スニッファー 嗅覚捜査官(阿部寛)離婚できた男の娘(水谷果穂)
Sniffer(英語)とはくんくん嗅ぐ人で転じて匂い探知機の意味を持つ。
原作はウクライナ制作である。
スラブ圏には人狼の伝説があり・・・特殊な嗅覚という発想はそのあたりにあるのだろう。
しかし、「デカワンコ」は森本梢子の原作コミックが2008年、多部未華子主演のドラマが2011年でかなり先行している。
もちろん・・・ウクライナ人がパクったという証拠はどこにもない。
特殊な嗅覚を持つというのは「匂ったこと」のある人ならそれほど飛躍的な発想ではないのだろう。
認知症の母は嗅覚を失い・・・何も匂わない。
子供たちの喫煙をたちまち嗅ぎつけたあの頃が懐かしい。
で、『スニッファー 嗅覚捜査官・第1~6回』(NHK総合20161022PM10~)脚本・林宏司(他)、演出・堀切園健太郎(他)を見た。フィギュア・スケートによる谷間である。「忠臣蔵の恋」が一回お休みなのだった。いつの間にか日本女子陣が衰退しているな。世界のどこに天才が生れるか・・・は神の領域だが・・・それをどのように育成するかは人の問題である。日本は今・・・なんか・・・なんかな・・・的過渡期にある。革命は突然、嵐のようにやってくるものだ。
華岡信一郎(阿部寛)は超人的な嗅覚を持ち、「匂い」の研究を続ける変人である。警視庁特別捜査支援室からの要請を受け、犯罪現場に残された匂いを嗅ぎ、事件解決に協力するコンサルタントとして契約しているらしい。
警視庁と民間の協力者の関係は秘密のベールに包まれているのが一般的である。
警視庁特別捜査支援室を統括しているのは上辺一郎(野間口徹)で、黒野昌平(竹森千人)、細井幸三(馬場徹)、早見友梨(高橋メアリージュン)などの捜査官が配置されている。
北千住警察署から出向し、華岡のお守り役として配属されたのが小向達郎刑事(香川照之)である。
離婚歴のある華岡と婚期を逃した小向は凸凹コンビを組み、難事件に挑むのだが・・・相手は元エリートのテロリストや、元陸上自衛官のスナイパー、贋作すり替え美術品窃盗犯、新興宗教教団における連続殺人事件、人気キャスターの隠し子誘拐事件など・・・警視庁がどういう意図で発注しているのかはよくわからない。
捜査が難航するとたちまち・・・無関係を装う上辺一郎室長の立場もよくわからないのだった。
連続ドラマとして・・・ラスボス臭を漂わせながら・・・美人耳鼻咽喉科医師の末永由紀(井川遥)が華岡の恋のお相手として登場する。末永医師は「華岡の特殊な嗅覚」にも関心を抱いているらしい。
一方、母親の昌子(吉行和子)と暮らす小向刑事は昌子から「早期結婚」を奨励されている。
華岡には十数年以上前に結婚三年で離婚した元妻・片山恵美(板谷由夏)がいて・・・恋愛結婚だったが・・・今は当時のような「恋の匂い」は感じないらしい。一人娘で高校生の美里(水谷果穂)は母親が養育しているが・・・どうやら・・・美里は母親を煩わしく感じる年頃らしい。
そして・・・なにやら・・・よからぬ男と交際してる気配である。
高校を無断欠席して・・・母親を恐慌に陥らせたりしていたが・・・ついに殺人容疑で逮捕されてしまうのだった。
「男の人を刺したって・・・警察から連絡が・・・」
「殺人なんて・・・そんな馬鹿な・・・」
錦糸町署の鬼島刑事(尾美としのり)が美里の取調を担当していた。
「黙秘するのか・・・」
「・・・」
小向刑事は事件の概要を華岡に伝える。
