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2017年1月31日 (火)

目の前の患者ファーストの医師(木村拓哉)

優先順位についていろいろと騒がしい世論である。

いろいろと順番をつけるのが楽しい・・・という人は多いものだ。

最近ではファーストが流行している。

都知事が「都民ファーストで政治を行う」と言えば・・・県民たちはなんとなく複雑な思いになる。

米国大統領が「米国ファースト」を唱えれば世界の人々どころか米国民さえ憂慮したりする。

優先順位は選択肢の問題と言ってもいい。

複雑な世の中を整理するための作業手順のようなものである。

相互扶助という考え方では・・・自分ファーストと他人ファーストは同じという論理の飛躍が求められる。

理想の社会では自由ファーストと平等ファーストは矛盾しなかったりするものだ。

しかし・・・現実は不条理に満ちており、自国民ファーストを続ければ他国民との戦争に突入するし、国民の一部ファーストをやり抜けば革命も発生する。

恐ろしいことである。

だが・・・泳ぐためには水に飛び込むことがファーストである。

医者は目の前の患者を救うことがファーストであってもらいたい。

だから・・・主人公の言動には・・・正しさが匂い立つ。

けれど・・・時には妻ファーストの夫や・・・娘ファーストの父が微笑ましいこともある。

人間が何を一番大切に思うか・・・それは・・・一番の謎なので。

で、『A  LIFE~愛しき人~・第3回』(TBSテレビ20170129PM9~)脚本・橋部敦子、演出・加藤新を見た。壇上記念病院では小児科の存続をめぐり、院長の壇上虎之助(柄本明)と娘婿で副院長の鈴木壮大(浅野忠信)の間に確執があった。経営優先の壮大は赤字部門である小児科の縮小あるいは廃止を提案し・・・小児科医である院長はそれをよしとしないのだった。院長の娘で壮大の妻である小児外科医・壇上深冬(竹内結子)は父と夫の間で困惑する。シアトルで名をあげた深冬のかっての恋人・外科医・沖田一光(木村拓哉)は院長の手術のために召還され無事に使命を果たすが・・・幼馴染の壮大から・・・深冬が深刻な脳腫瘍患者であることを明かされ担当医に指名される。告知をすることも躊躇われる状況で・・・人々は今日を生きていくのだった。

「それにしても・・・よく日本に残る決心をしてくれたなあ」

快気祝いの席で院長は一光に礼を述べる。

深冬に告知が終わっていない一光は返答に困るのだった。

「沖田先生は・・・切り札ですからね」

「それは・・・沖田くんがダメだったら・・・小児科は終わりということか」

「お義父さん・・・考え過ぎですよ」

火花を散らす院長と副院長である。

帰宅した深冬は壮大に娘として詫びる。

「ごめんなさいね・・・まさか・・・沖田先生が呼ばれるとは・・・」

「まあ・・・院長にとっては命の恩人だからな・・・沖田先生を院長にというのもまんざら冗談ではないのかもしれん」

しかし・・・言葉とは裏腹に夫に不満が燻っていることを感じる深冬だった。

院長の一人娘であり、副院長の妻であり、五歳になる長女・莉菜(竹野谷咲)の母であり・・・そして小児外科医でもある深冬は守るべきものの多さに疲弊していた。

しかも・・・その運命は死に向って激しく傾斜しているのだ。

そろそろ・・・告知しないと・・・いろいろと問題あるよな。

脳腫瘍と聞いただけで・・・そんな病人が・・・医者として手術していいのかと言う人もいるだろうしな。

まあ・・・脳腫瘍だって・・・人間は生きていけるし仕事もできるのである。

脳腫瘍でなくても人間はミスを犯すという意味では。

今季の日曜日は「おんな城主直虎」の森下佳子とコレの橋部敦子という二人のベテランが脚本家として凄腕を競っている。

森下佳子は「白夜行」に代表されるように過酷な運命に晒された人間が過ちを犯すことの不条理を描くことが多いが・・・橋部敦子はそうしたどん底からの再生を描くことが多い。そういう両輪で回っている日曜日はなんとなく芳醇である。

医療ものにおける定番と言える医療行為と病院経営の相克や、登場人物の発病、ライバルの裏切り、権威主義の横行などを盛り込みながら・・・主人公がゆっくりとどん底に向って進行中である。

そもそも・・・彼は医者として日本では名医にはなれなかった。

そのために・・・幼馴染に画策されて恋人を奪われた。

それなのに・・・他人の都合で日本に呼び戻された。

最初からそういう「どん底」にいるのである。

ここからさらに奈落があるのかと思うと恐ろしい・・・。

深冬は小児科医として指導医の認定を受けるために論文を執筆中だった。

小児科の指導医は二千人の中の三百人という難関である。

小児科の存続のために・・・指導医となることで発言力を高めたいと願う深冬なのだ。

満天橋病院の後継者として修行中の井川颯太(松山ケンイチ)は一匹狼的な一光に複雑な関心を抱く。

組織に背を向ける一光に反発すると同時にその技量に魅了されるのである。

「沖田先生の手術に呼んでください」

「・・・いいよ」

そんな颯太を第一外科部長の羽村(及川光博)は揶揄するのだった。

「君は・・・沖田派なのかな」

「そんな・・・僕はただ見習うべきは見習いたいと」

「まあ・・・とにかく私は副院長派だからね」

颯太は火照りを感じてオペナースの柴田由紀(木村文乃)に愚痴をもらす。

「みんな・・・僕を満天橋の後継者としてしかみない・・・僕の努力を認めてくれない」

「しかし・・・親の金で受験勉強して・・・親の金でお高い学費を払ったんでしょう・・・お坊ちゃんだからさ」

ガードが固い上に辛辣なナース柴田だった。

ナース柴田には経済的な問題で医師の道を断たれた気配がある。

・・・小児科にセカンドオピニオンを求める患者とその母親が来院する。

患者は成田友梨佳(石井心咲)という七歳女児で母親の成田美保(紺野まひる)によれば「腹痛を訴えることが続いている」というのである。

前の病院では検査で異常が見つからず「心因性」という診断が下っていた。

母親はパートタイムで働いており、週に二回、娘を実家に預けており、その時は必ず夜中に腹痛を訴えるという。

そのために・・・環境の変化による緊張によるものと診断されたらしい。

しかし・・・母親の不安は拭えなかったらしい。

深冬も検査をしてみるが異常は発見できない。

「やはり・・・心因性なのかしら」

深冬は同じ娘を持つ母親として・・・患者の母親の不安を解消したいと感じている。

相談を受けた一光は母親の付き添いの元・・・患者を入院させて経過を観察することを提案する。

「でも・・・私・・・夜勤は・・・」

子育て中の深冬は時短で勤務していた。

「俺が引き受けるよ・・・」

一光は深冬の立場を尊重していた。

「私はここでは0.5人前なのよ」

母として生きるために医師として半分しか生きられていないことが深冬には負い目なのである。

深冬の自嘲には応答しない一光だった。

人妻に優しい言葉をかけることを自重しているのかもしれない。

何かに縛られていない人間はいないものだ。

深冬が友莉香の母親に「検査入院」について話すと彼女は喜びを示す。

「まだ・・・調べていただけるんですか」

娘が原因不明の苦痛を抱えていることを望む母親もまずいないのだ。

一方、院長と壮大は壇上記念病院のメインバンクであるあおい銀行の担当行員(谷田歩)らと経営方針について面談中だった。

「院長は僕以外の人間を次期院長とお考えのようですよ」

「それは・・・困りますな・・・私どもは・・・副院長の経営手段を評価して融資しているわけですから」

冗談めいたやりとりに院長が口をはさむ。

「当院には・・・沖田先生という名医がおりますからね」

「しかし・・・その方の経営手腕は未知数ですからねえ」

「・・・」

「私どもはあくまで・・・副院長の経営戦略を支持いたします」

院長は怒りを真田事務長(小林隆)にぶつける。

「私がもはやこの病院の経営者ではないとでもいうのか」

「とんでもありません・・・院長あっての豊臣家・・・いえ・・・壇上記念病院でございます」

院長にとって小児科ファーストは譲れない一線なのだった。

しかし・・・統率者としてその判断に狂いが生じていないとは言い切れない。

仮眠をとっていた一光は看護師から呼び出される。

検査入院中の成田友梨佳が腹痛を訴えたのである。

「おねしょをしちゃって・・・」

「おねしょは・・・頻繁にありますか」

「実家に泊まった時は寝る前に・・・用を足させますので」

「ご自宅では」

「私と一緒の時は・・・時々・・・そういえばおねしょの後で腹痛を訴えたことがありました」

「お母さんと一緒の時に腹痛を訴えたということは・・・心因性以外に原因があると考えられます」

一光は深冬と可能性について話し合う。

「膀胱が空になると・・・腹痛が起きる・・・考えられることは何かな」

「腸軸捻転症・・・いわゆる腸捻転?」

「だな」

「膀胱の圧によって・・・捻じれが隠れている可能性がある・・・排尿によって減圧すると腸捻転症が発症するわけだ」

「それだと・・・検査では見つかりにくいわね」

「患者には以前の開腹手術で・・・癒着がある可能性があり・・・再開腹してみなければ実状の把握は困難だ」

「それでも・・・腸捻転なら・・・このまま放置しておけないわ」

「ということだ」

開腹手術の準備に入る二人の小児外科医だった。

壮大の脳外科手術の助手を務める一光。

「やってみるか・・・」

「うん」

「・・・さすがだな」

壮大は一光の専門分野を越えた技量を賞賛する。

颯太は術衣の一光にクレームをつける。

「どうして・・・僕を呼んでくれなかったんですか」

「今回は副院長の助手を務めただけだ」

「副院長の・・・脳外科までやるんですか」

「そういうことだ」

「そんな・・・小児外科なのに・・・心臓血管外科から・・・脳外科までって・・・ありえません」

「・・・君が30件の手術をしている間に100件こなせば可能だろう」

「・・・そういう問題なんですか」

「俺は六千件やっているわけだし」

「・・・ずるいですよ・・・論文もかかずに人の論文を参考に手術をしまくるなんて」

「・・・」

誰かが誰かに何かを伝えるのが社会というものである。

はっきりとは明示されないがキャストとしては小児科医に茶沢達彦(谷口翔太)が存在しているわけである。

成田友梨佳の腹痛に心因性という診断を下した担当医は慶安大学病院の小児外科教授・蒲生(越村公一)である。

蒲生教授は小児科のドンであるらしかった。

深冬の診療について注進に及んだのは茶沢であろう。

蒲生は院長を上回る権威を持っているのだった。

「君は・・・娘さんのやっていることをご存じなのかな」

「はあ・・・」

「私の診断に手抜かりがあったとおっしゃっているらしいが」

「そんな・・・」

蒲生教授が「心因性」と言えば「心因性」でなければならない。

ドンがこの場所がいいねと言ったから市場も移転するのが習わしというようなものだ。

蒲生教授に逆らえば・・・深冬の指導医認定にも障害が生じるわけである。

院長の中で・・・小児科ファーストが娘ファーストに切り替わる。

院長は娘を呼び出した。

「蒲生教授のところから来た心因性による腹痛の患者を・・・手術するそうじゃないか」

「検査の結果・・・腸捻転の可能性が濃厚なので」

「ただちに・・・転院の手続きをしなさい・・・栄和総合病院なら派閥外だ・・・話は私が裏で通しておく」

「え」

「蒲生教授に逆らえないことくらい・・・論文を出しても認められなければ・・・指導医にもなれない・・・お前にもわかるだろう」

「・・・わかりました」

深冬は一光に事情を伝えた。

「蒲生教授の対抗馬に・・・おまかせすることになったわ・・・お母さんには・・・より手術に適した病院を紹介すると説明する」

「だったら・・・僕がこの病院を辞めて・・・別の病院で友莉佳ちゃんを手術するよ」

「何を言ってるの・・・この病院で・・・小児外科を立て直してくれるんでしょう・・・そのために残ってくれたんでしょう」

「小児外科を立て直すためでも・・・患者を見捨てるためでもない」

「見捨てるって・・・」

「目の前の患者を救う・・・それだけだ」

「何を・・・目の前の敵を倒す・・・それだけだってケリィ・レズナーみたいなことを」

「ガンプラマニアだから・・・」

しかし・・・日本での地盤がない一光は・・・患者を受け入れて手術をさせてくれる病院を見つけることが出来ないのだった。

ナース柴田が救援にかけつける。

「ドクター沖田・・・辞めるんですか」

「手術ができない病院にいても仕方ない」

「私も連れてってください」

「いいよ・・・ナース柴田」

「一緒に転院先を探しましょう」

嫉妬の青い炎に燃える颯太である。

「君のところは・・・無理かな」

「僕が満天橋病院の跡取りだからですか・・・同じ跡取りである深冬先生の苦しい立場は顧みず・・・利用できるものは利用するというわけですか・・・どちらにしろ・・・無理ですけどね・・・満天橋の小児科も蒲生教授の傘下ですから」

