勇者たちの戦いはいつだってこれから始るのだ!(山田孝之)
このドラマの最大の問題点は・・・封印しているゲームへの誘いにつきるな。
やりたくてやりたくなってやっちゃった人も多いのではないだろうか。
戦後まもなくの子供たちは精々日が暮れるまで遊んで夜になったらマンガの読み過ぎを叱られるくらいで済んだわけだが・・・コンシューマ・ゲームの登場以来・・・それではすまない人々は確実に生み出されてしまったわけである。
いつでもどこでも一人でもゲームができるという恐ろしい時代なのだ。
やりたくてやりたくなってやっちゃって死ぬまでやり続けちゃうわけである。
朝までゲームをやっちゃってどれだけの現場に遅刻し、あるいは〆切に間に合わなかったことか。
一銭にもならないゲームのためにどれだけ大切な仕事を失い、恋人を友人を失ったことか。
禁断症状を乗り越え・・・なんとか日常に還ってきた人々を誘う・・・恐ろしい罠だ。
ドラマとドラマの間はゲームのCMの連打である。
ああ・・・ダメだ・・・この呪いを解くことはできない。
まるでヨシヒコのように・・・ゲームのスイッチを入れる一部の人々だった。
で、『勇者ヨシヒコと導かれし七人・最終回(全12話)』(テレビ東京201612240018~)脚本・演出・福田雄一を見た。ついに「とどめの剣」を入手した勇者ヨシヒコ(山田孝之)と賢者のメレブ(ムロツヨシ)、バトルマスターのダンジョー(宅麻伸)、そして魔法使いのムラサキ(木南晴夏)は最終ミッション「魔王を倒せ!」を実行するために「ベホマズン」でパーティー全員のHPを全回復し、「スクルト」でパーティー全員の守備力を高めて・・・天空の魔王ゲルゾーマ(声・堤真一)の玉座へと進む。
「勇者よ・・・よくぞここまでたどり着いたな」
「今こそ・・・玉人を召喚する時・・・」
「出でよ・・・選ばれし者たち!」
七つのオーブを投げ上げるヨシヒコ。
しかし・・・何も起こらなかった。
「あれ・・・」
「どういうこと?」
「なんらかの不具合か?」
「どうしたの?」と割とフランクな魔王だった。
「しばらく・・・お待ちください」
「あ・・・そう・・・じゃあ・・・魔物を生みだしているけど・・・いい?」
「どうぞどうぞ」
仏(佐藤二朗)が登場し状況を伝える。
「スケジュール調整がちょっと・・・ね」
「そんなこと・・・最初からわかってんだろうが」
「とにかく・・・ここは逃げて」
「逃げられるかよ」
「ほら・・・魔物を生みだすのに熱中してる隙をついて」
「・・・」
「ちょっと待った」
「ほら・・・逃げられない」
「いや・・・逃げてもいいけど・・・その前に」
魔王は「とどめの剣」を熱線で溶かすのだった。
「あ・・・」
「いつでもどうぞ」
ヨシヒコたちは逃げた!
魔王の迷宮で・・・。
「もうダメです・・・」
「どうした・・・ヨシヒコ・・・」
「とどめの剣がなくてはとどめが刺せません」
「そこを気合でなんとかするのが勇者だろう」
「いやです・・・今度死んだら・・・生き返れないのだ・・・私は死にたくない」
「え」
「世界なんて滅びたっていい」
「勇者のセリフじゃないぞ」
「私はとにかく生きていたいんだ」
「ヨシヒコ・・・」
そこへ・・・悪い仏が現れた。
「ヨシヒコ・・・見よ・・・ここは終わりの祠」
「終わりの祠・・・」
「ここには様々なエンディングが納められている・・・魔王を倒さないエンディングもあるから・・・選択するがよい」
ヨシヒコの目の前に広がる三つの扉。
ヨシヒコは赤い扉を開いた。
バースとなったダンジョーは叫んだ。
「ネロ・・・私が悪かったどこにいる」
雪が降り注ぐ。
天真爛漫なアロアとなったムラサキはヨシヒコの姿を捜す。
「ヨシヒコ・・・どこにいるの・・・ヨシヒコ」
ネロとなったヨシヒコは教会に横たわっていた。
そこに・・・忠実なパトラッシュとなったメレブが寄り添う。
「メレブさん・・・捜しにきてくれたのですね・・・まるでフランダースの犬みたいに・・・ありがとう・・・いつも一緒にいてくれて・・・私はルーベンスを見ることはできなかったけれど魔王を見ました・・・勇者としてよくやったほうだと思います・・・メレブさん・・・私は疲れました・・・なんだか・・・とても眠い・・・」
