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2016年12月31日 (土)

恋するJKゾンビ(山本舞香)VS家政夫のミタゾノ(清水富美加)VSコック警部の晩餐会(小島瑠璃子)

大晦日の谷間である。

・・・おいっ。

なんだかんだで・・・「家政婦のミタゾノ」と「コック警部の晩餐会」が残っているんだよな。

前者については松岡昌宏の女装が不気味だった。

後者についてはえなりかずきがなんとなく不気味だった。

それ以外にあまり感想がない。

家政婦ということでは「逃げるは恥だが役に立つ」と同じテーマである。

馬鹿馬鹿しい推理劇ということでは「IQ246~華麗なる事件簿~」とか「スニッファー 嗅覚捜査官」とか「THE LAST COP」とかいろいろあったわけだが深夜枠としては「警視庁 ナシゴレン課」の方がストレートに馬鹿馬鹿しかったからな・・・。

言及するのはヒロイン枠の二人についてである。

脇役人生まっしぐらの清水富美加は家政婦役で1994年12月2日生れの(22歳)・・・。

ドラマ初出演の小島瑠璃子は新人刑事役で1993年12月23日生れの(23歳)・・・。

まだまだなんちゃって女子高校生でいけるのではないか・・・そこかよっ。

で、『年の瀬 恋愛ドラマ 恋するJKゾンビ』(テレビ朝日201612300020~)脚本・山浦雅大、演出・藤原知之を見た。女子高校生がゾンビになる話といえばそれだけで不気味なのだが・・・美少女がゾンビになって喜ぶのは美少女でない少女に尽きるのではないかと思うのである。で、結局、ヒロインは完全なるゾンビにはならず入浴寸前しかサービスシーンがないのである。なんじゃ・・・これはと言う他はないな。

「年の瀬恋愛ドラマ」は三部構成になっていて前夜が不倫の話、最終夜は「おっさんずラブ」である。・・・腐ってやがるな。

その間に挟まれた本作はどちらかといえば純愛ファンタジーである。

ゾンビものにもいくつかルールがあるが・・・これは「死霊もの」にギリギリ属すると言えるだろう。

「バイオハザード」的に細菌あるいはウイルスによって死体が歩きだすという定番ではなく・・・なんらかの呪術によって・・・「怪物」としてのゾンビが発生するわけである。

ただし・・・「ゾンビに噛まれるとゾンビになる」というお約束は採用されている。

ゾンビが発生すると世界は魔界ゾーンとも言うべき領域になり・・・昼間でも夜の暗闇に覆われる。

下校中の明るく元気な女子高生・橘まりあ(山本舞香)はゾンビに襲われ、クラスメートの笹川美園(佐藤玲)をかばったためにゾンビに引っ掻かれてしまうのである。

ちなみに・・・。

山本舞香は1997年10月13日生れの(19歳)・・・。

佐藤玲は1992年7月10日生れの(24歳)だ。

なせばなるな・・・。

嫌な感じの女友達・美園を佐藤玲は嫌な感じに演じきっていて清々しい。

まりあは傷跡がゾンビ化し始めてパニックに陥るのだった。

「噛まれたのではなく・・・引っ掻かれただけ」というのが・・・まりあのゾンビ化を特殊なものにしていく。

噛まれた人間はたちまちゾンビになるのだが・・・まりあのゾンビ化の進行速度は鈍いのだ。

まりあは幼馴染の冷水十吾(白洲迅)に恋をしているのだが・・・なかなか告白することができない。

十吾も明らかにまりあに気があるのだが思いを伝えられずにいる。

十吾の友人の真壁匠(山本涼介)は軽いイケメンで積極的にまりあにアプローチをしてくるのだった。

まりあと真壁の急接近に十吾の心は乱れるが・・・まりあはそれどころではない事態なのである。

ゾンビ化は進行し、傷口からは腐臭が漂い、常に飢餓感に襲われ、意図せずに唸り声を発してしまう。

さらに・・・聴覚が研ぎ澄まされ、怪力を発するなど超人的要素も加わってくる。

十吾を狙っている美園は・・・まりあの苦境も知らず・・・ダブルデートの誘いを持ちかけるのである。

そんな折・・・学校がゾンビに急襲される。

高校教師の杉田摩亜沙(LiLiCo)がゾンビ化して・・・まりあはトイレで襲われるが・・・仲間として認知されてしまうのだった。

絶望で失神するまりあである。

そんなまりあを・・・十吾が救助する。

悩めるマリアに父親の橘慎一(船越英一郎)は「いざとなったら愛と勇気だ」ととんでもないアドバイスをする。

遊園地に出かけた四人は・・・再びゾンビに襲われる。

しかし・・・ゾンビパワーを秘めたまりあは一撃でゾンビを粉砕するのだった。

計略でまりあと真壁を観覧車に乗せた美園は十吾にキスをせがむ。

まりあは真壁に告白されるが・・・ゾンビの耳は眼下の二人の会話を聞きとるのである。

下界が気になるまりあの様子に・・・相手の気持ちを察する真壁。

「十吾のことが好きなんだね」

「え」

真壁は爽やかな男だった。

地上に降りたまりあの手をとる十吾。

「まりあが好きだ」

「私も・・・でも」

「ゾンビになりかけていることなら知ってる・・・君をトイレで助けた時・・・傷を見た」

「え」

「でもそんなの関係ない」

「ダメ・・・ゾンビが感染っちゃう」

それでも十吾はまりあの唇を奪うのだった。

思わず涙がこぼれちゃうまりあ・・・。

その涙が傷口に落ちた時・・・ゾンビの呪いは解けるのだった・・・。

「なんて・・・馬鹿馬鹿しいの・・・」と美園はお茶の間の代弁者となるのである。

ゾンビものをやるならやるでなぜ、ベストを尽くさないのかという制作陣に対する気持ちで一杯です。

関連するキッドのブログ→南くんの恋人〜my little lover

で、『家政夫のミタゾノ・第1回~最終回(全8話)』(テレビ朝日201610212315~)も見た。むすび家政婦紹介所所属の派遣家政夫・三田園薫(松岡昌宏)は女装をしている男性である。しかし・・・人々はその点について指摘することに臆してしまうのだった。そういう時代なのかもしれない。家政婦としては有能なミタゾノだが・・・何故か、派遣された家の秘密を嗅ぎまわり・・・ついには一家を破滅に追いやる。しかし・・・一種の再生をもたらすのである。停滞して腐敗した秩序を崩壊させるのは・・・浄化といえないこともないが・・・それを芳醇と考えるものもいるので余計なお世話とも言える。

一種の「意地悪ばあさん」なんだよな。

ミタゾノとペアを組むことになる派遣家政婦が花田えみり(清水富美加)である。

ミタゾノの行動にハラハラしつつ・・・ミタゾノの秘密を探りたいという好奇心も持ち合わせている。

「仮面ライダーフォーゼ」のヒロインから連続テレビ小説「まれ」では主人公の癖のある親友役、「世界一難しい恋」の主人公の同僚役、映画「HK 変態仮面」の主人公がかぶるパンツの持ち主と幅広く芸達者な清水富美加・・・大成することを願うばかりである。

ちなみに・・・家政婦の同僚役で柴本幸が出演している。サラブレッドも三十路になってしまったのだなあ。

関連するキッドのブログ→13歳のハローワーク

で、『コック警部の晩餐会・第1回~最終回(全10話)』(TBSテレビ201610200010~)も見た。コック警部こと古久星三(柄本佑)が料理がらみの事件を美食家として追及していくミステリである。捜査ミスをするベテラン刑事の猫田典雄(えなりかずき)が捜査上のライバルとして登場。新人刑事の七瀬あずみ(小島瑠璃子)はアシスタント的存在で・・・「味覚音痴」であることをコック警部に蔑まれるのがパターンである。あずみのルームメイトで交通課の婦人警官・桃を久松郁実が演じている。

タレントとしてはすでに抜群の存在感を示している小島瑠璃子である。

一種のお世話係を飄々とこなしているが・・・このドラマでは・・・女優としての将来性を占うのは難しい。

とにかく・・・なんちゃって女子高校生を一度はやってもらいたい。

第5話にはお好み焼き店主役で柴本幸が、最終話にはスナック店長役で板野友美がゲスト出演している。

板野友美は1991年7月3日生れの(25歳)である。

やろうと思えばなんちゃって女子高校生は充分可能だと思う。

読者の皆様・・・よいお年をお迎えください。

関連するキッドのブログ→1991年度組について

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2016年12月30日 (金)

ラーメン大好き小泉さん2016年末SP(早見あかり)カワイイなんちゃって女子高生をやってみた(美山加恋)

年の瀬の谷間である。

裏番組の「かわいいなんちゃって女子高生がちょこっとゾンビになってみた」と合わせて「VSなんちゃって女子高校生祭り」を開催してもよかったのだが・・・年末進行なので一本立てにしました。

すでに成人している四人組だが・・・まだまだいける・・・と思います。

早見あかり・・・生誕1995年3月17日(21歳)

美山加恋・・・生誕1996年12月12日(20歳)

古畑星夏・・・生誕1996年7月8日(20歳)

田中美麗・・・1996年10月14日(20歳)

関東ローカルでは「僕と彼女と彼女の生きる道」(2004年)が放送中だったので当時8歳で小柳凛を演じた美山加恋の二十歳になりたてという成長ぶりも楽しめた。

干支が一巡したのだなあ・・・。

さる年だけにみんな去っていくのか・・・おいっ。

何故か、年末は訃報が相次ぐよなあ。

「雨に唄えば」のキャシー(デビー・レイノルズ)と「スターウォーズ」のレイア(キャリー・フィッシャー)の母娘が相次いで亡くなるとはなあ・・・。

で、『ラーメン大好き小泉さん2016年末SP』(フジテレビ201612300035~)原作・鳴見なる、脚本・久馬歩、演出・松木創を見た。年末年始に小泉さん(早見あかり)なのである。今年は「ちかえもん」があって女優として飛躍したと言えるな。ドラマブロガーとあなたの投票が選ぶ『2016年 オーディエンスベストドラマ賞』で4位入賞の原動力である。なにしろ・・・美しさが別格だからな。はあーっ・・・なのである。

さて・・・孤高の人である小泉さんにも・・・小泉さん大好きな大澤悠(美山加恋)、適当にちゃらんぽらんな中村美沙(古畑星夏)、学級委員長でラーメン嫌いだった高橋潤(田中美麗)というクラスメートがいてカルテットとなっている。

今回はカルテットが新横浜ラーメン博物館(神奈川県横浜市)にやってきて物語が始る。

小泉さんの一軒目は・・・B1F体感ゾーンの「「支那そばや」である。

残りの三人を置き去りにして・・・ラーメンを堪能する小泉さんだった。

中華人民共和国から「シナ」は蔑称とクレームが来た時代もあったが・・・無法の限りを尽くす不良国家のことなど知ったことではないと言う姿勢が清々しいぞ・・・おいおいおい。

「小泉さんがいない」と悠は涙目になっていると・・・ドイツ人男性が話しかけてくる。

「・・・ドイツ語・・・ダンケシェーン」と委員長・・・。

「委員長のくせにそれだけかよ」と美沙。

「ドイツ語は守備範囲外だわあ・・・」

小泉さんがB2F体感ゾーンに降臨する。

「名島亭ハツキアタリノオミセデス」

「アリガトウゴザイマス」

「小泉さん・・・ドイツ語も・・・」

「ラーメンの国際化は進んでいます・・・世界に支店を出しているチェーン店も多いのです。そこで味を覚えた外国人観光客が・・・本場日本のラーメンを目指してやってくる時代なのです」

とにかく・・・ラーメンを食べることに関する限り・・・ほぼ万能の小泉さんなのだ。

小泉さんは二軒目の「無垢-muku-ツヴァイテ」に向うのだった。

「無垢-muku-さんの本店はドイツにあるのです」

ラーメンを堪能する四人。

はあーっの四連打である。

そこへ現れる尾道(小野ゆたか)、荻窪(田中英樹)、喜多方(村松利史)のラーメン大好きおっさんトリオ。

喜多方は離婚したため姓の違う委員長の父親なのだった。

「潤がラーメンを食べている・・・」

喜多方は感動するのだった。

美沙は最近、ユーチューバーとなり・・・盛んに動画を収録するのである。

「ラーメンに集中しなさいよ」

何事にも真面目な委員長は注意する。

今回は・・・委員長と美沙の対立が主軸となっていく。

教室である。

美沙は「カワイイ女子高校生がラーメンを食べてみた」動画を投稿し・・・アクセス数を稼いでいた。

「なぜラーメンを食べるのか・・・そこにラーメンがあるからです」

「それは・・・小泉さんのパクリじゃない」

その頃・・・小泉さんは「できたてラーメンの丼がテーブルに置かれる音」を堪能していた!

「今日はラーメン食べに行かないの?」

「今日は家系ラーメンを食べようと思っています」

「家系?」

「吉村家を総本家として・・・なになに家とつくラーメン店のことです」

「駅前にもあるわよね」

しかし・・・小泉さんは鉄道利用で一時間・・・神奈川県厚木市にやってくるのだった。

「お腹すいた~」と甘える悠。

「どうして駅前にもあったのに・・・」と委員長。

「家系ラーメンはチェーン店なども大増殖中ですが・・・今日は家系ラーメンを作り上げた吉村実氏のご子息が経営する直系を食べるのです」

「直系?」

「もうすくですよ・・・三十分ほど歩いたら到着です」

嫌ならお帰りください・・・と言われるだけなのである。

三軒目は「吉村家」だった。

小泉さんのチョイスは「のりまし」で「麺かため油少なめ味濃い目」のチョイス・・・悠は完全に小泉さんのコピーである。

一方、美沙はチャーシューメンの「チャーシューまし」で「麺かため油多め味濃い目」を注文して・・・「すべて普通」の委員長にイチャモンをつける。

「そんなのつまんないじゃない」

「私は初めてのお店ではその店の基本を味わいたいの」

「せっかく選べるのに普通なんてやめなよ」

「余計なお世話よ」

揉める二人を余所に・・・ニンニク、生姜、豆板醤、特製大蒜酢で味を調える小泉さん。

真似をしようとする悠に「自分で選択しないと後悔しますよ」と釘を刺す小泉さんである。

美沙は悠に動画の撮影を強要するのだった。

「出来たてが食べ時なのに撮影なんてやめなよ」と委員長。

「私はユーチューバーとして特別なのよ・・・普通人は黙っていて」

「喧嘩はやめて・・・ほら・・・小泉さんが怒っちゃう」

しかし・・・小泉さんは「ライス」の食券を買ってきただけだった。

「ライス?」

「シメにライスを食べるのです」

「そういうお客さん多いですよ」と店長。

小泉さんはスープに漬したのりでライスを食べ終える。

はあ~っなのであった。

みかんの差し入れを持って家系の創始者・吉村実(本人)も登場し、小泉さんは感激するのだった・・・。

素晴らしいインターネットの世界にユーチューバー美沙のアップした動画が百万アクセスを突破し・・・調子にのった美沙は「かわいい女子高校生が○○してみた」シリーズを次々と発表する。

委員長は「そんなことがいつまでも続くはずがない」と批判を繰り返す。

ついに「かわいい女子高校生が退学届を書いてみた」を発表する美沙だった。

美沙を案じた悠は四軒目の「厳哲」(早稲田)で鮪塩ラーメンを食す小泉さんに相談する。

「このままじゃ・・・美沙はユウーチュー婆になっちゃうよ・・・」

「・・・」

「店長に撮影を強要したとか動画サイトは炎上しているし」

「・・・」

「このまぐろしおラーメン美味しいね」

「鮪塩と書いてシビシオと読むのです」

はあーっである。

小泉さんは五軒目の「べんてん」(練馬区)に三人を誘うのだった。

「委員長が来るなら・・・私帰る」

「いつもなら行列に並ぶところを閉店間際のために奇跡的に並ばずに食べられるチャンスを逃すというのならどうぞ」

「・・・」

「営業時間が三時間半しかないのでまさに貴重なタイミングです」

「・・・」

「二十年に渡り高田馬場で行列を作り続けた名店の味なのです」

はあーっである。

「一日三時間半で大儲け・・・まさに美沙に相応しいラーメンだわ」

「いいえ・・・営業時間は三時間半でも仕込みにはその三倍かかりますので一日十四時間労働です。定休日にも翌日の仕込みがあるので実際は年中無休です」

「地道すぎる・・・でも・・・そうしないとこの味は・・・無理なのか」

美沙は二十年後の自分を想像できないのだった。

しかし・・・二杯目に「つけ麺」を注文する小泉さんだった。

「え」

「この店の自家製麺はつけ麺で一層深く味わうことができます」

「つまり・・・ラーメンでも・・・つけ麺でも美味しいってこと・・・」と悠。

「そうね・・・人にはそれぞれの味わいがあるものね・・・普通がいいっていう押し付けもよくなかったわ」と反省する委員長だった。

「小泉さんはそれがいいたくて・・・べんてんに・・・」と悠。

しかし、三杯目に「塩ラーメン」を注文する小泉さんである。

「この店は塩ラーメンも絶品なのです」

はあーっである。

小泉さんは・・・ただ美味しいラーメンを食べるのだった。

2014年に店主の体調不良を理由に休業した「べんてん」は2016年に店主が回復して復活したのだった。

小泉さんはその味を楽しまないわけにはいかないのである。

これはラーメン大好きな女子高生の話だからである。

さあ・・・ラーメンを食べに行こう。

関連するキッドのブログ→ラーメン大好き小泉さん2016新春SP

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2016年12月29日 (木)

昔話法廷(木南晴夏)有罪か無罪かそれが問題だ(朝倉あき)私は白雪姫(小林涼子)私は乙姫(清水くるみ)

師走の谷間である。

恒例の放映邦画もやりたいのだが・・・ここは去年からの課題をこなしておこう。

今朝、再放送が終わったばかりだしな。

EテレことNHK教育テレビジョンの「小学校高学年・中学校・高校向けプログラム」である。

昔話を「事件」としてとらえ・・・登場人物を「被告」にしてしまうドラマ展開である。

教育的指導を目的にしているというものの・・・昔話の「本質」に迫れば・・・かなり公序良俗から逸脱するわけである。

それを気付かずにやっているのか・・・面白がっているのか・・・妄想するといろいろと楽しいわけである。

そして・・・一部お茶の間にとっては物凄い豪華キャストにものを言わせるわけである。

こんなものを「教材」にしたら・・・絶対・・・いや・・・どんな「教材」でも触発される奴はされるからな。

2015年に「三匹のこぶた裁判」、「カチカチ山裁判」、「白雪姫裁判」、三本。2016年に「アリとキリギリス裁判」、「舌切りすずめ裁判」、「浦島太郎裁判」の三本が制作されている。

それぞれのナレーションベースの裁判員は・・・小芝風花、宮﨑香蓮、工藤綾乃、朝倉あき、蔵下穂波、光宗薫が演じている。

もう憎いほど一部お茶の間の心を捉えているキャスティングなのである。

で、『昔話法廷・第1話~』(NHK Eテレ20150810AM10~)脚本・今井雅子(他)、法律監修・今井秀智、演出・秘密を見た。ドラマである以上、演出者がいるはずなのにクレジットされないのが不気味である。せめて責任者名を明らかにするべきだよな。何から何を守ろうとしているのかわからんが・・・。Eテレの全体責任というのではあまりにも責任の所在が明らかではなさすぎるだろう。ちなみに脚本家は「てっぱん」の人である。

「三匹のこぶた」は言うまでもないが・・・狼が豚を食べようとして罠にかかり、狼鍋にされてしまう話である。

「裁判」ではオオカミを殺害したこぶたのトン三郎(声・前田航基)が殺狼の罪で刑事被告人となる。

トン三郎は押田美和の演じる着ぐるみで擬人化されており、検察官の相田智子(木南晴夏)はそのまんま人間である。

つまり・・・狼を殺したことが罪に問われるならば・・・夕飯がとんかつだった人はみんな裁かれる可能性があるのだ。

しかし・・・それを言ったらおしまいなので・・・ドラマは・・・「現実の制度」と「虚構」の境界線を突き進んでいくわけである。

「オオカミに兄二人を襲われたトン三郎は・・・自分が襲われる前にオオカミを自宅におびき寄せ、お湯を沸かしておいた大鍋の中にフタをして閉じ込め殺害した罪に問われています」

検察官は亡くなったオオカミの母親(声・坂本千夏)を検察側証人として呼ぶ。

「夕方になっても・・・息子が帰宅しないので・・・息子のスケジュールを確認したところ・・・三時からトン三郎の家で豚肉パーティーに出席・・・となっていました。そこで・・・私はトン三郎の家を訪ねました」

「そこであなたは何を見ましたか」

「息子が・・・大鍋の中で・・・死んでいる姿を・・・」

「他に何を見ましたか」

「机の上に・・・オオカミのただしいころし方・・・という本が置いてありました」

「つまり・・・トン三郎は・・・計画殺人をしていた・・・ということですね」

ここで弁護人の山西ハジメ(加藤虎ノ介)が質問する。

「この本のタイトルを読んでみてください」

「・・・オリガミのたのしいおり方」

「この本は・・・被告であるトン三郎さんの愛読書です」

「・・・」

「時刻はすでに・・・夕刻でした・・・あなたは・・・タイトルを読み間違えたのでは?」

「そんな・・・」

「オオカミのただしいころし方」

「オリガミのたのしいおり方」

(確かに似ている・・・)と裁判員の一人である広瀬千明(小芝風花)は迷うのだった!

「トン三郎はオオカミをパーティーと偽って誘いだした」と言う検察官。

「パーティーを計画したのはオオカミ自身だった」と言う弁護士。

裁判は白熱していく・・・。

弁護側はトン三郎の兄のトン一郎(声・下田翔大)を証人として呼ぶ。

「あなたはオオカミに何度も襲われていますね」

「はい、最初は自分の家で・・・二度目はトン次郎の家で・・・三度目はトン三郎の家で・・・」

「オオカミは煙突から侵入してきたのですね」

「はい」

「どんな気持ちでしたか」

「今にも自分が食べられてしまうのではないかという恐怖を感じました」

検察官は尋問する。

「これは・・・トン三郎がオオカミを鍋に閉じ込めるために使ったとされる漬物石です」

「・・・」

「とても一人で持ち上げられるものではありません・・・あなたたちは共謀して蓋をしたのではありませんか」

「火事場の馬鹿力です」

いよいよ・・・被告人に対する質問となる。

「オオカミが死んでしまったと知った時・・・あなたはどんな気持ちでしたか」

「命が助かったという気持ちでいっぱいでした・・・」

「弁護人からは以上です」

検察官は追及する。

「煙突の中にはあらかじめすべりやすいように油がぬってありましたね」

「煙突がギトギトになるのは普通のことです」

「しかし・・・オオカミがすっぽり入るような鍋をあなたが購入したのは三日前ですよね」

「兄たちが同居したために・・・大量に料理する必要があったのです」

「なぜ・・・タイミングよくお湯が沸いていたのですか」

「三時のお茶の時間だったのです」

「大鍋で・・・お茶を?・・・」

「・・・」

最終弁論である。

検察側は「トン三郎がオオカミをおびき寄せ周到な準備をして計画的に殺害した」と有罪を主張する。

弁護側は「裁判員の皆さん・・・トン三郎さんの立場になって考えてください・・・相手はオオカミです。弱肉強食の世界では・・・ブタはオオカミの餌だ・・・そんな相手をわざわざ招いて・・・自分を危険にさらすブタがいるでしょうか。もしも失敗すれば食われてしまう・・・そんなリスクを負いますか?・・・トン三郎さんは追いつめられたまたま鍋に落ちたオオカミを蓋で閉じ込めただけです・・・これは明らかに正当防衛なのです」と主張する。

ドラマでは・・・結審までは描かれない。

裁判員が「どう判断すればよいのか」と思い悩むところで終わるのだった。

子供の時にこんな教材で授業をされていたら・・・もっとまともな人間になれたかもしれないと思う・・・べきなのかな。

この他、堀内正美とか、真行寺君枝とか、山本裕典とか、ミムラとか、小木茂光とか、国仲涼子とか・・・とにかくゴージャスなキャスティングなのである。

コチラで簡単に視聴可能なのだった。

関連するキッドのブログ→天使とジャンプ

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2016年12月28日 (水)

わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた(多部未華子)恋を笑うものは恋に泣けばいい(大政絢)

「カインとアベル」ではなくて・・・こちらが「月9」だったら・・・。

「逃げ恥」と人気を分かち合ったのだろうか・・・それとも共倒れか・・・。

もちろん・・・平社員と家事代行業の恋と・・・カリスマ経営者とフリーランスのクリエーターの恋ではかなり違うわけで・・・後者の方がなんとなく・・・昔懐かしい香りは漂っている。

しかし、「変な男と変な女が恋をする」という意味ではまったく同じなのである。

もちろん・・・スペシャルドラマで駆け足でクリスマスに駆け込んだから成立しているという考え方はあるだろう。

この手の「甘い物語」は二時間ドラマとか映画の尺で足りると言うこともできる。

けれども・・・そういう「スイーツ」を毎週食べ続けることができるお茶の間の人々がいることを・・・「ダメな私に恋してください」「世界一難しい恋」「逃げるは恥だが役に立つ」という王道ラブコメが証明した2016年だったのだ。

そういう意味で月9はシリアスに傾き過ぎて・・・迷走しているんだよな。

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」は名作だったけどな・・・「ラヴソング」「好きな人がいること」「カインとアベル」とどんどんわけがわからなくなっていくという・・・まあ、いいじゃないか。

で、『クリスマスドラマスペシャル わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた』(フジテレビ20161220PM9~)脚本・大島里美、演出・波多野貴文を見た。大河ドラマ「花燃ゆ」で火達磨となった女性脚本家の一人だが・・・今回は軽妙な腕の冴えを見せている。劇中ゲームが「TOKUGAWA15将軍 ラブ幕府」であることが仄かに精神的外傷を感じさせるよねえ。

「シラノ・ド・ベルジュラック/エドモン・ロスタン」は19世紀の戯曲だがシラノ・ド・ベルジュラックは17世紀に実在した作家でもある。親友のクリスチャンのために恋人ロクサーヌに恋文の代筆をする片思いの達人である。

恋愛シミュレーションゲームのプランナーである白野莉子(多部未華子)のネーミングの元は・・・つまり「シラノ」なのだった。

高校時代・・・同級生の長谷川祐介(山田裕貴)にロマンチックなラブレターを書いた莉子は心ない長谷川のために手紙を悪友たちに回し読みされ、「ラブポエマー・リリック白野」と揶揄される。・・・以来、現実の男たちに見切りをつけて二十七歳を迎えた。

莉子が絶対に許せないものは「恋する気持ちをバカにする人間」で・・・仕事を通じて「恋する乙女たち」に「生きる希望と日々の慰安を与えること」が喜びであった。

アプリケーション制作会社の「TIMEIS(タイムイズ)」からの依頼でプランナーとして恋愛シミュレーションゲーム「TOKUGAWA15将軍 ラブ幕府」の制作に参加する莉子。

すでに名作ゲームを生みだしている優秀なプランナーである。

莉子の生み出すキラキラ王子様キャラクターや俺様キャラクターはある時は「いつでもそばにいるよ」ある時は「キスしてもらいたいんだろ」と乙女たちのハートをきゅんきゅんさせるのだった。

「TIMEIS」のコンテンツ部に所属する桃瀬はるか(大政絢)をはじめとする女性社員たちは莉子のプレゼンテーションにうっとりするのである。

そこに「TIMEIS」の最年少役員である緑谷拓(志尊淳)が現れる。

前日、危ないところを助けてもらった緑谷との再開に運命を感じる莉子。

しかし・・・王道は「最悪の出会い」なのである。

続いて現れた・・・「TIMEIS」の社長・黒川壮一郎(高橋一生)こそが「本命」なのだった。

「徳川将軍家全員と恋をするって・・・時代考証どうなってんの・・・こんな品性に欠けるゲームはわが社に相応しくない・・・こんなのするやつはブスでバカだろう・・・もっと現実を見るべきだ」

「現実の男が不甲斐ないから・・・女たちは妄想するしかないんです・・・自己中心的で視野狭窄で他人の存在を認めることが出来ないから恋愛すらできない。そういう男であふれかえった現実を見るべきでしょう」

「う・・・」

「この人誰ですか」

「・・・社長です」

「え」

見知らぬ女に罵倒されて「あんなプランナーはクビにしろ」と叫ぶ黒川社長。

しかし・・・企画者が桃瀬はるかと知って態度が急変するのだった。

「マーケティング結果もかなり好感触です」

「・・・」

優秀な部下である緑谷に数字を見せられて納得した体裁を整える黒川だった・・・。

だが・・・恋愛ゲームのプロフェッショナルとして人間観察を続ける莉子は・・・たちまち・・・黒川が桃瀬に恋をしていることを見抜くのである。

しかも・・・プログラマーとして優秀な黒川が・・・「女心を全く理解していないこと」にも気がつくのだった。

甘いものが苦手の桃瀬にシュークリーム攻撃、お弁当持参の桃瀬をランチに誘い、さらにモンブラン攻撃もスルーされて・・・好意を示すことさえできない不甲斐なさだった。

見るに見かねた莉子は敵に塩を送るのだった。

「イケメンオフィス・・・シンデレラは残業中・・・第二章」

莉子の残した謎の言葉を検索した黒川は・・・。

恋愛シミュレーションゲームの俺様上司にはまるのだった。

そして・・・残業中の桃瀬にラジコンカーで差し入れのチョコレートをお届けする「おちゃめな一面」を披露する黒川・・・。

「社長・・・何やってるんですか」

「女性をバカにするつもりはなかった・・・謝罪したい」

「ありがとうございます」

黒川は昇天した。

莉子は黒川の「神」となったのである。

莉子を待ち伏せた黒川は・・・灰原源次郎(田中要次)が店主を務めるブックカフェマスターに連れこむのだった。

「俺に・・・恋愛を指南してくれ」

「あなたは・・・女性にやってはいけないことしかしない・・・あなたに恋愛は無理です」

「なんだって・・・」

「待ち伏せ行為・・・相手の都合を考えない・・・お店のドアは自分のためにだけ開ける・・・連れの注文を待たずに勝手に席につく・・・人の目を見て話さない」

「う・・・」

「桃瀬さんを好きになってどのくらいですか」

「三年前・・・彼女の作った玉子焼きが・・・母親のと同じ味付けだった」

(その上マザコンかよっ)

「俺の母親は俺が小学校三年生の時に病死したんで・・・なんだか懐かしくて」

(そりゃ・・・なんだかすみませんでした)

「それから・・・彼女のことがどんどん気になって・・・しかし・・・三年間で彼女と話をしたのはトータルで三十分くらい・・・そのうち三分は君の作戦が勝ちとったものだ」

「・・・」

仕方なく・・・王道キャラ設定で黒川を桃瀬にアタックさせてみる莉子だった。

だが・・・王子様作戦で・・・頭ポンポンも・・・俺様キャラで壁ドンも・・・甘えんぼキャラで・・・おねむ攻撃も・・・やや狙いを外す。

「最近・・・社長が情緒不安定なのです」と桃瀬につぶやかれる莉子だった。

「全然、ダメじゃないか」

「そもそも・・・キャラが定まってないんですよ・・・」

「何故だ」

「黒川さんに照れがあるからです」

「だって・・・照れるだろう・・・王子とか俺様とか年下甘えん坊キャラとか・・・俺は十歳も年上なのに!」

「いいですか・・・決める時は決めるんです」

「こんな・・・通俗的で類型的なことをか・・・」

「歌舞伎という伝統芸能にもカタがあります」

「?」

「横綱土俵入りで雲龍型を披露する時に・・・類型的とか・・・いいますか」

「・・・」

「キタキタキターッてなるんですよ」

「・・・わからん」

「仕方ない・・・習うより慣れろです」

どうやら莉子の聖なるテキストであるらしいトレンディドラマ「東京とラブの真ん中で」をオールナイトで鑑賞する二人。

もちろん・・・ドラマ「東京ラブストーリー」(1991年)のパロディーである。

主人公はケンジ(忍成修吾)である。

「ケ~ンジ」なのだった。

結局、爆睡してしまう黒川だったが・・・莉子は夢中で視聴するのだった。

つまり・・・黒川と莉子の絆はどんどん深まっているのだった。

「東京とラブの真ん中で」で「噴水に落ちたカップルは結ばれる」を学習した黒川は・・・チャレンジしてみるが・・・自分だけ落ちて風邪を引いてしまうのだった。

一方・・・莉子も・・・「心の傷」を黒川に打ち明ける。

「なんだか・・・俺たちって・・・親友みたいだな・・・」

「親友・・・か」

「ぼっち同士・・・心が通い合っている」

つまり・・・シラノがロクサーヌではなく・・・クリスチャンに惚れちゃうパターンなのである。

まあ・・・実在のシラノは同性愛者だったからな・・・。

そして・・・同窓会。

「過去の自分にケリつけてこいよ」

親友の黒川に送り出された莉子は・・・心ない同級生にラップ攻撃を仕掛けるのだった。

レンタル救世主かっ!

「成長しないお前ら・・・不甲斐ないお前ら」

「お前・・・男いないだろう」

昔、好きだった男に苦い言葉を浴びせられ立ちすくむ莉子。

そこへ・・・黒川登場である。

「俺の女に・・・触るんじゃねえよ」

「え」

キラキラ黒王子の誕生である。

「お前って最高だ」

秘密の隠れ家である・・・釣り堀で・・・頭ポンポンである。

「なんで来たのよ」

「だって・・・親友だろ?」

女心のわからない黒川に落されてしまった莉子だった。

一方・・・桃瀬の仕事上の失敗をダンディーな上司モードでフォローする黒川。

ようやく・・・桃瀬も・・・黒川の好意に気が付き・・・「恋」をするのだった。

変則的だが・・・ここからは・・・桃瀬がクリスチャンのポジションとなる。

連続ドラマなら・・・緑谷を加えた男女四人の心の遍歴がもう少し緩やかに語られるのだろうが・・・緑谷→莉子→黒川→桃瀬というベクトルが完成する。

桃瀬と黒川が両思いとなって・・・莉子は失恋モードである。

「あのもしかして・・・白野さん・・・社長と・・・」

「ないない・・・百パーセントない」

莉子は奈落の底へ・・・。

親友として・・・黒川の桃瀬へのプレゼント選びを手伝う地獄である。

師走である・・・。

風邪を引いて寝こむ莉子を親友として案じて看病に来る黒川だった。

「やめてよ・・・」

「ぼっち同士じゃないか」

「もう・・・ぼっちじゃないでしょう」

「だけど・・・風邪をひいたらすりおろし林檎だろう」

「私が良くても彼女が嫌なのよ」

「・・・」

「女心がわからないにも程がある」

「でも・・・親友じゃないか」

「親友じゃない・・・私はあなたが好きななの」

「えええええええええ」

もちろん・・・女を親友と思うほどに・・・黒川は莉子を愛しているのだが・・・。

突然・・・緑谷が牙を剥くのだった。

経営方針を巡り対立した二人は・・・緑谷の社長解任動議に役員会一同が賛成し決着する。

黒川は「父親の運送会社の勤務シフト作成アプリ」に始った起業が・・・「ネット販売を基軸とした別会社」に変貌したことに驚くのだった。

「黒川さんの居所を知りませんか」という桃瀬のメールに・・・隠れ場所巡りをする莉子。

釣り堀で黒川を発見するが・・・その時、黒川から着信があったことで・・・声をかけられなくなってしまう。

「私・・・心当たりがある」

桃瀬に黒川の居所を教える莉子だった。

一方・・・緑谷は・・・やや唐突だが・・・莉子に告白する。

「僕は黒川さんを越える男になりますよ」

「でも・・・私・・・他に好きな男がいるから」

「よかったです・・・莉子さんの本心が聞けて・・・」

桃瀬も・・・黒川の意中の人が・・・自分ではないことを察するのである。

「別れましょう・・・あなたにとって・・・一番そばにいてもらいたい人は・・・私じゃないみたいなので」

「え・・・」

マスターは告げる。

「彼女がクリームが苦手だって・・・いい加減気がつけよ」

「えええええ・・・そうだったの」

「甘いのが好きなのは・・・あの子だよ」

「・・・」

莉子は・・・素晴らしいインターネットの世界で話題のクリスマス限定SNSにアクセスする。

「Bocci De Xmas」である。

莉子に友達申請がある。

「サーモン黒川」・・・。

それは生魚が苦手なので釣り堀で魚を釣らない「彼」だった。

イルミネーションの海で・・・サーモン黒川とリリック白野は邂逅する。

「お前のせいで・・・ふられちゃった」

「ふがいない」

「わかってる・・・王道が大切なんだろう」

「・・・」

「君がいてくれたら・・・僕は笑顔になれる」

「私も・・・あなたの側にずっといたいわよ・・・そして不甲斐なさを責め続けたい」

片膝ついて・・・指輪を提示する黒王子である。

しかし・・・サイズは合わないのだった。

「痛い」

「がんばれば入る」

「大体、順序が違うのよ・・・プロポーズの前にやることあるでしょう」

「え」

莉子はサンタ黒川にキスをするのだった。

グッドエンド・・・。

別の相手を狙ってみますか?

