精霊の守り人II 悲しき破壊神(綾瀬はるか)シハナは私です(真木よう子)トロガイは私です(高島礼子)
せっかくの豪華キャストが過剰な扮装で誰だかわからないドラマの続編である。
バルサだって色白美人戦士でいいじゃないか。
歌舞伎を見習えよ~。
地黒の人も白くなってるだろ~。
まあ・・・やりたいのだからしょうがないよな。
砂塵にまみれることへの憧れが・・・自称公共放送のスタッフの心に眠っているんだな。
まあ・・・昔の現場スタッフは風呂にも入らず薄汚れていたよな。
誤解を招くような戯言はそこまでだ。
ついに冬の谷間はなしか・・・。
今の願いは「リテイク」が終わって・・・一日一本体制になることだな・・・。
このままだと・・・ついに死ぬかもな・・・。
で、『精霊の守り人 外伝』(NHK総合201612112355~)脚本・上橋菜穂子を見た。「精霊の守り人シーズン1」と「精霊の守り人 シーズン2」をつなぐ間奏曲である。新ヨゴ皇国の第二皇子チャグム(小林颯→板垣瑞生)の用心棒だったバルサ(綾瀬はるか)はカンバル王ログサム(中村獅童)の暗殺未遂の後で放浪の旅にあった・・・。
世界には欲にまみれた暴力がはびこっていたが・・・バルサは己の信じる正義に従い暴力を振るうのである。
ある日・・・バルサは目に見えないもの(浅見姫香)の聞こえない声を聞く。
「チイカナを助けておくれ」
辺境の荒野で・・・幼い少女(山﨑香歩)を発見したバルサは・・・少女に問う。
「こんなところで・・・何をしている」
「お花を摘みにきた」
「そうか・・・しばらく目をつぶっていろ」
「どうして」
「おそろしいものがやってくるからだ」
「こわい」
「目をつぶってゆっくり二十数えるんだ」
「どうして」
「それが魔物を払ってくれる」
「わかった」
「よし・・・目をつぶれ・・・そして数えろ」
「・・・一つ」
獲物を狙う盗賊たちが現れる。
バルサは群がる盗賊たちを自慢の短槍で突いて突いて突きまくるのだった。
バルサは敵に容赦をしない。
襲撃者たちはすべて無惨な骸となって大地に伏した。
周囲を満たす人体がまき散らした血と汚物の臭い・・・。
「・・・二十」
「もう・・・いいよ」
チイカナは目を開き・・・死体の山に驚くのだった。
「おそろしい魔物が来たのね」
「だが・・・もう逝ってしまったよ」
血まみれのバルサは微笑んだ。
バルサはチイカナとともに・・・チイカナの姉の墓に参った。
チイカナは墓に花を供える。
風に乗って見えないものの聞こえない声が囁く。
「ありがとう・・・バルサ」
バルサは新しい獲物を求めて流離の旅を続けるのだった。
で、『精霊の守り人II 悲しき破壊神・第1回』(NHK総合20170121PM9~)原作・上橋菜穂子、脚本・大森寿美男、演出・加藤拓を見た。目に見えないものも生きているという世界である。生前の世界と死後の世界の中間点に人生があることはこの世界に似ている。しかし、この世とあの世は未分化であり・・・死者と聖者は交流し、この世ならぬものが災いとして姿を見せる。あれから四年が過ぎ去った。この世界の四年が地球時間でどのくらいになるのかは定かではない。
