために夜陰に乗じて進軍を開始する。

しかし・・・真田忍軍は・・・大坂城の間者たちの動向の一部をすでに掴んでいる。

淀殿の伯父である織田有楽斎が藤堂高虎と連絡をとり、織田頼長が本多正信に通じていることは幸村に報告されている。

真田佐助は天耳通で・・・前田陣の動きに耳を澄ませていた。

「前田勢が動きだしましたぞ」

「才蔵に仕掛けさせろ」

「は」

才蔵は鉄砲衆とともに篠原にいる。伝心の術で才蔵に前田勢の接近を伝える。

「心得た」

才蔵は篠山に隠された地下道の入り口から鉄砲衆を退避させると・・・霧隠れの法術を開始する。

篠をかき分けて前進する前田勢の先鋒部隊は・・・敵兵が撤退する足音を聞いた。

「おう・・・城方のものどもが・・・逃げて失せるぞ」

「逃がすな・・・追え」

先鋒部隊が夜の闇を進んでいくために・・・前田勢は竹盾などの装備も持たず全体が前進を開始する。

夜明けがやってきたが・・・敵影は見えない。

周囲は濃い朝霧に覆われていた。

視界不良のまま前田勢は全体が前へ前へと進んでいく。

前田勢が抜け駆けをしていると知り、隣の井伊勢、さらに隣の松平勢も駆けだしていた。

その隣の藤堂勢は忍びのものが前進を制御する。

突然、霧が晴れ・・・前田勢はそびえ立つ崖下にいることに仰天する。

「放てえええええ」

谷に銃声が木魂する。

阿鼻叫喚の地獄である。

進むことも退くこともできず前田勢は一網打尽となった。

藤堂高虎は虐殺される味方の姿を遠望する。

「真田の小倅め・・・なかなかにやりよるの」

高虎は間者の動きが露見していることをすでに看破していた。

高虎の忍びは真田丸にも忍んでいるのだ。

そのさらに西側に位置する伊達政宗は嫡男の秀宗をふりかえる。

「見ものじゃのう」

「救援に向わないでよろしいのですか」

「馬鹿を申すな・・・前田勢は関ヶ原で手柄を立て損なったからの・・・少しは人死にを出さねば面目が立たぬのよ・・・こちらはそんな義理立ては必要ない・・・背後の大御所をお守りすればそれで十分だわ」

夕刻が近付き・・・風向きが変わり周囲に血の匂いが漂いだしていた。

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2016年11月13日 (日)

愛の暮らしが冥途の土産(武井咲)

昭和元禄と呼ばれた時代があった。

元禄年間(1688~1707年)は・・・戦国時代の記憶は完全に薄れ・・・豊かな時代だったのである。

そこに文化が花開いた。

昭和も1960年代の高度成長期に・・・焼土と化した戦後の空気は薄れ・・・元禄時代のような文化が花開いたわけである。

平成のオタク文化は・・・昭和元禄の文化とは無縁ではない。

「平和ボケ」と言う言葉が・・・「幸福」の代名詞であることは言うまでもない。

「戦争がない」ということは・・・「殺し合わなくても生きていける」ということである。

だが・・・そういう時代がいつまでも続くとは限らないのである。

むしろ・・・いつまでも続かないのが普通なのだ。

「となりの芝生はいつも緑」である。

貧富の差が拡大するのは・・・グローバリゼーションによって・・・他国の貧困が流入してくるからだ・・・と考える人がいる。

もちろん・・・それは間違っていないわけだが・・・同時に・・・富も流入してくるわけである。

その分配を平等にするのが正しいのか・・・自由にするのが正しいのか。

それとも・・・そういうことに拘らずに「浮世」を楽しむことが正しいのか。

元禄忠臣蔵は・・・常に問いかけてくる歴史の物語である。

「仇討ち」に気をとられていれば・・・「物語」の本質を見失うのである。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第8回』(NHK総合201611121810~)原作・諸田玲子、脚本・塩田千種、演出・伊勢田雅也を見た。元禄十四年(1701年)十一月・・・実家である備後国三次(みよし)藩の江戸屋敷(赤坂)に隠遁する瑤泉院(田中麗奈)の耳となった侍女・きよ(武井咲)は・・・大石内蔵助(石丸幹二)と遭遇する。浅野大学によるお家再興運動をしつつ・・・吉良上野介義央(伊武雅刀)に対する報復を計画する赤穂浪士を統率する・・・大石内蔵助は・・・危うい綱渡りをしている。

「これからも瑤泉院様を支えてくれ」

「承りましてございます」

きよは・・・深々と頭を下げた。

きよは・・・ただ側用人・礒貝十郎左衛門正久(福士誠治)と愛の暮らしを営みたかったのである。

だが・・・それはもはや・・・「夢」となったのだ。

十郎左衛門は「死を覚悟」した赤穂浪士だった。

親の決めた許嫁を断るために・・・瑤泉院への奉公を続け・・・漸く手に入れた十郎左衛門とのかりそめの新婚生活も・・・「時」が来れば終わる定めである。

十二月十三日・・・吉良上野介が願い出ていた隠居の願いが幕府に受け入れられたのである。

吉良家の当主は・・・養子である吉良義周となってしまった。

吉良上野介の正室は出羽国米沢藩の第三代藩主・上杉綱勝の妹・富子である。

綱勝と富子は初代藩主・景勝の孫にあたる。

寛文四年(1664年)に上杉綱勝が嗣子がないまま死去したために・・・吉良上野介と富子の嫡男・綱憲が米沢藩の第四代藩主となる。

つまり・・・吉良家から上杉家に養子を出したのである。

吉良義周は上杉綱憲の子で・・・上野介の孫にあたる。

今度は吉良家に嗣子がなく上杉家から養子をもらった形になる。

義周は貞享三年(1686年)生れなので数えで十六歳で家督を継いだことになる。

赤穂浪士が惧れたのは・・・引退した上野介が・・・実子が藩主である米沢藩に身を置いてしまうことであった。

そうなれば・・・仇討ちは困難なものになってしまう。

木屋孫三郎(藤木孝)が後ろ盾となり江戸・芝の源助町にきよと兄妹で酒屋を営む内藤と名を変えた十郎左衛門・・・。

そこに・・・堀部安兵衛(佐藤隆太)がやってくる。

「何・・・吉良が隠居だと・・・」

十郎左衛門も顔色を変える。

そこに・・・安兵衛の妻・ほり(陽月華)が高田郡兵衛(竹井亮介)からの文を携えてやってくる。

高田郡兵衛は伯父にあたる旗本・内田元知から養子になるようにとの申し出を受け・・・断り切れずに「仇討ちの義盟」から脱したのである。

「おそらく・・・仇討ちの一件を・・・表沙汰にしないためであろう」

安兵衛は・・・槍の達人である郡兵衛の心情を推量した。

小石川無量院の仙桂尼(三田佳子)を訪ねたきよは・・・村松三太夫(中尾明慶)が仇討ちに参加する意向であることを話す。

「そなた・・・面変わりしましたね・・・大人びたようじゃ」

貞享ニ年(1685年)生れのきよは数えで十七才になっている。

十郎左衛門という男を知ったことを見抜かれたようでうろたえるきよだった。

「孫三郎殿は・・・吉良のお屋敷の奉公の口をそなたに世話をしてもよいと申すが」

「吉良様のお屋敷に・・・」

「できれば・・・そなたには仇討ちとは無縁でいてもらいたい」

「しかし・・・仇討ちをしなければ・・・殿様の無念が晴れませぬ・・・」

仙桂尼はきよの言葉を吟味するような面持ちであった。

無量院からの帰り・・・きよは・・・編み笠を深くかぶった小柄な武士に尾行される。

きよは恐怖を感じ・・・堀内道場の四天王の一人・・・浪人の佐藤條右衛門(皆川猿時)に助けを求める。

「吉良の養子の実家は・・・上杉家・・・赤穂浪士の様子を探る軒猿か・・・あるいは公儀の隠密同心かもしれぬな・・・案外・・・きよ殿の美貌に懸想した若侍かもしれんが・・・」

明らかに・・・村松三太夫だったな。

「それにしても・・・赤穂の方々は・・・主君の仇討ちという目的があってうらやましい・・・わしは・・・仕官も叶わず・・・腹をすかしているばかりだ・・・」

「おじさま・・・」

主家を持たぬ男の身は憐れだった。

きよの・・・かりそめの夫も・・・同じ身の上なのである。

その頃・・・源助町の長屋には・・・村松三太夫が訪れていた。

「こちらに・・・きよ殿が・・・おられるとか」

「探索の手伝いをしてもらっておる」

「それがし・・・きよ殿の許嫁でござった」

「・・・」

「もはや・・・それもかなわぬこと・・・こちらに居候させてもらえないでしょうか」

「なんと」

「私も・・・討ち入りのお手伝いをしたいのです」

「・・・」

十郎左衛門の後ろめたさはマックスに達した。

戻って来たきよに・・・三太夫の申し出を伝える十郎左衛門。

「受け入れようと思う」

「そんな・・・私は・・・」

「時が来たのだ」

「いやでございます」

「ならぬ」

「・・・」

「・・・初めて・・・喧嘩をしたのう・・・」

「・・・」

「今宵が最期じゃ」

「夕餉は・・・御馳走を整えます」

「明日は・・・行ってもらいたいところがある」

「・・・」

激しい一夜の描写はなかった。

きよは・・・十郎左衛門の母親・貞柳尼(風祭ゆき)が身を寄せる・・・松平家御長屋を訪ねた。

十郎左衛門の兄は萬右衛門正輝は旗本・松平与右衛門の家中である内藤家の養子となっており・・・貞柳尼はそこに身を寄せていたのである。

貞柳尼は息子の妻であるみえ(三輪ひとみ)の世話を受けている。

病床にあったのだった。

「このこと・・・十郎左衛門には内緒にしておくれ」

「・・・」

「そなたのことは・・・十郎左衛門から聞いておる・・・きよ殿・・・そなたの行く末が憂きことばかりでないことを祈っておりますぞ」

「ありがとうございます」

「この品々は・・・亡き殿様から・・・息子がいただいたもの・・・どうか・・・費えの足しにしてくだされ」

「母上様・・・」

十郎左衛門は・・・亡き藩主・浅野長矩に寵愛され・・・恩義を受けていた。

それを・・・返さなければならない・・・武士の一分があるのだった。

一方・・・本所の吉良屋敷の様子を窺う十郎左衛門は・・・安兵衛に声をかけられる。

安兵衛は・・・吉良屋敷の近所に道場を構え・・・事に備えていた。

「これなら・・・吉良屋敷が一目瞭然ですね」

「しかし・・・こちらのことを知られてはまずい・・・きよ殿のこともあるしな」

「きよ殿が・・・いかがしたのです」

「知らぬのか・・・尾行の件」

話を聞いた十郎左衛門は・・・酒屋に走る。

きよは・・・すでに戻り・・・帳簿をつけていた。

「尾行の一件・・・何故隠した」

「・・・」

「知れば・・・私が案じて・・・そなたを実家に帰すと思ったか・・・」

「・・・」

「ああ・・・すべては・・・わかりきったこと・・・許せ」

「・・・」

きよは・・・十郎左衛門が自分の身を案じてくれたことがうれしかった。

しかし・・・十郎左衛門には・・・武士の忠義があるのだった。

「そなたとの・・・くらし・・・楽しかったぞ・・・よき冥途の土産話となるであろう」

「十郎左衛門様・・・」

戯れに買った夫婦茶碗を抱え・・・きよは・・・十郎左衛門を見つめた。

店の戸を閉じれば・・・別れである。

店を出たきよは・・・つかの間の愛の暮らしを振り返る。

平成なら・・・音楽教師と吹奏楽部の女子高校生との危険な恋である。

横恋慕して二人の恋すの邪魔をするのはきっと体育教師なんだな。

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2016年11月12日 (土)

毎度おなじみの一番大切なものを盗まれる勇者たち(山田孝之)

残りHPが1の盗賊Cを間宮祥太朗が演じていると思われるのだが・・・。

公式を確認すると・・・盗賊C(間宮健太郎)となっている。

誰だよ!

間宮祥太朗と言えば・・・脚本・演出・福田雄一の「ニーチェ先生」の主人公を演じているわけだが・・・。

まあ・・・その程度の役者なのだろう・・・あんまりじゃないか!

それともあれかな・・・ギャラとかの関係で別名出演なのか?

いや・・・クレジットは間宮祥太朗だったじゃないか。

キャラクター図鑑・・・楽しいのにな。

「秋元さんお願いします」「秋山だよっ」的なネタなのかもしれんけどな。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第6回』(テレビ東京201611120018~)脚本・演出・福田雄一を見た。恒例の前座コーナーの盗賊C(間宮祥太朗)はどこぞで戦闘してきた後らしく満身創痍である。勇者ヨシヒコ(山田孝之)を除く仲間たち・・・戦士ダンジョー(宅麻伸)、魔法使いのメレブ(ムロツヨシ )、村の女ムラサキ(木南晴夏)は盗賊Cを気遣って「出直してきた方がいい」と推奨する。メレブが怪しいコントローラー・パッドを操作すると・・・盗賊Cの残りヒットポイントは「1」しかないことが判明する。「ノコリイチコさん・・・やめとけば」と忠告する一同。問答無用で斬りかかった盗賊Cだがすっ転んで棺桶に入るのだった・・・。

「教会に連れていってあげましょう」

優しいヨシヒコである。

「結構、強かったから・・・お金かかるよ」

ムラサキは財布の中身を気にするのだった・・・。

仏(佐藤二朗)が登場する。

今回の仏は焼き肉屋で同僚とゴルフ談義をしている設定である。

ヨシヒコたちの指導者である仏が巨大組織の一員に過ぎないというアレなのである。

仏はカルビを食って煙モクモクで飯を食ってビールを飲んで酩酊するのだった。

「ウガスの村へ・・・グースカピー」

「寝るのかよっ」

ウガスの村は・・・盗賊の村だった。

「こういう玉を持っている人を捜しているのです」

ヨシヒコが村人(盗賊に)あっさりと玉を持ち逃げされる展開×2があって・・・盗賊の親分・カンダタ(高嶋政宏)が登場する。カンダタは「ドラゴンクエストIII そして伝説へ・・・」に登場するシャンパーニの塔の盗賊であり・・・シリーズを通じての定連悪役である。「蜘蛛の糸/芥川龍之介」に登場する泥棒のカンダタ(犍陀多)がルーツなのだろう。

カンダタは声が大きいが・・・義賊であり・・・ヨシヒコが「魔王」を倒すと聞いて・・・協力を申し出る。

「子分たちには・・・玉を返すように言うよ」

カンダタは・・・オレンジのオーブの持ち主だった。

カンダタは宝物倉に一同を案内するが・・・オーブはすでに盗まれていた。

カンダタは盗みの腕は一流だがガードは甘いのだった。

オーブを盗んだ犯人である女盗賊ローゼン(中村静香)が現れた!

