わたしのいとしいつわものがとうとういってしまわれた(長澤まさみ)
歴史上の登場人物が人として生きていたことが描かれるドラマとしては大河史上屈指の出来栄えと言えるだろう。
少なくとも真田幸村が歴史上では真田信繁であったことを多くのお茶の間の人々は知ったのである。
「真田丸」を堪能したお茶の間は「北方領土」が簡単には返還されないことを知ったはずである。
戦乱の世を終わらせるために・・・織田信長や豊臣秀吉そして徳川家康がどれほどの血を流したことだろう。
平和とはそういう血と汗の結晶なのである。
一滴の血も流さずに奪われていた領土を取り戻すことなどできるわけがないのである。
つまり・・・日露首脳会談の結果に落胆するような人々は歴史の根本がわかっていないと言える。
真田幸村は「義」のために戦ったと言う。
しかし・・・その義とは・・・結局のところ・・・己の・・・己の家族の・・・己の味方の勝利を目指すものだった。
そして幸村は敗れた。
幸村は戦死して幸村の家族は離散し幸村の味方は滅んだ。
敗因は様々あるが・・・物語では豊臣家の台所頭・大角与左衛門の私怨による裏切りが軸である。
難攻不落の大坂城は料理人の放火により落城に導かれたのである。
ロシア人がロシアより日本を愛した時・・・北方領土は還ってきます。
で、『真田丸・最終回(全50話)』(NHK総合20161218PM8~) 脚本・三谷幸喜、演出・木村隆文を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに来た真田幸村最後の戦いの戦友・毛利勝永と最後まで希望を失わなかった真田左衛門佐幸村の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。画伯の傑作イラスト多数が・・・「真田丸」の充実ぶりを物語ります。本年度は虚しく行数を数えることもなく慶賀の至りでございました。ついに徳川秀忠とか千とかすえとか阿梅とかは来ませんでしたが今後もあくまでマイペースでお願い申しあげます。限られた予算とスケジュールの中でそれなりにスペクタクルも展開し、やればできるじゃないかというテキストのような本年度の大河ドラマ。やはり・・・基本は脚本ですよねえ。歴史というものを愛する者だけが描くことを許される戦国絵巻が・・・見事に繰り広げられた一年でございました。「姫武将」や「西郷どん」はともかくとして・・・クドカン大河までは長い道のりが待っておりますねえ・・・。どうなることやら・・・。
慶長二十年(1615年)五月七日、徳川家康は大坂城を包囲しつつ、南側に鶴翼の陣形を構築した。これに対し豊臣秀頼は大坂城に篭城。茶臼山、天王寺、岡山に防衛ラインを構築する。茶臼山を目指す徳川左翼は松平忠直、浅野長晟ら六万、岡山を目指す徳川右翼は徳川秀忠、前田利常ら六万、中央は左右に連動して本多忠朝ら二万が前衛となり、その背後に家康が四万の軍勢で本陣を構える。南方から攻める徳川軍は総勢十八万である。対する豊臣軍は真田信繁七千、毛利勝永七千を中央突撃部隊として編成し、大野治房五千、大野治長五千が左右に展開し、防御姿勢をとる。大坂城周辺の最終防御に残る兵は五千、総勢三万にも満たない。前日の敗戦により十万を越えていた雑兵たちの半数以上が逃亡していた。正午に徳川左翼が攻撃を開始するが塹壕からの射撃を行う豊臣軍に前進を阻止される。突撃部隊の第一陣として毛利勝永が本多忠朝勢に突入を開始。射撃戦となり忠朝は討ち死に。忠朝勢は敗走し、その直後に徳川軍に裏切りが発生したという虚報が流れ、忠朝勢後方の榊原康勝、仙石忠政が動揺し、退却を開始する。戦場は混乱し、家康本陣前方に空白地帯が生じる。松平忠直勢は防衛ラインを突破し、大坂城に向う。忠直勢と入れ違いに南方に進出した真田突撃部隊は家康本陣を急襲する。この頃、大坂城では台所頭が放火し、出火。豊臣方に動揺が広がる。防衛ラインは各所で突破され、真田、毛利の突撃部隊は孤立し、消耗戦を強いられる。信繫は安居天神で討ち死にする。戦闘開始から三時間後、豊臣全軍は大坂城に退却した。五月八日、大坂城を包囲した徳川軍は突入を開始。阿鼻叫喚の地獄絵図の中、千姫は大坂城を脱出。豊臣方は金蔵で自刃し業火に包まれる。