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2016年12月27日 (火)

歴史から飛び出せば失うものはなにもない(成海璃子)

人間から自由を奪うものは時間である。

時間は人間を寿命という監獄に閉じ込めている。

人間には生れる前のことには手を触れることさえできない。

人間には死んだ後のものを見ることはできない。

時間旅行とは・・・つまり、そういう束縛からの脱出である。

時間から自由になった人間が不自由であると考えるのも・・・人間が時間の虜となっているからに他ならない。

「物語」の時間は・・・空想の時間である。

そこでも・・・共通理解を得るためにいくつかの「お約束」があるが・・・そういうお約束にあまり縛られず・・・自由に描いているわけである。

拙さを感じないではないが・・・いっそ清々しい・・・とにかくビジネスをしているわけだからな。

で、『リテイク 時をかける想い・第4回』(フジテレビ201612242340~)脚本・長田育恵、演出・植田尚を見た。脚本家は第19回鶴屋南北戯曲賞受賞者である。劇作家の起用が本シリーズのチャレンジらしい。セリフ重視と言えば聞こえはいいが・・・未来の出来事をお見せできないという予算とスケジュールの制約があるからだよな・・・。

ある意味・・・セリフで全部説明しなければならないので・・・地味だ・・・。

それでもそこそこ楽しめるのは・・・俳優陣の奮闘ということになるのかもしれない。

今回のゲストは連続テレビ小説「風のハルカ」の主人公を演じて以来、あまり役に恵まれているとは言えない村川絵梨と「エリートヤンキー三郎」で主人公を演じて以来、あまり役に恵まれているとはいえない石黒英雄の顔合わせである。

一部お茶の間にとっては豪華なゲストなのだった。

そして子役としてはスターと言える五十嵐陽向が花を添えるのだった。

未来人を保護するのが任務の戸籍監理課課長・新谷真治(筒井道隆)は法務省の入り口ゲートでIDカードが誤作動してしまうのだった。

警備員に囲まれたところに法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)と秘書の大西史子(おのののか)が通りかかる。

「不具合の原因を調査します」

のののののは新谷課長のIDカードを入手した。

真意は不明だが・・・大西史子は・・・戸籍監理課の業務内容に不審を感じているのだった。

基本的に「好奇心は猫を殺す」パターンだが・・・まだ安全である。

国東政務官と新谷課長の密談。

「増員をお願いします」

「秘密保持のために・・・それはできない」

「しかし・・・相手は過去に何が起こるか知っている未来人なんですよ」

「だからこそ・・・秘密の存在であることが大切なのだ・・・未来人は君たちのことを知らないわけだからね」

「どうして・・・そんなことがわかるんですか」

「とにかく・・・君たちには相手の意表をつくというカードがあるわけじゃないか」

「・・・」

新谷が退出した後で・・・秘書の史子は政務官に問う。

「このIDカードは機密度の高い設定になっているそうです・・・戸籍管理課はそれほど重要なセクションなんですか」

「戸籍の管理は大切だよ・・・江戸時代の古い戸籍がそのままになっていて・・・生存していることになっていたら・・・いろいろと不都合だろう・・・あそこは・・・そういう古い戸籍を調査する任務を担っているんだ」

「・・・」

IDカードがないので入室も困難な課長だった。

「何やってるんですか」

呆れる正規職員・那須野薫(成海璃子)である。

パートタイマー・パウエルまさ子(浅野温子)が現代に漂着すると衣装が何故か漂白されることからオバケと呼ばれる未来人についての情報を提示する。

「都内某所で天気雨が発生した後・・・都内某所付近で火災が発生・・・屋上からアパートの最上階にある部屋に侵入した白い服の男が・・・小学生を救助しました・・・」

「まるで・・・火事が起こるのを知っていたみたいだな」

「オバケですかね」

「この人・・・脱出の際に足を負傷したみたいですね」

「よし・・・俺は少年に会ってくる・・・君は病院関係を探ってくれ」

少年・生嶋アキト(五十嵐陽向)は小学校の低学年で・・・高学年の児童に・・・からかわれているところだった。

「下級生をいじめたりして恥ずかしくないのか」

「変態だ・・・逃げろ~」

「クソガキめ」

いじめの原因は・・・父親の形見の結婚指輪で作られたネックレスだった。

アキトを尾行をする課長。

お菓子を万引きするアキト。

「こら」

「お母さんには言わないで」

「・・・」

アキトの空腹に気付いた課長は・・・小料理屋「へのへのもへじ」に連れこむのだった。

微かに漂う育児放棄の匂い・・・。

薫からの緊急連絡が着信する。

「オバケらしい・・・入院患者を発見しました」

病院で薫と合流する課長だった。

「当日、火傷と捻挫で入院しています・・・名前は・・・本間篤志ですが・・・保険証を提出しています」

「とにかく・・・面会してみよう」

しかし・・・本間を名乗る男は同室の入院患者の衣料品を盗み逃亡していた。

「オバケですね」

「オバケだな」

「監視カメラに残された男の顔認証システムによる解析によると・・・生嶋アキトの可能性が高いそうです」

「自分で自分を助けにきたか・・・」

「顔に大きな火傷の跡がありますからね・・・」

「その点をあまり突っ込むとウルトラセブンの第12話的なことになるぞ」

「しかし・・・目的を達成したのに何故、逃げたのでしょうか」

「他にも何かしでかすのかもしれない」

手掛かりであるアキトと母親の美咲(村川絵梨)をマークする二人・・・。

どう考えても人手不足である。

夫に先立たれた美咲はキャバクラ嬢で生計を立てていた。

課長はキャバクラに潜入する。

「御指名ありがとうございます」

「・・・」

「こういうお店初めてですか」

そこへ・・・恐ろしい偶然で義理の弟の警視庁の柳井刑事(敦士)が常連客として現れる。

「また・・・お前か」

「お義兄さん・・・」

「那須野に言うぞ」

「それだけは勘弁してください・・・これはパトロールの一環です」

「おっぱいパトロールかっ」

店を出た課長は店内を窺う未来人を発見する。

未来人は逃げ出すが追跡する課長。

未来人が足を負傷していたために追いつく課長である。

「生嶋アキトさんでしょう」

「・・・お前、何者だ」

「戸籍管理課です・・・未来人を保護しています」

「俺は・・・誰にも迷惑をかけていない」

「本間篤志さんの保険証を盗んでいますよね・・・それに・・・現代に介入して・・・少年時代の自分自身を救助したりして・・・困るんですよね・・・勝手なことをされては・・・」

「何が困るんだ・・・」

「歴史が変わります」

「それで誰かが困るのか?」

「とにかく・・・そういうルールなんですよ」

「俺は・・・自分自身を救い出す・・・あいつから」

「あいつ?」

「・・・」

未来人は逃げ出した。

お約束で課長は保護に失敗するのだった。

柳井刑事の知り合いと称して美咲に接近する薫。

「女手ひとつで・・・息子さんを育てるのは大変でしょう」

痛々しい火事の傷跡が残る部屋に居住を続ける美咲である。

「とにかく・・・損害賠償もしなければならないし・・・稼げるだけ稼がないと・・・」

「素晴らしいお母さんだと思います」

「素晴らしい・・・とんでもない・・・私は最悪の母親なのよ・・・」

「最悪・・・?」

言葉を濁す美咲。

一方、課長はアキトの身体に無数の傷跡が残っているのに気がつく。

虐待の事実が浮上した・・・。

「あいつって・・・母親のことか・・・」

課長は複雑な気持ちを抱くのだった。

課長と薫はキャバクラに張り込んだ。

もはや・・・刑事だよな。

警察官としての訓練なしで警官やってるようなものだよな。

未来のアキトがやってくる。

「あなたの目標がわかりました」

「あなた・・・クローンじゃないですよね」

「え」

「美咲さんの亡くなったご主人と瓜二つだから」

「母親の遺伝子どこにいったですよね」

「年齢を重ねると親に似るってよくあることじゃないですか・・・それに人間の顔認証システムには個人差がありますからね」

「デッサンが狂っていてもわからない人もいる的な・・・」

「タイムスリップものでは息子にそっくりな父親って・・・よくある手法だと思うのですが」

「そうでもないですよ」

「本題に入りましょう・・・あなた・・・まさか・・・お母さんに復讐を・・・」

「ですよ・・・あいつは・・・結局、あの火事を乗り越えられなかった・・・あの日、俺はあいつの・・・お母さんの作った玉子焼きにチャレンジして・・・火事を起こした・・・ひどい火傷を負った俺は・・・あの女に虐待されて・・・おかしくなっちゃったんだ・・・」

「しかし」

「あんた・・・母親に虐待されたことありますか」

「・・・」

「母親に虐待されたことのない人間にこの気持ちを説明するのは難しい・・・愛と憎しみのコンプレックスが育つんですよ・・・」

「・・・」

「自分でも・・・そんなことはわからない・・・俺が父親が死んだ年になった時・・・こんな俺を愛してくれる女が現れた・・・女は俺の子供を身ごもった・・・それなのに俺は・・・些細なことで喧嘩して・・・女に暴力を・・・女は流産して・・・赤い血が流れた・・・自分で自分がわからなくなりました・・・そして・・・自分がそうなったのは・・・あいつのせいだと」

「だからといって・・・今さら・・・自分の母親を殺してどうするんです」

「自分自身を解放してやるんです」

「でも・・・現代のあなたは・・・あなたの母親を・・・愛しているんですよ」

「だから・・・愛しているうちに・・・」

「ダメです」

しかし・・・課長は未来人のナイフで手負いとなった。

「課長!」

店の外に美咲が現れる・・・。

未来人は・・・過去の母親の首に手をかける。

驚く・・・美咲。

「あなた・・・来てくれたのね」

「え・・・」

「私・・・もうダメ・・・連れてって・・・そうでないとあの子を不幸にしてしまう」

「・・・」

「今ならまだ間に合うわ・・・」

「・・・」

未来人は思わず母親を抱きしめる。

「幽霊でもいいの・・・いつも側にいて・・・」

未来人は闇に消えた。

「あなた・・・」

課長は未来人を保護した。

「とにかく・・・あなたが火傷を負わなかったことで・・・あなたの辿った未来とは違う歴史が書かれるかもしれない・・・私たちとしては困ったことなのですが・・・」

「これだけはわかったよ・・・俺は・・・母さんを殺したりはできないってことが・・・」

「何かがわかるのは楽しいことですね」

「・・・」

まるで肉親のように課長の傷を気遣う薫である。

「課長大丈夫ですか・・・運転できますか・・・」

「だから・・・君も早く免許とってくれよ」

「・・・」

課長のぼやきに・・・意味ありげな表情を一瞬見せる薫・・・。

運転免許をとれない理由が・・・薫にはあるのかもしれない。

課長が疑う政務官の背後にいる未来人とは・・・。

そして・・・どことなく・・・似ているような気がする課長と薫・・・。

三人は・・・別荘へと向う。

その頃・・・秘書は・・・課長のIDカードを使い戸籍管理課に侵入していた。

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2016年12月26日 (月)

俺のセンセイ(石橋杏奈)俺のムスメ(小野花梨)見えたパンツは白のレース(宮本浩次)

毎度おなじみのフジテレビヤングシナリオ大賞のドラマ化である。

今年も終わるのだなあ・・・。

ヤングだが今回主演が宮本浩次(エレファントカシマシ)実年齢50歳なので・・・それほどヤングでもなかった。

セリフに「最近流行りのヘタウマ」とあり、脚本家もあまりヤングではない気がするのだった。

「ヘタウマ」が流行ったのは1980年代である。

前世紀じゃないかっ。

まあ・・・「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」でしか見ることのない石橋の杏奈さんがサービスしてくれたのでよかった・・・と言う他はないな。

結局・・・自称公共放送の勝利なのか・・・。

で、『俺のセンセイ』(フジテレビ20161226AM1~)脚本・小島聡一郎、演出・三橋利行を見た。セリフに「野村再生工場」という言葉が登場するが・・・1976年に移籍1年目に思うような成績が挙げられなかった江夏豊をリリーフ専任投手として再生する南海ホークスの野村克也監督が「野村再生工場:叱り方、褒め方、教え方」を著すのは2008年である。いずれにしろ・・・あまりヤングを感じないぞ。

「Friends」(TBSテレビ2000年)で売れないシナリオライター役だった宮本浩次が演じるのは冴えない中年男の西虎太郎である。

「あの人は今!」的なテレビのトークショーに登場する虎太郎は十年前に一世を風靡したマンガ「どすこい!ヤスシ」の作者である「にしの西男」だったのである。

かっては・・・年収二億円だったマンガ家も・・・今は・・・本業はさっぱりで・・・出演料目当てで恥をさらすのだった。

「絵が下手なのに面白いから不思議です」

心ない司会者の指摘に・・・「絵が下手であることに精神的外傷を持つ男」は逆上し、番組をぶち壊しにするのだった・・・それが狙いなので問題ないのである。

かっての担当編集者でマンガ雑誌「グランドチャンス」の編集長・織田栄二郎(佐藤二朗)は落ち目の「西男」の面倒を見ていた。

「結構・・・反響あったよ・・・これギャラね・・・でも今度は原稿料を払わせてよ」

「・・・考えておくよ」

しかし・・・貯金を食いつぶし、豪邸も売り払った「西男」はどうしても「作品」を生みだすことができないでいる。

煤けたかっての仕事場でカップ麺をすするうらぶれた暮らし・・・。

離婚した妻に引きとられた「娘」(小野花梨)は高校三年生になっている。

「娘」との面会日に「西男」は恥をさらして得た金でプレゼントをしまくるのだった。

「これからママと食事するけど・・・パパも来る?」

「いや・・・俺はやめておくよ」

「大人の意地って・・・残念な感じよね・・・次は大学の合格祝いをちょうだいね」

「卒業旅行をプレゼントするよ」

「本当?」

「どこでも好きなところへ行って来い」

「娘」と別れた「西男」の前に「グランドチャンス」の編集者である内村清隆(小出恵介)が現れる。

「実は・・・売れっ子の墨田スミロウ先生が今月、ピンチでして・・・」

マンガ「極道ドクター/墨田スミロウ」がテレビドラマ化されるために・・・脚本チェックやスピンオフ執筆などでスケジュールがタイトになってしまったらしい。

「だからなんだよ」

「にしの西男先生にアシスタントをお願いしたいのです」

「なんだと」

「月三十万円でどうですか」

「やります」

「大人なんだから・・・手を出さないでくださいね」

「どんだけ・・・武闘派なんだよ・・・」

合鍵で「墨田スミロウ」の部屋に入った「西男」は勘違いに気がつく。

「西男」に気がつかず・・・着替えを始めた郡司すみれ(石橋杏奈)こそが「墨田スミロウ」だったのである。

「おじさん・・・誰?」

「ア、アシスタントです」

「見たわね」

「白のレースのパンティーなんか見ていません」

「ぶっ殺す」

ラフなスタイルで抜群な画力を見せるすみれに「西男」は圧倒されるのだった。

しかし・・・錆びついた「西男」の腕は満足にアシスタントを務めることもできないのだった。

「使えねえな」

「ひでぶ」

仕方なくすみれは「西男」に家事をまかせつつ・・・アシスタントとしての基礎力アップのトレーニングを課すのだった。

「金」のために・・・屈辱に耐える「西男」である。

しかし・・・ある日・・・インタビューに答えたすみれが「マンガ家を目指すきっかけとなった作品」として「どすこい!ヤスシ」を挙げたことで・・・心が震えるのだった。

ようやく・・・アシスタントとしての活動を許された「西男」とすみれの奇妙な共同生活が始るのだった。

やがて・・・すみれには・・・入院中の祖母がいて・・・他人には口汚いすみれが・・・祖母に対しては甘えん坊であることを知る「西男」だった。

ついに・・・「完成する原稿」・・・。

しかし・・・バス停で居眠りした「西男」は信頼して預けられた原稿を雨で濡らしてしまうのだった。

「すみません」

「もう・・・いいよ・・・コピーを送信しておいたから」

「え」

「おじさんなんか・・・信用するわけないじゃん」

愕然とした「西男」は部屋を飛び出すのだった。

しかし・・・偶然、編集者の内村に遭遇した「西男」だった。

「原稿、間に合いそうですか」

「え・・・」

「明日は先生のお祖母さまの手術もあるし・・・大丈夫かなあ」

あわてて・・・戻った「西男」は・・・すみれが原稿を再執筆している姿を見る。

「なんで・・・嘘を・・・」

「もういいっていったでしょう」

「俺はにしの西男だ・・・あんたの憧れの先生だ」

「勘違いしないで・・・こんな絵が下手な人でもマンガ家になれるなら私には楽勝って思っただけだから」

「・・・なんでもいい・・・俺には娘がいて・・・小学生の時に・・・似顔絵描いてやった・・・ところがクラスで絵が下手だって馬鹿にされて・・・泣いて帰ってきて・・・パパのヘタクソって言われた・・・それで俺はスランプになって・・・」

「はあ・・・?」

「とにかく・・・お前にとって・・・おばあちゃんになんかあったら・・・そうなる可能性があるってことだよ・・・俺たちは繊細なんだから」

「なんかあるって・・・ヘルニアの手術でなんかあるはずないでしょう」

「ヘルニア?」

「まあ・・・いいや・・・手伝うなら・・・手伝いなさいよ・・・にしのセンセー」

「先生?」

「ぼやぼやすんな」

「はい・・・墨田センセー」

こうして・・・「西男」はちょっぴり再生されたのだった。

すみれの愛読書は・・・今も「どすこい!ヤスシ」なのである。

「私は・・・続きが読みたいな・・・センセー」

「精進します・・・センセー」

ポケットマネーで・・・アシスタント代を捻出した織田編集長は・・・「どすこい!ヤスシ」の再開を夢見る。

そこそこ売れると読んでいるのである。

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2016年12月25日 (日)

本懐を遂げた男の微笑みと残される女の慟哭(武井咲)

「赤穂事件」という史実と「忠臣蔵」という虚構には当然ながら乖離する部分がある。

史実にしても「当時の記録」に依る一種の虚構であり、「本当にあったこと」とは限らない。

何故・・・浅野内匠頭長矩が吉良上野介義央に殿中で刃傷沙汰に及んだのか・・・それさえも憶測の域なのである。

元禄十四年(1701年)3月14日に内匠頭が切腹して、元禄十五年(1703年)12月15日に吉良上野介義央に殺害されるまでに人々がどのように生きたのかを知ることは不可能なのである。

三百年以上昔の話である。

「人命」が何よりも尊重され、「殺人行為」が犯罪に過ぎない現代の日本において・・・「赤穂事件」を正しく認識することは難しいし、「忠臣蔵」を心からエンジョイすることも容易いことではないようだ。

しかし・・・「赤穂浪士」の「快挙」に「喝采」する人々がいて・・・その「物語」は長く庶民に親しまれたのである。

素晴らしいインターネットの世界で繋がれて限りなく軽薄で空虚なものとなっていく人々には・・・それはなかなかに刺激的である。

このドラマは二つの史実を無理矢理結合させた伝奇ものであり・・・ここからはあっと驚く展開が待っているわけだが・・・驚くためにはそれなりに江戸時代に精通している必要がある。

「赤穂事件」よりも・・・「大奥」のあれやこれやはさらに裾野が広いわけである。

犬公方・徳川綱吉(五代)と暴れん坊将軍・徳川吉宗(八代)の間の・・・六代家宣の側室であり、七代家継の母である月光院のことを多くのお茶の間の人々は知らないに決まっている。

ドラマ「大奥」ではいしだあゆみが演じていたなあ・・・。

そういう人にきよはなります。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第13回』(NHK総合201612241810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。元禄十五年十二月十四日(1703年1月30日)・・・赤穂浪士は両国橋を渡り、吉良上野介義央(伊武雅刀)の屋敷に討ち入る。吉良屋敷のあった松坂町と通り一つ隔てた本所相生町に堀部安兵衛(佐藤隆太)の道場と杉野十平次次房の借家、そして前原伊助(山本浩司)の米屋があり、安兵衛、十平次、伊助はそれぞれが裏門隊である。「忠臣蔵」では雪の中を大石内蔵助(石丸幹二)ら四十七士が行進するのが定番だが・・・夜襲に際しては行軍の秘匿が重要となる。おそらく・・・吉良屋敷へは表門部隊、裏門部隊ともに忍び足で接近したのだろう。まず・・・表門部隊の忍びが塀を越え・・・屋敷に侵入、足軽小屋の封鎖を実現したのだろう。表門突入の報せを伝令によって受けた裏門部隊が「陽動」のために裏門を破壊して突破、「火事騒ぎ」を起こす。ここで・・・表門部隊は「主君の仇討ち」の口上を認めた高札を掲げる。表門の主将である内蔵助の下で原惣右衛門(徳井優)は多人数を装う擬装工作を行ったと描写されるが・・・実際は身分が低かったために正式な員数として認められなかった寺坂吉右衛門のような無名の者が戦闘に参加していた可能性がある。

安兵衛と堀内道場の同門である勝田善左衛門(大東駿介)や佐藤條右衛門(皆川猿時)は吉良屋敷の門前で赤穂浪士に本懐を遂げさせるために警備についたのである。

そこへ・・・細井広沢の家からきよ(武井咲)が駆けつける。

「ここは・・・女子の来る場所ではないぞ」

「いいえ・・・私は・・・お側にいたいのです」

「もう・・・討ち入りは始っている」

「・・・」

さらに・・・瑤泉院の差し入れの「蜜柑」をもった細井広沢の門弟が現れる。

「なんじゃ・・・それは・・・」

「瑤泉院様から・・・討ち入りの後の渇きを癒せと・・・差し入れでございます」

「・・・」

その頃・・・赤坂今井の三次浅野屋敷では瑤泉院(田中麗奈)が本懐成就を祈り経文を唱えていた。

「四十八個あります」

「毛利小平太殿が来なかったので討ち入ったのは四十七士だ・・・」

「毛利様・・・」

すでに骸になった小平太のために・・・きよは吉良屋敷の門前に蜜柑を供えるのだった。

屋敷内からは時々、物音や声が響く。

時には断末魔の叫びもあがった。

戦闘が開始されたのはすでに十五日となった寅の上刻(午前四時)頃だったと言う。

吉良屋敷には百人以上の戦闘員がいたと言われるが他にも侍女などもいたために戦闘開始後は喧騒に包まれた。

近隣の武家屋敷からは斥候が出て町人も通りに出てきたわけだが・・・赤穂浪士に心を寄せる支援者たちが穏便に事情を説明したと思われる。

吉良側は死者十五人、背中を斬られて失神した吉良義周など負傷者二十三人、浅野側は侵入時に足を痛めた原惣右衛門、左股に深手を受けた近松勘六行重以外は軽傷だった。

奇襲が成功したのである。

吉良屋敷を制圧した四十七士は屋敷内の探索を開始し・・・台所の物置に潜んでいた上野介を間十次郎光興が刺殺した。

集合のための笛が吹かれ、やがて勝鬨が響く。

激闘二時間、明け六つの鐘が鳴り卯の刻(午前六時)になっていた。

やがて・・・吉良屋敷の門から・・・四十七士が姿を見せる。

場外の支援者たちに内蔵助が告げる。

「本懐遂げ申した」

「おめでとうございます」

蜜柑のザルを受け取った勝田善左衛門が進みでる。

「瑤泉院様からのご進物でございます」

「かたじけない」

四十七士は蜜柑を受け取った。

きよは村松三太夫(中尾明慶)に蜜柑を手渡した。

三太夫は微笑んだ。

きよは磯貝十郎左衛門(福士誠治)に蜜柑を手渡した。

「本懐を遂げ申した」

「おめでとうございます」

十郎左衛門はきよに蜜柑を手渡した。

「達者でな・・・」

「十郎左様・・・」

Ako002 亡き主君の墓前に上野介の首級を供えるために・・・赤穂浪士の行進が始った。

もはや為す術もなく・・・行列を追うきよである。

江戸八百八町に・・・赤穂浪士の討ち入りは伝播していった。

すでに両国橋の周辺にも見物人が集まっている。

支援者たちは負傷者のための駕籠も用意していた。原惣右衛門と近松勘六は駕籠に揺られた。

内蔵助は吉田忠左衛門(辻萬長)と富森助右衛門を幕府大目付の仙石伯耆守久尚の屋敷に派遣した。

久尚は仙石秀久の曾孫である。

久尚は月番老中稲葉正通に報告した後に登城して将軍徳川綱吉に事態を報告する。

老中の評議の結果、赤穂浪士は細川綱利・松平定直・毛利綱元・水野忠之の四家にお預け(身柄拘束)と決まる。

討ち入りの報せは上杉下屋敷にも届いた。

「母上・・・父上が・・・」

上杉綱憲(柿澤勇人)は富子(風吹ジュン)に悲報を伝える。

「この上は討手を・・・」

「なりませぬ」

上杉家の家老・色部又四郎安長(堀内正美)は変事を知って駆けつけていた。

「ご公儀の御沙汰を待つしかありませぬ」

「しかし・・・父の仇を・・・」

「もうよい・・・」と富子が告げる。「怨みを晴らし合ってもきりがないと・・・あの方は申しておりました」

「母上・・・」

両国から泉岳寺(港区高輪)までは地下鉄なら大門乗り換えで三十分だが歩くと結構あります。

男たちの足は速く・・・きよはいつしか取り残された。

討ち入りという大事が終わり・・・緊張の糸が途切れたのである。

「きよ殿ではありませんか」

路地に蹲るきよに・・・寺坂吉右衛門(川口覚)が声をかけた。

「寺坂様・・・」

「拙者はこれから・・・浅野本家にお預けになっている浅野大学様に報告のため広島に下ります」

「皆さまは・・・」

「泉岳寺に向いました」

「泉岳寺に・・・」

「これにて御免」

「道中・・・お気をつけて・・・」

去っていく寺坂の姿に小平太の姿が重なるきよだった。

「行かなくては・・・」

ようやくたどり着いた泉岳寺は閑散としていた。

寺の門は閉ざされている。

きよは途方に暮れた。

そこへ・・・佐藤條右衛門が姿を見せる。

「おじさま・・・」

「きよ・・・どこにおったのじゃ・・・」

「皆さまは・・・・・・」

「・・・磯貝殿は細川綱利様の屋敷にお預けになった・・・」

「・・・」

「さあ・・・帰ろう」

「どこに・・・」

「浅草の唯念寺に決まっておろう」

「嫌です」

「何を言っておる」

「嫌です」

「きよ・・・すべては終わったのじゃ」

「嫌です」

きよは号泣した。

きよは数えで十八になっている。

しかし・・・今は・・・子供のように泣く他はないのだった。

佐藤條右衛門は仕方なく・・・きよを担ぎあげた。

高輪の泉岳寺から浅草の唯念寺までの道のりもまた遠い。

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2016年12月24日 (土)

勇者たちの戦いはいつだってこれから始るのだ!(山田孝之)

このドラマの最大の問題点は・・・封印しているゲームへの誘いにつきるな。

やりたくてやりたくなってやっちゃった人も多いのではないだろうか。

戦後まもなくの子供たちは精々日が暮れるまで遊んで夜になったらマンガの読み過ぎを叱られるくらいで済んだわけだが・・・コンシューマ・ゲームの登場以来・・・それではすまない人々は確実に生み出されてしまったわけである。

いつでもどこでも一人でもゲームができるという恐ろしい時代なのだ。

やりたくてやりたくなってやっちゃって死ぬまでやり続けちゃうわけである。

朝までゲームをやっちゃってどれだけの現場に遅刻し、あるいは〆切に間に合わなかったことか。

一銭にもならないゲームのためにどれだけ大切な仕事を失い、恋人を友人を失ったことか。

禁断症状を乗り越え・・・なんとか日常に還ってきた人々を誘う・・・恐ろしい罠だ。

ドラマとドラマの間はゲームのCMの連打である。

ああ・・・ダメだ・・・この呪いを解くことはできない。

まるでヨシヒコのように・・・ゲームのスイッチを入れる一部の人々だった。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・最終回(全12話)』(テレビ東京201612240018~)脚本・演出・福田雄一を見た。ついに「とどめの剣」を入手した勇者ヨシヒコ(山田孝之)と賢者のメレブ(ムロツヨシ)、バトルマスターのダンジョー(宅麻伸)、そして魔法使いのムラサキ(木南晴夏)は最終ミッション「魔王を倒せ!」を実行するために「ベホマズン」でパーティー全員のHPを全回復し、「スクルト」でパーティー全員の守備力を高めて・・・天空の魔王ゲルゾーマ(声・堤真一)の玉座へと進む。

「勇者よ・・・よくぞここまでたどり着いたな」

「今こそ・・・玉人を召喚する時・・・」

「出でよ・・・選ばれし者たち!」

七つのオーブを投げ上げるヨシヒコ。

しかし・・・何も起こらなかった。

「あれ・・・」

「どういうこと?」

「なんらかの不具合か?」

「どうしたの?」と割とフランクな魔王だった。

「しばらく・・・お待ちください」

「あ・・・そう・・・じゃあ・・・魔物を生みだしているけど・・・いい?」

「どうぞどうぞ」

仏(佐藤二朗)が登場し状況を伝える。

「スケジュール調整がちょっと・・・ね」

「そんなこと・・・最初からわかってんだろうが」

「とにかく・・・ここは逃げて」

「逃げられるかよ」

「ほら・・・魔物を生みだすのに熱中してる隙をついて」

「・・・」

「ちょっと待った」

「ほら・・・逃げられない」

「いや・・・逃げてもいいけど・・・その前に」

魔王は「とどめの剣」を熱線で溶かすのだった。

「あ・・・」

「いつでもどうぞ」

ヨシヒコたちは逃げた!

魔王の迷宮で・・・。

「もうダメです・・・」

「どうした・・・ヨシヒコ・・・」

「とどめの剣がなくてはとどめが刺せません」

「そこを気合でなんとかするのが勇者だろう」

「いやです・・・今度死んだら・・・生き返れないのだ・・・私は死にたくない」

「え」

「世界なんて滅びたっていい」

「勇者のセリフじゃないぞ」

「私はとにかく生きていたいんだ」

「ヨシヒコ・・・」

そこへ・・・悪い仏が現れた。

「ヨシヒコ・・・見よ・・・ここは終わりの祠」

「終わりの祠・・・」

「ここには様々なエンディングが納められている・・・魔王を倒さないエンディングもあるから・・・選択するがよい」

ヨシヒコの目の前に広がる三つの扉。

ヨシヒコは赤い扉を開いた。

バースとなったダンジョーは叫んだ。

「ネロ・・・私が悪かったどこにいる」

雪が降り注ぐ。

天真爛漫なアロアとなったムラサキはヨシヒコの姿を捜す。

「ヨシヒコ・・・どこにいるの・・・ヨシヒコ」

ネロとなったヨシヒコは教会に横たわっていた。

そこに・・・忠実なパトラッシュとなったメレブが寄り添う。

「メレブさん・・・捜しにきてくれたのですね・・・まるでフランダースの犬みたいに・・・ありがとう・・・いつも一緒にいてくれて・・・私はルーベンスを見ることはできなかったけれど魔王を見ました・・・勇者としてよくやったほうだと思います・・・メレブさん・・・私は疲れました・・・なんだか・・・とても眠い・・・」

ヨシヒコは永遠の眠りにつく。

メレブヘアの天使たちが舞い降りて・・・死者となったヨシヒコを魔物の眠る黄泉の国へと導くのだった・・・。

(おわり)

「いやだあああああああ」

赤い扉から飛び出すヨシヒコ。

「死んでるじゃないですか」

「しかし・・・幸せだっただろう」

「嫌です・・・私は生きていたい・・・そして魔王を倒さなくてもなんとかなった感じで終わらせたいのです」

「では・・・次の扉を開くがよい・・・」

ヨシヒコは青い扉を開いた。

流れ出す「残酷な天使のテーゼ」・・・。

ヨシヒコは一枚のスケッチとなって揺れる。

「ここには何もない」

「何もない世界」

「フランク・ドレイクの方程式に導かれたニック・ボストロムのシミュレーション仮説に影響されたコードウェイナー・スミスの人類補完機構にインスピレーションを受けた人類補完計画は知恵の実によって群体化した人類を完全なる単体生物として再生する過程・・・」

「私は最悪です・・・臆病で・・・卑怯で・・・仲間を裏切り・・・変態で・・・」

「いいじゃないか」

「私はそんなヨシヒコでいいと思う」

「ありのままのお前で」

「ぱふぱふにまみれても」

「それもまた人生・・・」

「私は自由なのですか」

「人は最初から自由さ」

「自由というのは失うものが何もないこと」

「つまり・・・人は何も持たずに生れてくる」

「私は自由だ」

「おめでとう」とロビン(滝藤賢一)が言った。

「おめでとう」とヴァリー(城田優)が言った。

「コングラッチュレーション」とフロリア(山本美月)が言った。

「現場で」とニッテレン(徳光和夫)が言った。

「ブルーシートで」とカンダタ(高嶋政宏)が言った。

「一発収録で」とレオパルドひとみ(大地真央)が言った。

「ギャラの範囲内で」と香西そのか(川栄李奈)が言った。

一同はヨシヒコを輪になって囲む。

「おめでとう」

「なんだ・・・これは・・・意味がわからない」

流れ出す「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」・・・。

ヨシヒコは青い扉を飛び出した!

「新世紀エヴァンゲリオンのような意味不明だがすべてがうやむやな素晴らしい終わり方ではないか」

「無意味すぎる・・・魔王を倒さずとも死なずに何となく収まった感じに終わると言ってもこれでは視聴者に対して失礼すぎます」

「おっと・・・みなまで言うな」

「劇場版にしたって・・・結局、阿漕なくりかえしなんだ」

「さ、最後の扉へ」

「もう・・・うんざりだ」

電車男タイプのヘラ男になったヨシヒコはアパートの一室でゲームをしている。

コントローラーを置いたヨシヒコは友人に電話をかける。

「あ・・・俺・・・今、ゲームしてた・・・ラスボス強すぎるんで・・・やめたわ・・・これから飲みにいかない・・・どこでもいいよ・・・お・・・笑笑・・・でいいんじゃない」

そこに宅急便配達人に変装した仏が現れる。

「判子お願いします」

「拇印でいいですか」

「ボインちゃんが好きなんですか」

「ええ・・・まあ」

「お邪魔します」

「ちょっと・・・勝手に・・・何ですか」

「どうしたのかな・・・魔王を放置して・・・」

「もう・・・今回はエンディング見なくてもいいかなと・・・ラスボス見たから・・・達成感あるし」

「コツコツ内職してためた経験値は・・・」

「結局、そういうことだし」

「こら・・・仏ビーム」

仏はヨシヒコを覚醒させた。

「仏・・・」

「ゆとりですがなにか的ゲーマーに逃避している場合ではない・・・」

「しかし・・・」

「必勝の策は最後の扉の向こう側にある」

「どうやってそこへ・・・」

仏はネバーエンディングストーリーのファルコンのような「まんが日本昔ばなし」の龍のような乗り物で・・・ヨシヒコを黄色い扉の向こう側に送る。

そこは何故か色褪せた世界。

「ヨシヒコ・・・今までどこにいたの」

ヨシヒコは仲間たちと合流した。

「とどめの剣は偽物でした・・・本物はあの祠に・・・」

伝説の剣の祠で話し合う青年たち。

「誰にも抜けない伝説の剣というが・・・」

「誰でも抜けるよな」

「みんな・・・抜けないフリをして・・・」

「あいつに抜かせよう・・・」

青年たちが去った後で・・・祠に入ったヨシヒコたち。

「しかし・・・これを抜いてしまうと・・・」

「お前のいざないの剣を挿しておけばよかろう・・・」

しばらく・・・隠れて様子を見るヨシヒコたち。

そこに・・・村人たちとヒサ(岡本あずさ)・・・そして若き日のヨシヒコが現れる。

「ここは・・・カボイの村」

「つまり・・・我々は過去にいるのか」

「つまり・・・ヨシヒコは一周前のヨシヒコが置いて行ったいざないの剣を抜いたのか」

「一周前?」

「難しくてわからん」とダンジョー。

仏が現れた。

「ヨシヒコ・・・それでは・・・魔王の城へと戻れ・・・スケジュールは調整された」

「その前に仏・・・一つお願いがあります」

ヨシヒコは・・・ない知恵をしぼって秘策を考えていた。

魔王の城に到着した・・・ヨシヒコと三人の仲間・・・そして七人の選ばれし者たち。

「合成だよね・・・あるいはお面をかぶった別の人だよね」

しかし・・・七つのオーブの力は素晴らしかった。

ゲルゾーマの第一形態を打破。

「私を本気にさせたな・・・」

ゲルゾーマの第二形態を弱体化させ・・・ヨシヒコのとどめの剣が炸裂する。

「おおおお・・・・」

「やった・・・」

「ふふふ・・・勇者よ・・・今までの私なら・・・これで滅んでいただろう・・・しかし、私は進化している」

「何?」

ゲルゾーマの第三形態は一瞬で七人の選ばれし者を消滅させた。

「わははははは」

「スーパーサラリーマン左江内氏のロケ前にボイスオンリー収録か」

「メラゾーマ」

ムラサキのメラゾーマは効かなかった!

ゲルソーマの攻撃!

ムラサキは死んでしまった・・・もう復活はできない。

「ムラサキ!」

「フタメガンテ」

メレブのフタメガンテは効かなかった!

ゲルソーマの攻撃!

メレブは死んでしまった・・・もう復活はできない。

「メレブさん!

「おのれ・・・」

ダンジョーは炎の刃の力で攻撃!

ゲルソーマは自動修復した。

ゲルソーマの攻撃!

ダンジョーは死んでしまった・・・もう復活はできない。

「ダンジョーさん・・・」

「ふふふ・・・永遠の死が・・・彼らに訪れた」

「お前は・・・絶対に許さない」

「何?」

ヨシヒコの背後に無数のヨシヒコが現れた。

「過去の私を総動員した」

「なんだと・・・」

「時空を越えて・・・俺たちがお前を倒す」

「そんな馬鹿な・・・」

時空を越えたヨシヒコたちは魔王にとどめの剣を刺しまくった。

魔王は滅んだ!

しかし・・・ムラサキもメレブもダンジョーも生き返らない。

ヨシヒコの心を虚しさが吹き抜ける・・・。

仏が現れる。

「ヨシヒコたちよ・・・よくぞ・・・魔王を倒した・・・それぞれの時代に戻るがよい・・・ここであった記憶は消しておく・・・」

しかし・・・仏はうっかり・・・この世のヨシヒコを過去に飛ばした。

この世には記憶を消されたヨシヒコが残った。

しかし・・・すでに魔王を倒した世界である・・・過去のヨシヒコはこの世のカボイの村でヒサと幸せに暮らすことができるだろう。

この世のヨシヒコは記憶を残したまま・・・過去の世界に現れる。

ヨシヒコはヨシヒコと出会う前のダンジョーに出会った。

「まったく嫌な世の中になった・・・」

「行きましょう」

「おい・・・人の話を聞かんか・・・」

「もうすぐ・・・私を狙う女が現れます・・・そして・・・金髪の教祖が・・・」

「お前・・・予言者か」

「いいえ・・・二周目です」

「二周目?」

「急ぎましょう・・・時空を混乱させたので・・・この世界の魔王は前より・・・強敵かもしれない」

「なんだと」

「そう引いておけば・・・年末年始六時間時代劇特番としてスペシャル化もあるかもしれません」

「そんなこと言ってたけど・・・映画化にはならなかったよな・・・」

「ああ・・・もうエンドロールが流れてしまう」

時はめぐる風車・・・。

またの開幕をお茶の間一同お待ちしています。

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2016年12月23日 (金)

トーキョー・ミッドナイト・ラン(二階堂ふみ)幻想のブラックサンタと聖夜の逃走(コムアイ)

くりかえし言っていることだが・・・サンタクロースはいます。

良い子はクリスマスプレゼントをもらえます。

もらえないのは良い子ではないからです。

キッドは良い子なので毎年もらっています。

・・・もういいか。

暮れも押し迫っているのである。

師走の谷間に突入ということでいいのかな。

「コック警部」とか「ミタゾノ」とか積み残しているけどな。

まあ・・・師走の谷間に隙があったらぶっこむよ。

で、『トーキョー・ミッドナイト・ラン』(フジテレビ201612230045~)脚本・喜安浩平、三浦希紗、演出・山田智和を見た。「ぐるぐるナインティナイン」の「グルメチキンレース・ゴチになります!」パート17で二階堂ふみは最後のおみやダーツでりゅうちぇるが「3位」を狙い撃ちしたために柳葉敏郎が最下位に転落・・・「クビ」を免れたのだった。

「俺たちはヤバイ店に来ちまったんだ」

「やべ~俺が払っちまうぜ」

「俺は五品だから」

「おみや代が柳葉さん以外なら二階堂さんがサヨナラだ」

「なんやて」

・・・遠くで汽笛が聞こえる・・・魔都東京・・・シブヤ・・・。

公衆トイレをクリスマス的にデコレーションする赤い網タイツの女・ナオ(二階堂ふみ)と赤いダウンコートの女・ハルカ(コムアイ)・・・。

「まるでパイオツカイデーじゃないか」

「単なるモールでしょう」

「どうしてこんなことをしているのか」

「サンタごっこ」

「いいことしてSNSに投稿するという・・・」

「だね」

「公園のトイレを勝手にデコるのはいいことなのか」

「利用者が心温まると思う」

「電飾とかで・・・発火して・・・大惨事になったりしないのか」

「ワンカット長回しのドラマだから大丈夫よ」

「ヒッチコックのロープはフィルムだけどデジタルシネマでは単に安易な手法じゃないのか」

「二階堂ふみをずっと見つめ続けていたい一部お茶の間には最高のクリスマスプレゼントよ」

「なんやて」

何をして生計をたてているのかよくわからないナオとハルカはサンタクロース的ファッションで満ち溢れるクリスマス・イブの渋谷界隈を彷徨う。

猫の鳴く声がする。

「おやあ・・・」

「にゃあお」

何故か・・・コインロッカーの中から首輪をした猫を発見する二人。

「これは飼い猫みたいだ」

「SNSに投稿して飼い主を探しましょう」

ナオとハルカと猫は街を彷徨する。

すると浮浪者(八十田勇一)が二人に声をかける。

「なんかくれ・・・」

「ほっときなさいよ」

「アメちゃんあげる」

「お前たち・・・ブラックサンタを知ってるか」

「ブラックサンタ?」

「黒い衣装を来た悪のサンタさ・・・聖夜に動物の臓物をぶちまけるという」

「行きましょうよ」

「おじさん・・・なんでそんなこと言うの」

「あんた・・・知らない人に少し心許しすぎ」

「そうかしら」

「ヤバいクスリをやってると思われるよ」

「えええ」

次に路地裏に迷い込んだ女たちは・・・ハルカに想いを寄せる若者(栁俊太郎)に地下室のパーティーへと誘われる。

ハルカにはその気がないのに高圧的な態度でつきまとう若者にシャンパンをぶっかけるのだった。

復讐心の虜になった若者は素晴らしいインターネットの世界のとあるSNSに「悪い噂」を流すのだった。

《ブラックサンタを知ってるか・・・今夜渋谷で猫が腹を裂かれる・・・ブラックサンタは生贄を持ってうろついている・・・ブラックサンタはハルカという女・・・》

聖夜の狂騒に酔った民衆は・・・ナオとハルカと猫を追いはじめる。

「ブラックサンタ狩り」が始ったのだ。

夜の街を逃走する女たち・・・。

「こっちこっち」

浮浪者が抜け道を教えてくれた。

「アメのお礼だ」

「おっさんはSNSなんてしないよね」

「浮浪者だからってバカにするな・・・同じ空気を吸っている」

「私・・・ハルカ」

「俺は名無しだ」

「掲示板世代なのね」

「匿名じゃなきゃ本当のことなんか言えない!」

逃走に疲れたナオは叫ぶ。

「しまった・・・明日、アサイチの入稿あるの忘れてた」

「ダメじゃん」

「誰のせいでこうなった」

「アゲちゃんが・・・デートだって言うから・・・」

「店長と付き合ってんのか」

「だね」

ついに・・・駅前で追いつめられてしまう女たち。

「ブラックサンタだ」

「火あぶりにしろ」

「なんやて」

囲まれたハルカは・・・トイレを塗った赤いペンキで血まみれになる。

「きゃあああああああああ」

「誰だ・・・誰が彼女を・・・」

群衆は逃げ去った。そこへ・・・アゲちゃん(岸井ゆきの)が現れた!