ナイスボディーな女盗賊は仮面をつけているが・・・「家政夫のミタゾノ」から連続ゲスト出演で一部お茶の間を魅了するのだった。

ローゼンは「盗みの魔法」を会得していて・・・なんでも盗めるのである。

メレブは「魔法の杖」、ダンジョーは「もみあげ」、ムラサキは「バスト」を盗まれてしまう。

「ああ・・・胸をとられちゃった・・・どうしよう」

「元々・・・ムネタイラじゃないか」

ムラサキは公式によるとB80である。

「いただいていくよ」

ローゼンは去っていく。

「ヨシヒコは何も盗まれなかったの」

「はい」

「いいや・・・あなたは大切なものを盗まれていますぞ」

突然、現れた国際警察(インターポール)の銭形警部風の男(佐藤正和)は断言する。

「何を盗まれたというのです」

「彼女はあなたの心を盗んでいきました」

「そんなはずはありません」

否定するヨシヒコだったがムラサキは疑いの眼差しをを向けるのだった。

ヨシヒコの心が奪われた証拠をメレブが発見する。

激しく怒張するヨシヒコのモザイク的巨大な男根である。

ヨシヒコとムラサキもまた・・・巨根と貧乳のコンビだったのだ。

盗まれたものをとりかえすために村を出たヨシヒコたちだったが・・・全員が不調で魔物相手の戦闘にも苦戦してしまう。

囲炉裏端の一同である。

「ボインがなくなって肩がこらなくなった」

「・・・」

「呪文を覚えたよ」

「それは凄い」

「フタメガンテ」

固い瓶詰めのフタを命と引き換えに開けたくなる呪文である。

魔法の杖がなくてもヨシヒコには効くらしい。

身近に瓶詰めがないので苦悶するヨシヒコだった・・・。

ローゼンは何故かバスタオル一枚で登場する。

ヨシヒコは激しく勃起して・・・キャバクラの酔客のような血走った目でローゼンの虜になってしまうのだった。

「やはり・・・心を奪われていました」

「単に・・・女盗賊に惚れたんだろう」

「お前たちからも・・・もっと盗んでやるよ」

ダンジョーとムラサキはスキンヘッドに・・・メレブはウスラハゲにされてしまうのだった。

ヨシヒコを残して撤退する三人。

「結局・・・ハゲに対する親近感が・・・大統領選の勝因なのか・・・」

「あのズラをかぶれば誰でも大統領気分になれるものね」

三人の前に姿を見せるヨシヒコは・・・アルセーヌ・ルパンを祖父に持つ神出鬼没の大泥棒風になっていた。

「似てないぞ~」

「私はぱふぱふして気がついたのです」

「あ・・・このパターンは・・・」

「魔王などどうでもいい」

「聞いたことあるぞ・・・そのセリフ」

「ローゼンが世界中のボインを盗み・・・それを再配分すれば・・・ボインの平等が実現します」

「再配分したら・・・ボインではなくなるのでは・・・」

「世界中の女がボインになれば・・・男たちはみんなパフパフで満たされる」

「・・・」

「魔王を倒さなくても世界は平和になります」

「・・・」

「私はそのために泥棒になりました・・・魔王なんてもうどうでもいい」

凄腕の早撃ち拳銃使い次元大介風の男や・・・古の大泥棒石川五右衛門を先祖に持つ剣士13代目石川五ェ門風の男・・・そして権利を守るキャラクター風な映画泥棒と共に去っていくヨシヒコ。

「絶望だ・・・」とダンジョー。

「いや・・・大丈夫・・・明日・・・ヨシヒコは帰ってきます」とメレブ。

「なんでだよ」とムラサキ。

「私は昔の記憶を思い出したのです・・・あれは確か2011年の夏・・・『勇者ヨシヒコと魔王の城』の第6話のことです」

ヨシヒコは・・・ラムール村の診療所で働く可憐で巨乳な娘・リエン(中村静香)と恋に落ちたのだった。

しかし・・・リエンの正体は邪悪な魔法使いの魔法で姿を変えたハゲでメガネのおっさん(ト字たかお)だったのだ。

ローゼンの寝室・・・お馴染みの下着姿で登場するヨシヒコ三世・・・。

「ローゼンちゃんのためにお宝を盗んできたんだわ~・・・お約束のチューをいただきま~す」

「キスをすると魔法が・・・」

たちまち・・・ハゲでメガネのおっさん(橋沢進一)に変身するローゼン。

「ああああああああああああ」

11月11日に生放送された「~笑わせたもん勝ちトーナメント~KYO-ICHI」(フジテレビ系)で優勝したタイムマシーン3号のネタは「チビデブメガネの三重苦」という自虐的なものだったが・・・ハゲメガネネタには及ばないんだな。

自分で自分を貶めて笑いをとる・・・健気なことだ。

魔法が解けたヨシヒコは仲間のもとに戻るのだった。

「同じフォルムの女に・・・二度も騙されるなんて」とムラサキ。

「二度あることは三度あるというから・・・気をつけないとな」とダンジョー。

「それはブッキング的な話ですか」

「ヨシヒコはムネタイラが好きなのよ~」

「変な暗示はやめなさい・・・ムーネー・タイラー国務長官」

「タイラーは大統領でしょう」

ヨシヒコ一行を陰ながら追うヒサ(岡本あずさ)は自分の胸のサイズを確認する。

「兄さまは・・・ヒサの胸のために・・・でも泥棒なんてよくありません」

公式によれぱ岡本あずさのBサイズは非公開である。

あずさは変化の杖で二時間ドラマの女王風の和装の女(山村紅葉)に変身して兄を見守るのだった。

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2016年11月11日 (金)

面白くなくはない淡い三人の男(成海璃子)

世界でたった一人の米国大統領を選べるのは米国民だけである。

事前の各人の支持層を分析していけばある程度・・・接戦であることは予想ができた。

しかし・・・八年続いた民主党の大統領の後で民主党のしかも女性初の大統領が誕生することは難しかったことは最初から明らかである。

それなのになぜ・・・「衝撃」なのか・・・よくわからない。

マスメディアが信用できないことは米国民の方が身に沁みているのだろう。

彼女を勝たせようとしていると・・・彼らがが感じたら・・・彼を勝たせるための行動に出るわけだ。

我が国でも他国の大統領になるかもしれない人間をコメンテーターが酷評するのはまだしも・・・キャスターが一緒になって蔑むという公明世代な報道姿勢とは言えないテレビ番組が続いていた。

少しは恥を知るべきだろう。

少なくとも変なカツラの愛用者は彼の味方のはずだと推測するべきだ。

国益と国益が衝突するのは当然のことで・・・誰が大統領になろうが同じなのだ。

飼い犬に核武装を認める飼い主なんて・・・それはそれで面白いのである。

誰が大統領になろうが・・・世界はほとんど変わらない。

せめて・・・子供たちが給食を食べさせてもらえる国家でありますようにと願うしかない。

で、『黒い十人の女・第7回』(日本テレビ201611102359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・瑠東東一郎を見た。「黒」は無政府主義の象徴である。つまり・・・あらゆる権威に不服従ということである。容疑者がクロなら有罪なのだ。他人より自分の利益を常に優先するものの腹は黒いと言われる。当然のことだが・・・一夫一婦制度を無視して不倫をするものは黒いのである。他人の夫を奪う女は黒いが・・・その夫を許せば妻も黒い。そして黒い十人の女が誕生する。彼女たちが黒いのは喪服を着るからである。一番黒い男が生きていたのでは・・・黒から逃れることができないのだ。

東西テレビの月曜十時の新ドラマ「淡い三人の男」がオンエアされる。

風家の居間では・・・プロデューサー風松吉(船越英一郎)の妻・風睦(若村麻由美)が夫の作ったドラマを視聴する。

アイドル女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)が演じる「鳥出玲奈」は不倫を含めて三人の愛人を持つモデルである。

「モデルが恋人だというのは・・・優越感を刺激する」

不倫相手は・・・玲奈と波打ち際で戯れながら独白する。

志乃を演じる玲奈が玲奈を演じるわけである。

劇中劇というのは本編よりクオリティーが下がるのが普通だが・・・いつもの玲奈なんだな。

生れてはじめて面白い役を演じていることに少し戸惑っているようだ。

カフェのウエイトレスを演じる劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)は愛人たちの背後で存在をアピールする。

しかし・・・そういうことはすでに憐れなことなのである。

「実は私・・・夫がいるの」

「僕にも妻がいる」

「あなたの他にも愛人がいるの」

「僕もだ」

東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)は愛人仲間でアロママッサージ店勤務・文坂彩乃(佐野ひなこ)や友人の池上穂花(新田祐里子)と「淡い三人の男」を視聴する。

「面白そうじゃない」と池上穂花は言うが・・・。

「なんだかぬるい・・・」と久未は感想を述べる。

「もっと修羅場よね」と彩乃は痣を誇示する。

「不倫は戦争なのよ」と久未は実感を伴う結論を述べるのだった。

劇団仲間と視聴していた佳代は・・・自分の演技がほとんど編集でカットされたことに忸怩たる思いを抱くのだった。

「ボックスの映像特典で私の演技をもっと見ることができると思う」

佳代は嘯いた。

志乃はマネージャーの長谷川冴英(ちすん)とヘアメイクの水川夢(平山あや)と一緒にオンエアを視聴した。

「台本貰った時はもっと面白いと思ったのにね」

「あの時は・・・こんなことになるとは思わなかったから」

「普通の不倫をしていると思ったものねえ」

三人はみんな松吉の愛人だが・・・仲良しでもあった。

「なんで・・・こんなに仲良くなっちゃったのかしら」

「やはり・・・ババアがいたからじゃない」

「そうよねえ」

ババアとは東西テレビアソシエイトプロデューサー・弥上美羽(佐藤仁美)である。

松吉は愛人の一人であるアロママッサージ店経営者・卯野真衣(白羽ゆり)とデート中である。

「オンエア見なくていいの」

「編集室で飽きるほど見たよ」

「私と結婚してくれない?」

「それは無理だ」

「どうして?」

「だって僕には妻がいるし・・・君だって夫がいるだろう」

「不倫してたのがばれて離婚することになったの」

「え」

「安心して・・・相手があなたとはバレてないわ」

「そう」

「でも・・・あなたにも責任があるんだから」

「責任って・・・君は僕と結婚しようと思って付き合ったのかい」

「そうじゃないけど」

「僕には妻がいて・・・君には夫がいる・・・それを承知で付き合ったんじゃないか」

「そうだけど」

「だから・・・僕が君と結婚しないことに責任を感じる必要はないんじゃないかな」

「・・・」

松吉の正論に・・・殺意を覚える真衣だった。

愛人たちはみな・・・「いっそ死んでほしい」と思いながら・・・松吉と別れることはできないのだった。

「なぜなのかしら・・・」と志乃は紫煙を吐きながら呟く。

「煙草みたいなものじゃないかな・・・悪いのはわかっていて・・・何度も禁煙しようとするんだけど・・・どうしてもやめられないみたいな」

「不倫は・・・喫煙みたいなものか・・・」

世界から喫煙者がいなくなったら・・・ニコチンが弱点の宇宙人の侵略が始るわけだが。

嫌煙者はみんな宇宙人の手先なのである。

おいおいおい。

休憩時間・・・久未は同僚の我修院麗子(西崎あや)と雑談する。

「昨日・・・月10のドラマ見た」

「私・・・しゃべくり見ちゃった・・・ドラマは録画してあるけど」

「そうなんだ」

久未はふと気になって・・・素晴らしいインターネットの世界で「淡い三人の男」「初回」「視聴率」を検索してみた。

「・・・*4.6%」

関係者に「激震」が走っていた。

「木10のChefの*4.9%より低いのか」

「Chefだって初回は*8.0%ありましたよ」

「月10でいきなり・・・*4.6%なんて」

「こりゃ・・・テコイレしないと」

脚本家の皐山夏希(MEGUMI)は呼び出された・・・。

「展開早めのエロちょい足しで猫、温泉、幕末トッピングで」

「ラーメンかっ」

お姉さん(トリンドル玲奈)と変な動物(バカリズム)でEテレパロディーの挿入。

「視聴率が低いと大変だねえ」

「面白いから視聴率がとれるのではなくて視聴率がとれるから面白いので」

「やるせないねえ」

「特に中高年女性をゲットしないことにはにっちもさっちもブルドッグです」

「帝国か」

「そういう意味では美人を十人そろえたこのドラマもアレですよね」

「でも女は女が好きだろう」

「それは腐った人たちですから~」

とにかく・・・お姉さんは猫を抱き・・・変な動物はラーメンを食べるのだった。

志乃は・・・番組宣伝のためにバラエティーショー「楽屋で話しやがれ」に出演することになる。

担当プロデューサーが交際相手の浦上紀章(水上剣星)だったために・・・打合せでギクシャクする二人だった。

「あまり・・・ハードな話でなくていいですから」

(うわあ・・・不倫のこと意識していると思われるかなあ)

「そうですか」

(不倫のこと意識していると思われるかなあって思っていることを思われるかなあ)

いろいろと面倒な二人だった。

ブサイクな担当ディレクターは本音を叫ぶ。

「ああ・・・志乃ちゃんに愛される男はいいなあ・・・一夜だけでいいから抱けないかなあ・・・どんな男が抱いているのかなあ」

隣にいる男である。

こんなところにもヒラマサはいる。

ヒラマサファンに刺されるぞ。

失意の真衣を佳代が襲撃する。

初回の佳代を「松吉の妻」と思いこんだ久未のリフレインである。

カフェ「white」で彩乃と待ち合わせをしていた久未は「カフェオレぶっかけ事後」の佳代を発見する。

真衣は・・・「松吉の愛人が九人いる」と聞かされ衝撃を受ける。

経験者として真衣の心が手にとるようにわかる久未だった。

そこへ・・・彩乃が到着する。

「私の男に手を出したの」

「私の客をとられたのがくやしくて」

一触即発の事態だが・・・「不倫している時点で先も後もないから・・・」という佳代の「いつもの説得」で鎮静化されるのだった。

「また・・・お店に遊びに来なさいよ」

「はい」

(ドラマのエンディングみたいな感じじゃん)と久未は思うのだった。

親友に脳天逆落としを食らわせる凶暴さを秘めながら・・・修羅場の発生を小動物のように惧れる久未のキャラクター造形が抜群で笑えるのだ。

松吉争奪戦であると同時に女優たちの演技合戦になっているのだな。

そこへ・・・真空飛びひざ蹴りによってムチウチ症になってしまった弥上美羽が到着する。

たちまち・・・修羅場に突入である。

「やんのかこら」

「やんのかこら」

愛人たちは基本的に全員元ヤンである。

そこへ・・・お約束のバースデーケーキが登場。

真衣の誕生日をフェイスブックで調べた佳代だった。

こうして・・・佳代は・・・愛人全員の仲を取り持ったのだった。

松吉は重厚なドラマ風な感じで帰宅した。

「凄い視聴率だったみたいね」

「まいったよ」

「天罰ね」

「天罰?」

「十人の女を泣かせているくせに・・・不倫ドラマなんかつくって」

「・・・」

「クビになったら・・・養ってあげるわよ」

「ありがとう」

松吉は殺気を感じて・・・ナイフをさりげなく妻からもらいうける。

チーズを切ろうとして松吉は指を切った。

なんだかんだがあるらしいが・・・。

二週間後・・・坂本龍馬の在りし日の姿のようなポーズで・・・佳代は松吉の「死」を願う妻を含めた九人の女の前に立つ。

「薩長同盟の時ぜよ」

佳代は高知県出身者だった・・・。

高齢者対策のための幕末か・・・。

最近の高齢者は・・・幕末どころか・・・戦前のことでさえ覚束ないみたいだが・・・。

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2016年11月10日 (木)

IQ246~華麗なる事件簿~(織田裕二)無垢な奴ほどよく眠らされる(土屋太鳳)

水曜日の谷間である。

ミステリとしては下の下で・・・何の味わいもないネタドラマだが・・・とにかく・・・毎回、ヒロインの土屋太鳳が主人公に睡眠薬を「一服盛られて」昏睡させられるという変態場面だけが見せ場である。

相手の同意なしに薬物によって昏睡させることは傷害罪もしくは暴行罪にあたる。

相手を眠らせておいて色々なことをすることはさらに邪悪なことである。

少なくともそういう妄想は充分に出来るわけだ。

そういう「悪」を無自覚に描くことは・・・お茶の間にエンターティメントを届ける立場としては非常に危うい気がするが・・・キッドは悪魔なので面白ければ構わないとも思う。