バルサの生れ故郷は北大陸の北部に広がっているカンバル王国である。カンバル王ログサムの王位継承の陰謀に巻き込まれ故郷を追われたバルサは南東部を支配する新ヨゴ皇国でも事件に関わり、カンバル王国と新ヨゴ皇国との協定により指名手配犯となる。お尋ね者となったバルサは法の支配のおよばない国境沿いに潜伏し、用心棒で生活費を稼ぐ身の上である。北大陸南西部のロタ王国と新ヨゴ皇国の交易商人(麿赤兒)に雇われたバルサは新ヨゴ国国境で任務の終了を告知する。しかし、強欲な商人はバルサに懸った賞金を得るために手下たちに獲物の捕獲を命じていた。命知らずの男たちはたちまち命を失い、バルサは大量のお宝の入手に成功する。これで当分飢える心配はない。食うか食われるか・・・法の支配の及ばない辺境ではそれがルールである。演出上では命乞をする悪党の命をバルサが助けるようなニュアンスになるが・・・これは排便や性交の直接的な表現を慎むのと同じ伝道者たちのお茶の間向けの配慮にすぎない。殺すか殺されるかの世界に中途半端な情は無用である。
平原の国であるロタ王国にはタルの民と呼ばれる少数民族が棲息している。
タルの民は先住民であり・・・かってのロタの地の支配者であったとも言われている。
ロタの民は破壊の神「タルハマヤ」を召喚し災いを為すと信じるものたちも多い。
タルの民を支配するロト人は惧れをロタの民は希望を抱いて「タルハマヤ」を思うのである。
タルの民であるトリーシア(壇蜜)は娘のアスラ(鈴木梨央)が神を召喚する異能の持ち主であると知り・・・チキサ(福山康平)とアスラの兄妹を連れて禁断の聖域に侵入する。
しかし、ロタ王に仕えるカシャル(猟犬)の呪術師たちは「タルハマヤ」の復活を警戒し、母子を捉え、首なし死体が棺の上で朽ちている祭儀場で罪人となったトリーシアを磔刑に処するのだった。
「お母様」
「アスラ・・・恐れるな・・・聖なる神を呼び出すのだ」
トリーシアの胴体を処刑の槍が貫く。
凌辱の感応に震え息絶えるトリーシアである。
「お母様・・・」
母の死に激しく興奮した「タルハマヤ」を召喚する。
カメラの前に置かれたガラスにヒビを生じさせるのだった・・・違うぞ。
アスラと一体化したタルハマヤは殺戮の限りを尽くす。
無数のカシャルの死体が横たわり臭気に満ちた祭儀場に・・・ロタ国王・ヨーサム(橋本さとし)と王弟・イーハン(ディーン・フジオカ)が現れる。
「これはどうしたことか・・・一体何があったのだ・・・」
驚くヨーサムには構わず・・・イーハンは磔となった女に駆け寄る・・・。
「トリーシア・・・」
「それは・・・死刑となったタルのものではないか・・・」
「・・・」
ヨーサムはイーハンの死体に抱く感情を読む。
「イーハン・・・まさか・・・お前・・・その女と情を通じていたのか」
「・・・」
イーハンとトリーシアの官能の宴の回想シーンは今回はありません。
ずっと・・・ないかもしれん。
いろいろとものたりないのも・・・相変わらずだな。
ロタ王国には南北の確執がある。
貧しい北と豊かな南の経済格差である。
北大陸の南部に突き出した半島国家サンガル王国との交易によりロタ王国南部の商人たちは富を蓄えていた。
ロタ王国南部の港町ツーラムも活気に満ちている。
祭儀場を脱出したチキサとアスラの兄弟だったが・・・奴隷商人の虜囚となり・・・性的玩具として売買されようとしていた。
「ロタの民は美形だからね・・・高値で売れるよ・・・まして上玉の生娘となれば幼女好きの殿方の垂涎の的だ・・・娼婦として仕込む手間賃を割り引いても大枚はたいて損はないお値打ち者だ」
「妹をどうするつもりだ」
「妹どころか・・・お前も売るんだよ・・・後ろの穴に香油を点して待っておいで」
「・・・」
思わず肛門が引き締まるチキサだった。
ツーラムでは年に一度の「草の市」が開かれていた。
薬草使いのタンダ(東出昌大)が顔を出すだろうとバルサもツーラムにやってきていた。
首尾よくタンダとの再会を果たしたバルサはタンダの宿に招かれる。