「大変・・・救急車を・・・」

「大丈夫だから」

「でも・・・」

そこへ・・・猫の飼い主(夏目ナナ)が現れた。

「SNSで見ました」

「どうして・・・猫をコインロッカーに・・・」

「闇金の人の嫌がらせだと思います」

「ああ・・・」

その時・・・午前零時の鐘の音が響く。

「メリークリスマス」

「メリークリスマス」

何もいいことがなかったこの街で・・・。

暮らしていく女たちだった・・・。

悩み続け・・・心を閉ざし・・・。

何かを探して・・・。

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2016年12月22日 (木)

未来から来た女たちのアイドルその後で(成海璃子)

アイドルの命は短いものだ。

息の長いアイドルなんてありえない。

できればそうあって欲しいものだ。

・・・というのは勝手な美少女趣味者の願望である。

もちろん・・・アイドルからスターとなり・・・息の長いアーティストになったらなったでいいわけである。

ファンもまたアイドルとともに年老いて・・・永遠のアイドルと生涯ファンの関係を構築したって構わない。

永遠のアイドルというのは一種のモンスターだからな。

適当なところでやめておけよ。

星の数ほどいるアイドルたち・・・誰もかれもが懐かしい。

で、『リテイク 時をかける想い・第3回』(フジテレビ201612172340~)脚本・ペヤンヌマキ、演出・植田尚を見た。脚本は二年連続岸田國士戯曲賞の最終候補に残った人である。ペンネームがアレなんじゃないか・・・。しかし、山内ケンジ→タニノクロウと来ているから→ペヤンヌマキというのもあるかもしれないぜ。まあ・・・どうでもいいけどな。2022年にタイムマシンが開発され、未来から未来人が飛翔してくる世界である。ただし、時間旅行は未来から過去への一方通行であり、未来人が過去に出現した時点で・・・未来人の遡上してきた未来は失われ、別の時間軸に路線変更されたと思われる。現代人にとって・・・未来が変更されたかどうかの判断が不能であることは言うまでもない。ただ・・・未来人だけが・・・自分の知る「歴史」が変わったという認識を持つことはできる。たとえば・・・未来人が過去の自分を殺しても未来人は消失しない。未来人の存在した時間軸と・・・遡上した時間軸は別世界なのだ。この世界にはタイムパラドックスは存在しないのである。

未来人を保護するのが任務の戸籍監理課課長・新谷真治(筒井道隆)は二年前に離婚し、別れた妻は幼い娘との面会を許さない。新谷課長は受け取ってもらえぬクリスマスプレゼントを涙こらえて選ぶのだった。

その時、パートタイマー・パウエルまさ子(浅野温子)から着信がある。

「台東区で天気雨発生中」

「今、忙しいので那須野にまかせてください」

「薫ちゃんは・・・有休とってるわよ」

「・・・」

正規職員・那須野薫(成海璃子)は有給休暇中だった。

仕方なく、新谷課長は・・・台東区に向う。

台東区もかなり広いけどな・・・まあ、いいじゃないか。

例によって滞りなく白い衣装の男(新貝文規)を発見する課長である。

追跡した課長は・・・繁華街の片隅の怪しい地下スペースに入りこむ。

そこには無数の白い衣装の人々がいて・・・ステージでは白い衣装のアイドルグループ「ホワイトラバーズ」(ベースはさくらシンデレラ)がパフォーマンスを繰り広げていた。

そして・・・恐ろしい偶然で義理の弟の警視庁の柳井刑事(敦士)はホワイトラバーズのファンとして熱狂的応援をしているのだった。

「お義兄さんもファンだったんですか」

「・・・」

白い男を捜してうろつく課長に・・・「ホワイトラバーズ」のマネージャーである野々村ミヤコ(国生さゆり)が接近する。

「お客様・・・初めての方ですか」

「はい」

「ブロマイドを一枚お求めいただくと彼女たちと一緒の写真撮影が可能になりますよ」

「そういうシステムなんですか」

ふりかえるとステージでは記念撮影会が始っている。

「ホワイトラバーズ」のセンター・ポジションを務める橘マリエ(森田涼花)の前に白い男が現れた。

「今日もあの男に逢いにいくつもりでしょう・・・あいつとは別れた方がいい」

戸惑うマリエ・・・白い男は警備員に連れ出される。

課長は白い男を追うが例によって鈍足のために捕獲に失敗するのだった。

翌日・・・男性アイドルの白川エイト(小林豊)の熱狂的ファンであるパウエルは悲鳴をあげる。

「いやあああああ」

白川エイトと橘マリエの熱愛が発覚したのである。

有休から復帰した薫がつぶやく。

「白い男は・・・この事を知っていたのでは・・・」

「その可能性は高いな」

「つまり・・・二人の仲を裂くために・・・未来からマリエのファンが来たってこと・・・」

課長と薫は「ホワイトラバーズ」の常設劇場に向うが・・・「熱愛報道発覚」のために公演休止中だった。

課長は「研究生募集」のポスターに目をつけ・・・薫に応募させる。

薫はオーディションでかわいい衣装を披露するが・・・不合格になるのだった。

しかし・・・仕事熱心な薫は・・・付き人として潜り込むことに成功する。

「アイドルに大切なことは・・・夢を叶える姿をファンに見せてお金を稼ぐことよ」

野々村マネージャーは厳しくメンバーを指導するのだった。

「あなたは・・・しばらく寮の掃除でもしていなさい」

スキャンダルの渦中にあるマリエを謹慎させる。

他のメンバーは連帯責任で「お菓子禁止」になった。

薫はマネージャー見習いとして寮生活である。

同室になったのは・・・橘マリエとメンバーの一人でマリエの親友の望月ミナ(外岡えりか)だった。

ミナにも高校時代から続くシンイチという恋人がいるらしい。

「監視役ですか」

「そう言われているけど・・・私は恋愛なんて自由にするものだと思うから」

「ミナはいいよねえ・・・バレてなくて・・・」

「でも・・・彼氏が最近、アイドルなんてやめろってうるさくて」

ちなみに実年齢的には・・・。

成海璃子・・・1992年8月18日生れ(24歳)

森田涼花・・・1992年9月7日生れ(24歳)

外岡えりか・・・1991年6月11日生れ(25歳)

アイドルとしてはギリギリじゃないか・・・。

ちなみに国生さゆりは1966年12月22日生れ(49歳)で、ソロデビュー曲「バレンタイン・キッス/国生さゆりwithおニャン子クラブ」は1986年のリリース。当時19歳である。

ついでに森田涼花と外岡えりかはアイドルグループ「アイドリング!!!」の元メンバーである。

森田涼花が演じるマリエをマークする薫は・・・謎の女(伊藤かずえ)に遭遇する。

「エイトとは別れなさい」とマリエに詰め寄る謎の女。

エイトの熱狂的ファンと断定するマリエだった。

一方・・・野々村マネージャーはマリエには甘いがミナには厳しいのだった。

「ミナちゃんに厳しいですね」

「あんたみたいに・・・才能が皆無だったら・・・よかったのよ・・・中途半端な才能ほど残酷なものはないのよ」

「・・・」

薫は凹むのだった。

深夜・・・寮を抜けだしたマリエはエイトと合流しドライブに出かける。

追跡する課長と薫。

真夜中の駐車場で痴話喧嘩を始める二人だった。

「結婚しようって言ってる」

「もっと早く言ってほしかった」

そこへ・・・ナイフを持った白い男が現れる。

「マリエちゃんはボクのものだ・・・離れろ」

白い男はナイフでエイトに襲いかかる。

そこへ・・・謎の女が飛び出し・・・エイトをかばって負傷する。

「課長・・・なんとかして」

「わかった」

なんとか・・・白い男を取り押さえる課長だった。

「公務員がアイドルを救う!」

事態は表沙汰になるのだった。

のののタイム・・・素晴らしいインターネットの世界でおのののかが登場するとのののののと呟かれる現象・・・である。

法務大臣政務官秘書の大西史子(おのののか)は法務省戸籍監理課の本当の任務を知らないのだった。

「お手柄でしたね」

「・・・」

二人きりになると法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)は笑ったまま苦言を呈する。

「世間を騒がせてどうする」

「申しわけありません」

「しかも・・・逮捕された男はオバケ(未来人)じゃなかったそうだな」

「アイドルたちの会話をぬいぐるみに仕込んだ盗聴器で聞き取り・・・プライベートな情報を掴んでいたようです・・・オバケではなく単なるオバカでした」

「・・・」

「しかし・・・被害者女性の方が・・・オバケの可能性があります」

「事件が起こるのを知っていたと・・・」

「はい」

入院した謎の女を・・・マリエが見舞いに訪れた。

「ありがとうございました・・・ファンのあなたには申しわけないのですが・・エイトと結婚することにしました」

「え」

「今度のことで彼が大切な人だとわかったので・・・」

「だめよ・・・」

「すみません・・・」

「そうじゃなくて・・・あんな男と結婚したら・・・ろくなことにならないのよ」

「そんな・・・」

「私は・・・あなたに・・・私と同じ道を歩んでほしくないの」

「ごめんなさい・・・」

マリエが去ると課長が謎の女に声をかける。

「マリエさん・・・」

「え・・・」

「私は・・・未来から来た方を保護する仕事をしているものです」

「・・・」

「あの夜・・・本当はエイトさんは刺されていたんですよね」

「そうよ・・・そのために・・・私は彼との結婚を決意するの」

「・・・」

「ところが・・・エイトは夫としては最低の男だったわ・・・浮気を重ねて・・・私には子供ができなくて・・・余所で子供を作ったのよ・・・」

未来のマリエを演じる伊藤かずえは1966年12月7日生れ(50歳)である。

「不良少女とよばれて」(1984年)で長沢真琴を演じていたのは18歳の頃であった。

未来のマリエは自称48歳なので・・・現在のマリエが24歳とすれば2040年頃から遡上してきたことになる。

「だから・・・あなたは・・・事件を阻止しようとしたのですね」

「そうよ・・・あの頃・・・私は結婚を迷っていたから・・・彼が怪我をしなけば・・・アイドルを続けていたと思ったのよ」

「しかし・・・未来は変わらなかったんですね」

ミナはマリエの結婚引退に激しく動揺する。

「歌や踊りの才能があるのに・・・もったいない」

そんなミナに野々村マネージャーは冷たい言葉を吐く。

「あなたには・・・才能がないのだから・・・それこそ・・・交際している彼と結婚した方がいいんじゃない」

「彼とは別れました」

「え・・・」

「私は・・・夢をあきらめません」

「そんな・・・」

二人のやりとりを薫は見つめていた。

パウエルは簡易DNA鑑定の結果を報告する。

「謎の女とマリエの遺伝子が一致したわ・・・それから・・・薫ちゃんが入手した毛髪も同一人物でした」

「え」

「野々村マネージャーは・・・望月ミナです」

「ホワイトラバーズ・・・橘マリエ卒業ライブ」である。

楽曲は「未来プロローグ/さくらシンデレラ」である。

いつか描いた舞台へ・・・

夢は・・・物語のプロローグ・・・

輝いていた頃の自分を見つめる二人の女・・・。

「ミナ・・・あなたもここへ来ていたのね」

「あなたより早くね・・・マリエが引退した後・・・ホワイトラバーズの人気は急降下・・・私はしばらくソロで頑張ったけど・・・鳴かず飛ばすで・・・結局・・・芸能事務所のマネージャーになった・・・家庭を持って幸せそうなあなたが羨ましくて・・・一年前にここに来たのよ・・・過去の自分にアイドル辞めさせて結婚させるつもりだった」

「上手くもぐりこめたわね」

「何年・・・業界にいたと思ってんの・・・本当のマネージャーを追い出すなんて簡単だった」

「あなた・・・もう少し未来にいればよかったのよ・・・そうすれば私が離婚騒動でエイトを刺したところを見られたのに・・・」

「あらまあ・・・」

「どうして・・・ミナを辞めさせられなかったの」

「あの子たち・・・輝いている・・・今のあの子たちを・・・止めることなんて自分自身にだってできないってことよ」

「そうね・・・エイトを好きだった自分も・・・とってもかわいかった」

二人の元アイドルは顔を見合わせた。

「私たち・・・ずっと別荘暮らしになるの」

「タイムマシンの発明が公になる2022年までは・・・」

「六年後か・・・」

「六年たったら・・・もう一花咲かせたいものね」

「ババドルか・・・」

二人の元アイドルは別荘の門の彼方に消えた。

「娘さんへのクリスマスプレゼント決まりましたか」

「まだだ・・・何にすればいいと思う」

「手作りのキャンデーボックスとかどうですか」

「べっぴんさんかっ」

ゆっくりと・・・あるいは素早く・・・時は流れていく。

それぞれの心を乗せて・・・。

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2016年12月21日 (水)

今日という日のために五円玉は生まれたのです(新垣結衣)

世界は希望に満ちている。

誰もがおいしい生活を求めて町を彷徨う。

もちろん・・・諸事情で家から出られない人もいるし、家が瓦礫になってしまった人もいる。

結局、人間はそれぞれがそれぞれで生きていくしかない。

それでも・・・人間は時に寄り添いたいと願うものだ。

視聴率がどんどんあがっていくドラマには・・・そういう人間のせつない気持ちが仄かに浮かび上がるのだ。

師走の忙しい時に・・・今日はあれがあるからと走って帰る人。

こっそりと仕事部屋を抜け出す人。

とにかく片づけなければいけないことを急いで片づける人。

お茶の間で・・・ひととき孤独を忘れて夢中になろうとする人。

そういう様々な人々がテレビの前に集う。

それもまた「呪い」である。

しかし・・・その呪いは・・・美しい。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・最終回(全11話)』(TBSテレビ20161220PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。暮れも押し迫ってまいりました。津崎平匡(星野源)が森山みくり(新垣結衣)にプロポーズしておかしな空気になったレストランにはクリスマスの飾りがあったのでドラマの中も年の瀬である。クライマックスの「千木通り商店街青空市」は12月23日(金)に開催されるので最後は現実を追いこしていくのである。あまりにもかわいいので誰もが幸せを願わずにはいられない呪いのかかった二人はどうなってしまうのか・・・お茶の間は手に汗握るのだった・・・。

「大好きな人からのプロポーズ、嬉しかった。なぜ私は、モヤモヤしてしまうのか」

「同じ事務所で搾取に耐えた仲間がいじめにあっても為す術もなくベストを尽くすしかないのだろうとお茶の間が感じるモヤモヤのようなもの」

「最終回だけ見た知識人が流れを知らず退屈と断じるやるせなさ」

「それでもあさイチではに丸くんとバルスと叫ぶのんのようにスッキリしたいものだ」

「もやもやしてもやもやしてやりきれないのは二律背反の袋小路に置かれた時」

「芸能事務所だってそこそこ搾取しなければやっとられんのだ」

「戦争と平和の狭間・・・」

プロポーズの返答が「好きの搾取」という意味不明な言動で閉じられたことによって・・・「どうしていいのかわからなくなってしまった」・・・みくりとヒラマサだった。

それでも「おやすみなさい」の挨拶を交わす二人である。

(火曜日なのにハグもできない・・・それもこれもせっかくのプロポーズを台無しにした・・・私という小賢しい女の帰結・・・だけど・・・結婚して・・・専業主婦になることには・・・とてもとても抵抗がある・・・とてもとてもモヤモヤする・・・一体、私は何が気に入らないのだろう)

その答えはみくりではなくヒラマサが出していた。

(好きの・・・愛情の搾取・・・その通りだ・・・愛情は万能ではない・・・それなのに愛があればどんな提案も受容してもらえると思っていた・・・なんという論理の飛躍・・・なんという思いあがり・・・自分の魅力をこれほどまでに自己過信したことがあったろうか・・・いやない)

最高の女と性的交渉をしたら男はみんな思いあがります。

あるいは・・・死ぬなら今しかないと。

それはもう・・・繁殖のための男性の原理のようなものだから。

みくりにとって理想の男性であるヒラマサ・・・しかし、彼は自分が最低の男性だと思っている。

ヒラマサ以外にも最高の女性であるみくり・・・しかし、彼女は自分のことを・・・。

第4世代移動通信システム対応のスマートロボット「RoBoHoN」は愚かな男女を神のように・・・つまり何も考えずに・・・見つめるのだった。

バー「山」でマスターの山さん(古舘寛治)はうんざりしていた。

「左遷かと思ったら・・・昇進だったのよ・・・私、首都圏で初めての女性部長になっちゃった」

予想外の昇進に土屋百合(石田ゆり子)は舞い上がっていた。

「その話・・・百回聞きました」

「え・・・まだ七十五回くらいじゃないの」

山さんは風見(大谷亮平)を召喚した。

「おめでとうございます」

「おめでたいのかどうか」

「認められたことは祝うべきです」

「今度の日曜日・・・空いてる?」

風見の胸とときめいた。

「千木通り商店街青空市」の有償サポーターとして商店主たちに連絡事項を伝えるみくり。

「よくわからないなあ・・・ちゃんと説明してよ」

「こちらも時間が限られているので」

「仕事だろう・・・勝手なこと言うなよ」

またもモヤモヤするみくりだった。

「仕事量に見合った報酬」について考えてしまうみくりなのである。

もちろん・・・雇用関係においては・・・常にグレーゾーンがある。

たとえば・・・放送作家は「もっといいアイディアを出して」と演出家に言われ・・・「いいアイディア」を際限なく出さなければならない。

その「アイディア」がその場で「採用」されてもされなくても「ギャラ」はあまり変わらない。

あげくの果てに番組を契約解除になった後で・・・自分の「アイディア」が番組に使われていることを知っても文句も言えないのである。

それはそれはモヤモヤします。

つまり・・・みくりは・・・「相場」というものが自分に適用されないことに・・・ネグレクトされた子供のような気分になっているのである。

それは・・・自分自身の価値・・・自己評価と密接に関係している。

「他人にとって都合のいい存在」であることの「不安」が生じているのだった。

だって・・・それは・・・「食物連鎖」における「食べられちゃう側」のポジションだからである。

「モヤモヤだ・・・モヤモヤ師走・・・もやもやビジネス・・・もやもや結婚だ」

みくりは・・・モヤモヤの原因に共通点を見出した。

みくりはヒラマサに「自分の心の理論」を伝えた。

「主婦の労働の対価について・・・わかったことがあります」

「伺います」

「私は今・・・青空市の手伝いをして報酬を得ています。ヒラマサさんにお話しなかったのは・・・雇用主に男性か複数いるので・・・嫉妬されたら困るからです」

「僕も・・・リストラのことを黙っていたので隠しごととして相殺されますね」

「青空市の報酬は最低賃金ベースです」

「なるほど」

「そして・・・私が達した結論は・・・時給二千円なら耐えられることが・・・神奈川県の最低賃金時給930円では耐えられないということです」

「全国平均より百円以上高いのに・・・」

「同様に・・・専業主婦の賃金について百円均一で買ったフリップを使って説明しましょう」

「・・・」

主婦の生活費=最低賃金

「なのです」

「・・・」

「そして・・・主婦の労働は・・・夫のみが評価します・・・つまり・・・」

+雇用主の評価(愛情)

「しかし・・・愛情は数値化が困難ですね」

「そうです・・・プロポーズは嬉しかったのです・・・結婚したくないということでもありません・・・ただただ・・・従業員として不当な搾取に対する不安が大きかったのです」

「そもそも専業主婦は従業員なのでしょうか」

「え」

「夫も妻も共同経営責任者・・・この視点で僕たちの関係を再構築してみませんか」

みくりは・・・自分が・・・従業員ではなくなったことに驚く。

夢にまで見た経営者という立場。

搾取される側から搾取する側になるという立ち位置の変更である。

幻想の食物連鎖は崩壊した。

「やります・・・やらせてください」

「やりましょう・・・共同経営者」

「なりましょう・・・CEO」

ま・・・ものはいいようである。

さて・・・ここでみくりの「妄想」と言う名のパロディーが展開される。

ここまで・・・「なんでも鑑定団」だの「ベストテン」だの・・・様々なテレビ番組が「共通認識」として使用されてきたわけである。そもそも・・・テレビを視聴しない人間にとっては無価値な情報が・・・ある程度、価値を持つのは・・・記憶と感情のコンプレックス的な作用によるものである。

「なつかしさ」や「知っているつもり」は人々の心に快感をもたらす。

それを「愛」と呼んでもいいだろう。

作り手は自らがお茶の間の一員であることをあえて強調することでお茶の間との一体感を作り出す。

つまり「愛しあってるかい」「イエーイ」ということである。

「選挙演説」や「ヒーローインタビュー」もあくまで「お茶の間の出来事」なのである。

真田丸」を愛した人々は五円玉の六文銭模様に激しく認知のドーパミンを分泌し・・・一時の快楽に身を委ねるのだった。

みくりとヒラマサが「理想の夫婦」を目指す第一次経営者会議(三○三合室の合戦)の火蓋はきっておとされたのだ!

「まず・・・リストラ後の再就職先についてなのですが」

「すでに二社も・・・」

「A社は3Iシステムソリューションズに類似した会社で・・・業務内容はほぼ同じ、収入は10%前後の減収となります・・・B社は収入は半減する可能性がありますが・・・高い将来性があると考えます」

「ヒラマサさんはB社に心が傾いているのですね」

「チャレンジしたい気持ちはあります」

「私が外で働いて不足分を補填するのはどうでしょうか」

「みくりさんは就職できるのですか」

「タウン誌ワクワクのライターの仕事があります」

「・・・」

「ただ・・・フルタイム労働になるので家事の時間に制約が生じます」

「みくりさんのビジネスは303カンパニーの貴重な収入源です・・・僕が一定の家事の支援をすることにしたらどうでしょう。つまり、家事の分担制度の導入です」

こうして・・・みくりとヒラマサは家事の分担を開始するのだった。

ものすごくよくある話であるが・・・ものすごくよく失敗する話でもある。

家事が趣味の人でも仕事となると本領発揮できない場合があります。

男鰥夫に蛆が湧くって言うだろうが!

個人的能力の問題もあるよな。

一方・・・十七歳年上の百合に恋をしてしまった風見は奮闘努力を続けていた。

「これ・・・私の健康診断の結果・・・」

「・・・」

「ほら・・・骨密度の低下が著しいでしょう・・・日本人女性の閉経の平均年齢は五十歳なのよ・・・つまり・・・私は女としてもうすぐ終わるの」

「女性は出産のための機械ではないというでしょう」

「でも・・・あなたの私の子孫を残せないことは・・・どこか歪ではないかしら」

「愛なんてそもそも・・・歪なものなのではないでしょうか」

「あなたが四十三歳になった頃、私は還暦なの」

「シングルファーザーと付き合うのですか」

「彼はただ・・・子供の母親が欲しいだけ・・・最初からパートナーとして選択できないの」

「つまり・・・他に男がいるからということではなく・・・僕には抱かれたくないということですね」

「また・・・山さんのバーで飲みましょうよ」

「僕は・・・百合さんを友達とは思えないので・・・これで終わりにします」

「・・・」

結局、男と女はお互いの変態性を認め合うしかないのである。

百合は十七歳も年上の女を愛する男を受け入れ難いのである。

案ずるより産むが易しと言うが百合はもはや産めない可能性が高いのである。

第二次経営者会議である。

およそ二週間が経過したらしい。

「率直なところ・・・どうですか」

「ヒラマサさんが・・・やってないと・・・なんでやってないんだと思ってしまいます」

「みくりさんの掃除のクオリティーが低下している気がします・・・」

「私・・・几帳面じゃないんです・・・今までは仕事として完璧を目指していましたが・・・本当は四角い部屋を丸く掃き、呼吸可能であれば粉塵も気にならないタイプなのです・・・気になるようなら重点目標を設定して・・・改善を・・・」

「いえ・・・僕の担当を増やしましょう」

303カンパニーの城である303号室の陣割はヒラマサの負担増加に陣変えされた。

リストラ前の残務処理をしているらしいヒラマサは愛妻家の日野(藤井隆)に「千木通り商店街青空市」へのお誘いをする。

「みくりさんは専業主婦じゃなかったんだ」

「今は・・・商店街の広報とタウン誌のライター・・・そして主婦の三本立てです」

「三足のわらじじゃ火星人になってしまうものね」

ここで・・・「真田丸」視聴者は・・・佐助と徳川秀忠のフレンドリーな会話に「認知の枠組み」をくすぐられる。

沼田(古田新太)は・・・ヒラマサとみくりが擬装夫婦だったことをリストラの決め手にしたのだが・・・ヒラマサから醸しだされるパッションに反応するのだった。

「まさか・・・君たちは・・・パッションなのかい」

「パッションかどうかは定かではないですが・・・好きです・・・もちろん・・・好きだけではやっていけないと覚悟しています・・・今は共稼ぎシミュレーションとして家事分担にチャレンジしています・・・結構、面倒くさいです」

つまり・・・みくりは・・・ヒラマサの愛に甘えて面倒くさい搾取をしているのだった。

みくりからヒラマサへ業務連絡。

《ご飯を炊いておいてもらえますか》

《了解しました》

303号室風呂の砦の清掃業務はヒラマサの担当である。

帰宅したヒラマサはバスルームに集中しすぎて「炊飯ジャーのスイッチを入れる」を忘れた。

タイマーがあるだろうがっ!

いや・・・この場合、ヒラマサに与えられたの指図は米を研ぐところからだな。

ヒラマサは「おかずを商店街で無料調達した」みくりが帰宅するまで落ち度に気がつかない。

なんとか・・・ごまかそうとするが・・・十四松を使った誘導作戦により・・・ジャーが空であることが判明する。

ちなみに・・・ベランダの十四松を捕獲した経緯は割愛されたらしい。

面白場面(ロマンス)がありあまったのだな。

その頃・・・通称・ポジティブ・モンスターの五十嵐杏奈(内田理央)は風見攻略戦に挑んでいた。

「僕は君を好きにならない・・・なにしろ・・・僕と君は同じすぎる」

「同種こそが配偶者として相応しいのでは」

「僕は異種と交配したいタイプなんだ・・・僕は今・・・思春期以来の恋をしている・・・その人のことで頭がいっぱいになるほどの・・・」

「少年か!」

その頃、百合は昇進祝いのために「ゴタールジャパン」の部下である堀内柚(山賀琴子)と梅原ナツキ(成田凌)と行動を共にしている。

柚は泥酔してタクシーに放り込まれた。

「イケメンのおヒゲさんをふっちゃったんですか」

「だって・・・どう考えても無理だもの」

「贅沢だなあ・・・そういう人に出会えたことが奇跡なのに・・・」

「・・・」

「僕なんか・・・会うこともできないのに」

「どんな意味深なのよ・・・」

オチなので深くは問わない百合だった。

血まみれの五十嵐杏奈は百合に噛みつくのだった。

「お姉さんと風見さんてどういう関係なんですか・・・息子のような年齢の男に色目をつかうなんて」

「十七歳で産むようなヤンママじゃないわよ」

「むなしくならないのですか」

「あなたは・・・自分の若さに価値を見出しているのよね」

「お姉さんの半分しか人生を生きていないので」

「私がむなしいと思うのは・・・若いことだけに価値があるという呪いよ・・・あなたが無価値と思う老いに・・・あなたが向っていくことはどれだけやってられな気分をあなたにもたらすことか・・・将来の自分を貶めるようなことをして気分がいいはずはない・・・そんな呪いは忘れなさい。恐ろしい呪いからは逃げるのが一番よ」

「・・・だけど・・・お姉さん・・・愛から逃げたらダメなんじゃないの?」

「ぐふっ」

親友の田中安恵(真野恵里菜)のジャムはそこそこ売れている。

「通信販売の件・・・どうだった」

「いろいろと面倒なのよねえ・・・」

「だよねえ・・・それはそれとしてやっさんのカレーは美味いよねえ」

「現物支給でごめんな」

「ううん・・・お腹も心も癒されるよ」

長く緩い戦いが・・・みくりから何かを奪おうとしていた。

第三次経営者会議である。

「分担って結構・・・厄介ですよね」とヒラマサ。

「・・・」

・・・みくりはすでに・・・恋愛感情と職務遂行の板鋏で鬱を発する寸前である。

「分担した業務ができていてもできていなくても相手を積極的に評価するシステムが必要なのかもしれません」

「食事・・・満足に作れていなくて・・・ごめんなさい」

「いや・・・責めているわけでは」

「役割分担はやめましょうか・・・シェアハウスみたいに各自の責任で」

「共有スペースをどちらも掃除しない可能性が生じます」

「じゃあ・・・家事は全部・・・私がやります・・・あくまでボランティアで・・・ボランティアなので部屋が汚れているって言わないでほしい・・・だってボランティアだから」

ヒラマサはみくりの脳内回路の不調を感じ取る。

「みくりさん・・・論点が・・・」

「・・・やめるなら・・・今です・・・ヒラマサさんだって面倒でしょう・・・こんな共同生活・・・外部の家事代行サービスを週一回頼んでもいいし・・・主婦の労働の対価がああだこうだ言い出さすにプロポーズを喜んで受け入れられる女性はきっと星の数ほどいるでしょう・・・それがまともだし・・・ヒラマサさんが面倒を背負う必要はありません・・・」

壊れて精神失調を起こしたみくりは・・・風呂場に設営されたみくりの砦に籠城するのだった。

長く緩い家事分担の戦による倦怠感に苛まれるみくりだった。

男女が同権であるという呪い。

男女雇用機会均等法という呪い。

夫婦は家事を分担するべきだという呪い。

女性が社会で活躍するのがよりよいことだという呪い。

男性が女性を搾取しているという呪い。

男尊女卑という呪い。

呪いに満ちた世界がみくりをバスルームのバスタブとお風呂の蓋の間に縛りつけるのだった。

(結局・・・私は自分に自信がない・・・私には賢さが欠けている・・・私にあるのは愚かさよりも始末が悪い小賢しさだけ・・・)

ヒラマサはバスルームに消えたみくりを振り返る。

(みくりさんが閉じた心のシャッターは・・・いつか・・・僕が閉じたものと同じなのかもしれない・・・だとすれば・・・ぼくはシャッターの開け方を知っている・・・僕の閉じた心を何度もノックして・・・僕を連れ出してくれた人を・・・僕はよく知っているから)

ヒラマサは立ちあがった。

「お仕事中・・・すみません・・・話をさせてください・・・面倒を避けて・・・避けて・・・どこまでも避け続けたら・・・息をするのも面倒になります・・・それは・・・限りなく死に近づいていくということじゃないですか・・・」

「・・・」

「生きていくのって・・・面倒くさいものです・・・それは一人でも二人でも同じです・・・どっちにしても面倒くさいなら・・・一緒にいるのもありなんじゃないでしょうか・・・面倒をかけたりかけられたり・・・面倒を見たり見られたり・・・だましだましやっていくことはできませんか。みくりさんは・・・まともじゃないって言うけれど・・・そんなの最初から知ってましたよ・・・僕たちはずっとまともじゃないし・・・これからもまともじゃない・・・だってこの世にまともな人間なんて一人もいないんじゃないかな・・・だから・・・大したことではないと思います・・・青空市・・・楽しみにしています・・・おやすみなさい」

みくりは涙がとまらなかった。

(上手にできなくても・・・見守ってくれる人がいる・・・その人を見失ってはおしまいだ・・・終わらせたくない思うなら・・・その人を信じるしかないのだ・・・さしのべられた手をとるしかないのだ・・・そして立ち上がるのだ・・・ゆっくりと)

青空市の日がやってきた。

クリスマス・イヴ直前の祝日である。

津崎がやってくる。百合がやってくる。沼田もやってくる。

長澤まさみに告白して失恋の呪いにより・・・日野はやってこれないらしい。

どんな呪いだよ。

商店街を宣伝するためのチラシは風に吹かれて・・・飛散する。

「チラシが行方不明だ」

「一枚あります・・・これをコピーしてきます」

みくりは走った。

「みくりが走ってるわ」

「結構早いですね」

梅原と堀内が飛散したチラシを拾い集めていた。

百合と沼田は・・・売れ残ったお互いを見つめ合う。

「なんだかんだ・・・ずっと逃げてきたのよね・・・一番呪われているのは自分だった」

「俺だって・・・臆病ものさ・・・結末から目をそらし続けて」

「お互い・・・ダメ人間ね」

「自分だけを守り続けて・・・」

「私・・・メールしてみる」

「じゃ・・・俺も」

「死して屍拾うものなし」

「だね」

みくりはチラシを回収した「百合ちゃんの部下の方たち」に感謝した。

「ありがとうございます」

「お役に立ててうれしいわ」

「え」

「カミングアウトするけどゲイでした」

「ああ」

梅原は・・・ゲイアプリで・・・沼田とコンタクトしている「お相手」だった。

二人は相思相愛だったが・・・沼田は会う勇気を持てなかったのである。

梅原の携帯端末に「パッション・メール」が着信する。

同性愛者の出会う確率は低いという呪い。

日野は日野夫人(乙葉)を伴ってやってくる。

「藤井隆の奥様に瓜二つですね」

「出オチですみません」

芸能情報もまたお茶の間の共有知識なのである。

よくもわるくも人々はお茶の間を共有するのだ。

騙し騙され浮世を生きていくのだ。

視聴率17.1%から20.8%へ・・・人の和は広がっていく。

風見がやってくる。

「ポジティブ・モンスターが・・・」

「・・・」

「幸せな五十代を見せて見ろと」

「喧嘩売ってんのか」

「そして・・・あなたが僕のことを愛していると」

「救ったわね・・・最後の最後でおシャレ小鉢を救ったわね」

「なんのことですか・・・」

「いいのよ・・・先のことなんかわからない・・・だけど」

「僕はあなたのことを愛しています」

「来年くらいまでは幸せでいられそうだから・・・彼女に幸せな五十歳を見せることができる」

ゴールである。

「青空市」は盛況だった。

「みくりさん・・・人気者ですね」

「ここまで来るのに長い道のりがありました」

「また・・・やりたいですか」

「発見はありました・・・派遣社員だった時・・・あれこれ提案して・・・でも誰も私の提案など求めていなかった・・・私の小賢しさは・・・嫌われる要因なのだと思っていました・・・でもここでは・・・それなりに受け入れてもらえて・・・小賢しさが役に立つこともあるのかと・・・」

「小賢しいって・・・何ですか・・・小賢しいなんて・・・相手を下に見て言う言葉でしょう。僕はみくりさんを見下したことはありません・・・小賢しいなんて思ったことありませんよ」

みくりはヒラマサに仰がれている自分を感じた。

(なんてことだ・・・自尊感情が低いのが・・・自分自身だったとは)

面倒くさい女は面倒くさい男に抱きついた。

ヒラマサはうろたえる。

「ありがとう」

「みなさんがこちらをみています」

「大好き」

昼間からイチャイチャする二人を一同は生温かい目で見守るのだった。

ここは・・・呪いから解き放たれた楽市楽座なのだった。

その夜・・・二人は恋人繋ぎをしてソファーにもたれる。

「これからどうしましょう」

「なんでもいい気がしてきました・・・」

「私がもう一度就職活動にチャレンジしたら」

「それにあわせてライフスタイルを変えましょう」

「模索を続けましょう」

「ハグの日を復活させませんか・・・忙しい時や・・・喧嘩した時のために・・・」

「毎晩とは言いませんが寝る前にハグしてもらえたら・・・いい夢がみれそうです」

「引越しを検討しませんか・・・ダブルベッドが置ける寝室とか」

「寝室は別の方が・・・熟睡できるかも」

「そこは・・・応相談で」

「毎日・・・起こしに行きます」

「おはようのチューはおねだりありですか」

「日曜日はヒラマサさんが起こしに来てくださいね」

「そのあとのムフフは・・・」

「応相談で・・・」

二人はキスをして・・・それからムフフをするらしい。

夢の中でみくりとヒラマサは「関口宏の東京フレンドパークII」の最終コーナー「ビッグチャレンジ」に出演する。獲得した金貨1枚に付き1本の矢と交換しダーツに挑戦できるのだ。

「この先どうなる」「たわし」「パジェロはありません」「別離」「逃亡」「専業主婦」「専業主夫」「挙式」「子だくさん」「DINKS」「入籍」「たわし」など様々な「未来」を獲得する二人。

何を獲得しても・・・視聴者にプレゼントしなければならないのがドラマというものである。

とある水曜日の早朝。

二人は徹夜で引越しの準備を整えていた。

「あ・・・もう六時間も過ぎています」

「いえ・・・今はテッペン回った火曜日の30時ということで業界的にはよろしいでしょう」

「やー」

「はい」

火曜日はハグの日である。

そして・・・何があったとしても火曜日は毎週やってくるのだった。

二人の一週間は火曜日から始るのです。

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2016年12月20日 (火)

剣を取るものは剣で滅び姦淫を行うものは裁かれ愛が金を呼びよせる(山田涼介)

あああああああああああ・・・と思わず叫びたくなるドラマである。

見てはいけないものを見てしまった感じだ。

ラーメン大好き小泉さん」をやっていればよかったのになあ・・・。

なんで「カインとアベル」をやろうと思ったんだろう。

「カインとアベル」から「弟殺し」を抜いたら・・・それはもうコーヒーからカフェインを抜いたり、カレーからカレー粉を抜いたり、「ガンダム」からモビルスーツを抜いちゃうレベルの話なのである。

なんじゃあこりゃああああああああ・・・と言う他はない。

だが・・・まあ・・・そういうこけおどしの「手」が昔からないわけではない。

有名な説話をモチーフにして主人公の内面的成長を描いたというなら・・・帝国スターを使ったひとつのチャレンジとしては成立しているわけである。

だけど・・・こんなことしていたら・・・この枠は死ぬぞ・・・。

いや・・・もうゾンビなのかもしれないが・・・。

で、『カインとアベル・最終回(全10話)』(フジテレビ20161219PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・武内英樹を見た。エンターティメントの原点の一つに「憧憬」がある。「美しさ」を求める人々はいつもうっとりしたいものだ。「美男美女」による「絵空事」は「甘いお菓子」として一定の需要が見込める。しかし・・・そういう「フィクションの充実」が忌避される側面もあり・・・送り手は匙加減を求められる。「美女と野獣」は一つのバリエーションである。「等身大のヒロイン」と「イケメン」のマッチングもまた同様である。しかし、それはそれでどこか「嘘」が感じられる場合もあり・・・按配は難しい。

基本的に女性向けの恋愛ドラマからは・・・美女や美少女が駆逐されていくのである。

ただし・・・うっとりできれば話は違うのだ。

格差社会が問題化している現代において・・・「華麗なる一族」の話はなかなかに挑戦的である。

庶民には雲の上の世界・・・。

貧富の貧から・・・貧富の富へ・・・飛躍することに恋愛を絡めれば・・・それは幼女たちが好む「シンデレラストーリー」に他ならない。

兄の隆一(桐谷健太)の婚約者である矢作梓(倉科カナ)と・・・危険な恋愛をする高田優(山田涼介)という主人公によって生じる「カインとアベル」的状況は見せかけで・・・実は密かに片思いを続ける柴田ひかり(山崎紘菜)の「シンデレラストーリー」だったというオチは・・・まあ馬鹿馬鹿しいが古典ではある。

もちろん・・・幼女以外には恥ずかしいことこの上なしです。

世界にキリストの信仰者は二十億人いると言われるが日本には200~300万人程度しかいない。

そもそも日本には一億人の神道者、九千万人の仏教徒がいるといわれており・・・一種の信仰過多である。周知の通り、信者ではないがクリスマス・イベントには参加するのだ。子供はとにかくクリスマスプレゼントが欲しいし、教会で結婚式をあげるのはなんとなく素敵な感じなのだった・・・。

そういう現代において・・・「カインとアベル」が途中から「シンデレラ」に転調しても何の問題もない・・・という考え方もあるわけである。

つまり・・・このドラマはそういう「お笑い」である。

「カインとアベル」はナザレのイエスが生誕する以前の・・・愛を知らない人類の話であり・・・現在のカインとアベルは・・・殺しあわず握手する・・・そして教会で結婚式を挙げ、聖夜を恋人と過ごすのである。愛に満ちた現代万歳!