茶臼山の家康は次々と届けられる真田幸村の首にうんざりしていた。
「真田左衛門佐は・・・一体、何人おるのじゃ・・・」
家康の左右には左衛門佐の顔を知る真田信尹、織田有楽斎、直江兼続などが控えている。
「どれもみな・・・言われれば真田のようであり・・・しかし・・・血の抜けた首は判別が難しく」
「これなどは顔が焼かれていてよくわかり申さぬ」
「交渉に現れた源次郎が影武者であったかも定かならず」
「・・・もうよい・・・」
家康は老いた顔を顰めた。
茶臼山には家康のための寝所が構築されている。
家康の世話を焼くのはくのいちの服部采女である。初代半蔵の娘だった。
采女は家康を寝かしつけた時に・・・殺気を感じた。
侍女の一人が采女の反応に気が付き、正体を見せる。
くのいちの才蔵だった。
「さすがは・・・半蔵の手のものじゃ・・・」
「千姫様に従ってきた侍女の匂いがするわ・・・いつの間に入れ替わった」
「そんなことはどうでもよいわ」
「しかり」
才蔵の左右から采女の配下が忍び短刀を突き出す。
才蔵が飛んでかわしたところを采女の手裏剣が襲った。
才蔵は心臓を刺されていた。
「仕留めよ」
「遅し」
「む・・・」
采女が火縄の匂いを嗅ぎ取った瞬間、才蔵は爆散した。
家康の寝所は猛火に包まれた。
佐助は台所頭を追っていた。
大和に向う森の中で・・・台所頭は振り返る。
「猿飛の術・・・佐助か」
「覚悟しろ」
「ふふふ・・・忍びに覚悟など無用」
佐助は身体に異変を感じる。
「お」
「お主の渡った樹木の木の葉には痺れ薬を塗っておいた・・・」
「お前は・・・」
「半蔵よ・・・佐助・・・術に溺れたのう・・・」
「さすがだ・・・しかし・・・」
佐助は樹上から落下する。
半蔵はとどめを刺そうとして首元に刺激を感じる。
振り返った半蔵は・・・無数の猿たちが吹き矢を咥えているのを見た。
「忍猿か・・・」
半蔵の意識は遠のき・・・樹上から落ちた。
忍猿は佐助を囲む。
佐助は薄目をあけ微笑んだ。
「大丈夫じゃ・・・」
夏の夜の森に静寂が訪れる・・・。
関連するキッドのブログ→第49話のレビュー
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コメント
今期はどうもお疲れ様でした。
本当に素晴らしい大河でした。
信繁の物語が終わり
信之が船長となって
新たな真田丸が始まる、
見事な流れでございました。
個人的には
幸村の子を宿した女たちのその後とか
その後の信之のありようとかを
スピンオフで見たいものです。
イラストの方は正直、後20人くらい描きたい
人物がいて、今年は逆に絞り込みが大変でした
('◇')ゞ
ま、折を見て
こつこつと描いていこうかなって感じです
('◇')ゞ
投稿: ikasama4 | 2016年12月19日 (月) 17時42分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
わざわざのお運び恐縮でございます。
信之と信繫もまた源氏の兄弟なのですよねえ。
頼朝と義経で言えば
幸村はまさしく義経のポジション。
豊臣家は関白という公家の一族ともいえますから
信繫は秀吉の手に踊らされたわけで
堀田作兵衛が仁王立ちになるのは
仕方ないというか当然というか・・・。
官位の件でもめたりしたのも
それを窺わせます。
信之は家康という頼朝マニアの手の中におかれて
歴史を繰り返します。
そういう妄想が花開く大河ドラマは
本当に久しぶりですねえ。
少なくとも脚本家は・・・歴史をこよなく愛する人に
お願いしたいものでございます。
登場人物はみんなちょっと変りもので
特に女性陣は
みんな変な女ばかりでしたが
それが人間というものでございますよねえ。
キッドはスルメの人とか
名札の人とか
アーメンの人とか
うらくさいの人とか
土佐の人とか
いろいろと期待していましたが
あくまでマイペースでお願いします。
毎回・・・うん、今回はこの人だよなあ・・・と
納得のイラスト描き下ろしでございました。
いよいよ年の瀬・・・御身大切に願います。
投稿: キッド | 2016年12月19日 (月) 23時08分