「24日の未明・・・飲食店従業員・・・槇田翔太23歳が雑居ビルの空き室で・・・ナイフで胸を刺されて死亡・・・死体の側で片山美里が酩酊状態で凶器を握って倒れていたそうだ・・・痴情のもつれのあげくということで・・・彼女は重要参考人として事情聴取を受けているが・・・黙秘しているらしい」
小向刑事は顔見知りの鬼島刑事から面会の便宜を取り付けようとするが拒否される。
元妻は華岡を責めたてる。
「何のために警察に協力してるのよ」
「・・・」
警察関係者の家族から殺人犯が出ることは好ましいとは言えないので上辺室長は無関係を主張するのだった。
立場が不鮮明な鏑木参事官(徳重聡)に突然、取り入りはじめるのだった。
廊下ですれ違った華岡は鏑木参事官から嫌味を言われる。
「君が鼻男か」
「朝からゴルフですか」
「何?」
「この時期に枯れてないのは西洋芝だ。ゴルフ場で数時間過ごした直後でしょう」
「失礼な男だな」
「この男は警察組織とは無関係ですから」と上辺室長。
「しかし・・・娘が殺人犯となると・・・責任問題は発生する・・・君も首を洗っておきたまえ」
「滅相もございません」
呆れながら・・・独自捜査を開始する華岡と小向刑事だった。
鑑識課に変装して現場調査の強行である。
華岡は嗅いだ。
「被害者は誰かと話をしていた。そこへ・・・別の男と美里が来た」
「現場に・・・四人いたのか」
「時間経過が・・・大きい・・・捜査や鑑識の人間が匂いを・・・待てよ・・・現場にもう一人きた」
「え」
華岡は匂いから男の行動を脳内で再現する。
壁の隠し扉を発見する華岡。
「ここから・・・何かを持ち去った」
「そんなことまでわかるのかよ」
お茶の間で同意の声が沸き上がるのだった。
「ここに何かがあった・・・だが・・・何の匂いかわからない」
吸引機で残量物質を収集した華岡は研究室で分析を開始する。
元妻は泥酔していた。
「飲みすぎだろう」
「飲まなきゃやってられないわ」
「あの子と君は似ているな・・・」
「・・・」
「慎重そうに見えて・・・時々、馬鹿をする」
「あの子が人を殺して・・・娘が殺人容疑で逮捕されたのに母親が飲酒しているってこと」
「そんなことより・・・匂いだ・・・現場には残された匂いが問題だ」
「この匂い馬鹿・・・」
鬼島刑事は・・・華岡から事情聴取を求めた。
「十四年前に別れた後は母親まかせか」
「ケアはしていた」
「ケアか・・・被害者のことは知ってたのか」
「知らん・・・別れた妻も知らないと言っていた」
「聞くだけ無駄か」
パチンコ店で捜査をしていると闇金経営者に見えないこともない早見刑事が捜査結果を報告する。
「片山美里が被害者の槇田翔太と交際していたのは間違いないよね。槇田翔太は高校中退で・・・禁止薬物取締法違反の前科がある半グレよ」
「半グレって」
「不良以上ヤクザ未満のチンピラってことよ」
「美里は・・・そんな奴と付き合ってたって言うのか」
「お嬢様とチンピラの交際は定番じゃない」
「・・・」
「あそこで・・・麻薬の取引があって・・・トラブルになり・・・美里ちゃんは巻き込まれて濡れ衣を着せられたんじゃ・・・」
そこへ・・・上辺室長がやってくる。
「娘さん・・・自白したよ」
「なんだって・・・」
「殺人は認めたが・・・動機については黙秘しているらしい」
突然、警視庁の捜査一課から家宅捜査を受ける華岡の研究室。
「いくらなんでも・・・被疑者の親の家宅捜査って・・・」と小向刑事が捜査員に質す。
「所轄より先にやれって・・・上からのお達しなんだよ」
「どういうことだ」
「錦糸町署には麻薬の横流しの噂があるんだよ」
「なんだって・・・」
