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2016年12月12日 (月)

あなたの唇がなかったら私の唇もないのと同じ(長澤まさみ)

知れば知るほど面白いということはある。

基本的につまらないのは知らないからだとも言える。

知りすぎて飽きてしまった・・・というのは頭の悪い証拠だ。

人間は本当に何かを知ることなどできないということがわかっていないのである。

そういう意味で・・・真田幸村ではなかったかもしれない真田信繁と実在しなかったかもしれない高梨内記の娘の五月六日の逢瀬・・・戦国ロマンで一同大爆笑の悲喜劇だったという他はない。

長澤まさみと新垣結衣という21世紀を代表する美人女優がキスを競演する師走なのである。

ドラマ「リーガル・ハイ」の視聴者はさらに・・・一種の達成感を味わっただろう。

10年前なら「セーラー服と機関銃」の頃だなあ。

大河ドラマ「真田丸」では男のロマンが炸裂するわけである。

なにしろ・・・長澤まさみをこれ以上なく冷淡にあしらったあげくに・・・最後の最後まで一途に慕ってくれるのである。

こんな都合のいい長澤まさみがあっただろうか・・・いやない・・・である。

「功名が辻」の甲賀のくのいち小りん、「天地人」の真田のくのいち初音と架空の登場人物かつ「くのいち」という長澤まさみが・・・歴史上の登場人物でありヒロインでありながら・・・結局、くのいちだったという二度あることは三度あるなのである。

ふりかえってみよう・・・天正十年(1582年)・・・高梨内記の娘「きり」はローティーンだったと思われる。

武田家滅亡後・・・幼馴染の信繫と人質の道を歩む日々。

しかし、天正十三年(1585年)・・・第一次上田合戦の頃、信繫は最初の妻・・・堀田作兵衛の妹「梅」を迎える。

天正十八年(1589年)・・・小田原征伐の頃・・・秀吉の家臣となった信繫とともに大坂城に棲むきりはすでに二十代になっている。

信繫には正室の大谷吉継の娘や側室の豊臣秀次の娘が寄り添うが・・・きりは侍女務めである。

慶長五年(1600年)・・・関ヶ原の合戦の頃には侍女のエキスパートのような感じですでに三十代である。

そして・・・慶長二十年(1615年)・・・四十代も半ば過ぎて・・・なのである。

これはロマンだよなあ・・・ロマンと言う他はないなあ・・・。

で、『真田丸・第49回』(NHK総合20161211PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はいろいろな意味で大河ドラマ史上最高のヒロインといえる高梨内記の娘きりの描き下ろしイラスト第三弾大公開でお得でございます。豊臣を滅ぼす理由を「乱世の終息」のためとも「天朝」のためともまして「日の本」のためとも言わない家康。あくまで・・・「徳川」のため・・・つまり「自分」のためであると語る奥ゆかしさ。一方、「義」に従わず「力」に従った景勝は・・・それを咎めだてはしない。ただ・・・「理想」に生きる「真田幸村」を敬愛するのみである。生き残った老将たちの苦い共感の宴・・・まさにつみあげた話の結末でございましたな。家康にとっても景勝にとっても・・・ただ滅びに殉じるばかりの真田幸村は憧れの存在なのですねえ。軟弱だった二代目もそれなりに厳しい世の道理を知るまでになった。家康の深謀遠慮は最晩年になっても冴えわたる感じです。信繫一家の辛酸は「乱取り」方向ではなく「美談」の方向に舵をきりましたが・・・まあ・・・伊達政宗をそれほど貶められない以上、許容範囲でございます。伊達家家臣の末裔としてはむしろ喜ばしいことです。やはり血は水よりも濃いのです。そして・・・ついにきりが「幸せ」に・・・。ラブコメとしても成立する・・・恐ろしい大河ドラマでございましたあああああああっ。幸村の武芸の冴えも流石でございましたよねえ。阿梅を連れ帰ったのは片倉重長ですが・・・そこはあくまでフィクションでございますからあああああっ。

