面白くなくはない淡い三人の男(成海璃子)
世界でたった一人の米国大統領を選べるのは米国民だけである。
事前の各人の支持層を分析していけばある程度・・・接戦であることは予想ができた。
しかし・・・八年続いた民主党の大統領の後で民主党のしかも女性初の大統領が誕生することは難しかったことは最初から明らかである。
それなのになぜ・・・「衝撃」なのか・・・よくわからない。
マスメディアが信用できないことは米国民の方が身に沁みているのだろう。
彼女を勝たせようとしていると・・・彼らがが感じたら・・・彼を勝たせるための行動に出るわけだ。
我が国でも他国の大統領になるかもしれない人間をコメンテーターが酷評するのはまだしも・・・キャスターが一緒になって蔑むという公明世代な報道姿勢とは言えないテレビ番組が続いていた。
少しは恥を知るべきだろう。
少なくとも変なカツラの愛用者は彼の味方のはずだと推測するべきだ。
国益と国益が衝突するのは当然のことで・・・誰が大統領になろうが同じなのだ。
飼い犬に核武装を認める飼い主なんて・・・それはそれで面白いのである。
誰が大統領になろうが・・・世界はほとんど変わらない。
せめて・・・子供たちが給食を食べさせてもらえる国家でありますようにと願うしかない。
で、『黒い十人の女・第7回』(日本テレビ201611102359~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・瑠東東一郎を見た。「黒」は無政府主義の象徴である。つまり・・・あらゆる権威に不服従ということである。容疑者がクロなら有罪なのだ。他人より自分の利益を常に優先するものの腹は黒いと言われる。当然のことだが・・・一夫一婦制度を無視して不倫をするものは黒いのである。他人の夫を奪う女は黒いが・・・その夫を許せば妻も黒い。そして黒い十人の女が誕生する。彼女たちが黒いのは喪服を着るからである。一番黒い男が生きていたのでは・・・黒から逃れることができないのだ。
東西テレビの月曜十時の新ドラマ「淡い三人の男」がオンエアされる。
風家の居間では・・・プロデューサー風松吉(船越英一郎)の妻・風睦(若村麻由美)が夫の作ったドラマを視聴する。
アイドル女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)が演じる「鳥出玲奈」は不倫を含めて三人の愛人を持つモデルである。
「モデルが恋人だというのは・・・優越感を刺激する」
不倫相手は・・・玲奈と波打ち際で戯れながら独白する。
志乃を演じる玲奈が玲奈を演じるわけである。
劇中劇というのは本編よりクオリティーが下がるのが普通だが・・・いつもの玲奈なんだな。
生れてはじめて面白い役を演じていることに少し戸惑っているようだ。
カフェのウエイトレスを演じる劇団「絞り汁」の所属女優・如野佳代(水野美紀)は愛人たちの背後で存在をアピールする。
しかし・・・そういうことはすでに憐れなことなのである。
「実は私・・・夫がいるの」
「僕にも妻がいる」
「あなたの他にも愛人がいるの」
「僕もだ」
東西テレビの受付嬢である神田久未(成海璃子)は愛人仲間でアロママッサージ店勤務・文坂彩乃(佐野ひなこ)や友人の池上穂花(新田祐里子)と「淡い三人の男」を視聴する。
「面白そうじゃない」と池上穂花は言うが・・・。
「なんだかぬるい・・・」と久未は感想を述べる。
「もっと修羅場よね」と彩乃は痣を誇示する。
「不倫は戦争なのよ」と久未は実感を伴う結論を述べるのだった。
劇団仲間と視聴していた佳代は・・・自分の演技がほとんど編集でカットされたことに忸怩たる思いを抱くのだった。
「ボックスの映像特典で私の演技をもっと見ることができると思う」
佳代は嘯いた。
志乃はマネージャーの長谷川冴英(ちすん)とヘアメイクの水川夢(平山あや)と一緒にオンエアを視聴した。
「台本貰った時はもっと面白いと思ったのにね」
「あの時は・・・こんなことになるとは思わなかったから」
「普通の不倫をしていると思ったものねえ」
三人はみんな松吉の愛人だが・・・仲良しでもあった。
「なんで・・・こんなに仲良くなっちゃったのかしら」
「やはり・・・ババアがいたからじゃない」
「そうよねえ」
ババアとは東西テレビアソシエイトプロデューサー・弥上美羽(佐藤仁美)である。
松吉は愛人の一人であるアロママッサージ店経営者・卯野真衣(白羽ゆり)とデート中である。
「オンエア見なくていいの」
「編集室で飽きるほど見たよ」
「私と結婚してくれない?」
「それは無理だ」
「どうして?」
「だって僕には妻がいるし・・・君だって夫がいるだろう」
「不倫してたのがばれて離婚することになったの」
「え」
「安心して・・・相手があなたとはバレてないわ」
「そう」
「でも・・・あなたにも責任があるんだから」
「責任って・・・君は僕と結婚しようと思って付き合ったのかい」
「そうじゃないけど」
「僕には妻がいて・・・君には夫がいる・・・それを承知で付き合ったんじゃないか」
「そうだけど」
「だから・・・僕が君と結婚しないことに責任を感じる必要はないんじゃないかな」