美少女を眠らせる事は淫靡なことである。

そして・・・馬鹿だから毎回、同様の手口で眠らされてしまうヒロインは可愛いのである。

くりかえしのギャグとして・・・ギリギリセーフであってほしい。

一服盛られた自覚がないらしいヒロインだが・・・できれば「またやられたお」と言ってもらいたいものだ。

もちろん、これを実行する主人公には善悪の区別というものがない。

殺したければ殺すだろう。

母親ならば夜泣きをする赤ん坊に一服もるだろうし、男子学生ならば女子学生を酔わせて乱暴するわけである。

で、『IQ246〜華麗なる事件簿〜・第1~4回』(TBSテレビ20161016PM9~)脚本・泉澤陽子(他)、演出・木村ひさし(他)を見た。名探偵・シャーロック・ホームズを連想させる法門寺沙羅駆(織田裕二)とそのお目付け役として警視庁捜査一課から派遣され法門寺家護衛係の任務に就くワトソンを連想させる和藤奏子(土屋太鳳)が完全犯罪風の事件の謎を解く・・・という趣向である。警視庁としては素人に事件に介入されることに困惑を感じるのだが棚田警視総監(篠井英介)は黙認しているらしい。基本的にファンタジーであり・・・法門寺家は現代日本には存在しない特権を有する貴族的な家柄なのである。その辺りをもう少し強調しておいた方がいいぞ。なにしろ・・・趣味で犯罪捜査をしている一般市民の話だからな。

ワトソン子は・・・ドラえもんかくまのプーさんか眠気を覚えた香取慎吾のようなしゃべり方をする変人シャラクに「平民」と蔑まれ物置のような護衛係専用室に住み込みで常駐し・・・邪魔な時は美味しい料理、おやつ、ジュースなどに睡眠薬を盛られて昏睡してしまうのである。

かわいいぞ・・・疑うことを知らない警察官・・・かわいいぞ。

ここまで変人シャラクが・・・執事の賢正(ディーン・フジオカ)と共に解決した事件は・・・ふりかえれば奴がいる的なクリエイター(石黒賢)による自分より優秀な部下殺人事件、独善的な死刑執行人(佐藤隆太)の前科者殺人事件、セレブな人妻(観月ありさ)による夫殺人事件などお馴染みの犯人による月並な手口による完全犯罪風の犯行である。

お茶の間的には・・・IQ246の異能というものが・・・事件解決にどのように反映しているのか理解に苦しむ展開である。

まあ・・・脚本家のIQがそれほど高くないのは明白なので仕方がないことだ。

けれど・・・人を殺さなくても・・・天才外科医じゃなくても・・・物語を作るのが仕事じゃないのか?

まあね。

犯人たちには・・・モリアーティを連想させるマリア・Tからの犯罪を唆すメールが届いている。

マリア・Tは全世界を監視する神のような存在で・・・「13」を名乗るが・・・それはアルファベットの13番目の数字であるMを意味するらしい。

ちなみに・・・変人シャラクの妹は瞳(新川優愛)でひとみは・・・一と三である。

また・・・変人シャラクに懸想する死体愛好家の監察医・森本朋美(中谷美紀)のイニシャルはMである。

どちらかが・・・Mであるのが順当なところだろう。

毒々しい化粧が似合うのは監察医だろうが・・・。「沙粧妙子 - 帰還の挨拶 -」(1997年)の麻生萌子ふたたびか・・・二十年の歳月を無化する女優魂炸裂だな。

第4話は・・・脚本・栗本志津香、演出・坪井敏雄である。

愛人関係を思わせる音楽大学講師のピアニスト・二本松由里(国仲涼子)と大学病院で外科系統括部長・土門賢治(金田明夫)が加害者と被害者である。

生徒たちの演奏を録音するために調整室に入った由里はアリバイ工作をしてタワーマンション最上階のペントハウスで一人暮らしをする土門医師を殺害する。

なんらかのアクシデントでアリバイが崩されると思わせておいて・・・駅前道路が陥没して停電となって録音が停止したとかな・・・そこはすかしていくひねりがあり・・・努力の跡が窺える。

しかし・・・結局は・・・痴情のもつれではなく・・・二時間ドラマによくある認知されなかった娘とチョイ悪親父の愛憎のもつれによる悲劇である。

土門医師は・・・余命いくばくもない不治の病に冒され・・・残された時間を再婚相手と過ごそうとする。

母親の葬式にも顔を出さなかった父親を憎み・・・殺意を芽生えさせた娘。

娘を愛していないわけではなかった父親は・・・蘇生すると娘のために新しいアリバイを作り自殺する。

動機がやや弱いが・・・芸術家にありがちな狂気ということで話としては成立する。

ミステリ部分と小ネタ部分のバランスが・・・これぐらいならよろしいのではないでしょうか。

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2016年11月 9日 (水)

新婚家庭だよ!決戦、決戦、また決戦(新垣結衣)

「逃げるは恥だが役に立つ」の音楽は末廣健一郎とMAYUKOが担当している。

「踊る大捜査線」(1997年)の音楽は松本晃彦が担当している。

そして・・・「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)の音楽は鷺巣詩郎が担当している。

さらに「シン・ゴジラ」の音楽は鷺巣詩郎と伊福部昭である。

「DECISIVE BATTLE」は勝敗を決する戦闘・・・つまり「決戦」である。

どのような戦いの場面でも・・・決死の覚悟で挑めば・・・「DECISIVE BATTLE/鷺巣詩郎」がフィットすることは言うまでもない。

まさに「名曲」である。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第5回』(TBSテレビ20161108PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・石井康晴を見た。日曜日は安息日だから教会の日。月曜日は馬車の時代の移動日、だから投票日は決戦の火曜日なのである。カレンダーネタとして「選挙」をぶっこんでくるタイムリー感覚・・・10.2%↗12.1%↗12.5%↗13.0%と鰻登りの視聴率も頷ける展開である。米国の大統領選は・・・変な髪型を脱したトランプ氏が勝利した。米国は平等よりも自由を選択したのだった。大統領選報道もBGMは「DECISIVE BATTLE」にすればいいのにな。それはさておき・・・「恋人になってください」「結婚しているのでイチャイチャしても問題ありません」「選ぶのはあなたです」と就職活動をこじらせてあきらかにノイローゼになっている従業員としての妻・森山みくり(新垣結衣)に攻められて防戦に追われる雇用主としての夫・津崎平匡(星野源)なのである。

DT(童貞)フィールドを全開にしても絶体絶命のピンチなのだ。

ここで・・・みくりの妄想は恋人候補としての政見放送へと展開していく。

「ヒラマサさんは自尊感情が低すぎて・・・恋愛沙汰から逃避するためにお茶の間の会話が全く弾みません。職場の空気が悪くなり私の寂しさマックスです。危うく、派遣先の上司の甘い言葉に揺れる有様です。しかし、恋人制度の導入により、ヒラマサさんの自尊心をアップさせ、同時に私の寂寥感が解消されることが可能になるのです」

「小賢しいぞ」

「そうです小賢しいのです・・・小賢しいけれど小悪魔的なのです」

「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」

「レインボーブリッジ封鎖できません」

「最後まであきらめずにこの国を守ろう」

「小賢しさナンバーワンの実績で、恋人革命を目指します。家事労働党・恋人候補・森山みくり、森山みくりをよろしくお願いします」

お茶の間は・・・修羅場となった。

ヒラマサは生れて以来三十五年・・・恋とか恋人とか愛とか愛人とかとは無縁に過ごしてきたのである。

ヒラマサの灰色の脳細胞は激しく閃いた。

立ち上がり、お茶を飲む。

そして常套手段に到達する。

問われた時には問い返す・・・基本である。

「恋人とはなろうとしてなるものなのでしょうか」

上から目線である。

しかし・・・みくりも後には引けない。

「やってやれないことはないと思います」

正論に正論で返しているがほとんど意味不明である。

(恋人・・・恋人・・・恋人ってなんだっけ)

「みくりさんにとって恋人の定義とは何ですか」

「一緒に食事をしたり」

「してます」

「一緒におでかけをしたり」

「友達で充分ではないですか」

「スキンシップをしたり・・・」

「ス・・・」

「人生とか仕事でクタクタになった時・・・ギュッとされたり・・・頭を撫でてもらったり・・・そういう癒しが欲しいことはありませんか」

「癒し・・・」

考えすぎて身体が傾くヒラマサだった。

合わせて小首を傾げるみくりにお茶の間で悶絶者多数発生である。

「しかし・・・それはもはや職場ではないのでは」

「勤務は平常通りです・・・勤務外に恋人タイムを・・・」

「そこまて癒されたいなら・・・本当の恋人を作るべきなのでは」

「私は・・・恋人のおいしいところだけが欲しいんです」

「お・・・」

(恋人のおいしいところって・・・なんなんだ)

ヒラマサの脳裏をみくりの美味しい部分が乱舞するのだった。

それはもはや・・・ヒラマサの精神を破綻寸前にまで追い込む。

その様子に・・・みくりは撤退を決意する。

みくりは小悪魔ではなく・・・小賢しい女だったからだ。

「今すぐ・・・結論を出さなくても・・・遅くまですみませんでした」

「あ」

問題は先送りされたのだった。

みくりは・・・深読みすれば小賢しい羊の皮をかぶった小悪魔的な狼なんだな。

結局、みくりの攻撃は二人の関係をギクシャクさせ・・・ヒラマサの精神をモヤモヤで満たした。

作戦失敗であるが・・・長い目で見れば作戦の失敗の積み重ねが勝利を呼ぶのだ。

狙った獲物は逃がさないタイプのイケメン・ストーカー風見涼太(大谷亮平)は美処女の百合(石田ゆり子)に紹介され購入した分譲マンションの共有配管清掃の機会を用いて家政婦みくりを臨時シェアするのだった。

管理人の代行も可能だが平日の日中に行われる共有配管清掃は居住者の立会が望ましいのである。

「彼と喧嘩でもした?」

獲物の些細な変化も見逃さず、女心への侵入を画策する性の狩人である。

「いいえ・・・喧嘩どころか・・・それ以前です」

ヒラマサに対しては裸で攻撃するみくりだが・・・シンジから受けたダメージのために風見に対しては精神防御全開なのである。

これは伯母である百合のAI(アンチイケメン)フィールドと相似状態にある。

このドラマは各人の拡張する精神防御フィールドの縄張り争いなのである。

「無理を言って申しわけない」

「臨時収入大歓迎です」

風見は精神的局面を拡張しようとするがみくりは金銭的局面を強調するのだ。

見事な攻防である。

しかし・・・孤独死を惧れ・・・アンテナを伸ばす百合は・・・みなとみらい駅前で風見が忘れた傘を届けに来たみくりを目撃してしまう。

イケメンが悪しかなさないという信念で生きる百合はたちまち・・・狼に誘惑され不倫の罠に絡め取られてしまった憐れな姪の悲劇を妄想するのだった。

一方・・・モヤモヤで心が視界不良となったヒラマサ・・・。

(なぜ・・・恋人になろうなんて)

(好きでもない相手と)

(いや・・・好きではなくもないのか)

(いやいや・・・一番好きというのは・・・他にも好きな人がいるということだ)

(いやいやいや・・・一番が社交辞令なのだ)

(ハグなんて・・・考えたこともない)

そこで忍びよった休みの日には家族サービスを欠かさない日野秀司(藤井隆)にあすなろ抱きされるヒラマサだった。

「スッパですか」

秀忠でもなければ佐助でもないぞ。

「寂しそうだから慰めてやれって」

密かにヒラマサを狙う沼田のお屋形様(古田新太)の指図だった。

「真田丸」のことは忘れろ!

ヒラマサの最終結論は「人間抱き枕」に徹するという自虐的なものだった。

自分を一部婦女子に愛されるブサカワキャラクターと認定したのである。

憐れな・・・。

ガラスの天井を背負ったまま繁殖の機会に恵まれなかった百合は老後の砦であるみくりの安全を確保するために・・・勤務先の化粧品会社「ゴダールジャパン」を定時で勤務終了する。

「あの顔色だと別れ話かしら」と部下の堀内柚(山賀琴子)・・・。

「お前・・・憶測はやめろよ」とイケメンの梅原ナツキ(成田凌)・・・。

「お前なんて呼び方やめてよ・・・俺様系コミックの読み過ぎよ」

「そんなもの読むのは専業主婦を夢見る少女だけだろう」

上司を巡る三角関係である。

百合は・・・「3Iシステムソリューションズ」で勤務を終えた風見を待ち伏せするのである。

「今朝のあれはどういうこと・・・」

「見ていたのですか」

「姪を毒牙にかけたの」

「それについては・・・みくりさんにお聞きください」

「そんなこと・・・聞けるわけないでしょう」

「あ・・・津崎さんだ」

思わず身を隠す百合。

脱出した風見は裏街道の利用でヒラマサに追いつく。

「シェアがバレました」

「えええ」

みくりは津崎家で夕食を作っていた。

百合から着信がある。

(一体どういうこと!)

「え」

(津崎さん・・・まさかDVとか?)

「ええっ」

(それでも不倫なんか!)

「えええ」

津崎が帰宅して事情を説明する。

降り出した雨に打たれて路上を走る百合だった。

「イケメンめ~」

津崎家では静かなる夕食で善後策を検討する。

「ぼくたちが新婚っぽくないから・・・」

「ハグしましょう」

「え」

「恋人繋ぎより簡単ですよ」

「・・・」

「万歳して・・・私がアタックして、衝撃波を感じたら、腕をクロスしてワンツースリーです」

「はい」

「や」

「や」

「・・・」

「・・・」

「照れますね」

「食事をしましょう」

もちろん・・・ヒラマサは急いで着席する必要があった。

勃起したからである。

○        ○
ひ      ~◎◎~
ら         み
ま        く 
さ         り
卜↗        ◎
人         人

(鎮まれ・・・)

無表情になったヒラマサの反応を読みとろうとするみくり。

(どうなんだ・・・壁は・・・壊れたのか・・・そうではないのか)

肝心なところでヒラマサの男心を読みとれないみくりだった。

ヒラマサの血液は下半身に集中してそれどころではないのである。

「ハグの日を決めたらどうでしょうか」

「ハグの日・・・月一でいいですか」

「週一でお願いします」

「では・・・火曜日はハグの日ということで」

「資源ゴミと一緒でわかりやすいですね」

翌日の「ゴダールジャパン」・・・。

雨に打たれた百合は不調だった。

あれこれと上司の失恋を気遣う部下たち。

「梅原ってイケメンなのよね」

「はあ・・・」

「どうしてムカつかないのかしら・・・部下だから?」

「・・・」

その他の部下たちは「梅原を狙いに行った~」と憶測するのだった。

一方・・・「3Iシステムソリューションズ」では風見が情勢を窺う。

「どうなりましたか」

「こちらで問題を解決しますので・・・風見さんは何もしないでください」

風見に対して消極的な防御姿勢をとるヒラマサである。

沼田は・・・「攻めと受け」が攻守交代した気配を読みとるのだった。

「風向きが変わった・・・」

「どういう意味ですか」と佐助。

「さしつさされつってことよ」と沼田のお屋形様。

ゲイの妄想からは腐臭が漂うのだった。

みくりは勤務外タイムで親友の田中安恵(真野恵里菜)とお散歩中である。

「ついにハグまでこぎつけたの・・・ねえ、聞いてる?」

「そんな話はつまらないすぎわ」

愛児に同意を求める安恵だった。

安恵は「新婚ごっこ」の二人よりももっと切迫した深刻な問題を抱えているのである。

「家事代行のアルバイトをしただけ」と百合に伝えるみくり。

しかし・・・納得できない百合は再び風見を攻める。

「どうして・・・正直に言わなかったの」

「こちらに・・・後ろめたさがありました・・・好きなので」

みくりに対する横恋慕を百合に告白する性の狩人である。

再び・・・あらぬ妄想で沸騰するここまでの生涯独身の百合だった。

津崎家アタックである。

みくりはとりあえず酒で接待する。

屋外でヒラマサを迎えたみくりは・・・ベランダの百合に「ハグ」を見せつける作戦を伝える。

「今日はハグの日ではありません」

「前借りでお願いします」

つまり・・・このハグは・・・雇用者の従業員に対する福利厚生の一環なのか・・・。

「醸しましょう!新婚感!」

「出しましょう!親密感!」

「や」

「や」

「どうですか」

「見ている感じです」

「回転します」

「や」

「や」

「見ていますね」

しかし・・・コンタクトを外していた百合は見えていなかった!

