あなたのすべてを見せてください(山田涼介)
おバカドラマに徹しているな。
おバカな感じだが・・・基本的にはシリアスである。
シリアスなおバカってある意味、凄いな。
夕闇の海岸で年上の女の顔に触れて・・・ただ見つめ合う・・・。
翌朝、何事もなかったようにホテルのロビーで待ち合わせである。
何事もなかったのかどうかは・・・秘密のまま、進行なのである。
そして・・・ドラマチックなことなど何もないのに過剰にドラマチックなBGM・・・なんじゃあこりゃあなのだが・・・そういうお茶の間の反応は一切無視して・・・話をどんどん進めていくのだ。
まさに・・・人の話を聞かないタイプである。
その傍若無人な態度に圧倒されて・・・ズルズルと引きずられていく感じ・・・。
本当になんだか・・・凄いぞ。
凄いものを見せられている気がするぞ。
で、『カインとアベル・第7回』(フジテレビ20161128PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・谷村政樹を見た。原案は「旧約聖書 創世記 カインとアベル」である。「主」として登場する聖書の中の神は「自らを存在と名乗る」・・・唯一絶対の神として知られる。神はすべての人間を愛するが、人間が愛していいのは神だけなのである。神以外の何かを人間が愛すれば堕落であり、人類の多くは洪水で滅んだり、硫黄の雨で焼かれたりするのだった。そういう残酷な神が支配する精神世界が前提なのである。そういう「教え」の延長線上に原子力爆弾は存在するのである。
「僕の前ではすべてをさらけ出してください」
「・・・」
「もっとあなたのことが知りたい」
見つめ合った二人だったが・・・一夜あければ・・・高田優(山田涼介)と矢作梓(倉科カナ)は何事もなかったように・・・米国の高級リゾート経営企業「Draymond Hotel & Resort」」との提携事業についてのプレゼンテーション会場の準備を開始する。
「Draymond Hotel & Resort」の最高責任者スティーブン・ホールが来日し、高田総合地所株式会社とのビシネスについて交渉するのだ。
優は父親の高田貴行社長(高嶋政伸)から全権を委任されているのだった。
長男で副社長の高田隆一(桐谷健太)は弟の優が・・・婚約者の矢作梓(倉科カナ)と行動を共にしていることに激しく苛立ち・・・父親の寵愛が自分以外に向けられることに嫉妬しながら・・・進言する。
「今からでも・・・私が参加しましょうか」
「いや・・・この件は優に任せるのだ」
「しかし・・・交渉が失敗すれば・・・高田の将来に禍根が・・・」
「確かに・・・これは高田の将来を左右するビッグ・ビジネスだ・・・失敗すれば大変なことになる・・・しかし・・・成功すれば・・・優は英雄になる・・・高田一族にとって・・・素晴らしい戦力が誕生するのだ」
「・・・」
(つまり・・・私だけでは充分ではない・・・というのか・・・社運を賭けてまで・・・優に手柄をたてさせたいということか・・・)
幼い頃から・・・すべてを犠牲にして・・・父親の期待に応えようとしてきた隆一にとって・・・貴行の態度は・・・自分をないがしろにしているとしか思えない。
狭窄した視野の中で・・・不出来な弟は・・・魔性の存在として微笑みかける。
その禍々しさに・・・隆一は戦慄する。
・・・主はアベルとその供え物とを顧みられた。
しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。
会場にものものしくスティーブン・ホールが到着した。
英語と日本語が超時空間で交錯する挨拶がかわされる。
「私の名前は高田優です」
「長男のほうが来ると思ったが・・・私には次男で充分ということか」
梓は優秀な部下として上司を持ちあげる。
「彼は・・・わが社のホープなのです・・・大器晩成タイプとして絶大な信頼を受けています」
「おやおや・・・そうかね」
スティーブン・ホールは冷徹な視線を優にむける。
会場において・・・リゾートホテルのコンセプトについてあらためて説明する優。
「自分だけの空間・・・自分だけの自然・・・これを表現するリゾート施設を提供し・・・ドレイモンドにホテルに運営をお任せします」
「それについては・・・一応了解している」
続いて・・・接待的な会食が始る。
「美しい器だな」
「そうですね・・・和のテイストとして・・・こういうものをホテルでも使用できたらと思います」
「それは・・・契約条件に含まれるのかね」
突然、緊張した空気に戸惑う優。
「いいえ・・・これは彼の個人的な感想です・・・契約条件とは無関係なので・・・御安心ください」
梓は的確に軌道修正を行うのだった。
スティーブンの部下であるエリックは囁く。
「今の処・・・ボスの気持ちは揺れている・・・特に・・・立地について納得していないようだ」
「なぜ・・・ここか・・・ということですね」
翌日は現地視察のスケジュールが組まれていた。
ホテルのバーで優と梓は一息入れる。
「物凄く・・・緊張しました」
「いいえ・・・立派だったわよ・・・ただ・・・器の話は不味かったわ」
「そうですか?」
「ええ・・・ホテル経営はそこで使用される食器も含めてトータルでデザインされている。優くんの発言は・・・相手の領域に土足で踏み込んだことになるのよ」
「あ・・・そうか・・・迂闊でした・・・兄に叱られるところだった・・・」
「・・・リーダーとしての自覚を持ってね」
優は「兄の存在」によって梓の表情が曇ったことを見逃さない。
「梓さん・・・本当に仕事を辞めるのですか・・・こんなに仕事が好きなのに・・・」
「仕事と同じように家庭も大切よ・・・家庭を運営するのも一種のビジネスなんだから」
「本当にそうなんですか」
「私は・・・隆一さんに従うと決めたの・・・でも・・・彼は優くんに嘘をついているの・・・私、まだ迷っているの・・・」
「え」
「でも・・・彼は優くんには・・・そう思わせたいのね・・・私が・・・仕事を辞めることを選ぶ・・・それが彼の望みだから・・・でも・・・私は迷っている・・・確かに今の仕事にやりがいを感じるし・・・今という時も私にとっては喜びだから・・・こんな時間がなくなってしまうと思うと怖いもの」
「僕はもっと梓さんと仕事がしたいのです・・・今日だって梓さんがいなかったら・・・」
見つめあう二人。
見つめあう二人。
見つめあう二人。
まさかと思うが笑わせようとしているのか?