「ヤクザと同じなのか・・・完全親分子分制か・・・」

「この国は太古の昔からそういうシステムですから」

事情を知った壮大は決断するのだった。

「お前にこの病院を辞められたら・・・深冬はどうなる・・・誰が深冬を手術するんだ」

「それとは話が別だ」

「そういうだろうと思ったよ・・・だから・・・手術を許可するよ・・・」

「・・・」

「だが・・・深冬には手を出させるな・・・この手術は沖田一光の独断ということにしてくれ」

「わかった」

いろいろともやもやする二人である。

テレビで「タラレバ」もしくは「スーパーサラリーマン」を見た壮大はバッティングセンターに向う。

「バッティングセンター流行中ですか」

顧問弁護士の榊原実梨(菜々緒)は問う。

「空振り女やバント男と一緒にするな・・・元野球部設定だぞ・・・必然性がある」

「どうしてかっとばさないんです」

「空振りの方が絵になる男なんだよ・・・俺は・・・これぞ空振りの手本なんだよ」

「どうして・・・沖田先生をひきとめるんですか・・・辞めてもらった方が都合がいいのに」

「都合だけじゃ・・・やってられないんだよお」

深冬はわが娘の描いた絵を見せられた。

「私・・・お花屋さんになるの」

「あらまあ・・・」

両親が医者なのにお花屋さんになりたいとういう娘。

娘の未来をどうして否定できるだろう。

手術室に向う一光の前にヒロインが立ちはだかる。

「私もお供します」

「自分がするべきことがわからない医者に患者が切られたいと思うか」

「あの子は・・・私の患者です」

「そうか」

患者の所有権についてはすぐに認める傾向のある一光だった。

院長室のモニターに手術が映し出される。

「君が許可したのか・・・」

副院長室でモニターを見ながら壮大が答える。

「そうです・・・しかし・・・深冬先生はノータッチですから」

「ノータッチどころじゃない・・・深冬が切ってるじゃないか」

「え」

「もういい」

院長は手術室にどなりこんだ。

「すぐにやめろ・・・」

「院長・・・」

「見てください」

一光は院長を手術台に招いた。

「腸捻転です」

「・・・腸捻転だな」

「次、捻じれたら・・・危なかったかもしれない」

院長は・・・退出した。

一光と深冬は・・・お互いに何かを感じていた。

ナース柴田は・・・ドクター沖田の火照りを観測するのだった。

一光は術後の野菜ジュースを飲んだ。

「父が・・・蒲生教授に・・・腸捻転の見落としは伏せると連絡したようよ・・・ついでに私の論文のことも頼んだみたい」

「恐喝かっ・・・」

「私・・・間違ってたわ・・・優先順位をつけている場合じゃなかった・・・医師としても・・・母としてもやり抜く覚悟をするべきだったのよ・・・今・・・私・・・なんだか世界が輝いて見えるの」

(それは・・・まさか・・・脳腫瘍による幻覚ではないだろうな)

不安を感じる一光だった。

もたもたしてはいられないのだ。

ナース柴田は深冬の背後から囁きかける。

「愛されてますね」

「何言ってるのよ・・・もう結婚六年目よ・・・」

「別の人のことですよ」

「え」

エスカレーターで下りながら振り返る深冬。

しかし・・・柴田の姿はない。

くのいちナースなのか・・・。

颯太は自己弁温存大動脈基部置換術のために論文を検索した。

思わず一光に報告する颯太なのである。

「凄い論文がありまして・・・デービッド手術の応用なんですけど」

「それって・・・低形成の弁尖を切りこむか縫いこむかして・・・三尖の大動脈を二尖弁化してそのままディビッド手術を行う術式かい」

「同じ論文を読んだんですか・・・」

「やったの俺だ」

「でも・・・論文に沖田先生の名前は・・・」

「誰が書いたのかは・・・術式を使うものには関係ないでしょう」

「・・・」

一光はあくまで患者ファーストなのである。

優秀な外科医であり・・・優秀な病院経営者である壮大は一光を呼び出した。

「深冬を巻き込むなと頼んだはずだ」

「彼女の意志だ・・・」

「・・・そうか・・・深冬のことが・・・よくわかるんだな」

「マサオ・・・何を言ってるんだ・・・そんなことを言うなら俺は帰るぞ」

「カズ・・・今でも深冬が好きなのか」

何もかも忘れ・・・嫉妬に狂った深冬ファーストの壮大なのである。

あの日も・・・そうやって・・・幼馴染の親友を裏切ったのだ。

その痛みは十年間・・・壮大自身を苛んでいる。

だからこそ・・・深冬を失う恐怖に慄くのである。

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Alife003 ごっこガーデン。新鮮野菜ジュースよりどりみどりカフェ・セット。

アンナリピしてリピしてリピートとリコピンの区別がつかなくなったアンナぴょんぴょ~ん。リコピンにはダイエット効果があるのだぴょ~ん。ナース柴田が一目で見抜くほど相思相愛光線を発しまくるドクター沖田&深冬なのだぴょん。アンナもダーリンの手をギュ~って握ってみたいので専用ダーロイドの開発を発注しましたぴょんぴょん。更新が途絶えるのはリピ寝あるいはダーロイドの手の握りすぎだとご理解くださいぴょ~ん

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2017年1月30日 (月)

天文十四年、次郎法師餓鬼となる(市原隼人)

ドラマの主人公の井伊直盛の娘は生年不詳である。

天文十四年(1545年)のおとわ(仮称)を演じる新井美羽の実年齢は10歳(2006年9月17日生れ)であるから・・・イメージとしては天文四年(1535年)の生れと考えた配役ということになるだろう。

同様にドラマにおいて一度は今川義元の側室となった井伊直平の娘が産んだ瀬名を演じる丹羽せいらは9歳(2007年6月9日)なので設定的におとわは瀬名よりも一つ年上なので「あねさま」と言うことになる。

実際には瀬名はおとわの曾祖父の孫なので叔祖母(大おば)である。

今回、おとわは次郎法師となって終盤に天文二十三年(1554年)まで成長する。

天文四年生れなら数えで二十歳になったわけである。

次郎法師を演じる柴咲コウは実年齢35歳なのでかなりなんちゃってだが・・・妄想で乗り切る他はない。

ドラマ「空から降る一億の星」(2002年)の頃である。

次回は天文11年(1343年)生れの徳川家康か登場するわけだが・・・きっといろいろとアレなことであろう。

この時、瀬名は数えで十九歳、家康は数えで十歳である。

女子大生が男子小学生を誘惑しちゃう感じだ。

おいおいおい。

で、『おんな城主 直虎・第4回』(NHK総合20170122PM8~)脚本・森下佳子、演出・福井充広を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します・・・が・・・ただいま加筆待ちなので・・・後ほど修正体制です。あくまでマイペースでお願いします。

今回はただものではないおとわが・・・龍潭寺の南渓和尚の元で次郎法師として獣から人に調教されていく手始めが描かれ・・・井伊家当主の井伊直盛が家老の小野政直に「総領家をなめんな」と恫喝することで緊張関係がそこそこ保たれるという展開で主人公の幼少期が終了というお話でした。坊主頭の萌え度百倍が証明されています。

・・・で画伯の更新がありまして、今回は井伊家家老・小野政直の絵描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。次郎法師に見所があると南渓和尚が思うほどにはお茶の間には次郎法師の凄みが伝わっていないのではないか・・・という危惧は確かにありますね。道徳よりも食いしん坊の己に従う主人公は是非が問われるところでもございましょう。やることなすこと裏目に出ているが・・・結局、自分ファーストを貫くということではなかなか戦国向きな性格であるとも考えます。これでごちそうさまと言えるようになれば鬼に金棒なのかもしれません。「天地人」の二の舞にはならないと期待したいところです。まあ・・・今川・松平連合軍と織田家の一番盛り上がっているところはスルーされてしまったので父・直盛の活躍が見られるかどうか心配な今日この頃です。

Naotora0042 天文十四年(1545年)、今川義元は武田晴信、山内上杉憲政と同盟し、北条氏の支配下にある駿河河東に侵攻。 北条氏は今川氏へ駿河河東を返還する条件で和睦。北条氏は河越城の戦いに勝利して関東の経営に着手する。 織田信秀が美濃攻めて大敗。松平広忠は安祥城攻めを行うが新兵器火縄銃のために敗北。本多忠勝の祖父・忠豊が戦死。天文十五年(1546年)、足利義輝が室町幕府時十三代将軍に就任。天文十六年(1547年)、広忠の嫡男竹千代(後の徳川家康)が強奪され織田家に拉致される。お市の方が生れる。天文十七年(1548年)、長尾景虎(後の上杉謙信)が家督を継ぎ越後・春日山城に入城。天文十八年(1549年)、美濃国斎藤道三の娘濃姫が尾張国織田信長に嫁ぐ。広忠が岡崎城で死因不明の死去。今川義元の配下の太原雪斎率いる今川・松平連合軍が織田信広の安祥城を攻める。本多忠勝の父・忠高が戦死。信広は捕らわれ、竹千代と人質交換される。井伊直盛が安祥城々代となる。天文十九年(1550年)、豊後守護・大友義鑑が死去。天文二十年(1551年)、大内義隆が陶晴賢に攻められ自害。織田信秀が病死し信長が家督を継承。鳴海城主山口教継が城ごと今川方に寝返る。天文二十一年、教継が大高城を攻略。天文二十二年(1553年)、義元は室町幕府が定めた守護使不入地の廃止を宣言し、守護大名から戦国大名化したことを明らかにする。もはや井伊家は今川親分の完全なる子分である。

龍譚寺の奥の院に月船庵がある。

次郎法師は十二の年に初潮があり、以来、月船庵の庵主となった。

僧としての修行も男子に混じって行うこともなくなり・・・いわば隔離された尼の暮らしである。

だが・・・祐円と名乗る尼は世捨て人として過ごしているわけではなかった。

今川家が三河侵攻を続ける天文年間において・・・龍譚寺の僧も戦場に駆り出され続けている。

佑円尼はその留守の間・・・龍譚寺を守る立場にあった。

大叔父である南渓和尚は佑円尼に非凡な才能があることを見抜いていた。

仏法における神通力は・・・それが天性の才によるところが大きいために秘法とされている。

鬼や魔が存在し、人がそれを払う力があることを凡人は知ることはできない。

怪しげな気配に怯え慄くことが精一杯である。

南渓和尚とて・・・心気を凝らしおぼろげにそれを感得する程度である。

しかし・・・佑円尼には得度して入門して以来・・・その才能が明らかであった。

修行のために空腹におかれた次郎法師のために・・・夜の間に村人が握り飯を差し入れ始めたのである。

村人たちは夢の中で観音菩薩に遇い眠ったまま寺に握り飯を運んできたのだ。

次郎法師が空腹に耐えかね・・・感応力で村人を操ったのである。

「末恐ろしい女童だに」

南渓は気を用いて心を制する術を次郎法師に教えた。

初潮を迎えた後で・・・次郎法師の気は弱まったように見えた。

(童の時にあったものが消えることはままあること)

南渓がそう思い始めた頃、台風が遠江を襲った。

激しい風雨が襲っている時・・・次郎法師は月の障りで夢現を彷徨っていた。

月船庵だけが無風となっていた。

目覚めた次郎法師は・・・龍神を見た。

気配を感じた南渓が庵に向うと・・・小さな小屋の周囲を輝くものが包んでいた。

それはとぐろを巻いた龍であった。

金色の龍鱗が南渓の目にもはっきりと映っていた。

やがて龍は飛翔し・・・去って行った。

激しい風雨は納まっている。

「次郎法師よ・・・あれは・・・」

「東海竜王じゃ・・・我に挨拶に参ったそうじゃ・・・」

「・・・」

こうして・・・南渓は次郎法師が龍神使いであることを悟ったのである。

天文十八年・・・冴えわたる月光が庵に差し込んでいた。

坊主忍びである傑山が庭に現れる。

「庵主様・・・」

「戦に勝ったか・・・」

「安祥城は落城いたしました・・・一族のものは皆・・・無事でございます」

「父上はいかがされた・・・」

「矢傷を負われましたが・・・城代を申しつけられ留まっておいでです」

「この手柄で・・・今川の太守様も・・・気を緩められよう・・・」

「これより・・・川名の御隠居様にご報告に参ります」

「大爺様はまた・・・我が目の正しさを吹聴するであろう」

「はい・・・わしが今川に降ったからこその井伊家の隆盛と・・・」

「さぞかし・・・興奮なさることであろう」

佑円尼は微笑んだ。

戦場に向った井伊の一族郎党を守護するたに心気を凝らし続けた疲労が襲ってくる。

「妾も少し休むぞ・・・」

「ごゆるりとおやすみくだされ」

傑山が去ると佑円尼は寝間で横になった。

どこかで笛の音が響いたが・・・それが幻聴であることを佑円尼は悟っている。

憂鬱な月のものがやってくる気配があった。

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2017年1月29日 (日)

ステージママに憧れて(小泉今日子)迷宮のオーディション(島崎遥香)脱がされたセーラー服(浜辺美波)美人すぎたらアイドルにはむかない(早見あかり)

21世紀の黒沢明とも言える脚本・演出家である。

おい・・・いろんなところから石が飛んでくるぞ。

もっとゆるゆるでもっとちまちましてもいいが・・・物凄く大人になった感じがするな。

出オチのような豪華キャスティングもなく・・・淡々とホームドラマとスーパーヒーローものをミックスしている。

いい感じだなあ・・・。

人間って成長するんだなあ・・・。

まあ・・・薄めた毒でも・・・死ぬ人は死にます。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第3回』(日本テレビ20170128PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。脚本と演出を分業するのは設計士と建築士の職業適性が必ずしも同じとは言えないからである。素晴らしい脚本でなければ素晴らしいドラマはできないが・・・演出によっては素晴らしくならない場合がある。逆に素晴らしくない脚本によって素晴らしいドラマが出来上がることもまずない。だが・・・脚本家と演出家が一緒なら・・・素晴らしくない脚本を素晴らしいドラマに仕上げることができる可能性がある。二つの才能を併せ持つものだけが為せる奇跡とも言える。そういう意味で福田雄一は21世紀の黒沢明と言えないこともないのである。