八岐大蛇的に酔い潰れそうになった百合は・・・帰宅するのであった。

だが・・・百合に対して新婚感をアピールすることは重要な課題なのである。

休日出勤をする百合のオフィスの眼下の芝生でピクニックを敢行する二人である。

「百合ちゃんはカフェイン中毒なのでコーヒーが出来るまでに三回は窓際で目の保養をします」

「僕たちに気がつくでしょうか」

「このマットは一品モノで・・・百合ちゃんの贈り物です」

「なるほど」

ピクニックの思い出が蘇るヒラマサ。

「一度だけ家族でピクニックをしました・・・母は郷土料理の瓦蕎麦をお弁当にしたのですが・・・父は冷えた蕎麦など食えるかと怒りだし・・・結局・・・僕だけが重箱一杯の蕎麦を食べたのです・・・まさに地獄のピクニックでした」

「まさに子は鎹ですね」

「そういえば・・・今日は母の誕生日でした」

「電話してくださいよ」

「はい」

ヒラマサは実家の母親・知佳(高橋ひとみ)に電話をした。

(みくりちゃんにかけろって言われたんじゃろ)

みくりは安恵からの着信に気が付き・・・折り返す。

(私ね・・・離婚届だしてきた・・・親はね・・・浮気ぐらい我慢しろって言うけど・・・私、どうしても許せなかったの)

「私は・・・いつでもやっさんの味方だよ」

(ひらりを不幸せにしたのかな)

「ひらりちゃんだってやっさんが哀しいのは嫌だと思うよ」

(・・・)

合流する二人。

「ひらりちゃんは鎹になれませんでした」

「・・・」

「私・・・何もできなくて」

「ただ・・・味方といってくれる人がそこにいるだけで救いになるでしょう」

「・・・」

「父と母はピクニックの帰りに本当の瓦蕎麦を食べたそうです・・・僕は疲れて眠りこんでいたらしい・・・その蕎麦はとても美味しかったそうです。僕にとって地獄の思い出だったものが・・・両親には至福の記憶だったらしい」

「私・・・百合ちゃんに正直に話そうと思います」

「しかし・・・それでみくりさんはスッキリするかもしれませんが・・・今度は百合さんが心に負担を負うのではありませんか」

「・・・」

「この問題は僕たち二人で背負わなければなりません」

「二人で・・・」

「はい」

「私・・・今、とてもハグしたい気持ちです」

「今日はハグの日ではありません」

「前借りの前借りでお願いします」

二人はハグをした。

ヒラマサはみくりの頭を撫でた。

そこに百合がやってきた。

「平日の昼下がりからイチャイチャしてくれるわね」

「いや・・・これは」

「仲良きことは美しき哉」

まさに・・・結果オーライである。

二人は瓦蕎麦風焼き茶そばを作って食べる。

雇用主と従業員がフラットな職場の和気藹々・・・。

みくりの心は幸福で満たされた。

「美味しいですね」

「美味しいです」

ヒラマサも平穏を感じる。

みくりは「恋人」として当選した気分になった。

しかし・・・二人は恋人である前に夫婦なのだった。

本当の夫婦の道はさらに険しいと相場が決まっているのである。

大統領だって当選してからが本当の決戦なのである。

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2016年11月 8日 (火)

百億円を貸してくださいと言いました(山田涼介)

「カインとアベル」は旧約聖書・創世記・第四章の物語である。

「カインとアベル」は人類史上最初の殺人についての物語だが・・・アベルを殺したカインは殺人罪で裁かれたわけではない。

そもそも・・・殺人罪というものがまだないのである。

兄弟の両親であるアダムとイヴが・・・事件についてどのように感じたかの記述もない。

神はアベルの血が大地を汚したことをカインに告げ・・・呪いが収穫を妨げるのでカインにエデンの東から去るべきことを告げる。

カインは「私がアデルを殺したように私は誰かに殺されるでしょう」と神に不安をもらす。

すると神は「誰もカインを殺さない」という加護をカインに与えるのである。

いたれりつくせりである。

なにしろ・・・著者であるモーセ自身が殺人者なので・・・殺人者には甘いと考えることもできる。

「カインとアベル」を考察するためには・・・当然、「第三章」に遡る必要がある。

第三章は楽園で暮らしていたアダムとイヴが狡猾なへびに唆され・・・禁断の果実を食べることによって楽園を追放される話である。

このことにより・・・二人は飢え、女は子を孕み、そして人は死すべき運命となる。

つまり・・・アダムとイヴが「あやまち」を犯さなければ・・・カインがアベルを殺すこともなかったし・・・そもそもカインもアベルもこの世に生れなかったのである。

「最初のあやまち」が「新たなるあやまち」を生み出すことは人生の基本である。

たとえば・・・戦後の人々は・・・「あんな戦争さえなければ」と「失楽園」を感じるのだ。

不倫騒動で炎上すれば・・・「愛」さえも後悔の対象となる。

それでも人は生きて行くと聖なる書は物語るのである。

で、『カインとアベル・第4回』(フジテレビ20161107PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・武内英樹を見た。原案を「旧約聖書 創世記 カインとアベル」とするには現代はいささか人口が増えすぎているのだが・・・高田一族に限定すればそれぞれの役割はそこそこ理解できる。高田総合地所株式会社の経営者一族の子供として自由奔放に育った高田優(山田涼介)がアベルであり、長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)がカインである。兄弟の父親である社長の高田貴行(高嶋政伸)がアダムである。貴行の妻は未登場だが・・・貴行の姉である自由奔放な女・桃子(南果歩)がイヴのポジションを匂わせる。そして・・・神の代役として兄弟の祖父である高田宗一郎(平幹二朗)が配置されていたわけだが・・・平幹二朗が他界したために寺尾聰が代役となった。滅多にないことである。

聖書の中では・・・アダムは息子が息子を殺害するとは夢にも思わなかった。

そもそも・・・人が人を殺すという可能性さえ思いもおよばなかったのである。

その思いも及ばなかったことが・・・アダムの罪であると言うこともできる。

この物語では・・・隆一は内に屈折を秘めたキャラクターとして明瞭に描かれる。

隆一をそういう人間に育てたのが父親の貴行であることも明示されている。

宗一郎から高田総合地所株式会社を受け継いだ貴行は・・・後継者として隆一を「論理的で計画的な責任感に満ちた指導者」として育てたわけである。

しかし・・・宗一郎は苦言を呈する。

「論理的な人間が必ずしも成功するとは限らない・・・時には直感が重要となる」

だが・・・貴行は父の訓令を否定する。

「時代が違うのです・・・直感に頼っていては巨大な組織を運営できません」

いつの時代にもある・・・論理的な人間と非論理的な人間の確執だ。

もちろん・・・どちらが正しいかを問うことは虚しい。

どちらも正しいしどちらも間違っているというのが論理的であり非論理的だからだ。

そもそも・・・世界には是非などないのである。

そういう哲学的な話はさておき・・・「アウトレットモール建設」のプロジェクトチームに抜擢されたダメ人間の優は年上の同僚・矢作梓(倉科カナ)のアドバイスによって・・・仕事に身が入るようになった。

一方で・・・橋本衆議院議員の娘である綾乃(宮地真緒)との縁談を断り、梓との交際を父に認めてもらうために実績の欲しかった隆一は・・・タイ国でデペロッパー「BDC」との合併事業に奔走するが事業継続のために百億円の資金が必要となり・・・調達が暗礁に乗り上げる。

追い込まれた隆一は・・・失踪するのだった。

「あの・・・息子に限って・・・失敗することなどない」

想像力の欠除した父親は・・・会議を無断欠席した長男の身を案じず・・・「特別な任務」を与えていると役員たちに虚偽を述べる。

そもそも・・・原案が「聖書」なので脚本が幼稚なのではなくて・・・ある程度ファンタジーなのである。

まあ・・・社内で・・・優に思いを寄せる柴田ひかり(山崎紘菜)が登場するとそこが会社ではなく中学校のように見えることもあるが気のせいです。

そもそも・・・アベルが死ぬ前には女はイヴしかいないのである。

矢作梓も橋本綾乃も柴田ひかりも幻なのだ。

団営業部長(木下ほうか)から隆一が出社していない情報を知らされた優は兄の交際相手である梓と情報を交換する。

この時、優は心に梓への恋情を潜ませていると推測できるがそれを表情には表さない。

梓は昨夜、部屋を訪れた隆一の様子が変だったことを伝える。

二人の肉体関係を連想した優は嫌な気持ちになるが表情には表さない。

「聖書」においてはアベルの心情は描かれない。

アベルはただ嫉妬した兄に殺されるだけの存在である。

しかし・・・同じくアダムの息子として生まれながら兄は父の仕事を手伝っているのに対し・・・牧畜という家業以外の仕事をしている自分になんらかの屈折した感情を持ったことは想像できる。

ある意味で・・・アベルはすでに牧草地という荒れ地に追われているのである。

ドラマでは・・・このありえたかもしれないアベルの屈折は・・・自分の愛した女である梓が兄を愛しているということで表現されているわけである。

優も弟として兄を案じるが・・・同時に梓が兄を大切に思っていることに嫉妬するのである。

ただし・・・優はあくまでも・・・梓の身を案じる形で偽善的にそれを表現する。

主人公だからである。

「隆一さんはもう帰ってこないかもしれない」

「どうして」

「隆一さんは経営者一族に生れ後継者として育てられた・・・失敗が許されないと思いこんでいる」

「失敗しない人間なんていないでしょう」

「それは・・・あなたがスペア(予備部品)だからよ」

「・・・」

二番手として緩やかな環境で育てられた優は兄の苦しみが理解できないのである。

優は幼い頃に家出をした記憶が蘇る。

優を発見したのは兄だった。

「どうして家出なんかしたんだい」

「だってこの家は窮屈だもの」

「お前は貧困というものを知っているか」

「貧乏ってこと」

「そうさ・・・貧しいものには苦しみがある・・・その苦しみを免除されている人間には・・・別の苦しみがあるものさ」

「なんだかつまらないな」

「・・・」

戦後の焼土からテベロッパーに成りあがった神としての会長。

神が築いた楽園の外の世界で事業を拡大した社長。

神の孫である兄弟の心は二つの核心を持つ。

保守と革新である。

兄は平和の維持のために管理社会を追及し、弟は自由と平等の個人主義を追求するのである。

「隆一さんは・・・指導者として誰にも頼らず大いなる責任を負っているの」

「でも・・・大切なことを相談されないなんて・・・パートナーとして・・・梓さんはそれでいいの」

「仕方ないじゃない・・・そういう人を好きになってしまったのだもの」

ズタズタに切り刻まれる優の恋心である。

しかし・・・優は兄から贈られた万年筆から・・・「心当たり」を見出す。

「兄は・・・海辺の別荘にいるかもしれません」

「え」

二人は連れ立って高田家の別荘に向う。

「父が万年筆を失くしたのはこの別荘に滞在中でした」

隆一の姿はなかったが・・・隆一の衣服や持ち物が発見される。

「やはり・・・ここに来ている・・・帰りを待ちましょう」

「いいえ・・・帰りましょう」

「え」

「隆一さんは・・・何かを克服しようとしている・・・お父様の期待に応えるために・・・ここで私たちが手を貸せば・・・隆一さんの自尊心が傷つくかもしれないから」

「・・・」

梓が兄を思いやる心の深さに打ちのめされて別荘を後にする優だった。

小料理屋「HIROSE」で女将の広瀬早希(大塚寧々)に背中を押されたひかりはドジッ子女子のように転倒しながら優にアタックする。

「梓さんが好きなんでしょう」

「あ・・・これはまだ秘密なんだけど・・・梓さんは兄の恋人なんだ」

「え」

小中学生のようにスキップするひかりだった。

女はみんなイヴの娘なのである。

宗一郎会長は貴行社長に神の声を伝える。

「隆一は危ういところがあるのではないか」

「あなたが私を完璧な後継者に育てたように私も息子を完璧な後継者に育てました」

「お前は・・・まだ肝心なことがわかっていない」

「肝心なこと?」

「神である私以外に完璧な人間などいないということだ」

一神教において神は完全無欠絶対無比の存在である。

「聖書」の重要な主題は・・・人が「神に等しい存在」となることの否定である。

指導者が支配者となることを「神の子」は戒める。

七つの大罪でもっとも重要なのは「傲慢」という神に対する反逆なのである。

その「教え」が「教会権力」を発生させるというところが西洋史の醍醐味なのである。

兄の身を案ずる優は兄の直属の部下を経由して「よつ葉銀行」の頭取・田島文彦(須永慶)に面会し、兄が「百億円の融資」を断られたことを知る。

「兄さん・・・百億円が借りられなくて困っているのか」

ここで・・・「カインとアベル」の前段となる「失楽園」の主題が挿入される。

四度の結婚離婚を繰り返す「愚かな女」としての桃子(南果歩)の新たなる婚約問題である。

婚約相手は海外在住の投資家・黒沢幸助(竹中直人)であった。

危険を感じた桃子の弟である貴行は興信所に調査を命ずるが黒沢の正体は杳として知れない。

桃子は家族に対して婚約者を紹介する機会を求め、貴行は渋々応じる。

「姉さんが誰と結婚しようと自由ですが・・・資金面での協力はできません」

貴行は防衛線を構築する。

「失礼ね」

貴行が座を去り、同席した優と梓が残される。

「あなたに百億円の投資をお願いします」

いきなり切り出す優だった。

唖然とする桃子と梓。

しかし・・・投資家を称する黒沢は即答するのだった。

「よかろう」

「いいのですか」

「もしも・・・断ったらどうするつもりだったのだ」

「伯母さんとの結婚に反対すると駄々をこねるつもりでした」

「ふ・・・君は面白い・・・気に入った」

神の恩寵もまた「聖書」の重要な要素である。

アベルがカインに殺されるのも・・・アベルが理不尽なほどに神に愛されたことによる。

やることなすことうまくいく優に対してお茶の間は唖然とするだろうが・・・それこそがカインがアベルに抱いた邪な気持ちなのである。

さて・・・素直に考えれば・・・イヴである桃子の心を掴んだ黒沢の存在は「失楽園」における「蛇」ということになる。

「創世記」では蛇は単に狡猾なだけの神の創造物に過ぎない。

しかし・・・「聖書」の愛読者たちは・・・その正体に思いをめぐらし・・・「イザヤ書」の「輝く者が天より墜ちた」や「ヨハネの黙示録」の「天で戦いが起こりサタンが地に投げ落とされる」から堕天使ルシファー=魔王サタンの存在に帰着する。神に反逆し地獄へと墜落する堕天使こそがジョン・ミルトンの「失楽園」の中ではイヴを誘惑する蛇なのである。