「ごめん・・・私・・・もう寝るね」
小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)は柴田ひかり(山崎紘菜)を慰める。
「御守り・・・渡せなかったのね」
「まあ・・・クラブ活動の選手とマネージャーじゃないんで」
「あなたの場面だけ・・・学生サークルの話みたいなのよね」
「たぶん・・・ティーンエイジャーの共感を求めているんだと思います」
「それか脚本家が中高生レベルなのよね」
「えへへ」
「片思いでいいの?」
「仕方ないんです・・・彼は神の寵愛を受けるスーパースターだから」
「まあ・・・アベルは早すぎたイエスのようなものだから・・・」
「何の話ですか」
「何でもないのよ」
リゾートホテルの建設予定地にスティーブンを案内する優と梓である。
そこには現地のホテルスタッフによって手配されたらしい剥きだしのベッドルームがあった。
「これが・・・コンセプトの具体的な提示です」
「君は・・・私のホテルの客に野宿をさせるのか」
「そうです・・・これこそが・・・あなたのホテルの客が・・・感じる最高のもてなしなのです」
「・・・」
ベッドに倒れ込む優。
「うわあ・・・最高だ」
「・・・」
「さあ・・・あなたもどうぞ・・・」
仕方なく・・・ベッドに身を横たえるスティーブン。
そこに神の息吹・・・風が吹き抜ける。
「あ・・・」
「どうです・・・素晴らしいでしょう・・・壁なんていらないんですよ」
「いい風だ」
冬の装いに身を包み・・・どうしても寒そうに見えるが・・・神の恩寵によって・・・時空間は楽園モードに調節されているのである。
神に愛されている優には・・・あらゆる人間が魅了されてしまうのである。
ただ一人・・・同じく神に愛されている隆一だけが・・・優から反射する神の光の恩恵に浴さないのである。
理不尽なほどに神に愛されている優は・・・あらゆるビジネス相手を魅了して・・・虜にしていくのだった。
利益配分の交渉に入る両者。
「こちらの取り分は30%でいいかな」とスティープン。
「15%で」
「それでは25%では」
「15%で」
「20%・・・これ以上は譲れない」
「・・・15%です」
「ええええええ」
交渉決裂である。
報告を受けて戸惑う貴行・・・。
「なぜ・・・20%で妥協しなかった」
「だって・・・儲けが出ません・・・みんながんばったし・・・」
「損して得とれという言葉を知らないのか・・・」
そこへ・・・スティープンからの連絡が入る。
「お前の息子には驚かされた」
「すまない」
「負けたよ・・・15%で妥結する」
「ええええええ・・・マジですか」
「私はジョークが嫌いだ」
神の力は偉大なり!
「優・・・お前は・・・高田優ではなくなった・・・これからは高田の英雄だ」
「だ・・・ダジャレですか」
祝勝会で・・・ひかりは・・・優に語りかける。
「私・・・決めたんだ・・・優を応援する・・・だから・・・どんどん偉くなってね」
ひかりは神への片思い一直線なのである。
隆一と過ごす・・・梓。
「優くんは・・・とんでもない逸材なのかも・・・」
「これで・・・あいつも少しは成長したかもね・・・まあ・・・これからの経験次第だな」
なんとか平静を保とうとする隆一に・・・無遠慮に油を注ぎこむ梓。
梓の目は神の光で眩んでいるのである。
「いいえ・・・優くんは・・・天才なのかもしれない・・・誰もが彼の元に集まってくるもの」
「あいつは・・・自由だから・・・とにかく・・・これで・・・高田の後継者は・・・俺だけのものではなくなった・・・君も乗り換えるなら今だぞ」
「何を言ってるの・・・私は隆一さんと結婚するって決めてるのよ・・・あなたについていくって」
梓は隆一の手をとって囁く。
しかし・・・その言葉にはどこか・・・空虚なものが漂っていた。
梓は優の光に魅かれ・・・同時に隆一の闇に魅かれているかのようだ。
もちろん・・・その闇は梓自身から拡散しているのである。
優は貴行に呼び出された。
「お呼びでしょうか」
「臨時株主総会でお前を取締役に推薦する・・・今後は役員の一人として私の右腕になってほしい」
「え・・・僕が・・・取締役って・・・親父ギャグですか」
「マジだよ・・・優」
なんだろう・・・新しいBLものなのかな。
主人公が親父を落して落しまくるという・・・。
あれだけ兄弟の仲を裂いておいて・・・兄弟が決裂したことに驚く梓だった。
無邪気ということは恐ろしい。
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