Eテレシアター 鉄腕アトム「地上最大のロボット」より「プルートゥ PLUTO」 (森山未來)ううううううああああああ・・・・・・(永作博美)
コミック「鉄腕アトム/手塚治虫」が登場したのは昭和二十六年(1952年)である。
昭和三十八年(1963年)にはアニメ化され、お茶の間に登場する。
「史上最大のロボット(前後篇)」は昭和四十年(1965年)にオンエアされている。
「鉄腕アトム」のエピソードの中でも屈指の人気を誇ると言ってもいいだろう。
特にアトムの妹であるウランとロボット殺しのプルートゥの密会には「萌え」の要素が満載されている。
コミック「PLUTO」/浦沢直樹」(2003年~2009年)は「鉄腕アトム・地上最大のロボットの巻」のリメイク作品である。
舞台「プルートゥ PLUTO」は平成二十七年(2015年)に上演された演劇作品で、その年に Eテレシアター(NHKEテレ)で放送されている。
今回はその再放送である。
で、『Eテレシアター 鉄腕アトム「地上最大のロボット」より「プルートゥ PLUTO」 』(201701032350~)原作・手塚治虫(他)、舞台脚本・谷賢一、舞台演出・シディ・ラルビ・シェルカウイ、収録演出・安西志野、番組演出・大谷千明樹を見た。渋谷・Bunkamuraシアターコクーンで収録された舞台作品である。アトムを演じるのは森山未來でダンサーとしての魅力も発揮している。手塚治虫の「アトム」、アニメーションの「アトム」、浦沢直樹の「アトム」、そして森山未來の「アトム」というキャラクターの遍歴である。
限りなく人間に近いロボットということでは・・・森山未來の「アトム」は一種の到達点と言えるだろう。
・・・人間だけどな。
ここではない別の世界の別の未来・・・。
アメリカ合衆国のようなトラキア合衆国のアレクサンダー大統領の主導により、イラクのようなペルシア王国に独裁者ダリウス14世が製造させた大量破壊ロボットが存在する疑惑が深まり、第39次中央アジア紛争が発生する。
世界最高水準の五体のロボットが平和維持軍として参加し、紛争はペルシア王国の崩壊によって終結する。
しかし、戦後・・・平和維持軍に参加した五体のロボットのうち、スイスのモンブラン、スコットランドのノース2号、トルコのブランド、ギリシャのヘラクレスが次々に殺害される事件が発生する。
この世界ではロボットは市民権を得ているので殺ロボット事件となる。
残された世界最高水準のロボットの一人でユーロポール特別捜査官ロボット・ゲジヒト(寺脇康文)はロボット殺害犯を求めて捜査を開始する。
やがて・・・殺害犯として謎のロボット・プルートゥが浮かび上がる。
しかし、プルートゥは戦後処理に参加し、戦災孤児達を引き取って、オーストラリアで一緒に暮らしている光子エネルギー型ロボット・エプシロンや平和の使者であったアトムも殺害してしまう。
ゲジヒトは・・・事件の裏に・・・ダリウス14世に仕えたロボット工学者・アブラー博士(松重豊)の深い「憎しみ」があることを探り当てる。
紛争により妻子を失ったアブラー博士は世界に復讐しようとしていたのだった。
ゲジヒトはついにプルートゥと対決し、撃破に成功するが・・・プルートゥの「心」に「深い悲しみ」を発見し・・・破壊することができなかった。
ゲジヒトは真相を探るために世界唯一の殺人ロボットとしてベルギーに拘束されている青騎士ブラウ1589(柄本明)と面会する。
「私の人工知能に生じた混乱の意味を知りたい」
「人工知能は混乱などしないだろう」
「だが・・・私は使命を全うできなかった」
「君の使命とは何だ?」
「市民の安全と平和を守ることだ」
「そのために殺人が必要な場合はどうする」
「人命の尊重は・・・最優先される」
「だが・・・限りなく人間に近い人工知能の持ち主は・・・感情を学習することができる」