前回のオープニングは喧嘩の仲裁だったが・・・今回は自殺志願者のスケッチである。

すでに第一回でやっているのでリフレインということになる。

刑事ものの定番でもある。

スーパーヒーローものでもお馴染みのシチュエーションだ。

「屋上での対話」というものの一つのヴァリエーションとも言える。

喧嘩の仲裁は「放置」というオチのないオチになっていたが・・・今回は凸凸警察コンビの出番も作り一応のオチもある。

そういう駆け引きも「一人」だから可能なのである。

東京のとあるビルの屋上。

自殺志願者は若者(戸塚純貴)である。

すでに小池刑事(ムロツヨシ)と警察官刈野(中村倫也)が現場に到着し説得に当たっている。

「入試に落ちた・・・もうだめぽ」

「どこの大学落ちたんだよ」

「京都大学だよ・・・東大は受かったのに・・・」

「え・・・」

「第一志望は京大なんだよ」

「一般論としてさ・・・東大でいいんじゃね」

「・・・これだから一般人は・・・」

「いや・・・俺なんて東京理科大学理学部数学科中退だぜ」

「そんな・・・名もなき大学を中退しておめおめと生き恥さらしてんのか」

「ひどいな・・・刈野・・・お前はどこ」

「警視庁警察学校です」

「あそこは・・・学校という名の職業訓練所だからな」

「Artist☆Artist・・・」

「それはトップコートの養成所」

「・・・高卒です」

「俺も中退だから・・・学歴一緒な」

「そんな人たちがボクを説得できるのか」

「いや・・・今・・・死んだら・・・お前も高卒だぜ」

「え」

説得されかかる自殺志願者。

そこへ・・・スーパーサラリーマン左江内氏(堤真一)が登場する。

「あ・・・今・・・あなた・・・飛んできましたよね」

「スーパーマンですので・・・長引きそうですか」

「ええっと」

「困るんですよ・・・会議があるので」

「会議?」

「スーパーマンですがサラリーマンです」

「えええ」

「君、飛び降りるなら早くして」

「くそ・・・死んでやる」

しかし、弾丸より早いスーパーマンは自殺の完遂を許さない。

救助マットに降ろされる自殺志願者・・・。

そこへ・・・自殺志願者の母親が到着する。

「あなた・・・京都大学合格していたのよ」

「え」

「受験番号・・・間違えて・・・東大の時のを持って行ったのよ」

「早く言ってよ・・・ママ~」

こういう子が数年後に社会に出てエリートと呼ばれることの恐ろしさである。

「もってけ~セーラー服を♪脱がさないで~」

左江内家の事実上のボスで妻の円子(小泉今日子)、都立源高校に通うはね子(島崎遥香)と公立骨川小学校に通うもや夫(横山歩)の姉弟は居間で盛り上がっている。

「早いじゃない・・・ご飯用意してないよ」

「いつものことでしょ・・・これから自分で作ります」

「連絡ぐらいしなさいよ」

「しました」

「ママ・・・パパを着信拒否リストに入れてるでしょう」

「あ・・・忘れてた」

「パパ・・・私・・・明日、オーディションなんだ」

「オーディション?」

「アイドルグループのルージュパンク」

「はね子なら・・・来年はセンター確実だよ」

「親馬鹿にもほどがある」

「はね子・・・私の作戦通りにやるのよ」

「わかった・・・友達のつきそいできたけど受かっちゃいました作戦ね」

「そうそう・・・その気はないけど・・・世の中がほっとかない・・・伝説の始りよ」

「世の中・・・そんなに甘くないぞ・・・」という左江内氏の言葉を聞くものはいない。

家庭でも疎外されているが職場であるフジコ建設営業第三課でも期待されていない左江内氏・・・。

重要な商談のための会食に・・・簑島課長(高橋克実)が同行させるのはお調子者の池杉(賀来賢人)である。

「君には・・・四代目マイホームガールのCM撮影に立ちあってもらいたい」

「広報課の仕事じゃないですか」

しかし・・・広報課の財前(植木祥平)には別件があるらしい。

「とにかく・・・我々はお得意様と鰻を食べなければならんのだ」

「・・・」

その頃・・・はね子はクラスメートのさやか(金澤美穂)とおっかけのサブロー(犬飼貴丈)を伴って第一次面接会場へ。

「私はつきそいなんですけど」と参加条件である気合の入りまくったジャージ・スタイルでアピールしまくるのだった。

「ジャージを着て来てくれたので大丈夫ですよ」

「ジャージは普段着なんです~」

四代目マイホームガールはルージュパンクのセンターの真中ありさ(浜辺美波)なのだった。

現場に到着した左江内氏に礼儀正しく挨拶するありさ・・・。

「うちの娘がオーディション受けに言ってるんです」

「すごい~左江内さんの娘さんなら可愛いんでしょうね~」

「どちらかというと妻に似ているんです」

「左江内さんて・・・代理店の方?」

「いえ・・・不動産屋です・・・今日限りのピンチヒッターです」

「な~んだ・・・いい子ぶって損した」

「え」

ありさは・・・表の顔と裏の顔を使い分けるベタなアイドルだった。

東宝シンデレラ系だけにアイドルらしからぬ正当派美少女である。

「今日限りの人にお愛想言っても無駄だもの」

「さっきまでいた下っ端っぽい助監督の人にはお愛想ふりまいていたじゃない」

「わかってないな・・・助監督ってやつは監督になったりするのよ・・・まあ・・・なれないやつもいるけどさ」

「なるほど」

「左江内さんがいろいろとお世話してくれるなら・・・娘さんのこと・・・最終審査で私がプッシュしてあげるけど」

「いやいや・・・そんなことしなくていいよ・・・全然期待してないから・・・最終審査まで行かないだろうし・・・まあ・・・娘がやりたいって言うから応援はするけどね」

「甘いな」

「え」

「アイドルの仕事・・・なめたらあかんで」

しかし・・・第一次審査を突破するはね子だった。

「今日・・・ありさって子に会ったよ」

「なんで?」

「うちの四代目マイホームガールなんだ・・・最終審査ではね子をプッシュしてくれるって言うから断っておいた」

「何してくれてんだよ」

「だって・・・はね子にはあんな生意気な子になってもらいたくないもの」

「ああいう子はね・・・芸能界の荒波に揉まれて生意気になってんの・・・そこいくとウチのはね子は最初から生意気だから大丈夫なんだよ」

「大丈夫って・・・」

「明日も行って土下座して頼みこめ・・・最強のプッシュをお願いしてこい」

「そんなの無理だよ」

「だったら・・・一ヶ月小遣いなしだかんな」

「う」

「おなしゃす(お願いします)」

ママはジャイアンなのか・・・パパはのび太なのか・・・。

困惑する左江内氏・・・しかし・・・広報課の財前がやってくる。

「あの・・・ありさちゃんが左江内さんを御指名なんですよ」

「え」

「一体・・・どうして気に入られたんですか」

ママに鍛えられている左江内氏は使いっパシリの達人なのだ。

「どうして・・・私を呼んだんですか」

「いい仕事をするからに決まってるじゃん」

「・・・」

左江内氏は現場で様々な人々に愛想をふりまき・・・仕事をこなすありさに尊敬の念を抱く。

「がんばるねえ」

「私は・・・センターだし・・・いろいろと責任があるから」

「おじさん・・・なるべく責任はとりたくないな・・・責任なんて大嫌いだよ」

「あのね・・・そんなこといって許されるのは大学生までなんじゃないの」

十六歳のありさに説教される左江内氏である。

「ええと・・・お願いしたいことがあって」

「なに?」

「いや・・・やはりいい」

「気持ち悪いな・・・やっぱり・・・娘をプッシュしてほしいの?」

「それはない」

・・・といいながら土下座をする左江内氏だった。

そこへ・・・ありさの母親(村岡希美)がやってくる。

「おじさん・・・ちょっと席をはずしてくれる」

「はい」

「スポンサーの方に・・・あんな口の利き方をして・・・」

「大丈夫・・・あの人は今日だけの人だから」

「気を抜いてはダメよ・・・やっとセンターになれたんだから・・・これまでの努力を思い出して」

「わかってるよ」

「ちゃんとしてね」

「ちゃんとするよ」

母親が去った後で・・・左江内氏は呟く。

「辛いなら・・・やめちゃえばいいのに」

「そんなわけにはいかないのよ・・・わかるでしょう」

「なんで・・・ファンのため・・・それともお母さんのため?」

「・・・」

悩ましい問題から逃避するためにマンガ喫茶に向う左江内氏。

店員(佐藤二朗)はラストオーダーの時間を告げる。

「早いね」

「24時間が当たり前の時代の終焉・・・一つの時代はすでに死んでいる」

「北斗の拳を読んでます」

「おう・・・ピッコロの」

「それはドラゴンボール・・・」

「九時閉店です」

「せめて終電までやれよ」

左江内氏はママに問うのだった。

「はね子はまさか・・・君のためにやりたくもないことをやってるんじゃ・・・」

「何言ってんの・・・はね子は昔からアイドルに憧れてたじゃん」

「・・・そうだったっけ」

「このタイミングで真中ありさとお近づきになれるなんて・・・なんてったって相手はトップアイドルよ・・・たまには父親らしいことしなさいよ」

「・・・」

仕方なく・・・翌日も現場に向う左江内氏である。

「え・・・また」と簑島課長。

「聞きましたよ」と下山(富山えり子)・・・。「ありさちゃんに気に入られたそうじゃないですか」

「え・・・なんで」と池杉。

「だったら・・・俺が行けば良かった」と簑島部長。

「しかし・・・係長には毛髪がありますからね」と口火を切る蒲田(早見あかり)・・・。

「オレもそろそろカツラにするかな」

「えええええ・・・なんでですか」と池杉。「課長がハゲだって周知の事実なのに今さらなんでカツラなんですか。課長といえばハゲ、バゲと言えば課長でしょう・・・みんな陰ではハゲ丸課長って呼んでるのに・・・トランプみたいなカツラでも被るつもりですか」

「もうやめてください・・・」と火消しにかかる蒲田。「それにトランプはカツラじゃありません。髪型ですよ。国際問題になりますよ。マルハゲの課長とは違いますから」

よろめく課長である。

「俺が気に入られたのは・・・パシリとして使い勝手がいいからだと思います」と係長。

「ああ」と一同納得するのだった。

現場に到着する左江内氏・・・しかし・・・ありさの姿はない。

真中ありさ誘拐事件が発生していたのだった。

芸能プロダクションの社長(大河内浩)は「犯人は身代金一億円を要求してきました」と凸凸警察コンビに伝える。

「私におまかせください・・・得意ジャンルです」と小池刑事。

調子に乗って警笛を吹く刈野。

その頃・・・スーパーサラリーマン左江内氏は犯人の部屋の扉を破壊していた。

犯人は・・・マネージャー(郭智博)だった。

ありさは縛られてベッドに寝かされている。

「なんだ・・・お前は」

「変なおじさんではありません」

「ふざけるな」

襲いかかった犯人は地球の果てまで吹っ飛ばされるのだった。

ありさを乗せてオーディション会場までひとっ飛びである。

「あのバカマネージャーに脅されて・・・このまま死ぬかもしれないと思ったら・・・まだまだアイドルを続けたいと思ったんだよね」

「そうですか・・・」

ありさは仕事に復帰した。

「ありさは解放されました」と社長。

「すべて・・・予定通りです」と手柄を立てる小池刑事である。

調子に乗って警笛を吹く刈野。

忘却光線によってなぜ助かったかは忘れたが・・・アイドルとしてさらにステップアップしたありさだった。

「私はつきそいだったんですけど」

「心からアイドルになりたいと思わなければできないお仕事です」

「ええと・・・わかんないですね」

「覚悟のない人には向きません」

はね子は・・・計画通りにならない世界を知った。

「はね子は美人すぎたのよね・・・ファンがもしかしたら俺でも付き合えるかもと思える程度の可愛さでないと・・・だからさやかちゃんは受かったのよ」と円子。

「私って可愛すぎたのか・・・」とはね子。

「そうそう・・・どっちかというとトイレ行かない系なのよ」

左江内氏はお祝いのケーキを買ってきた。

「なによそれ・・・」

「敢闘賞だ」

「・・・」

「だって・・・はね子はなんてったって我が家のアイドルだもの」

不貞寝していたはね子は微笑んだ。

心温まる話である。

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2017年1月28日 (土)

心太とテレビと家族の時間(深田恭子)ノルウェーの森は緑じゃないのよ材木だから(小芝風花)

ミドリは嫉妬の象徴である。

つまり・・・「となりの芝生は青い」のである。

バカ売れしたために販売部数的に小説家たちの嫉妬の対象である「ノルウェイの森/村上春樹」の登場人物・小林緑は親の見栄で四ツ谷駅付近の私立の女子中学・高校に進学する。

豊島区北大塚のしがない書店の娘である緑は・・・突然、お嬢様の群れに囲まれ、貧富の格差に喘ぐことになる。

学友とのちょっとした「お食事会」でさえ・・・彼女のお小遣いでは足りないのである。

思春期をそういう陰影の中で過ごしたことは彼女の精神を生傷だらけにするわけである。

まあ・・・それも人生だがな。

小山みどり先生(小芝風花)の物言いがいささか唐突に見えるのは彼女の原型が「小林緑」だと直感できない一部お茶の間の皆さんだけなのだ。

中卒の両親を持つ小学生が目指すのが桜葉学園中等部なのである。

四ツ谷駅付近の私立の女子中学・高校といえば雙葉中学校だ。

それに・・・文京区本郷の桜蔭中学校を足すと「桜葉」なのである。

これに千代田区一番町の女子学院中学校を加えれば中学入試の「「女子御三家」である。

そんなところに・・・中卒の両親を持つ女子が潜り込んだら人間形成に重大な過誤が生じる・・・。

みどりは・・・それを案ずるのである。

なんて児童思いの小学校教諭であることか・・・。

ちなみに・・・主題歌「遺伝/斉藤和義」のイントロは「ノルウェーの森/ビートルズ」を連想させる。

で、『克上受験・第3回』(TBSテレビ20170127PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・吉田秋生を見た。中卒であるためにある種の幸福から疎外されているという閉塞感に追いつめられた桜井信一(阿部サダヲ)は公立・大江戸小学校の五年生・佳織(山田美紅羽)と偏差値72を要する桜葉学園中等部を父娘で目指そうと決意する。中卒の母親・香夏子(深田恭子)も夫と娘の夢を応援することになり、中卒の祖父・一夫(小林薫)は大工として勉強部屋「俺塾」を完成させたのだった・・・。

