天地を揺るがす大蛇の如き長距離砲撃が夢の城を砕く時(長澤まさみ)
慶長五年(1600年)、関ヶ原の合戦を控えた徳川家康は大坂城て豊後国に漂着した英国人・ウィリアム・アダムスを尋問する。
アダムスの知見に感心した家康は彼を外交顧問として活用することになる。
家康の御用商人・馬込勘解由の娘・お雪を妻としたアダムスは三浦按針と名乗り、二百五十石取の旗本となった。
慶長九年(1604年)、安針の外交努力により浦賀にスペイン商船が入港する。
慶長十四年(1609年)、家康は平戸にオランダ東インド会社の商館の開設を許可する。
慶長十八年(1613年)、家康は平戸にイギリス東インド会社の商館の開設を許可する。
家康はキリスト教の布教を禁じつつも、西洋諸国との朱印状による交易には熱心だったのである。
家康は慶長十九年(1614年)六月・・・射程1000~6000メートルと言われるカルバリン砲四門をイギリスから購入することに成功していた。
関ヶ原の陣の勝敗を決する秘密兵器は大坂城北方の備前島にある片桐且元の陣に淀川を経て搬入された。
すべては家康の計画通りだった。
で、『真田丸・第46回(NHK総合20161120M8~) 脚本・三谷幸喜、演出・保坂慶太を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は江戸幕府・初代征夷大将軍にして大御所様の徳川家康の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。戦が三度の飯よりも好きな牢人衆たち・・・老いたりと言えども矢を手取る佐助、とりもち使いの出浦・・・慧眼の叔父上・・・完全にくのいちのきり・・・一同爆笑につぐ爆笑の素晴らしい展開でございましたねえ。なかでもあの手この手の家康は流石でございました。
大坂冬の陣における賤ヶ岳の七本槍の動向まとめ
脇坂安治・・・次男・安元が幕府方として出陣
片桐且元・・・幕府方として出陣
平野長泰・・・江戸留守居役
福島正則・・・嫡男の福島忠勝が幕府方として出陣
加藤清正・・・死亡
糟屋武則・・・消息不明
加藤嘉明・・・嫡男・加藤明成が幕府方として出陣
まあ・・・勝つ方につくのが基本でございますね。
慶長十九年 (1614年)十二月四日、徳川秀忠は本陣を岡山に移す。真田丸での大敗を受け、秀忠は拙速な攻撃を禁ずる。五日、奇襲を警戒した徳川家康は茶臼山の本陣から住吉に後退。公家衆を迎えて茶の湯を嗜む。大坂城谷町口の織田長頼の陣を藤堂高虎隊が夜襲。八町目口の長宗我部勢が援軍したために藤堂勢は後退する。六日、家康は茶臼山本陣に移動。山頂に館を設け、周囲に堀を巡らせた茶臼山城の周囲を旗本三万人が警護する。その前方に布陣するのは伊達政宗勢一万人である。大坂城南方には徳川方の塹壕が展開し、砲台の構築が行われる。七日、本多忠勝の次男・忠朝は天満に着陣する。忠朝の斥候の報告に不満を抱いた家康は激しく叱責する。毛利秀就、福島正勝が着陣。八日、家康は参陣した外様大名にそれぞれ銀百貫目を贈呈した。城中の織田有楽斎、大野治長らが家康のもちかけた和議交渉に応ずる。十日、家康は真田信繁に調略を仕掛けるが不首尾に終わる。十一日、家康は金掘人足による坑道掘削を開始する。十二日、家康は大坂城北方の天満から備前島にかけての砲台の視察を行う。十四日、阿茶局が和議の準備のために茶臼山に到着。十五日、一斉砲撃のための準備が整う。輸入品、国産品などおよそ百門の大砲が大坂城を射程に捉えていた。十六日、一斉砲撃が開始され、城内は混乱する。
