未来から来た女たちのアイドルその後で(成海璃子)
アイドルの命は短いものだ。
息の長いアイドルなんてありえない。
できればそうあって欲しいものだ。
・・・というのは勝手な美少女趣味者の願望である。
もちろん・・・アイドルからスターとなり・・・息の長いアーティストになったらなったでいいわけである。
ファンもまたアイドルとともに年老いて・・・永遠のアイドルと生涯ファンの関係を構築したって構わない。
永遠のアイドルというのは一種のモンスターだからな。
適当なところでやめておけよ。
星の数ほどいるアイドルたち・・・誰もかれもが懐かしい。
で、『リテイク 時をかける想い・第3回』(フジテレビ201612172340~)脚本・ペヤンヌマキ、演出・植田尚を見た。脚本は二年連続岸田國士戯曲賞の最終候補に残った人である。ペンネームがアレなんじゃないか・・・。しかし、山内ケンジ→タニノクロウと来ているから→ペヤンヌマキというのもあるかもしれないぜ。まあ・・・どうでもいいけどな。2022年にタイムマシンが開発され、未来から未来人が飛翔してくる世界である。ただし、時間旅行は未来から過去への一方通行であり、未来人が過去に出現した時点で・・・未来人の遡上してきた未来は失われ、別の時間軸に路線変更されたと思われる。現代人にとって・・・未来が変更されたかどうかの判断が不能であることは言うまでもない。ただ・・・未来人だけが・・・自分の知る「歴史」が変わったという認識を持つことはできる。たとえば・・・未来人が過去の自分を殺しても未来人は消失しない。未来人の存在した時間軸と・・・遡上した時間軸は別世界なのだ。この世界にはタイムパラドックスは存在しないのである。
未来人を保護するのが任務の戸籍監理課課長・新谷真治(筒井道隆)は二年前に離婚し、別れた妻は幼い娘との面会を許さない。新谷課長は受け取ってもらえぬクリスマスプレゼントを涙こらえて選ぶのだった。
その時、パートタイマー・パウエルまさ子(浅野温子)から着信がある。
「台東区で天気雨発生中」
「今、忙しいので那須野にまかせてください」
「薫ちゃんは・・・有休とってるわよ」
「・・・」
正規職員・那須野薫(成海璃子)は有給休暇中だった。
仕方なく、新谷課長は・・・台東区に向う。
台東区もかなり広いけどな・・・まあ、いいじゃないか。
例によって滞りなく白い衣装の男(新貝文規)を発見する課長である。
追跡した課長は・・・繁華街の片隅の怪しい地下スペースに入りこむ。
そこには無数の白い衣装の人々がいて・・・ステージでは白い衣装のアイドルグループ「ホワイトラバーズ」(ベースはさくらシンデレラ)がパフォーマンスを繰り広げていた。
そして・・・恐ろしい偶然で義理の弟の警視庁の柳井刑事(敦士)はホワイトラバーズのファンとして熱狂的応援をしているのだった。
「お義兄さんもファンだったんですか」
「・・・」
白い男を捜してうろつく課長に・・・「ホワイトラバーズ」のマネージャーである野々村ミヤコ(国生さゆり)が接近する。
「お客様・・・初めての方ですか」
「はい」
「ブロマイドを一枚お求めいただくと彼女たちと一緒の写真撮影が可能になりますよ」
「そういうシステムなんですか」
ふりかえるとステージでは記念撮影会が始っている。
「ホワイトラバーズ」のセンター・ポジションを務める橘マリエ(森田涼花)の前に白い男が現れた。
「今日もあの男に逢いにいくつもりでしょう・・・あいつとは別れた方がいい」
戸惑うマリエ・・・白い男は警備員に連れ出される。
課長は白い男を追うが例によって鈍足のために捕獲に失敗するのだった。
翌日・・・男性アイドルの白川エイト(小林豊)の熱狂的ファンであるパウエルは悲鳴をあげる。
「いやあああああ」
白川エイトと橘マリエの熱愛が発覚したのである。
有休から復帰した薫がつぶやく。
「白い男は・・・この事を知っていたのでは・・・」
「その可能性は高いな」
「つまり・・・二人の仲を裂くために・・・未来からマリエのファンが来たってこと・・・」