「・・・」
松吉の正論に・・・殺意を覚える真衣だった。
愛人たちはみな・・・「いっそ死んでほしい」と思いながら・・・松吉と別れることはできないのだった。
「なぜなのかしら・・・」と志乃は紫煙を吐きながら呟く。
「煙草みたいなものじゃないかな・・・悪いのはわかっていて・・・何度も禁煙しようとするんだけど・・・どうしてもやめられないみたいな」
「不倫は・・・喫煙みたいなものか・・・」
世界から喫煙者がいなくなったら・・・ニコチンが弱点の宇宙人の侵略が始るわけだが。
嫌煙者はみんな宇宙人の手先なのである。
おいおいおい。
休憩時間・・・久未は同僚の我修院麗子(西崎あや)と雑談する。
「昨日・・・月10のドラマ見た」
「私・・・しゃべくり見ちゃった・・・ドラマは録画してあるけど」
「そうなんだ」
久未はふと気になって・・・素晴らしいインターネットの世界で「淡い三人の男」「初回」「視聴率」を検索してみた。
「・・・*4.6%」
関係者に「激震」が走っていた。
「木10のChefの*4.9%より低いのか」
「Chefだって初回は*8.0%ありましたよ」
「月10でいきなり・・・*4.6%なんて」
「こりゃ・・・テコイレしないと」
脚本家の皐山夏希(MEGUMI)は呼び出された・・・。
「展開早めのエロちょい足しで猫、温泉、幕末トッピングで」
「ラーメンかっ」
お姉さん(トリンドル玲奈)と変な動物(バカリズム)でEテレパロディーの挿入。
「視聴率が低いと大変だねえ」
「面白いから視聴率がとれるのではなくて視聴率がとれるから面白いので」
「やるせないねえ」
「特に中高年女性をゲットしないことにはにっちもさっちもブルドッグです」
「帝国か」
「そういう意味では美人を十人そろえたこのドラマもアレですよね」
「でも女は女が好きだろう」
「それは腐った人たちですから~」
とにかく・・・お姉さんは猫を抱き・・・変な動物はラーメンを食べるのだった。
志乃は・・・番組宣伝のためにバラエティーショー「楽屋で話しやがれ」に出演することになる。
担当プロデューサーが交際相手の浦上紀章(水上剣星)だったために・・・打合せでギクシャクする二人だった。
「あまり・・・ハードな話でなくていいですから」
(うわあ・・・不倫のこと意識していると思われるかなあ)
「そうですか」
(不倫のこと意識していると思われるかなあって思っていることを思われるかなあ)
いろいろと面倒な二人だった。
ブサイクな担当ディレクターは本音を叫ぶ。
「ああ・・・志乃ちゃんに愛される男はいいなあ・・・一夜だけでいいから抱けないかなあ・・・どんな男が抱いているのかなあ」
隣にいる男である。
こんなところにもヒラマサはいる。
ヒラマサファンに刺されるぞ。
失意の真衣を佳代が襲撃する。
初回の佳代を「松吉の妻」と思いこんだ久未のリフレインである。
カフェ「white」で彩乃と待ち合わせをしていた久未は「カフェオレぶっかけ事後」の佳代を発見する。
真衣は・・・「松吉の愛人が九人いる」と聞かされ衝撃を受ける。
経験者として真衣の心が手にとるようにわかる久未だった。
そこへ・・・彩乃が到着する。
「私の男に手を出したの」
「私の客をとられたのがくやしくて」
一触即発の事態だが・・・「不倫している時点で先も後もないから・・・」という佳代の「いつもの説得」で鎮静化されるのだった。
「また・・・お店に遊びに来なさいよ」
「はい」
(ドラマのエンディングみたいな感じじゃん)と久未は思うのだった。
親友に脳天逆落としを食らわせる凶暴さを秘めながら・・・修羅場の発生を小動物のように惧れる久未のキャラクター造形が抜群で笑えるのだ。
松吉争奪戦であると同時に女優たちの演技合戦になっているのだな。
そこへ・・・真空飛びひざ蹴りによってムチウチ症になってしまった弥上美羽が到着する。
たちまち・・・修羅場に突入である。
「やんのかこら」
「やんのかこら」
愛人たちは基本的に全員元ヤンである。
そこへ・・・お約束のバースデーケーキが登場。
真衣の誕生日をフェイスブックで調べた佳代だった。
こうして・・・佳代は・・・愛人全員の仲を取り持ったのだった。
松吉は重厚なドラマ風な感じで帰宅した。
「凄い視聴率だったみたいね」
「まいったよ」
「天罰ね」
「天罰?」
「十人の女を泣かせているくせに・・・不倫ドラマなんかつくって」
「・・・」
「クビになったら・・・養ってあげるわよ」
「ありがとう」
松吉は殺気を感じて・・・ナイフをさりげなく妻からもらいうける。
チーズを切ろうとして松吉は指を切った。
なんだかんだがあるらしいが・・・。
二週間後・・・坂本龍馬の在りし日の姿のようなポーズで・・・佳代は松吉の「死」を願う妻を含めた九人の女の前に立つ。
「薩長同盟の時ぜよ」
佳代は高知県出身者だった・・・。
高齢者対策のための幕末か・・・。
最近の高齢者は・・・幕末どころか・・・戦前のことでさえ覚束ないみたいだが・・・。
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