夜更けのキャットファイト(成海璃子)
女の敵は女・・・という前提によって繰り広げられる女同志の戦い。
その前提にあるのは繁殖の問題である。
裏切っているのが男であっても男を殺したら繁殖できないのでライバルである女を殺すわけだ。
男性が三角関係を清算する場合は出刃包丁を二本購入し、二人の女性に渡し「生き残った方と交際する」と宣言するだけで問題が解決する。
男女雇用機会均等法以後の世界では通用しない場合があるので注意が必要である。
ああ、昔はよかったなあ。
で、『黒い十人の女・第6回』(日本テレビ201611032359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・豊島圭介を見た。不倫モンスターである東西テレビのドラマ班プロデューサー風松吉(船越英一郎)の毒牙にかかり、そうとは知らずに十番目の女(九番目の愛人)になってしまった東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)・・・。親友のアロママッサージ店勤務・文坂彩乃(佐野ひなこ)に愚痴を言おうと思うが先約があると断られる。行きつけの店で劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)に遭遇した久未は「愛人仲間と待ち合わせ」していると聞き戸惑う。そこに現れたのは・・・彩乃だった。
唖然とする彩乃、激昂する久未、歓迎のスマイルの佳代。
阿修羅三面からの修羅場である。
(えええええ・・・親友だと思っていたのに・・・彩乃、あんたもかよ)
(あああああ・・・久未にだけはバレないように・・・口止めにきたのに)
「煙草一本、ください」
久未は佳代に煙草を強請ると爆発的な火力で着火するのだった。
「あのね・・・話を聞いて欲しいの」
裏切ったわけではないと何とか説得したい彩乃。
「表に出ろ」
悪魔の放った憎悪の矢に胸を貫かれた久未は問答無用で真夜中のキャットファイトに突入するのだった。
「え・・・ちょっと・・・どういうこと」
戸惑う佳代である。
「私たち・・・愛人同志・・・友達になろうとしただけなのに」
久未と彩乃はすでに友達だったのである。
先手をとった久未のボディアタックでゴミの山にふっとぷ彩乃。
「あんたのこと・・・信じてたのに」
「だから・・・話を聞いてってば」
繰り出される久未の女子プロレス的連続攻撃・・・ドロップキック、袈裟切りチョップ、エルボー・スマッシュからのブレーンバスターが炸裂する。
路上でそれは死ぬぞ・・・。
覚悟を決めた彩乃も噛みつき攻撃から逆襲に転じ、張り手、地獄突き、ストレートナックルと畳みかける。
絞め技の応酬から・・・異種格闘技・アントニオ猪木VSモハメッド・アリ戦ま様相と成る二人だった。
「いい加減にしろおおおおおお」
仕方なく佳代はジャイアント馬場の32文人間ロケット砲で二人をノックアウトするのだった。
いつの時代だよっ。
その頃・・・女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)とヘアメイク担当の水川夢(平山あや)はこれみよがしでライバル排除を目論む「ハバア」こと東西テレビアソシエイトプロデューサー・弥上美羽(佐藤仁美)対策をミーティング中だった。
「あのババア・・・私ばかりをターゲットにしやがって」
「あのババア・・・客商売だとおもってなめてんだよ」
「自分も同じ穴の狢だってわかんねえのか」
「マネージャーの長谷川さんにもたれこんだみたいだよ」
「くそババア」
「でも・・・長谷川さんもおそらく愛人だよ」
「え」
テディベアのラテアートも般若と化すのだった。
二人は・・・芸能プロダクション・マネージャーで志乃担当の長谷川冴英(ちすん)を訪問する。
「ババアからなんか聞きましたか」
「心配しないで・・・」
「長谷川さんも愛人ですよね」
「え」
「あいつ・・・どんだけ手近な女に手を出してんだ」
風の愛した女たち・・・先行順をまとめてみよう。
妻・レストラン経営者の風睦(若村麻由美)・・・。
最初の愛人・売れない女優・如野佳代。
二番目の愛人・弥上美羽・・・職場の部下。
三番目の愛人・アロママッサージ店経営者・卯野真衣(白羽ゆり)・・・部下の妻。
四番目の愛人・皐山夏希(MEGUMI)・・・脚本家という出入りの業者。
五番目の愛人・水川夢・・・ヘアメイク・スタッフという出入りの業者。
