IQ246~華麗なる事件簿~(織田裕二)無垢な奴ほどよく眠らされる(土屋太鳳)
水曜日の谷間である。
ミステリとしては下の下で・・・何の味わいもないネタドラマだが・・・とにかく・・・毎回、ヒロインの土屋太鳳が主人公に睡眠薬を「一服盛られて」昏睡させられるという変態場面だけが見せ場である。
相手の同意なしに薬物によって昏睡させることは傷害罪もしくは暴行罪にあたる。
相手を眠らせておいて色々なことをすることはさらに邪悪なことである。
少なくともそういう妄想は充分に出来るわけだ。
そういう「悪」を無自覚に描くことは・・・お茶の間にエンターティメントを届ける立場としては非常に危うい気がするが・・・キッドは悪魔なので面白ければ構わないとも思う。
美少女を眠らせる事は淫靡なことである。
そして・・・馬鹿だから毎回、同様の手口で眠らされてしまうヒロインは可愛いのである。
くりかえしのギャグとして・・・ギリギリセーフであってほしい。
一服盛られた自覚がないらしいヒロインだが・・・できれば「またやられたお」と言ってもらいたいものだ。
もちろん、これを実行する主人公には善悪の区別というものがない。
殺したければ殺すだろう。
母親ならば夜泣きをする赤ん坊に一服もるだろうし、男子学生ならば女子学生を酔わせて乱暴するわけである。
で、『IQ246〜華麗なる事件簿〜・第1~4回』(TBSテレビ20161016PM9~)脚本・泉澤陽子(他)、演出・木村ひさし(他)を見た。名探偵・シャーロック・ホームズを連想させる法門寺沙羅駆(織田裕二)とそのお目付け役として警視庁捜査一課から派遣され法門寺家護衛係の任務に就くワトソンを連想させる和藤奏子(土屋太鳳)が完全犯罪風の事件の謎を解く・・・という趣向である。警視庁としては素人に事件に介入されることに困惑を感じるのだが棚田警視総監(篠井英介)は黙認しているらしい。基本的にファンタジーであり・・・法門寺家は現代日本には存在しない特権を有する貴族的な家柄なのである。その辺りをもう少し強調しておいた方がいいぞ。なにしろ・・・趣味で犯罪捜査をしている一般市民の話だからな。
ワトソン子は・・・ドラえもんかくまのプーさんか眠気を覚えた香取慎吾のようなしゃべり方をする変人シャラクに「平民」と蔑まれ物置のような護衛係専用室に住み込みで常駐し・・・邪魔な時は美味しい料理、おやつ、ジュースなどに睡眠薬を盛られて昏睡してしまうのである。
かわいいぞ・・・疑うことを知らない警察官・・・かわいいぞ。
ここまで変人シャラクが・・・執事の賢正(ディーン・フジオカ)と共に解決した事件は・・・ふりかえれば奴がいる的なクリエイター(石黒賢)による自分より優秀な部下殺人事件、独善的な死刑執行人(佐藤隆太)の前科者殺人事件、セレブな人妻(観月ありさ)による夫殺人事件などお馴染みの犯人による月並な手口による完全犯罪風の犯行である。
お茶の間的には・・・IQ246の異能というものが・・・事件解決にどのように反映しているのか理解に苦しむ展開である。
まあ・・・脚本家のIQがそれほど高くないのは明白なので仕方がないことだ。
けれど・・・人を殺さなくても・・・天才外科医じゃなくても・・・物語を作るのが仕事じゃないのか?
まあね。
犯人たちには・・・モリアーティを連想させるマリア・Tからの犯罪を唆すメールが届いている。
マリア・Tは全世界を監視する神のような存在で・・・「13」を名乗るが・・・それはアルファベットの13番目の数字であるMを意味するらしい。
ちなみに・・・変人シャラクの妹は瞳(新川優愛)でひとみは・・・一と三である。
また・・・変人シャラクに懸想する死体愛好家の監察医・森本朋美(中谷美紀)のイニシャルはMである。
どちらかが・・・Mであるのが順当なところだろう。
毒々しい化粧が似合うのは監察医だろうが・・・。「沙粧妙子 - 帰還の挨拶 -」(1997年)の麻生萌子ふたたびか・・・二十年の歳月を無化する女優魂炸裂だな。
第4話は・・・脚本・栗本志津香、演出・坪井敏雄である。
愛人関係を思わせる音楽大学講師のピアニスト・二本松由里(国仲涼子)と大学病院で外科系統括部長・土門賢治(金田明夫)が加害者と被害者である。
生徒たちの演奏を録音するために調整室に入った由里はアリバイ工作をしてタワーマンション最上階のペントハウスで一人暮らしをする土門医師を殺害する。
なんらかのアクシデントでアリバイが崩されると思わせておいて・・・駅前道路が陥没して停電となって録音が停止したとかな・・・そこはすかしていくひねりがあり・・・努力の跡が窺える。
しかし・・・結局は・・・痴情のもつれではなく・・・二時間ドラマによくある認知されなかった娘とチョイ悪親父の愛憎のもつれによる悲劇である。
土門医師は・・・余命いくばくもない不治の病に冒され・・・残された時間を再婚相手と過ごそうとする。
母親の葬式にも顔を出さなかった父親を憎み・・・殺意を芽生えさせた娘。
娘を愛していないわけではなかった父親は・・・蘇生すると娘のために新しいアリバイを作り自殺する。
動機がやや弱いが・・・芸術家にありがちな狂気ということで話としては成立する。
ミステリ部分と小ネタ部分のバランスが・・・これぐらいならよろしいのではないでしょうか。
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