拝啓、民泊様。(黒木メイサ)妻を連帯保証人にする男(新井浩文)
谷間である。
今季は・・・「レンタル救世主」の主人公も会社を解雇されてしまうわけだが・・・こちらは主人公の夫が会社をリストラされてしまうのである。
なんだか・・・恥ずかしいドラマに仕上がっている「レンタル救世主」と比較すると・・・ほんわかと仕上がっている。
30分番組×6話なので・・・中身は二時間あるかないか・・・つまり「映画」サイズだ。
実際、六話まとめて見た方が・・・それなりの満足感がある。
主人公は黒木メイサなのだが・・・主役はほぼ新井浩文だ。
IT企業の一種に務めていたサラリーマンということでは・・・「逃げ恥」のヒラマサにも通じている。
そういう会社が普通に描かれる時代なんだな。
もう仰々しくIT企業を描いていたらダサイわけである。
「過酷な現実」にいかにも対応できない感じの主人公の夫が・・・「やる時はやる」感じがハートウォーミングなのである。
東京の城南部である大田区は国家戦略特別区域指定で旅館業法上の特例扱いが2015年10月に認定されている。
大田区という「ゆるくてしぶとい町」が・・・ドラマに異様にマッチしているのである。
で、『拝啓、民泊様。・第1~最終回(全6話)』(TBSテレビ201610260050~)脚本・野村伸一、演出・谷内田彰久を見た。東京都大田区の労働基準監督署に勤務する山下沙織(黒木メイサ)は不良経営者や不良労働者をハードに監督する公務員である。九歳年上の夫である寛太(新井浩文)はゲーム会社でデバッグ(コンピュータプログラムのバグを修正する作業)を担当するサラリーマンだったが・・・突然、リストラされてしまう。妻は不当解雇の専門家なので相談すればいいわけだが・・・リストラされたことを家族に内緒にしたがるのがお約束というものだ。職場の後輩で優秀なプログラマーの畠山満(与座重理久)は寛太の身を案じ軽い気持ちで転職先を検索する。
「デバッグ専門だと条件・・・いいのないですね」
「だな」
「山下さん・・・いっそ・・・起業したらどうですか」
「そんなの無理だよ」
「こんなのありました・・・」
いかにも怪しいセミナー商法のサイトにアクセスしてしまう二人・・・。
「リストラ」で我を失っている寛太は藁にもすがる思いで・・・「民泊経営セミナー」に参加してしまうのであった。
いかにも怪しい民泊管理会社ハウスフリーエージェント代表・民沢琢己(島丈明)のいかにも怪しいネットビジネス業界の風雲児的口車に乗せられてしまう寛太である。
「あなたに無限の可能性を見た」
「え」
「成功の匂いがします」
「ええ」
「特別の物件を紹介します」
「えええ」
「不動産を購入し・・・民泊のオーナーとなる・・・運営管理はまかせて・・・報酬を受け取るだけ」といういかにも怪しい話を信じてしまう寛太だった。
後輩であり・・・妻の沙織の兄であり・・・銭湯「太平湯」の経営者である江南昌平(中野裕太)に相談する寛太。
「バケーションレンタルか・・・懐かしいな」
英国留学の経験のある昌平は「民泊」のシステムにそれなりの理解がある。
昌平が英語や中国語も話せる教養人で・・・妹思いの兄であることが・・・寛太の救いになっているという仕掛けである。
寛太は・・・沙織を・・・「物件」に連れていく。
「この家・・・どう思う?」
「どうって・・・?」
「買おうと思うんだ」
ダッシュで逃げだす沙織だった。
追いすがる寛太は土下座をする。
「連帯保証人になってください」
堅実無比な沙織が・・・夫を愛していることが・・・寛太の救いになっているという仕掛けである。
いかにも怪しい「ハウスフリーエージェント」の担当者・久米始(末松暢茂)は「運営管理はおまかせください・・・オーナー様はゲストに鍵を渡すだけです」といかにも怪しいことを言う。
しかし・・・実際は定員オーバーのゲストを招き、清掃などの管理も手抜きで・・・寛太は「売れ残った物件をローンを組ませて買わされた」カモに過ぎないのである。
ゲストはほとんど外国人で・・・寛太は対処できず・・・昌平にすがる。