キッドさん☆
大河ドラマ 全50話
レビューお疲れ様でした
この週末に録りためていたドラマの最終回を一気に見たのですが
当然といえば当然かもしれませんが
真田丸 最終回が一番 感動しました
爽やかなというよりは
じわじわと心の奥底からこみ上げてくるような熱くて扱いずらい感情
上手く表現できませんが とても良かったです
大河ドラマは福山さんが主役だから見た竜馬伝以来で
その竜馬伝も途中でドラマとしてあまり面白く感じなくなってしまったのですが 自分が完走した大河ドラマは他に大昔に放映された
伊達政宗と武田信玄
武田信玄に関してはまだ記憶に残っているシーンもあります
中井貴一さんがステキでした
歴史に疎すぎるのでコメントをするのもアレなんですが^^;
堺さん目当てで見始めたのに なんだか主役は草刈さんのようにも見え
やっぱり大河ドラマは脇役の方がオイシイポジションだなぁ
なんて思いながら見ていて 幸村がやっと主役になると
自分の中では破滅に向かっているようにも見えて 上手く言えませんが
秀吉が生きていた頃の方が気楽に楽しめたのです
でも 最終回を見て 堺雅人さんは やはり主役だったと
その器のある実力のある役者さんじゃないと難しい役柄だった気もしますが見事に演じられていたと思いました
前半 真田家をしっかりと描いてくれたこそ感じられたラストの感動だったと思います
次回 大河ドラマを見るのはクドカンまで待たなくちゃいけないかもしれませんが 1年を通して見て最終回で味わえる感動は
やっぱり特別なものだと思うので
大河ドラマは永遠に不滅でお願いしたいです^ ^
投稿: chiru | 2016年12月25日 (日) 17時21分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
ねぎらいのお言葉痛み入ります。
全50話のドラマのコンプリートは
もはや慣れたものですが
年々・・・しんどさは増すわけでございます。
2012年のブログ再開以来・・・。
平清盛に痺れたものの・・・。
八重の桜の幕末以後にものたりなさを感じ・・・。
軍師官兵衛の平坦さにガッカリして・・・。
花燃ゆに萌えず・・・。
妄想ばかりが花開く大河ドラマでしたが
今回は本編が快調だったので喜ばしいことでした。
特にそれぞれのキャラクターが
魅力的に描かれていて
お茶の間でもそれぞれの楽しみを見出していたように感じています。
特にきりに関しては
脚本家が
長澤まさみの代表作にすると
意気込んでいただけに
それなりに成果があったようです。
まあ・・・こういう変化球でないと
美人女優を活かしきれないという風潮も
困ったものですけどねえ。
普通にうっとりさせてもらいたいものでございます。
すでに・・・遥か過去に死んでしまった
人々が蘇って
その生き様を現代に生きる人々に
晒す・・・。
そういう意味で今回の大坂の陣は
見事にやるせなさを謳いあげておりましたねえ。
打つ手打つ手は間違いないのに
結局のところ・・・大間違いだったという結末。
しかし・・・この世に正解なんかないと
思わせてくれる抒情がございました。
苦労に苦労を重ねて
ついに最終的な勝利をおさめると
人生の終焉が待っている家康・・・。
知謀の限りを尽くしたのに
最後は幽囚の身となって老衰した昌幸・・・。
秀吉も氏政も勝頼も・・・。
歴史の彼方に消えて行った。
けれど・・・真田幸村は確かに輝いていたのですねえ。
やはり・・・日本人には滅びの美学というか
敗者を愛おしいと思う気持ちが
渦巻いているようです。
すっかり民主主義国家となった日本でも
「あまちゃん」のヒロインが
何故テレビにあまり出てこないのか・・・などという
モヤモヤした部分が残っている。
大河ドラマ「東京五輪」に・・・。
返り咲いてくれたらいいのになあ・・・と願う今日この頃です。
まるまる二年かあ・・・長いなあ・・・。
来年、戦国で
再来年は幕末・・・。
まあ・・・もう少し他の時代もとりあげてもらいたいなあと思う今日この頃です。
年の瀬でございます。
お風邪などお召しにならないようお祈り申し上げます。
投稿: キッド | 2016年12月26日 (月) 00時38分