「感情・・・だって」
「ロボットは忘れることはできない・・・しかし、記憶を抹消することはできるのだ」
「私の記憶が改竄されていると言うのか」
「君のメモリにアクセスを許可してくれてありがとう・・・君のメモリには空白があるよ」
「私は・・・何をしたのだ」
「君は・・・二番目の殺人ロボットなんだよ」
「なんだって・・・」
「君は人間を守るために・・・人間を殺したのだ」
「そんな・・・馬鹿な・・・システム設計上そんなことはありえない」
「ロボット工学者たちは言う・・・ロボットはあくまで平和利用されるために作られると・・・しかし・・・馬鹿と鋏は使いよう・・・と言うだろう」
「私たちは学習能力を与えられた・・・憎しみを覚えたっておかしいことは一つもないよ」
「・・・」
「人間を殺した君を・・・人間たちは処分することができなかった・・・君は役に立つロボットだから・・・君は記憶を消されて職務に復帰したのだ」
絶望に襲われたゲジヒトはアブラー博士の放った刺客・・・花売りのロボットのモハメド・アリに内蔵されたクラスター砲によって破壊される。
ロボット墓地に埋葬されたゲジヒトのボデイ。
墓参りに訪れた天馬博士(柄本明)はゲジヒトの未亡ロボット・ヘレナ(永作博美)と対話する。
「ゲジヒトのデータ・チップをどうなさるのですか」
「ゲジヒトの最後の記憶が・・・アトムを覚醒させるために必要なのだ」
「私・・・ゲジヒトの記憶を消去してしまおうかとも考えたのです」
「苦しみを感じるのだな」
「これが・・・苦しみというものなのでしょうか」
「大切なものが不在になってしまうということは人間にとっても辛いことだ」
「人間はそういう時にどうするのですか」
「泣くのさ・・・君も泣いてみるといい・・・」
「泣く・・・」
「最初は真似でいい・・・やがてそれは君の心を楽にするだろう」
「うううう・・・ああああ」
「そうだ・・・その調子だ」
「ううううううう・・・・あああああ」
「・・・」
「うううううううううううあああああああああああううううううううううあああああああああああ」
天馬博士は日本の科学省にやってきた。
アトムの妹であるウラン(永作博美)と対話する天馬博士。
「お兄ちゃんを生き返らせて」
「ウラン・・・死んだ者は生き返らないのだ」
「天馬博士・・・あなたの心は悲しみでいっぱいね」
「人間の心を感知するセンサーか・・・お茶の水博士も・・・妙な機能を開発したものだ」
「お兄ちゃんを生き返らせて」
「眠っているアトムに・・・ゲジヒトの記憶を接続すれば・・・アトムは目覚めるだろう・・・しかし・・・それはもはやアトムではないのだ」
「そんなことはないわ・・・お兄ちゃんはお兄ちゃんだもの」
「・・・」
アトムは覚醒した。
そして反陽子爆弾の計算式を完成させる。
お茶の水博士(吉見一豊)は驚愕する。
「天馬博士・・・アトムに何をしたのだ」
「アトムに欠けていたものを与えたのだ・・・私はかって同じ方法で作動しない人工知能を作動させたことがある」
「人間の記憶を転写できるという・・・テンマ型データチップ」
「その通り・・・人間の記憶をロボットに転写できるのだから・・・ロボットの記憶をロボットに転写することなど簡単なんだよ」
「アトムに何を与えたのです」
「ゲジヒトの憎悪だ」
「・・・」
アトムは科学省を脱走する。
「お茶の水博士・・・お兄ちゃんはどうなっちゃうの」
「信じるんだ・・・ウラン・・・アトムは天馬博士の最高傑作なのだから」
「お兄ちゃん・・・」
葛藤を経て・・・一つの安定に到達するアトム。
それは・・・生き物に対する「優しさ」に収斂する。
路上を歩む蝸牛をそっと植え込みの葉に移すアトムの姿に・・・お茶の水博士は安堵するのだった。
天馬博士はアブラー博士と対峙する。
