新婚家庭だよ!決戦、決戦、また決戦(新垣結衣)
「逃げるは恥だが役に立つ」の音楽は末廣健一郎とMAYUKOが担当している。
「踊る大捜査線」(1997年)の音楽は松本晃彦が担当している。
そして・・・「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)の音楽は鷺巣詩郎が担当している。
さらに「シン・ゴジラ」の音楽は鷺巣詩郎と伊福部昭である。
「DECISIVE BATTLE」は勝敗を決する戦闘・・・つまり「決戦」である。
どのような戦いの場面でも・・・決死の覚悟で挑めば・・・「DECISIVE BATTLE/鷺巣詩郎」がフィットすることは言うまでもない。
まさに「名曲」である。
で、『逃げるは恥だが役に立つ・第5回』(TBSテレビ20161108PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・石井康晴を見た。日曜日は安息日だから教会の日。月曜日は馬車の時代の移動日、だから投票日は決戦の火曜日なのである。カレンダーネタとして「選挙」をぶっこんでくるタイムリー感覚・・・10.2%↗12.1%↗12.5%↗13.0%と鰻登りの視聴率も頷ける展開である。米国の大統領選は・・・変な髪型を脱したトランプ氏が勝利した。米国は平等よりも自由を選択したのだった。大統領選報道もBGMは「DECISIVE BATTLE」にすればいいのにな。それはさておき・・・「恋人になってください」「結婚しているのでイチャイチャしても問題ありません」「選ぶのはあなたです」と就職活動をこじらせてあきらかにノイローゼになっている従業員としての妻・森山みくり(新垣結衣)に攻められて防戦に追われる雇用主としての夫・津崎平匡(星野源)なのである。
DT(童貞)フィールドを全開にしても絶体絶命のピンチなのだ。
ここで・・・みくりの妄想は恋人候補としての政見放送へと展開していく。
「ヒラマサさんは自尊感情が低すぎて・・・恋愛沙汰から逃避するためにお茶の間の会話が全く弾みません。職場の空気が悪くなり私の寂しさマックスです。危うく、派遣先の上司の甘い言葉に揺れる有様です。しかし、恋人制度の導入により、ヒラマサさんの自尊心をアップさせ、同時に私の寂寥感が解消されることが可能になるのです」
「小賢しいぞ」
「そうです小賢しいのです・・・小賢しいけれど小悪魔的なのです」
「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」
「レインボーブリッジ封鎖できません」
「最後まであきらめずにこの国を守ろう」
「小賢しさナンバーワンの実績で、恋人革命を目指します。家事労働党・恋人候補・森山みくり、森山みくりをよろしくお願いします」
お茶の間は・・・修羅場となった。
ヒラマサは生れて以来三十五年・・・恋とか恋人とか愛とか愛人とかとは無縁に過ごしてきたのである。
ヒラマサの灰色の脳細胞は激しく閃いた。
立ち上がり、お茶を飲む。
そして常套手段に到達する。
問われた時には問い返す・・・基本である。
「恋人とはなろうとしてなるものなのでしょうか」
上から目線である。
しかし・・・みくりも後には引けない。
「やってやれないことはないと思います」
正論に正論で返しているがほとんど意味不明である。
(恋人・・・恋人・・・恋人ってなんだっけ)
「みくりさんにとって恋人の定義とは何ですか」
「一緒に食事をしたり」
「してます」
「一緒におでかけをしたり」
「友達で充分ではないですか」
「スキンシップをしたり・・・」
「ス・・・」
「人生とか仕事でクタクタになった時・・・ギュッとされたり・・・頭を撫でてもらったり・・・そういう癒しが欲しいことはありませんか」
「癒し・・・」
考えすぎて身体が傾くヒラマサだった。
合わせて小首を傾げるみくりにお茶の間で悶絶者多数発生である。
「しかし・・・それはもはや職場ではないのでは」
「勤務は平常通りです・・・勤務外に恋人タイムを・・・」
「そこまて癒されたいなら・・・本当の恋人を作るべきなのでは」
「私は・・・恋人のおいしいところだけが欲しいんです」
「お・・・」
(恋人のおいしいところって・・・なんなんだ)
ヒラマサの脳裏をみくりの美味しい部分が乱舞するのだった。
それはもはや・・・ヒラマサの精神を破綻寸前にまで追い込む。
その様子に・・・みくりは撤退を決意する。
みくりは小悪魔ではなく・・・小賢しい女だったからだ。
「今すぐ・・・結論を出さなくても・・・遅くまですみませんでした」
「あ」
問題は先送りされたのだった。
みくりは・・・深読みすれば小賢しい羊の皮をかぶった小悪魔的な狼なんだな。
結局、みくりの攻撃は二人の関係をギクシャクさせ・・・ヒラマサの精神をモヤモヤで満たした。
作戦失敗であるが・・・長い目で見れば作戦の失敗の積み重ねが勝利を呼ぶのだ。