寝る間を惜しんで勉強を始める信一と佳織・・・。

寝不足の二人の心身を案ずる香夏子だった。

学習塾には通わせず自分で教えると言った手前・・・ドリルの予習をかかせない信一はさらに睡眠不足になり・・・ついに仕事中に居眠りをするようになるのだった。

スマイベスト不動産で信一に指導される立場の名門・東西大学を卒業した楢崎哲也(風間俊介)は顧客に見せる物件で仮眠をとる指導担当者に茫然とする。

「大変なんだよ・・・予習が」

「だから無理だと言ったんですよ」

「そんなこと言わないで協力してくれよ」

「塾には受験のためのそれなりのノウハウがあるんです・・・テキストだって違うんですよ」

「テキストか・・・お前持ってないの」

「僕が中学受験をしたの・・・何年前だと思っているんですか」

「そうか・・・」

公立の小学校では教わらない「つるかめ算」の「教え方」を考える信一。

中卒仲間たちの集う「居酒屋「ちゅうぼう」で鶴と亀の折り紙を強要する。

そもそも・・・信一のくせに・・・絶世の美女である香夏子を嫁にしているわけである。

どれだけ・・・周囲の男たちに妬まれているか想像するのも恐ろしいが・・・このドラマはそれについては触れないと思われる。

男たちは信一のために兜なども折るのだった。

それは本当は嫌がらせだよな。

「つるかめ算」とは・・・つるの足が二本、カメの足が四本と想定して・・・個体の総数と足の総数から・・・つるとかめの個体数を割り出す問題である。

つるとかめの総数が三十で足の数が百なら・・・つるは何羽いてかめは何匹いるか・・・と問うわけである。

「でも・・・折り紙のつるは足ないよ」

「あるとして・・・」

最初に全部がつるとして考えると足の数は六十である。

足は百なので・・・不足分をかめで補う必要がある。

百から六十を引くと四十である。

つまり・・・かめは二十匹いることになる。

三十から二十を引いてつるは十羽いるのである。

これを応用すると「あわせて四百万円の給与があって・・・三十人の労働力が必要な時に正社員が賃金三十万円、アルバイトが賃金五万円ならそれぞれ何人ずつ必要か」がたちどころに計算できることになる。

同一労働同一賃金の話はどうする。

それはまた別の問題である。

正社員とアルバイトの格差が激しすぎるだろう。

暴動が起きます。

この場合、正社員が十人で三百万円、アルバイトが二十人で百万円なので正社員は確実にアルバイトに半殺しにされます。

・・・もういいか。

佳織も寝不足で授業中に居眠りすることに・・・。

特別措置で・・・「授業中に試験勉強をすることが許された転校生」に悩む小山みどり先生は・・・抜き打ちテストを敢行する。

「私はパスします」と公立小学校の教育レベルを見下す東京大学卒の徳川直康(要潤)が経営する大企業「トクガワ開発」の社長令嬢・麻里亜(篠川桃音)である。

「それなりに難しく作ってあります」

麻里亜に挑戦するみどり先生・・・。

結果・・・麻里亜は80点しかとれず・・・あせりを感じるのだった。

一方・・・コマツコになれそうなリナ(丁田凛美)と美少女のアユミ(吉岡千波)は明るく零点の答案を発表する。

向学心に燃える佳織は30点だったので・・・答案を見せるのを渋るのだった。

そこへ・・・10点だったが・・・0を書き足して100点に偽装した大森健太郎(藤村真優)が割って入るのだった。

リナとアユミは零点シスターズと命名される。

中学生にもなれば・・・零点シスターズが佳織を校舎裏で「リンチ」する展開もあるが・・・基本的にみんないい子である。

まあ・・・小学校高学年でも「無視」くらいはする場合があるけどな。

そういう「世界」と折り合うのも重要な人格形成だ。

寝坊して遅刻しそうになった佳織を校舎裏の抜け道で助けた上に手まで握った健太郎は・・・少し火照っているわけである。

子供たちの世界の「平等」を目指すみどり先生は・・・自動車通学の禁止を・・・徳川直康に申し出るのだった。

このために・・・麻里亜は遅刻しそうになるが・・・今度は佳織が麻里亜の手をとって抜け道に導く。

佳織の手のぬくもりが麻里亜を火照らすのである。

こうして・・・中学受験トリオが結成されたのだった。

信一は仕事をさぼって・・・怪しい窓口の男・山之内(野間口徹)のいる「羽柴進学塾」の卒業生を待ち伏せる。

合格の御礼に来た母親(遊井亮子)からいらなくなったテキストの入手に成功する信一。

しかし・・・仕事をしない信一に楢崎の不信感は募っていく。

「付き合う相手はよく考えろ」と営業部長の長谷川(手塚とおる)は囁く。

「住む世界が違う人間はいるんだよ・・・」

香夏子は娘と連続入浴サービスである。

「がんばるわね」

「うまく問題が解けると楽しい」

「無理しないでね」

「学校のお勉強は座って聞いてるばっかりだから眠くなっちゃう・・・」

浴槽で居眠りして溺死しかかる佳織だった。

病み上がりの舅・一夫のために手作りお惣菜を届ける中卒だが・・・徳においては純真で義務においては堅実な立派に日本婦人の鑑といえる香夏子である。

香夏子はあえて聞いてみる。

「信一さんにチャンスをあたえなかったんですか」

「あたえたさ・・・中学卒業する時におれの弟子にしてやった・・・だが長続きしなかった・・・あいつは何をやっても長続きしないんだ・・・」

「・・・」

高校に行っていれば違う人生があったと・・・信一が思い続けるのは仕方のないことかもしれないと聡明な香夏子は思うのである。

授業中に頻繁に居眠りする佳織を案じて家庭訪問を決意するみどり先生。

「最初に御両親だけに申し上げたいことがあります」

「では・・・俺塾・・・いえ・・・勉強部屋で伺います」

「中学受験を決めたのはお父様ですか」

「はい・・・」

「中学受験のほとんどは・・・親の見栄によるみのです」

「え」

「失礼を承知の上で申します・・・身上書によりますとお父様の最終学歴は中学校ですよね」

「ええ」

「自分の夢を叶えるために子供に中学受験を無理強いなさらないでください」

「えええ」

「受験は佳織の希望でもあります」と香夏子・・・。

「そりゃあ・・・子供は親のために・・・そう言いますよ・・・でも世の中には本当に何もしなくても勉強が出来る子はたくさんいるんです・・・親の見栄でそういう子たちの集団に送り込まれたら・・・普通の子がどれだけ傷つくことになるのか・・・」

盗み聞きをしていた佳織が泣きながら飛び出す。

「先生・・・どうしてお父さんをいじめるの・・・お父さんは佳織のためにがんばってくれているのに・・・私・・・お父さんと勉強ができて楽しいよ・・・お父さんのためにいい中学に入っていい高校に入って・・・いい大学にはいって・・・お金持ちになるのは・・・悪いことですか」

「先生・・・今日のところは・・・」

「・・・はい」

娘の涙に両親は泣いた・・・みどりももらい泣きである。

小学校の廊下で・・・。

「佳織ちゃんは・・・お父さんのことが本当に好きなのね」

「先生は自分のお父さんのこと好きじゃなかったんですか?」

「本当はどうだったのか・・・もう・・・わからなくなってしまったなあ」

「・・・」

みどり先生は算数の時間に特別に「つるかめ算」を出題する。

喜んで挙手する佳織。

「正解です・・・よく勉強していますね」

「やったね」と佳織を讃える零点シスターズである。

「イェーイ!」と弓手のポーズで答える佳織だった。

屈託がないように見える教室だった。

信一は一日の無理のない時間割を作る。

香夏子は一緒にテレビを見て一緒に楽しむ時間も必要だと思いつつ・・・お風呂場に漢字を覚えるための装置を手作りするのだった。

誰もが羨む良妻賢母なんだなあ。

しかし・・・信一の職場には暗雲がたちこめていた。

契約が取れたことを部長の報告する楢崎・・・。

「お前はどうなんだ・・・」と部長は信一を睨む。

「楢崎くんとはいいコンビになりました・・・」

「いえ・・・この契約は・・・僕だけの力で獲得したものです」

「え・・・」

そりゃ・・・そうだ・・・。

それは本当のことだから。

どう考えても社会人失格の信一なのである。

所詮・・・中卒だからな。

おいおいおい。

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2017年1月27日 (金)

忘れじの赤穂浪士~生きながらえて(武井咲)善意という不確かなモジュール(成海璃子)

ある意味で地獄の冬ドラマである。

とにかく(土)は「忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣~」で「スーパーサラリーマン左江内氏」と「精霊の守り人II 悲しき破壊神」の裏表で「リテイク 時をかける想い」の四本をレビューしているわけである。

唯一の救いは「リテイク 時をかける想い」が来週最終回だということだ。

本当は・・・「リテイク」はレビュー対象作品としては微妙な仕上がりだが・・・タイムトラベルものであることと中途半端な感じの憐れさが切るに切れないわけである。

今回は「精霊」の先行レビューになったが・・・「リテイク」終了後は(水)「忠臣蔵の恋」(木)「精霊」という順番になるかもしれないな。

どっちが「カルテット」の後で楽出来るかと言う話だろう。

っていうか・・・「カルテット」の再現性を低くしろよ。

検討します。

っていうか・・・月9はいいのか。

「忠臣蔵」終了後の谷間で処理する予定です。

「リテイク」が終わるとしばらくフジテレビのドラマゼロだな。

ゼロですね。

TBSとNHKの時代か。

っていうか・・・読売と朝日の曲がり角ですね。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第15回』(NHK総合201701211810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・清水一彦を見た。元禄十六年(1703年)四月・・・きよ(武井咲)が操を捧げた磯貝十郎左衛門(福士誠治)が肥後熊本藩の白金下屋敷で切腹して果ててから四十九日が経過していた。きよは泉岳寺に葬られた十郎左衛門の墓前に毎日花を供える日々を過ごしていた。十郎左衛門に「生きよ」と命じられ生きてはいるが菩提を弔うことだけの暮らしである。

貞享二年(1685年)生れのきよは数えで十九歳になっている。

十郎左衛門と情を通じているが・・・祝言をあげたわけではないので未婚である。

このまま生涯独身のままではおけないと周囲のものは思案するのだった。

女には女の身の振り方があるのだ。

「きよ様・・・」

泉岳寺できよは堀部安兵衛(佐藤隆太)の未亡人・ほり(陽月華)に声をかけられる。

「ほり様・・・」

ほりは父・弥兵衛(笹野高史)の後妻・わかの実家である二本松藩丹羽家家臣・忠見氏にわかとともに身を寄せていた。

「これより・・・継母様とともに・・・先代藩主長次様のご正室冷台院にお仕えすることになりました」

「丹羽左京太夫様の・・・」

「なんとしても・・・堀部家を再興しなければなりませぬ・・・」

「堀部のお家を・・・」

きよは・・・目指すものがあるほりを羨ましく感じる自分に驚く。

(自分には・・・望みなどない・・・)

赤坂の三次浅野家下屋敷で浅野家未亡人の瑤泉院(田中麗奈)に家臣遺族の近況を伝えるきよ・・・。

「そうか・・・ほりが・・・新しき奉公を・・・するか」

「弥兵衛様の御遺言とか・・・」

「さすがは・・・武門の誉れ高きもの・・・そつがないのう」

そこで侍女のつま(宮崎香蓮)が申し出る。

「おそれながら・・・お暇乞いをお願い申しあげたく・・・」

「なんと」

「縁談がございます」

「相手は誰じゃ・・・」

「我が兄・・・勝田善左衛門でございます」

勝田善左衛門(大東駿介)は密偵となったきよの連絡係を勤めるうちにつまを見染めたらしい。

善左衛門は父・元哲(平田満)の跡を継ぎ・・・浅草稲荷町・浄土真宗・唯念寺・林昌軒の庵主となることになった。

赤穂浅野家が再興されない以上、つまが善左衛門と夫婦になることに異論のあるものはいなかったのである。

きよは小石川・薬王山能覚寺・無量院の仙桂尼(三田佳子)を訪ねる。

仙桂尼は赤穂義士の遺児たちに幕府から申しつけられた遠島の赦免を芝・増上寺を通じて嘆願していた。

「願いは叶いませんでした」

「それでは・・・」

「四人の遺児たちが伊豆大島に流罪と決まりました」

四人の中にはきよのおばである仙桂尼の遠縁にあたる村松政右衛門(井之脇海)も含まれている。

「島の暮らしは厳しいと聞いております」

「まだ・・・諦めてはおりませぬ・・・残された遺児たちも数えで十五になれば遠島になりまする。お子たちが送られぬように・・・送られたものが一刻も早く戻れるように・・・嘆願を続けて参ります」

「仙桂尼様・・・」

四月二十八日、きよは佐藤條右衛門(皆川猿時)とともに霊岸島より船出する流刑船を見送った。

磯貝十郎左衛門の兄嫁であるみえ(三輪ひとみ)が林昌軒を訪れた。

「お義姉上様・・・」

「義母上が・・・昨夜身罷りましてございます」

「え・・・」

「義母上が・・・きよ殿にはお知らせするなと申しましたので・・・義母上は・・・十郎左衛門殿の最後の時をきよ殿と過ごせたことでもはや充分・・・と申しておりました・・・」

「お義母上様・・・」

十郎左衛門に看取ってくれと頼まれた貞柳尼(風祭ゆき)が知らぬ間に逝去していたことはきよの胸に痛みを残した。

十郎左衛門の妻であったことを証してくれるただ一人の人をきよは失ったのである。

「義母上から・・・これをきよ殿にお渡しするように頼まれました・・・十郎左衛門殿の遺品として残されたもの・・・十郎左衛門殿はこれを肌身離さず持っていたとのことでした」

それは・・・きよが十郎左衛門に贈った・・・琴の爪を封じたお守り袋だった。

「十郎左衛門様・・・」

袋から取り出した琴の爪はきよに囁きかける。

「そなたは・・・生きよ」・・・と。

冴え冴えとした月光を浴びて・・・きよは問う・・・。

「何故・・・」・・・と。

きよは・・・儒学者の細井広沢(吉田栄作)から呼び出された。

「私が・・・奉公に・・・」

「桜田御殿に・・・」

「桜田御殿・・・」

「上様にはお世継ぎがござらぬ・・・」

「上様・・・」

「将軍家の話じゃ・・・桂昌院様は・・・鶴姫様の嫁いだ紀州・徳川綱教公をお世継ぎにとお望みだが・・・柳沢様は・・・家光公のお孫であらせられる甲府藩主・徳川綱豊公を推しておられる」