「俺の女房ってことだどうだ・・・」
「お前の用心棒と言った方が怪しまれぬだろう」
落胆するタンダだった。
宿でタンダはロタの呪術師・スファル(柄本明)を紹介する。
「猿の目を使う・・・なかなかのお方だよ」
「もしや・・・そちらはザルサ殿ではないかな」
「なぜ・・・私を・・・」
「一目でわかるほどの短槍の達人・・・まして女となれば・・・バルサの名が思い浮かぶというもの」
「・・・」
シャットイ(野良犬)はカシャル(猟犬)の匂いを嗅ぐ。
その時・・・宿の前を幼い兄妹を連れた奴隷商人が通りすぎる。
幼いアスラにバルサの保護欲がかきたてられる。
しかし・・・子供を売るのは奴隷商人の生業である。
食い扶持を稼ぐために働くものを咎める気はバルサにはない。
そんなことをしたら全土の奴隷を解放する革命者になってしまうのである。
ただ・・・幼い身で売られるものを憐れと思うのだった。
だが・・・とバルサは考える。
助けたいと思うのなら助けるのもまた一興である。
奴隷に義理がないように・・・奴隷商人にも義理はないと野良犬は思うのだ。
ロタの奴隷商人は・・・青い手を持つヨゴの奴隷商人と交渉を始めていた。
「無用なことはなさらぬことだ」
奴隷市場に近付くバルサにスファルが囁きかける。
「私は己の欲に従うのみ」
「これは・・・とんだ狂犬だ」
「私は少なくとも飼いならされた犬ではないからね」
「ほ・・・」
しかし・・・二人の睨みあいを制したのは・・・アスラの神秘の力だった。
「よせ・・・アスラ・・・呼んではならない」
「なぜ・・・この者たちは・・・私たちを傷つける」
「やめるんだ・・・アスラ」
「小僧ども・・・騒ぐんじゃねえ」
奴隷商人がチキタを制裁する。
その時・・・アスラはタルハマヤを召喚するのだった。
闇の力の触手が旋風を巻き起こし・・・爆発する。
奴隷市場は阿鼻叫喚の地獄と化す。
タルハマヤの一撃はバルサをもなぎ倒す。
戦士の呼吸で致命傷を逃れたバルサは・・・鎮まった市場の残骸から・・・意識を失った少女を抱き起こす。
傍らで身を起こすチキタ。
「お前は大丈夫か」
「浅手です」
「とにかく・・・ここから逃れるぞ・・・」
バルサはアスラを背負い・・・チキタとともに宿へと撤退する。
タンダは驚く。
「ちょっと前に出ていったと思ったら・・・もう血まみれになって戻ってきたのか」
「・・・」
「結構・・・深手じゃないか・・・何があったのだ」
「わからぬ・・・」
「とにかく・・・血止めをしなければ・・・」
タンダは売りものの薬草をとりだした。
「すまぬ・・・」
「この子たちはなんだ・・・」
「親子四人の子連れ旅ということでどうだ」
「・・・」
「どうした」
「この子の様子を見ようとしたが・・・この子には恐ろしいものが潜んでいるぞ」
「なんだというのだ」
「まるで・・・この子はチャグムのようだ」
「精霊を宿しているとでも・・・」
「ナユグの気配はするが・・・何か・・・もっと暗いものだ」
「・・・」
「この子はタルの民だろう・・・知っているか・・・タルというのは陰という意味があることを・・・」
「知らぬ」
夜更け・・・。
目覚めぬアスラの枕元に・・・覆面をした女が近寄り・・・呪文を唱える。
「その子に何をする気だ」
「目覚めぬようにしているだけさ」
「その子から離れろ」
バルサは猟犬たちの殺気を感じる。
「ロタ王家の飼い犬たちかい」
殺到するカシャルたち・・・しかし、バルサの敵ではない。
「さすがだね・・・邪魔すると痛い目に遇うよ」と女呪術師は嘯く。
「去れ」