ヨシヒコは永遠の眠りにつく。
メレブヘアの天使たちが舞い降りて・・・死者となったヨシヒコを魔物の眠る黄泉の国へと導くのだった・・・。
(おわり)
「いやだあああああああ」
赤い扉から飛び出すヨシヒコ。
「死んでるじゃないですか」
「しかし・・・幸せだっただろう」
「嫌です・・・私は生きていたい・・・そして魔王を倒さなくてもなんとかなった感じで終わらせたいのです」
「では・・・次の扉を開くがよい・・・」
ヨシヒコは青い扉を開いた。
流れ出す「残酷な天使のテーゼ」・・・。
ヨシヒコは一枚のスケッチとなって揺れる。
「ここには何もない」
「何もない世界」
「フランク・ドレイクの方程式に導かれたニック・ボストロムのシミュレーション仮説に影響されたコードウェイナー・スミスの人類補完機構にインスピレーションを受けた人類補完計画は知恵の実によって群体化した人類を完全なる単体生物として再生する過程・・・」
「私は最悪です・・・臆病で・・・卑怯で・・・仲間を裏切り・・・変態で・・・」
「いいじゃないか」
「私はそんなヨシヒコでいいと思う」
「ありのままのお前で」
「ぱふぱふにまみれても」
「それもまた人生・・・」
「私は自由なのですか」
「人は最初から自由さ」
「自由というのは失うものが何もないこと」
「つまり・・・人は何も持たずに生れてくる」
「私は自由だ」
「おめでとう」とロビン(滝藤賢一)が言った。
「おめでとう」とヴァリー(城田優)が言った。
「コングラッチュレーション」とフロリア(山本美月)が言った。
「現場で」とニッテレン(徳光和夫)が言った。
「ブルーシートで」とカンダタ(高嶋政宏)が言った。
「一発収録で」とレオパルドひとみ(大地真央)が言った。
「ギャラの範囲内で」と香西そのか(川栄李奈)が言った。
一同はヨシヒコを輪になって囲む。
「おめでとう」
「なんだ・・・これは・・・意味がわからない」
流れ出す「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」・・・。
ヨシヒコは青い扉を飛び出した!
「新世紀エヴァンゲリオンのような意味不明だがすべてがうやむやな素晴らしい終わり方ではないか」
「無意味すぎる・・・魔王を倒さずとも死なずに何となく収まった感じに終わると言ってもこれでは視聴者に対して失礼すぎます」
「おっと・・・みなまで言うな」
「劇場版にしたって・・・結局、阿漕なくりかえしなんだ」
「さ、最後の扉へ」
「もう・・・うんざりだ」
電車男タイプのヘラ男になったヨシヒコはアパートの一室でゲームをしている。
コントローラーを置いたヨシヒコは友人に電話をかける。
「あ・・・俺・・・今、ゲームしてた・・・ラスボス強すぎるんで・・・やめたわ・・・これから飲みにいかない・・・どこでもいいよ・・・お・・・笑笑・・・でいいんじゃない」
そこに宅急便配達人に変装した仏が現れる。
「判子お願いします」
「拇印でいいですか」
「ボインちゃんが好きなんですか」
「ええ・・・まあ」
「お邪魔します」
「ちょっと・・・勝手に・・・何ですか」
「どうしたのかな・・・魔王を放置して・・・」
「もう・・・今回はエンディング見なくてもいいかなと・・・ラスボス見たから・・・達成感あるし」
「コツコツ内職してためた経験値は・・・」
「結局、そういうことだし」
「こら・・・仏ビーム」
仏はヨシヒコを覚醒させた。
「仏・・・」
「ゆとりですがなにか的ゲーマーに逃避している場合ではない・・・」
「しかし・・・」
「必勝の策は最後の扉の向こう側にある」
「どうやってそこへ・・・」
仏はネバーエンディングストーリーのファルコンのような「まんが日本昔ばなし」の龍のような乗り物で・・・ヨシヒコを黄色い扉の向こう側に送る。
そこは何故か色褪せた世界。
「ヨシヒコ・・・今までどこにいたの」
ヨシヒコは仲間たちと合流した。
「とどめの剣は偽物でした・・・本物はあの祠に・・・」
伝説の剣の祠で話し合う青年たち。