・・・・現世には様々な悪魔が出現しているが・・・「金」もまた「原子力爆弾」と同じように悪魔の発明した道具である。

ビジネスには「富の集積」の局面があり、「金」はその象徴である。

ビジネスの魔力とは金の魔力に他ならない。

魔に魅入られてしまった高田優(山田涼介)は経済界の頂点を目指し・・・魔の紛争地帯である新宿第二地区の開発に手を出す。

怖いもの知らずの幼子は魔の森でたちまち獣の餌食となるのだった。

反政府勢力を含む複雑な利権の整理のために・・・黒い噂の絶えない大田原議員に協力を依頼する優。

大田原議員は賄賂を要求し、優は応じる。

しかし・・・大田原議員は・・・自分の安全を守りつつ、贈収賄疑惑で・・・優を東京地検特捜部への生贄として捧げるのである。

優は東京拘置所に拘留され・・・取締役の犯罪行為に「高田総合地所株式会社」の株価は暴落する。

大田原議員は投資家と連携し・・・「高田総合地所」を安く買いたたく「乗っ取り屋」だった。

そして・・・大田原議員と連携するのは・・・高田貴行社長(高嶋政伸)の姉・桃子(南果歩)の夫で投資家・黒沢幸助(竹中直人)だった。

金を発明した悪魔は・・・金を無尽蔵に生み出すことができるのである。

そして・・・イスカリオテのユダがナザレのイエスを金と交換したことが金の悪名を高める。

親が子供にクリスマスプレゼントを買うのが愛の行為であれば・・・黒沢が優に百億円を融資するのは愛の疑似行為である。

優は黒沢に愛されていると感じ・・・たちまち魂を売り渡したのである。

もちろん・・・それは神と悪魔の関係においては神への背信に他ならない。

有罪にならなくても優が罪を犯したのは事実なのである。

有罪になれば大田原議員にも害が及ぶため・・・優は不起訴になるが「高田」を経営危機に陥れた責任を問われ、取締役を解任される。

本来、法的には「無実」となったので問題はないはずだが・・・最終回なので風評被害的に不人気を誘導されたということにしたらしい。

そもそも・・・悪魔は使徒としての優をそんなに簡単には手放さないわけだが・・・ここで「悪魔の使徒」として目覚めた貴行は優を鉄拳制裁して抱擁するのだった。

「馬鹿・・・悪い子だ・・・親に心配かけおって・・・とにかくゆっくり休みなさい」

親馬鹿である。

高田総合地所株式会社を起業し、蓄財した宗一郎会長(寺尾聰)はそもそも神の使徒ではなく悪魔である。

その子である貴行は悪魔の子・・・隆一と優は悪魔の孫なのだ。

つまり・・・これは悪魔のカインと悪魔のアベルの物語なのである。

彼らは悪魔の高田一族として・・・蓄積した富を収奪されることを好まず・・・ここから一致団結する。

では・・・梓は一体何だったのだろう・・・。

もちろん・・・魔女なのだった。

悪魔・隆一は・・・牢獄で過ごした悪魔・優のために魔女・梓を送る。

「そなたがなぐさめてやるがよい」

「仰せのままに」

しかし・・・傷ついた優は兄からの贈り物を喜ばない。

「お前にたぶらかされて酷い目にあった」

「あらあら・・・お若いのねえ」

けれど・・・思い出は甘く・・・優の心を揺さぶるのである。

「まあ・・・同じ景色を見れば・・・同じベッドにいるような気分になるもの」

「お兄様のいないところでは・・・いくらでもなさいませ」

「兄とともに同じベッドにのるのも興ではないか」

「あらまあ・・・いいご趣味だこと」

「いずれにしろ・・・もはや兄のお下がりに甘んじる気はない」

「ひでぶ」

優は桃子に甘える。

「桃子伯母さん・・・義理の伯父さんには騙されたよ」

「それはどうかしら・・・だましだまされ・・・あやつりつられは・・・男と女のラブ・ゲームよ・・・伯母さんの性的魅力を侮らないで」

「え・・・伯父さんを虜にしているの」

「もちのろんよ」

梓は兄弟のために素晴らしいが悪魔の支配するインターネットの世界で「黒沢幸助」を検索する。

魔法のかかった検索エンジンは鍵つきの言葉を検索することができない。

梓はそこに「神」の意図を感じる。

梓は検索ワードを追加した。

「天使・黒沢幸助」

一件のヒットがあった。

しかし・・・神の光のために魔女がそれを目視することはできない。

優は黒沢を訪ねる。

「あなたは・・・桃子伯母さんを愛しているのですか」

「悪魔同士の愛を神は認めない・・・悪魔は争い・・・自滅するのが相応しいとおっしゃるものだ」

「ですよね」

「しかし・・・地獄で魔王が君臨し、魔族たちが忠誠を誓うように・・・悪魔と悪魔が信頼し、心を奪いあうことはままあること・・・神は悪魔が悔い改めればこれを赦す」

「心を分かち合うのではなく」

「同じことではないか」

「確かに」

「お前たちを裏切ったように別のものもたやすく裏切ることができる・・・ただそれだけのこと」

「敵の敵は味方ですものね」

「そういうことである」

悪魔で天使の黒沢は悪魔の高田一族に多額の金を融資した。

なにしろ・・・黒沢家には金など掃いて捨てるほどあるのである。

優は大田原議員に面会した。

「私を罠にかけましたね」

「ものを買う時に値切るのは商売人としては当然のこと」

「残念ながら・・・高田は身売りしませんよ・・・」

「株価が四百円になったら俺が買うよ」

「マネジメント・バイアウトで・・・高田は上場廃止します・・・思いきって社名もタカソーに」

「ホリプロかっ」

「タカソーは高田一族のものです・・・誰にも渡しませんよ」

「資金はどうするつもりだ」

「黒沢のオジキがこっちについてくれました」

「色魔にたぶらかされおったか・・・」

「せめて色情狂くらいにしておいてくださいよお」

「用がすんだら・・・帰れ・・・塩まくぞ」

「和風ですねえ」

こうして・・・高田一族は・・・悪魔の城を守った。

従業員一同は喜んで悪魔に身を捧げ奉仕に励むのだった。

梓は再び悪魔・隆一の花嫁となった。

優はひかりを魔女として認定することにした。

「私などでよろしいのですが」

「お前は汚い言葉が得意だそうだな」

「くそったれな聖夜にふさわしい罵詈雑言をお届けします」

「それはまあ後で聞くとして・・・とりあえず悪魔のキッスを」

「あの・・・私・・・魔女ですが・・・処女です」

「別に構わん・・・流血は悪魔の望むところだ」

ナザレのイエスは・・・人類の罪を購ったという。

しかし・・・天国へ続く階段は急で門は閉ざされている。

子羊たちは空を見上げる。

遥かななる虚空から・・・死の灰が静かに降り注ぐ。

優は汚名の記憶を拭うために海を渡る。

悪魔の一族はお互いを庇いあう・・・それを悪と呼ぶべきか愛と呼ぶべきか。

時代は曲がり角に差し掛かっているらしい。

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2016年12月19日 (月)

わたしのいとしいつわものがとうとういってしまわれた(長澤まさみ)

歴史上の登場人物が人として生きていたことが描かれるドラマとしては大河史上屈指の出来栄えと言えるだろう。

少なくとも真田幸村が歴史上では真田信繁であったことを多くのお茶の間の人々は知ったのである。

「真田丸」を堪能したお茶の間は「北方領土」が簡単には返還されないことを知ったはずである。

戦乱の世を終わらせるために・・・織田信長や豊臣秀吉そして徳川家康がどれほどの血を流したことだろう。

平和とはそういう血と汗の結晶なのである。

一滴の血も流さずに奪われていた領土を取り戻すことなどできるわけがないのである。

つまり・・・日露首脳会談の結果に落胆するような人々は歴史の根本がわかっていないと言える。

真田幸村は「義」のために戦ったと言う。

しかし・・・その義とは・・・結局のところ・・・己の・・・己の家族の・・・己の味方の勝利を目指すものだった。

そして幸村は敗れた。

幸村は戦死して幸村の家族は離散し幸村の味方は滅んだ。

敗因は様々あるが・・・物語では豊臣家の台所頭・大角与左衛門の私怨による裏切りが軸である。

難攻不落の大坂城は料理人の放火により落城に導かれたのである。

ロシア人がロシアより日本を愛した時・・・北方領土は還ってきます。

で、『真田丸・最終回(全50話)』(NHK総合20161218PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに来た真田幸村最後の戦いの戦友・毛利勝永と最後まで希望を失わなかった真田左衛門佐幸村の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。画伯の傑作イラスト多数が・・・「真田丸」の充実ぶりを物語ります。本年度は虚しく行数を数えることもなく慶賀の至りでございました。ついに徳川秀忠とか千とかすえとか阿梅とかは来ませんでしたが今後もあくまでマイペースでお願い申しあげます。限られた予算とスケジュールの中でそれなりにスペクタクルも展開し、やればできるじゃないかというテキストのような本年度の大河ドラマ。やはり・・・基本は脚本ですよねえ。歴史というものを愛する者だけが描くことを許される戦国絵巻が・・・見事に繰り広げられた一年でございました。「姫武将」や「西郷どん」はともかくとして・・・クドカン大河までは長い道のりが待っておりますねえ・・・。どうなることやら・・・。

Sanada50 慶長二十年(1615年)五月七日、徳川家康は大坂城を包囲しつつ、南側に鶴翼の陣形を構築した。これに対し豊臣秀頼は大坂城に篭城。茶臼山、天王寺、岡山に防衛ラインを構築する。茶臼山を目指す徳川左翼は松平忠直、浅野長晟ら六万、岡山を目指す徳川右翼は徳川秀忠、前田利常ら六万、中央は左右に連動して本多忠朝ら二万が前衛となり、その背後に家康が四万の軍勢で本陣を構える。南方から攻める徳川軍は総勢十八万である。対する豊臣軍は真田信繁七千、毛利勝永七千を中央突撃部隊として編成し、大野治房五千、大野治長五千が左右に展開し、防御姿勢をとる。大坂城周辺の最終防御に残る兵は五千、総勢三万にも満たない。前日の敗戦により十万を越えていた雑兵たちの半数以上が逃亡していた。正午に徳川左翼が攻撃を開始するが塹壕からの射撃を行う豊臣軍に前進を阻止される。突撃部隊の第一陣として毛利勝永が本多忠朝勢に突入を開始。射撃戦となり忠朝は討ち死に。忠朝勢は敗走し、その直後に徳川軍に裏切りが発生したという虚報が流れ、忠朝勢後方の榊原康勝、仙石忠政が動揺し、退却を開始する。戦場は混乱し、家康本陣前方に空白地帯が生じる。松平忠直勢は防衛ラインを突破し、大坂城に向う。忠直勢と入れ違いに南方に進出した真田突撃部隊は家康本陣を急襲する。この頃、大坂城では台所頭が放火し、出火。豊臣方に動揺が広がる。防衛ラインは各所で突破され、真田、毛利の突撃部隊は孤立し、消耗戦を強いられる。信繫は安居天神で討ち死にする。戦闘開始から三時間後、豊臣全軍は大坂城に退却した。五月八日、大坂城を包囲した徳川軍は突入を開始。阿鼻叫喚の地獄絵図の中、千姫は大坂城を脱出。豊臣方は金蔵で自刃し業火に包まれる。

茶臼山の家康は次々と届けられる真田幸村の首にうんざりしていた。

「真田左衛門佐は・・・一体、何人おるのじゃ・・・」

家康の左右には左衛門佐の顔を知る真田信尹、織田有楽斎、直江兼続などが控えている。

「どれもみな・・・言われれば真田のようであり・・・しかし・・・血の抜けた首は判別が難しく」

「これなどは顔が焼かれていてよくわかり申さぬ」

「交渉に現れた源次郎が影武者であったかも定かならず」

「・・・もうよい・・・」

家康は老いた顔を顰めた。

茶臼山には家康のための寝所が構築されている。

家康の世話を焼くのはくのいちの服部采女である。初代半蔵の娘だった。

采女は家康を寝かしつけた時に・・・殺気を感じた。

侍女の一人が采女の反応に気が付き、正体を見せる。

くのいちの才蔵だった。

「さすがは・・・半蔵の手のものじゃ・・・」

「千姫様に従ってきた侍女の匂いがするわ・・・いつの間に入れ替わった」

「そんなことはどうでもよいわ」

「しかり」

才蔵の左右から采女の配下が忍び短刀を突き出す。

才蔵が飛んでかわしたところを采女の手裏剣が襲った。

才蔵は心臓を刺されていた。

「仕留めよ」

「遅し」

「む・・・」

采女が火縄の匂いを嗅ぎ取った瞬間、才蔵は爆散した。

家康の寝所は猛火に包まれた。

佐助は台所頭を追っていた。

大和に向う森の中で・・・台所頭は振り返る。

「猿飛の術・・・佐助か」

「覚悟しろ」

「ふふふ・・・忍びに覚悟など無用」

佐助は身体に異変を感じる。

「お」

「お主の渡った樹木の木の葉には痺れ薬を塗っておいた・・・」

「お前は・・・」

「半蔵よ・・・佐助・・・術に溺れたのう・・・」

「さすがだ・・・しかし・・・」

佐助は樹上から落下する。

半蔵はとどめを刺そうとして首元に刺激を感じる。

振り返った半蔵は・・・無数の猿たちが吹き矢を咥えているのを見た。

「忍猿か・・・」

半蔵の意識は遠のき・・・樹上から落ちた。

忍猿は佐助を囲む。

佐助は薄目をあけ微笑んだ。

「大丈夫じゃ・・・」

夏の夜の森に静寂が訪れる・・・。

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天地人の大坂夏の陣

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2016年12月18日 (日)

私は琴の爪になりたい(武井咲)

歴史の面白さというものは一種の残酷さの中にある。

たとえば「赤穂事件」に関わったすべての人間はおそらく数百年前に死んでいる。

一人も生き残っていないのである。

だが・・・子孫ということでは多くの生き残りがいる。

子孫には浅野側の関係者もいれば吉良側の関係者もいる。

「赤穂浪士が善で吉良上野介が悪」ということになれば・・・浅野側の子孫はいい気分で吉良側の子孫はあまりいい気分ではないということになる。

歴史を研究していれば・・・そういう「気分」が「史実」に反映して「事実」とは異なる様相を呈することは大いにありえるわけである。

「現代」においては・・・「集団で押し入って老人を殺害する」という行為は「犯罪」という他はないが・・・「殺されても仕方のない人などいない」と感じる人々が増えるほど・・・絶大な人気を誇った「赤穂浪士」の形勢は不利になっていくわけである。

一方で・・・「死刑になるべき人が死刑にならない」時代には・・・結局、「赤穂浪士」になるしかないのではないか・・・という考え方も発生する。

歴史の「残酷さ」の中には「希望」が含まれている。

「本当にあった赤穂事件」から何を読みとるか・・・それはそれぞれの自由なんだなあ。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第12回』(NHK総合201612171810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・伊勢田雅也を見た。元禄十五年(1702~3年)十二月十三日、江戸幕府の将軍は第五代・徳川綱吉である。赤穂事件の発端は浅野内匠頭長矩(今井翼)が殿中で刃傷沙汰を起こしたことにあるが・・・綱吉が内匠頭に即日切腹を申しつけたことにもある。一方で喧嘩両成敗の原則を無視して斬りつけられた吉良上野介義央(伊武雅刀)にはお咎めがなかった。吉良に対しては温情を見せ、浅野に対しては非情であったことが・・・さらなる事件を引き起こしたとも言える。そのために・・・「赤穂事件」では徳川綱吉も悪役となるし、その側近である綱吉の側用人(大老格)・柳沢出羽守保明も悪役となるのである。ひとつの事件に対して裁判官が悪役になることは今も多い。人が人を裁く難しさというものである。

江戸の治安の監察官である大目付に任じられていた幕府旗本・庄田安利は内匠頭を庭先で切腹させるという・・・厳しい態度をとったために・・・赤穂浪士の人気が高まると左遷されてしまうことになる。

北町奉行・松前伊豆守嘉広は赤穂浪士を忠義の士として絶賛し、後に大目付に出世する。

政務官である老中の一人、武蔵岩槻藩主・小笠原長重は主賓としてこの日の吉良家茶会に参加しているが・・・次の将軍・徳川家宣にも滞りなく仕えている。

お泊まりしなくて良かったわけである。

連絡役の毛利小平太(泉澤祐希)から討ち入りの日を知らされた密偵のきよ(武井咲)は上杉家下屋敷を脱出する。

磯貝十郎左衛門(福士誠治)の消息を知るために上杉下屋敷裏の氷川宮で小平太と待ち合わせをしたきよは網笠をかぶった不審な武士の姿に気付き、移動を開始する。

謎の武士に尾行されたきよは江戸市中を彷徨うが・・・小平太と遭遇してしまうのだった。

「怪しきものに尾行されております」

「なんと・・・」

二人は最寄りの茶屋に身を潜めた。

「何者でしょうか・・・」

「吉良の手のものか・・・あるいは公儀隠密やもしれぬ・・・」

「申しわけありませぬ・・・この期におよんで・・・待ち合わせなどいたしまして」

「いや・・・きよ殿は存分に働かれた・・・それに拙者は磯貝殿から伝言を預かっておる」

「磯貝様から・・・」

「今宵は・・・金杉町に参るそうだ」

「金杉町・・・」

芝金杉町は磯貝十郎左衛門(福士誠治)の母親・貞柳尼(風祭ゆき)の住居である。

「いずれにしろ・・・送り狼がいたのでは・・・身動きがとれぬ・・・拙者が引き受けるのできよ殿は隙を見て逃れよ」

「しかし・・・相手は二本差しでございます」

「ご案じ召されるな・・・」

小平太は筆をとり書きつけを認めた。

「万が一にも・・・遅参した折には・・・この文を磯貝様から大石様にお渡しくださるよう・・・」

そこには・・・「申し合わせ候ご人数あい退き申し候」という脱盟の言葉が認められていた。

「毛利様・・・」

「心配無用じゃ」

しかし・・・小平太は最後の脱盟者として名を残すことになる。

Ako001 雪が降っていた。

きよは・・・金杉町にたどり着いた。

そこには・・・十郎左衛門が待っていた。

貞柳尼は病床から二人を出迎える。

「なんと似合いの・・・言を挙げずとも私の目にはそなたらはまことの夫婦に映る」

「貞柳尼様、いえ・・・お義母様・・・ありがたきお言葉ありがとう存じます」

側に控えるみえ(三輪ひとみ)も微笑むのだった。

みえは・・・おそらく十郎左衛門の兄嫁なのだろう。

二人きりとなったきよと十郎左衛門は最後の一夜を過ごす。

「小平太が・・・」

「もしもの時・・・皆様のお心を乱す事がないようにとのお心使いと・・・」

「・・・」

「殿のご刃傷より一年と十月・・・待ちに待ったこの日と申されておりました」

「無事であればよいが・・・きよ・・・」

「はい」

「そなたは・・・生きよ」

「・・・」

「生きて・・・母を看取ってくれ・・・吾が妻として・・・」

「十郎左様・・・」

二人はかりそめの一夜を過ごした・・・。

そして・・・一月十四日の朝が来た。

きよは瑤泉院(田中麗奈)の「耳」として赤坂今井の浅野三次屋敷に向う。

浅野家の侍女である滝岡(増子倭文江)やつま(宮崎香蓮)、浅野三次家臣で瑤泉院付きの落合与左衛門(山本龍二)がきよを出迎えた。

「今宵・・・討ち入りとなりまする」

「さようか・・・」

「は」

「御苦労じゃったな・・・そなたの働き・・・聞き及ぶ」

「・・・」

「昨夜・・・夢枕に殿がおでましになった・・・晴々としたお顔であったぞ・・・いつか・・・そなたが御前で琴の腕前を披露した時のようじゃった・・・あれが夢の報せと申すものであったのだろうな・・・」

一同は・・・在りし日々を思い浮かべる。

「今は・・・一同が無事に本懐達することを祈るのみじゃ・・・」

きよは手筈に従って米沢町の堀部弥兵衛(笹野高史)の家へと向う。

その頃、浅草唯念寺の勝田元哲(平田満)の庵・林昌軒へ嫡男の勝田善左衛門(大東駿介)が訪れていた。

「そうか・・・きよは上杉の屋敷を出たのか・・・」

「こちらに戻っていないとわかればよいのです」

「いよいよ・・・事を起こすのか・・・善左衛門・・・お前は何故・・・そこまで赤穂の浪士に肩入れをする・・・」

「わかりませぬ・・・が・・・方々のなそうとしていることは・・・我が夢のようなもの・・・」

「・・・」

「まことの武士にはなれぬ己の血がたぎるのです・・・御免」

「待て・・・お前に預けたいものがある」

「・・・」

元哲は脇差を取り出した。

「不破数右衛門殿にいただいてもらいたいと・・・お伝え申し上げろ」

「父上・・・」

帰参した家臣である不破数右衛門(本田大輔)は貧窮し・・・すでに刀剣を売り払っていた。

ちなみに赤穂浪士には勝田新左衛門武尭がいるが勝田善左衛門とは別人である。

米沢町の堀部弥兵衛の家は集合場所の一つであった。

江戸市中に身を潜めた赤穂浪士たちは・・・目立たぬように参集する。

門出の祝宴の準備をする弥兵衛の娘で安兵衛(佐藤隆太)の妻であるほり(陽月華)は甲斐甲斐しく働いていた。

きよもそれを手伝う。

やがて・・・村松三太夫(中尾明慶)が・・・吉田忠左衛門(辻萬長)が・・・原惣右衛門(徳井優)が・・・そして大石内蔵助(石丸幹二)と主税(勧修寺保都)が到着した。

しかし・・・半平太はつい姿を見せない。

弥兵衛は内蔵助に・・・村松三太夫と安兵衛の親戚筋で・・・きよの縁者である勝田善左衛門と佐藤條右衛門(皆川猿時)を引き合わせる。

「この者たちは・・・堀内道場の門弟にて・・・準備に尽力し・・・今宵も屋敷外の警護を頼むものにて・・・」

「よろしく頼むぞ」

内蔵助に言葉をかけられ感激する二人だった。

すでに・・・江戸市中の民草は・・・討ち入りを待望していたのである。

村松三太夫はきよに弟の政右衛門を引き合わせた。

「どうか・・・お力を貸してやっていただきたい」

「承知いたしました」

「きよ殿・・・どうか息災で・・・」

「村松様・・・ご武運お祈り致しております」

やがて宵闇が近付く。

赤穂浪士たちは吉良屋敷の間近にある本所相生町の米屋に移動する。

ほりは父と夫に今生の別れを告げた。

「頬に米粒がついておるぞ・・・」

安兵衛は微笑んだ。

内蔵助はきよに伝言を委ねた。

「瑶泉院様に・・・あの時頂戴した頭巾を持ち持ち討ち入りに臨んだと」

「かしこまりました」

きよと十郎左衛門にも別れの時が来る。

「十郎左様・・・これを」

きよはお守り袋を渡した。

「琴の爪が入っておりまする・・・どうかこれをきよと思って・・・」

「行って参る」

無人となった堀部邸を出たきよはほりに連れられて・・・吉良邸に近い儒学者・細井広沢(吉田栄作)の屋敷を訪れた。

堀内道場の門弟である細井広沢は安兵衛と親しい。

この年、職を解かれていたが幕府側用人・柳沢吉保に儒学者として仕え、年五十両の援助を受けている身である。

そうでありながら赤穂浪士に肩入れし・・・協力関係にあった。

おそらく忍びの者であったのだろう。

「にわかに参じましたる無礼の程はお許し下さりませ・・・」

「今宵ともなれば・・・遠慮は御無用・・・」

「こちらは・・・夫の親戚筋にあたるきよ殿と申します」

「きよでございます」

「そなたが・・・きよ殿か・・・安兵衛から聞いておる」

「・・・」

「今朝・・・目黒不動の雑木林で半ば雪に埋もれた骸がふたつ見つかったそうじゃ・・・」

「・・・」

「一人は柳沢様のご家来であったそうだ・・・おそらくもう一人は赤穂の浪士であろう・・・」

きよは小平太のために瞑目する。

「双方・・・命を落さぬでもよかったろうが・・・戦にそういうことはままあるもの」

やはり・・・細井広沢は公儀隠密の一人らしい・・・。

幕府は赤穂浪士の動向を察知しつつ・・・放置していたのである。

そこへ・・・落合与左衛門が現れた!

「落合様・・・」

「瑤泉院様から差し入れでございます」

「まあ・・・」

「討ち入りの後は喉が渇くだろうと・・・蜜柑を四十八個・・・」

赤穂浪士が四十七士になったことを・・・瑤泉院は知らない。

「瑤泉院様は・・・」

「仏間にお籠りあそばしてございます」

きよの胸は高鳴った。

「斥候(うかみ)に参ります・・・方々のお働きを・・・この目で・・・」

きよは・・・降りやんだ雪道に飛び出して行った。

討ち入りの夜は更けていく・・・。

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2016年12月17日 (土)

あなたが愛したクエストとダンジョンそして賢者の石(山田孝之)

佳境である。

冒険者たちは試練に挑み、経験を積んで成長し、ついには最強の敵を倒して世界を破滅から救う。

RPGの世界では素晴らしい結末が用意されているのが普通である。

「北方領土をとりもどせ!」というゲームがあるならば・・・「平和的解決」というものの困難さは明らかである。

相手は「魔王」ではなく「人類の一部」なのである。

そしてプレイヤーは「絶対に武力行使できない」という超絶的な難度の「縛り」を自らに課している。

ほとんど「無理ゲー」なのである。

プレイヤーから見れば・・・相手は条約を破棄して家事場泥棒のように領土を不法占拠しているわけだが・・・勝てば官軍であり、実効支配を七十年間積み重ね、安全保障上の問題からも「返還など問題外だし、指定されたエリアはすでに自国の領土以外の何物でもない」と主張する。

「第二次世界大戦の結果、取得した」と相手が言っている以上・・・「第三次世界大戦」の戦勝国にならない限り・・・プレイヤーは「北方領土」を取り戻すことができない。

それでも・・・権謀術策を重ね、あらゆる非合法活動を展開し、武力以外の方法で・・・目標達成は可能かもしれない。

ただし・・・「話し合い」で解決することは無理だろう。

七十年かけて無理だったのだから。

「話し合い」を続けているうちにほとんどの人間は一生を終える。

つまり・・・「引き分け」である。

「引き分け」とは現状維持のことなのだから。

プレイヤーは「臥薪嘗胆」を続け、「憲法改正」をして「核武装」を達成し・・・「相手国」を滅亡させる覚悟で・・・挑む必要があるが・・・基本的に・・・一般市民はそんなことで「流血」するのは好まないものだ。

だから・・・せめて・・・「魔王」は滅ぼしたいのである。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第11回』(テレビ東京201612170018~)脚本・演出・福田雄一を見た。「空飛ぶお城」に乗って「魔王の城の門」に到着した勇者ヨシヒコ(山田孝之)と賢者のメレブ(ムロツヨシ)、バトルマスターのダンジョー(宅麻伸)、そして魔法使いのムラサキ(木南晴夏)である。キラーマシン(監督)は「最終回直前」を口上する。はじまればおわめのがこの世界の宿命なのである。季節はすでに最終回のシーズンに突入しているのだった・・・。

「なんか・・・いつもより本格的だな」とメレブ。

「パシフィコ~横浜」と仏(佐藤二朗)が登場し、ヨシヒコはウルトラアイを装着。

すでに手を添えずにウルトラアイが顔から落ちないヨシヒコだった。

「正式名称・横浜国際平和会議場という神奈川県横浜市西区みなとみらい1丁目にある世界最大級の国際会議場と展示ホールとホテルからなるコンベンション・センターを使っただじゃれは・・・いいから」

「そんなあ・・・みんなに喜んでもらおうと思って・・・」

「いいから本題に入れよ」

「魔王の城へと続くダンジョンに・・・三つの宝が隠されている・・・七つのオーブで選ばれし六人を召喚した後・・・魔王を倒すためには三つの宝が必要なのだ・・・一つ、ムラサキのための賢者の石、一つ、ダンジョーのための炎の刃、一つ、ヨシヒコのためのトドメの剣・・・この三つのアイテムを入手すれば魔王戦はクリアできます」

「え・・・」

「なにか」

「私にはないのか」

「鼻と口の間に・・・ブラック・ダイヤモンドがある・・・無敵である」

「・・・」

「ありのままで・・・」

「ペヤングフェイスのバカ」

ヨシヒコたちは・・・「仮面ライダー」的な洞窟風(栃木県宇都宮の大谷石採掘場)のダンジョンへ入った。

「あ・・・あんなところに宝箱があるよ」

「本当ですね」

「よせ・・・ヨシヒコ・・・それはきっとミミック(宝箱に擬態した魔物)だ」

「あけちゃった」

ヨシヒコは「賢者の石」を入手した。

「そんな・・・簡単に・・・」

「私のだ」

ヨシヒコは「賢者の石」をムラサキに渡した。

「あああああ・・・入ってくる・・・入ってくるよ・・・呪文が」

すべての呪文がムラサキにインストールされた!

「私にも・・・私にも」

ムラサキは「賢者の石」をメレブに渡した。

「賢者の石」は砕けて散った!

「えええええ」

賢者の石とは中世ヨーロッパの錬金術師が用いた触媒的鉱物である。「ドラゴンクエストシリーズ」ではパーティ全体のHPを回復するアイテムであるが、「ハリー・ポッターシリーズ」ではあらゆる金属を黄金に変え、飲めば不老不死になる「命の水」の原料となる。ここでは使い捨てのムラサキ専用呪文データベースらしい。

「賢者なのに・・・賢者の石に拒否されるとは・・・」

「私はすべての呪文が使えるようになったよ」

「ブラズーレ」

「きゃっ」

「どうやら・・・ブラズーレを打ち消す呪文は知らぬらしい」

「解けよ」

「メレブ様・・・お願いしますと言え」

「くそお・・・」

ムラサキ、かわいいよムラサキである。

ちなみにブラズーレはノーブラでもずれた感じがする呪文である。

ヨシヒコは異様な紋様に囲まれた階段を発見する。

「階段って・・・どこにも通じていないじゃん」

「いや・・・これ、そういう風に見える表現方法だから」

「昇りましょう」

しかし、一歩踏み出したヨシヒコたちは滑るように紋様の外側に吐き出される。

動く床だった。

「一体これは・・・」

「よく見ろ・・・床に矢印が書いてある。踏み出す場所を間違わなければ階段にたどり着ける」

「はい」

しかし・・・ヨシヒコは馬鹿なので「正解」を発見できない。

「やめて」

「目が回る」

「ヨシヒコ・・・慎重に・・・」

ムラサキが正しい道筋を見つけた。

落とし穴に見える中間地点によるクリアである。

「ここだよ・・・」

しかし・・・ヨシヒコはうっかり道を踏み外す。

「ヨシヒコ~」

ヨシヒコ、馬鹿な子ほどかわいいよ、ヨシヒコである。

階段から逆算するのが基本である。

新しいフロアで洞窟奥の宝箱を発見する一同。

手前に「怪しい岩」があり、宝箱の直前には「怪しい龍の像」がある。

「行きましょう」

「待て・・・ヨシヒコ」

「龍の像」から炎が噴き出し・・・ヨシヒコは棺桶モードに移行した。

「ザオリク」

ムラサキはザオリクを唱えた!

ヨシヒコは生き返った!

「ドラクエⅤの火炎放射器の罠だな」

「ドラクエ?」

「よし・・・私の出番だな・・・私はアツアツのタコ焼きを丸のみできるタイプだ」

「おっさん」

「龍の像」から炎が噴き出し・・・ダンジョーは棺桶モードに移行した。

「ザオリク」

ダンジョーは生き返った。

「熱いのが平気とか・・・そういうレベルの話じゃないから」

「それではくぐりましょう」

「あ・・・ダメ・・・ヨシヒコ」

「龍の像」から炎が噴き出し・・・ヨシヒコは棺桶モードに移行した。

「ザオリク・・・マジックパワーポイントがなくなっちゃうよ」

「それでは飛び越えて・・・」

「待った・・・もう少し頭を使え・・・これは岩とかで塞ぐパターンだけど・・・ゲームの画面上ならまだしも・・・㌧ある岩なんか動かせないし」

「ゲーム?」

「動きます」

ヨシヒコは岩を動かし、「龍の像」の口を塞いだ。

しかし、行き過ぎた。

「龍の像」から炎が噴き出し・・・ヨシヒコは棺桶モードに移行した。

なんとか・・・宝箱にたどり着く一同。

「これは・・・炎の刃があるパターンだな」

しかし、宝箱はミミックだった。

ミミックはザラキを唱えた!

ヨシヒコは死んでしまった・・・。

「ザオリク・・・もうMPなくなっちゃった」

「これは一度回復する必要があるな・・・ダンジョン攻略の基本だし」

「でも・・・ダンジョンの外に宿屋なんてあったか」

「外にはないが・・・内にあった・・・」

ダンジョンの中で「宿屋」を発見した!

宿屋の女将は「千と千尋の神隠し」で湯屋「油屋」を経営する湯婆婆(声・夏木マリ)を連想させる徹子(池谷のぶえ)だった。

「やばい・・・メにされてしまう」

しかし、徹子は1泊1人1万ゴールドという高額な宿泊代を請求するが、旅人たちの苦労話に「女将の部屋」で耳を傾ける隙間産業の覇者だった。

ただし、芸人には厳しく、タモリでさえネタの披露を要求されるらしい。

「ここで回復して奥へ行ったものは・・・結局・・・誰も帰ってこなかったけどね」

女将の言葉に「復活できない完全なる死をもたらす魔王の力」を思い出す一同。

何故かメレブはヨシヒコと添い寝をするのだった。

一同は「宿屋」で回復した。

一同は青と白のストライプ柄に囲まれた宝箱を発見した。

「これは危険だな」

「でも毒の沼じゃないよ」

「いや・・・ビリビリくる奴だ」

「行きましょう」

「あ・・・だめ・・・」

ヨシヒコはダメージを受け瀕死となった。

「あれだ・・・HPが1になっちゃう奴だ」

「ヨシヒコ・・・動くな」

「ここはリレミト(ダンジョンの外に出る呪文)だ」

「リレミト!」

しかし、呪文は不思議な力でかき消された。

「ダメか・・・よし・・・ルーラでどこかの村に飛ぼう」

「ルーラ!」

しかし、一同は洞窟の天井に阻まれた。

「痛い」

ダメージを受けてヨシヒコは棺桶モードに移行。

「今回はドラクエあるあるだな・・・」

「あるある?」

一同はヨシヒコの棺桶を渡って宝箱を開いた。

「私を踏み台に・・・」

「靴は脱いだから・・・」

ダンジョーは「炎の刃」を手に入れた。

ダンジョーは最強のバトルマスターとなった。

強敵が現れた!

ムラサキはヒャダルコを唱えた!

強敵Aは一撃で倒された!

ダンジョーは剣を使った!

強敵Bは一撃で倒された!

メレブはチョヒャドを唱えた!

強敵Cはカーディガンを羽織りたくなる程度に肌寒さを感じた!

・・・一行は休憩した。

メレブが新しい呪文を覚えた!

「魔王に効くのかよ」

「マオーに効くね・・・だから私はこの呪文にアサダと名付けたよ」

「浅田真央っていうダジャレかよ」

「スケートだけによくすべる」

「この呪文をかけられたものは回転してジャンプしたくなる」

「かけてください」

「アサダ」

「ああ・・・ジャンプがしたい」

ヨシヒコは「シングルサルコウ」と「シングルトウループ」を飛んだ。

「陸上フィギュアって・・・結局、ダンスとどこが違うんだ」

「芸だから・・・あくまで芸だから」

一同は妖怪ウォッチの登場キャラクター・ジバニャン(トラックに轢かれて死んだ猫が成仏できず、地縛霊となったプリチー族の妖怪)に似たキラーキャット(声・小桜エツコ)に守護された宝箱を発見する。

「可愛いな」

「待て・・・ダンジョー・・・いつもこの手の奴に痛い目にあってるじゃないか」

メレブの危惧したように必殺技「ひゃくれつ肉球」で変顔(白目を含む)を披露する一同だった。

「強い・・・」

「アア・・・ツカレタ」

「怠け者なのでは・・・」

「ア・・・ニャーKB48ノらいぶガ気ニニャル」

アイドル好きのキラーキャットは持ち場を離れた!