「また・・・お目にかかろう」
女呪術師は撤退した。
騒ぎに目覚めるアスラ。
「お母様・・・」
チハナが駆け寄る。
「アスラ・・・」
「お兄様・・・お母様が生きてらしたわ・・・私を背負ってくださった」
「アスラ・・・もうアレを呼び出してはいけない」
「なぜ・・・お母様は・・・正しいことだと」
「アレは俺を傷つけたぞ・・・」
「・・・この人は誰?」
「覚えていないのか・・・この人がお前を背負ってくれた人だ」
「・・・」
「お母様はお亡くなりになったのだ」
「ここも・・・危険だ・・・逃げるよ」
バルサは守るべきものを見出した。
金に困っていない用心棒は・・・守りたいものを守るのである。
新ヨゴ皇国にも四年の歳月が流れていた。
チャグムは第一皇子としてたくましい若者に成長している。
星読博士のシュガ(林遣都)はチャグムの良き相談相手として仕えていた。
二ノ妃(木村文乃)は帝(藤原竜也)に寵愛され、チャグムの弟・トゥグム(高橋幸之介)を出産していた。
そのことが・・・チャグムの示した神の力に嫉妬する帝の心に新たなる翳りを生じさせる。
そのような時・・・ドラマでは半島国家ではなく諸島国家として描かれるサンガル王国からの急使が新ヨゴ国の宮廷に届く。
二ノ妃の父親である海軍大提督・トーサ(伊武雅刀)は評議のために都に召還された。
「南の大洋を越えて・・・南の大陸からタルシュ帝国の軍勢が・・・サンガルの島々を攻めているそうだ」
「それは一大事」
「タルシュ帝国の力は侮りがたし・・・」とチャグムは父に告げる。
「神の加護があるわが国にはいかなる脅威もない」と帝は戒める。
「ここは・・・北のカンバルや西のロタと同盟を結ぶべきです」
「神の国たる・・・新ヨゴ皇国は救いを求められれば手を差し出すが・・・助けを求めることはない・・・まして・・・カンバルはあの事件以来・・・金の無心ばかりしてくるあつかましき国・・・」
「では・・・せめて・・・ロタと手を携えては・・・」
「ならぬ・・・サンガルには・・・戦闘帆船一隻を救援に向かわせる」
「・・・」
「指揮はお前がとれ・・・チャグムよ」
「・・・しかし一隻では」
「お前には神の加護があるであろう・・・心配するな・・・実際の戦闘は海軍大提督にまかせるがよい」
「御意」
「評議は以上じゃ」
事の次第を聞いた二ノ妃は心を痛める。
「妾が・・・トゥグムを生まなければ・・・こんなことには」
「母上・・・トゥグムは私の大切な弟です」
「けれど・・・」
「ご安心ください・・・必ずや・・・無事に帰還いたします」
「チャグム・・・」
こうして・・・チャグムは南の大陸の覇者タルシュ帝国との戦争のために出陣したのである。
「戦争じゃと・・・」
当代一と言われる呪術師・トロガイはシュガより貢がれた酒を飲み干す。
「チャグム様のお供として私も戦場に参ります」
「御苦労なことじゃな」
「トロガイ様もお達者で」
「まあ・・・困ったことがあればいつでも相談せよ・・・気が向いたら助けてやろうぞ」
「ありがたきお言葉・・・」
こうして・・・風雲急を告げる世界情勢なのだった。
とにかく・・・戦闘帆船一隻出撃では大海戦を期待しても無駄ということはわかりました。
精々、海賊相手の小競り合いだよね・・・きっと。
様々な皇族・王族たちが登場するが・・・サーガ(英雄譚)にはならないファンタジーなのである。
いいじゃないか・・・用心棒の冒険譚なんだから。多くを望むなよ。
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