Sanada49 慶長二十年(1615年)四月十日、徳川家康は名古屋に到着。十二日、徳川義直と浅野長晟の妹の婚義が行われる。十三日、大野治長は豊臣秀頼の出陣を促す真田信繁の提案を拒絶した。家康は山内忠義など四国勢に出陣を命じる。十五日、治長は長晟に調略を仕掛け拒絶された。十八日、家康が上洛。十九日、家康は大野治純に治長の見舞いを命じる。二十一日、将軍徳川秀忠が伏見城に入城。二十四日、家康は大蔵卿局、常高院などに「牢人召し放ち」「豊臣秀頼の大和郡山城への移転」という和睦条件を託す。二十五日、藤堂高虎は河内国に出陣。二十六日、水野勝成が大和国に出陣。大野治房は筒井定慶の大和郡山城を攻略。二十七日、治房は大和国から撤退。二十八日、治房は堺を焼き打ち。紀州から長晟が出陣。二十九日、浅野勢に突入した大坂方先鋒の塙直之が討ち死に。五月一日、後藤基次、真田信繁ら二万が出陣する。五日、河内国平野の野営地から基次が先鋒として道明寺に出陣。六日、小松山に布陣した基次は大和口勢の水野勝成、松平忠明、伊達政宗らに包囲殲滅される。木村重成、長宗我部盛親ら一万は河内口勢の藤堂高虎、井伊直孝を先鋒とする家康・秀忠の本軍十二万と遭遇し殲滅される。真田信繁、毛利勝永、明石全登ら一万五千は道明寺付近で伊達政宗ら大和口勢と対峙。夕刻・・・若江の敗報が両軍に伝わり、豊臣方は天王寺方面に退却。徳川軍は追撃を控えた。