六番目の愛人・文坂彩乃・・・愛人の店の従業員。
七番目の愛人・相葉志乃・・・アイドル女優。
八番目の愛人・長谷川冴英・・・愛人のマネージャー。
九番目の愛人・神田久未・・・勤務先の受付嬢。
・・・手当たりしだいに口説いているな・・・。
とにかく・・・「商品」だからという理由で志乃を排除しようとした美羽の目論みは外れ・・・対美羽で結束する志乃、夢、冴英だった。
一方・・・「人妻」だからという理由で蹴落としにかかった卯野真衣はドラマ「淡い三人の男」のキャスティング担当プロデューサーである夫・火山(山田純大)から離婚を申し出られていた。
「やり直せないの」
「お互いに愛人がいるんじゃあ・・・無理だろう・・・円満に別れよう」
「私のこと誰に聞いたの」
「番組の女性APだよ」
「女性AP」
すべての画策が裏目、裏目に出ていることも知らず・・・美羽は松吉とレストランで食事中だった。
美羽はとにかく・・・「志乃」にとどめを刺そうとしている。
「APとして・・・志乃さんとは別れるべきだと思うわ」
「APとして」
「やはり・・・商品との不倫はリスクが大きすぎるでしょう」
「わかった・・・」
「わかってくれたのね」
「うん・・・まず・・・君と別れよう」
「え」
「だって・・・不倫のリスクは同じだもの・・・APから言われたら仕方ない」
「ちょっと待って・・・なんでそうなるの」
「相手が誰でもプロデューサーの不倫が発覚したら・・・番組は終わりだ」
「やめて・・・別れないで」
「え・・・いいの」
泣いてすがる美羽に微笑みで答える松吉である。
これは・・・筋金入りの悪魔だな。
後輩愛人たちの傷の治療をする佳代。
「二人が喧嘩することなんかないのよ・・・誰もしたくて不倫なんかしてないんだから」
「・・・」
「彩乃ちゃんは久未ちゃんより先に愛人になったわけだし・・・久未ちゃんは何も知らなかったわけだし・・・悪いのは風でしょう」
「ですね・・・本当に風さんには死んでもらいたいです」
「今夜は泊っていく?」
「帰ります」
久未と彩乃にふられた佳代は・・・脚本執筆中の夏希の陣中見舞いに出向く。
愛人たちのそれぞれの夜が更けて行く。
ドラマ「淡い三人の男」がクランクイン。
現場で・・・女優としておよびでない情熱をそそぐ佳代・・・。
しかし・・・ばばあVS志乃、夢、冴英の陰湿な女の戦いは・・・靴の踏み合い、ヘアアイロン、アツアツおしぼり、レモンのしぼり汁、カチンコとヒートアップしていく。
そして・・・ついにばばあをトイレに閉じ込めて上からバケツの水攻撃という中学生のいじめレベルまで底辺を極めるエスカレートぶりである。
びしょ濡れの美羽を発見し・・・事態に気がつく佳代だった。
四人の後輩愛人たちに説教をする佳代。
「でも・・・私には中学生の子供がいて・・・風さんは父親として必要なんです」
泣き落としにかかるばばあ。
しかし・・・夢はリサーチを終えていた。
「くそみたいなフカシぶっこんでんじゃねえ・・・実家に電話かけて聞きだしてんだ・・・あんた・・・夫に先立たれるどころか・・・一度も結婚してないし、子供なんかいねえじゃないか」
「えええ・・・・嘘だったの」
「さーせんしたー」
「悪いのは風なんだから・・・あんたたちもいい加減にしなさいよ」
「すみませんでした」
「あんまりだと・・・私も動くからね」
恫喝する佳代。
そこに・・・憤怒に燃えてゲートをくぐった卯野真衣が乱入する。
ババアによって家庭を破壊された女である。
「この女性APがああああああ」
真衣によるキックの鬼・沢村忠的真空飛び膝蹴りがババアに炸裂するのだった。
だから、いつの時代だよ。
「え・・・誰?」
「く・・・首が・・・」
カフェ「white」では久未と彩乃が池上穂花(新田祐里子)が一件を話すのだった。
「二人とも大丈夫なの」
「私はあばら一本」
「私は足の小指」
「受ける~」
「そんで私がチョーパンかまして」
「私がソバットで」
「話は変わるけど・・・私、彼氏ができちゃった」
「え」
「結構イケメンだし」
「ええっ」
「マメなのよ」
「えええ」
穂花を見つめる傷だらけの女たち。
「ちょっと・・・その顔・・・やめて」
「とりあえず・・・あばら・・・一本ちょうだい」
「こわい~」
クズたちはどこまでいってもクズだが・・・ちょっと可愛いのだった。
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