課長と薫は「ホワイトラバーズ」の常設劇場に向うが・・・「熱愛報道発覚」のために公演休止中だった。
課長は「研究生募集」のポスターに目をつけ・・・薫に応募させる。
薫はオーディションでかわいい衣装を披露するが・・・不合格になるのだった。
しかし・・・仕事熱心な薫は・・・付き人として潜り込むことに成功する。
「アイドルに大切なことは・・・夢を叶える姿をファンに見せてお金を稼ぐことよ」
野々村マネージャーは厳しくメンバーを指導するのだった。
「あなたは・・・しばらく寮の掃除でもしていなさい」
スキャンダルの渦中にあるマリエを謹慎させる。
他のメンバーは連帯責任で「お菓子禁止」になった。
薫はマネージャー見習いとして寮生活である。
同室になったのは・・・橘マリエとメンバーの一人でマリエの親友の望月ミナ(外岡えりか)だった。
ミナにも高校時代から続くシンイチという恋人がいるらしい。
「監視役ですか」
「そう言われているけど・・・私は恋愛なんて自由にするものだと思うから」
「ミナはいいよねえ・・・バレてなくて・・・」
「でも・・・彼氏が最近、アイドルなんてやめろってうるさくて」
ちなみに実年齢的には・・・。
成海璃子・・・1992年8月18日生れ(24歳)
森田涼花・・・1992年9月7日生れ(24歳)
外岡えりか・・・1991年6月11日生れ(25歳)
アイドルとしてはギリギリじゃないか・・・。
ちなみに国生さゆりは1966年12月22日生れ(49歳)で、ソロデビュー曲「バレンタイン・キッス/国生さゆりwithおニャン子クラブ」は1986年のリリース。当時19歳である。
ついでに森田涼花と外岡えりかはアイドルグループ「アイドリング!!!」の元メンバーである。
森田涼花が演じるマリエをマークする薫は・・・謎の女(伊藤かずえ)に遭遇する。
「エイトとは別れなさい」とマリエに詰め寄る謎の女。
エイトの熱狂的ファンと断定するマリエだった。
一方・・・野々村マネージャーはマリエには甘いがミナには厳しいのだった。
「ミナちゃんに厳しいですね」
「あんたみたいに・・・才能が皆無だったら・・・よかったのよ・・・中途半端な才能ほど残酷なものはないのよ」
「・・・」
薫は凹むのだった。
深夜・・・寮を抜けだしたマリエはエイトと合流しドライブに出かける。
追跡する課長と薫。
真夜中の駐車場で痴話喧嘩を始める二人だった。
「結婚しようって言ってる」
「もっと早く言ってほしかった」
そこへ・・・ナイフを持った白い男が現れる。
「マリエちゃんはボクのものだ・・・離れろ」
白い男はナイフでエイトに襲いかかる。
そこへ・・・謎の女が飛び出し・・・エイトをかばって負傷する。
「課長・・・なんとかして」
「わかった」
なんとか・・・白い男を取り押さえる課長だった。
「公務員がアイドルを救う!」
事態は表沙汰になるのだった。
のののタイム・・・素晴らしいインターネットの世界でおのののかが登場するとのののののと呟かれる現象・・・である。
法務大臣政務官秘書の大西史子(おのののか)は法務省戸籍監理課の本当の任務を知らないのだった。
「お手柄でしたね」
「・・・」
二人きりになると法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)は笑ったまま苦言を呈する。
「世間を騒がせてどうする」
「申しわけありません」
「しかも・・・逮捕された男はオバケ(未来人)じゃなかったそうだな」
「アイドルたちの会話をぬいぐるみに仕込んだ盗聴器で聞き取り・・・プライベートな情報を掴んでいたようです・・・オバケではなく単なるオバカでした」
「・・・」
「しかし・・・被害者女性の方が・・・オバケの可能性があります」
「事件が起こるのを知っていたと・・・」
「はい」
入院した謎の女を・・・マリエが見舞いに訪れた。
「ありがとうございました・・・ファンのあなたには申しわけないのですが・・エイトと結婚することにしました」
「え」