狙った獲物は逃がさないタイプのイケメン・ストーカー風見涼太(大谷亮平)は美処女の百合(石田ゆり子)に紹介され購入した分譲マンションの共有配管清掃の機会を用いて家政婦みくりを臨時シェアするのだった。
管理人の代行も可能だが平日の日中に行われる共有配管清掃は居住者の立会が望ましいのである。
「彼と喧嘩でもした?」
獲物の些細な変化も見逃さず、女心への侵入を画策する性の狩人である。
「いいえ・・・喧嘩どころか・・・それ以前です」
ヒラマサに対しては裸で攻撃するみくりだが・・・シンジから受けたダメージのために風見に対しては精神防御全開なのである。
これは伯母である百合のAI(アンチイケメン)フィールドと相似状態にある。
このドラマは各人の拡張する精神防御フィールドの縄張り争いなのである。
「無理を言って申しわけない」
「臨時収入大歓迎です」
風見は精神的局面を拡張しようとするがみくりは金銭的局面を強調するのだ。
見事な攻防である。
しかし・・・孤独死を惧れ・・・アンテナを伸ばす百合は・・・みなとみらい駅前で風見が忘れた傘を届けに来たみくりを目撃してしまう。
イケメンが悪しかなさないという信念で生きる百合はたちまち・・・狼に誘惑され不倫の罠に絡め取られてしまった憐れな姪の悲劇を妄想するのだった。
一方・・・モヤモヤで心が視界不良となったヒラマサ・・・。
(なぜ・・・恋人になろうなんて)
(好きでもない相手と)
(いや・・・好きではなくもないのか)
(いやいや・・・一番好きというのは・・・他にも好きな人がいるということだ)
(いやいやいや・・・一番が社交辞令なのだ)
(ハグなんて・・・考えたこともない)
そこで忍びよった休みの日には家族サービスを欠かさない日野秀司(藤井隆)にあすなろ抱きされるヒラマサだった。
「スッパですか」
秀忠でもなければ佐助でもないぞ。
「寂しそうだから慰めてやれって」
密かにヒラマサを狙う沼田のお屋形様(古田新太)の指図だった。
「真田丸」のことは忘れろ!
ヒラマサの最終結論は「人間抱き枕」に徹するという自虐的なものだった。
自分を一部婦女子に愛されるブサカワキャラクターと認定したのである。
憐れな・・・。
ガラスの天井を背負ったまま繁殖の機会に恵まれなかった百合は老後の砦であるみくりの安全を確保するために・・・勤務先の化粧品会社「ゴダールジャパン」を定時で勤務終了する。
「あの顔色だと別れ話かしら」と部下の堀内柚(山賀琴子)・・・。
「お前・・・憶測はやめろよ」とイケメンの梅原ナツキ(成田凌)・・・。
「お前なんて呼び方やめてよ・・・俺様系コミックの読み過ぎよ」
「そんなもの読むのは専業主婦を夢見る少女だけだろう」
上司を巡る三角関係である。
百合は・・・「3Iシステムソリューションズ」で勤務を終えた風見を待ち伏せするのである。
「今朝のあれはどういうこと・・・」
「見ていたのですか」
「姪を毒牙にかけたの」
「それについては・・・みくりさんにお聞きください」
「そんなこと・・・聞けるわけないでしょう」
「あ・・・津崎さんだ」
思わず身を隠す百合。
脱出した風見は裏街道の利用でヒラマサに追いつく。
「シェアがバレました」
「えええ」
みくりは津崎家で夕食を作っていた。
百合から着信がある。
(一体どういうこと!)
「え」
(津崎さん・・・まさかDVとか?)
「ええっ」
(それでも不倫なんか!)
「えええ」
津崎が帰宅して事情を説明する。
降り出した雨に打たれて路上を走る百合だった。
「イケメンめ~」
津崎家では静かなる夕食で善後策を検討する。
「ぼくたちが新婚っぽくないから・・・」
「ハグしましょう」
「え」
「恋人繋ぎより簡単ですよ」
「・・・」
「万歳して・・・私がアタックして、衝撃波を感じたら、腕をクロスしてワンツースリーです」
「はい」
「や」
「や」
「・・・」
「・・・」
「照れますね」
「食事をしましょう」
もちろん・・・ヒラマサは急いで着席する必要があった。
勃起したからである。
○ ○
ひ ~◎◎~
ら み
ま く
さ り
卜↗ ◎
人 人
(鎮まれ・・・)
無表情になったヒラマサの反応を読みとろうとするみくり。
(どうなんだ・・・壁は・・・壊れたのか・・・そうではないのか)
肝心なところでヒラマサの男心を読みとれないみくりだった。
ヒラマサの血液は下半身に集中してそれどころではないのである。
「ハグの日を決めたらどうでしょうか」
「ハグの日・・・月一でいいですか」
「週一でお願いします」
「では・・・火曜日はハグの日ということで」
「資源ゴミと一緒でわかりやすいですね」
翌日の「ゴダールジャパン」・・・。
雨に打たれた百合は不調だった。
あれこれと上司の失恋を気遣う部下たち。
「梅原ってイケメンなのよね」
「はあ・・・」
「どうしてムカつかないのかしら・・・部下だから?」
「・・・」
その他の部下たちは「梅原を狙いに行った~」と憶測するのだった。