仕方なく、昌平は近所の焼肉店「光寿」でアルバイトするコスプレイヤーの立川美由(今野杏南・・・「アオイホノオ」の高橋留美子である)に銭湯の番台を預ける始末なのであった。
「俺たちをバカにしているのか」と・・・ゲストたちは素晴らしいインターネットの世界で寛太の「民泊ビジネス」を酷評するのだった。
オーナーではなくホストにならなければならない寛太だったが・・・失業保険のためにハローワークにも通わねばならず・・・気持ちが定まらない。
「約束の時間に遅れてすみません」
「大丈夫ですか」
「民泊を始めたもので・・・」
「それは事業をなさっているということですか」
「はい」
「それでは失業手当を受けることはできません」
「え」
職業安定所の職員・橋本章雄(日比大介)も少し呆れるのだった。
寛太は・・・少しバカなのである。
「だめですよ・・・そういうことは内緒にしなければ・・・」と完全に怪しいアドバイスをする民沢代表である。
なんとなく危機感を抱く寛太の元へ・・・青森県から父親の山下寛十郎(鈴木正幸)が上京する。
十年前・・・寛太の母親が他界するまで旅館「寛心荘」を経営していた寛十郎は息子が宿泊施設を始めたと聞き・・・開業祝いにやってきたのだった。
寛十郎は寛太に「おもてなし」の心を伝えようとするが・・・息子はそれどころではない心境だった。
韓国からの旅行者・キム・ウンジョン(韓英恵)は寛十郎の「おもてなし」に感動するが・・・ついに「リストラ」のことが沙織に発覚する修羅場に突入。
「どうするつもり」
「だから・・・民泊で・・・結果を出そうと・・・」
「結果が出るまで・・・実家に帰る」
「え」
沙織の家出に・・・恐慌に陥る寛太である。
キム・ウンジョンは旅行者には人気のブロガーで・・・アップされた夫婦喧嘩の動画は・・・素晴らしいインターネットの世界の一部愛好家に喝采される。
やがて・・・区役所の民泊担当者・小山悟(岡安泰樹)に呼び出される寛太・・・。
「特区民泊の認可どころか・・・申請もされていません」
「え」
「営業は認められません」
ついに・・・ハウスフリーエージェントに怒鳴りこむ寛太だった。
「どういうことですか」
「グレーゾーンだから・・・うまみがあるんですよ・・・申請なんかしたら規制に縛られて儲かりません」
情報商材詐偽のグレーゾーンにいるブラック企業の相手をしていることに・・・寛太はついに気がついた。
「うちのアカウント・・・返してください」
「どうするつもりですか・・・ローンだってあるのに」
「とにかく営業はやめます」
家を閉めた寛太・・・そこへゲストがやってくる。
「この家は祖父の家だったんです・・・あるブログの動画で拝見しまして・・・」
池本龍成(村上純)は海外在住の商社マンだった。
妻のエリサ(アリシア)を伴って一時帰国し・・・滞在中に祖父が暮らしていた家で一泊しようと望んだのだった。
事情を知った寛太は・・・池本夫妻に屋内を案内する。
寛太はふと訪ねた。
「おもてなしって・・・何なんでしょうね」
「私は今・・・充分にもてなされている気がしますよ」
寛太の心は疼く。
プログラマーの畠山満が再就職した会社に誘われた寛太は・・・定職に就いたことで・・・心のゆとりを取り戻す。
しかし・・・沙織は帰ってこなかった。
昌平は・・・沙織について・・・義理の弟に語る。
「十年前に両親が死んで・・・銭湯をついでから・・・妹は僕に少し後ろめたさを感じていると思う・・・でも・・・僕は当然のことをしたまでなんだ・・・妹は・・・先輩が・・・あきらめない姿を見たいと思うんです・・・妹は・・・先輩のそういうところに惚れているから・・・」
「・・・」
寛太は・・・妻の愛を取り戻すために・・・区役所に向い・・・「民泊」の申請を一からやりなおすのだった。
近所の「顔」である・・・横田(段丈てつを)や銭湯の常連客(深沢敦)に了解を求め、清掃会社などと再契約を結ぶ・・・そして・・・寛太は「民泊」のホストになるのだった。
「寛心荘」の看板を掲げた寛太から送信された画像を見て・・・沙織は微笑んだ。
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