家康の使者として真田丸に忍びこんだ真田信尹は幸村と酒を酌み交わす。
「四日の戦いは見事であったな」
「長篠の戦いを仇を討ったようなものでございます」
「大御所は・・・信繫殿に・・・信濃一国五十万石をそっくり賜るそうじゃ・・・」
「亡き父上が聞けば喜ぶでしょう・・・」
「降らぬか」
「兄上の所領まで奪うわけには参りませぬ」
「そうか・・・噂では近江から京を経て新しきフランキ砲が運び込まれるそうだ」
「フランキ・・・大友宗麟の国崩しのようなものですか・・・」
「その程度の大砲ではないらしい・・・大鉄砲のようなものでもなく・・・十町(およそ千メートル)の先から的を狙い撃つそうだ・・・一里(およそ四千メートル)の彼方でも砲弾が届くという」
「そのようなものが・・・まるで妖術のようでございますな」
「大御所が紅毛の者から購ったらしい」
「大坂の城にある和大砲や大筒の比ではないようですね・・・」
「南蛮(南ヨーロッパ)より・・・紅毛(北ヨーロッパ)の砲術の方が先じておるらしい・・・」
「・・・」
「新しきフランキは明日にも備前島に陸揚げされると言うぞ・・・」
「用心いたします」
幸村に従う河原衆は少なく・・・水軍については・・・お手上げであった。
幸村は猿飛忍軍の投入を決めた。
「佐助・・・川筋に石火矢と大筒で待ち伏せを仕掛けよ」
「御意にごわす」
真田佐助は大猿、木猿、石猿、山猿、白猿の猿飛五人衆を引き連れ、淀川沿いに潜む。
冬の枯野は待ち伏せには不利であった。
才蔵が上流に忍び、カルバリン砲輸送船を発見次第、伝心で知らせる手筈である。
(来たぞ・・・)
それぞれが大鉄砲を構えた猿飛五人衆は河原を走り出す。
「あれだ」
巨大な砲を積んだ軍船を佐助が視野に捉える。
可能な限り接近し、一斉射撃により、撃沈するのが佐助たちの目論みである。
その時、銃声が響きわたる。
「お」
猿飛五人衆は弾幕に包まれた。
石猿、山猿が倒され、仕方なく、残ったものは間近の敵に発砲する。
潜んでいた伊賀者が大猿の放った大鉄砲に上半身を吹き飛ばされる。
(抜かった・・・)
佐助たちは待ち伏せされていたのだった。
半蔵影の軍団が・・・包囲の輪を縮めていた。
逃走を図る佐助たちの背後で戦船が川を下る。
銃声がこだまする・・・。
「河原で騒ぎがあったようじゃの」
大砲輸送の指揮をとる本多美濃守忠政が服部半蔵に声をかける。
「真田の忍びのようでござる」
「カルバリン砲を狙ってきたか」
フランキ砲の指南役である田付四郎兵衛景澄が不安を目に浮かべる。
「ご安心あれ・・・この先の川筋には牧野勢の鉄砲隊が控えておりまする」
「まもなく・・・到着でござる」
案内役の片桐且元の弟・貞隆が告げた。
備前島に構築された砲台では家康の砲術指南役の一人・・・稲富宮内重次が待っていた。
且元は京都大工頭の中井大和守正清の作成した図面を広げている。
「まずは天守閣を狙ってはいかがであろう」
「御意」と幕府鉄炮術方の井上外記正継がすでに設置された和製カノン砲を操作する。
備前島砲台の目付で長島藩主の菅沼定芳はカルバリン砲の揚陸を指揮する。
備前島にはこの他、半カルバリン砲や長砲身型セーカー砲など・・・徳川家康がコレクションした大小様々なフランキ砲、和製フランキ砲が配置されていた。
田付四郎兵衛景澄は設置を終えたカルバリン砲に初弾を装填する。
「では・・・放ちまする」
砲弾は一撃で大坂城天守閣を撃ち抜いた。
戦国時代の終焉を告げる砲声が京の都にまで響く。
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