「失楽園」の前段には「神に反逆した天使の墜落」が隠されているのだった。

「百億円」というある意味、大金を無造作に融資する黒沢の正体が悪魔であることはそれほど意外なことではないだろう。

絶対神が作った世界に苦渋が満ちているのは・・・悪魔の反逆が続いているから・・・というのは「教会」の常套句なのである。

絶望の淵に立つ別荘の隆一の前に・・・黒沢が現れる。

黒沢は優からの依頼であることを秘匿し隆一に百億円を融資するのだった。

起死回生の出来事に高揚する隆一。

合併事業への撤退が開始される前に・・・存続を決め・・・何事もなかったように会社に復帰する。

父親は完全無欠に育て上げた息子の「完璧さ」に満足する。

意気揚々と婚約指輪を持って梓に求婚する隆一。

「正式に婚約したい」

「うれしいわ」

涙して婚約指輪を受け取る梓だった。

「でも・・・困ったことがあったら・・・今度は相談して欲しい」

「相談しても仕方ないだろう。私は選ばれた人間だ・・・たった一人で危機を乗り切った。奇跡が私を祝福している」

梓は隆一の傲慢な態度に危惧を感じる。

「あなたは・・・誰かに助けられているのよ」

「え」

「人間は助け合って生きるものでしょう」

「ええっ」

「融資を可能にしたのは優くんよ」

「えええ」

もちろん・・・タイミングとしては最悪であるが・・・すべては悪魔の計画のなせることだと思えば仕方がない。

梓の隆一に対する期待は裏切られ・・・隆一の精神は崩壊する。

帰宅し・・・いきなり・・・優を殴り倒す隆一だった。

「俺を助けて・・・神にでもなったつもりか」

「兄貴・・・」

弟の心を兄は知らない。

そして兄の心を弟は知らない。

兄弟の無知に・・・悪魔はつけこみ・・・慈愛に満ちた神は人の愚かさに激怒する。

これが「聖書」のお決まりのパターンなのである。

神が怒れば洪水や火の雨が降るのだった。

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2016年11月 7日 (月)

真田丸がある限り豊臣家は滅びませぬ(堺雅人)お聞きくださるのか・・・私の話を(大泉洋)

二話連続でヒロイン・高梨内記の娘きり(長澤まさみ)が未登場である。

ちょっと・・・淋しいぞ。

しかし・・・長男・信之にどうしてもボケさせたかったのだから仕方ないな。

一方・・・時間経過が定かではない大坂城における真田信繁の戦略家としての駆け引きに二話を費やしたわけである。

前回は・・・進撃策の挫折に一話を費やし、今回は籠城と決まった後に出城である真田丸構築の顛末である。

牢人衆を善玉として描く展開では、淀殿、大蔵卿局と大野兄弟、織田有楽斎、長頼父子、渡辺糺、薄田兼相・・・さらには小幡勘兵衛景憲などが悪玉として登場するわけだが・・・今回は大野兄弟の面目躍如の展開である。

野戦で雌雄を決した関ヶ原の合戦から十余年・・・大坂冬の陣は基本的に攻城戦である。

難攻不落の大坂城に対して・・・家康はそれまでに充分な戦略を立案していたはずである。

その一つが攻城砲の準備であった。

大坂城本丸を攻城砲の射程内に収めることが家康の勝利の方程式であった。

もちろん・・・調略の名手として・・・大坂城には内通者が多数用意されている。

攻城砲の威嚇によって一時的な和平交渉を行うことが家康の「手」であった。

これに対し真田幸村は要塞築城で絶対に負けない戦いを仕掛ける。

幸村は戦には勝利するが・・・結局は敗者となるのである。

それでもなぜか・・・日本人は・・・勝者である徳川家康よりも敗者である真田幸村を愛する。

なぜなら・・・日本人あるいは人間はほとんど・・・負けたまま人生を終えるからだ。

脚本家は心憎いほど・・・戦国ロマンの終焉を描き切るつもりなのだろう。

で、『真田丸・第44回(NHK総合20161106M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・田中正を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は待望の豊臣秀頼の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。巨躯で有名な秀頼ですのでもう少し周囲との差別化があってもいいわけですが・・・まあ・・・主人公は幸村でございますからねえ。乳兄弟である木村重成とイケメンが重複して時々区別がつかない時がございますけれど。・・・大坂城は淀殿の乳兄妹である大野治長と・・・秀頼の乳兄弟である木村重成が悪玉・善玉で棲み分けるのが定番ですが・・・今回はどちらもそれなりに好ましく描かれている。なかなかに味わい深い展開でございます。大野治長も木村重成も主君に殉じているわけでこれはこれでおかしくないと言えますな。城中にいるはずの真田一族が・・・義弟の堀田作兵衛、義父(?)の高梨内記、嫡男の真田大助の男衆に限られているのも面白いですねえ。一方、信之は江戸で女色にうつつを抜かしているわけです。これもまた・・・戦は嫌いですと言いながら・・・どんどん戦にのめりこんでいく幸村との対比・・・それこそが真田の血のなせるワザなのでしょうねえ。さあ・・・いよいよ・・・物語もクライマックスです。ワクワクいたします。

Sanada44 慶長十九年 (1614年)十一月、豊臣秀吉の遺児である豊臣秀頼の籠る大坂城に対して前将軍徳川家康と将軍秀忠は包囲作戦を開始する。加賀百万石の前田利光の正室は秀忠の次女・珠姫である。越前六十七万石の松平忠直は結城秀康の嫡男で家康の孫にあたる。北国勢およそ六万の大軍は京を経由して河内に南下する。尼崎に進出した肥前岡山二十八万石の池田忠継の母親は家康次女の督姫だった。将軍秀忠に従う仙台六十二万国の伊達政宗の娘・五郎八姫は家康六男の松平忠輝の正室となっている。美濃衆を率いる松平忠明の母は家康の長女・亀姫だった。大坂城の北方に進出した本多忠政は真田信之の義兄弟だがその正室は家康の長男信康の娘の熊姫である。紀伊から住吉に進出した浅野長晟の正室は家康の三女・振姫である。阿波徳島二十万石の蜂須賀至鎮の正室・万姫の母は信康の娘・登久姫だった。かっての豊臣恩顧の大名家には家康の血筋が満遍なく注ぎ込まれていた。かっての義理のある大名たちも豊臣家の呼びかけにすでに応えられなくなっていたのである。徳川一門衆に囲まれて外様大名である上杉景勝や佐竹義宣は死力を尽くして将軍のために戦う他はなかった。各方面から大坂城周辺に進出した諸大名の軍勢は豊臣方の拠点を駆逐しながら包囲の輪を縮めていた。十五日、家康は二条城から奈良へ出陣。十六日、法隆寺に着陣。十七日、住吉に進出する。秀忠は平野に着陣した。すでに大坂城周辺には三十万の大軍勢が集結していた。

「淀川は徳川勢の兵糧を運搬する船で一杯でごいす」

京の都に潜入する幸村の従兄弟である真田幸朝の配下、望月六郎が真田丸で斥候の結果を報告する。

望月六郎は変装の名手であり、男のくのいちである。

春を売る遊女たちにまぎれ周辺に充満する徳川勢の陣を巡りつつ大坂城に入ったのである。

「淀川堤の様子はどうか」

幸村は家康が大坂城の堀の水を干上がらせる土木工事を行うと推測している。

「城方の衆が決壊させた堤はすでに修復され、徳川勢が新たな堤の構築を始めておりますが・・・お堀の水を干上がらせるほどの効果を得るには一年はかかると思われまする」

「東側の付城はどうか」

「徳川勢は平野川の周囲に野陣をはっておりまする・・・真田の旗印もございました・・・おそらく・・・上杉勢、佐竹勢が・・・今福と鴫野の城方の砦を急襲するのではないかと」

「上杉のお屋形様も・・・ここは将軍に従って力攻めをするであろう・・・」

そこに・・・大和方面の斥候に出ていた佐助と才蔵が帰陣する。

「無事だったか・・・」

「奈良と峠で二回、家康に仕掛けましたが・・・思いの他・・・藤堂の忍びのものたちが手強く不首尾に終わりましてござる」

「鉄砲忍びたちは・・・どうか」

「なんとか・・・半数は戻って参ると存じます」

「そうか・・・もはや・・・ここで迎え撃つ他はなさそうだな」

「徳川の陣は左右二段構えでございます」

「茶臼山と岡山に築城しておるようじゃのう」

「家康は茶臼山の南の住吉に仮の本陣を置き、秀忠は岡山の南の平野に宿営しておりまする。周囲は旗本衆、譜代衆で固め・・・前面に外様大名を配する布陣でごいす」

「真田丸の正面は・・・前田勢か」

「井伊や南部、藤堂や伊達が加勢してくるかもしれませぬ」

「高槻街道に池田勢、京街道には片桐様が押し出しているようじゃ」

「淀川河口には徳川勢の軍船が集結しております」

沈黙していた才蔵が口を出す。

「さて・・・どこから仕掛けてくるかのう」

「まずは・・・西か北からではないでしょうか」

「兵糧攻めとなれば川筋だが・・・まあ・・・あれだけの大軍だ・・・どこから来てもおかしくないの」

幸村と忍びたちは・・・櫓の彼方に広がる大軍勢を見渡した。

「すでに・・・真田丸はさぞや・・・目ざわりでございましょう」

「南西の方角に付城を構築する気配がありました」

「鉄砲忍びが戻って参ったら・・・まずは夜襲じゃ」

「は・・・」

「簡単に付城を作らせるような真田忍軍ではないことを思い知らせてやれ」

幸村は微笑んだ。

その夜・・・真田丸に対応する付城の構築を開始した前田の工兵たちは・・・真田鉄砲忍びの急襲を受けた後・・・あらかじめ仕掛けられた爆薬により・・・微塵となって消滅した。

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2016年11月 6日 (日)

今宵だけはと一心同体に(武井咲)

月9は「カインとアベル」なのだが・・・物語というものは常に何処かが似てくるものである。

「忠臣蔵の恋」で最も虚構色が強いのは主人公の存在である。

七代将軍徳川家継の生母である月光院が宝永元年(1704年)に桜田御殿に出仕する前の歴史の闇につけこんでいるからである。

月光院の父である勝田玄哲が不義密通により加賀藩を追われた過去は・・・まさに「失楽園」そのものであり、勝田善左衛門ときよの兄妹は・・・ある意味、カインとアベルなのである。

父と母が罪を犯したことで「エデンの園」を追放されたことは・・・勝田善左衛門にとって武士身分の剥奪を意味している。

父と母が犯した罪によって武士の子として生れることのできなかった怨みである。

この怨みは・・・主君の暴走によって藩士でなくなった赤穂浪士のすべてに通じて行く。

しかし・・・彼らは奪われた「名誉」を自力で回復する。

後世に語り継がれる物語の主役に躍り出るのである。

きよに至っては・・・死を否定しすべての権威のひとつの頂点である将軍の母になってしまうのである。

凄い「話」なのである

この馬鹿も休み休み言えという物語の面白さがお茶の間に伝わっているのかどうかは別として。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第7回』(NHK総合201611051810~)原作・諸田玲子、脚本・塩田千種、演出・伊勢田雅也を見た。浅野内匠頭長矩(今井翼)の勅使饗応役が果たされた後に側用人・礒貝十郎左衛門正久(福士誠治)との婚礼を夢見ていた侍女・きよ(武井咲)だったが・・・長矩が刃傷沙汰の末に切腹し、お家断絶の憂き目となり・・・すべての約束は潰えたかに見えた。しかし・・・吉良上野介義央(伊武雅刀)が生存しているという情報に接し「仇討ち」を覚悟した十郎左衛門に落飾して瑤泉院となった長矩の正室・阿久里(田中麗奈)の「耳」となったきよは・・・「明日をも知れぬ命ならば最後まで一緒に・・・妻としてお側に」と覚悟を明かすのだった。

元禄十四年(1701年)四月十九日、大石内蔵助(石丸幹二)は龍野藩主・脇坂安照と備中足守藩主・木下公定に対して赤穂城を明け渡した。

残務処理には二ヶ月ほどを費やしたと言う。

内蔵助は幕府に対して・・・長矩の弟・大学長広(中村倫也)によるお家再興を嘆願し・・・赤穂浪士の軽挙妄動を戒めたのである。

六月、江戸・芝の源助町に内藤と名を変えた十郎左衛門は町人を装い酒屋を開店する。

木屋孫三郎(藤木孝)が後ろ盾となり・・・きよは十郎左衛門の妹として店に住み込んだのであった。

しかし・・・奉公人がうっかり「お内義さん」と呼んでしまうほどに・・・初々しい新妻のようなきよだった。

床を並べることも遠慮するきよだったが・・・十郎左衛門は真意を明かす。

「きよ殿・・・そなたを妻にしたいという気持ちに偽りはない・・・しかし・・・何れは死を賜る身・・・そなたと夫婦の契りは結ばぬと・・・心を決しておる」

「十郎左衛門様・・・」

共に・・・冥途に参りますとは言えないきよだった。

きよは・・・生れついての武士の娘ではないのである。

きよの父は「お家」を捨てて浅草唯念寺の住職として林昌軒に住まう世捨て人・勝田玄哲(平田満)なのだ。

きよはただ・・・十郎左衛門と仲睦まじい夫婦になりたいと願っていた。

その心はきよに夫婦茶碗を購入させる。

しかし・・・十郎左衛門の決意を想えば・・・それを使うことが許されぬ分別も持っていた。

酒屋には十郎左衛門とともに開城に反対して赤穂城から出奔した側用人の片岡源五右衛門高房(新納慎也)、生前の長矩の勘気を受けて浪人となっていた不破数右衛門(本田大輔)やきよの兄である勝田善左衛門(大東駿介)が集まり・・・仇討ちの密議をする。

側用人の二人はともかく・・・不破数右衛門や勝田善左衛門はある意味、部外者で・・・お調子者なのである。

「殿の無念を晴らす」という十郎左衛門の心情にシンパシーを感じる野次馬代表である。

赤穂事件はこのような・・・民意が・・・当事者たちの心に反映していく物語でもある。

十郎左衛門たちにとって・・・開城に同意したものたちは・・・すべて裏切り者なのである。

一方・・・両国米沢町の堀部家には堀部安兵衛(佐藤隆太)が国許から戻っていた。

安兵衛の妻・ほり(陽月華)に招かれて挨拶に出向くきよ。

「赤穂の城を失うとは・・・」と隠居した堀部弥兵衛(笹野高史)は遠い目をする。

「しかし・・・大石様は・・・含むところがあるとおっしゃいました」

安兵衛は・・・開城後に事を為すという期待を持っていた。

「それにしても許せぬのは・・・側用人の磯貝殿じゃ・・・出奔した後は町人となって酒屋などを営んでいるという噂です」

「それは・・・」

違いますと言いかけて口を噤むきよ・・・探索のために世を忍んでいることは秘密だったからである。

こうして・・・江戸で吉良暗殺を企む赤穂浪士は二派に別れてしまったのだ。

部外者であるきよの縁者で堀内道場の四天王の一人・・・浪人の佐藤條右衛門(皆川猿時)は気を揉むのである。

「我らだけで必ず仇討ちを・・・」

安兵衛の元へは元二百石馬廻役の高田郡兵衛(竹井亮介)・元百五十石武具奉行の奥田孫太夫(鈴木隆仁)などが集い暗殺計画を練る。

しかし・・・夏を過ぎた頃になっても決め手を欠く両派だった。

雷鳴が轟く酒屋の奥座敷。

「殿の御霊がお怒りじゃ・・・」

「・・・」

雷光に竦み・・・十郎左衛門に身を寄せるきよ。

「殿の御霊をお鎮めしなければならぬ」

「しかし・・・どのように・・・行列に斬り込むのですか」

「・・・」

吉良上野介は八月に五千石の旗本・松平信望の本所の屋敷に屋敷替えを拝命し、九月に受領した。

本所は大川(隅田川)の対岸の地で・・・場末の地だった。

しかし・・・屋敷変えの機会を・・・十郎左衛門一派も・・・安兵衛一派も活かすことができなかった。

吉良家も・・・赤穂浪士の動向には注目し・・・警護を固めていたのである。

赤穂での残務処理を終えた大石は京都山科に隠棲していたが・・・江戸での赤穂浪士の動向を知り、自重を促すために元三百石の足軽頭・原惣右衛門元辰(徳井優)と元二十石の大納戸役・毛利小平太(泉澤祐希)を派遣する。