「柳沢様が・・・」

「桜田御殿のお殿様とは・・・つまり・・・豊綱公だ・・・」

「惧れ多いことでございます」

「これは・・・浅野家のためでもある・・・」

「浅野家の・・・」

「きよ殿の器量次第では・・・奥から・・・動かぬものを動かすことができるやもしれぬ」

「動かぬものを・・・」

「女でなければできぬこともある」

「・・・」

「無論・・・奉公にあがるとなれば・・・きよ殿は一度里を出て・・・しかるべき武家の養女として形式を整えねばならぬ・・・しかし・・・それはこちらにまかせてくれれば結構・・・よくよくお考えあれ・・・」

「ありがたき申し出でございます」

「豊綱公は・・・齢四十二・・・温厚な方であられる」

きよは仙桂尼を訪ねる。

「私は桜田御殿に奉公することにいたしました」

「なんと・・・」

「身分高きお方のお側にお仕えして・・・浅野家再興の手助けをしたいと考えます」

「そのような料簡はお捨てなされよ」

「何故です・・・」

「奉公とは・・・損得でするものでありませぬ・・・」

「・・・」

「もしも・・・桜田御殿に奉公にあがるというのなら・・・一心に勤めなければなりませぬ」

「それは・・・」

「浅野家のことは忘れるのです」

「そんな・・・」

「きよ・・・そなたは・・・まだ若い・・・その若さで・・・愛しきものを失ったこと・・・それは痛ましいことじゃ」

「・・・」

「だからこそ・・・すべてを忘れて・・・新しき殿にお仕えせよ」

「新しき殿に・・・」

「さすれば・・・道が開かれることもあろう・・・」

「無心になれと」

「そうじゃ・・・誠心誠意尽くしてこそ・・・光明を見出すこともあろう・・・」

「仙桂尼様・・・」

きよはまだ若い・・・細井広沢や・・・仙桂尼が何をきよに唆しているのか・・・まだはっきりとはわからないのだった。

女人にしかできぬこと・・・誠心誠意尽くすことの・・・本当の意味を。

「父上・・・私は桜田御殿に奉公にあがります」

「なんだと・・・」

「お許し願います」

「きよ・・・お前と言う娘は・・・何と言うことを申すのだ・・・」

勝田元哲は唖然とした。

しかし・・・勝田元哲とて玉の輿と言う言葉を念頭に浮かべていたことは間違いないのだろう。

きよは桜田御殿に出仕するために・・・四代将軍家綱の乳母・矢島局の養子・矢島治太夫の養女となった。

元禄十六年十一月・・・関東地方は巨大地震に襲われることとなる。

関連するキッドのブログ→第14話のレビュー

で、で、『リテイク 時をかける想い・第7回』(フジテレビ201701212340~)脚本・秋山竜平、演出・小野浩司を見た。2022年にタイムマシンが発明される時空の2017年である。2022年に誰がどのようにタイムトラベルを可能にするのかの一切の説明はない。だが・・・タイムトラベルが未来から過去への一方通行で物理的な転移であることだけが明らかになっている。タイムトラベラーたちは・・・タイムトラベルの方法について一切語らない。着地点が2016~2017年に集中している形式になっているが・・・それはシステム的な問題によるものなのか・・・それともタイムトラベラーの着地によって未来が分岐しているためなのかという推論さえない。つまり・・・そういうことに無頓着なスタッフなのではないかと推定できるわけである。

一体・・・2022年にタイムマシンが発明されることを現代人は何故信じることができるのだろうか・・・という根本的な問題にさえ説明がないわけである。

ここまで・・・判明したことは・・・戸籍監理課の課長・新谷真治(筒井道隆)が情にほだされやすい性格であることぐらいである。

つまり・・・これは・・・サイエンス・フィクションというよりは冴えないおっさんファンタジーなのだ。

そうじゃないかなあと思いつつ・・・ついに最終回直前である。

ここまで付き合ってきたのはヒロインの那須野薫(成海璃子)の魅力とののののののって書きたいからだと言っても過言ではない。

未来から着地する未来人の捕獲は国家的プロジェクトと言える。

それは未来予測の難しさが現代には残っているからである。

たとえば・・・2020年に東京が壊滅しているかどうかわからないのに東京五輪のあれやこれやで紛糾していることによっても明らかである。

キッドが周囲の人に大統領はトランプと予測してバカを見る目で何度も見下されたことからも明らかである。

そういう不確定な要素がなくなれば強力なカードを得ることは明らかなのである。

各国は未来人確保の総力戦を展開しているはずである。

だが・・・やってくる未来人たちは非常に個人的な問題の解消のためにやってくる。

娘を殺された父親が犯行を阻止するために。

実らなかった初恋を実らせるために。

失敗だった結婚をおじゃんにするために。

人生の選択ミスを訂正するために。

あらかじめ自分が生れないために。

母親の虐待から自分を救うために。

しかし・・・このドラマでは改変された歴史は遡上前の未来に伝播しないために未来人が過去の自分を殺しても突然消失したりはしないのである。

過去の娘の命を救っても未来で殺された娘は蘇らないのだ。

彼らは異世界からやってきた異邦人として余生を過ごすしかないのである。

もはや・・・2022年にタイムマシンが開発されるかどうかも定かではないのだった。

今の所・・・転移して来たものはほとんどが21世紀の人間である。

それは・・・単純に考えれば・・・22世紀には人類が存在していないということである。

あるいは・・・タイムマシンの飛距離がそれほど大きくないのかもしれない。

スキャンダルが発覚して現職法務大臣が辞任に追い込まれる。

法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)が後任候補として浮上する。

そのために身辺が多忙となる政務官なのだが・・・。

「僕が大臣になっても・・・この部署は確保するからね」

パートタイマーのパウエルまさ子(浅野温子)に語りかける政務官。

つまり・・・戸籍監理課は・・・政務官の私的機関なのである。

そんなことを官僚たちが見過ごすのかよ。

そうなると・・・別荘は・・・政務官のポケットマネーで運営されているわけである。

一体・・・どんな設定なのだ。

警視庁の刑事である柳井研二(淳士)から「不思議な通報」についての情報を得る課長。

「通報があって・・・現場に行くと・・・事件が発生するんですよ」

「まるで・・・誰かが事件発生を予測してるみたいね」

「そんなことはありえないので・・・誰かが事件発生をコントロールしているのだと思います」

しかし・・・課長や薫にはピンと来るのだった。

「誰かが・・・事件が発生することを知っていて通報しているのだ」

「最近、天気雨が発生してますか」

「最近はないわね」

「つまり・・・逃亡中のオバケの仕業だ・・・」

「可能性としては・・・ニュース年鑑を所持していた坪井が怪しいですね」

坪井信彦(笠原秀幸)は一攫千金を狙って遡上してきた未来人である。

「今頃・・・ものすごいお金持ちになっているのでは」

課長と薫は現代の坪井を訪ねる。

「その後・・・変わったことはありませんか」

「ないですね」

「おや・・・引越しですか」

「ええ」

「あれ・・・その時計・・・お高いんじゃないですか」

「・・・」

「引越し先はどちらですか・・・」

「ごめんなさい・・・嘘つきました」

「嘘」

「変な人が来ました」

「それで・・・」

「お金をくれました・・・」

「いくらですか」

「ご・・・五百万円」

「なるほど・・・」

「なんか・・・ヤバイ金なんですか・・・」

「いえ・・・もし・・・その人がまた来たらお手数でしょうが・・・連絡をいただけますか」

「それだけ?」

「何か・・・彼に言われましたか」

「無駄使いしないで・・・貯金をしろと・・・でもお金があったら使っちゃいますよね」

「・・・」

「あの人・・・何なんですか」

「それはお答えできない決まりになっています」

薫は課長に尋ねる。

「過去の自分に興味を抱くなんて・・・どういうことでしょうか」

「何か・・・心境の変化があったのかもしれない」

「心境の変化・・・」

「つまり・・・彼は・・・何かいいことをしたくなったんじゃないかな」

「何のために」

「いいことをするのに理由がいるのかってバルサが言ってた」

「不良に恋したから家出するみたいなことですね」

「それはなんか違うぞ」

「基本的に・・・課長はいわゆるお人好しなんですよね」

薫はそういう課長に好感を持っている。

おそらく・・・未来から来た課長の娘なのだろう。

事態は急速に展開する。

政務官が未来人とコンタクトして・・・未来からの情報を入手し・・・見返りとして未来人の逃亡を幇助している可能性が浮上する。

課長は政務官秘書の大西史子(おのののか)に政務官の動向を探ってほしいと依頼する。

「なぜ・・・・」

「政務官が不正を働いている可能性がある」

「そんなことをして・・・私になんのメリットがあるの」

「ののののの・・・すまなかった」

天才ハッカーであるまさ子が素晴らしいインターネットの世界で予言者捕獲掲示板を作成する。

坪井信彦は罠にかかり・・・事件のポイントを予告するのだった。

「警察に通報しないで・・・なぜ・・・掲示板に書き込みを」

「また・・・心境の変化があったのだろう」

階段のある不穏な公園に張り込む課長と薫。

子供連れの母親が目を離した好きに幼児が階段から落下しそうになる。

抱きとめる坪井だった。

泣きだす子供。

母親が血相変えてやってくる。

「うちの子に何してるの」

「いや・・・俺は子供を助けようとして・・・」

「変態・・・変態です・・・」

あわてて逃げ出す坪井。

課長と薫が追いつくのだった。

「あんたたちか・・・」

「なぜ・・・人助けを始めたんだ」

「金に不自由しなくなって・・・何かしたいと思ったのさ」

「社会貢献を・・・」

「まあ・・・そうだよ・・・しかし・・・警察に通報しても・・・褒められるのは警察で・・・俺じゃない」

「なるほど・・・だから・・・子供を助けて・・・母親に御礼を言ってもらいたかったのか」

「上手くいかないもんだね・・・褒められようとして叱られた」

「あの人です」

母親が警官を連れてきた。

逃げ出す坪井。

課長は警官を引き留める。

薫は坪井を追うが今度は見失ってしまうのだった。

「もう一度・・・掲示板で呼びかけよう」

(お話しませんか・・・あの日落雷のあった場所で待ってます)

「来ますかね」

「さあ・・・」

坪井はやってきた。

「坪井さん・・・こんにちは」

「やあ・・・」

「坪井さんは・・・未来で何かしたんですか」

「振り込み詐欺の下っ端だった」

「おやおや」

「簡単な仕事で稼げてたのに・・・警察に追われて」

「それで・・・未来に」

「うん」

「そんな人でもタイムマシンを簡単に利用できるんですか」

「よく覚えていないんだ・・・」

「ひょっとしたら脚本家がそのあたりはあまり深く考えていないのかもしれませんね」

「え」

「このドラマは・・・時間の問題じゃなくて・・・人の心のシステムの問題らしいから」

「つまり・・・悪いことをしたら報いがあるみたいな・・・」

「世の中・・・そうでないことも多いみたいですけどね」

「いいことをしたら・・・何か変わるかなって思ったんだ・・・でも・・・それって結局自分が幸せになりたいだけなのかも」

「僕たちの仕事は未来を変えさせないことです・・・未来が変わって不幸になる人がいるかもしれないから・・・しかし・・・未来が変わって幸せになる人もいる。現に今日はあの子は怪我をしなかった」

「あの子は本当は今日死ぬはずだったんだよ・・・死んだからニュースになるんだもの」

「・・・」

「僕は・・・坪井さんが・・・どうしようもない悪人だとは思えません」

「俺はどうすればいい・・・」

「わかりません・・・でも一緒に考えることはできますよ」

「あんたと一緒に行くよ・・・」

「もう・・・誰かに利用されるのはやめましょう・・・政務官とはどこで知り合ったんですか」

「政務官?・・・誰のこと」

そこへ秘書から着信がある。

政務官が接触していたのは別の未来人だった。

課長は政務官に詰め寄った。

「未来人と接触していたんですか」

課長は秘書が盗撮した密会現場の画像を提示する。

「それが・・・未来人という証拠があるのかね」

「未来人の情報を個人的な利益のために使うなんて・・・許されません」

「彼は二十年後の未来からやってきた政治学者で・・・有益なアドバイザーだ・・・タイムマシンが開発された未来では・・・当然タイムトラベルを管理する法が必要となる」

「・・・」

「早急に対応しなければ・・・世界は大混乱に陥るんだよ・・・私は彼と協力するために彼に戸籍を与えた・・・彼はこの世界で現代人の家族と暮らしているんだ」

「・・・」

「どうする・・・彼から・・・戸籍を剥奪して・・・家族から彼を奪うかね」

「・・・」

「君の確保した未来人に聞いてみたまえ・・・どうしたいのか」

課長は躊躇った・・・。

官僚としての順法精神と・・・個人の持つ・・・裁量権の狭間で・・・。

「戸籍が欲しいですか」

「僕は別荘に行くよ」

「なぜ・・・」

「それがあんたの仕事なんだろう」

「・・・」

「その前に・・・一つお願いがあるんだけど」

坪井は過去で稼いだ金を全額寄付するために・・・銀行に行きたいと言った。

もちろん・・・課長は許す。

「ギャンブルで稼いだお金なんですけどね」

「まあ・・・金は天下のまわりものだから」

あまり深い考えのない課長だった。

そこて突然、銀行強盗事件が発生する。

「しまった」と叫ぶ薫。

犯人はナイフをかざして人質をとる。

犯人に立ちふさがる坪井。

犯人は坪井の腹をさすが・・・ニュース年鑑がそれを受けとめる。

警備員が犯人を確保する。

「知っていたのか・・・」

微笑む・・・坪井・・・しかし・・・強盗犯は二人いて・・・坪井は刺されてしまうのだった。

何故か・・・犯人はニュース年鑑を拾って逃走するのだった。

「いいことしたから・・・天国に行けるかな」

坪井は息絶えた。

「坪井さん・・・」

薫は政務官に電話をした。

「うかつでした・・・有名な事件だったのに・・・」

「ニュース年鑑はどうした」

「犯人が持ち去りました」

「取り戻せ」

「・・・はい」

「課長・・・追いかけましょう・・・犯人の行き先はわかっています」

課長は薫の言葉に驚く。

「なんだって・・・どうしてそんなことを・・・」

「私が・・・オバケだからです」

次回・・・最終話である。

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2017年1月26日 (木)