ヨシヒコは宝箱から「とどめの剣」を入手した。

いよいよ・・・グランドフィナーレとなる魔王の待つ場所へと・・・冒険者たちは到着した。

はたして・・・いかなる結末が待っているのか・・・。

師走だ・・・師走だなあ・・・。

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2016年12月16日 (金)

Chef〜三ツ星の給食〜(天海祐希)学校給食で星ひとつ取っちゃいました(川口春奈)

小学校を舞台にしたドラマを作る力が・・・失われているのか・・・それともお茶の間に・・・子供を見たいと思う人がいなくなってしまったのか・・・。

このドラマの視聴率推移はいろいろと考えさせるところである。

*8.0%↘*7.0%↘*6.2%↘*4.9%↗*8.0%↘*7.3%↘*6.6%↗*8.0%↘*6.2%・・・なのである。

このドラマには三つの舞台がある。

一つは主人公の本来の職場である三つ星レストラン。

一つはオーナーと対立しレストラン業界を追われた主人公がたどり着く学校の給食室。

そして・・・主人公が開業するフレンチ屋台である。

欲張りすぎたので・・・視聴率は底辺まで落ちた。

この後も視聴率は乱高下するが・・・ドラマが「主人公の人間性の回復物語」であることに気がついた一部お茶の間はそれなりに好感度をあげて・・・最終回にたどり着いたものと思われる。

結局、子供たちは・・・主人公が「心を取り戻すための道具」なのである。

やがて・・・主人公がとある理由で子供を捨てた母親であることが明らかになり・・・「彼女の理由」が許容範囲かどうかで・・・お茶の間の反応は再び分かれたと思われる。

主人公が作るそれなりに工夫された「最高に美味しいもの」はお茶の間を釣る切り札にはならなかったようだ。

同じ・・・「腕が自慢の女性主人公」が驚異的な視聴率を獲得していることを考えると・・・色々と参考になるが・・・まあ・・・そういうことを分析してもあまり意味はない。

なにしろ・・・ここは谷間なのである。

で、『Chef〜三ツ星の給食〜・第1~最終回(全10話)』(フジテレビ20161013PM10~)脚本・浜田秀哉、演出・平野眞(他)を見た。脚本家は原作ありだがドラマ「ナオミとカナコ」(平均視聴率*7.5%)で一部お茶の間のそれなりの興味を集めた人である。「ラストホープ」とか「破裂」とか一応の作品を仕上げているので・・・このドラマもそれなりによくできているのだが・・・少しパンチが足りない気がしました。まあ・・・今回はオリジナルなので・・・色々と欲張っちゃったのか・・・注文が多かったのか・・・どちらかなのではないかと。

「The Red Star Guide」というレストランの評価を星の数で表すことで知られるレストラン・ホテルガイド「レッド・ミシュラン」を模したフィクションが基調となっていて・・・主人公の星野光子(天海祐希)は有名フレンチレストラン「ラ・キュイジーヌ・ドゥ・ラ・レーヌ」で三つ星(最高)の評価を受けているシェフである。

しかし・・・オーナーの篠田章吾(小泉孝太郎)と・・・経営上の問題で衝突し・・・光子は「食中毒」の濡れ衣を着せられてフレンチ業界から追放されてしまうのだった。

バラエティー番組のプロデューサー・矢口早紀(友近)は光子の存在に注目し、彼女を学校給食の世界に導く。

三つ葉小学校の給食室には栄養士兼調理師の荒木平介(遠藤憲一)がいて・・・「美食」とはほど遠いが・・・「食べ残し」の少ない「美味しい給食」を求めて奮闘しているのだった。

給食室のメンバーは・・・元力士(荒川良々)、元ホスト(池田成志)、過食症で買い物依存症(伊藤修子)、謎の女子大生アルバイト・高山晴子(川口春奈)という顔ぶれ。

光子と荒木は当然の如く衝突するが・・・やがて・・・「料理のプロ」としてお互いの存在を認め合うようになっていくという趣向である。

「自分が作る最高の料理」を目指していた光子は・・・いつしか・・・「他人のために最高の料理を作る喜び」を感じるようになるのだった。

まあ・・・どこがどう違うのかは・・・そう思える人とそうでない人がいると考えます。

何故か執念深い篠田オーナーは・・・なんとか料理人として再起しようとする光子をあの手この手でつぶしにかかる・・・。

終盤で・・・家庭と仕事の選択を夫に迫られた光子が・・・離婚し・・・幼い娘の親権を奪われた過去が判明し・・・高山晴子が本名・桜井ひかりという実の娘だったという展開・・・。

ひかりは・・・悪い母親と教え込まれていた光子の・・・実際の姿を知り・・・和解するのでした。

こういう大体・・・予定調和のところが・・・もう一工夫必要なんだな・・・きっと。

そして・・・学校給食が給食センターに統合されるという給食室の危機が発生。

同時に「ラ・キュイジーヌ・ドゥ・ラ・レーヌ」を引き継いだシェフの奥寺健司(豊原功補)のオリジナリティーにも問題が生じ・・・格下げの可能性が・・・。

そこで・・・オーナーは「光子の料理のファンで・・・独占できないなら・・・誰にも食べさせたくなかった」という・・・なんだかなあ・・・の本音が炸裂するのである。

「戻ってきてほしい・・・」

オーナーの言葉に揺れる光子。

給食室の存亡をかけて・・・「しいたけ・ピーマン・セロリ・ねぎ(ニンジンじゃないのかよ)」という子供の苦手な食材四種を使った給食イベントを開催する給食室チーム。

そのイベントに「The Red Star Guide 」の日本人審査員・益子洋一(丸山智己)が参加していたのだった。

結果として・・・「ラ・キュイジーヌ・ドゥ・ラ・レーヌ」は星二つに評価を下げるが・・・三つ葉小学校の「給食」が星ひとつを獲得してしまうのだった。

「The Red Star Guide 」の星を獲得した給食を失うわけにはいかないと行政が動くのだった。

給食室の存続は決まったが・・・「なんで私の料理が星ひとつなのよ」と憤慨する光子。

こうして・・・光子は・・・「星三つの給食」を目指し・・・給食室の女王になるのだった。

まったく悪くはないが・・・これはもはやどうしても見たいドラマではないのだと考える。

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2016年12月15日 (木)

2041年から来た男の人と冬の寄せ鍋を食べました(成海璃子)

今から25年後は2041年である。

25年後のことなんか想像もできないのが一般的である。

今から25年前は1991年である。

現在22才以上ならばなんらかの記憶があるのが一般的である。

多国籍軍がイラクを空爆して湾岸戦争が勃発した年だ。

ソ連のゴルバチョフ大統領が訪日した年である。

携帯情報端末「Newton」をアップルが発売したのが1993年であり、スマートフォンはまだない。

25年前、誰もが携帯コンピューターを持つ時代がすぐそこまで来ていると予見している一般人はそれほど多くはなかっただろう。

医療技術は確実に進歩し・・・二十五年前には確実に死亡していた人間が充分に回復可能になっている。

2041年には・・・とんでもないことになっていることは間違いないだろう。

しかし・・・このドラマの未来人は・・・そういう未来とは無縁なのである。

つまり・・・二十五年前と同じようにスマートフォンを持っていない人の話である。

そういう一種の時代遅れの物悲しさがこの「オトナの土ドラ」からは漂ってくる。

で、『リテイク 時をかける想い・第2回』(フジテレビ201612102340~)脚本・秋山竜平、演出・小野浩二を見た。2022年にタイムマシンが開発され、未来から未来人が飛翔してくる世界である。ただし、時間旅行は未来から過去への一方通行であり、未来人が過去に出現した時点で・・・未来人の遡上してきた未来は失われ、別の時間軸に路線変更されたと思われる。現代人にとって・・・未来が変更されたかどうかの判断が不能であることは言うまでもない。ただ・・・未来人だけが・・・自分の知る「歴史」が変わったという認識を持つことはできる。たとえば・・・未来人が過去の自分を殺しても未来人は消失しない。未来人の存在した時間軸と・・・遡上した時間軸は別世界なのだ。この世界にはタイムパラドックスは存在しないのである。

「歴史の変更を阻止せよ」という任務を帯びた法務省戸籍監理課の業務がお粗末なのは・・・それが単なる気休めに過ぎないからなのだ。

「未来のことなんか・・・わからないけど・・・現状の変更を勝手にされるのは気分が悪い」という話です。

法務大臣政務官秘書の大西史子(おのののか)さえも本来の業務を知らされていない法務省戸籍監理課に法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)は「未来人の確保」を厳命するのだった。

戸籍監理課課長・新谷真治(筒井道隆)、正規職員・那須野薫(成海璃子)、パートタイマー・パウエルまさ子(浅野温子)の三人は今日もタイムトラベルによってリテイク(撮り直し)しようとする未来人の確保に挑むのだった。

どう考えても人手不足です。

ギャンブルで一攫千金を達成し、現代で優雅に暮らすことを目論むオバケ(未来人・・・時間旅行に伴い衣服が何故か漂泊されるための戸籍監理課用語)の坪井信彦(笠原秀幸)の現住所を特定するパウエル。

「オバケは出ますかね」と張り込みのために出動した薫である。

「オバケには戸籍がない・・・過去の自分自身と接触する可能性は高い。場合によっては現代人なりすます可能性だってある」と新谷課長。

「あ・・・私の肉まん」

「あ」

新谷課長は・・・薫の肉まんを食べてしまった!

そこへ・・・オバケの坪井が現れる。

「坪井さん・・・」

「また・・・お前らか」

オバケの坪井はいかにも成り金の様相を呈している。

「一緒に来てください」

「断る」

坪井は逃走を開始する。

新谷課長は鈍足だが・・・薫はなんとかオバケの坪井を追いつめるのだった。

「もう・・・逃げられませんよ」

「未来の出来事を知る俺様をなめるなよ」

突然、周辺の樹木に落雷が発生する。

動揺する薫・・・その隙をついてまんまと逃げるオバケの坪井だった。

そこでようやく姿を見せる新谷課長。

「くそ・・・過去の気象データも持っているのか・・・」

「課長・・・トレーニングしてくださいよ」

翌日、都内で・・・オバケの出現を意味する「天気雨」が観測される。

「何故・・・天気雨が降るのでしょうか」

「そんなこと・・・わからないわ・・・でも・・・一種のマーキングかもしれない」

「マーキング」

「たとえば・・・この場所から昨日に向ってタイムトラベルするとしましょうか」

「はい」

「すると・・・地球は太陽の周囲を公転しているから・・・時間だけを遡上したら私たちは何もない宇宙空間に出現することになるわ」

「窒息しちゃうじゃないですか」

「だから・・・最初になんらかの方法によって・・・時空間を固定するのかもしれない。天気雨の降った過去の地球上に到着できるように・・・」

「よくわかりません」

「とにかく・・・タイムトラベルなんてそういうとんでもないことなのよ」

二日目・・・張り込み場所に向う新谷課長は青年の落した十円硬貨を拾い驚く。

「昭和二十九年」製造の刻印がある。

「これ・・・どうしたの」

「ああ・・・それ予言者にもらいました」

「予言者・・・ちょっと話を聞かせてもらえないか」

「ちょっとって・・・一分ですか・・・十分ですか・・・何故、あなたに話さなければならないのですか」

青年は・・・新谷課長にある種の面倒くささを感じさせた。

「コーヒーを一杯奢らせてくれ」

「・・・いいですよ」

喫茶店に入る新谷課長と青年。

新谷が名刺を渡すと、青年は免許証を提示した。

「漆畑彬さん・・・お話を聞かせてください」

漆畑彬(タモト清嵐)は主張した。

「まだ・・・コーヒーが来ていません」

「ああ・・・」

そこで・・・新谷課長の携帯端末に薫からの着信がある。

(何してるんですか)

「今、喫茶店に・・・」

(何、一人で温まってんですか)

「いや・・・新規オバケの手掛かりを得て・・・そっちは君にまかせる」

(・・・)

「肉まんの件はすまなかった」

コーヒーを飲んだ漆畑青年は話を始めた。

「十円玉を落して・・・自販機の下から取ろうとしていたんです・・・そしたら・・・あの人がやってきて・・・十円くれて・・・自販機から離れろと・・・自販機から離れると・・・子供の蹴ったサッカーボールが自販機を直撃しました・・・」

「だから・・・予言者だと」

「まあ・・・そうです」

「どうもありがとう・・・参考になった」

「あの人が・・・どうかしたんですか」

「いや・・・特にそういうことではないが・・・偽造貨幣かもしれないから」

「こんな精密な十円玉の偽硬貨なんて・・・どんだけハイリスクローリターンな犯罪ですか」

「だね・・・」

新谷課長は漆畑青年の尾行を開始した。

同時にパウエルに周辺の監視カメラの画像解析を依頼する新谷課長・・・。

(特定できたわよ・・・白い服を着用した中年男性が・・・漆畑彬と接触している)

「新規のオバケですね」

(画像を送る・・・)

送られてきた画像の男(マギー)が・・・漆畑青年と接触中だった。

そこへ・・・ふたたび新谷課長の携帯端末に薫からの着信がある。

(逃げられちゃいましたよ・・・課長が遅いから)

「こっちに合流しろ・・・目の前に新規のオバケがいる」

(今、どこですか)

新谷課長は・・・漆畑青年とオバケを挟んで・・・薫が近付いてくる姿を捉えた。

「目の前だ・・・やりすごせ」

漆畑青年とオバケは何やら・・・話し込んでいた。

薫は二人の傍らを通りすぎる・・・。

「二人は何を話していた」

「こっちの道を通るなとかなんとか」

その時、薫は走って来た男に突き飛ばされて転倒する。

「痛い」

「大丈夫か」

「今の男・・・どう見ても覆面強盗ですよ」

「だな・・・警察に通報しろ・・・俺は二人を追い掛ける」

「はい」

現場に駆け付けたのは新谷課長の義理の弟で警視庁捜査一課の柳井研二刑事(敦士)だった。

・・・どういう立場だよ。

「まったく・・・義理の兄貴はひどいな・・・怪我人を放置して・・・」

「課長の悪口は言わないでください」

「え・・・まさか」

「そのまさかではない・・・部下として上司の悪口を許せないだけです」

「縦割りかっ」

課長は二人を見失っていた。

「漆畑彬の住所がわかりますか」

(送信したわ)

パウエルの仕事は早い。

漆畑青年のアパートに到着した課長は男を発見した。

「あなた・・・未来から来ましたね」

「君は・・・」

「未来人を保護する仕事をしているものです」

「保護は必要ではない」

「あまり・・・現代に関与されては困るのです」

「私はただ・・・彼と話したいだけだ」

「あなたが彼を助けたために・・・別の人間が怪我してるんですよ」

「・・・」

「さあ・・・一緒に来てください」

しかし・・・男は・・・漆畑青年の部屋のドアを叩く。

「いるのは・・・わかってる」

「どなたですか」

「今夜・・・あの店に行け・・・君が行きたいのはわかってる」

「余計なお世話です」

「行かなければ・・・ずっと一人だぞ」

「それに・・・何か問題でも・・・」

「今はそう思うかもしれないが・・・二十五年後には・・・後悔するんだよ」

「二十五年後って・・・あんた・・・頭おかしいのか」

扉は閉められた。

課長は立ちすくんだ。

「まさか・・・あなたは・・・彼なのですか・・・」

「そうだよ・・・う・・・」

男は身体の不調を訴える。

「救急車を呼びましょう」

「必要はない・・・私は2041年から来たんだから・・・」

「どういう意味です」

「未来の病院で治療困難な病気が・・・この時代になんとかなると思うかな」

「私の病気は・・・この時代にはまだ発見されていない」

「難病なのですか」

「全身縮小病だ・・・全細胞が縮んでいく奇病だよ・・・私が彼だとは思えないだろう」

「まあ・・・加齢で身長は縮むものですが・・・あなたの場合はかなり縮んでますね」

「そうだ・・・二十五年前には・・・中肉中背だった私が・・・もはやチビになってしまった・・・そして縮みきると死亡する・・・治療法は2041年にも確立しておらず・・・私は余命三ヶ月を宣告されている」

「・・・だから過去に来たのですか」

「そうだ・・・今夜が運命の分かれ道だから・・・」

「運命の・・・」

「行きたい店がある・・・付き合ってくれないか」

「・・・」

居酒屋「へのへのもへじ」に入店する二人。

カウンターにはアラサーの女性客(辻元舞)がいる。

「ねえ・・・店長・・・昨日の男の子・・・今日は来てへんの?」

「ああ・・・まだお見えではないですね」

「なんか・・・なんかなあ」

店長(渡辺火山)の答えに不満気な関西弁の女だった。

「美人でしょう・・・彼女」

「はあ・・・」

「大阪から出張で来ているんですよ・・・昨日・・・たまたま・・・私・・・つまり二十五年前の私は隣り合わせて・・・彼女に話しかけられたんです・・・あんな美人で・・・年上の女から話しかけられて・・・私は戸惑った・・・そして少し恐ろしさを感じました・・・でもね・・・あんな美人と話したのは・・・生れて初めてだったし・・・楽しくもあったんですよ・・・そして・・・私がそういう機会に恵まれるのは・・・これが最後なんです」

「え」

「まさか・・・そんなことになるとは思わず・・・私は今夜・・・ここに来なかった・・・まあ・・・だからと言って私は自分が不幸だとは思いませんでした・・・昨夜のことは・・・二十五年後の今もいい思い出です。病気になって・・・余命宣告されるまではね・・・死ぬとわかった時・・・私はわかったんです・・・自分が愚かだったことが・・・だって私の走馬灯には・・・たった一夜・・・彼女と話したことしか・・・映らないんですよ・・・寂しいでしょう」

「二十一世紀半ば近くになっても走馬灯なんて信じている人がいるんですか」

「そこかよっ」

「わかりますよ・・・私は最近・・・離婚して・・・一人になりました・・・別れた妻は・・・娘に会わせてもくれません・・・一人は・・・寂しいです」

「いや・・・なんか・・・私よりかなり恵まれている気がします」

「・・・」

「やはり・・・もう一度だけ・・・彼に話させてください」

「仕方ないなあ・・・」

未来人に甘い課長なのだった。

しかし・・・漆畑青年はアパートにはいなかった。

「もしかしたら・・・」

「すれちがったのかもしれませんね」

居酒屋に戻ると・・・漆畑青年がカウンターに座っていた。

「彼女は・・・」

「いませんよ・・・」

「店長・・・彼女はどうしたんですか」

「その人と入れ違いでお帰りになりましたが・・・」

「行け・・・追いかければ間に合う」

「何を言ってるんです・・・何故・・・僕が」

「話したいんだろう・・・彼女と・・・もっと話したいんだろう」

「・・・」

「チャンスを掴めよ・・・」

漆畑青年は店を飛び出した。

「困りますね・・・勝手に未来を変えられては・・・」

「ありがとうございました」

「いや・・・私は・・・別に」

「私・・・ずっと気になっていたメニューがあるんです」

「メニュー?」

「あれです」

そこには「冬の寄せ鍋・・・お二人様より」という張り紙があった。

「鍋の季節ですね」

「注文してもいいですか・・・二人前」

「いや・・・四人前にしましょう・・・二人が帰ってくるかもしれないから・・・」

しかし・・・帰って来たのは・・・傷だらけになった漆畑青年と・・・薫だった。

「え・・・」

「なんで・・・」

「予算とスケジュールの関係で割愛された場面を説明します。私は・・・柳井刑事に一杯奢らせて帰宅する途中で・・・覆面強盗を発見して追跡しました・・・すると強盗が通りかかったファッションモデル風の女性を人質にとったんです。そこへ彼がいきなり飛び込んできて強盗と格闘の末・・・女性を救助しました・・・強盗は柳井刑事が逮捕して連行していきました」

「お手柄じゃないか」

「その後・・・彼が彼女に告白して」

「やったな」

「ごめんなさいされちゃいまして」

「ええええええええええ」

「課長がここにいると聞いて同行して来たのです」

「・・・まあ・・・とにかく鍋でもどうだ」

「あんたが・・・上手くいくようなこと言うから・・・」

「・・・とにかく鍋でも・・・」

「僕は食べません・・・こんな時間ですよ・・・とっくに夕飯食べたとは思いませんか」

「・・・」

「いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

「僕は食べません・・・」

「失恋の傷を癒すために鍋を囲む・・・それも貴重な体験だと思わないか」

「そんなの・・・なんだか・・・帰りの会みたいだ」

「武藤くんの話か・・・」

「え」

「君が小学生の時・・・武藤君と喧嘩して・・・帰りの会で和解を強要されて・・・武藤くんは謝ったのに・・・君は非は武藤くんにあると思って・・・許す気持ちになれなかった」

「なんでそんなことを・・・」

「これ以上は・・・国家機密なので」

「国家機密?」

「だけど・・・結局、あの時、君は謝っただろう」

「そうじゃないと・・・帰りの会が終わらなかったから・・・だけど・・・僕は二度と・・・自分を曲げたくないと・・・今日まで生きて来たんだ」

「そうさ・・・そうやって後二十五年な・・・」

「また二十五年ですか」

「とにかく国家機密なので・・・」

「食べても食べなくても・・・明日はやってくる・・・だったら・・・試しに食べてみるという生き方もあるよな」

「・・・いただきます」

「どうだい」

「思ったより・・・美味いですね」

「そうさ・・・君は今・・・歴史を変えたんだ」

「歴史を・・・」

「国家機密!」

未来人を収容する別荘へ向かう途中で・・・新谷課長は薫のために肉まんを買った。

「温かいお茶もお願いします」

「・・・」

「また・・・少し縮みましたね」

「ええ・・・でも・・・今はすごく気分がいい」

「そうですか」

「私は・・・いや・・・彼は変わりましたかね」

「そうですね・・・美女と一夜お酒を飲んだだけの彼と・・・好きになった女を守るために泥棒と格闘してあげくの果てに振られた彼ではだいぶ違うでしょう」

「いい人生になるといいなあ・・・」

「まあ・・・そうなると歴史が変わっちゃって困るんですけどね」

「すみません」

「あ・・・また・・・縮んだ・・・」

「この人、別荘まで持ちますかね」

「さあ・・・未来のことなんか誰にもわからんさ」

余命三ヶ月のオバケをのせて・・・課長は公用車を走らせた。

「デスペラード/イーグルス」(1973年)よりも「うわさの男/ニルソン」(1969年)を聞きたい気分だ。

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2016年12月14日 (水)

出会って恋をして結婚して家庭を築いてお給料をいただくという・・・小賢しさについて(新垣結衣)

一種の兇悪なオチである。

これに似た問題には・・・人類が繁栄するために行う繁殖行為が・・・世界的に何故か秘匿されているのは何故か・・・というものがある。

それはどうかな・・・。

昭和47年(1972年)に通称「男女雇用機会均等法」が制定されて以来、四十四年が経過して・・・最初に抱いた疑念は今もまだ未解決なのである。

もちろん・・・主婦の家事労働に給与が発生すれば・・・課税可能であるという発想もあります。

納税という国家的搾取の目が光るのです。

つまり・・・配偶者控除の問題である。

それとは別に・・・生活は個人的問題なのかどうか・・・という視点も生じる。

働いたからには正当な報酬が欲しい。

つまり・・・働かざるもの食うべからず。

だから・・・あらゆる社会福祉は根本的に間違っている。

このような物騒な考え方も発生するわけである。

もちろん・・・このドラマの主人公は単にノイローゼ(就職活動に失敗し続け精神が破綻している)なので・・・そこまで過激ではない・・・愛し愛された結果であっても不当解雇は断じて許容できない・・・それだけなのである。

「報酬がなければベストが尽くせない」

「社会を明るくする運動に熱中しすぎて家庭が暗くなる」

「低賃金で働く奴がいるから俺の仕事がなくなる」

「感謝の気持ち・・・プライスレス」

「いかなる搾取も許すまじ」

「世界同時恋愛革命万歳!」

生活の安定を求めて社会を混乱させてどうする・・・。

結局・・・どこかで世界や時代や環境に折り合いをつけなければならない、

あやふやな世界であやふやな自分をあやふやなまま維持していく。

そういう生き方もあるでしょう。

なにしろ・・・自由と平等を権利として主張していけばいつか身動きできなくなることは明らかなので。

だが・・・これはドラマなので・・・行くとこまで行くのだな。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第10回』(TBSテレビ20161213PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・石井康晴を見た。津崎平匡(星野源)は決断を迫られていた。童貞を卒業するか否か。童貞を卒業するということとは何だろう。生殖行為をすることか。いや、正式に結婚もしていないのに未婚女性に対して射精することは慎まねばならないだろう。完全な避妊はないというが妊娠を避けるための予防を心がける必要がある。そもそも売春による童貞卒業をしなかったのは性病に対する惧れや心身ともに愛を伴う行為としてそれを為したいという願望がヒラマサにはあった。ゴム的な避妊具の有無が問題になるのはこの点である。ゴムがトレンドになる日が来るのだ。森山みくり(新垣結衣)が避妊を前提として行為に及ぼうとし、ヒラマサが避妊具を所持している可能性は低いことからあくまで添い寝で終わる可能性もあると予測しているとはヒラマサの考えのおよばないところである。しかし、ヒラマサは妻帯者としての先輩である日野秀司(藤井隆)から試供品をプレゼントされていたのは予想外だったのである。では避妊具着用による挿入行為は真の童貞卒業と言えるのだろうか。いや、最初から着装しないでとりあえず挿入するという手はある。みくりは処女ではない可能性が高くそれなりにスムーズに事が運べば挿入して筆おろしが済めば童貞卒業と言っても過言ではない。避妊具着用で膣内で射精したら確実に童貞卒業と自負していい。ヒラマサは独身男性である以上AV的な知識は充分に持っているのが一般常識の範囲でありアレをアレにアレするのがアレなのであってアレなのかアレでないのかはアレなのだ。シングルベッドでみくりと身体を密着した瞬間・・・ヒラマサの記憶は沸騰する。「イチャイチャしないのですか」とみくりが言ったので今日は「イチャイチャ記念日」である。「イチャイチャってなんでしょうか」「イチャとは婦女子のことです婦女子と婦女子がふざけ合うのがイチャイチャです。転じて本番に至る前戯のことをイチャイチャすると言うのです。婦女子のような文句ならイチャモンです」「それはかなり女性蔑視と言えますね」「すみません」「エイ」・・・みくりに指先で乳首を突かれて・・・ヒラマサの記憶は沸騰する・・・「ヒラマサさんもどうぞ」「よろしいのですか」「イチャイチャですから」「・・・」ヒラマサは恐る恐る指を突き立ててみくりの肉体のあまりの柔らかさに・・・記憶が沸騰する・・・「あ」とかわいいヨみくりかわいいヨ的な声音に・・・ヒラマサの記憶は蒸発する・・・そしてヒラマサは自分以外の誰かに触られたことのない部分を触られて・・・記憶が混濁する。

気がつくと・・・埠頭を渡る風に吹かれているヒラマサだった。

極度の緊張による勃起不全によって脱走したのである。

(こんなことになるのが怖くて・・・独身のプロとして童貞を守りぬいてきたのに・・・)

だが・・・一度は乗り越えた壁である。

(残されたみくりさんは・・・今)

そう思うことができるヒラマサの成長である。

(今は逃げるべきではない時だ)

ヒラマサは戦場に戻った。

「みくりさん・・・眠りましたか」

「置き去りにされて・・・眠れるわけありません」

「すみません」

第4世代移動通信システム対応のスマートロボット「RoBoHoN」のようにぬいぐるみ的立場でみくりに身をまかせるヒラマサだった。

人として生を受け・・・機能障害に悩まされることなく・・・愛の営みが挙行される。

「あ」

「あ」

朝である。

「おめでとうございます」

「え」

「今日は36才の誕生日ですよ」

「あ・・・」

ヒラマサは誕生日が来る度に思い出す。

(あの日・・・僕は童貞を卒業したんだ・・・)と。

超超超超いい感じ・・・なのである。

絶頂を反復し幸福に包まれるヒラマサ。

3Iシステムソリューションズ・・・では男たちがそれぞれの内的宇宙に翻弄されている。

十七歳年上の土屋百合(石田ゆり子)に恋をしてしまったらしい風見(大谷亮平)が・・・誰かのためにではなく成り行きで守り通してしまった女の操の前に立ちすくんでいる。

総合評価が40点の日野ではなく総合評価が156点のヒラマサをリストラ対象者としてピックアップした沼田(古田新太)は「申しわけなさ」に胃痛を感じていた。

日野はヒラマサの異変に気がつく。

「今日はなんか・・・いいことあった?」

「え・・・あ・・・誕生日なんです」

沼田は苦悶する。

(今日は言えない・・・誕生日が来る度にリストラされたことを思い出されるのは嫌だ)

こうして・・・ヒラマサはリストラされることを知るのが少し遅れた。

みくりは自分が「童貞を狩った」喜びを堪能する。

ヒラマサのために・・・誕生日のディナーを用意するのだった。

「男の喜び」を知ったヒラマサはイチャイチャを求めてソワソワするのだった。

みくりは・・・初心な男を弄ぶ年増女的にヒラマサを観察する。

(ヒラマサさんが可愛すぎる件について)

妄想の断崖絶壁で叫ぶみくりだった。

「新婚さんいらっしゃい」に出演する二人。

ド派手で浮かれたドレスアップをしたみくりは幸せの絶頂に恐縮する。

そして・・・今や・・・妄想さえ共有するみくり&ヒラマサなのである。

「みくりさんは・・・かわいいな」

「その言葉倍返ししますよ」

「風見さんのところのバイト・・・やめてもらえますか」

「え」

「どうしても・・・嫉妬してしまうので」

「かわいいかわいいかわいい」

みくりは風見に家政婦として退職を願い出るのだった。

「抱きたいと思ってるのにからかわないのと言われてしまいました」

「風見さんはロマンチストだから」

「ロマンのかけらのない人には求められるのですが」

「ロマンのかけらがないのかどうか・・・どうしてわかるのですか」

「・・・」

長谷川京子のおシャレ小鉢だったガッキーは後輩のおシャレ小鉢を推奨するのだった。

取引先のリンクロング社で働いているOL・五十嵐杏奈(内田理央)・・・通称・ポジティブ・モンスター・・・の内面観察に挑む風見である。

舞台は国立科学博物館の「特別展世界遺産ラスコー展~クロマニョン人の残した洞窟壁画」(20161101~20170219)である。

アルタミラ洞窟壁画と並ぶラスコー洞窟の壁画は15,000年前の後期旧石器時代のクロマニョン人によって描かれた美術品である。

しかし・・・風見・五十嵐ペアの前に・・・百合と広告代理店営業部長の田島良彦(岡田浩暉)のペアが現れるのだった。

制作者たちが競演する熟年女性向け青春は過ぎちゃったけどさ的恋愛ドラマの運命が異次元的に挿入される醍醐味である。

「どうやって運んだのかしら」

「レプリカだよ」

「二万年前の人間の気持ちが伝わってくるわね」

「・・・」

風見はどうしても・・・百合みたいな熟年女性に魅かれる設定になっているらしい。

まあ・・・一種のサービスだよな。

みくりとヒラマサだけだとお茶の間の一部心臓が危険だからな。

今回の本題のために伏線が挿入される親友の田中安恵(真野恵里菜)の八百屋「八百安」の件。

「はあ・・・」

「ため息つかないで」

幸せのため息だとは言えない小賢しいみくりだった。

「せっかくジャムを並べても誰も買いに来ないよ」

「表通りのパン屋さんにポスター貼らせてもらったらどうかな」

「パン屋にジャムがないとでも」

「ごめんなさい・・・私また・・・余計なことを」

「いや・・・気持ちが大事だよ・・・儲けたい気持ちはどんな人にもあるというのは本当なのだから・・・・」

やっさんはみくりを商店街の青年店主の集いに参加させるのだった。

「商店街活性化のための集いと言う名の飲み会だけどね」

「小学校の同級生なの」

「中学の時は学区が違って・・・」

「友達が出来ないって・・・神社で愚痴を聞いたよねえ」

「神社が憩いの場所でした」

「神社の神主が聞いたら泣くね」

「神社でファーマーズ・マーケットをしたらどうでしょう」

「青空市みたいなこと・・・」

「商店街への呼びこみが目的ですから・・・儲けは度外視で・・・」

「あんた・・・アイディアマンみたいだね・・・手伝ってくれる」

「それは・・・ボランティアということですか」

「ダメなの・・・」

「確かに・・・やりがいはあるでしょう・・・だからと言って労働力を無償で利用するのは・・・搾取ではないでしょうか」

「搾取?」

「そうです・・・やりがい搾取です」

結局・・・日給三千円で・・・商店街の広報活動アドバイザーを引きうけるみくりである。

「安い・・・」けれども「実力を発揮できる喜び」が伴うらしい。

それは・・・けして能力に見合ったものではないが報酬がある・・・「妥協」の産物なのである。

しかし・・・就職活動地獄を経験したみくりにとって譲れぬ一線だった。

一方・・・休日に沼田に呼び出されたヒラマサはリストラを勧告されるのだった。

ここから・・・就職活動に専念しているように見えるヒラマサだったが・・・自分の技術力に絶対の自信を持つヒラマサは・・・再就職にそれほど不安は覚えないらしい。すでにシャープがエントリー待ちの名乗りをあげているのだった。

とにかく・・・ヒラマサは・・・新たなる到達点に向い・・・恋愛マニュアル的な作業に没頭するのである。

「プロポーズは素敵なレストランで大作戦」である。

ヒラマサはもはや独身のプロではない。

想像するのも困難だった・・・愛する人と家庭を築くことが・・・視野に入って来たのだった。

事実婚をしている二人が心身共に愛しあっている以上・・・入籍することにどんな問題があるのだろうか・・・いやない・・・とヒラマサは常識の範囲内で考える。

もちろん・・・相手が常識を越えた存在であるとは・・・予想するのが困難な初心者なのであった。

「たまには・・・外食しませんか」

「え」

みくりは・・・ヒラマサの誕生日の時の会話を思い出す。

「来年のみくりさんの誕生日にはきちんとお祝いがしたい」

「じゃ・・・焼き鳥で・・・」

「焼き鳥でいいんですか」

「ゆとりですがなにか」

焼き鳥屋で初めてのデートに胸弾むみくりは・・・夕闇のゾウの像の前で佇むヒラマサをニヤニヤしながらうっとりと鑑賞するのだった。

しかし・・・ヒラマサが設定したはじめてのデート・コースは・・・高級レストランだった。

衣装選びに悩んだあげく・・・ドレス・コードの不一致という流れに少し凹むみくりである。

こういうタイプの人間はこういうささいな凹みが・・・ボディー・ブロウのように効いてくるものなのである。

「ほろほろ鳥にしますか・・・シャトーブリアンにしますか」

しかし・・・乙女ゲー的妄想で軌道修正をはかるみくり。

「フィレ・メダリオンで」

「みくりさんなら・・・そう言うと思っていました」

ヤッターッ・・・ヒラマサさんルートのフラグが立った~・・・なのだった。

しかし・・・繰り出されるヒラマサさんのストレート。

「指輪の用意はまだなのですが・・・僕と入籍しませんか」

「え」

「資産してみたのですが・・・入籍すると・・・様々な節税などが可能になり・・・年収にしておよそ200~400万円の増収が可能になります・・・これなら・・・将来的には一戸建ての購入も可能ですし・・・プランCとして子供の養育も可能です」

「ええ」

「僕たちには・・・そういう選択肢があるのではないかと思いました」

「えええ」

「・・・」

「どうして・・・突然・・・入籍しようと・・・」

「リストラされるのがきっかけですが・・・ああ・・・そのことは再就職が決まってからお話しようと思っていました」

リストラ・・・それはみくりにとって最大級の凶事である。

そんな大事なことを何故話してくれなかったのか。

いや・・・それよりも・・・家政婦としての雇用はどうなるのだ。

結婚したら・・・お給料がもらえないではないか。

みくりのへそは曲がった!

「それは・・・無報酬で私に家事労働をさせようということですよね」

「え」

「そういうことじゃないですか」

「みくりさんは・・・僕と結婚したくはないということでしょうか」

「・・・」

「僕のことが好きではないと・・・」

「好きですよ・・・好きに決まってるじゃないですか・・・けれど・・・好きならば愛があれば何でもできるだろうって・・・そんなことでいいんでしょうか」

「ええっ」

「それは・・・好きの搾取でありませんか・・・私、森山みくりは・・・愛情の搾取に断固として反対します」

「えええええええええええええ」

果実は搾り取られるためにあるのではないと・・・万国の労働者は立ちあがるらしい。

みくりの心の底に横たわる虐げられ赤く染まって歪んだ小賢しさが牙を剥くのだった。

それを言っちゃおしまいだよ・・・と何処かで誰かが呟いている。

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2016年12月13日 (火)

聖なる母のいない世界でユーは羊を飼う(山田涼介)

クリスチャンにとって「カインとアベル」は神だけが存在し、神の子のいない世界である。

神は聖なる父であって母ではない。

ナザレのイエスが聖なる母からこの世に降臨することにより・・・現世に神の子が現れる。

カインとアベルを生んだのはイヴだが・・・イヴの産みの苦しみはあくまで神罰によるものである。

神の命令を無視して禁断の果実を食べたから産みの苦しみを与えられたのだ。

アベルが殺され、カインが追放された時にイヴの心は描写されない。

もちろん・・・それは説明される必要もないほどの苦渋をイヴに与えたと想像することはできる。

しかし・・・「聖書」におけるイヴは神意に従って黙々とセツを出産する。

まるで奴隷のように・・・あるいは心のない機械のように。

人類が生まれ、育ち、地に満ちた時代・・・。

聖母マリアは・・・神を裏切り、楽園を追放され、兄弟で殺し合ったアダムとイヴの末裔の作った世を救うための神の子を産み落す。

ナザレのイエスは反逆者となり十字架刑に処され・・・すべての人の罪を一身に背負う犠牲となる。

そして・・・彼は復活することにより・・・神の支配の恐ろしさを一部の人類に刻み込むわけである。

神の御業が一部人類にとって悪魔の所業のようであることは紛れもないのである。

で、『カインとアベル・第9回』(フジテレビ20161212PM9~)脚本・阿相クミコ、演出・洞功二を見た。原案は「旧約聖書 創世記 カインとアベル」である。何度も繰り返すが「カインとアベル」には女性はイヴしか登場しない。そのためにドラマに登場する女性たちはすべてイヴの化身である。イヴの特殊性とは何だろうか。それは母を持たないということになるだろう。アダムもイヴも神が創造したのであって・・・母からは出産されていないのである。そのために・・・この世界には「母親」という存在が極力示されていないように思える。高田家には高田貴行社長(高嶋政伸)や桃子(南果歩)を生んだ会長の高田宗一郎(寺尾聰)の「妻」は登場しない。高田隆一(桐谷健太)と高田優(山田涼介)を生んだ貴行の「妻」も登場しない。それどころか・・・矢作梓(倉科カナ)の母親も・・・柴田ひかり(山崎紘菜)の母親も・・・小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)の母親も登場しない。そして登場する女性たちは全員「母親」ではないのである。ここまで・・・「母の存在」を排除しているのは一種の「呪い」と言えるだろう。

今回・・・唐突に女将の早希が時代劇に登場する「母親」のエピソードを紹介する。

「二人の母親が子供を綱として綱引きをする。子供は痛がる。手を離した方が本当の母親である」

いわゆる「大岡越前」の「越前裁き」的な話である。

もちろん・・・実の母親がサイコパスだったらどうするつもりだという大問題はさておき・・・つまり・・・この世界には・・・時代劇というフィクションにしか・・・母親は存在しないのである。

イヴの産んだカインとアベル以外の登場人物たちはみな「母のない子」なのだ。

この異常な世界・・・だから・・・背後から婚約者の弟を抱きしめたりして誘惑に誘惑を重ねたヒロインの梓が「愛しているのは隆一さんだけ」と平然と言ったりして記憶障害なのかと思ったりする必要はないのである。梓はダメな男に心を動かされるタイプだし、目の前にかわいいものがいたら撫でずにはいられないタイプなのである程度の話であり気にする必要はない・・・なにしろ・・・何よりもこの世界は最初から「聖書」を原案とする一種の狂気の世界なのだから。

神が唯一無二の存在であると納得できない人にとってはまさに絵空事である。

特にわが国は八百万の神々の国であるからなあ・・・。

隆一を追放した優は・・・自分が最善を尽くしたと信じている。

事前に優から・・・重要な事実を隠されたまま・・・相談された貴行は・・・「身内を公的に断罪した身内の不品行」を責めることができない。

「兄貴はどうしていますか」

「別荘にいるらしい・・・」

貴行は隆一の精神的な立ち直りを気遣う。

しかし・・・優は・・・ビジネスとプライペートの障害を除去した達成感を得ている。

社内を盗聴するような副社長は排除するべきであり、梓から仕事を奪うような結婚は阻止するべきなのである。

優は目的達成のために手段を選ばない性格であった。

だからこそ・・・社会のルールに馴染まず・・・自由奔放に生きていたのである。

博愛主義者の梓は・・・虎を檻から解き放ってしまったのである。

婚約者を会社から追いだされ、自分の結婚式を破壊されて・・・梓は優が・・・手名付けやすい愛玩動物ではなく猛獣だったことに気がついたのである。

梓は優の取締役室に呼び出される。

「結婚式のことは大変でしたね・・・高田の人間として謝罪します・・・それはそれとして・・・家庭に入る必要がなくなったので・・・仕事を続けられますよね・・・新しい事業のリーダーとして腕をふるってもらえませんか」

「私は・・・本日、退職します」

「なぜです」

「隆一さんの婚約者として彼を支えなければなりませんから」

「冗談でしょう・・・兄貴はお払い箱ですよ」

「どういう意味ですか」

「兄貴はもう・・・何一つ持っていません・・・あなたを幸せにはできない」

「私は隆一さんがいればそれで幸せです」

「・・・」

梓は葉山にある高田家の別荘を訪ねる。

少なくとも隆一にし素晴らしい別荘の使用権は残されているらしい。

隆一は鍵を開けないが梓はあきらめない。

貴行と優は・・・隆一が抜けた穴を埋めるために・・・仕分け作業を行う。

業務ファイルの中に・・・保留案件を発見する優。

それは・・・「新宿第二地区開発事業」というリスクの高い案件である。

「これはどうしますか」

「それは問題の多い案件だ・・・今は貴行の不在を埋めることが重要だ」

「しかし・・・ピンチこそチャンスではないですか」

「トラブルの際中に新しいトラブルを起こす必要はない」

「それほどのリスクがあるということは凄いリターンが期待できるということですね」

「とにかく・・・新宿第二地区には手を出すな・・・これは社長命令だ」

「・・・」

しかし・・・あらゆるものからの支配を認めない・・・傲慢な優には・・・父親の言葉に耳を傾ける能力はないのである。

アベルはアダムの農耕を手伝わず・・・牧畜をするのだ。

小料理屋「HIROSE」では女将とひかりが結婚式がとりやめになった梓を慰める。

「さすがに・・・花婿のドタキャンはひどいですよね」

「ですね」

「でもなにもかもうしなったような気分の彼は・・・あえて出席しなかったのかも」

「やさしさをはき違えているんですよね」

「まあ・・・人はいつだって自分が一番かわいいものだから」

「ですよねえ」

優はこの世界では「イヴを唆した蛇」の嫌疑がかかる投資家・黒沢幸助(竹中直人)に面会を申し込む。

「ふふふ・・・ビジネスに憑依された男の顔になったな」

「おほめに与り光栄です」

「今日は・・・何の用だ?」

「民営党の大田原代議士を紹介していただきたいのです」

「ふふふ・・・かなりドス黒い政治家だぞ」

「ドス黒いということは・・・ドス黒い力を持っているということですよね」

「よかろう・・・」

桃子は優の取締役室に顔を出す。

「兄を追いおとして良い部屋をもらったわね」

「その言い方はひどいな」

「梓はどうしているの」

「何故・・・私に聞くのですか」

「貴行にとっても痛手だったみたいね」

「兄を排除することについては父も同意のことです・・・会社にとって有益なことですから」

「そうかしら・・・貴行が反対できないように・・・上手くコトを運んだ・・・ってことじゃないの」

「すべては目的達成のための手順ですよ」

「ビジネスは一人ではできないものよ・・・信頼できる人間がいなければ・・・大きな仕事はできない」

「心得ています」

「あなた・・・他人の言葉が心に届いていないでしょう」

「ちゃんと・・・聞こえていますよ」

「そうかしら?」

隆一はようやく梓の前に顔を出す。

「大丈夫?」

「何故だ・・・どうして俺を責めない・・・俺を許せるのか?」

「家族ですもの・・・あなたを責めたって仕方ないでしょう」

「・・・」

「家族だから・・・あなたのことが心配だし・・・傷が癒えるのを待つことができるの」

「俺を・・・待っていてくれたのか」

「だって・・・私には隆一さんしかいないもの」

「こんな俺と・・・結婚してくれますか」

「もちろん」

会長の宗一郎が優を訪問する。

「仕事一筋だそうだな」

「いえ・・・まだ攻め足りません」

「お前にとって目標は何だ」

「高田を世界一のデペロッパーにすることです」

「するといいことがあるのかな」

「ええ・・・世界一の経営者として君臨できますよ」

「お前は・・・世界のトップになるつもりか」

「そうですよ・・・一位を目指さなかったら・・・何が面白いんですか・・・仕事なんて」

「お前は・・・大切なものを見失っているのじゃないか」

「大切なものってなんですか」

「たとえば・・・幸せとか・・・家族とか」

「今・・・僕は・・・幸せですよ・・・人間は目標に向って努力する時に・・・快感を感じる生き物ですから」

「・・・お前・・・恋人がいなくて寂しいんじゃないか?」

「え」

思わず・・・優はひかりを食事に誘う。

「ごめん・・・今日は友達と先約があって・・・」

ひかりが自分よりも優先する友達を持っていることに驚愕する優。

(お前はいつでも俺の味方だと言ったじゃないか)