原惣右衛門は安兵衛を説得するが・・・ついには仇討ちに同意する。

その条件として・・・江戸の赤穂浪士の心を一つにすることが打ちだされる。

ほりは佐藤條右衛門を通じてきよに接し・・・泉岳寺にて十郎左衛門と安兵衛の「手打ち」の席を設けるのだった。

原惣右衛門を仲介者として・・・殺気をはらんだ十郎左衛門と安兵衛が対峙する。

夕暮れ・・・酒屋に戻って来た十郎左衛門は・・・きよを奥の座敷に呼ぶ・・・。

「私は・・・思いあがっていた・・・我ら側用人だけが殿への忠義を持っていると・・・しかし・・・藩士たちの思いは同じだった」

「・・・」

「我らは・・・吉良を討つことで・・・一心同体を誓った・・・」

「ようございました」

「きよ・・・そなた・・・夫婦茶碗を・・・買ったな」

「ほんの戯れでございます・・・」

「苦しい思いをさせてすまぬ・・・しかし・・・私も苦しいのだ」

「十郎左衛門様・・・」

「今夜だけは・・・そなたと・・・身も心も一つになりたい・・・」

十郎左衛門は・・・きよを抱きよせ・・・押し倒した。

辛抱たまらなかったのである。

こうして・・・きよは・・・清い身体ではなくなったのだった。

十一月・・・実家である備後国三次(みよし)藩の江戸屋敷(赤坂)に隠遁する瑤泉院に「江戸の赤穂浪士合従」の報告に参上した「耳」のきよ。

しかし・・・奥の間には大石内蔵助が控えていた。

俗に言う第一次大石東下りである。

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2016年11月 5日 (土)

4681012の終焉と45678の波及(山田孝之)

人間の知性の根源は模倣である。

その証拠の一つが日本語を言語とする親を持つ子供が日本語を話すことである。

真似しちゃったんだからしょうがない。

「お笑い」のシステムの一つに「ものまね」があることにはいくつかの論点があるが・・・その一つには「構築されたパターンの逸脱」がある。

「本人そっくり」だが「本人ではない」というシェーマ(構図)のズレが心理的安定のための「笑い」を生むのである。

これに・・・「揶揄」という要素が付随すると、「おちょくり」や「からかい」へと発展する。

表だって批評することのできない権威などを裏で嘲笑することは隠微な喜びを発生させる。

やんごとのない人のものまねほど・・・スリルとサスペンスを伴った緊張からの弛緩をもたらすのである。

たとえば・・・芸能人たちは・・・収入源である一部独占企業の尊大さに対する鬱屈を心に秘めているのが普通なのである。

奢る平家も久しからず・・・かっての王者が地デジ化により単にチャンネルがずれただけで辺境に追いやられ凋落したことは記憶に新しい。

そういうことはなんとなく・・・面白いのでしょう。

そういう話を模倣で表現することは苦い薬をオブラートに包むようなものです。

いつの時代だよっ・・・それにちっとも包まれてないぞ~。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第5回』(テレビ東京201611050018~)脚本・演出・福田雄一を見た。恒例の前座コーナーである山中の盗賊との遭遇では「盗賊らしからぬ盗賊」という「ズレ」をもう一度ズラして「いたって普通の盗賊」という盗賊(鈴木浩介)が登場して、勇者ヨシヒコ(山田孝之)を除く仲間たち・・・戦士ダンジョー(宅麻伸)、魔法使いのメレブ(ムロツヨシ )、村の女ムラサキ(木南晴夏)におちょくられる。頭に来た普通盗賊はメレブのマッシュルームカットにツッコミを入れるがこれは・・・鈴木浩介といえばドラマ「LIAR GAME 」シリーズ(フジテレビ)で福永ユウジ役を演じ・・・その髪型から「キノコ」と仇名されたことによる。

「普通だな」

「出直してくれば」

「強さも普通なので・・・修行しないと私には勝てない」

「がんばれ」

「ちくしょう・・・おぼえてやがれ」

ここでは・・・メレブが「毒ナイフをなめてしまう」「鬼嫁がいる」などと「過去の盗賊の特徴」について回顧する。

一方・・・普通盗賊は横山やすしのメガネ芸などをよくある「ものまね」をアピールし・・・後半の予兆を残していく。

「お笑い」にも「まとめ」的な手法はあり・・・たとえば同じ系統のものを「尽し」ていくのも一つの「手」である。

今回は・・・「テレビ局」という権威を揶揄しながら・・・「ものまね」という「偽物」の「尽くし」を行っているのである。

ヨシヒコ一行がやってきたのは「美容院」も「日焼けサロン」もない村全体が「自給自足」の「ダシュウ村」である。

ここで・・・お茶の間は1995年からスタートした日本テレビの「ザ!鉄腕!DASH!!」を連想する必要がある。

そもそも・・・「ズレのお笑い」とは「前提」があっての笑いである。

もちろん・・・「ズレのお笑い」への依存があれば・・・前提を知らなくてもそれなりに笑うことができる。

ついでに・・・テレビというマス・メディアの作り手にはお茶の間の「知性」を低めに設定する習慣がある。

なにしろ・・・大衆というものはほとんどの人間が勉強が苦手なのだという前提である。

テレビが「バカ」ばかりやるのは・・・「バカ」を相手にしていると想定しているからなのである。

もちろん・・・それは正しいのである。

たとえば・・・認知症相手ではそもそも・・・「記憶」をくすぐることは難しいのである。

「にせもの」を笑うスタートラインとして・・・20年以上も続いたテレビ番組を提示することはなかなかに計算高いのだ。

それでも知らない人は知らないし・・・本当に教養のある人はテレビなんか見ないからな。

おいおいおい。

ちなみに・・・レビューのタイトルは関東ローカルの話であって・・・田舎の人にはピンと来なくて当然という前提があります。

だから・・・地方の人を敵にまわすなと何回言ったら!

まあ・・・後十年もすれば地デジ以前も忘却の彼方だからな。

「宿屋がないから・・・民家に宿泊するしかないな」

「俺たち・・・男がお願いするよりも胸が平でも女のムラサキの方がよいかもしれぬ」

「わかった」

「ムネタイラの件はスルーか」

「はらたいらを知らない人も多いしな」

しかし・・・そこで・・・親と喧嘩した若者と遭遇する一同。

「いかにもアレだな」

「なんか・・・親の反対を押し切ってなんかしてる感じ」

「危険な香りがするよね」

「妖気を感じる」

「そういうことじゃなくて・・・番組とかタレント生命的にね」

「タレント?」

若者は村はずれの小屋に向い・・・ヨシヒコたちは後を追う。

そこには城島茂をリーダーとして山口達也、国分太一、松岡昌宏、長瀬智也をメンバーとする帝国のアイドルバンド・TOKIOを連想させる若者たち・・・ジョウ(ホリ)、グッチ(金子伸哉)、ターチ(安藤亮司)、マッツー(野村啓介)、ナガサ(末松暢茂)がいた。

「バンドやっているんですか」

「・・・」

若者たちはバンドを結成していたが・・・魔物の呪いで「農作業しかできない精神支配」を受けていたのだった。

南の祠に住む村の守り神「ニッテレン」(徳光和夫)は昔は善き神だったが・・・魔物に操られてしまったらしい。

「日テレでダッシュ村でバンド活動が疎外されているのか」

「漢字で表現するな・・・わかりやすくなってしまう」

「そもそも配役()でレビュー的にはネタが割れるじゃないか」

「そんなの関係ねえ」

「その人は登場しないぞ」

ダシュウ村の周囲の山の祠にはそれぞれ神が住んでいるらしい。

魔物に対抗するために・・・神々に援助を求めるヨシヒコたちである。

かっては最強と言われた「シエクスンの祠」の神(佐藤正和)は死んでいた。

ちなみにJOCX-DTVはフジテレビのコールサインである。

実際には東京21チャンネルである。

「視聴率三冠王だったころもあったのにな」

「すべてはハチに拘りすぎた報いだ」

「もうそれ以上は言うな」

「ジリ貧をなんとかしようとして・・・よりバカにシフトしようとしたんだよな」

「その加減がな」

「ていうか・・・局全体がもはやバカに・・・」

「いいや・・・万物は流転する・・・いつか・・・復活することもあるだろう」

メレブは気遣いながら・・・王冠に瞑目するのだった。

続いて・・・一行は助けの神と呼ばれるテレアーサ(マギー)を訪ねる。

テレアーサは紅茶通で沈着冷静であり・・・熱血漢の亀島(鎌倉太郎)と共に協力を申し出る。

「これは・・・もうダメかもわからんな」

「何故です」

「もう・・・著作権というか」

「官房長官」

「官房長ではなくて」

「つまらないことを気にしますね」

「右京さん・・・事件です」

「これは・・・僕としたことが」

新たな事件が発生したために・・・相棒たちは去って行った。

次に一行が目指すのはテベスの神である。

「ザッピング的には通過点だからテレ朝なみでもいいのにな」

「しかし・・・ジョウが言うには日曜の夜には時々・・・怪物のように強くなることがあるらしい」

「日テレも時々、異常な視聴率を叩きだすよね」

「きまって・・・少しバカな番組なんだよな」

「それ以上は言うな」

そこで珍しい夜の仏(佐藤二朗)が登場する。

「お前ら・・・いい加減にしろよ・・・今回・・・頼っていいのはテレートの神だけだ」

「テベスの神は・・・」

「ヨシヒコ・・・お前・・・セカチューの神とかビャクーヤの神とかウシジーマの神とか・・・いろいろ差障りのある神が出てきたらどーすんの」

「構いません・・・なんのことだかもわかりません」

「ヨシヒコになりきっておーる」

呪文タイムである。

今回、メレブが覚えた呪文は「イマサーラ」である。

呪文をかけられたものは「今さらな芸人のネタ」を披露してしまい・・・演じた後に恥ずかしくなってしまうのだ。

ムラサキは8.6秒バズーカーのリズムネタ「ラッスンゴレライ」やオリエンタルラジオのリズムネタ「武勇伝」をノリノリで披露し恥ずかしくなる。

ダンジョーは谷啓の「ガチョーン」で恥ずかしくなり、ヨシヒコはとにかく明るい安村の「安心して下さい、穿いてますよ」や塾講師のCMの「今でしょう」で恥ずかしくなるのだった。

前提を知らないと恥ずかしくならないのは「基本」だからである。

もちろん・・・呪文に依存するようになると前提を知らなくても感じるようになります。

少し・・・意味不明だぞ。

あまり・・・深淵に触れないことだ。

西の山の祠に住むバナナ風な「7」の形をしたハリボテ装着のテレート(柄本時生)が現れた。

「弱そうだな」とムラサキ。

「助けていただきたい」

「いいよ」

「軽いな」とムラサキ。

こうしてギロッポン的にテレ朝に近付いて調子に乗ったテレ東は日テレに無謀にも宣戦布告し一蹴されるのだった。

おいおいおい。

アニメ的に魔物を退治するヨシヒコたちだった。

南の祠に住むニッテレンは意識を取り戻す。

「大丈夫ですか」

「今はヒルナンデスか・・・スッキリしましたか・・・」

「あなたの甥のミッツ・マングローブも『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』の第3話で魔物として登場しましたよ」

「徳光家の出演率高めですね」

「あれ・・・お願いします」

「ズームイン!」

ニッテレンは読売ジャイアンツの熱烈ファンなので・・・いろいろとジャイアンツ・グッズをお土産にくれるのだった。

「昔はナイター中継していれば・・・番組作りはどうでもよかったんだよなあ」

「雨傘番組、たくさん作ったよなあ」

「お前、誰だよ」

そして、ニッテレンは黄色の玉を持つ玉人だった。

「ジャイアンツカラーならオレンジじゃね」

「もう・・・それ以上は言うな」

こうしてダシュウ村に平和が訪れた。

「どうせなら・・・バンドの演奏も聞きたかったな・・・『泣くな、はらちゃん』の主題歌の『リリック』とか『うぬぼれ刑事』の『NaNaNa (太陽なんていらねぇ)』とか・・・」

「ダメな奴・・・それ、触れたら一番ダメな奴・・・うるさい団体からクレームくる奴」

「ていうか・・・長瀬智也が好きなのか」

ヨシヒコの妹のヒサ(岡本あずさ)は今回・・・変化の杖でとにかく明るい安村(本人)に変身するのだった。

偽物の方が本物より価値がある・・・それ以上は言及しないことだな。

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2016年11月 4日 (金)

夜更けのキャットファイト(成海璃子)

女の敵は女・・・という前提によって繰り広げられる女同志の戦い。

その前提にあるのは繁殖の問題である。

裏切っているのが男であっても男を殺したら繁殖できないのでライバルである女を殺すわけだ。

男性が三角関係を清算する場合は出刃包丁を二本購入し、二人の女性に渡し「生き残った方と交際する」と宣言するだけで問題が解決する。

男女雇用機会均等法以後の世界では通用しない場合があるので注意が必要である。

ああ、昔はよかったなあ。

で、『黒い十人の女・第6回』(日本テレビ201611032359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・豊島圭介を見た。不倫モンスターである東西テレビのドラマ班プロデューサー風松吉(船越英一郎)の毒牙にかかり、そうとは知らずに十番目の女(九番目の愛人)になってしまった東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)・・・。親友のアロママッサージ店勤務・文坂彩乃(佐野ひなこ)に愚痴を言おうと思うが先約があると断られる。行きつけの店で劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)に遭遇した久未は「愛人仲間と待ち合わせ」していると聞き戸惑う。そこに現れたのは・・・彩乃だった。

唖然とする彩乃、激昂する久未、歓迎のスマイルの佳代。

阿修羅三面からの修羅場である。

(えええええ・・・親友だと思っていたのに・・・彩乃、あんたもかよ)

(あああああ・・・久未にだけはバレないように・・・口止めにきたのに)

「煙草一本、ください」

久未は佳代に煙草を強請ると爆発的な火力で着火するのだった。

「あのね・・・話を聞いて欲しいの」

裏切ったわけではないと何とか説得したい彩乃。

「表に出ろ」

悪魔の放った憎悪の矢に胸を貫かれた久未は問答無用で真夜中のキャットファイトに突入するのだった。

「え・・・ちょっと・・・どういうこと」

戸惑う佳代である。

「私たち・・・愛人同志・・・友達になろうとしただけなのに」

久未と彩乃はすでに友達だったのである。

先手をとった久未のボディアタックでゴミの山にふっとぷ彩乃。

「あんたのこと・・・信じてたのに」

「だから・・・話を聞いてってば」

繰り出される久未の女子プロレス的連続攻撃・・・ドロップキック、袈裟切りチョップ、エルボー・スマッシュからのブレーンバスターが炸裂する。

路上でそれは死ぬぞ・・・。

覚悟を決めた彩乃も噛みつき攻撃から逆襲に転じ、張り手、地獄突き、ストレートナックルと畳みかける。

絞め技の応酬から・・・異種格闘技・アントニオ猪木VSモハメッド・アリ戦ま様相と成る二人だった。

「いい加減にしろおおおおおお」

仕方なく佳代はジャイアント馬場の32文人間ロケット砲で二人をノックアウトするのだった。

いつの時代だよっ。

その頃・・・女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)とヘアメイク担当の水川夢(平山あや)はこれみよがしでライバル排除を目論む「ハバア」こと東西テレビアソシエイトプロデューサー・弥上美羽(佐藤仁美)対策をミーティング中だった。