「今度のことで彼が大切な人だとわかったので・・・」
「だめよ・・・」
「すみません・・・」
「そうじゃなくて・・・あんな男と結婚したら・・・ろくなことにならないのよ」
「そんな・・・」
「私は・・・あなたに・・・私と同じ道を歩んでほしくないの」
「ごめんなさい・・・」
マリエが去ると課長が謎の女に声をかける。
「マリエさん・・・」
「え・・・」
「私は・・・未来から来た方を保護する仕事をしているものです」
「・・・」
「あの夜・・・本当はエイトさんは刺されていたんですよね」
「そうよ・・・そのために・・・私は彼との結婚を決意するの」
「・・・」
「ところが・・・エイトは夫としては最低の男だったわ・・・浮気を重ねて・・・私には子供ができなくて・・・余所で子供を作ったのよ・・・」
未来のマリエを演じる伊藤かずえは1966年12月7日生れ(50歳)である。
「不良少女とよばれて」(1984年)で長沢真琴を演じていたのは18歳の頃であった。
未来のマリエは自称48歳なので・・・現在のマリエが24歳とすれば2040年頃から遡上してきたことになる。
「だから・・・あなたは・・・事件を阻止しようとしたのですね」
「そうよ・・・あの頃・・・私は結婚を迷っていたから・・・彼が怪我をしなけば・・・アイドルを続けていたと思ったのよ」
「しかし・・・未来は変わらなかったんですね」
ミナはマリエの結婚引退に激しく動揺する。
「歌や踊りの才能があるのに・・・もったいない」
そんなミナに野々村マネージャーは冷たい言葉を吐く。
「あなたには・・・才能がないのだから・・・それこそ・・・交際している彼と結婚した方がいいんじゃない」
「彼とは別れました」
「え・・・」
「私は・・・夢をあきらめません」
「そんな・・・」
二人のやりとりを薫は見つめていた。
パウエルは簡易DNA鑑定の結果を報告する。
「謎の女とマリエの遺伝子が一致したわ・・・それから・・・薫ちゃんが入手した毛髪も同一人物でした」
「え」
「野々村マネージャーは・・・望月ミナです」
「ホワイトラバーズ・・・橘マリエ卒業ライブ」である。
楽曲は「未来プロローグ/さくらシンデレラ」である。
いつか描いた舞台へ・・・
夢は・・・物語のプロローグ・・・
輝いていた頃の自分を見つめる二人の女・・・。
「ミナ・・・あなたもここへ来ていたのね」
「あなたより早くね・・・マリエが引退した後・・・ホワイトラバーズの人気は急降下・・・私はしばらくソロで頑張ったけど・・・鳴かず飛ばすで・・・結局・・・芸能事務所のマネージャーになった・・・家庭を持って幸せそうなあなたが羨ましくて・・・一年前にここに来たのよ・・・過去の自分にアイドル辞めさせて結婚させるつもりだった」
「上手くもぐりこめたわね」
「何年・・・業界にいたと思ってんの・・・本当のマネージャーを追い出すなんて簡単だった」
「あなた・・・もう少し未来にいればよかったのよ・・・そうすれば私が離婚騒動でエイトを刺したところを見られたのに・・・」
「あらまあ・・・」
「どうして・・・ミナを辞めさせられなかったの」
「あの子たち・・・輝いている・・・今のあの子たちを・・・止めることなんて自分自身にだってできないってことよ」
「そうね・・・エイトを好きだった自分も・・・とってもかわいかった」
二人の元アイドルは顔を見合わせた。
「私たち・・・ずっと別荘暮らしになるの」
「タイムマシンの発明が公になる2022年までは・・・」
「六年後か・・・」
「六年たったら・・・もう一花咲かせたいものね」
「ババドルか・・・」
二人の元アイドルは別荘の門の彼方に消えた。
「娘さんへのクリスマスプレゼント決まりましたか」
「まだだ・・・何にすればいいと思う」
「手作りのキャンデーボックスとかどうですか」
「べっぴんさんかっ」
ゆっくりと・・・あるいは素早く・・・時は流れていく。
それぞれの心を乗せて・・・。
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