小料理屋「HIROSE」で食事をする優。

「忙しそうね」

「なにしろ・・・ボクの肩に高田の社員の生活がかかってますからね」

「あらあら」

そこに・・・ひかりがやってくる。

「友達にドタキャンされちゃった」

「・・・」

「ねえ・・・みんな・・・最近の優がピリピリしてるって言ってるよ」

「ピリピリってなんだよ」

「ごめん・・・」

「なんで謝るんだよ」

「だって怒ってるから」

「・・・」

「一人で背負いすぎなんじゃないの・・・」と女将は苦言を呈する。

「高田にとって・・・今が正念場なんだ・・・ビッグチャンスなのに・・・手を伸ばさないなんて・・・羊たちは愚かすぎる・・・小料理屋の女将に何がわかる」

優は店を出た。

ひかりは優を追い掛ける。

「ちょっと・・・あんな言い方って」

「本当のことを言ったまでだ」

「女将さんに謝ってもう少し・・・飲んで行きましょうよ」

「別の店に行かないか・・・もっとゴージャスな店に・・・」

「私は・・・HIROSEでいいよ」

「行かないのか」

「うん」

「帰るなら車で送って行くよ」

「大丈夫・・・一人で帰れるから・・・」

ひかりは・・・優が何やら恐ろしくなっていた。

高校のクラスメートとは思えない・・・まるで悪の生徒会長になってしまったみたいだ・・・二人とも社会人だぞ。

老舗の蕎麦屋「まつや」で密会する優と大田原議員。

「先生・・・こんな場所で大丈夫ですか」

「ここは・・・私の店だよ・・・表向きは違うけれどね」

「新宿第二地区の件ですが・・・」

「ふふふ・・・あそこは反社会的勢力がからんでいるぞ・・・ヘイトするものもヘイトされるものも混在し、古き魔物の棲み家でもある。東京の魔境の中でも極めてデンジャラスな土地だぞ。一種の地上の地獄だ」

「だからこそ・・・開発出来た時のメリットは絶大です」

「なるほど・・・高田の三代目は・・・野望に燃えているのですな・・・面白い・・・お世話しましょう・・・新宿第二地区・・・あそこにソドムかゴモラを築けばよろしい・・・」

「御礼の方は」

「秘書を通じるのが一番ですよ」

「ですね」

高田総合地所株式会社の定例役員会。

「私の方から新規事業着手のご報告があります」

「なんだって」

「新宿第二地区の開発事業です」

「それには手を出すなと言ったはずだ」

「もう・・・出しちゃいました」

「優・・・」

「今さら・・・後戻りはできません・・・高田の未来に向って飛翔は始っています」

「・・・」

目尻に朱をさした優はもはやアベルというよりオーメンのダミアンである。

投資家・黒沢に「出直しの挨拶」に出向いた隆一は優の暴走を知る。

「そんなあの・・・禁断の土地に手を出すなんて」

「面白くなってきただろう・・・これで高田は揺れるぞ・・・お前がのっとることも夢じゃない」

「そんな夢を私はみていません」

「それは・・・どうかな・・・人はいつだって夢を見るものじゃないか」

隆一は優に忠告するために本社にやってきた。

「優・・・いますぐに手を引くんだ・・・あそこはリスクか大きすぎる・・・火傷するぞ」

「だからダメなんですよ・・・火傷を惧れていたらカップヌードルひとつ食べられない」

「いいか・・・あそこをまとめるためには悪魔と取引する必要がある・・・そんなことをしたらとりかえしがつかないんだぞ」

「コンプライアンスなんて・・・遵守している姿勢さえ示せば・・・いくらでも抜け道はありますよ・・・原子力発電のリスクがいかに大きいだろうと・・・人間は電気なしでは生きられない体質になっているんです」

「体質は改善すればいいじゃないか」

「温いなあ・・・いいですか・・・そこがいかに不健全な土地でも・・・いや・・・不健全であればあるほど・・・群がる人間はいるんです・・・放置しておいても・・・いつか誰かがやる。それを私がやるだけですよ」

「お前は・・・悪魔に魂を売る気か」

「何を言ってるんですか・・・私は頂上に立ちたいだけなんです。そこに山があるからです・・・それより・・・あなたこそ・・・部外者のくせに何を言ってるんです」

「俺はお前の兄だ・・・兄として弟を心配しているんだ」

「ご心配いただきありがとうございます・・・でも大丈夫ですよ・・・なにしろ・・・もうサイはふられてしまったので・・・お引き取り下さい・・・それとも警備員を呼びますか」

「・・・」

高田家に宗一郎が訪れる。

「お前の子は・・・恐ろしい奴だったな」

「ギャンブラーでした」

「仕方ない・・・我々にもそういう血が流れていたということだ」

「出る釘は打たれますか」

「打たれるな」

巨大なデペロッパー達は・・・高田の暴走を許容しなかった。

大田原議員は・・・密告され・・・贈収賄疑惑の渦中に投げ込まれた。

報道に蒼白となる・・・高田一族・・・。

東京地検特捜部は・・・高田総合地所・・・取締役・高田優をターゲットとして与えられた。

検察官たちが本社に突入する。

「高田優さん・・・贈収賄の重要参考人としてご足労いただきます」

「・・・」

神の放った正義の矢が・・・優の胸を貫こうとしていた。

あるいは・・・神の偉大な鈍器が優の脳天を砕こうとしていた。

あるいは・・・もういいぞ・・・とにかく絶対絶命の主人公なのである。

最終回直前だからな。

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2016年12月12日 (月)

あなたの唇がなかったら私の唇もないのと同じ(長澤まさみ)

知れば知るほど面白いということはある。

基本的につまらないのは知らないからだとも言える。

知りすぎて飽きてしまった・・・というのは頭の悪い証拠だ。

人間は本当に何かを知ることなどできないということがわかっていないのである。

そういう意味で・・・真田幸村ではなかったかもしれない真田信繁と実在しなかったかもしれない高梨内記の娘の五月六日の逢瀬・・・戦国ロマンで一同大爆笑の悲喜劇だったという他はない。

長澤まさみと新垣結衣という21世紀を代表する美人女優がキスを競演する師走なのである。

ドラマ「リーガル・ハイ」の視聴者はさらに・・・一種の達成感を味わっただろう。

10年前なら「セーラー服と機関銃」の頃だなあ。

大河ドラマ「真田丸」では男のロマンが炸裂するわけである。

なにしろ・・・長澤まさみをこれ以上なく冷淡にあしらったあげくに・・・最後の最後まで一途に慕ってくれるのである。

こんな都合のいい長澤まさみがあっただろうか・・・いやない・・・である。

「功名が辻」の甲賀のくのいち小りん、「天地人」の真田のくのいち初音と架空の登場人物かつ「くのいち」という長澤まさみが・・・歴史上の登場人物でありヒロインでありながら・・・結局、くのいちだったという二度あることは三度あるなのである。

ふりかえってみよう・・・天正十年(1582年)・・・高梨内記の娘「きり」はローティーンだったと思われる。

武田家滅亡後・・・幼馴染の信繫と人質の道を歩む日々。

しかし、天正十三年(1585年)・・・第一次上田合戦の頃、信繫は最初の妻・・・堀田作兵衛の妹「梅」を迎える。

天正十八年(1589年)・・・小田原征伐の頃・・・秀吉の家臣となった信繫とともに大坂城に棲むきりはすでに二十代になっている。

信繫には正室の大谷吉継の娘や側室の豊臣秀次の娘が寄り添うが・・・きりは侍女務めである。

慶長五年(1600年)・・・関ヶ原の合戦の頃には侍女のエキスパートのような感じですでに三十代である。

そして・・・慶長二十年(1615年)・・・四十代も半ば過ぎて・・・なのである。

これはロマンだよなあ・・・ロマンと言う他はないなあ・・・。

で、『真田丸・第49回』(NHK総合20161211PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はいろいろな意味で大河ドラマ史上最高のヒロインといえる高梨内記の娘きりの描き下ろしイラスト第三弾大公開でお得でございます。豊臣を滅ぼす理由を「乱世の終息」のためとも「天朝」のためともまして「日の本」のためとも言わない家康。あくまで・・・「徳川」のため・・・つまり「自分」のためであると語る奥ゆかしさ。一方、「義」に従わず「力」に従った景勝は・・・それを咎めだてはしない。ただ・・・「理想」に生きる「真田幸村」を敬愛するのみである。生き残った老将たちの苦い共感の宴・・・まさにつみあげた話の結末でございましたな。家康にとっても景勝にとっても・・・ただ滅びに殉じるばかりの真田幸村は憧れの存在なのですねえ。軟弱だった二代目もそれなりに厳しい世の道理を知るまでになった。家康の深謀遠慮は最晩年になっても冴えわたる感じです。信繫一家の辛酸は「乱取り」方向ではなく「美談」の方向に舵をきりましたが・・・まあ・・・伊達政宗をそれほど貶められない以上、許容範囲でございます。伊達家家臣の末裔としてはむしろ喜ばしいことです。やはり血は水よりも濃いのです。そして・・・ついにきりが「幸せ」に・・・。ラブコメとしても成立する・・・恐ろしい大河ドラマでございましたあああああああっ。幸村の武芸の冴えも流石でございましたよねえ。阿梅を連れ帰ったのは片倉重長ですが・・・そこはあくまでフィクションでございますからあああああっ。

Sanada49 慶長二十年(1615年)四月十日、徳川家康は名古屋に到着。十二日、徳川義直と浅野長晟の妹の婚義が行われる。十三日、大野治長は豊臣秀頼の出陣を促す真田信繁の提案を拒絶した。家康は山内忠義など四国勢に出陣を命じる。十五日、治長は長晟に調略を仕掛け拒絶された。十八日、家康が上洛。十九日、家康は大野治純に治長の見舞いを命じる。二十一日、将軍徳川秀忠が伏見城に入城。二十四日、家康は大蔵卿局、常高院などに「牢人召し放ち」「豊臣秀頼の大和郡山城への移転」という和睦条件を託す。二十五日、藤堂高虎は河内国に出陣。二十六日、水野勝成が大和国に出陣。大野治房は筒井定慶の大和郡山城を攻略。二十七日、治房は大和国から撤退。二十八日、治房は堺を焼き打ち。紀州から長晟が出陣。二十九日、浅野勢に突入した大坂方先鋒の塙直之が討ち死に。五月一日、後藤基次、真田信繁ら二万が出陣する。五日、河内国平野の野営地から基次が先鋒として道明寺に出陣。六日、小松山に布陣した基次は大和口勢の水野勝成、松平忠明、伊達政宗らに包囲殲滅される。木村重成、長宗我部盛親ら一万は河内口勢の藤堂高虎、井伊直孝を先鋒とする家康・秀忠の本軍十二万と遭遇し殲滅される。真田信繁、毛利勝永、明石全登ら一万五千は道明寺付近で伊達政宗ら大和口勢と対峙。夕刻・・・若江の敗報が両軍に伝わり、豊臣方は天王寺方面に退却。徳川軍は追撃を控えた。

「幸村様・・・家康は将軍とともに立石越えでごいす」

「仕舞ったな・・・」

道明寺方面に進んでいた真田勢は佐助の報告で停止する。

徳川軍の二つの攻め口である大和口と河内口・・・山越えを避けて家康が大和口を進むと予測した幸村の読みは外れた。

幸村は忍び騎馬を用いて大和口を南方に右回して・・・家康本陣に突入する目算が狂ったのを感じる。

「才蔵が霧隠れの秘術を用いて・・・明智忍軍を誘導・・・藤堂高虎の甲賀忍軍に打撃を与えましたが・・・多勢に無勢でごいす」

「さもありなん」

「はらめたまえ・・・きよめたまえ」

信貴山中を二万の旗本に囲まれた家康の旗印はゆっくりと西に進んでいる。

その前方に徳川秀忠の旗本衆二万五千・・・。

その前衛に藤堂高虎、榊原康勝、井伊直孝ら三万が展開する。

八尾村の長宗我部盛親の率いる明智忍軍は霧の中から藤堂高虎勢を奇襲し、犠牲を強いるが・・・たちまち大軍に包囲されて殲滅される。

北方に展開した木村重成の五千の兵も若江村付近で榊原勢と信濃大名衆に連打され・・・重成は南下したところで井伊直孝隊と遭遇し討ち死にした。

「木村重成様・・・討ち死にでごいす」

佐助の後から戦線を離脱した才蔵が血まみれの姿を見せる。

「才蔵・・・大事ないか」

「かすり傷でございまする」

「後藤又兵衛様・・・討ち死に」

道明寺方面から戻って来た根津甚八が報告する。

「伊達勢の忍び鉄砲隊の餌食となりましてございます」

「お味方はまもなく敗走してまいります」

望月六郎が続報を告げる。

幸村は作戦変更を指令する。

「鉄砲忍びを散開させよ」

先行していた忍び騎馬隊が反転して後方に下がっていく。

真田の鉄砲忍びたちは道明寺に通じる道沿いに側面展開する。

惨めに敗走する後藤勢の足軽を追って・・・早くも伊達軍の先鋒部隊が現れた。

幸村は忍び花火を打ち上げる。

それを合図に散会した真田の鉄砲忍びたちは狙撃を開始する。

喚声をあげて突入して来た伊達勢先鋒はたちまちなぎ倒され沈黙する。

「止まれええええ」

伊達前衛部隊を指揮する片倉重長の大音声が響く。

すでに夕暮れは近い。

伊達の鉄砲忍びも散開し、銃撃戦が展開した。

南方から馬蹄の響きが押し寄せる。

伊達騎馬軍団が姿を見せる。

「伊達殿・・・このまま押し切りましょうぞ」

家康の軍監である水野勝成が進言する。

「いいや・・・真田の忍びを甘く見ては痛い目に会うわ・・・戦が長引いて夜になればはあ・・・まんずおっがねえごとになるべさ」

伊達政宗は微笑んだ。

徳川軍の追撃停止の気配を察して・・・幸村は撤退を開始する。

五月六日の戦闘は・・・豊臣軍の圧倒的敗北に終わった・・・。

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2016年12月11日 (日)

討ち入り前夜の女(武井咲)

師走である。

「歴史秘話ヒストリア」では「第268回・マイベスト内蔵助 忠臣蔵ラバーズ」(NHK総合20161209)と題して「忠臣蔵」を扱っていた。

「江戸城刃傷沙汰」の後で赤穂藩の家老・大石内蔵助がいかに「討ち入り」の同志を募っていったかを示し、嫡男・主税に裏門の大将という重責を与え、「口上書」で正当な仇討ちを主張し、火の用心に務めたという「武士の忠義」の「お手本ぶり」を語っている。

内蔵助の切腹の場がイタリア大使館になっているなど・・・なかなかに情報の取捨選択がおしゃれである。

一方、「古舘トーキングヒストリー~忠臣蔵、吉良邸討ち入り完全実況~」(テレビ朝日20161210)というスペシャル番組もあり・・・大石内蔵助(緒形直人)、吉良上野介(西村雅彦)、原惣右衛門(笹野高史)といった豪華な顔ぶれで「再現ドラマ」を展開、実況中継とスタジオ解説を織り交ぜて「忠臣蔵の真相」を紹介した。

「殺人」を否定する法治国家にとって・・・「仇討ち」という行為は・・・テロリズムを連想させるわけだが・・・「命」よりも大切なものが・・・ないわけではないという「考え方」を示す意味では「忠臣蔵」が素晴らしいテキストであることは間違いない。

時に社会は「弱者」に冷たいことを正当化する。

対岸の火事は美しいスペクタクルである。

それではすまないことを人間は主張できる生き物なのである。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第11回』(NHK総合201612101810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・黛りんたろうを見た。全20回予定なので折り返し地点である。このドラマでは・・・主人公のきよ(武井咲)の存在はここまでがフィクションで・・・討ち入り以後には歴史的登場人物になっていくわけである。そういう意味では奇想天外な「忠臣蔵」の物語なのである。

元禄十五年(1702~3年)十二月二日、大石内蔵助(石丸幹二)は深川八幡の茶屋で同志を集結し、討ち入り時の綱領「人々心覚」を明らかにする。

ここに至るまでに磯貝十郎左衛門(福士誠治)や片岡源五右衛門(新納慎也)などの浅野内匠頭長矩(今井翼)側近グループ、堀部弥兵衛(笹野高史)・安兵衛(佐藤隆太)父子を中心とした江戸急進派グループの統合など・・・内蔵助の配慮はよどみなく展開する。

本所松阪の吉良家拝領屋敷の向いに位置する本所相生町の米屋こそが討ち入りの最終拠点となっていた。

米屋の主人・米屋五兵衛は赤穂浪士の一人・前原伊助(山本浩司)の仮の姿だったのである。

吉田忠左衛門(辻萬長)の指図に従って白金にある上杉家下屋敷に在住の吉良上野介義央(伊武雅刀)の正室・富子(風吹ジュン)の侍女となり・・・亡き母の名さえを名乗るきよは・・・ついに上杉綱憲(柿沢勇人)の見舞いに訪れた上野介の顔を見る機会を得た。

上野介の額には・・・刃傷沙汰の傷痕がまざまざと残っていたのである。

綱憲の看病に貢献したさえ(きよ)は富子に深く信頼されていた。

「さえは綱憲殿の命の恩人です」

「さようか・・・」

仇である上野介と富子夫人の感謝の言葉に複雑な想いを抱くさえ(きよ)だった。

仇討ちは・・・五日と知らされるさえ(きよ)・・・。

その日は吉良屋敷で茶会が催される予定であった。

しかし・・・侍女たちの話を聞いたさえ(きよ)は顔色を失う。

侍女頭(松浦佐知子)の話で五日の茶会は中止になったと言う。

「では吉良のお殿様は屋敷にお戻りにならないのですね」

年長の侍女であるしの(高田衿奈)が確認する。

(このままでは・・・吉良様不在のお屋敷に討ち入り・・・)

与えられた部屋に戻ったさえ(きよ)は葛籠に隠した「父危篤」の文を取り出す。

討ち入り前に屋敷から脱出するために用意された偽書である。

これを使えば・・・一度は屋敷から離れなければならない。

逡巡するさえ(きよ)を侍女のちさ(二宮郁)が呼びに来る。

「愛しいお方がお見えですよ」

連絡役として商家の手代を装う毛利小平太(泉澤祐希)とさえ(きよ)の仲を誤解しているちさだった。

「旦那様が・・・お変わりないかと案じられておりました」

「明神様のご加護のおかげで息災でございます・・・」

符牒を交わした小平太ときよは上杉下屋敷裏の氷川宮で落ち合う。

「五日に・・・上野介は吉良屋敷に不在でございます」

「なんと・・・」

「急ぎお知らせください」

「それで・・・上野介の顔は・・・」

「額に刀傷がございます」

「すると・・・殿の・・・」

「はい・・・」

「とにかく・・・日を改めなければならんな」

「討ち入りの日が決まりましたら・・・前日にこの木に十文字の印を願います」

「心得た・・・しかし・・・なぜ」

「せめて・・・お見送りがしとうございます」

「さようか・・・磯貝十郎左衛門様は・・・御健在だ」

「・・・」

数日が過ぎた。

さえ(きよ)は富子に所望されて琴を爪弾く。

そこへ・・・上野介が現れた。

「上杉は冷たいのう・・・大川(隅田川)を渡れと催促しよる・・・儂がこの屋敷におったら迷惑のようじゃ・・・」

「お殿様・・・さようなことを申されますな」

「いっそのこと・・・あの時、赤穂の阿呆と一緒に腹を切っておればよかったわ」

「・・・」

「お前は・・・儂の後を追う覚悟であろうが・・・もしやの時は菩提を弔ってくれ・・・後追いは許さん」

「もしやの時など・・・不吉な」

「おさえ・・・と申したな・・・富子のこと頼んだぞ・・・儂はまもなく・・・吉良の屋敷に戻るでな」

「かしこまりました」

仲陸まじい吉良の老夫婦の前で・・・心が斬り裂かれるような想いを感じるさえ(きよ)だった。

さえは吉良の女・・・しかし・・・きよは浅野の女なのである。

(これが・・・くのいちに求められる・・・非情の心か)

上野介は吉良屋敷に戻った。

赤穂浪士たちは吉良屋敷で十四日に茶会が催される情報を入手していた。

十二月十三日・・・氷川の宮の樹木に十文字の刻印が刻まれた。

(いよいよ・・・明日)

さえ(きよ)は「父危篤」の偽手紙を取り出し・・・お暇を願い出る。

「それは心配であろう・・・」

富子は見舞い金を包み、さえ(きよ)を送り出した。

「おさえちゃん・・・」

しのが呼びとめる。

「これ・・・傘・・・奥方様が・・・雪になりそうだからって・・・」

きよとなったさえは・・・富子の心使いに火で炙られるような心持がする。

そして・・・雪が降り出した。

小平太と落ち合う約束の神社で・・・きよは怪しい網笠の武士の姿を発見する。

危険を感じたきよはその場を離れ・・・市中に出た。

(密偵を連れてはどこにもいけない)

磯貝十郎左衛門に一目会いたい想いと・・・仇討ちという大事への決心がきよを迷わせる。

しかし・・・彷徨うきよの目前に小平太が近付いてくるのだった。

最後の脱盟者と呼ばれる小平太の運命の分かれ道らしい・・・。

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2016年12月10日 (土)

すべると必ず死ぬ部屋(山田孝之)

必死にしがみついても奈落に落ちる時は来るものである。

光と闇は交錯し・・・自他境界線で人間は彷徨う。

素晴らしいものが待っていると・・・信じて歩んで来た道が地獄に続いていることはよくあることだ。

誰かを振りまわしている人も別の誰かに振りまわされている。

だが善の道を歩むものは善に。

悪の道を歩むものは悪に。

たどりついてもらいたいものだなあ。

そうであってほしいものだなあ。

そうでもなければ・・・やってられんからなあ。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第10回』(テレビ東京201612100018~)脚本・演出・福田雄一を見た。前回に続き恒例の前座コーナー・・・盗賊との遭遇はなしである。初期の目的である七つの玉を収集することが達成され・・・物語は佳境に進んでいく。前回・・・勇者ヨシヒコ(山田孝之)の妹・ヒサ(岡本あずさ)が変化の杖で何に変身したのかは隠されているが・・・そんなことは忘れて続きを見ているとそれなりに続いているので驚くのである。まるで連続ドラマのようではないか・・・連続ドラマだった。

爆弾岩は力をためていた・・・。

七つの玉の不思議な力に導かれ・・・魔王の城が見える場所までやってきたヨシヒコとと賢者のメレブ(ムロツヨシ)、魔法使いのムラサキ(木南晴夏)、バトルマスターのダンジョー(宅麻伸)・・・。

「不気味だ・・・」

雷光閃き、暗雲立ち込める前途である。

仏(佐藤二朗)が登場し、ヨシヒコはウルトラアイを装着。

モロボシダンがウルトラセブンに変身するサウンド・エフェクトにつっこむ仏・・・。

「最後はアレに変身するんじゃなかろうな・・・魔王も巨大化しちゃったりして・・・」

「本題に入れよ」

「この仏八号に無礼な」

「四号から降格したのか」

「降格じゃないもん・・・うえっ」

「泣かすなよ」

「七つの玉が揃ったので・・・この後、シェンロンという龍が出てきて・・・三つの願いを叶えてもらい・・・それからベジータとかフリーザとかいろいろと出てきます・・・嘘です」

「・・・尺(制限時間)がないんだよ」

「尺、尺って釈由美子かっ」

「・・・」

「魔王の城には五千メートルの直角の断崖絶壁がそそり立っていて魔法の絨毯では越えられません・・・そこで・・・空飛ぶ城を飛ばす必要があります」

「天空の城が飛ぶのか」

「今は飛びません」

「どうすんだよ・・・」

「とにかく・・・行って・・・彼が導きます」

的確な指示で行きたい場所に案内してくれる外国人(マックス・パンサー)が現れた!

「コチラデ~ス」

「総合ナビゲーションサービスのNAVITIMEのように的確だな」

「最初からこの人にナビしてもらいたかった・・・」

一行は太陽公園(姫路)風の着地中の空飛ぶ城に到着した。

出迎えたのは天空城の管理人である「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」のプサンのような天空人プサール(小堺一機)である。

「私たちは空飛ぶ城に乗って魔王の城に行かねばならないのです」

「それではあなたは・・・勇者ヨシヒコ様・・・」

「私をご存じですか・・・」

「そりゃもう・・・こちらのお部屋へどうぞ・・・」

第一の間に案内されるヨシヒコたち・・・。

そこにはお茶とお菓子が用意され・・・カズーキ(小堺一機)が出迎える。

変なライオンくんもいる。

タイガーのタイちゃんらしい・・・。

「さあ・・・ごきげんよう的なサイコロをふってください」

「サイコロを・・・」

「何がでるかな・・・何がでるかな」

「ハードデイズ ラグ/ 薬師丸ひろ子」(1986年)のアウトロのようなBGM・・・。

ヨシヒコが大きなサイコロをふって出た目は「史上最強に笑える話」だった。

「無理です」

「よし・・・お前が話した後で司会の人にゲラをかけよう」

「ダンジョーさんがモンスターを倒した時におならをしました」

「・・・」

「ゲラ!」

しかし・・・呪文にかかったのはヨシヒコだった。

「あははははははははははは」

突然、司会の人は師匠の萩本欽一的な人になるのだった。

「ダメだよお・・・つまらない話をして自分で笑ったら・・・なんでそうなるの!」

・・・気がつくといつもの教会である。

「全滅してしまうとは情けない」

神父(鎌倉太郎)に告げられ唇を噛みしめるヨシヒコ。

「どうする?」

「蘇生をお願いします」

「レベルあがってるから・・・ダンジョーは三万ゴールド、ムラサキは一万千ゴールド・・・メレブはハチ・・・タダでいいや」

「そんなお金はありません」

「じゃ・・・稼いでこいや」

経験値をくれるはぐれメタルを無視してゴールドマンをまとめ斬りするヨシヒコ。

大量のゴールドマン発注で予算を消費したな・・・。

仲間たちは生き返った。

「即死の呪文・・・ザラキだったな・・・」

「一体何故・・・」

「とにかくもう一度」

第二の間に入る一行。

「チューボーですよ!」のようなセットに巨匠・堺正章のようなマチャンキ(小堺一機)がいる。

「さあ・・・ムラサキさんに作ってもらうのは・・・鮭のムニエルです」

「サケノムニエル・・・」

「日曜午後お昼過ぎ・・・噂の!東京マガジン・・・やってTRY」

「無理だ・・・ムラサキにムニエルは無理だ」

「鮭がどれかもしらないぞ」

「目で救いを求めている」

「ちがう・・・それは金目鯛」

「それだ・・・それが鮭だ」

鮭をまるごとフライパンにぶち込むムラサキ。

「焼いて参りましょう」

「焼けてないぞ」

「覚えたての呪文をつかいます」

「ほほう・・・」

「ベギラマ」

黒焦げになる鮭の焼死体・・・。

「今日のお料理・・・星ゼロです」

ザラキである。

神父は袋とじのヤバいヌードを見ていた。

第三の間は・・・閉店間際のラーメン屋だった。

ラーメン屋の伊佐山ひろ子のような店員(川面千晶)はなかなか食べ終わらない客に苛立つ。

「白い指の戯れ・・・」

「エロスは甘き香り・・・」

「広大な大地に住んでそうな父親と・・・男の子と女の子か・・・」

「ここは北の国からでしょうか・・・」

田中邦衛の黒板五郎のような男(小堺一機)は幼い兄・純(高木星来)妹・蛍(坂元杏瞳)と食事をしている。

「ああ・・・何故か・・・ラーメンの器を下げたくなってきました」

「ダメだ・・・ヨシヒコ・・・罠だ・・・叱られるぞ」

「身体が勝手に」

子供たちのラーメンの器に手をかけるヨシヒコ。

「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」

ザラキである。

蘇生である。

「ダメだ・・・エンドレスだよ」

「しかし・・・呪文を覚えた」

「どんな呪文ですか」

「モスキテ・・・呪文をかけられたものは耳元に蚊が飛んでいるような感じになってしまう」

「素晴らしい」

「アホか・・・」

「ムネタイラさんに・・・千点・・・いや全部かけます」

「役に立たないんだよ」

「モスキテ」

ムラサキは耳元に蚊が飛んでいるエチュードに突入した!

蚊を叩く音が「星のフラメンコ」を連想させ・・・ダンジョーが・・・。

「好きなんだけど~♪」

ヨシヒコたちはプサールを問い詰めた。

「一体・・・何故・・・邪魔をするのだ」

「ザラキで全滅しても教会で生き返ることができますが・・・魔王は存在そのものを消すことが出来るといいます・・・兄さまが・・・もしも存在そのものを消されてしまったら」

「お前・・・ヒサか」

ヒサがカプールに変身していたのだった。

そこで本物のプサールが登場。

「妹さんに頼まれまして」

「ヒサ・・・私は必ず帰ってくる・・・だから・・・カボイの村で待っていてくれ」

「兄さま・・・」

「すべて・・・あなたのものまねでしたか・・・」

「はい」とカプール・・・。

「ザラキもあなたが・・・」

「はい・・・天空人なので」

「・・・私たちは魔王の城へ行かねばなりません」

「その祭壇の器に・・・七つの玉をセットしてください」

昭和特撮シリーズのような操縦室セットに・・・供えられるオーブ。

すると・・・天空の城はH-2Bロケットのように上昇を開始する。

「打ち上げ成功」

天空城は魔王の城のフィールドに着陸した。

そこは決戦の舞台・・・。

ヨシヒコ一行を送り届けた天空城は去って行った・・・。

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2016年12月 9日 (金)

警視庁 ナシゴレン課(島崎遥香)そんな目で私を見ないで(猫背椿)

木曜日の谷間である。

「黒い十人の女」「勇者ヨシヒコ」と深夜に強力なコンテンツがあったために・・・レギュラー・レビューできなかったが・・・最後まで候補に残っていたのがコレである。

アイドル女優を実力派のバイプレーヤーで囲んで・・・それなりに作り込んであるワンシチュエーションコメディーでしかも一応ミステリなのである。

のんびりと見るには秀逸なコンテンツだよな。

なんてったってデカ長(ぱるること島崎遥香)が抜群に可愛いのだった。

2016年の秋は・・・みくり(新垣結衣)、すみれ(吉根京子)、和藤奏子(土屋太鳳)、あずみ(小島瑠璃子)、ムラサキ(木南晴夏)、久未(成海璃子)と可愛い登場人物の豊作のシーズンだったんだな・・・。

作品そのものが素晴らしくなくても・・・可愛い女優が出ていれば・・・それだけで素晴らしいと言えるよな。

おいおいおい・・・。

で、『警視庁 ナシゴレン課・第1話~』(テレビ朝日201610190015~)原作・秋元康、脚本・徳尾浩司(他)、演出・古厩智之(他)である。ナシゴレンとはインドネシア風チャーハンのことである。目玉焼きと一緒に食べたい。言葉遊びとして「問題なしゴレン」と言ったりする。対となる言葉は「問題あるマジロ」である。初回演出家はケータイ刑事銭形シリーズの監督なので・・・チープな方向性はそういう感じだが・・・ワンシチュエーションという縛りのためにより洗練された感じに仕上がっていると考える。

謎の部署である警視庁ナシゴレン課に・・・交番勤務から所轄の生活安全課を経て・・・本庁の刑事として配属された入庁25年目の石鍋幹太(古田新太)・・・刑事として現場での地道な捜査に励もうと意気込むが・・・そういう肉体労働は捜査一課の仕事なのである。

デカ長の風早恭子(島崎遥香)は人並み外れた洞察力で・・・刑事部屋から一歩も出ずに事件を解決してしまうのだった。

「捜査しないで・・・どうするんです」

「ワイドショーをみれば大体わかる」

「ワイドスクランブル」の橋本大二郎と大下容子が事件の概要を伝えるのである。

ナシゴレン課のメンバーは・・・タワーマンションの四階に家族と暮らす課長補佐の伊吹警部(勝村政信)・・・。

人当たりのいい鳥海琴美警部補(猫背椿)・・・。

ライオン丸Gだった高見警部補(波岡一喜)・・・。

牙狼〈GARO〉だった浅羽ショウ巡査部長(中山麻聖)・・・。

悪球打ちの嘱託員・小野田・元警部(越村公一)・・・。

層々たる顔ぶれである。

脚本が些少破綻していても・・・なんとかなってしまうメンバーなんだな。

ラブホテルにおけるワカメ風呂殺人事件では・・・男性従業員のおばさん的おじさんである森野晶(金谷マサヨシ)がタイプであると断言する小野田元警部なのである。

捜査一課の取調が難航し、参考人の控室にされてしまうナシゴレン課であったが・・・被害者の妻・マサコ(村岡希美)、被害者の愛人・イノマタマリコ(小澤真利奈)をさしおいて従業員・アキラを犯人と断定するデカ長。

「なんで・・・私が・・・」

「犯人は・・・犯行後・・・カラオケで残酷な天使のテーゼをキーを二度あげて歌っている・・・それはおばさんおじさんのためのキーだから」

犯人が確定すると・・・お決まりで劇中歌の「ナシゴレン道玄坂」を歌い出す一同なのである。

ナシゴレン課は一瞬でカラオケパブになるのだった。

歌詞は不倫関係の匂うムード歌謡だが・・・犯人の言いわけを許さない圧力のようなものを発生させるらしい。

毎回・・・それなりに趣向が凝らされたダンスと歌唱になり・・・なんとなく一部お茶の間は郷愁に誘われるのである。

ああ・・・あんな時代もあったよなあ・・・なのである。

タワーマンション殺人事件では・・・バラバラ殺人に発展するが・・・マネキン人形の解体ショーなど・・・ブラックで悪趣味な展開もあり・・・細目と仇名された石鍋刑事の三度目の妻のものまねをデカ長がして「日本の男性、口はチョコレート、心は冷蔵庫、アソコはパチンコ、すぐ出したがる」などと口走る邪悪なセクハラサービスもあったりするわけである。

「踊る大捜査線」のパロディーで石鍋刑事が爆弾付きジャンバーを着てしまったり、「明智少年の事件簿」では明智少年が殺害されてしまい相方のタイコモチ刑事(池田鉄洋)が途方にくれたりもするのだった。

推理に行き詰ると出前を取るのが定番だが・・・何故か・・・デカ長はまずい狢蕎麦を課員に強制し・・・自分はカツ丼などの別メニューを注文する。

課員は・・・みんな・・・デカ長の実力を敬愛しているのだが・・・小野田元警部は・・・「デカ長はタイプではない」と断言し・・・その時のデカ長のしょげた感じがアレである。

小野田元警部は・・・少し耄碌していて・・・振り込め詐欺の電話にまんまと騙されたりするのである。

第8話「ナシゴレン鉄道殺人事件」では孫のためのクリスマスプレゼントの鉄道玩具(プラレールセット)を検証のためと称して課員に使用されてしまい・・・小野田元警部は「それじゃ・・・中古品じゃないか」と嘆く。

小野田元警部だけでもこの面白さ・・・もちろんその他の名脇役たちの小技も満載なのだ。

時刻表ミステリ的二時間サスペンスを展開した後で・・・カツラがずれるほどの上昇気流を生じさせたヘリコプターオチである。

そして・・・「ナシゴレン道玄坂」では輪になって電車ごっこ・・・。

「シュッポッポー」なのである。

かわわいいぞ、デカ長かわいいぞ・・・。

まあ・・・本当にただそれだけなのです。

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ハードナッツ! 〜数学girlの恋する事件簿〜

ドS刑事

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2016年12月 8日 (木)

リテイク 時をかける想い(筒井道隆)タイムトラベルは片道切符ですか(成海璃子)

まいどお馴染みのタイムトラベルものである。

水曜日の谷間は終了して・・・コレになる予定だ。

なにしろ・・・「黒い十人の女」が終わったので木曜日が短い谷間になるのだ。

コレは全8回予定なので越年である。

「ゆく年くる年」かっ。

そういう感覚が緩くなってんだよな。

まあ・・・昔は何年も続くドラマがあったし・・・昼帯はそういう「古き時代のコンテンツ」だからな。

だが・・・成海璃子が毎週視聴できるというのは貴重だからな。

そこかっ。

で、『リテイク 時をかける想い・第1回』(フジテレビ201612032340~)脚本・橋本博行、演出・植田尚を見た。時間旅行はファンタジーである。なぜなら・・・人類はまだ時間を科学的に理解はしていないからである。そもそも時間というものを理解できる日が来るのかどうかも不明である。さらにいえば・・・「時間」が実在しているかどうかも未知なのである。人々はただなんとなく時間というものが存在しているような気がしているだけなのだ。ただ・・・人間は昨日には戻れないし、今日が明日になることはないと信じている。その信念に・・・一石を投じる物語が・・・時間を旅するということなのである。

