砂の塔~知りすぎた隣人(菅野美穂)ダーク・タワーの魔女(松嶋菜々子)
世界は常に悪魔に支配されているように思えることがある。
21世紀になっても戦争を抑止しているのは超大国の持つ核兵器である。
あらゆる格差が・・・憎悪を生み・・・暴力による恐怖が・・・社会を蝕む。
戦争が不幸を増殖するものと誰もが理解していながら平和はたちまち駆逐されていく。
技術革新が人々から暮らしを奪い、社会的強者が富を独占する。
政治と経済を研究するものは・・・複雑化したシステムを前に途方に暮れる。
一人の人間のなんと無力なことか。
それでも・・・人は・・・残り少ない「幸福」を求めて・・・あがくのである。
それは・・・おそらく・・・絶望的な闘争と言えるのだ。
で、『砂の塔~知りすぎた隣人・第1回~第5回』(TBSテレビ20161014PM10~)脚本・池田奈津子、演出・塚原あゆ子(他)を見た。サスペンスとしては時々、微妙なところがあるが・・・オリジナル・ストーリーが少し生乾きなのだろう・・・ちょっとお馬鹿な主婦である高野亜紀(菅野美穂)が明らかに魔性の存在である佐々木弓子(松嶋菜々子)に翻弄される豪華さでなんとか凌いでいる前半戦である。
亜紀の家族は中堅食品会社に勤務する夫・健一(田中直樹)、高校生の息子・和樹(佐野勇斗)と幼稚園児の娘・そら(稲垣来泉)である。
事故物件であったタワー・マンションの一室を・・・そうとは知らずに格安で・・・分不相応に購入した高野一家は・・・「夜行観覧車」の遠藤一家の如く・・・一部富裕層による陰湿な格差社会に翻弄される。
分譲マンションでは階数によって納税額も変わる時代である。
貧富の差が耐えがたいほどに高まった時・・・予想外の選挙結果が出現することを支配層に属するマスメディアは驚愕するしかないわけである。
少し鈍感なところのある亜紀は・・・ボス的存在の有閑マダム・阿相寛子(横山めぐみ)のお気に入りである子供のための体操教室のコーチ・生方航平(岩田剛典)と旧知の間柄であったことから逆鱗に触れてしまう。
しかし・・・生方は明らかに人妻の亜紀に対して不純な感情を抱いており・・・その優しさによろめく気配を見せるガードの甘い主人公なのである。
つまり・・・「昼顔要素」も持ち込んでいるのだ。
そんな亜紀に・・・穏やかな表情で救いの手を差し伸べるのが弓子なのである。
生方と密会している間に・・・そらが変質者に誘拐された時も・・・身体を張って救助する弓子なのであった。
だが・・・弓子は・・・密かにマンション中に監視カメラと盗聴器を仕掛け・・・亜紀を監視している異常者なのだった。
その真意は不明だが・・・「子供にすべてを捧げて生きていない母親は悪」というポリシーを持っているらしい。
亜紀もまた心の闇を抱えている。
亜紀の母親・三田久美子(烏丸せつこ)は父親が借金を残して死んだ時に亜紀を残して男と出奔したのである。
そんな母親の血が流れているという意識が・・・亜紀の母親としての自覚を揺るがすらしい。
一方・・・夫の健一は営業成績をあげるために・・・寛子の夫である阿相武文(津田寛治)に接近し・・・いつしか・・・怪しい仕事の片棒を担ぐ破目に陥って行く。
若い女を空港まで運び怪しい男から一千万円を受け取るような仕事である。
しかも・・・健一と・・・弓子の間には何やら因縁があるらしい。
さらに・・・妹思いの心優しい兄だった・・・和樹は亜紀と生方コーチの密会現場を目撃・・・母親の不倫行動に激しく動揺し・・・隠していた別の顔をのぞかせる。
おそらく・・・長期に渡り学校で苛めを受けていたのである。
学校も無断欠席を繰り返し・・・街で盗撮を続けていたのだ。
その画像データを経歴詐称をしてバッシングを受けていた橋口梨乃(堀内敬子)の娘である成美(川津明日香)に盗まれ・・・晒されてしまうのだった。
おわかりだろうか・・・盛りだくさんなのである。
しかも・・・この街には「悪い母親の子供が行方不明になる」という「連続幼児失踪事件」が発生し「ハーメルンの笛吹き事件」と通称され・・・マスメディアが注目している際中である。
刑事の荒又(光石研)たちが事件を追っているのだった・・・。
もう・・・何が何やらである。
いろいろと・・・唖然とする展開があるのだが・・・。
亜紀がマンション内で追い込まれる要因のほとんどが生方コーチによるもなのだが・・・亜紀は平気で生方と密会を繰り返し・・・その生方は・・・突然、弓子を疑い始めるのである。
そして・・・あろうことか・・・寛子を通じて弓子に接近するのである。
寛子は嬉々として弓子を紹介するのだが・・・明らかに弓子は寛子の恋敵候補ではないか。
寛子か脚本家の頭がおかしいとしか思えない。
それはさておき・・・件の写真の件で・・・息子が「ハーメルン事件」の容疑者として取調を受け・・・自分の知らない息子の裏の顔を知り・・・激しく動揺する亜紀なのである。
一方、弓子を尾行中に・・・ストーカーとして警察に連行された生方コーチなのだった。
「俺はストーカーじゃない・・・怪しいのは佐々木弓子の方なんだよ」と叫ぶ生方コーチ。
その声を偶然聞く荒又刑事である。
「佐々木弓子だと・・・」
どうやら佐々木弓子は・・・殺人事件の容疑者だったらしい・・・。
もう何が何だかで・・・非常にたどたどしいが・・・ここから後半戦に突入するらしい。
まあ・・・人間の不完全性を描くということではそこそこ成功している。
スタッフの不完全さが・・・見事に表出しているからな。
・・・おいおいおい。
連続ドラマなので・・・事件が決着した頃の谷間でまた会いましょう。
それにしても何故・・・原作・湊かなえ、脚本・奥寺佐渡子、演出・塚原あゆ子のトリオでやらなかったのだ。ネタ切れか。菅野美穂の松嶋菜々子の二枚を使える原作がなかったのか。
タレント・システムか。
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