「幸村様・・・家康は将軍とともに立石越えでごいす」

「仕舞ったな・・・」

道明寺方面に進んでいた真田勢は佐助の報告で停止する。

徳川軍の二つの攻め口である大和口と河内口・・・山越えを避けて家康が大和口を進むと予測した幸村の読みは外れた。

幸村は忍び騎馬を用いて大和口を南方に右回して・・・家康本陣に突入する目算が狂ったのを感じる。

「才蔵が霧隠れの秘術を用いて・・・明智忍軍を誘導・・・藤堂高虎の甲賀忍軍に打撃を与えましたが・・・多勢に無勢でごいす」

「さもありなん」

「はらめたまえ・・・きよめたまえ」

信貴山中を二万の旗本に囲まれた家康の旗印はゆっくりと西に進んでいる。

その前方に徳川秀忠の旗本衆二万五千・・・。

その前衛に藤堂高虎、榊原康勝、井伊直孝ら三万が展開する。

八尾村の長宗我部盛親の率いる明智忍軍は霧の中から藤堂高虎勢を奇襲し、犠牲を強いるが・・・たちまち大軍に包囲されて殲滅される。

北方に展開した木村重成の五千の兵も若江村付近で榊原勢と信濃大名衆に連打され・・・重成は南下したところで井伊直孝隊と遭遇し討ち死にした。

「木村重成様・・・討ち死にでごいす」

佐助の後から戦線を離脱した才蔵が血まみれの姿を見せる。

「才蔵・・・大事ないか」

「かすり傷でございまする」

「後藤又兵衛様・・・討ち死に」

道明寺方面から戻って来た根津甚八が報告する。

「伊達勢の忍び鉄砲隊の餌食となりましてございます」

「お味方はまもなく敗走してまいります」

望月六郎が続報を告げる。

幸村は作戦変更を指令する。

「鉄砲忍びを散開させよ」

先行していた忍び騎馬隊が反転して後方に下がっていく。

真田の鉄砲忍びたちは道明寺に通じる道沿いに側面展開する。

惨めに敗走する後藤勢の足軽を追って・・・早くも伊達軍の先鋒部隊が現れた。

幸村は忍び花火を打ち上げる。

それを合図に散会した真田の鉄砲忍びたちは狙撃を開始する。

喚声をあげて突入して来た伊達勢先鋒はたちまちなぎ倒され沈黙する。

「止まれええええ」

伊達前衛部隊を指揮する片倉重長の大音声が響く。

すでに夕暮れは近い。

伊達の鉄砲忍びも散開し、銃撃戦が展開した。

南方から馬蹄の響きが押し寄せる。

伊達騎馬軍団が姿を見せる。

「伊達殿・・・このまま押し切りましょうぞ」

家康の軍監である水野勝成が進言する。

「いいや・・・真田の忍びを甘く見ては痛い目に会うわ・・・戦が長引いて夜になればはあ・・・まんずおっがねえごとになるべさ」

伊達政宗は微笑んだ。

徳川軍の追撃停止の気配を察して・・・幸村は撤退を開始する。

五月六日の戦闘は・・・豊臣軍の圧倒的敗北に終わった・・・。

関連するキッドのブログ→第48話のレビュー

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コメント

きりちゃんがようやく報われた...のか?
長い独り身期間でしたな。でも最後に報われたから幸せだったのかしら。
だけどなんかこのドラマの幸村さんは淀殿からも好かれたりとモテモテな割には誰のこともそんなに好きじゃないようにも見えたりして。

まあでも最初は鬱陶しいキャラだったきりちゃんがここまでいい女になったのはよかったです。
でも側室の存在は時代劇のドラマでもタブーになったのかしら?(;^ω^)
きりちゃんもここまでついてくるキャラにするなら途中で側室にしてあげて欲しかったですよ。
なにか損な役回りですな。

損な役回りといえば大蔵卿局もこのドラマではずいぶん損な役回りにされちゃって。
例のお堀の件も史実では徳川方が外堀だけ埋めるはずが約束破ってどんどん内堀まで埋めちゃったというのが通説なのに。まあ一応今回フォローが入ってよかったですね。

次回はいよいよ最終回ですが、幸村さんは壮絶に戦死するのはわかってるのできりちゃんがどうなるか気になりますね。

投稿: 出雲 | 2016年12月15日 (木) 14時24分

~~☀~~出雲様、いらっしゃいませ~~☀~~

「このドラマはフィクションです」

という但し書きは・・・つまり「ドラマと現実の区別」がつかない一部お茶の間の皆さまのために生れた言葉です。

女性が「産むための道具」だった時代について
お茶の間にお届けする時に
制作者たちは・・・この一部の人々の反応に
惧れ慄くものなのでございます。

そういうわけで
「公式の愛人」などという存在は
なるべく隠蔽し・・・お茶の間の目には
触れさせたくないと考えるものなのですねえ。

だから・・・直江とか・・・官兵衛とか
一夫一婦制の信奉者が主役の座を射止めるのでございます。

真田信繫の場合は側室多数、子沢山なので
いろいろと苦しい配慮がございましたよねえ。

ドラマ的には信繫が生涯で心から
愛したのは先妻のお梅ちゃんだけで
継室(後妻)もあくまで
先妻と死別したのでそれなりに・・・という描かれ方。

きりの場合は脚本的には穏便だったようですが
主役の人の大胆なアドリブで
「最高のラブコメ」に昇華したとかしないとか。

受信料を払ってくださる皆さまのための自称公共放送としては後ろ指だけはさされたくない姿勢を維持することが肝心・・・ということなのでしょう。

内堀の埋め立てについては
約束されたことであるが
実施担当は豊臣方・・・。
しかし・・・約束が果たされなかったために
徳川方が力を貸したという説もあるようです。

何にせよ・・・夏の陣直前まで
大蔵卿局は徳川家康と行動を共にして
外交交渉をしていたので
大阪城にはほぼ不在なのでございました。

結果論として・・・豊臣方は徳川将軍家に
無謀な戦に追い込まれたことは間違いないので・・・
そのシンボルとして・・・大蔵卿局が描かれたということでしょう。

なにしろ・・・淀殿の乳母である大蔵卿局ですから
豊臣家のお家大事を優先させたことは間違いないのです。

影武者・家康の件もありましたからねえ。
果たして・・・信繫が本当に死ぬのかどうか・・・。
最後まで楽しみな「真田丸」でございまする。

投稿: キッド | 2016年12月15日 (木) 19時14分

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