美里を取り調べる鬼島刑事に対する疑惑が浮上するのだった。
早見刑事は・・・美里と被害者の関係を交友関係からさらに調べあげていた。
「一年くらい前から真剣に交際していたみたいですね・・・被害者の部屋にも出入りしていたみたいです」
「・・・」
「男親は・・・娘の交際相手について聞くだけでも嫌なのに・・・相手がタトゥー入ってる奴なんだよ・・・その辺で勘弁してやれよ」
「被害者は昼間の仕事を探していたと言います・・・美里ちゃんとの交際が影響していたという証言もあります」
「つまり・・・娘は不良と付き合って・・・それで不良が真面目になろうとしていたと」
「まあ・・・楽観的に考えればそうですね」
恵美が倒れ・・・末永医師が介抱する。
「過労と寝不足ですね」
「娘が・・・こんなことになって・・・どうしてあんな男と交際していたのか」
「好きになるのに理由なんかないでしょう」
「僕がこの人と出会った時・・・特別な匂いがしたって言いましたよね」
「ええ」
「人は緊張すると代謝が変わる・・・彼女の体臭と代謝の変化が僕の体臭と代謝の変化と合わさってある種の匂いを生み出す・・・それが恋の匂いの正体だ」
「・・・」
「そして・・・美里が生れた・・・美里は一種の残り香です」
「まあ・・・娘さんにはせめて愛の結晶と言った方がいいですよ」
被害者の働いていたクラブの防犯カメラの映像が届いた。
「美里ちゃんが映っています」
「何」
再生される動画・・・美里が席を立った隙に・・・男が美里の飲み物に何かを投入する。
「ああ・・・美里・・・飲むな」
「これ・・・録画ですから」
「ああ・・・飲んじゃった」
「だから・・・録画ですから」
「お・・・昏睡したぞ」
「この時間・・・犯行時間直前です」
「あの状態で・・・人は刺せないな・・・」
「じゃ・・・なんで自白なんか・・・」
ついに・・・「現場の匂い」が「笑気ガス(亜酸化窒素)」であることを突き止める華岡。
「笑気ガス」は危険ドラッグの成分として利用可能の物質だった。
そして・・・その匂いは・・・鏑木参事官から立ち上る。
華岡は・・・鬼島刑事に通報した。
鬼島刑事は・・・正義の味方だったのだ。
「参事官には麻薬の横流しについての疑惑があった・・・別荘が怪しいと思うが・・・捜査令状はとれない・・・」
「どうしろと・・・」
「善意の第三者が発見すればいい」
「無茶苦茶だな」
別荘に侵入する小向刑事と華岡・・・。
「嗅げ!」
華岡は・・・「ブツ」を発見した。
鏑木参事官のゴルフのお伴をしている上辺室長。
そこに・・・警察車両が集結する。
「鏑木参事官・・・あなたを危険ドラッグの押収物横領および槇田翔太殺人教唆容疑で逮捕します」
「これで人生・・・パーですね」
上辺室長は掌を返した。
美里は無罪放免となった。
「なんで・・・自白なんてしたんだ」
「彼は・・・真面目になろうとしていた・・・私は家を出て・・・彼と結婚したかった・・・でも・・・彼はまともな仕事に就職できなくて・・・お金のことで喧嘩になって・・・ヤバイクスリでも売ればいいのにって・・・つい言っちゃって・・・それで・・・こんなことに・・・私が彼を殺したのよ」
「・・・」
「・・・」
馬鹿な子供に馬鹿とは言えない両親だった・・・。
そして・・・二人には復縁する気はないらしい。
一件落着して・・・華岡は末永医師に告白する。
「いい匂いがします・・・恋の匂いです」
末永医師は微笑んだ。
そして・・・最終回には兇悪なサイコパスが待っているのだった。
関連するキッドのブログ→神の舌を持つ男
| 固定リンク
コメント