一方・・・「3Iシステムソリューションズ」では風見が情勢を窺う。
「どうなりましたか」
「こちらで問題を解決しますので・・・風見さんは何もしないでください」
風見に対して消極的な防御姿勢をとるヒラマサである。
沼田は・・・「攻めと受け」が攻守交代した気配を読みとるのだった。
「風向きが変わった・・・」
「どういう意味ですか」と佐助。
「さしつさされつってことよ」と沼田のお屋形様。
ゲイの妄想からは腐臭が漂うのだった。
みくりは勤務外タイムで親友の田中安恵(真野恵里菜)とお散歩中である。
「ついにハグまでこぎつけたの・・・ねえ、聞いてる?」
「そんな話はつまらないすぎわ」
愛児に同意を求める安恵だった。
安恵は「新婚ごっこ」の二人よりももっと切迫した深刻な問題を抱えているのである。
「家事代行のアルバイトをしただけ」と百合に伝えるみくり。
しかし・・・納得できない百合は再び風見を攻める。
「どうして・・・正直に言わなかったの」
「こちらに・・・後ろめたさがありました・・・好きなので」
みくりに対する横恋慕を百合に告白する性の狩人である。
再び・・・あらぬ妄想で沸騰するここまでの生涯独身の百合だった。
津崎家アタックである。
みくりはとりあえず酒で接待する。
屋外でヒラマサを迎えたみくりは・・・ベランダの百合に「ハグ」を見せつける作戦を伝える。
「今日はハグの日ではありません」
「前借りでお願いします」
つまり・・・このハグは・・・雇用者の従業員に対する福利厚生の一環なのか・・・。
「醸しましょう!新婚感!」
「出しましょう!親密感!」
「や」
「や」
「どうですか」
「見ている感じです」
「回転します」
「や」
「や」
「見ていますね」
しかし・・・コンタクトを外していた百合は見えていなかった!
八岐大蛇的に酔い潰れそうになった百合は・・・帰宅するのであった。
だが・・・百合に対して新婚感をアピールすることは重要な課題なのである。
休日出勤をする百合のオフィスの眼下の芝生でピクニックを敢行する二人である。
「百合ちゃんはカフェイン中毒なのでコーヒーが出来るまでに三回は窓際で目の保養をします」
「僕たちに気がつくでしょうか」
「このマットは一品モノで・・・百合ちゃんの贈り物です」
「なるほど」
ピクニックの思い出が蘇るヒラマサ。
「一度だけ家族でピクニックをしました・・・母は郷土料理の瓦蕎麦をお弁当にしたのですが・・・父は冷えた蕎麦など食えるかと怒りだし・・・結局・・・僕だけが重箱一杯の蕎麦を食べたのです・・・まさに地獄のピクニックでした」
「まさに子は鎹ですね」
「そういえば・・・今日は母の誕生日でした」
「電話してくださいよ」
「はい」
ヒラマサは実家の母親・知佳(高橋ひとみ)に電話をした。
(みくりちゃんにかけろって言われたんじゃろ)
みくりは安恵からの着信に気が付き・・・折り返す。
(私ね・・・離婚届だしてきた・・・親はね・・・浮気ぐらい我慢しろって言うけど・・・私、どうしても許せなかったの)
「私は・・・いつでもやっさんの味方だよ」
(ひらりを不幸せにしたのかな)
「ひらりちゃんだってやっさんが哀しいのは嫌だと思うよ」
(・・・)
合流する二人。
「ひらりちゃんは鎹になれませんでした」
「・・・」
「私・・・何もできなくて」
「ただ・・・味方といってくれる人がそこにいるだけで救いになるでしょう」
「・・・」
「父と母はピクニックの帰りに本当の瓦蕎麦を食べたそうです・・・僕は疲れて眠りこんでいたらしい・・・その蕎麦はとても美味しかったそうです。僕にとって地獄の思い出だったものが・・・両親には至福の記憶だったらしい」
「私・・・百合ちゃんに正直に話そうと思います」
「しかし・・・それでみくりさんはスッキリするかもしれませんが・・・今度は百合さんが心に負担を負うのではありませんか」
「・・・」
「この問題は僕たち二人で背負わなければなりません」
「二人で・・・」
「はい」
「私・・・今、とてもハグしたい気持ちです」
「今日はハグの日ではありません」
「前借りの前借りでお願いします」
二人はハグをした。
ヒラマサはみくりの頭を撫でた。
そこに百合がやってきた。
「平日の昼下がりからイチャイチャしてくれるわね」
「いや・・・これは」
「仲良きことは美しき哉」
まさに・・・結果オーライである。
二人は瓦蕎麦風焼き茶そばを作って食べる。
雇用主と従業員がフラットな職場の和気藹々・・・。
みくりの心は幸福で満たされた。
「美味しいですね」
「美味しいです」
ヒラマサも平穏を感じる。
みくりは「恋人」として当選した気分になった。
しかし・・・二人は恋人である前に夫婦なのだった。
本当の夫婦の道はさらに険しいと相場が決まっているのである。
大統領だって当選してからが本当の決戦なのである。
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