「あのババア・・・私ばかりをターゲットにしやがって」

「あのババア・・・客商売だとおもってなめてんだよ」

「自分も同じ穴の狢だってわかんねえのか」

「マネージャーの長谷川さんにもたれこんだみたいだよ」

「くそババア」

「でも・・・長谷川さんもおそらく愛人だよ」

「え」

テディベアのラテアートも般若と化すのだった。

二人は・・・芸能プロダクション・マネージャーで志乃担当の長谷川冴英(ちすん)を訪問する。

「ババアからなんか聞きましたか」

「心配しないで・・・」

「長谷川さんも愛人ですよね」

「え」

「あいつ・・・どんだけ手近な女に手を出してんだ」

風の愛した女たち・・・先行順をまとめてみよう。

妻・レストラン経営者の風睦(若村麻由美)・・・。

最初の愛人・売れない女優・如野佳代。

二番目の愛人・弥上美羽・・・職場の部下。

三番目の愛人・アロママッサージ店経営者・卯野真衣(白羽ゆり)・・・部下の妻。

四番目の愛人・皐山夏希(MEGUMI)・・・脚本家という出入りの業者。

五番目の愛人・水川夢・・・ヘアメイク・スタッフという出入りの業者。

六番目の愛人・文坂彩乃・・・愛人の店の従業員。

七番目の愛人・相葉志乃・・・アイドル女優。

八番目の愛人・長谷川冴英・・・愛人のマネージャー。

九番目の愛人・神田久未・・・勤務先の受付嬢。

・・・手当たりしだいに口説いているな・・・。

とにかく・・・「商品」だからという理由で志乃を排除しようとした美羽の目論みは外れ・・・対美羽で結束する志乃、夢、冴英だった。

一方・・・「人妻」だからという理由で蹴落としにかかった卯野真衣はドラマ「淡い三人の男」のキャスティング担当プロデューサーである夫・火山(山田純大)から離婚を申し出られていた。

「やり直せないの」

「お互いに愛人がいるんじゃあ・・・無理だろう・・・円満に別れよう」

「私のこと誰に聞いたの」

「番組の女性APだよ」

「女性AP」

すべての画策が裏目、裏目に出ていることも知らず・・・美羽は松吉とレストランで食事中だった。

美羽はとにかく・・・「志乃」にとどめを刺そうとしている。

「APとして・・・志乃さんとは別れるべきだと思うわ」

「APとして」

「やはり・・・商品との不倫はリスクが大きすぎるでしょう」

「わかった・・・」

「わかってくれたのね」

「うん・・・まず・・・君と別れよう」

「え」

「だって・・・不倫のリスクは同じだもの・・・APから言われたら仕方ない」

「ちょっと待って・・・なんでそうなるの」

「相手が誰でもプロデューサーの不倫が発覚したら・・・番組は終わりだ」

「やめて・・・別れないで」

「え・・・いいの」

泣いてすがる美羽に微笑みで答える松吉である。

これは・・・筋金入りの悪魔だな。

後輩愛人たちの傷の治療をする佳代。

「二人が喧嘩することなんかないのよ・・・誰もしたくて不倫なんかしてないんだから」

「・・・」

「彩乃ちゃんは久未ちゃんより先に愛人になったわけだし・・・久未ちゃんは何も知らなかったわけだし・・・悪いのは風でしょう」

「ですね・・・本当に風さんには死んでもらいたいです」

「今夜は泊っていく?」

「帰ります」

久未と彩乃にふられた佳代は・・・脚本執筆中の夏希の陣中見舞いに出向く。

愛人たちのそれぞれの夜が更けて行く。

ドラマ「淡い三人の男」がクランクイン。

現場で・・・女優としておよびでない情熱をそそぐ佳代・・・。

しかし・・・ばばあVS志乃、夢、冴英の陰湿な女の戦いは・・・靴の踏み合い、ヘアアイロン、アツアツおしぼり、レモンのしぼり汁、カチンコとヒートアップしていく。

そして・・・ついにばばあをトイレに閉じ込めて上からバケツの水攻撃という中学生のいじめレベルまで底辺を極めるエスカレートぶりである。

びしょ濡れの美羽を発見し・・・事態に気がつく佳代だった。

四人の後輩愛人たちに説教をする佳代。

「でも・・・私には中学生の子供がいて・・・風さんは父親として必要なんです」

泣き落としにかかるばばあ。

しかし・・・夢はリサーチを終えていた。

「くそみたいなフカシぶっこんでんじゃねえ・・・実家に電話かけて聞きだしてんだ・・・あんた・・・夫に先立たれるどころか・・・一度も結婚してないし、子供なんかいねえじゃないか」

「えええ・・・・嘘だったの」

「さーせんしたー」

「悪いのは風なんだから・・・あんたたちもいい加減にしなさいよ」

「すみませんでした」

「あんまりだと・・・私も動くからね」

恫喝する佳代。

そこに・・・憤怒に燃えてゲートをくぐった卯野真衣が乱入する。

ババアによって家庭を破壊された女である。

「この女性APがああああああ」

真衣によるキックの鬼・沢村忠的真空飛び膝蹴りがババアに炸裂するのだった。

だから、いつの時代だよ。

「え・・・誰?」

「く・・・首が・・・」

カフェ「white」では久未と彩乃が池上穂花(新田祐里子)が一件を話すのだった。

「二人とも大丈夫なの」

「私はあばら一本」

「私は足の小指」

「受ける~」

「そんで私がチョーパンかまして」

「私がソバットで」

「話は変わるけど・・・私、彼氏ができちゃった」

「え」

「結構イケメンだし」

「ええっ」

「マメなのよ」

「えええ」

穂花を見つめる傷だらけの女たち。

「ちょっと・・・その顔・・・やめて」

「とりあえず・・・あばら・・・一本ちょうだい」

「こわい~」

クズたちはどこまでいってもクズだが・・・ちょっと可愛いのだった。

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2016年11月 3日 (木)

ラブラブエイリアン(新木優子)私たちの愛した宇宙人(久松郁実)

おいおい・・・夏ドラマじゃねえか!

谷間なので。

積み残したので。

夏ドラマがいろいろと変則だったので・・・うっかり忘れてたので。

・・・まあ、いいか。

そもそも・・・深夜でナチュラルなホラーをやっていた脚本・演出家である。

ナチュラルなホラーというのは狂気系で毒々しいからな。

かわいいのかどうかわからない宇宙人の「形相」に不穏なものを漂わせていたよな。

いつ・・・「逃げないで・・・我々は友達」と言いながら地球人の殺戮を開始するのか・・・ドキドキしたよね。

「マーズ・アタック!」(1996年ティム・バートン監督)かよっ。

「宇宙戦争」(1953年)でも友好的な牧師が一瞬で焼殺されていたしな。

自分の良識を押しつけようとするジャーナリストとかリベラリストとかエコロジストとか平和愛好家を問答無用で異世界のものどもが虐殺してしまうブラック・ジョークは好ましいものだ。

最近では全編にわたって中国語を話す可哀想な宇宙人に同情していた通訳のガイア(フランチェスカ・クティカ)が実は侵略者だった宇宙人の正体に唖然とする「宇宙人王さんとの遭遇」(2011年イタリア映画)があったな。

雑菌だらけの捨て猫を可愛いと言って撫でる子供たちよ・・・気をつけろっ。痛い目見るぞと言う話である。

しかし・・・最後までほのぼのとして期待を裏切るところがまたいいのだ。

原作があるからな。

で、『ラブラブエイリアン・第1回~最終回(全12話)』(フジテレビ201607140205~)原作・岡村星、脚本・演出・三木康一郎を見た。宇宙船が故障して不時着したために二人組の宇宙人(声・三木康一郎)が独身女性の石橋園美(新木優子)の部屋に転がり込んでくる。掌サイズのキュートな外見に絆され園美と同居している美容師の宇田川由日子(森絵梨佳)、近所に住んでいる歯科衛生士の笠原チズル(久松郁実)、家事が苦手の検事・篠原サツキ(太田莉菜)たちは宇宙人との友好的な関係を築き上げて行く。

しかし・・・驚異的な科学力を持つ宇宙人たちは明らかに地球人を見下していた。

ただし・・・「NASAに電話されること」だけはやめてほしいと懇願するのである。

園美にはタイへ三年間の長期出張中の交際相手・石川和志(菅谷哲也)がいるが・・・彼を瞬間転送することなども簡単な宇宙人の科学力である。

宇宙船の修理中に園美たちのペットのような存在になる宇宙人だが・・・地球人の日常生活には好奇心があり・・・園美たちの些細なトラブルに介入したり・・・トラブルを発生させたりするのだった。

たとえば・・・笠原チズルが主催した合コンでは・・・「本音でしか話せない」精神操作を行い・・・参加者の高山正人(弓削智久)に・・・「今夜、やらせてくれるのは誰なの」と言わせて修羅場に追い込むのだった。

参加者の野上顕(桜田通)はゲイであることを告白してしまうのである。

だが・・・とにかく・・・四人のラブラブシスターズは二人組の宇宙人と心を通い合わせるのだった。

その気になれば地球を破壊できる宇宙人を飼っている感じの女の子たちの構図が非常にブラックなわけである。

しかし・・・ついに・・・NASAは宇宙人たちの思念波(超常能力の源泉)を封印する手段を開発し、宇宙人の捕獲に乗り出す。

宇宙人の残した通信中継装置により・・・自宅のテレビとNASAのテレビの双方向通信システム化に成功した園美・・・。

「あれ・・・あなたは・・・」

宇宙人を捕獲した矢野博士(木下隆行)は・・・園美の元カレだった。

「園美?」

「誰なの」

「元カレです」

「石川さんの前に付き合っていた人?」

「浮気したんで別れたんです」

「あの女とは別れた・・・ヨリを戻してくれ」

「いやです」

「なんなら女房とは別れてもいい」

「女房?」

「矢野さんは結婚しているんです」

「不倫じゃないか」

「よし・・・それを文春にたれこもう・・・」

「そ・・・それだけはやめてくれ」

「じゃ・・・宇宙人を解放しなさいよ」

「はい」

まあ・・・その程度の話である。

こうして・・・園美の部屋に帰還した宇宙人だったが・・・。

「NASAに探知された以上・・・我々は一緒に暮らせません」

「え」

「お別れです」

可愛い宇宙人との別れに涙する園美。

「なぜ泣くのですか」

「あなたたちと別れるのが悲しいから」

「では記憶を消しますか」

「つらくて悲しいからといって思い出は消したりしないものよ」

「地球人の気持ちはよくわかりません」

宇宙人は宇宙船から地球を見下ろす。

一瞬・・・地球を破壊するのかと期待させる間があって・・・。

「あ・・・忘れものだ」

「とりにかえりましょう」

まあ・・・その程度の話です。

新木優子は「家売るオンナ」の事務員、久松郁実は「闇金ウシジマくん Season3」の受付嬢としてかけ持ちしていた夏だったのである。

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2016年11月 2日 (水)

選択されなかったのに共有された女のバラード(新垣結衣)

公衆トイレの話か?

全然、違うぞ。

まあ・・・人間はそもそも大気をシェアしている生き物だからな。

あらゆる人間は空気を交換しながら生きているのだ。

そんな生物が・・・自他境界線について考えること自体がおかしいのである。

少なくとも悪魔はそう思う。

これはファンタジーだ・・・そもそもガッキーが選ばれなかったり手放されたりするという事態にはなんの信憑性もないからな。

まあ・・・そんなこといったら・・・虚構なんか成立しないわけだが。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第4回』(TBSテレビ20161101PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・土井裕泰を見た。美しく聡明な女をもてあます男ばかりの世の中らしい。傲慢な男は淘汰される運命だからな。もちろん・・・客観と主観は目まぐるしく入れ替わり・・・臆病な男たちの集団からも勇者や卑怯者は生れ出るのだ。そういう世界で・・・恋愛を苦手とする男女ばかりが・・・ラブコメの主役として踊りだすのだった。

「ヒラマサさんが一番好きです」

就職活動の果てにいろいろとこじらせた無職の二十五歳・・・森山みくり(新垣結衣)に・・・薬師三尊像の前で告白され・・・不毛だった三十五年の人生を浄化された気分になる津崎平匡(星野源)だったが・・・狙った獲物は逃がさないタイプのイケメン・ストーカー風見涼太(大谷亮平)にはったりをかまされ・・・契約結婚の秘密を白状してしまうのだった。

そして・・・ヒラマサのみくりに対する「恋愛感情の有無」を確認する風見・・・。

もちろん・・・ヒセマサが「ノー」としか答えられないことを承知の上での追い込みである。

他人の持ち物を欲しがるタイプであることは間違いない風見は・・・ヒラマサに対してみくりの週一のシェアを持ちかける。

みくりが風見の話をするだけでも絶望的な敗北感を感じるヒラマサは・・・みくりを強奪される未来を予見し・・・現実から逃避するのだった。

一方、話が進展しないと見た風見はみくりを待ち伏せし・・・さりげなく「ひらまさと風見がみくりをシェアすること」についてみくりへ曖昧に伝える。

それから・・・半月・・・朝・・・みくりが朝食を作る包丁の音で目覚めるという至福の時を失う予感におびえるヒラマサと・・・「シェア」について妄想チアガールに変身して親指姫的南くんの恋人的小美人的サイズを一部お茶の間に堪能させつつ問いたいみくりなのだった。

「いってらっしゃい」と送りだしてもあたふたとしている雇用主ヒラマサに従業員みくりは夫が浮気しているのではないかと疑う如き不満を抱きつつ・・・勝沼ぶどう郷から持ち帰り氷菓となったマスカットを齧る。

「いたあああああああい」

虫歯だった。

「痛かったら手をあげてね」

「あげてまふうううういたはああああい」

「ああ・・・こりゃ大変だ」

歯医者を紹介してくれた伯母の百合(石田ゆり子)に早期治療に踏み切らなかった自分について懺悔するみくり。

「でも上手だったでしょう」

「でも義歯が高いの」

麻酔が溶けずに飲んだ水が駄々漏れのみくりだった。

銀歯なら三千円、プラスチックなら五万円、セラミックなら十万円の世界である。

「見えるところだと銀歯じゃ嫌だし・・・プラスチックは変色する・・・ここはセラミックよ・・・でもセラミックもかけるけどね」

「お金がないんです・・・給料は奨学金返済で消えたし」

「ケチなの?」

「え・・・」

「津崎さん」

「あ」

そういう関係ではないとは言えないみくりだった。

妄想チアガールはテーブルの片隅で「OKANE」と叫ぶのだった。

フィギュア化して売る気はないのか。

なんならロボットでもいいぞ。

そして・・・家計は千円ほどの赤字である。

「すみません」

「いや・・・この千円は」

「自腹で」

「今月は臨時の支出が多かったので仕方なかったと思います・・・それより従業員に自腹を切らせるなんて・・・ブラック企業のようです」

「ブラック企業をご存知でしたか」

「以前、勤めていたことがあります・・・上司が部下にたかる・・・嫌な職場でした」

「・・・」

「今後は・・・遠慮なく相談してください。雇用者と従業員の意志疎通は大切です」

「では・・・さっそく・・・シェアってなんですか」

「え」

ついに・・・白状するヒラマサだった。

「契約結婚のことを風見さんに見抜かれました・・・風見さんは週に一度シェアしてもらいたいという提案をしてきました。契約に副業の禁止条項はないので・・・後はみくりさんの自由意思に任せたいと思います」