精霊の守り人II 悲しき破壊神(綾瀬はるか)シハナは私です(真木よう子)トロガイは私です(高島礼子)

せっかくの豪華キャストが過剰な扮装で誰だかわからないドラマの続編である。

バルサだって色白美人戦士でいいじゃないか。

歌舞伎を見習えよ~。

地黒の人も白くなってるだろ~。

まあ・・・やりたいのだからしょうがないよな。

砂塵にまみれることへの憧れが・・・自称公共放送のスタッフの心に眠っているんだな。

まあ・・・昔の現場スタッフは風呂にも入らず薄汚れていたよな。

誤解を招くような戯言はそこまでだ。

ついに冬の谷間はなしか・・・。

今の願いは「リテイク」が終わって・・・一日一本体制になることだな・・・。

このままだと・・・ついに死ぬかもな・・・。

で、『精霊の守り人 外伝』(NHK総合201612112355~)脚本・上橋菜穂子を見た。「精霊の守り人シーズン1」と「精霊の守り人 シーズン2」をつなぐ間奏曲である。新ヨゴ皇国の第二皇子チャグム(小林颯→板垣瑞生)の用心棒だったバルサ(綾瀬はるか)はカンバル王ログサム(中村獅童)の暗殺未遂の後で放浪の旅にあった・・・。

世界には欲にまみれた暴力がはびこっていたが・・・バルサは己の信じる正義に従い暴力を振るうのである。

ある日・・・バルサは目に見えないもの(浅見姫香)の聞こえない声を聞く。

「チイカナを助けておくれ」

辺境の荒野で・・・幼い少女(山﨑香歩)を発見したバルサは・・・少女に問う。

「こんなところで・・・何をしている」

「お花を摘みにきた」

「そうか・・・しばらく目をつぶっていろ」

「どうして」

「おそろしいものがやってくるからだ」

「こわい」

「目をつぶってゆっくり二十数えるんだ」

「どうして」

「それが魔物を払ってくれる」

「わかった」

「よし・・・目をつぶれ・・・そして数えろ」

「・・・一つ」

獲物を狙う盗賊たちが現れる。

バルサは群がる盗賊たちを自慢の短槍で突いて突いて突きまくるのだった。

バルサは敵に容赦をしない。

襲撃者たちはすべて無惨な骸となって大地に伏した。

周囲を満たす人体がまき散らした血と汚物の臭い・・・。

「・・・二十」

「もう・・・いいよ」

チイカナは目を開き・・・死体の山に驚くのだった。

「おそろしい魔物が来たのね」

「だが・・・もう逝ってしまったよ」

血まみれのバルサは微笑んだ。

バルサはチイカナとともに・・・チイカナの姉の墓に参った。

チイカナは墓に花を供える。

風に乗って見えないものの聞こえない声が囁く。

「ありがとう・・・バルサ」

バルサは新しい獲物を求めて流離の旅を続けるのだった。

で、『精霊の守り人II 悲しき破壊神・第1回』(NHK総合20170121PM9~)原作・上橋菜穂子、脚本・大森寿美男、演出・加藤拓を見た。目に見えないものも生きているという世界である。生前の世界と死後の世界の中間点に人生があることはこの世界に似ている。しかし、この世とあの世は未分化であり・・・死者と聖者は交流し、この世ならぬものが災いとして姿を見せる。あれから四年が過ぎ去った。この世界の四年が地球時間でどのくらいになるのかは定かではない。

Seireimap021 バルサの生れ故郷は北大陸の北部に広がっているカンバル王国である。カンバル王ログサムの王位継承の陰謀に巻き込まれ故郷を追われたバルサは南東部を支配する新ヨゴ皇国でも事件に関わり、カンバル王国と新ヨゴ皇国との協定により指名手配犯となる。お尋ね者となったバルサは法の支配のおよばない国境沿いに潜伏し、用心棒で生活費を稼ぐ身の上である。北大陸南西部のロタ王国と新ヨゴ皇国の交易商人(麿赤兒)に雇われたバルサは新ヨゴ国国境で任務の終了を告知する。しかし、強欲な商人はバルサに懸った賞金を得るために手下たちに獲物の捕獲を命じていた。命知らずの男たちはたちまち命を失い、バルサは大量のお宝の入手に成功する。これで当分飢える心配はない。食うか食われるか・・・法の支配の及ばない辺境ではそれがルールである。演出上では命乞をする悪党の命をバルサが助けるようなニュアンスになるが・・・これは排便や性交の直接的な表現を慎むのと同じ伝道者たちのお茶の間向けの配慮にすぎない。殺すか殺されるかの世界に中途半端な情は無用である。

平原の国であるロタ王国にはタルの民と呼ばれる少数民族が棲息している。

タルの民は先住民であり・・・かってのロタの地の支配者であったとも言われている。

ロタの民は破壊の神「タルハマヤ」を召喚し災いを為すと信じるものたちも多い。

タルの民を支配するロト人は惧れをロタの民は希望を抱いて「タルハマヤ」を思うのである。

タルの民であるトリーシア(壇蜜)は娘のアスラ(鈴木梨央)が神を召喚する異能の持ち主であると知り・・・チキサ(福山康平)とアスラの兄妹を連れて禁断の聖域に侵入する。

しかし、ロタ王に仕えるカシャル(猟犬)の呪術師たちは「タルハマヤ」の復活を警戒し、母子を捉え、首なし死体が棺の上で朽ちている祭儀場で罪人となったトリーシアを磔刑に処するのだった。

「お母様」

「アスラ・・・恐れるな・・・聖なる神を呼び出すのだ」

トリーシアの胴体を処刑の槍が貫く。

凌辱の感応に震え息絶えるトリーシアである。

「お母様・・・」

母の死に激しく興奮した「タルハマヤ」を召喚する。

カメラの前に置かれたガラスにヒビを生じさせるのだった・・・違うぞ。

アスラと一体化したタルハマヤは殺戮の限りを尽くす。

無数のカシャルの死体が横たわり臭気に満ちた祭儀場に・・・ロタ国王・ヨーサム(橋本さとし)と王弟・イーハン(ディーン・フジオカ)が現れる。

「これはどうしたことか・・・一体何があったのだ・・・」

驚くヨーサムには構わず・・・イーハンは磔となった女に駆け寄る・・・。

「トリーシア・・・」

「それは・・・死刑となったタルのものではないか・・・」

「・・・」

ヨーサムはイーハンの死体に抱く感情を読む。

「イーハン・・・まさか・・・お前・・・その女と情を通じていたのか」

「・・・」

イーハンとトリーシアの官能の宴の回想シーンは今回はありません。

ずっと・・・ないかもしれん。

いろいろとものたりないのも・・・相変わらずだな。

ロタ王国には南北の確執がある。

貧しい北と豊かな南の経済格差である。

北大陸の南部に突き出した半島国家サンガル王国との交易によりロタ王国南部の商人たちは富を蓄えていた。

ロタ王国南部の港町ツーラムも活気に満ちている。

祭儀場を脱出したチキサとアスラの兄弟だったが・・・奴隷商人の虜囚となり・・・性的玩具として売買されようとしていた。

「ロタの民は美形だからね・・・高値で売れるよ・・・まして上玉の生娘となれば幼女好きの殿方の垂涎の的だ・・・娼婦として仕込む手間賃を割り引いても大枚はたいて損はないお値打ち者だ」

「妹をどうするつもりだ」

「妹どころか・・・お前も売るんだよ・・・後ろの穴に香油を点して待っておいで」

「・・・」

思わず肛門が引き締まるチキサだった。

ツーラムでは年に一度の「草の市」が開かれていた。

薬草使いのタンダ(東出昌大)が顔を出すだろうとバルサもツーラムにやってきていた。

首尾よくタンダとの再会を果たしたバルサはタンダの宿に招かれる。

「俺の女房ってことだどうだ・・・」

「お前の用心棒と言った方が怪しまれぬだろう」

落胆するタンダだった。

宿でタンダはロタの呪術師・スファル(柄本明)を紹介する。

「猿の目を使う・・・なかなかのお方だよ」

「もしや・・・そちらはザルサ殿ではないかな」

「なぜ・・・私を・・・」

「一目でわかるほどの短槍の達人・・・まして女となれば・・・バルサの名が思い浮かぶというもの」

「・・・」

シャットイ(野良犬)はカシャル(猟犬)の匂いを嗅ぐ。

その時・・・宿の前を幼い兄妹を連れた奴隷商人が通りすぎる。

幼いアスラにバルサの保護欲がかきたてられる。

しかし・・・子供を売るのは奴隷商人の生業である。

食い扶持を稼ぐために働くものを咎める気はバルサにはない。

そんなことをしたら全土の奴隷を解放する革命者になってしまうのである。

ただ・・・幼い身で売られるものを憐れと思うのだった。

だが・・・とバルサは考える。

助けたいと思うのなら助けるのもまた一興である。

奴隷に義理がないように・・・奴隷商人にも義理はないと野良犬は思うのだ。

ロタの奴隷商人は・・・青い手を持つヨゴの奴隷商人と交渉を始めていた。

「無用なことはなさらぬことだ」

奴隷市場に近付くバルサにスファルが囁きかける。

「私は己の欲に従うのみ」

「これは・・・とんだ狂犬だ」

「私は少なくとも飼いならされた犬ではないからね」

「ほ・・・」

しかし・・・二人の睨みあいを制したのは・・・アスラの神秘の力だった。

「よせ・・・アスラ・・・呼んではならない」

「なぜ・・・この者たちは・・・私たちを傷つける」

「やめるんだ・・・アスラ」

「小僧ども・・・騒ぐんじゃねえ」

奴隷商人がチキタを制裁する。

その時・・・アスラはタルハマヤを召喚するのだった。

闇の力の触手が旋風を巻き起こし・・・爆発する。

奴隷市場は阿鼻叫喚の地獄と化す。

タルハマヤの一撃はバルサをもなぎ倒す。

戦士の呼吸で致命傷を逃れたバルサは・・・鎮まった市場の残骸から・・・意識を失った少女を抱き起こす。

傍らで身を起こすチキタ。

「お前は大丈夫か」

「浅手です」

「とにかく・・・ここから逃れるぞ・・・」

バルサはアスラを背負い・・・チキタとともに宿へと撤退する。

タンダは驚く。

「ちょっと前に出ていったと思ったら・・・もう血まみれになって戻ってきたのか」

「・・・」

「結構・・・深手じゃないか・・・何があったのだ」

「わからぬ・・・」

「とにかく・・・血止めをしなければ・・・」

タンダは売りものの薬草をとりだした。

「すまぬ・・・」

「この子たちはなんだ・・・」

「親子四人の子連れ旅ということでどうだ」

「・・・」

「どうした」

「この子の様子を見ようとしたが・・・この子には恐ろしいものが潜んでいるぞ」

「なんだというのだ」

「まるで・・・この子はチャグムのようだ」

「精霊を宿しているとでも・・・」

「ナユグの気配はするが・・・何か・・・もっと暗いものだ」

「・・・」

「この子はタルの民だろう・・・知っているか・・・タルというのは陰という意味があることを・・・」

「知らぬ」

夜更け・・・。

目覚めぬアスラの枕元に・・・覆面をした女が近寄り・・・呪文を唱える。

「その子に何をする気だ」

「目覚めぬようにしているだけさ」

「その子から離れろ」

バルサは猟犬たちの殺気を感じる。

「ロタ王家の飼い犬たちかい」

殺到するカシャルたち・・・しかし、バルサの敵ではない。

「さすがだね・・・邪魔すると痛い目に遇うよ」と女呪術師は嘯く。

「去れ」

「また・・・お目にかかろう」

女呪術師は撤退した。

騒ぎに目覚めるアスラ。

「お母様・・・」

チハナが駆け寄る。

「アスラ・・・」

「お兄様・・・お母様が生きてらしたわ・・・私を背負ってくださった」

「アスラ・・・もうアレを呼び出してはいけない」

「なぜ・・・お母様は・・・正しいことだと」

「アレは俺を傷つけたぞ・・・」

「・・・この人は誰?」

「覚えていないのか・・・この人がお前を背負ってくれた人だ」

「・・・」

「お母様はお亡くなりになったのだ」

「ここも・・・危険だ・・・逃げるよ」

バルサは守るべきものを見出した。

金に困っていない用心棒は・・・守りたいものを守るのである。

新ヨゴ皇国にも四年の歳月が流れていた。

チャグムは第一皇子としてたくましい若者に成長している。

星読博士のシュガ(林遣都)はチャグムの良き相談相手として仕えていた。

二ノ妃(木村文乃)は帝(藤原竜也)に寵愛され、チャグムの弟・トゥグム(高橋幸之介)を出産していた。

そのことが・・・チャグムの示した神の力に嫉妬する帝の心に新たなる翳りを生じさせる。

そのような時・・・ドラマでは半島国家ではなく諸島国家として描かれるサンガル王国からの急使が新ヨゴ国の宮廷に届く。

二ノ妃の父親である海軍大提督・トーサ(伊武雅刀)は評議のために都に召還された。

「南の大洋を越えて・・・南の大陸からタルシュ帝国の軍勢が・・・サンガルの島々を攻めているそうだ」

「それは一大事」

「タルシュ帝国の力は侮りがたし・・・」とチャグムは父に告げる。

「神の加護があるわが国にはいかなる脅威もない」と帝は戒める。

「ここは・・・北のカンバルや西のロタと同盟を結ぶべきです」

「神の国たる・・・新ヨゴ皇国は救いを求められれば手を差し出すが・・・助けを求めることはない・・・まして・・・カンバルはあの事件以来・・・金の無心ばかりしてくるあつかましき国・・・」

「では・・・せめて・・・ロタと手を携えては・・・」

「ならぬ・・・サンガルには・・・戦闘帆船一隻を救援に向かわせる」

「・・・」

「指揮はお前がとれ・・・チャグムよ」

「・・・しかし一隻では」

「お前には神の加護があるであろう・・・心配するな・・・実際の戦闘は海軍大提督にまかせるがよい」

「御意」

「評議は以上じゃ」

事の次第を聞いた二ノ妃は心を痛める。

「妾が・・・トゥグムを生まなければ・・・こんなことには」

「母上・・・トゥグムは私の大切な弟です」

「けれど・・・」

「ご安心ください・・・必ずや・・・無事に帰還いたします」

「チャグム・・・」

こうして・・・チャグムは南の大陸の覇者タルシュ帝国との戦争のために出陣したのである。

「戦争じゃと・・・」

当代一と言われる呪術師・トロガイはシュガより貢がれた酒を飲み干す。

「チャグム様のお供として私も戦場に参ります」

「御苦労なことじゃな」

「トロガイ様もお達者で」

「まあ・・・困ったことがあればいつでも相談せよ・・・気が向いたら助けてやろうぞ」

「ありがたきお言葉・・・」

こうして・・・風雲急を告げる世界情勢なのだった。

とにかく・・・戦闘帆船一隻出撃では大海戦を期待しても無駄ということはわかりました。

精々、海賊相手の小競り合いだよね・・・きっと。

様々な皇族・王族たちが登場するが・・・サーガ(英雄譚)にはならないファンタジーなのである。

いいじゃないか・・・用心棒の冒険譚なんだから。多くを望むなよ。

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2017年1月25日 (水)

餃子談義や行間案件で仰天告白だから胸の奥に何か刺さる夜(吉岡里帆)

「寒い朝ベランダでインスタントラーメン食べたら美味しかった・・・それが君と私のクライマックス」(菊池亜希子)でも良かったけどな。

まんまじゃねえか。

商品名は置換したよ!