この世界では・・・2020年に・・・タイムマシンが発明される。

それがどのようなシステムなのかは明らかではないが・・・2020年以後の未来から・・・時間旅行者が現れることは2016年の日本政府の知るところとなっている。

それがどのような経緯なのか明らかではないが・・・タイムトラベラーが現代に影響をおよぼすのを未然にくい止めるために法務省には戸籍監理課が設定されている。

つまり・・・2022年にタイムマシンが発明されることは・・・一般市民には「秘密」なのである。

2016年という時代にそんな秘密が厳守されるかどうかは・・・「謎」だが・・・ドラマでは・・・「タイムトラベルの実用化」を知る現代人は極めて限定的なのである。

戸籍監理課課長は新谷真治(筒井道隆)・・・。二年前のとある冤罪事件の被害者で・・・無実と判明したのに家族も仕事も失ってしまった元官僚である。

那須野薫(成海璃子)は2015年4月に新設された戸籍管理課の正規職員である。

他に戸籍管理課にはパートタイマーとしてパウエルまさ子(浅野温子)が在籍している。

・・・以上である。

そんなメンバーで日本全土に出現する可能性のあるタイムトラベラーに対処できるとは思えないが・・・ドラマなのである。

戸籍管理課を新設したのは衆議院議員で法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)である。

「未来人に危機感」を感じているらしいが・・・すでに未来人は何かをしでかしているということなのだろう。

戸籍管理課の任務は・・・現代に到着直後の未来人を保護して「別荘」に収監することである。

そんな困難な仕事を・・・非武装の男女二人組に実行可能とは思えないが・・・ドラマなのである。

パートのまさ子は国東政務官とは大学時代の同級生らしく・・・タイムトラベルについてのエキスパートらしい。

このドラマでは・・・タイムトラベルをリテイク(撮り直し)と呼んでいる。

リテイクすると服は漂白される。

リテイク現場には天気雨が発生する。

リテイクしたものを未来に送り返すことは技術的に不可能。

リテイクしたものが基本的に白い服装なので・・・リテイク業界では「オバケ」と呼称する。

とにかく・・・そういう設定である。

「府中にオバケ雨(天気雨)が発生」するのはよくあることなので・・・新谷課長と薫は府中競馬場に出動する。

全身漂泊されたオバケが高額配当を獲得していれば・・・それは未来人なのである。

「すみません・・・お時間よろしいですか」

「なんだお前ら」

オバケである坪井信彦(笠原秀幸)は戸籍監理課を知らないらしい。

2020年以後も・・・一般人は・・・戸籍管理課の存在を知らないのだろう。

「ドラゴンズの白い帽子は・・・売ってませんよね」

「・・・」

「未発行の競馬四季報とか・・・未発行のニュース年鑑とかお持ちなんですよねえ」

「・・・」

「安心してください・・・あなたを保護するだけですから」

「保護?」

「だってお困りでしょう・・・戸籍がないわけですから」

「そんなもの金さえあれば闇でいくらでも入手できるだろう」

「困るんですよねえ・・・そういう違法行為をされては・・・」

「お前たち・・・タイムパトロールか」

「いえ・・・戸籍管理課です」

「ち」

オバケは逃走した。

正常な時間から逃走してきた人間が・・・たやすく管理できるわけがないのである。

「あ・・・お待ちください」

しかし・・・オバケの逃げ足は速く・・・保護は失敗に終わるのだった。

法務大臣政務官秘書の大西史子(おのののか)は新谷課長を呼び出す。

「政務官とは特別な関係なのですか」

「いえ・・・なぜそう思うのですか」

「いえ・・・課長クラスが政務官と頻繁に会うのは珍しいので・・・」

ののののの政務官秘書も・・・オバケの秘密を知らないらしい。

ドラマだからな。

政務官はスマイリーと仇名されるほど温和な人柄である。

「困るな・・・いつもいつもオバケに逃げられちゃ」

「申しわけありません・・・しかし人手不足で」

「増員は無理だよ・・・人の口に戸は立てられないからねえ」

いや・・・システムとして無理があるのは明らかだが・・・ドラマだからな。

新たなオバケ疑惑が発生する。

14歳の少年・海斗(若山耀人)がナイフで刺され重傷を負った。

目撃証言や現場に残された指紋などから・・・京塚大輔(丸山智己)が容疑者として逮捕される。

しかし・・・京塚の妻(角島美緒)は犯行時間に夫は娘と家族三人で公園でピクニックをしていたというのである。

新谷課長は離婚した妻の実弟で・・・薫に恋愛感情を抱く警視庁捜査一課の柳井研二(敦士)から情報を収集し・・・京塚大輔のオバケによる犯行を疑う。

「しかし・・・わざわざ・・・未来から・・・男子中学生を刺しにくるなんて・・・」

「未来で・・・被害者が・・・殺されるようなことをしでかしたんじゃないかしら・・・」

「京塚夫人の話では・・・御主人は・・・家族思いです・・・家族を捨てて過去に来るなんて」

「未来で家族がいなくなっていたとしたら・・・」

「被害者が・・・未来で京塚氏から家族を奪うようなことをするということですか」

「あるいは・・・もう未来は変わっているのかもしれないわ・・・」

「どういうことですか」

「素晴らしいインターネットの世界で・・・海斗くんは・・・少し病的な書き込みをしているの」

「ハッキングしたんですか」

「しました」

「病的な書き込みとは・・・」

「死ね死ね死ね・・・みたいなことよ」

「まあ・・・よくある話ですねえ」

「それから・・・彼は猫の死骸をアップしているの」

「あらあら・・・」

「ついでに・・・京塚一家がピクニックしていた公園は・・・彼の通学路なのよ」

「ターゲットは・・・京塚氏の娘ですね・・・猫の次は幼女ルートです」

「どんなルートだよ」

「つまり・・・海斗くんが・・・幼女に悪戯する前に幼女の父親が刺した・・・つまり・・・もう歴史は書き変わったということですね」

「とにかく・・・オバケの京塚氏が・・・現代の家族を見に来る可能性はある」

課長と薫は張り込みを開始する。

京塚夫人と娘は・・・京塚氏が家族でピクニックをしていた時の目撃者探しを公園でしていた。

現れたのは海斗少年だった。

海斗少年は京塚氏の幼い娘に接近していく。

「うわあ・・・どうしますか」

「見守るしかない・・・彼は今のところ・・・傷害事件の被害者少年なのだ」

そこへ・・・オバケの京塚氏が現れ・・・少年を引き摺り倒す。

「また・・・おっさんか」と少年。

「警告したはずだ・・・」

「誰か・・・助けて~」

「やはり・・・殺すしかないのか」

「ちょっと待った」と割り込む二人だった。

「え」

「未来で何が起こったのですか」と薫。

「なんだ・・・あんたたち・・・」

「しがない公務員です」と課長。

「どうせ信じてはもらえないだろうが・・・こいつがうちの娘を殺すんだよ」

「あはは・・・おっさん・・・頭おかしいのか」

「それだけじゃない・・・こいつは・・・暮れまでに一人・・・来年の一月に二人殺して・・・ようやく逮捕されるんだ」

「・・・」

「うちの娘は・・・この公園で行方不明になって翌朝・・・ゴミ箱で見つかった・・・変わり果てた娘の姿を見た時の俺の気持ちがわかるか」

「とにかく・・・少年なので・・・彼は死刑にはなりませんよね」

「俺がタイムマシンの存在を知った時・・・こいつはすでに自由の身になっていたよ」

「そうなると・・・彼を殺されるのは困るんですよね・・・歴史が大幅に更新されてしまいます」

「じゃあ・・・うちの娘が殺されてもいいのかよ」

「あなたの娘さんはもう死んでいるんです。あそこにいるのは・・・こっちのあなたの娘です。こっちのあなたは・・・あなたの犯した罪で誤認逮捕されています」

「・・・」

「どうしますか・・・」と薫。

「超法規的措置だな」と課長。

「ですね」

「こっちの警察に話を通して・・・誤認逮捕は解除・・・海斗くんにはカウンセリングを受けてもらう」

「そんなことで・・・こいつの性格が矯正できるのか」とオバケ。

「少なくとも・・・こっちのあなたの娘やその他の被害者の命は助かります。それだけでもどれだけ歴史が変わってしまうことか・・・もちろん・・・どう変わったか・・・誰にもわからないんですけどね」

「・・・俺は・・・どうなる」

「あなたにはしかるべき施設が用意されています」

「施設」

「オバケのための別荘です」

「つまり・・・未来人のための監獄か・・・」

「すみません・・・あなたは・・・ここにいてはいけない人なので・・・」

「そんな・・・管理体制がいつまでも続くと思うのか」

「わかりません・・・未来のことなんて誰にもわからない・・・」

「ふふふ・・・未来人の前でおかしなことを言うな」

「そうですよ・・・この世界はおかしなものなのですからね・・・あなたが歴史を変えてしまった以上・・・あなたにも未来のことなんかわからない」

「2011年には・・・たくさん来たはずだけど」

「この世界にはそんなに来ていませんよ・・・」

「それは・・・君たちが知らないだけなんじゃないのかな」

「そうかもしれません・・・しかし・・・知らないことはどうしようもないですから」

「一体・・・お前ら・・・何を言ってんだ」と少年。

「だまれ・・・小童」

「君はね・・・たっくさんカウンセリング受けることになるわよ・・・たっっくさん・・・たっっっくさん・・・たっっっっくさんね」

「大切なことだから四回言うのか・・・ぺっぴんさんか」

どこか・・・人里離れた山奥・・・。

二人はオバケを別荘に送り届けた。

これはそういう世界の物語らしい。

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2016年12月 7日 (水)

毎日が火曜日ならいいのにね(新垣結衣)

主人公の伯母が勤務する外資系の化粧品会社「ゴダールジャパン」(フィクション)の商品名「Épinal(エピナル)」はフランスのヴォージュ県の県庁所在地と同名である。

ヴォージュ県はジャンヌ・ダルクの出生地であり、広告のイメージは「戦う女」なのであろう。

伯母の年齢設定は(49)であり、彼女が五才の頃、昭和47年(1972年)に通称「男女雇用機会均等法」が制定されている。

男性が会社に終身雇用され、女性が妻として永久就職する時代の崩壊が始っていたわけである。

専業主婦と働く女性の綱引きは現在に至るまで続いているのだが・・・彼女は「企業戦士」として戦い続けてきたわけである。

そして、彼女の姪である主人公は・・・専業主婦として雇用されるという「逆転の発想」を遂行中なのである。

それはまた「専業主婦」と「家政婦」の境界線に立っていることも意味する。

「自由になる・・・美しくなる・・・エピナル」

主人公の伯母にとって化粧品は「女性の解放」の象徴なのであって「異性に媚を売るためのもの」ではない。

彼女にとってそれは譲れない一線なのである。

だが・・・ジャンヌ・ダルクは異端審査にかけられ火刑に処せられてその生涯を閉じるのだった。

で、『逃げるは恥だが役に立つ・第9回』(TBSテレビ20161206PM10~)原作・海野つなみ、脚本・野木亜紀子、演出・金子文紀を見た。ついに16.9%に達した視聴率である。「恋愛ドラマ」は死なずなのである。後は20%に到達するかどうかだな。もちろん・・・ものすごく変化球ではあるが・・・「初夜」ともいうべき事態に突入する次回・・・お茶の間の反応はどんなもんだろうかと妄想するとワクワクします。

森山みくり(新垣結衣)の実家に到着した津崎平匡(星野源)だったが・・・みくりは303号室に到着しているというすれ違いを演じる二人。

みくりの父・栃男(宇梶剛士)にハグされたヒラマサはみくりの実家で一夜を過ごす。

《明日帰ります》

しかし・・・ヒラマサの勤務先「3Iシステムソリューションズ」でシステム障害が発生し、ヒラマサは連日の徹夜作業を余儀なくされるのだった。

《今日は帰ります》

みくりはヒラマサを待ちわびた。

《今日こそは絶対に帰ります》

深夜二時・・・ようやく帰宅したヒラマサは・・・部屋に灯る照明を確認して笑みを漏らす。

しかし・・・待ちくたびれたみくりはソファで眠りこんでいた。

みくりの髪をそっとなでるヒラマサ。

翌朝・・・みくりが目覚める前にヒラマサは早朝出勤していた。

みくりの作った夕食を弁当にした・・・とヒラマサからの置き手紙が残っている。

逢えない時間が二人の愛を育てるのだった。

「早いですね」

本人たち以上にみくりとヒラマサの関係を洞察する風見(大谷亮平)がヒラマサに声をかける。

「今日は定時で帰りたいので」

「この間は言いすぎました・・・正直に言うと・・・僕はみくりさんが好きなのです・・・ヒラマサさんのそれとは違うかもしれませんが・・・そしてヒラマサさんも好きなのです」

「私はあなたに大切なことを教えてもらいました」

「・・・ちょっとした作り話ですよ」

心が通い合うヒラマサと風見だった。

みくりは屋外キャンペーン中の土屋百合(石田ゆり子)と遭遇する。

百合の部下で帰国子女の堀内柚(山賀琴子)や、百合によるセクハラ被害者疑惑ののあった梅原ナツキ(成田凌)の働く姿に・・・憧れを感じるみくりなのである。

「どうしたの?」

「楽しそうに働いているなあ・・・と思って」

「あなたも働けばいいじゃない」

「え」

「子供がいるわけじゃないし」

専業主婦を偽装して家政婦として給料をもらっているとは言えないみくりだった。

世間から見れば無職のみくりだが・・・主婦という仕事に就業しているのだった。

「主婦・・・」

妄想のなんでも鑑定団で「主婦」を鑑定する和装のみくりは「プライス」を「3041000円」とはじき出すのだった。

一方・・・大学時代のゼミの同期で広告代理店営業部長の田島良彦(岡田浩暉)と再会した百合は・・・田島が離婚して・・・幼い子供の二人暮らしであるという「クレイマークレイマー」的事情を知るのである。

「言ってくれれば話くらい聞いたのに」

「じゃあ・・・今度・・・健全なデートをしてくれ」

「・・・」

バー「山」で大人の会話をする百合と風見。

「デートに誘われちゃった・・・彼と再婚したら・・・この年でも子供ができるんだなあって」

「子供が欲しいのですか」

「私にはみくりがいたからねえ・・・無責任にかわいいところだけいただきで・・・」

「・・・」

「でもそれって・・・結局・・・本当じゃないのよねえ」

「しかし・・・みくりさんは百合さんからの影響を受けているし、百合さんもみくりさんから影響を受けたでしょう」

「・・・」

「人間関係なんて・・・そういうものじゃないかな」

二人の会話をマスターの山さん(古舘寛治)は目を細めて聞くのだった。

バグの嵐は過ぎ去った。

ついに・・・ヒラマサは帰宅した。

「疲れた・・・」

「お疲れ様でした」

二人はどちらからともなくハグをするのだった。

長いハグである。

みくりは夕食を焦がした。

「すみません・・・今日こそは美味しいものをと思ったんですが」

「ハグで癒されましたから」

「今日は火曜日です・・・さっきのは・・・先週分でしたから・・・今日の分は食後に」

「貯金しておくというのはどうでしょう」

「え」

「ハグの前借りがあるんだから・・・ハグの貯金もありじゃないかと」

「ええ」

「そうすれば・・・みくりさんがしたいと思った時にできますし・・・」

「えええ」

「システムを再構築する必要がありますね」

いつでもハグしていいのだと・・・言えないみくりである。

大胆な提案で深い傷を負ったばかりなのである。

お互いが好意を抱きながら・・・「好き」という意志表示ができない二人は・・・またもや「モヤモヤ」の暗礁に乗り上げるのである。

そして・・・ヒラマサの勤務先でも「経営危機問題」が浮上していた。

情報技術職の管理者である沼田(古田新太)は神原社長(横田栄司)からリストラ対象者のピックアップを命じられていた。

部下たちの資産状況をチェックする沼田である。

「使えない順でいいのじゃないですか」

「そんなに簡単なものじゃない」

愛妻家の日野秀司(藤井隆)は残り二十五年の住宅ローンを抱えているが総合評価は40点なのである。

再就職だって難しいに決まっているのだ。

ヒラマサの総合評価は156点だが・・・沼田は・・・ヒラマサの結婚が擬装であることを知ってしまうのだった。

ドラマでは「恋」が上手くいくと「仕事」に問題が生じるのが定番なのである。

親友の田中安恵(真野恵里菜)の八百屋に愚痴りにきたみくり。

「なにしろ・・・面倒くさい人なのよ」

「まだ・・・好きって言われたことないの」

「なにしろ・・・恋人がいたことのない人だから・・・恋人みたいな人がいるっていうことに舞い上がっていて・・・そういう人なら誰でもいいのかもって」

「それはあるね」

「えええ」

みくりの母親・桜(富田靖子)のレシピによる手作りジャムが「八百安」の店頭に並ぶ。

「御両親が食品衛生管理者の資格があってよかったわね」

「私なんか無資格だからね」

「でも結婚前は公務員だったでしょう」

「あれは親のコネで臨時で雇われていただけだから」

「知らなかった」

「出来ちゃった結婚した頃・・・みくり、私のこと見下してたでしょう」

「え」

「あんたの人生それでいいの・・・的な」

「ごめん・・・悪かった・・・今では主婦の大変さがわかる・・・私はお給料もらってるから家事をしっかりしようと思うけど・・・」

「そうよ・・・ただ働きで・・・家事に育児を完璧こなすのは・・・半端じゃないのよ」

「ですね」

なにしろ・・・年収三百万円の仕事を無料奉仕しているわけである。

その頃・・・日野から「子作り」について問われたヒラマサは赤面していた。

「雇用主」が恋人だったら・・・というシステムの再構築に挑むヒラマサ。

みくりの価値を算定しようとして・・・思わず・・・「みくりさんは好きでもない人とそういうことをいたせる女性」と口にだしてしまう・・・。

そして・・・お茶を持ってきたみくりはその言葉だけを聞いてしまうのだった。

ヒラマサは恋人としての自分の価値は「ゼロ」と算定するが・・・みくりは「軽い女と見られている」と落ち込むのだった。

『つつましい 女だったら よかったの』

季語はないが五七五でまとめるみくり。

「嘆きの書」をヒラマサに見つかりそうになってあわてて破くみくり・・・。

「やぶりやす~い・・・この紙~・・・すごいやぶれるー」

やぶれかぶれでやさぐれるみくりだった。

「好き」とは言えずにまもなく五十になる百合は・・・仕事では言うべきことは言うのである。

名古屋出張中のクレイマークレイマーから・・・地方の広告についてメールが送られてくる。

支社の自由裁量の広告が・・・本社のコンセプトから激しく逸脱した・・・「男に媚びる女」をイメージしたものになっていた。

それを許可したのは・・・本部長である。

「いいじゃないか・・・異性に好かれたいというのは本能のようなものだろう」

「そういう方針の他社があっても構いませんが・・・本社が訴えてきたのは・・・自由を目指すことで美しくなる・・・というコンセプトで顧客はそれを指示しています・・・顧客を裏切るような広告は認められません」

「ち」

百合の正論に「過去の亡霊」は折れた。

しかし・・・戦い続ける百合の心は疲弊していたのだった。

「山」で風見と遭遇する百合・・・。

風見は街にある「ゴダール」の広告塔を示す。

「あれ・・・かっこいいですね」

「男性にそう言ってもらえるとうれしいわ」

風見は百合の疲弊を察するのだった。

「そんな顔をしないでください」

風見の配慮に涙腺が緩む百合。

「あれ・・・私・・・」

風見は「壁」となり・・・百合の泣き顔を優しく隠すのだった。

風見は「小賢しい女」がタイプなのである。

みくりは・・・感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」と対峙していた。

「ペッパーくん・・・あなたには何ができるの」

「アナタヲ笑顔ニスルコトガデキマス」

「でも・・・買い物はできないでしょう・・・誕生日のケーキも作れないし・・・掃除も洗濯もできない」

「少シ・・・疲レテイルンジャナイデスカ?」

「え」

「私ノ前デハ無理ヲシナクテイインデスヨ」

「ペッパーくん・・・」

思わず「Pepper」をハグするみくりだった。

みくりとよく似た「Pepper」の目の色が変わった・・・。

今夜、ペッパーくんはみくりの夢を見るのだろう。

みくりや百合には優しい風見だが・・・取引先のリンクロング社で働いているOL・五十嵐杏奈(内田理央)にはつれないのだった。

外堀を埋めるために・・・ヒラマサに「奥様へのお土産として美味しい生蕎麦」を推奨する杏奈。

蕎麦屋に向うヒラマサと杏奈を・・・みくりは見た!

《少し遅くなります》

《今どこにいるんですか》

《会社です》

二人を追跡したみくりは・・・男女が蕎麦屋に入るのを見てドス黒い気持ちを抱くのだった。

帰宅したみくりは悶々とする。

そして「ヒラマサさんのバカ~」と叫ぶのだった。

そこへ・・・みくりの予想・・・蕎麦屋で一杯・・・に反して帰宅するヒラマサ。

「どうして・・・嘘なんかついたんですか」

「え」

「見たんです・・・二人が一緒のところ・・・」

「もしかして・・・誤解かもしれませんが・・・嫉妬しているんですか」

「何故・・・笑うのです」

「うれしくて・・・生れて初めてのことですから・・・」

「ヒラマサさんのバカ」

「ずっと・・・みくりさんが・・・僕のことを好きだったらなあ・・・と思ってました」

「・・・好きですよ・・・どうしてわかってくれないんですか」

「僕もみくりさんが好きです・・・」

ヒラマサはみくりを抱きしめた。

(大切なのは・・・システムの再構築ではなくて・・・自分の気持ちを相手に伝えること・・・だったのか)

ヒラマサはまたしても大人の階段を昇るのだった。

「これからは・・・火曜じゃなくても・・・みくりさんを抱きしめてもいいですか」

「何曜日でも・・・何時でも・・・朝までだって・・・」

またもアクセルを踏み過ぎた気がするみくり・・・。

しかし・・・ヒラマサのアクセルは全開だった。

「一緒にいますか・・・朝まで」

「・・・うん」

馬鹿野郎、この野郎である。

そして・・・「お情け頂戴します」体制で枕を抱えて・・・ヒラマサの部屋を訪ねるみくりだった。

夜も更けて参りました~。

日本全土を揺るがすため息・・・。

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2016年12月 6日 (火)

滅びに通じる道はなだらかで少し下っている(山田涼介)

カインとアベルは「聖書」の冒頭に近い。

そこでは「神の支配」の絶対性が語られている。

カインは弟の方が自分よりも神に愛されていることに絶望し、絶望から抜け出すために弟を殺害する。

つまり・・・神を愛するあまりに弟の存在を認めることができなかったのだ。

しかし・・・アベルの血は大地に呪いをかける。

カインは作物を育てることができなくなる。

神はアベルの死をそれほど悲しまない。

ただ・・・カインをエデンの東から追い・・・変わらぬ加護を授ける。

アダムは親として・・・カインを「神の心にそぐわぬもの」として導いてしまった。

その結果としてカインもアベルも失う。

けれど・・・神はアダムを見放さない。

神はアダムに第三の子セツを授ける。

つまり・・・無実のアベルは・・・死に損なのである。

アベルの叫びは今も荒野に響くのだった。

アベルの死になにか意味があったのだろうか。

もちろん・・・そんなものはないのである。

神の愛は広大無辺であり正義と同じように悪もまたその手の内にあるからである。

で、『カインとアベル・第8回』(フジテレビ20161205PM9~)脚本・山崎宇子、演出・武内英樹を見た。原案は「旧約聖書 創世記 カインとアベル」である。その前段として「失楽園」がある。アダムの妻イヴが「邪悪で賢き蛇」に唆されたことにより神を裏切った夫婦はエデンの園から追放されてしまうのである。エデンの東でイヴはカインとアベルの兄弟を生む。一つの土地に後継者が二人いれば争いが避けられないことが主題である。兄が弟を殺すことで・・・聖書における人類最初の子育ては失敗するのだった。何事も最初から上手くはいかないものである。

人類がアダムとイヴとカインとアベルの四人しかいないわけである。

聖書において男尊女卑は空気のようなもので・・・女は基本的に「愚かな人」である。

蛇に唆されて禁断の果実を食べ・・・アダムを唆し禁断の果実を食べさせるイヴ。

善良なアダムに対して邪悪なイヴなのである。

この物語では高田総合地所株式会社の高田貴行社長(高嶋政伸)がアダム。

副社長の高田隆一(桐谷健太)がカイン。

取締役に抜擢された高田優(山田涼介)がアベルである。

隆一と優の母親は未登場だが・・・その他の女性登場人物はすべてイヴの化身ということになる。

隆一の婚約者で優の仕事のパートナーである矢作梓(倉科カナ)がいかにも「危うい女」で「愚か」なのは・・・イヴの化身だから仕方がないのだな。

ストレートに言えば会長の高田宗一郎(寺尾聰)が神のポジションということになるが・・・男性登場人物すべてが「世界」を構成する「神の一部」と考えることが出来る。

唯一の例外は投資家・黒沢幸助(竹中直人)でおそらく「蛇」のポジションである。

貴行の姉で宗一郎の長女である桃子(南果歩)もまたイヴの化身である。

自由奔放な桃子にとりついた蛇は・・・神の計画を邪魔するのが生きがいなのである。

詩人ミルトンは「蛇」こそが「人間」に嫉妬して神に反逆した天使長ルシフェル・・・つまり堕天使サタンであると推定している。

桃子は無邪気に蛇を高田家に潜り込ませたわけである。

当然のことだが・・・一途な愛を優に注ぐ柴田ひかり(山崎紘菜)もイヴなのだし、ひかりを案じる小料理屋「HIROSE」の女将・広瀬早希(大塚寧々)もイヴなのである。

なにしろ・・・「カインとアベル」の世界にはアベルが殺されるまで女はイヴしかいないのだから仕方がない。

あくまで原案に忠実だとそうなるという話です。

唯一の後継者として重圧に耐えてきた隆一の精神は・・・競争相手の出現で破綻寸前に追いつめられる。

一方・・・優は兄の婚約者である梓の性的魅力に幻惑され・・・仕事と家庭の選択に迷う「彼女」のパートナーとして相応しいのが自分であるという誘惑に靡く。

兄弟の間に生じた亀裂を見抜くことができない父親は・・・ビジネスマンとしての才能を開花させた次男に遅ればせながら夢中になる。

父と弟の交流が・・・隆一の精神をますます追いつめていくのだった。

梓は自分の性的魅力が優の心に生じさせた邪心を知ってか知らずか・・・隆一との結婚を決断し、家庭に入ることを決意するのだった・・・。

父と兄・・・そして兄の婚約者が高田家で結婚式の席次について相談しているところに帰宅する優。

優は梓が隆一の夫になってしまうことに苛立ちを抱えている。

「梓さんは仕事を辞めて家庭に入ってくれるそうだ」

息子の邪心を知らずに無邪気な父親は優の心に油を注ぐのだった。

鬱屈した心の大義名分を得た優は異議を申し立てる。

「梓さん・・・本当にそれでいいの」

「もちろん・・・私からお願いしたのよ」

「嘘だ・・・俺に言っていたことと違う」

「何を言ってるんだ優・・・これは隆一と梓さんの問題だろう・・・」

「・・・そうですか」

三人に咎められ・・・優は言葉を飲みこんだ。

兄と本人の目の前で・・・結婚相手として相応しいのは自分だと言い出せば頭がおかしいことになるからである。

弟を否定した梓の言葉に少しだけ正気を取り戻す隆一である。

高田総合地所株式会社に「新空港建設」の入札に参加するかどうかの課題が持ち上がっていた。

「今はあまりにも事業を拡大しすぎています・・・これ以上新規事業に参加するべきではない」

保守的な意見の隆一。

「それじゃ・・・株主や融資先が・・・会社に希望が持てなくなる・・・どんどん事業を拡大するべきです」

革新的な意見の優。

二人の息子が口論するのを頼もしく感じる貴行だった。

窮地に気がつかぬ父親にお茶の間が手に汗握る展開らしい。

梓に裏切られた気持ちの優は・・・仕事に熱中する。

責任ある立場に置かれたことで仕事に対する態度が変わったように見える優。

優のビジネスライクな姿勢に腰巾着の分際で「偉くなったもんだな」「付き合いづらいわ」などと陰口を叩く安藤(西村元貴)や三沢(戸塚純貴)・・・。

団衛営業本部長(木下ほうか)は優に露骨な追従を示すのだった。

営業部 5課の佐々木課長(日野陽)は部下たちの至らなさをカバーする。

「高田取締役・・・私はもはやあなたの部下です・・・酷使してください。お前たちも甘えるな」

優の心は一瞬、安らぐのだった。

危機を孕みながらも・・・優は仕事に燃え・・・隆一は梓と家庭を持つことによって新しい時代を迎える。

しかし・・・悪魔である投資家・黒沢幸助は・・・そのような現状を見過ごすことはできないのである。

黒沢は隆一を蛇の巣に招く。

「優は・・・才能を開花させたようだな」

「・・・」

「父親と弟が二人三脚を始めて・・・どんな気分だ」

「私が後継者レースに敗北したとおっしゃりたいのですか」

「その通り・・・」

「・・・」

「しかし・・・そうなるとお前に興味が出てきたよ」

「興味が」

「そう・・・父と弟の仲を引き裂いて・・・返り咲く・・・そういう物語があるからね」

「私にどうしろと・・・」

「ビジネスの基本は何だと思う」

「情報収集ですか」

「その通り・・・」

隆一の耳に悪魔の誘惑が届いた。

隆一は自問自答する。

「誰が悪いのか・・・お前じゃない・・・俺じゃないとしたら・・・優さ・・・そして父親だ・・・そうだな・・・俺は悪くない」

隆一は盗聴器を購入した。

社長室・・・役員室・・・会議室・・・次々と盗聴器をセットする隆一。

正気を失った隆一は監視カメラの存在も意に介さない。

高田取締役の個室で・・・隆一は転倒させる・・・観葉植物の鉢に盗聴器を埋め込んだ隆一は自転車を原状復帰する。

優は・・・自分の個室で自転車の部品を発見する。自転車の周囲に土を発見する。観葉植物の鉢から盗聴器を発見する。防犯カメラの映像に隆一の姿を発見する。

結婚式の席次について伺いをたてるという口実で会長宅を訪問する梓。

「本題は何か・・・」

「優くんが・・・取締役になってから・・・無理をしているように感じて」

「花婿の弟のことにまで気が回るとは・・・高田家はいい嫁を迎えたようだ」

「・・・」

「仕事には魔力があるからね」

「魔力が?」

「そうだ・・・仕事に夢中になると友人や家族よりも・・・仕事が一番大切だと思うようになる」

「それは悪いことでしょうか」

「すべてはバランスだ・・・何が一番大切か・・・常に心がけることだ」

「一番大切なものとは・・・何でしょうか」

「家族に決まっているじゃないか」

そうだろうか・・・と梓は思う。

一番大切なのは・・・自分なのではと。

隆一との幸福な家庭生活のためには・・・優の横恋慕は厄介である。

優の気持ちを鎮めるために・・・「過去の成功」を思い出させる旅に誘う梓。

「ピッツェリア マッシモッタヴィオ」の店主・後藤(今井朋彦)は二人を笑顔で迎える。

「やあ・・・まるで豊臣秀頼様のように立派になられて」

「彼はもう取締役なんですよ」

「さすがは・・・御曹司だ・・・私が大野治長なら一生ついていきたいところです」

「弟に殴られますよ」

「店長、喜んでたわね」

「そうかな・・・」

「あの頃の優くんは情熱的だった」

「未熟でしたよ・・・今ならもっとスマートにやれた」

「・・・」

婚約者の弟を懐柔しているというより・・・アバンチュールを楽しんでいるとしか見えないのは梓の正体がイヴだからである。

梓という獲物を目の前に出されてますます邪悪な気持ちを育てる優だったが・・・あくまで正気を失った兄を排除することが・・・会社のためであると自分に言い聞かせる。

そのために・・・父親に例え話で了解を求めるのだった。

「会社のためにならない人間はたとえ家族でも・・・告発するべきでしょうか」

「もちろんだ・・・」

もちろん・・・家族のことを考えれば・・・父親に事情を打ち明けて対処するべきなのである。

しかし・・・優は・・・兄を公開処刑したいのだった。

そうでなければ・・・隆一と梓の結婚を阻止できないのである。

役員会で・・・「副社長の解任」を要求する優。

「何を言ってる」

「兄は社内で盗聴をしています」

「何を証拠に」

「監視カメラの存在を忘れるほど・・・おかしくなっているんだよ・・・兄さん」

「・・・」

隆一は解任された。

貴行は社長室に隆一を呼び出す。

「とにかく・・・会社のために・・・結婚式だけは無事にすませないと」

「父さん・・・僕にガッカリしましたか」

「お前の育て方を・・・私は間違えたようだ」

悪いのはお前ではなく・・・私だと貴行は言っているのだが・・・隆一の壊れた心には届かない。

最悪の事態を知った梓は優に詰め寄る。

「なんてことを・・・」

「正気を失った人間が会社の指導部にいては・・・会社の存続が危ぶまれます」

「でも・・・家族なんだから・・・もっと穏便にできたでしょう」

「それは・・・身贔屓というものではないのでしょうか」

「コンプライアンス的な問題のことじゃないわよ・・・大切な家族でしょう」

「大切な人を不幸にしたくないだけです」

「え」

梓を背後から抱きしめる優。

「あなたを幸せにできるのは・・・俺ですよ」

「最低!」

「え」

最低なのは梓のようにも見えるがイヴなので仕方がないのである。

結婚式当日・・・大事なビジネス相手のアポイントメントがとれた優は結婚式の出席をキャンセルするのだった。

すべてを捨てて後継者としての自分を演じてきた隆一は・・・最後の最後で父親の信頼を自らの意志で裏切りたかった。

多くの来賓を招いた結婚式に・・・花婿として欠席するのだった。

花嫁衣装の梓は・・・イヴである以上自分が引き寄せた結果と思うはずもなく・・・教会で涙にくれる。

無人の披露宴会場に現れた隆一は・・・自ら掘った墓穴に深い喪失感を覚えるのだった。

梓の幸せを粉砕し・・・兄の自尊心を崩壊させたことを知ってか知らずか・・・優はビジネスの席で微笑むのだった。

・・・主はアベルとその供え物とを顧みられた。

しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。

つまり・・・アベルにも殺される理由があったと言いたいのかな?

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2016年12月 5日 (月)

誰かが勝つためには誰かが負けねばならない・・・ただそれだけのこと(長澤まさみ)

慶長二十年(1615年)一月二十四日、真田信繁は実姉で小山田茂誠の正室である村松殿に手紙を認めた。

「たより御さ候まゝ一筆申あけ候・・・さてこの度は不慮のことにて合戦と相成りました。我らが大坂城へ入りましたことは奇怪なことと御推量なされたことでしょう。なにはともあれ一段落し、我らも死にませんでした。お目にかかれたらとは思います。明日どうなるかもわからぬ情勢ですが今の処は落ちついております。主膳殿(小山田主膳正之知・・・村松殿の子・・・信繫にとっての甥)には何度か会いましたが多忙のためにゆっくりと話すこともままなりません。とにもかくにも我らは無事ですのでご安心ください。くわしいことを書きたいのですが使者が土間に立ち待っているのでとりあえずお知らせまで。またあらためてお便りいたします・・・さえもんのすけ、むらまつへ、まいる」

四百年の時を越えて・・・弟が姉に宛てた「文」が残っていることが奇跡のようなものである。

そして・・・弟が姉の心情を想い・・・言葉は少ないが・・・あれこれ綴っていることが現代人にも通じるところがまた面白い。

二月十日、信繫は長女・すえ(阿菊)の婿である石合十蔵からの手紙に返信した。

「・・・我らの安否をおたずねになるのは当然のことでしょう。我らは籠城となれば必死の覚悟をしております。そのためにお目にかかることはもうないと思います。つきましてはいろいろとお心に適わぬことがあっても娘をお見捨てにならぬようお願い申し上げます・・・」

宛先が違うとはいえ・・・わずか半月の間に事態が切迫してきたことが感じられる。

正月に豊臣秀頼は徳川家康に夜着などを献上し、家康は鷹狩りで得た鶴を返礼として贈ったという。

和睦の真偽を双方が探り合っていた時期はほんの数日であったのだろう。

間もなく双方が・・・再戦のための準備行動に移っていったのである。

で、『真田丸・第48回(NHK総合20161204PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・清水拓哉を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はこの大河ドラマによってこれのまでの悪評を覆した大野修理大夫治長の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ついに来ましたな。織田有楽斎がナレ送りになったので・・・大蔵卿局も千姫も常高院もイラスト化は望み薄でございましょうか・・・しかしあくまでマイペースでお願い申しあげます。大穴は真田大助かっ。「引鉄」と銘打たれた今回。泥にまみれた真田の女たちが「レアアイテム」を入手したのもおとりさまの導きでございましょうかね。そして・・・信之と幸村、信吉と信政、治長と治房・・・兄弟の葛藤を重ねて兄弟喧嘩の火蓋がきられる展開と本当にいろいろと仕掛けてきますねえ。そして・・・姉婿である義理の兄に・・・戦の心得を問う幸村・・・溺れるものが藁をもつかむ展開で・・・幸村の必勝の信念の揺らぎさえ感じさせた後で「お宝」入手・・・巧なんだなあ・・・匠の術なんだなあ・・・。騎馬鉄砲ではなく・・・馬上筒かあ・・・連発でないと命中率がなあ・・・。時空を越えてロケットランチャーを贈りたいものです・・・。

Sanada48 慶長二十年(1615年)正月三日、二条城を出た徳川家康は立ちよった名古屋城で大坂城の二の丸の堀の埋め立てが進行している報告をうける。十九日、徳川秀忠は二の丸の完全な破却を確認して伏見城に帰陣する。二月十四日、家康は駿府城に帰着する。二十六日、伏見城代・松平定勝、京都所司代・板倉勝重の密偵である小幡勘兵衛景憲が大野治房の客将として大坂城の軍評定に参加する。豊臣秀頼による牢人の新規召し抱えを禁じた和睦の約条に違反する行為を幕府側が仕掛けたのであった。三月、景憲に密偵の嫌疑がかかる。景憲は堺を経由して脱出した。大坂方が野戦の支度を開始していることが家康に報告される。家康は砲弾の鋳造開始を命じる。月末、幕府は江戸の旗本衆に陣触を発する。四月、幕府は将軍の出馬を諸大名に通知する。家康は旗本衆を率いて駿府城を出陣した。家康の先手として藤堂高虎の兵五千が淀古城に進出する。井伊直孝は彦根から伏見に進出する。幕府軍が近郊に集結しつつある報せを受け、開戦を決意する。織田有楽斎、長頼父子は大坂城を脱出し京都に逃亡した。九日、大野治長は治房配下の刺客に刺され負傷する。

「左衛門佐はおらぬか・・・」

「ここに」

真田丸での戦勝後、幸村は秀頼の側に仕えるようになった。

お召しがあれば参上しなければならない。

常人であれば不自由を感じるところだが・・・幸村は上方の真田忍軍の頭である。

七人の影武者が・・・それぞれの立場で業務をこなすことができるのだった。

「将軍と大御所が攻めてくるそうだな」

「御意にございます」

「今度も勝てるか」

「勝敗は時の運と申します」

「そうか」

幸村は七才までの秀頼を知っている。

それから十四年が過ぎ去り、再会した秀頼は二十二才になっていた。

秀頼が秀吉の血族かどうかを疑うものも多いが・・・幸村は・・・秀頼の顔に・・・秀吉の面影を見ることがある。

織田家、浅井家という武家の血に卑賤の身から関白にまで成りあがった秀吉が混交し、一種の傑作として仕上がったのが秀頼である。

六尺五寸(197㎝)の身長に・・・四十三貫(161㎏)の体重・・・堂々たる巨漢である。

しかし・・・秀吉の死後・・・大坂城で飼い殺されたような生活を送ってきた秀頼はその天才をほとんど活かしようもなかった。

秀頼が大坂城を出たのは四年前の上洛の時のみであった。

天下を統一した男の嫡男は天下というものをほとんど知らなかったのだ。

突然、舅である将軍家との合戦が始り・・・戸惑いを感じていた時に・・・彗星の如く真田幸村という武将が現れたのである。

秀頼は・・・幸村に亡き父への失われた愛慕を見出していた。

「父がご存命であった頃・・・よく木に登ったのう・・・」

「太閤殿下は猿飛の術の達人でございましたから・・・」

「左衛門佐もなかなかの名人だったではないか」

「真田のものは皆・・・忍びでございますから」

「父が亡くなってからは・・・母に木登りを禁じられてしまった」

「さようでございましたか」

「大御所や将軍は・・・私を殺したいのだろうか」

「他人の心中は伺い知れぬもの・・・しかし、大御所は必要とあれば・・・わが妻であれ・・・わが子であれ・・・命を奪うことをためらうことなきお方でございます」

「父もそうであったそうだな・・・わが従兄弟である関白の一族をことごとく殺した・・・」

「・・・」

「そういうことへの報いがわが身にふりかかるのは・・・仕方なきことやも知れぬ」

「上様・・・そのようなことは考えても詮無きことでございまする」

「であるか・・・」

「もののふは・・・守るべきものを守るために戦うのみ」

「・・・」

「真田左衛門佐幸村・・・上様を命懸けでお守りいたす所存・・・」

「ふふふ・・・なにやらこそばゆいのう・・・」

「こそばゆい・・・」

「おのがために死んでくれるというものがいるのだぞ・・・これほどのこそばゆさはほかにあろうか・・・」

「上様・・・」

幸村は・・・秀頼を心の底から可愛いと思った・・・。

秀頼を抹殺するための軍勢は山城国と大和国に集結しつつあった。

海からは幕府水軍衆が迫っている。

慶長二十年の春が終わろうとしていた。

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2016年12月 4日 (日)

仇の屋敷に仕える女(武井咲)

内政と外交は個別の集団を形成する社会の基本である。

集団と集団を俯瞰する一つの見識が「地政学」であるが・・・あまりにも複雑な要素を含むために共通認識を得ることが難しい情報領域にあると言えるだろう。

それは「論理」というよりは「直感」の世界である。

たとえば・・・「ロシア」がクリミア半島で起こした問題が・・・北方四島で再現される可能性の有無を断定的に答えることは難しいのである。

だが・・・領土拡張を「国家」の基本的主題と考えるならば・・・「日清戦争」「日露戦争」「第一次世界大戦」「第二次世界大戦」「東西冷戦」と続く日本とロシアの関係が国境線の前進後退であることは疑いようのないことである。