もちろん・・・ヒラマサは・・・みくりが拒否することに・・・最後の望みを託していたのである。

しかし・・・「お金」が必要なみくりは即決するのだった。

「やります」

みくりは分割で瀬戸物義歯を購入し・・・ヒラマサの心は奈落に沈む。

兼業主婦となったみくりは妄想大陸で状況を客観視する。

風見は・・・早速「恋愛感情の有無」を訪ねてくるが・・・みくりはさりげなくはぐらかすのだった。

風見は・・・みくりの意外な手強さを感じる。

「面白がってますよね」

「僕は君のような小賢しい女も好きだよ」

「なるほど」

しかし・・・みくりはヒラマサと違って・・・自分の恋愛感情をしっかりと見つめている。

欧米人であればヒラマサとハグしたいと思うのは・・・抱かれたい気持ちがあるからなのである。

みくりはヒラマサが好きだと言う自覚があるのだ。

そして・・・ヒラマサも自分を好きなはずだとも思う。

しかし・・・自信はないのだった。

風見のための料理として「牛肉の煮込み」にチャレンジしたみくりは味付けに失敗し・・・カレー化で修正する。

そういう話をヒラマサとしたかったが・・・ヒラマサは・・・風見の話題をみくりがすることで不機嫌になるのであった。

教育テレビ風に・・・ヒラマサの心理を分析するみくり。

 ○     しつれん
ひ~~     しつれん
ら        しつれん
ま     しつれん

ヒラマサは自尊感情が低いタイプ・・・つまり自尊心が弱いタイプである。

自尊心が強いタイプは・・・成功体験を強く意識することによって傲慢になっていく。

自尊心の弱いタイプは・・・失敗体験を強く意識することによって卑屈になっていく。

もちろん・・・傲慢は積極性として美点にもなるし、卑屈も言いかえれば謙虚である。

ヒラマサは・・・恋愛について・・・いつも・・・相手に選ばれないという体験を積み重ね・・・童貞のまま廃人と化してしまったのだろう。

一方・・・風見はみくりについて積極的にヒラマサに語りかける。

「失敗カレー」も「変わり種カレー」として高評価なのである。

遠くからは親密に見える二人を同性愛者的傾向のある沼田(古田新太)は「愛を育んでいる」と観測するのだった。

しかし・・・「失敗していないチキンカレー」を食べるヒラマサは・・・みくりが風見に「特別なカレー」を作ったと推定し・・・激しく身悶えるのだった。

就職した社会人として親友の田中安恵(真野恵里菜)はみくりの遥か先を暴走中の元ヤンキーである。

ついに夫の浮気相手を探知した安恵は・・・手下のヤンキー二十人を現場に送りこみ・・・浮気現場の写真を360度パノラマ展開で撮影させたのだった。

食事の話題として・・・浮気男の弁明についてヒラマサに語るみくり。

「愛情を維持するために・・・必要なんですって」

「まったくわからない」

「そうですよね・・・ヒラマサさんなら浮気したりしませんよね」

「僕を分析するのはやめてくれ」

ヒラマサは逆上するのだった。

みくりへの嫉妬で心が騒ぐのである。

「煩わしい・・・」

自分のざわつく心を持て余すヒラマサである。

何もかも捨ててしまいたい自暴自棄の心境に陥るヒラマサだった。

自分を大切にする気持ちを失えば・・・地獄へまっしぐらなのだった。

何事もバランスである。

自分を愛しすぎるのも考えものだが・・・自分を嫌いになってどうするという話だ。

一方・・・みくりにも心の傷はあった。

あれは・・・大学三年の春・・・。

一学年上のシンジくんと交際していたみくり。

就職活動に悩むシンジくんに積極的なアドバイスをし続けたみくりは・・・。

「上から目線であれこれ言いやがって・・・お前、小賢しいんだよ」

破局である。

終劇である。

ハリネズミの針がハートに突き刺さったみくり。

しいんだよ!

(私は小賢しい女・・・いくらとりつくろっても・・・小賢しさが滲み出る)

(男の人は小賢しい女を嫌う)

(だから私は選ばれない)

(だから私は捨てられる)

(それでも・・・魂のルフラン)

激しく求めあいながらすれちがっていく二人だった・・・。

(いっそ、手放してしまえばいい)

逃げるのである。ヒラマサにとって逃げることは常套手段なのだ・・・。

ついに・・・「風見さんと交代してもいいですよ」と心にもない提案をするヒラマサ。

例によって残業による逃避をしながら・・・絶望へと還元されていく成功体験ゼロの男。

「愛される人は、いいなぁ」

愛された人も愛されなかった人も思わず心奪われる独白である。

風見は誘惑の言葉をかける。

「一緒に食事していきませんか」

食事の次は・・・アレを一緒にする気満々なのである。

風見の優しさに揺れるみくり・・・。

しかし・・・そういう優しさは・・・いつしか自分の分析を拒絶するようになると・・・みくりは分析するのだった。

なにしろ・・・超小賢しい女なのである。

みくりは・・・就職先である我が家に帰る。

そして・・・契約書を取り出した。

暗い表情で帰宅するヒラマサ。

「お疲れのところすみません」

「契約のことですね」

「はい」

寝室でATフィールドを全開にするヒラマサだった。

自分で自分の首を絞めたのだから仕方ないと自分を慰めるのだ。

覚悟を決めたヒラマサ・・・。

「私・・・恋人を作ろうと思うんです」

「・・・」

「でも・・・もしも風見さんを恋人にしたら・・・いろいろと面倒なことになると思うんですよ」

「・・・」

「職場では気まずくなるし」

「・・・」

「だから・・・ヒラマサさんが恋人になってください」

「え・・・」

「もちろん・・・私を受け入れてくれるのかどうかは・・・ヒラマサさんの自由意思です」

「それは・・・残酷な天使の活動方針的な何かですか」

「私が告白し・・・選ぶのはあなたということです」

「えええええええええええええええええええええ」

捕食される小動物化するヒラマサだった。

まな板の上の恋である。

そして・・・KZフィールド全開で・・・小賢しさナイフをヒラマサのハートに挿入するみくりなのである。

もちろん・・・お茶の間は笑えばいいと思う他はないのである。

その頃・・・百合はブリザードの中でホワイトアウトしていた・・・。

            ,、‐ ''"  ̄ ``'' ‐- 、
        /イハ/レ:::/V\∧ド\
       /::^'´::::::::::::i、::::::::::::::::::::::::::::\
     ‐'7::::::::::::::::::::::::ハ:ハ::|ヽ:::;、::::::::::::丶
     /::::::::::::::/!i::/|/  ! ヾ リハ:|;!、:::::::l
    /´7::::::::::〃|!/_,,、   ''"゛_^`''`‐ly:::ト   
      /|;ィ:::::N,、‐'゛_,,.\   ´''""'ヽ  !;K
        ! |ハト〈  ,r''"゛  ,       リイ)|    逃げ恥!
          `y't     ヽ'         //
         ! ぃ、     、;:==ヲ   〃     
         `'' へ、   ` ‐ '゜   .イ
              `i;、     / l         
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天使テンメイ様のドラマ原作第1巻の感想

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2016年11月 1日 (火)

完全無欠のトップランナーの逃走(山田涼介)

「カインとアベル」が登場する「旧約聖書」の「創世記」の著者は「モーセの十戒」で知られるモーセであると信仰されている。

モーセは紀元前13世紀ごろ実在したとされる古代イスラエルのユダヤ人指導者の一人である。

当時、ユダヤ人はエジプト人によって支配されていた。

アムランとヨケベトの次男として生れたモーセはエジプト王の「人口抑制政策」により間引きされかかる。

ナイル川に流されたのである。

しかし、モーセはエジプトの王女に拾われ養育される。

モーセには兄であるアロンがいた。

ある意味では・・・アロンとモーセの関係は・・・カインとアベルの関係のモチーフとなっていると言える。

成長したモーセはユダヤ人のためにエジプト人を殺害する。

エジプト王によって指名手配されたモーセは国外に逃亡するのだった。

ここでは・・・弟であるモーセは兄であるカインのように殺人の罪により追放されるわけである。

やがてモーセは潜伏中に「神の言葉」を聞き、ユダヤ人を「約束の地」に導く指導者となるのであった。

「カインとアベル」では・・・あっさり殺される弟だが・・・「アロンとモーセ」では・・・水子にされかかった弟が英雄になるのである。

そして「カインとアベル」でも・・・カインは弟の血の呪いによってエデンの東から追放される。

アベルとモーセが・・・「弟」という要素を共有しているところが面白いのである。

トップを走るランナーは風圧を受ける・・・二番手はその分、有利であると言われている。

で、『カインとアベル・第3回』(フジテレビ20161031PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・葉山浩樹を見た。主人公を弟に設定しながら・・・原案を「旧約聖書 創世記 カインとアベル」とすることが非常に興味深いわけである。高田総合地所株式会社の経営者一族の子供として自由奔放に育った高田優(山田涼介)がいつ・・・兄の長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)に殺されるのか・・・それは最終回までひっぱるのか・・・そんなことで面白くなるのか・・・それとも途中で殺されてゾンビとして復活するのか・・・手に汗握るわけである。しかし・・・ここまでのところ・・・そういう気配はなく・・・やんちゃでのびのび育ったお坊ちゃまくんと・・・後継者としてのプレッシャーで張り詰めたお兄ちゃんとの「釣りバカ日誌」にしか見えないのだった。

主人公が釣りバカであり・・・釣りバカは社長の隠し子の噂があったわけである。

このドラマでは・・・ハマちゃんがスーさんの実子であるに過ぎないのだ。

まあ・・・ドラマなんてみんなどこか似てるわけだが。

ちなみに今回、案件を落札するのは「鈴建」である。

白状なのか・・・白状しているのか。

罪は犯したが罪状は否認か。

まあ・・・オープニングがソビエト共産党に迫害されかかったショスタコーヴィチがトルストイの「社会主義リアリズムの高尚な理想を示している」という好意的な評価により復活する「交響曲第5番第4楽章」だからな。

・・・そんなことお茶の間には伝わらないと思うぞ。

仄かに思いを寄せるプロジェクトチームの年上の同僚・矢作梓(倉科カナ)にレストランに呼び出された優は自転車で駆けつける。

しかし、待ち合わせ場所には梓と歓談する兄・隆一と父親で社長の高田貴行(高嶋政伸)の姿があった。

しかも・・・隆一と梓は結婚を前提に交際中だと聞かされ・・・ショックを受ける優だがなんとか笑顔で祝福するのだった。

優はいかに尊敬できる兄かを示す一つのエピソードを披露する。

幼い頃・・・父親が海岸で愛用の万年筆を紛失した・・・六歳年上の兄と砂浜で捜索を開始した優。

しかし・・・万年筆は見つからず・・・優は根をあげる。

だが・・・兄は諦めずに捜し続け・・・ついに万年筆を発見。

父は万年筆を褒美として隆一に与えたのだった。

「僕は何をやっても中途半端なのに・・・兄はいつもやり遂げるのです」

「聖書」におけるカインとアベルでは・・・カインは父・アダムと農業に従事している。

それに対してアベルは牧畜で成果をあげる。

ここでは・・・「アウトレットモール建設」という新規事業が単なる不動産業に対するデベロッパー(土地開発)の在り方として描かれてるわけである。

カインとアベルの間には二つの「競争」がある。

ひとつは・・・配偶者としての梓をめぐる競争。

ひとつは・・・事業者としての成功をめぐる競争である。

隆一には橋本衆議院議員の娘である綾乃(宮地真緒)との縁談があったが・・・それを断るためにタイ国で勧めるデペロッパー「BDC」との合併事業に奔走する。

配偶者を得ることと事業の成功を両立させようとしたのだった。

一方、優は梓との共同作業により・・・仕事の面白さに目覚める。

梓と兄の交際を黙認する方向である。

しかし・・・梓に対する思いを削除したわけではない。

そのことを表現するために・・・まるで学生サークルのようなノリの営業部・第5課の同僚社員・柴田ひかり(山崎紘菜)は優と梓の関係を勘ぐり嫉妬する。

梓は・・・ひかりの気持ちを察して小料理屋「HIROSE」に誘うと・・・女将の広瀬早希(大塚寧々)の前で「恋人が別にいること」を明らかにするのだった。

もちろん・・・嫉妬深いひかりは・・・それだけでは疑いを解かない可能性もあるわけである。

一方・・・バンコクのデペロッパー「BDC」に巨大な負債があることが発覚し・・・資金繰りに追われる隆一だった。

すでに十億円を投資しているために・・・進退窮まりつつあったのである。

その頃・・・アウトレット建設地から地元の有力者である東白河商工会議所の兵頭光一会頭(イッセー尾形)がプロジェクトチームを率いる営業部長・団衛(木下ほうか)に面会を求めてくる。

団部長は優と梓とともに面談するが・・・兵頭は「建築に際して地元企業の入札参加」を求めてくるのだった。

ここで問題となるのは地域格差である。

いかにも福島県白川地方をイメージさせる東白河の地には・・・中央の建設会社の持つ技術力に対抗できない建設会社しか存在しないのである。

兵頭は・・・地元に利益を還元するために競争力を越えて地元建設会社と契約するように根回しに来たのである。

団部長は丁寧にお断りするのである。

すると今度は「白河湖の環境を守ろうの会」の代表を称する佐野(田中幸太朗)が現れる。

「アウトレット建設には環境破壊の惧れがあり容認できない」

団部長は・・・「環境には充分配慮する」と佐野代表を説得する。

しかし・・・翌日、佐野はデモ隊を率いて「建設中止」を訴えるのだった。

ここは・・・怪しげなボランティア団体に対するおちょくりなんだな。

お茶の間の多くは何らかの裏工作の気配を感じるが・・・団部長は困窮するのだった。

再度・・・コンタクトをとると・・・佐野代表は・・・「かねてから環境問題に配慮している地元企業の起用」を推奨するのだった。

問題発生の責任を負うことを危惧する団部長は・・・会社としては不利な契約に踏み切ろうとする。

しかし・・・素晴らしいインターネットの世界を利用したおぼっちゃまくんはたちまち・・・カラクリを見抜くのである。

地元建設会社にも「白河湖の環境を守ろうの会」にも兵頭が関与していたのだった。

それどころか・・・「白河湖の環境を守る会」という環境保護団体が別にあり・・・「白河湖の環境を守ろうの会」は偽物だったのである。

おぼっちゃまくんは・・・「白河湖の環境を守る会」と交渉し・・・建設賛成の合意を得た上で・・・代表を現地に派遣する。

「一体、あななたちは・・・どういう活動をしているのですか」

本物に問われた詐欺師の佐野と日雇い団体は退散するのである。

おぼっちゃまくん・・・いやハマちゃん・・・いやさ優の勝利を祝うファンファーレが地方都市にこだまする・・・。

その頃・・・隆一の心身に異常を見出した梓は問う。

「何か・・・困ってるんじゃないの」

「全然、平気さ・・・」

隆一にはぐらかされた梓は優に尋ねる。

「隆一さんは・・・何か困ってるのじゃないかしら」

「え・・・兄貴が困るなんて・・・そんなこと考えてもみませんでした」

「私は・・・そんなことはないと思うのよ」

隆一は最後の頼みの綱である「よつ葉銀行」の頭取・田島文彦(須永慶)から追加融資を断られ断崖絶壁に追い込まれていた。

夜更けに「思い出の万年筆」を持って優の寝室を訪れる隆一。

「お前は・・・記憶違いをしているよ・・・あの時、最後まで捜すのをあきらめなかったのはお前だったんだ・・・だから・・・これはお前のものだよ」

「兄貴・・・」

翌日、隆一は失踪した。

弟を殺す前に兄が自分で自分を追放してしまったらしい。

そんな「カインとアベル」はないと思うが・・・月9だからな。

なんだろう・・・このTBSの日9を目指しているのに日テレの土9みたいになっちゃいましたって感じは。

それは主人公が醸しだす高校生感が凄いからだろう。

いつまでも若く見えるのも考えものだよな。

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