「誰にも抜けない伝説の剣というが・・・」
「誰でも抜けるよな」
「みんな・・・抜けないフリをして・・・」
「あいつに抜かせよう・・・」
青年たちが去った後で・・・祠に入ったヨシヒコたち。
「しかし・・・これを抜いてしまうと・・・」
「お前のいざないの剣を挿しておけばよかろう・・・」
しばらく・・・隠れて様子を見るヨシヒコたち。
そこに・・・村人たちとヒサ(岡本あずさ)・・・そして若き日のヨシヒコが現れる。
「ここは・・・カボイの村」
「つまり・・・我々は過去にいるのか」
「つまり・・・ヨシヒコは一周前のヨシヒコが置いて行ったいざないの剣を抜いたのか」
「一周前?」
「難しくてわからん」とダンジョー。
仏が現れた。
「ヨシヒコ・・・それでは・・・魔王の城へと戻れ・・・スケジュールは調整された」
「その前に仏・・・一つお願いがあります」
ヨシヒコは・・・ない知恵をしぼって秘策を考えていた。
魔王の城に到着した・・・ヨシヒコと三人の仲間・・・そして七人の選ばれし者たち。
「合成だよね・・・あるいはお面をかぶった別の人だよね」
しかし・・・七つのオーブの力は素晴らしかった。
ゲルゾーマの第一形態を打破。
「私を本気にさせたな・・・」
ゲルゾーマの第二形態を弱体化させ・・・ヨシヒコのとどめの剣が炸裂する。
「おおおお・・・・」
「やった・・・」
「ふふふ・・・勇者よ・・・今までの私なら・・・これで滅んでいただろう・・・しかし、私は進化している」
「何?」
ゲルゾーマの第三形態は一瞬で七人の選ばれし者を消滅させた。
「わははははは」
「スーパーサラリーマン左江内氏のロケ前にボイスオンリー収録か」
「メラゾーマ」
ムラサキのメラゾーマは効かなかった!
ゲルソーマの攻撃!
ムラサキは死んでしまった・・・もう復活はできない。
「ムラサキ!」
「フタメガンテ」
メレブのフタメガンテは効かなかった!
ゲルソーマの攻撃!
メレブは死んでしまった・・・もう復活はできない。
「メレブさん!
「おのれ・・・」
ダンジョーは炎の刃の力で攻撃!
ゲルソーマは自動修復した。
ゲルソーマの攻撃!
ダンジョーは死んでしまった・・・もう復活はできない。
「ダンジョーさん・・・」
「ふふふ・・・永遠の死が・・・彼らに訪れた」
「お前は・・・絶対に許さない」
「何?」
ヨシヒコの背後に無数のヨシヒコが現れた。
「過去の私を総動員した」
「なんだと・・・」
「時空を越えて・・・俺たちがお前を倒す」
「そんな馬鹿な・・・」
時空を越えたヨシヒコたちは魔王にとどめの剣を刺しまくった。
魔王は滅んだ!
しかし・・・ムラサキもメレブもダンジョーも生き返らない。
ヨシヒコの心を虚しさが吹き抜ける・・・。
仏が現れる。
「ヨシヒコたちよ・・・よくぞ・・・魔王を倒した・・・それぞれの時代に戻るがよい・・・ここであった記憶は消しておく・・・」
しかし・・・仏はうっかり・・・この世のヨシヒコを過去に飛ばした。
この世には記憶を消されたヨシヒコが残った。
しかし・・・すでに魔王を倒した世界である・・・過去のヨシヒコはこの世のカボイの村でヒサと幸せに暮らすことができるだろう。
この世のヨシヒコは記憶を残したまま・・・過去の世界に現れる。
ヨシヒコはヨシヒコと出会う前のダンジョーに出会った。
「まったく嫌な世の中になった・・・」
「行きましょう」
「おい・・・人の話を聞かんか・・・」
「もうすぐ・・・私を狙う女が現れます・・・そして・・・金髪の教祖が・・・」
「お前・・・予言者か」
「いいえ・・・二周目です」
「二周目?」
「急ぎましょう・・・時空を混乱させたので・・・この世界の魔王は前より・・・強敵かもしれない」
「なんだと」
「そう引いておけば・・・年末年始六時間時代劇特番としてスペシャル化もあるかもしれません」
「そんなこと言ってたけど・・・映画化にはならなかったよな・・・」
「ああ・・・もうエンドロールが流れてしまう」
時はめぐる風車・・・。
またの開幕をお茶の間一同お待ちしています。
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