「ロシア」は常に南下したいのである。

「日本」としてはそれは困るのである。

ウラジオストック、サハリン(樺太)、北方四島を結ぶ直線に北海道がある。

ロシアによる北海道の領土化は・・・幻想であろうか。

戦国時代が終わり・・・幕府によって支配された日本列島で・・・赤穂藩と吉良家は突如、戦闘状態に突入した。

法に従えば「喧嘩両成敗」とするべきところを・・・「被害者」と「加害者」として裁いたことにより・・・吉良家にはお咎めなしで赤穂藩はおとりつぶしとされた・・・赤穂浪士に「遺恨」が残る。

法による支配が・・・実力行使の前に無力であることを為政者は忘れてはならないという話なのである。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第10回』(NHK総合201612031810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・黛りんたろうを見た。ただでさえ、視聴習慣のない時間帯でのオンエアである・・・一週飛んだら・・・忘れてしまう可能性もあるわけである。録画システムがトラブルを起こさないとは限らないのだ。そういう意味でドキドキするドラマである。特に時代劇ファンにはいつまでやってんだ鬼平最終回スペシャルもある週末なのである。季節(カレンダーネタ」として「忠臣蔵」が年末の風物詩なのは・・・赤穂浪士の討ち入りが12月14日だからである。次回放送と次々回放送の谷間なのでいろいろと悩ましいところである。で・・・このドラマは全20回なので・・・そこからが長いのである。そういう点も含んで楽しみたい。

元禄十五年(1702年)の秋・・・きよ(武井咲)は赤坂今井にある三次浅野家下屋敷に隠棲する瑤泉院(田中麗奈)を訪ねた。「討ち入り」を決めた大石内蔵助(石丸幹二)が近く江戸へ下向することを伝えるためである。

「秋から冬のうちに・・・本懐を遂げられるそうです」

「さようか・・・」

「私は・・・上杉弾正大弼様のお屋敷に奉公にあがります」

「なんと・・・」

瑤泉院や侍女のつま(宮崎香蓮)が顔色を変える。

「しかとお役目を務める覚悟でございます」

「よう申した・・・頼んだぞ」

「心得ましてございます」

一同が浅野内匠頭長矩(今井翼)の仇と思い定める吉良上野介義央(伊武雅刀)の正室・富子(風吹ジュン)は出羽国米沢藩の先代藩主・上杉綱勝の妹であった。

綱勝に嫡子がなかったために富子の産んだ長男・三之助が上杉家に養子に入り、現藩主の上杉綱憲(柿沢勇人)となったのである。

江戸城刃傷沙汰の後に綱憲は実母である富子を白金にある上杉家下屋敷に引きとっていた。

一方、吉良家では後継者の次男・吉良三郎が夭折したために・・・綱憲の次男・義周を養子として迎えていた。

上野介は孫にあたる義周に家督を譲り、本所松阪の拝領屋敷で隠居となっていた。

Chu001 きよの使命は・・・富子に侍女として奉公し、吉良家と上杉家の同行を探ること。そして・・・現在の上野介の容姿を確かめることであった。

高家である上野介の「顔」を討ち入るものたちは知らなかったのである。

元禄十五年(1702年)十月、大石内蔵助は川崎平間村に潜む。

きよは木屋孫三郎(藤木孝)の手引きで母親の名である「さえ」を名乗り、上杉家下屋敷で富子に仕える侍女となった。

つなぎ(連絡役)は出入りの商人・橘屋の手代を装う毛利小平太(泉澤祐希)である。

差し入れと称した「菓子折り」の中に「密書」が封じられている。

さえ(きよ)から連絡したいことがあれば屋敷に隣接した氷川神社で密会する手筈である。

小平太は吉田忠左衛門(辻萬長)の指図に従っていた。

005 さえは侍女仲間のちさ(二宮郁)にそれとなく探りを入れる。

「何故・・・奥方様は・・・こちらに・・・お一人で」

「赤穂のものが・・・逆恨みをして・・・何かしでかすのではないかと・・・上杉のお殿様は富子様を案じておられるのです」

「討ち入りの噂ですか・・・」

「そうそう・・・おかげで女中衆も怯えてお暇を頂くものが多くて・・・手が足りなくて困っていたのよ」

「そうなのですか・・・」

琴の腕前が口添えられていたために・・・さえは富子に演奏を所望される。

さえは・・・富子の前で琴を爪弾く。

その音色は・・・懐かしい情景を呼び起こす。

(あの日・・・亡き殿と・・阿久里様に・・・あの方の鼓に合わせて・・・)

磯貝十郎左衛門(福士誠治)と恋に落ち・・・夫婦となる日を夢見ていたころは・・・もう帰らないのだった。

(この方の夫が・・・主君の仇)

しかし・・・夫と仲陸まじいという噂の富子の柔和な笑顔に・・・戸惑うさえだった。

「あの件以来・・・上杉の者どもは・・・すっかり迷惑顔じゃ・・・わが腹を痛めた子を養子として差し出して・・・家督を継がせ・・・上杉家の危機を救ったことなど忘れたようじゃ・・・」

富子はそんな愚痴までさえに聞かせるのだった。

さえは・・・上杉藩士の会話などから・・・吉良家の緊急事態に上杉家が出動しない感触を得る。

しかし・・・本所に住む上野介と富子が会う気配はなかった。

二人が会わなければ・・・さえは上野介を盗み見ることができないのである。

十一月五日、大石内蔵助は江戸日本橋界隈の石町小山屋に入った。

あせりを覚えるさえは・・・上杉藩主の綱憲が熱病に冒され、実母・富子の看病を受けるために下屋敷に移送されることを知る。

綱憲は高熱が続く状態で・・・さえは・・・十郎左衛門の病状を思い出す。

「熱が下がらぬのじゃ・・・」

富子は嘆く。

「わが身内が熱を出した時・・・夜通しおつむり(頭)を水手ぬぐいで冷やしたところ・・・効がありました」

「さようか・・・」

さえと富子は夜を徹して看病を続ける。

わが子の憐れさに富子は苦悶するのだった。

「養子となって藩主となりしというものの・・・私はこの子が不憫でならぬ・・・」

「奥方様・・・」

「吉良家を継いでおれば苦労も少なかったろうにのう・・・」

「少しお休みくださいませ・・・お体に触りまする」

「そうか・・・」

上杉家藩主と二人きりになったさえは・・・手拭を絞り・・・恐ろしい誘惑に駆られる。

(もし・・・この手で・・・藩主の命を奪えば・・・葬儀の席で必ずや・・・上野介を見ることができる)

あの口と鼻を・・・塞いでしまえば・・・。

だが・・・富子が戻ってきてさえの殺意は封じられた。

「やはり・・・休むことはできませぬ・・・」

「かならず・・・御本復されましょう」

明け方・・・綱憲の熱は下がった。

討ち入りの日は十二月十四日と決まった。

それをきよに伝える前に芝の源助町に立ち寄った小平太は村松三太夫(中尾明慶)に声をかける。

「さぞかし・・・御心配でございましょう」

「勘違いなさるな・・・確かにきよ殿とは・・・許嫁という話もあったが・・・今は別に心を交わしたお方がいるのだ」

「え・・・」

「磯貝様だ・・・」

三太夫にとってそれはどうしても誰かに伝えたいことだったらしい・・・。

「討ち入りの日が決まった・・・」

密書によって・・・それを知ったさえは・・・役目が果たせないでいることに唇を噛む。

その時・・・朗報がもたらされた。

嫡男の回復を祝い・・・上野介が下屋敷を訪問すると言うのである。

(このことをお知らせしなければ・・・)

さえは・・・屋敷を抜け出し氷川神社に走る。

果たして・・・さえは小平太とつなぎをつけることができるのか。

それとも・・・さえの周囲を窺う不審者が正体を見せるのか・・・。

もちろん・・・上野介には一目でわかる目印がある。

浅野内匠頭長矩の残した傷痕が・・・。

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2016年12月 3日 (土)

サイリウムにこの胸いっぱいの愛をこめて素直になれない君へ(山田孝之)

20世紀にもツンツンしてデレデレな人はいたわけだが・・・21世紀にはそれをツンデレと略称したわけである。

アメリカのロックバンドであるシカゴのヒットナンバー「素直になれなくて」(1982年)の原題は「Hard to Say I'm Sorry」(謝罪は困難)である。

相手に対して色々と問題をおこしたけど水に流してほしいという「甘え」はツンデレキャラクターにもオレサマキャラクターにも通じる要素である。

それを許すのが「愛」だという考え方は「わがままは罪で許さないのも罪」という考え方に対応している。

「甘やかしたら本人のためにならないという教育方針」と「発達障害への対応」が時に対立するわけである。

結局・・・最後は好みの問題になるのである。

優しく激しく愛してもらいたいわけだからな。

どうしてそんな人を愛せるのか・・・愛されたかったのに愛されなかった人は嘆くのだ。

で、『者ヨシヒコと導かれし七人・第9回』(テレビ東京201612030018~)脚本・演出・福田雄一を見た。恒例の前座コーナー・・・盗賊との遭遇はなしである。あるものをなしにするのはスルーのテクニックで気分転換を誘うのである。いつまでもあると思うな親と金だ。オープニングがそうなので・・・クロージングのヒサ(岡本あずさ)の変化の杖による変身ゲストの登場もない。連続ドラマとしてはいよいよ終盤戦に突入という意志表示にもなっている。・・・単に豪華ゲストに払うギャラが尽きただけじゃないだろうな。

プライベートでは不倫騒動、経歴詐称疑惑とゴタゴタが続いた上に・・・前回、偽オーブ情報を伝えてしまった仏四号(佐藤二朗)が低姿勢で登場。

勇者ヨシヒコ(山田孝之)はウルトラアイを装着する。

「ヨシヒコ様~」

「この間で六個揃うはずだったのに」と賢者のメレブ(ムロツヨシ )・・・。

「仕方ないだろう・・・全十二話なんだから・・・そんなに早く集まったら・・・最終回、総集編になっちゃうし」

「話数の話とかするなよ」

「そういう話いいから」と魔法使いムラサキ(木南晴夏)・・・。

「魔王の城は近い・・・最後の玉人は・・・東にあるキャパス村に・・・」

「今度は本物だろうな」とバトルマスターのダンジョー(宅麻伸)・・・。

「急ぐのだ・・・魔王はビュビュッと力を強めておる」

「ビュビュッてなんだよ・・・台本覚えてこいよ」とメレブ・・・。

キャパス村は栃木県にある廃校風の建物だった・・・。

「キャンパス・・・学園ものか・・・」

キャパス村の村長(蛭子能収)は天下った元仏で・・・仏四号の飲み友達だったらしい。

「オーブを持つ玉人は音ノ木沢高校の女生徒ですが・・・今回は一筋縄では入手できません」

「最後の一個だから・・・ハードルあげてきたか」とメレブ。

「オーブは女生徒の体内にあるのです・・・」

「じゃあ・・・口に手をつっこんで」とダンジョー。

「いえ・・・そういうことではなくて・・・女生徒が心を開けば・・・オーブは排出されます」

「つまり・・・」

「女生徒のハートを射止めるものが・・・オーブを手に入れることができるのです」

器具室に宿泊するヨシヒコたち・・・。

「そうなると・・・俺の出番か・・・」とダンジョー。

「バツイチはだまってろ」とムラサキ。

「すると・・・私か・・・絶対安全、人畜無害のように見えて終電過ぎたらブラック黒子が」

「ヨシヒコしかいないだろう」

「無理です」

「そういう不器用そうなところが・・・受け入れられる場合がある」

「そうなのですか」

「でも・・・マジで好きになったら・・・殺すよ」

「そんなことがあるわけない・・・魔王がすぐそこまで迫っているというのに」

「・・・」

疑わしい眼差しを向けるムラサキだった。

村長の魔法により・・・「謎の転校生」モードが発動。

玉人である香西そのか(川栄李奈)の担任教師は・・・ダンジョーとなる。

そして・・・ヨシヒコはターバンを巻いた転校生としてそのかの隣の席へ・・・。

ムラサキは・・・中途半端な容姿のクラスメートとして潜入するのだった。

「ねえねえ・・・転校生のヨシヒコくん・・・かっこいいと思わない・・・私、告白しようかな」

ムラサキはそのかにヨシヒコを売り込むのである。

メレブは恋のライバルとして・・・花沢類的キャラクターになるのだった。

ゴールデン黒子をアピールする花沢メレブ。

「花沢類ってなんだよ」

「花より男子的な・・・小栗の旬的な・・・そのかに呼び出されたらいつだってどこにだって行くよ的な・・・俺にもまだ、可能性はあるってことなのか的な・・・そのかを幸せに出来るのは、俺だと思うよ的な」

「却下!」

メレブは運命の鍵を握る用務員に格下げされた。

「用務員に運命の鍵が握れるのか」

ドジっ子キャラのそのかは・・・階段をローリング人形落ち。

そこへ・・・恋のライバルとしてアルフレッド(小関裕太)が現れる。

「大丈夫かい?」

「アルフレッド先輩・・・」

「気をつけないとダメだよ」

優しく微笑むアルフレッドにうっとりするそのか・・・。

気配を察するムラサキは蒼ざめる。

「あかん・・・これはあかんやつじゃ・・・鳶に油揚げ攫われる・・・」

川栄李奈と小関裕太は「ごめんね青春!」における・・・じんぼーこと神保愛とコスメこと村井守のコンビである。

危機感を持つムラサキである。

「ヨシヒコ・・・彼女とうまくいってるのか」

「消しゴムを借りることができました」

「それは・・・ハッテンしているとは言えないな」

「このままだとアルフレッドに負ける」

「アルフレッドからムラサキが奪うというのは」

「無理無理百パーセント無理」

「・・・」

「校長じゃなくて・・・村長に頼んで・・・イベントを導入しよう」

突然、廃校の危機となる音ノ木沢高校である。

「アイドルグループを作って・・・人気を盛り上げて・・・新入生を誘致しましょう」

突然、発案するそのかであった。

「ラブライブ」的展開である。

「ラブライブ」では音ノ木坂学院の高坂穂乃果がμ's(ミューズ)というアイドルグループを結成するのだが・・・この世界では・・・音ノ木沢高校の香西そのかがrouge(ルージュ)というアイドルグループを結成するのだった。

「やりたい人」

「はい」と挙手をするムラサキ。

「私も・・・歌いたい」とヨシヒコ。

「ごめんね・・・ヨシヒコくん・・・女子限定なのよ」とそのか。

「♪ドンドンドンドンキードン・キホーテ~ボリューム満点!激安ジャングル!」

「やめんか・・・誰がドン・キホーテのテーマを歌えと」

なんでもありだな・・・。

サイリューム(商品名)を避けてサイリウムと表記しているこのブログの方針が崩壊させられてしまったじゃないか。

メンバーが集まらず黄昏るそのかとムラサキ。

「二人じゃアイドルグループできないよ」

「昔・・・待つわを歌うあみんという人たちがいたんだけどね」

「知らない」

「まあ・・・そうだな」

そこへ・・・おタク軍団を引き連れてライトスティックを握るヨシヒコが現れる。

「アイドルにはなれないけれど・・・そのかちゃんたちを全力で応援するよ」

オタ芸を披露して好意をアピールするヨシヒコたち・・・。

そこへ・・・アルフレッドが現れる。

「そのかちゃんのために・・・アイドルの衣装を十着用意したよ」

「素敵」

「ボクの家は裕福だから・・・このぐらいお安いことさ」

「でも・・・どうして・・・私のために」

「そんなこと・・・こんなところで・・・言えないよ」

見つめ合う二人に・・・ヨシヒコを撤収させるムラサキ・・・。

「私胸がドキドキするの」

「動悸だね・・・救心買ってくるよ」

「ありがとう」

そのかの心はアルフレッドに傾く・・・。

相談する器具室の四人。

「このままじゃ・・・オーブは手に入らない」

「私の新しい呪文・・・カオパスでなんとかしよう」

「カオパス?」

「この魔法にかかったものは・・・美味しい店かどうか判断できる上でクーポン一枚分のサービスを受けられる・・・ただしクーポンが一枚必要だ」

「なんともならねえよ」

ムラサキは・・・アルフレッドの弱点を探ろうと・・・偵察に出る。

そして・・・アルフレッドの正体が魔物であることを知るのだった。

「上様・・・まもなく・・・オーブはわが手に・・・となれば勇者が上様の元へとたどり着くことはありませぬ・・・おや」

「にゃ~お」

「猫か」

ムラサキは器具室に駆け込む。

「やばいよやばいよ」

「出川哲朗か」

事情を聞いたメレブは村長に相談する。

「現代において乙女心を掴むのは・・・ツンデレです・・・アムとムチ・・・そして壁ドンを使いこなすことができれば・・・」

「そんなことが・・・」

村長はキャラ変の祠に一同を案内する。

「このキャラ変レバーでSとMに性格を変更できます・・・」

勇者ヨシヒコは・・・黒勇者ヨシヒコにキャラ変した!

「ヨシヒコたのむぞ」

「たのむぞヨシヒコ」

かわいい衣装効果でメンバーが揃ったルージュは体育館の舞台でレッスン中である。

女生徒たち(HKT48・・・村重杏奈 本村碧唯 森保まどか 秋吉優花 松岡菜摘 松岡はな 宮脇咲良)に混じり・・・ノリノリでダンスをするムラサキであった!

そこへ黒勇者ヨシヒコが現れる。

「ヨシヒコくん・・・応援してね」

「なんで俺がお前を応援しなきゃなんねえんだよ」

「え」

「クローズ」の百獣の王の異名を持つ鈴蘭の頂点に最も近いと言われている男・芹沢多摩雄的な黒勇者だった!

「お前たち・・・曲はどうするんだ・・・俺なら作詞作曲できるぞ」

「本当?」

どうやら・・・メレブが週末に会えるアイドルに楽曲提供ができる呪文・ヒャダ(イン)を使用したらしい・・・。

「曲が欲しかったら・・・三遍回ってお手してフリスビーを拾ってきな」

俺様キャラに従順なタイプのそのかは指示に従うのだった。

「よし・・・コロッケパンとコーヒー牛乳を買ってこい」

「はい」

そのかの態度に手応えを感じたムラサキは悪い顔になるのだった!

教室で好意があるゆえの反抗的な態度を示すそのか。

「ヨシヒコくんの言うなりになんかならないからね」

「黒崎くんの言いなりになんてならない」モードに突入である。

両手でそのかを強制的に変顔にした黒勇者・・・。

「それじゃ・・・首輪をつけなくちゃな」

壁ドンで追い込んで取り出したのはハートの鍵付きネックレスである。

「これで・・・お前は逃げられない」

そのかの胸がときめく。

「私・・・ヨシヒコくんが気になるの」

「ヨシヒコなら・・・体育館でアルフレッドとその仲間たちにリンチされていたよ」と用務員のメレブ。

あわてて・・・駆けだすそのか。

見送るムラサキとメレブは最高に悪い顔になるのだった。

「チェックメイト!」

体育館に倒れたカバと同じで赤い汗まみれのヨシヒコ・・・。

「ちがう・・・これは罠なんだ」と弁明するアルフレッド。

しかし恋するそのかは聞く耳を持たない。

傷ついたヨシヒコに語りかけるそのか・・・。

「どうして・・・こんなことを・・・」

「好きだからさ・・・お前が」

ハートを射ぬかれたらしいそのかから・・・紫のオーブが飛び出し・・・ヨシヒコの体内に宿るのだった。

「なんてことだ」

アルフレッドは魔物としての正体を見せて消える。

「え」

驚愕するそのかだった。

校門でヨシヒコを待つムラサキとメレブそしてダンジョー。

「まさか・・・そのかに惚れて魔王なんてどうでもいいという展開じゃ・・・」

しかし・・・地響きが三人を襲う。

負傷して逃げ出してくる村長。

「コントロールが利きません」

「すみません・・・アホの子なんで・・・」

キャラ変が高じてキングコングのようなどエスモンスターと化したヨシヒコだった。

巨大なムチを振りまわし、巨大な飴を見せて、壁ドンをするモンスターヨシヒコ・・・。

「なんとか・・・制御しなくては・・・」

「わかった・・・」

メレブはムラサキに指示を出す。

「なんで・・・そんなことを」

「いいから・・・やれ」

ムラサキは艶っぽいポーズで「私を好きにしていいのよ」と叫ぶ。

その言葉に萎えるヨシヒコだった。

失礼な話である。

何事もなかったように勇者ヨシヒコは先を急ぐのだった。

「ついに・・・オーブが揃ったのですね」

覚悟を決めたヒサは変化の杖を使うが・・・何に変身したのかは来週のお楽しみらしい・・・。

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2016年12月 2日 (金)

絶望螺旋にさようなら(成海璃子)

悪魔なので基本的に善悪の区別はない。

そもそも倫理というものはフィクションに過ぎないのである。

それぞれが自分にとって都合のいい正義を唱えるのが文化というものなので、そういう意味では不倫は文化なのである。

一夫一婦制度の下で肯定的な「愛」とされるオンリーユーオンリーミーな関係も独善的なひとつの思いこみに過ぎない。

自分が嫌なことを他人にはしないというのは偽善に過ぎない。

自己中心的に考えれば・・・自由に愛を求め、自由に裏切って、自由に生を楽しむことこそ善である。

愛したい時に愛し、殺したい時に殺す・・・そんなことでは人類は滅ぶと言うのなら滅べばいいのである。

この世に善も悪もない。

ただただ虚しく時が過ぎていく・・・それだけの話である。

「わが国は・・・けして戦争しない国なのです・・・話せばわかります」

それで平和が維持できるなら・・・世話はないのである。

で、『黒い十人の女・最終回(全10話)』(日本テレビ201612020009~)原作・和田夏十、脚本・バカリズム、演出・山本大輔を見た。十二時間の間に全量摂取すれば死に至る薬剤を十等分して風松吉(船越英一郎)に処方した神田久未(成海璃子)を含む十人の女たち。完全犯罪として松吉を殺害し・・・女たちは「不倫の泥沼」からついに解放された・・・ように見えたが不倫が肯定されないように殺人も肯定されないお茶の間向けドラマの宿命がそれを許さないのだった。

「私は・・・あのまま・・・普通の生活に戻ったのです」

「週末の合コンで繁殖相手を探すのです」

いつものカフェで・・・お茶をする・・・久未と文坂彩乃(佐野ひなこ)、そして最近、実業家の恋人ができた池上穂花(新田祐里子)だった。

「あの後、どうしたの」

「お持ち帰りしてやっちゃった」

「マジ?」

「酔っ払って記憶は定かではないけれど」

「なんだか・・・懐かしいわ」

「・・・」

「そういう話」

「それは彼氏がいるので上から目線で下々のあれやこれやを蔑む姿勢」

「そんなことないわよ」

「やはり・・・あばら一本いっとくしかないね」

「だね」

「あ・・・こんな時間・・・私、もう行かなくちゃ・・・」

「ちっ」

そんな穏やかな日常を砕く・・・一本のメール。

《風が生きている》

脚本家の皐山夏希(MEGUMI)の高層マンションに集う「風の会」の会員たち。

ただし・・・そこに妻・風睦(若村麻由美)の姿はない。

「プロデューサーが死んでいるのに・・・脚本家の私に連絡がないのは・・・あまりにも不自然なのよ」

仕事が雑なことで定評のあるアシスタント・プロデューサーの弥上美羽(佐藤仁美)は「オンエアが残っているので・・・奥様が気を使って体調不良のための休養と連絡してきたものだとばかり」と雑なことを言うのだった。

「私・・・睦さんに連絡してみたら・・・番号変わってたので・・・仕方なく・・・お店に行ってみたの」

夏希は・・・睦の経営するレストラン「カチューシャ」から外出する松吉の姿を撮影することに成功したのだった。

「どういうことですか」

「睦さんが・・・裏切ったということね・・・」

「最後の一服を盛らなかった」

「そして・・・」

睦は・・・トマトジュースを血痕として・・・松吉の死亡を擬装したのだった。

「あなた・・・殺されるところだったのよ」

「え」

「みんなで・・・あなたに死に至るクスリを処方していたの」

「どうして・・・殺すなんて」

「好きだからでしょう」

「君はどうして・・・助けてくれたの」

「好きだからよ」

好きだから殺し、好きだから助ける・・・愛というものは一筋縄ではいかないものなのだ。

「僕はどうすれば・・・」

「一ヶ月・・・ほとぼりをさますの」

「そんな無理だよ・・・」

「一ヶ月すれば・・・みんなあなたのことなんか忘れるわ」

「会社にも忘れられちゃうよ」

「その時は・・・私が養ってあげる」

こうして・・・睦は飼い猫のように松吉を独占した。

しかし・・・堪え性のない松吉はのこのこ外出し・・・夏希に発見されてしまったのだった。

「裏切り者・・・許すまじ」

九人の愛人たちは・・・睦に殴りこみをかけるのだった。

愛人筆頭・劇団「絞り汁」所属女優・如野佳代(水野美紀)・・・。

アイドル女優の相葉志乃(トリンドル玲奈)とそのマネージャー・長谷川冴英(ちすん)・・・。

ヘアメイク・スタッフの水川夢(平山あや)・・・。

アロママッサージ店経営者・卯野真衣(白羽ゆり)・・・。

不倫のあげく殺人未遂をした女たちである。

彼女たちは・・・松吉を許した正妻の裏切りに怒り・・・我を忘れていたのだった。

殺気立った愛人たちを穏やかに迎える妻。

「毒を盛らなかったんですか」

「はい」

「私たちを裏切ったんですか」

「はい」

「ひどい・・・」

睦を囲む九人の喪服モードの女たち。

女生徒による集団いじめのよくみる情景である。

「何かお飲みになりますか」

「アイスカフェラテを・・・」

ぶっかけられるための九杯のアイスカフェラテがスタンバイされる。

使用後にスタッフが美味しくいただけないキエモノである。

「私たちがどれほど傷ついたか・・・わかってるんですか」

「傷ついた?」

「せっかく・・・すべてを忘れてやり直せると思ったのに・・・」

「それで・・・私にどうしろと・・・」

「とりあえず土下座してください」

「なんなら・・・手伝いますよ」

「何を?」

「土下座を」

「あなたが土下座なさるの」

「え」

「人のものに手を出した泥棒猫が何を言ってやがるんだい」

極道の妻モードに切り替わった正妻の正論に正気に返る愛人たちである。

(た・し・か・に)

(裁判沙汰になったら)

(100%負ける)

(慰謝料とられる)

(お金ない)

(これはまずいことですよこれは)

(私たちは愛人だった・・・悪いのは最初からこっち・・・反論の余地などない)

「睦さん・・・落ちついて」

「このどブスがっ」

何故か・・・アイスカフェラテは・・・佳代にだけ浴びせられるのだった。

まあ・・・最初の愛人こそが・・・睦にとって夫の不倫の発端である。

不倫される地獄の始りは・・・睦にとって佳代なのだな。

一杯・・・二杯・・・三杯・・・九杯のアイスカフェラテ。

「もう・・・やめてあげて・・・」

「かわいい・・・お嬢ちゃん・・・」

ついにフリッツ・フォン・エリック(1929~1997)の必殺技・アイアン・クロー(鉄の爪)を志乃に仕掛ける睦。

「お嬢ちゃんのかわいい顔を握りつぶしてやろうか・・・ねえ・・・マネージャーさん」

「ひ」と喉を鳴らす冴英である。

「土下座するのはあんたらだろうが」

「すみませんでした」

「声が小さいんだよ」

「すみませんでした」

「聞こえないね」

「すみませんでした~」

「一つだけ教えてあげるよ・・・あの男とは離婚した・・・あんなつまらない男・・・どうして好きになったのか・・・結局、独り占めがしたかっただけなのかもしれないねえ・・・後は・・・煮るなり焼くなりあんたらの好きにしな!」

「えええええ」

正妻の制裁から解放されて娑婆の空気を吸う九人の愛人たち。

「佳代さん・・・大丈夫ですか」

「あたしゃ・・・アイスカフェラテで溺死するところだったよ」

そこへ・・・通りかかる・・・十一月(霜月)の愛人・霜山奈美(田口千晶)と十二月(師走)の愛人・師田真央(谷澤恵里香)とイチャイチャしている松吉・・・。

正妻に受けた屈辱に萎えた愛人たちの心に激しい復讐の炎が燃えあがるのだった。

「ちょっと・・・」

本能的な恐怖を感じた松吉は新愛人の背後に隠れる。

「何よ・・・あんたたち・・・」

「この人たちに・・・逆らわない方がいいですよ」

九人の旧愛人たちの殺気に・・・生命の危機を感じる新愛人たちだった。

「静かなところに行きましょうか・・・」

廃墟に連れこまれる松吉だった。

「君たち・・・一体・・・何を」

「おだまり」

「この女好きが」

「だって」

「勝手にしゃべるな」

「本当に懲りない男だな」

「人の人生・・・めちゃくちゃにしておいて」

「そんな」

「うるさいんだよ」

口封じされるて無力化する松吉だった。

「土下座しな」

「すみませんでした」

正座して頭を下げる松吉。

「他の人はどうだかわからないけど」と微笑む佳代。「私は風さんのこと・・・許さない」

「え」

「今度は私一人で殺って・・・一人で警察に出頭する」

「そんな・・・」

「リーダーとしてけじめをつけたいんだよ」

「姉さん・・・」

「みんな・・・手伝っておくれ・・・動けないように抑えて」

「や・・・やめて・・・」

飲めば死ぬクスリを松吉の口に流し込もうとする佳代を久未が制止する。

「ダメだよ・・・佳代さん」

「止めないで・・・久未ちゃん」

「こんな男・・・死んでも構わないけど・・・それじゃ・・・佳代さんが幸せになれないよ」

「だけど・・・私たちは殺されたのよ」

「生きてるじゃないですか・・・でも殺したら本当に・・・佳代さんが不幸になってしまう」

「それは・・・久未ちゃんは若いから・・・まだやり直せるかもしれないけど」

「佳代さん・・・殺したら・・・お芝居できなくなってしまいますよ」

「え」

「佳代さんのお芝居・・・そりゃつまんないし、素人の私から見ても才能ないし・・・二度と見に行きたいと思わないけど・・・舞台の佳代さんは幸せそうでした」

「・・・」

「そうね・・・佳代さんには・・・劇団我慢汁があるじゃない」と夏希。

「絞り汁!」

「とにかく・・・この男に復讐するためには・・・私たちが幸せになることが肝心なんです」

「そうね・・・女優として成功していつかアカデミー賞をとって・・・この男を見返してやるわ」

「・・・」

女たちは松吉を残して退場する。

苦悶する松吉・・・。

「う・・・足が・・・痺れた」

土下座はつらいよ・・・か。

その後・・・松吉は・・・「低視聴率」や「長期休養」のペナルティーとして子会社に飛ばされたのだった。

そこで松吉は・・・実年齢(51)の経理のおばちゃん・美佐(真下有紀)を食事に誘うのだった。

松吉の辞書に「反省」という言葉はないのだった。

睦は・・・若い妻帯者の男と不倫に走る。

お相手は・・・志乃を「仕事部屋」に連れこんで独身を詐称していた浦上紀章(水上剣星)だった!

カフェで浦上の愛人(阿井莉沙)に呼び出された睦は衝撃の事実を告げられる。

「浦上には・・・私とあなたを含めて九人の愛人がいるのよ」

「あらまあ・・・」

劇団絞り汁「遥かなるサンフランシスコ」が開演する。

久未たちは・・・みんなで・・・観客席についた。

「つまらないんでしょうねえ」

「でも・・・佳代さん、彼氏が出来たみたいですよ」

「え」

「同じ劇団の人だとか」

「我慢汁の」

「絞り汁ですよ」

「変な意味になっちゃうし」

「最後の最後で下ネタか」

久未は・・・舞台の上で幸せそうな佳代を見た。

「もう・・・手遅れなのよ」

「何故です」

「心のパスポートが期限切れだから」

終演後・・・狭い楽屋に満載となる九人の女たち。

佳代は問いかける。

「どうだった?」

その答えは・・・秘すが花なのだ・・・おあとがよろしいようで・・・。

知ってるかい?

恋はフィクション

すべては夢物語

傷ついたり傷つけられたり

裏切ったり裏切られたり

それはみんな

本当のことじゃないんだよ

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2016年12月 1日 (木)

拝啓、民泊様。(黒木メイサ)妻を連帯保証人にする男(新井浩文)

谷間である。

今季は・・・「レンタル救世主」の主人公も会社を解雇されてしまうわけだが・・・こちらは主人公の夫が会社をリストラされてしまうのである。

なんだか・・・恥ずかしいドラマに仕上がっている「レンタル救世主」と比較すると・・・ほんわかと仕上がっている。

30分番組×6話なので・・・中身は二時間あるかないか・・・つまり「映画」サイズだ。

実際、六話まとめて見た方が・・・それなりの満足感がある。

主人公は黒木メイサなのだが・・・主役はほぼ新井浩文だ。

IT企業の一種に務めていたサラリーマンということでは・・・「逃げ恥」のヒラマサにも通じている。

そういう会社が普通に描かれる時代なんだな。

もう仰々しくIT企業を描いていたらダサイわけである。

「過酷な現実」にいかにも対応できない感じの主人公の夫が・・・「やる時はやる」感じがハートウォーミングなのである。

東京の城南部である大田区は国家戦略特別区域指定で旅館業法上の特例扱いが2015年10月に認定されている。

大田区という「ゆるくてしぶとい町」が・・・ドラマに異様にマッチしているのである。

で、『拝啓、民泊様。・第1~最終回(全6話)』(TBSテレビ201610260050~)脚本・野村伸一、演出・谷内田彰久を見た。東京都大田区の労働基準監督署に勤務する山下沙織(黒木メイサ)は不良経営者や不良労働者をハードに監督する公務員である。九歳年上の夫である寛太(新井浩文)はゲーム会社でデバッグ(コンピュータプログラムのバグを修正する作業)を担当するサラリーマンだったが・・・突然、リストラされてしまう。妻は不当解雇の専門家なので相談すればいいわけだが・・・リストラされたことを家族に内緒にしたがるのがお約束というものだ。職場の後輩で優秀なプログラマーの畠山満(与座重理久)は寛太の身を案じ軽い気持ちで転職先を検索する。

「デバッグ専門だと条件・・・いいのないですね」

「だな」

「山下さん・・・いっそ・・・起業したらどうですか」

「そんなの無理だよ」

「こんなのありました・・・」

いかにも怪しいセミナー商法のサイトにアクセスしてしまう二人・・・。

「リストラ」で我を失っている寛太は藁にもすがる思いで・・・「民泊経営セミナー」に参加してしまうのであった。

いかにも怪しい民泊管理会社ハウスフリーエージェント代表・民沢琢己(島丈明)のいかにも怪しいネットビジネス業界の風雲児的口車に乗せられてしまう寛太である。

「あなたに無限の可能性を見た」

「え」

「成功の匂いがします」

「ええ」

「特別の物件を紹介します」

「えええ」

「不動産を購入し・・・民泊のオーナーとなる・・・運営管理はまかせて・・・報酬を受け取るだけ」といういかにも怪しい話を信じてしまう寛太だった。

後輩であり・・・妻の沙織の兄であり・・・銭湯「太平湯」の経営者である江南昌平(中野裕太)に相談する寛太。

「バケーションレンタルか・・・懐かしいな」

英国留学の経験のある昌平は「民泊」のシステムにそれなりの理解がある。

昌平が英語や中国語も話せる教養人で・・・妹思いの兄であることが・・・寛太の救いになっているという仕掛けである。

寛太は・・・沙織を・・・「物件」に連れていく。

「この家・・・どう思う?」

「どうって・・・?」

「買おうと思うんだ」

ダッシュで逃げだす沙織だった。

追いすがる寛太は土下座をする。

「連帯保証人になってください」

堅実無比な沙織が・・・夫を愛していることが・・・寛太の救いになっているという仕掛けである。

いかにも怪しい「ハウスフリーエージェント」の担当者・久米始(末松暢茂)は「運営管理はおまかせください・・・オーナー様はゲストに鍵を渡すだけです」といかにも怪しいことを言う。

しかし・・・実際は定員オーバーのゲストを招き、清掃などの管理も手抜きで・・・寛太は「売れ残った物件をローンを組ませて買わされた」カモに過ぎないのである。

ゲストはほとんど外国人で・・・寛太は対処できず・・・昌平にすがる。

仕方なく、昌平は近所の焼肉店「光寿」でアルバイトするコスプレイヤーの立川美由(今野杏南・・・「アオイホノオ」の高橋留美子である)に銭湯の番台を預ける始末なのであった。

「俺たちをバカにしているのか」と・・・ゲストたちは素晴らしいインターネットの世界で寛太の「民泊ビジネス」を酷評するのだった。

オーナーではなくホストにならなければならない寛太だったが・・・失業保険のためにハローワークにも通わねばならず・・・気持ちが定まらない。

「約束の時間に遅れてすみません」

「大丈夫ですか」

「民泊を始めたもので・・・」

「それは事業をなさっているということですか」

「はい」

「それでは失業手当を受けることはできません」

「え」

職業安定所の職員・橋本章雄(日比大介)も少し呆れるのだった。

寛太は・・・少しバカなのである。

「だめですよ・・・そういうことは内緒にしなければ・・・」と完全に怪しいアドバイスをする民沢代表である。

なんとなく危機感を抱く寛太の元へ・・・青森県から父親の山下寛十郎(鈴木正幸)が上京する。

十年前・・・寛太の母親が他界するまで旅館「寛心荘」を経営していた寛十郎は息子が宿泊施設を始めたと聞き・・・開業祝いにやってきたのだった。

寛十郎は寛太に「おもてなし」の心を伝えようとするが・・・息子はそれどころではない心境だった。

韓国からの旅行者・キム・ウンジョン(韓英恵)は寛十郎の「おもてなし」に感動するが・・・ついに「リストラ」のことが沙織に発覚する修羅場に突入。

「どうするつもり」

「だから・・・民泊で・・・結果を出そうと・・・」

「結果が出るまで・・・実家に帰る」

「え」

沙織の家出に・・・恐慌に陥る寛太である。

キム・ウンジョンは旅行者には人気のブロガーで・・・アップされた夫婦喧嘩の動画は・・・素晴らしいインターネットの世界の一部愛好家に喝采される。

やがて・・・区役所の民泊担当者・小山悟(岡安泰樹)に呼び出される寛太・・・。

「特区民泊の認可どころか・・・申請もされていません」

「え」

「営業は認められません」

ついに・・・ハウスフリーエージェントに怒鳴りこむ寛太だった。

「どういうことですか」

「グレーゾーンだから・・・うまみがあるんですよ・・・申請なんかしたら規制に縛られて儲かりません」

情報商材詐偽のグレーゾーンにいるブラック企業の相手をしていることに・・・寛太はついに気がついた。

「うちのアカウント・・・返してください」

「どうするつもりですか・・・ローンだってあるのに」

「とにかく営業はやめます」

家を閉めた寛太・・・そこへゲストがやってくる。

「この家は祖父の家だったんです・・・あるブログの動画で拝見しまして・・・」

池本龍成(村上純)は海外在住の商社マンだった。

妻のエリサ(アリシア)を伴って一時帰国し・・・滞在中に祖父が暮らしていた家で一泊しようと望んだのだった。

事情を知った寛太は・・・池本夫妻に屋内を案内する。

寛太はふと訪ねた。

「おもてなしって・・・何なんでしょうね」

「私は今・・・充分にもてなされている気がしますよ」

寛太の心は疼く。

プログラマーの畠山満が再就職した会社に誘われた寛太は・・・定職に就いたことで・・・心のゆとりを取り戻す。

しかし・・・沙織は帰ってこなかった。

昌平は・・・沙織について・・・義理の弟に語る。

「十年前に両親が死んで・・・銭湯をついでから・・・妹は僕に少し後ろめたさを感じていると思う・・・でも・・・僕は当然のことをしたまでなんだ・・・妹は・・・先輩が・・・あきらめない姿を見たいと思うんです・・・妹は・・・先輩のそういうところに惚れているから・・・」

「・・・」

寛太は・・・妻の愛を取り戻すために・・・区役所に向い・・・「民泊」の申請を一からやりなおすのだった。

近所の「顔」である・・・横田(段丈てつを)や銭湯の常連客(深沢敦)に了解を求め、清掃会社などと再契約を結ぶ・・・そして・・・寛太は「民泊」のホストになるのだった。

「寛心荘」の看板を掲げた寛太から送信された画像を見て・・・沙織は微笑んだ。

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