「時の流れに身をまかせた愛人はつぐなうことになります」(テレサ・テン)は・・・。

(松たか子)だろう・・・。

「カーリングだってカルテット」・・・もう、いいよ。

「コルセットとカルテットは違う!」・・・いいってば!

「X!X!X!」

・・・本題に入ります。

で、『カルテット・第2回』(TBSテレビ20170124PM10~)脚本・坂元裕二、演出・土井裕泰を見た。カルテット・ドーナツホールは夫が失踪中の第一ヴァイオリン・巻真紀(松たか子)、世界的指揮者を祖父に持つ第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)、美容院でバイトリーダーを勤めるヴィオラ・家森諭高(高橋一生)、巻氏の失踪の謎を探るチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)からなる弦楽四重奏団である。

軽井沢にある別府家の別荘で合宿生活を送る四人・・・。

家森はおしゃれな夕食のためにマルセイユ名物ブイヤベースを仕上げたのだが・・・。

「まきさん、旧軽井沢に餃子の専門店できたんですよ」とすずめ。

「まきさん、餃子お好きなんですか」と別府。

「昼下がりの餃子とビールは世界遺産ですね」とまきまき。

「せっかくブイヤベース作ったのに餃子の話はやめてください!」

家森は今夜も快調である。

ニヤニヤするすずめだった。

「何入れるのが好きですか」

「シソとか」

「シソ餃子いいですね」

「ブイヤベースが餃子の味になっちゃうでしょうが」

「ごめんなさい」

「ブイヤベースですよね」

「餃子は嫌いだ・・・嫌いだ・・・嫌いだ餃子」

「嫌いと言えば言うほど好きになるんでしょう」

「これに餃子を入れたら」

「餃子ブイヤベース」

「ブイヤベース餃子」

「・・・もういいです」

楽しい夕餉である。

とにかく・・・お茶の間もブイヤベースもしくは餃子を食べる必要が生じるのだった。

真紀が巻氏を殺したのではないかと疑っている義母の巻鏡子(もたいまさこ)に雇われているすずめは会話を録音して報告する。

「仲良くしてくださって結構ですよ」

「はい」

「奇術師は・・・右手で注意をひきつけて左手で騙す・・・掛け替えのない友達になって・・・最後の最後で裏切って下さればよいのです」

「・・・」

すずめは探偵奏者なのである。

鏡子はカルテットの結成提案者である別府も疑うのだった。

「この男は・・・息子を殺した共犯者かもしれない」

「でも・・・出会ったのは偶然で・・・」

「それはどうかしら・・・」

猜疑心にとりつかれたような老婆は囁く。

スーパーマーケット「マイショップ」に買い出しにやってきたまきまきとすずめ。

すずめは携帯端末で気になる別府の画像を見る。

背後からまきまきに声をかけられのけぞるすずめ。

「ごめん」

「猫が胡坐かいてたんで」

「え」

「逃げちゃいました」

「手前で声をかけようと思ったんだけど・・・路上で知り合いに話しかけて十分くらい話した後で全然知らない人だったってことあるでしょう」

「・・・ありません」

加速していくなあ・・・置き去りにされていくお茶の間の皆さんもきっと多いことだろう。

駐車場で放置されたカーリングのストーンを発見するまきまき。

「何でしょう」

「わからないものを拾わない方がいいですよ」

「これ・・・あれですよ・・・投げてイエップって言ってブラシでスウィーピングする奴」

持ち主が戻ってきて・・・カーリング愛好家と知り合ったまきまきはカルテットとともに競技場に向う。

「イエップ・・・イエップ・・・イエップ~」

お約束で氷上で転倒する家森、すずめ、別府である。

相手のストーンをはじき出してハウスに留まるストーン。

・・・てなことがあったのか・・・まきまきの妄想なのかも謎のまま・・・ライブレストラン「ノクターン」の楽屋。

「予約を何度もキャンセルしたら美容院出禁になっちゃったんです」

「じゃ・・・僕が切ってあげようか」

家森は元地下アイドルのアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)に火照っていた。

「有朱ちゃん・・・今日も目が笑っていないわよ」

「まきまきさんひ~ど~い・・・ちゃんと笑ってますよお」

なぜか・・・来杉有朱の笑顔にごたわるまきまきだった。

「三分前で~す」

「みぞみぞしてきた」とすずめ。

「失敗するような気がする」とまきまき。

「大丈夫ですよ・・・練習したじゃないですか」と別府。

「練習したので失敗するのがこわいの」

「キッチン掃除したので料理を作りたくないみたいな」と家森。

「家森さん」

「別府くんはまきさんのことになるとムキになるよね」

「そんなことはありません!」

「失敗しそう・・・」

しかし・・・本番では「Music For Found Harmonium(拾ったハウモニウムのための音楽)/Simon Jeffes(PENGUIN CAFE ORCHESTRA)」をノリノリで演奏するまきまきなのである。

チョコボのテーマでもよかったのにな・・・。

アイリッシュダンス的なノリが欲しかったんだろう。

「カリブの海賊」とか「タイタニック」とかな。

愛の後悔の話だからか。

別府はまきまきを見守り、すずめはニヤニヤして、家森は立ち上がって浮かれるのだった。

タイトルまでおよそ五分である。

濃いよねえ・・・ほどほどにしておけよ。

脚本家は詩人である。

詩人の魂が今回は全編で爆発している。

詩というものは万民の魂を揺さぶるものだが・・・揺さぶられるのが嫌いな人もいれば揺さぶられているのに気付かない人もいる。

たとえばトランプ大統領も詩人なのだと思う。

しかし・・・その詩は攻撃的すぎて一部の人々を逆上させるのである。

詩は本来境界線をぶち破る。

境界線の守護者たちは・・・あるものは惧れ慄き、あるものは戦闘態勢になる。

そして・・・時には聖戦が始る。

詩人の歌う魂に役者たちが感応して表現力を爆発させれば観衆は陶酔するしかないのである。

言葉に込められた魔力を繊細なしぐさや表情が増幅する。

お茶の間にいるあるものは圧倒され・・・あるものはチャンネルを替えるしかないのである。

だって理解できないものは恐ろしいものな。

世界の別府の孫である別府はそういう自分を受け入れているように見える。

「別府ファミリー」の一員でありながら「ふくろうドーナツ」の広報課で「ドーナツ」の広告の仕事に携わっている。

つまり・・・音楽の神からは見放されているのだ。

そういう別府は・・・本当の自分を受け入れていないのではないかと同僚の九條結衣(菊池亜希子)は感じている。

自分を否定した世界を肯定できない男。

そういう別府を九條は可愛いと思う。

だから九条は別府に恋をした。

実年齢的には・・・。

菊池亜希子(34)1982年8月26日生れ

松田龍平(33)1983年5月9日生れ

・・・である。

一つ年下の彼と彼女はドーナツ売りの一員だったが・・・天上の調べの下流域であるカラオケの館で交流する。

彼女は彼を求めていたが・・・彼はただ友情を育んでいるのだった。

彼には自分を見放した音楽の神に愛されている・・・プロの演奏家である・・・ずっと年上の恋する相手がいたのである。

音楽に恋する彼は・・・音楽の女神に献身したいのだ。

彼女はそれに気がついてしまった。

自分は彼にとってただのドーナツ売りにすぎないことを。

彼と彼女はいつものようにカラオケ館で合流する。

歌って時が流れることを忘却するために。

「White Love/SPEED」(1997年)がヒットした頃、彼女は中学生だった。

「果てしないあの雲の彼方へ」と二人は声を合わせる。

だが・・・彼には「私をつれていって・・・」という彼女の願いは届かない。

「その手を離さない」どころか「彼ったら手も握らない」のである。

「これ・・・面白いよ・・・人魚対半魚人」

「人魚はともかく半魚人は版権煩いよ」

「すごいんだ・・・上下逆で見てよ」

「私はいいや」

「なんで・・・忙しいの」

音楽以外のことには鈍感な別府には彼女の心がわからない。

彼にとって映画「人魚VS半魚人」(フィクション)はドーナツを忘れさせてくれる現実逃避の娯楽なのである。

映画は音楽に近い何かなのだ。

だが・・・しがないドーナツ売りである彼女には現実に向き合う必要があった。

彼女の「恋の時間」は終わったのである。

「っていうか・・・別府くんさ・・・私・・・多分結婚する」

「え」

「私・・・三十四歳になった日に婚活始めて・・・上海の会社に勤めている人と結婚することになった・・・退社して私も向こうに行くことにしたの・・・で・・・別府くんの・・・弦楽・・・」

「四重奏」

「そう・・・結婚式で・・・演奏してくれないかな」

「・・・」

彼の中で・・・彼女は・・・永遠にカラオケの館で合流できる都合のいい女だったので・・・彼は裏切られたような気持ちになるのだった。

もちろん・・・最初から別府は九條の期待を裏切り続けていたわけだが。

個人的な問題と個人的な問題の相克である。

誰が悪いわけでもないのだ。

しかし・・・別府は乱れた心を抱えたまま・・・別荘へとやってくる。

別荘は火災寸前だった。

「なにしてるんです」

「チャーシュー丼を作るって・・・豚肉を焼き豚にしています」

「火災報知機は」

「切った」

煙幕の中でまきまきとすずめは・・・素晴らしいインターネットの世界でのアリスとヤモリの文通を冷やかす。

「全然相手にされていない・・・」

「すごい相手にされてますけど」と家森。

まきまきとすずめはアリスとヤモリのやりとりを再現する。

「来週・・・食事行きませんか?」

「仕事があります」

「来月の頭はどうですか?」

「バタバタしていて」

「脈ありでしょう」と自信をのぞかせる家森・・・。

「どこに脈が?・・・アリスちゃん・・・これを打っている時もきっと目が笑っていない」

「行間ですよ・・・好きな人には好きと言わずに会いたいって言うでしょう・・・やりたい時にセックスしようっていうのは行間を一周してるんですよ。やりたいって言うかわりにチケット一枚余ってるんだけどって・・・別府くんも言ったことあるでしょう」

「え」

別府はそれどころか童貞の可能性すらあるのだった。

「行けたら行くってどういう意味なの?」

「・・・」

家森はすずめを手招きする。

「行けたら行くって言った人を演じてみせて」

すずめはたちまち「モテキ」の中柴いつかになるのだった。

「来ちゃった!」

「え・・・行けたら行くって言ってたよね」

「?」

「なんで来たの?」

「来れたから・・・」

「え・・・席ないよ・・・行けたら行くって言ったら行かないってことでしょう・・・」

「・・・」

「でしょう?」

「ごめんなさい」

「こうなりますよ・・・悲劇ですよ・・・言葉と気持ちは違うでしょ・・・コレはデートじゃないからねって言ったらデートでしょう・・・絶対に怒らないからって言われて白状したら半殺しでしょう・・・こちらから連絡しますねって連絡しないでねってことでしょう・・・これが行間を読むということです」