「もう・・・終わりにしたらどうだ」
「復讐に終わりなどない」
「君の気持ちはわかる」
「わかるものか・・・あなたが・・・いかに優秀なロボット工学者であっても・・・家族を殺された人間の気持ちは・・・」
「わかるよ・・・なにしろ・・・君は私の作ったロボットなんだから・・・」
「なんだって・・・」
「君はゴジ・・・目覚めない君に・・・世界を呪詛しながら死んだアブラーの記憶を移植したのも私だ」
「嘘だ」
「君は目覚めた・・・ロボット工学者ロボットのゴジ博士と・・・人間の憎悪を継承したアブラー博士の二重人格ロボットとして・・・」
「嘘だ」
「アブラー博士は人間のアブラーが作った園芸用ロボット・サハドをプルートゥに改造した。そして・・・ゴジ博士に耕作用ロボット・ボラーの改造を命じたのだ」
「・・・」
「ボラーに何をさせる気だ」
「世界を・・・滅ぼすことを命じた」
「・・・」
「もう・・・遅い・・・人間はとっくに取り返しのつかないことをしてしまったのだから」
「そうかもしれんね・・・私も息子を失って・・・そう感じたことがある」
「天馬博士・・・」
「私のもう一人の息子は・・・完璧ゆえに出来そこないだったが・・・馬鹿な子ほど可愛いと言うだろう」
「・・・」
「私はアトムを憎みながら愛しているのだ」
トラキア合衆国のエデン国立公園に異変が生じていた。
アレクサンダー大統領はスーパー・人工知能であるDr. ルーズベルト(吉見一豊)に諮問する。
「すべては計画通りなのか」
「もちろんさ・・・」
「しかし・・・アトムが復活したぞ」
「アトムはプルートゥには勝てない・・・よくて引き分けだ」
「これでトラキア合衆国の繁栄は約束されたな」
「いや・・・まだボラーがいる」
「ボラー?」
「ボラーはエデンに人工火山を作るよ」
「なんのことだ・・・」
「エデンの火山が噴火すれば・・・ほとんどの生命体は死滅する」
「何を言っている?」
「トラキア合衆国の繁栄はロボットによってもたらされる」
「え」
「安心したまえ・・・君のことは生かしておくよ・・・ロボットの奴隷としてね」
「えええ」
アトムとプルートゥは対峙する。
「プルートゥ・・・僕は君に負けないよ」
「・・・」
「何故なら・・・僕の憎しみは君の憎しみより大きい」
「・・・」
「君が殺したロボットたちの怨みを背負っているからね」
アトムは巨大な影と踊る。
アトムの心に触れるプルートゥ。
「君の・・・心は・・・あたたかい」
「プルートゥ・・・」
「僕は・・・ただ・・・花畑を作りたかっただけだ」
プルートゥは「アトム/ゲシヒト」のシステムによって「憎悪」を解消した。
その時、エデンの地下でボラーが起動する。
「ボラーは反陽子爆弾を内蔵している・・・惑星改造ロボットだ」
「説得してやめさせよう」
「いや・・・ボラーにはそういう機能はない・・・命令を忠実に実行するだけの・・・いや何も知らない赤ん坊のようなロボットなんだ」
「それなら・・・僕が反陽子爆弾を解体する・・・君はボラーを抑えてくれ」
「やってみよう」
しかし・・・ボラーの二百万馬力は百万馬力のプルートゥを凌ぐ。
「アトム・・・君は脱出しろ」
「プルートゥ」
プルートゥはロケットパンチでアトムを地上に射出する。
ボラーは爆発するがプルートゥは空冷式システムを全開にする。
ボラーとプルートゥは一つの巨大な氷の柱となった。
「お兄ちゃん」
「ウラン」
「アトム・・・」
「お茶の水博士・・・ロボットたちの犠牲は・・・希望になるのでしょうか」
「さあ・・・そんなことは・・・誰にもわからんよ」
拘束を脱した青騎士は殺すべき相手を求めて・・・シェルターに侵入する。
人間の生み出した暗闇は深淵へと続いているのだ。
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