その時・・・家森の端末形態に元地下アイドルからの着信がある。

《こちらから連絡しますね》

文面を覗き見て恐ろしいものを見た顔になるまきまきだった。

チャーシュー丼は完成した。

「結婚式で演奏してほしいという話があります」

「教会で演奏できるんですか」

「素敵」

「え・・・皆さん・・・やる気なんですか」

「え・・・同僚の方がご結婚されるんですよね」

「たぶん・・・」

「え・・・どういうこと」

「彼女が多分結婚するって・・・」

蒼ざめる三人だった。

「それって・・・」

「行間じゃないですか」

「司令・・・シト襲来です」

「問題ある・・・行間案件だな」

家森は立ち上がり「彼女」となった。

「別府くん・・・ワタシ・・・たぶん・・・結婚する」

まきまきは立ち上がり「彼女のキモチ」を翻訳する。

「別府くん・・・私の・・・結婚を止めて!」

「ですよね」

「ただの飲み友達ですよ・・・一緒だと楽なんで」

「楽って・・・心を許してるってことだよな」

「彼女の家に泊まったって何もなかったし」

「泊まってるの!」

「終電がなくなっただけですよ」

「終電がなくなるってことは帰らないための口実じゃないか」

「最終電車の発車ベルは恋のスタートの合図ですよね」

「その時・・・彼女・・・どんな顔してたの」

「見てません・・・DVDのパッケージを見てたから」

「富士山に登ってスマホを触ってるのと同じですね」

「人生のクライマックス見逃して・・・半人半魚の上下ヴァージョン違いに心を奪われているとは情けない」

「人生には後から気づいて間に合わなかったってことがあるんですよ」

まきまきの言葉は別府を果てしない回想へと誘うのだった。

大学生の別府は・・・学園祭のプログラムのためにホールでリハーサルをしていたヴァイオリン奏者のまきまきに魅了されていた。

二度目に立ち食いそば屋でまきまきを見かけた。

三度目に家電量販店でまきまきを見かけた。

四度目・・・今度、まきまきに遇ったら告白しようと決意していた別府・・・。

それはまきまきの結婚式の日だった。

別府は当時・・・結婚式場で働いていたのである。

アプローチが遅すぎるというとりかえしのつかない失敗をした別府は・・・まきまきのストーカーになったのである。

「・・・ですよね」と頷く別府である。

その心に渦巻く「後悔後悔後悔後悔後悔」の重みに耐えかねてコンビニエンスストアに脱出する別府だった。

「明日の朝のパンを買いに行きます」

「私もアイスクリームを買いに行きます」

すずめは別府を追いかけるのだった・・・。

別府を探るのもすずめの使命なのである。

「別府くん・・・他に好きな人がいるのかな」

「ガールズバーじゃないですか」

「ガールズバーって」

「彼女のいない三十二歳ですよ・・・火照ってるに決まってるじゃないですか」

にやつくまきまきに畏怖を抱く家森だった。

別府とすずめの凍てつく夜の道行・・・。

「猫が好きですか」

「はりねずみカワウソネコの順に好きです」

「ありくいシロクマネコの順ですね」

「同じ三位ですね」

「三位三位ですね~♪」

サンイサンイですね~にお茶の間では悶死者続出である。

みんな萌えてしまうがいい・・・。

恐ろしい歌い手だなあ・・・。

「・・・」

「別府さんて・・・真紀さんのことが好きですよね」

「え・・・何がですか」

「質問を質問で返す時は正解らしいですよ」

「そんなこと言ったら・・・すずめちゃんだって家森さんのこと好きだよね」

「え・・・どうしてですか」

「質問を質問で返す時は正解なんですよね」

「・・・白状します・・・家森さんのことが好きです・・・絶対に言わないでくださいね」

行間的には「家森さんのことが嫌いではないけれど本当に好きなのは別府さん」と言うことである。

「・・・」

「で・・・真紀さんが好きなの?」

「好きです」

「二人の片思いは・・・私と・・・別府さんだけの秘密ですね」

「うん」

すずめは鏡子に「別府が真紀に好意を抱いていること」を送信する。

別府はすずめにアイスクリームを選ばせる。

「ラブラブストロベリー」と「ロックンロールナッツ」・・・。

すずめは別府の左手にあった「ロックンロールナッツ」を選ぶ。

「ナッツがすきなんですか」

「別府さんがラブラブストロベリーを食べたら面白いと思ったので」

冬の軽井沢のコンビニ前のベンチでアイスクリームを食べる二人。

凍死する気か!

別府の中で・・・逃げていく魚がどんどん膨らんでいくのだった。

九條が花束を胸に職場を退職する日。

「彼とどんな話をするの」

「タイヤの話とか・・・」

黄色い帽子をかぶった女の子に火照る男なのか・・・と別府は見下すのだった。

タイヤを愛する男たちに対する偏見が炸裂する別府なのである。

タイヤ売りもドーナツ売りも似たようなものなのだが。

だが・・・ドーナツは食べることができる。

タイヤなんて食えないじゃないか。

火照りを抱えたまま「ノクターンの楽屋」に入る別府。

ホール担当の谷村多可美(八木亜希子)とセットリストと段取りの打合せを行う別府。

「お酒を出すタイミングなんだけど・・・ここでいいかしら」

上から目線の別府は谷村夫人の胸の谷間に目を奪われる。

「そうですね・・・タニマさんのおっしゃる通りでいいと思います」

「え」

「タニマさんの案のように・・・僕がタニマさんの合図で・・・その時、タニマさんが」

「ちょっといいかな」

多可美の夫である大二郎(富澤たけし)が割って入るのだった。

二人は別室に退場である。

「みんなもタニマさんの言う通りでいいですよね」

「タニマさんじゃなくて・・・タニムラさんな」

「あ」

「別府くん・・・火照りすぎ」

「いや・・・そこに谷間があったから」

谷間夫人は対エロ視線防御ダウンベストを装着して再入場した。

演奏終了・・・家森のインターバル。

待ち伏せする怪しい男(Mummy-D)に追いつめられる家森。

「軽井沢は寒すぎる」

「仕事があったんで」

「こっちだって仕事だ」

借金か・・・借金取り立てられてんのか・・・家森。

消息不明の家森を案ずる者もなく・・・ポテトを使ったジェンガに興ずる二人。

すずめは狸寝入りをする。

「彼女の結婚を止めないの」

「九條さんには・・・片思いの人について相談したりしてたもんで」

「利用していたの」

「そうかもしれません」

「この人には私がいないとダメなんだと思わせるタイプって罪ですよね」

「そうなんですか」

「つまり私にはこの人が必要だって思わせてるってことだから」

「・・・」

「で・・・片思いの人には告白するの」

「その人・・・結婚してるんです」

「不倫は誰かを不幸にしますよ」

「出会うのが遅すぎたわけじゃないんです」

「その人が・・・結婚する前から知っていたってこと?」

「僕が真紀さんと初めてあったのは十年前・・・天響祭で・・・八号館大ホールのステージで・・・リハしている真紀さんに一目惚れしたんです・・・僕は宇宙人のコスプレしていたので・・・わからなかったと思います」

「天響祭・・・」

「それから・・・二度目は立ち食い蕎麦屋で肉そば食べている真紀さんに遭遇しました・・・三度目は家電量販店の電動マッサージイスを試している真紀さんを・・・僕は運命を感じました・・・四度目があったら・・・告白すると決めたんです・・・四度目は・・・三年前・・・目黒の結婚式場で・・・」

「・・・じゃ・・・カラオケボックスであったのは」

「あれは偶然じゃありません・・・人妻になってしまった運命の人をあきらめきれずに・・・ストーカーしていました」

「・・・」

「真紀さん・・・あなたのことが好きです・・・あなたを捨てていなくなった男より」

「私・・・結婚するまで花火大会に行ったことがなかったんです」

「え」

「だって・・・火ですよ・・・火事になったらどうするんですか・・・こわいでしょう・・・でも・・・夫が私を連れ出してくれました。必ず君を守るからって・・・手をつないでくれて・・・初めて見た花火は綺麗だった・・・火事にならないこともわかりました」

「・・・」

「綺麗だなって思った時にはもう火は消えています・・・哀しいより哀しいことはぬかよろこび・・・おかしいとは思ってました・・・カルテットが偶然そろうなんて・・・でも神様が哀しい思いをしている私に奇跡を起こしてくれたのかもと・・・それが嘘だったなんて」

「いえ・・・嘘じゃ」

「別府さん・・・いなくなるって消えることじゃないんです。いなくなるっていうことがずっと続いて・・・いなくなる前よりずっと夫が側にいるんです・・・今なら落ちると思ったんですか・・・捨てられた女をなめんな!」

まきまきはテーブルに暴力を行使した。

テーブルはまきまきに痛みをサービスした。

火照りを拒絶され立ちすくむ別府・・・。

二人のやりとりを録音したすずめは鏡子に報告する。

「旦那さんのことを・・・本当に愛してたみたいですけど」

「愛してるから殺すことだってあるでしょう・・・」

「それに・・・あの女は・・・夫がいなくなった翌日にパーティーに出席しているんです」

鏡子は数珠や線香などをばらまきながらバックから一枚の写真を取り出す。

「夫を案じる妻がこんな顔して記念写真を撮影しますか」

「バカみたいに大口開いてますね」

「開いているでしょう」

もちろん・・・夫に失踪された女は何かを叫びたいものかもしれないのだが・・・。

火照りをもてあました別府は「本命がダメなら穴でも狙うさ」作戦を決行する。

カラオケの館で酔いつぶれ・・・終電が終わるまで粘り・・・九條の家にお世話になるのである。

「どうして・・・タイヤの話なんかするつまらない男と結婚するの」

「三十四歳だからね」

「僕は絶対に結婚式で演奏なんかしない」

「おやすみ」

「嫌だ~・・・」

愛の言葉抜きで九條の肉体を求める別府である。

押し倒された九條の背中は別府の眼鏡を割る。

仕方ないので別府の火照ったものを受け入れる九條だった。

男と女の愛の交歓の時はたちまち過ぎ去る。

別府はそれなりに満ち足りて浅い眠りに誘われる。

夜明け前・・・別府が目覚めると九條は起きて携帯端末で作業をしていた。

「ごめん・・・起こした?」

「結婚しましょう・・・僕と結婚しましょう」

別府は行間なしでプロポーズをした。

しかし・・・九條には行間があった。

「お腹がすいたわ・・・何か食べましょう」

九條はチャルメラでも出前一丁でもないインスタントラーメンの袋を開けた。

夜明け前のベランダで二人はラーメンをお椀で食べた。

「美味い」

「美味いね」

「結婚・・・俺・・・真面目に」

「あっちに可愛いカフェがあるんだけど・・・遠くて・・・毎回、近くのチェーン店に入っちゃう。そこはそこで美味しいのよ。こういうタイミングでこっちだったかなって思われるのも・・・嫌な気持ちはしないのよ・・・だけど・・・結婚とかはないんだなって・・・思った時はもうずっと昔のこと・・・別府くんのことは好きだった・・・だから寝たし・・・それぐらいのことなら私だってずるくなれる・・・でも・・・結婚とかはないよ」

「・・・」

「ずるい男とずるい女が・・・寒い朝ベランダでサッポロ一番食べたら美味しかった・・・それが君と私のクライマックスでいいんじゃない」

「・・・」

「お返事は?」

「はい」

もちろん・・・そんなことでストーカーに殺されちゃう人がいないことはないけれど・・・それもまた運命なのである。

ああ・・・沁みる・・・そして何かが突き刺さるのだった。

「大切な人が結婚します・・・その人のために演奏したいです」

「みぞみぞしてきた・・・」

「無理です・・・私うまく弾けません」

「やるってさ・・・」

カルテットは練習した。

結婚式の教会で・・・カルテットは「「エレンの歌 第3番/フランツ・シューベルト」(シューベルトのアヴェ・マリア)で花嫁を迎える。

新郎新婦は誓いのキスをする。

そして退場曲。

まきまきは・・・第一ヴァイオリンの楽譜を別府に託す。

すずめも家森も弓を置く。

ソリストとして別府は音楽を奏でる。

「アベ・マリア・・・果てしない星の光のように・・・胸いっぱいの愛であなたを包みたい」

花嫁は立ち止り・・・しばし・・・実らなかった恋の余韻に浸るのだった。

カラオケ館で首にコルセットを装着したカルテットは別府の歌う「紅/X JAPAN」堪能する。

「閉ざされた愛に向かい・・・叫びつづける」

紅に染まった別府を三人は生温かく励ますのだった。

すずめは別府に「二人で食べるアイス」をおねだりするが・・・別府は四人分のアイスクリームを冷蔵庫に用意していた。

人間は簡単には成長しないものだ。

まきまきがやってくる。

「この間は・・・すみませんでした」

「私・・・思い出したんです・・・宇宙人・・・」

「・・・」

「こわかった」

「・・・」

別荘にすずめが一人の昼下がり・・・。

すずめはテーブルの上に放置されたまきまきの携帯端末を発見する。

暗証番号はまきまきの結婚記念日と判明するが・・・まきまきが買い物から帰宅するのだった。

「これ・・・いつもの」

まきまきは・・・テトラパックのコーヒー牛乳をすずめに渡した。

「真紀さんて・・・パーティーとかにいくんですか」

「すずめちゃんて・・・謎ですよね・・・たまにお線香の匂いがする」

「よくバスで他人に寄っかかって寝ちゃうから・・・移り香が・・・」

「もしかして御墓参りにでも行ってるのかと思ってました」

「それは・・・ミステリですね」

「この間・・・起きてましたか」

「・・・はい」

「すずめちゃん・・・別府さんのこと好きでしょう」

「どうしてですか」

「私・・・そういうことにすぐに気付いてしまうところがあって・・・」

「それは・・・きっと・・・勘違いですよ」

目に見える世界・・・耳に届く言葉。

しかし・・・すべては幻なのである。

「絶対スキーに誘ってくださいね」

アリスはそう言うが・・・それはスキー場ロケーションのためのスケジュールがあるかどうかなのだ。

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2017年1月24日 (火)

指先が器用な男(木村拓哉)

物ごころついてから健康を実感することがあまりない。

いつもどこか具合が悪いような気がする。

だが・・・おそらく・・・それが人間というものなのだろう。

素晴らしい医師に出会い・・・苦痛から解放してもらえることほど幸せなことはない。

つまり物凄く藪医者で・・・あたれば必ず死ぬと言われるドクターは名医とも言えるわけである。

おいおいおい。

親しく言葉を交わした人の死は心を疼かせるが・・・もう苦しむこともないのだと思えば気持ちは軽くなる。

それでも長患いの人が失われるのを待つ日々は辛いものだ。

見る夢は何故か寂しいものばかりになる。

指先が器用で・・・準備が万端で・・・真心のあるドクターの物語がせめてもの慰めなのかもしれない。

それは夢のようなものだから。

で、『A  LIFE~愛しき人~・第2回』(TBSテレビ20170122PM9~)脚本・橋部敦子、演出・平川雄一朗を見た。壇上記念病院院長の壇上虎之助(柄本明)のハイリスクな手術のためにシアトルから急遽帰国した外科医・沖田一光(木村拓哉)・・・。手術を無事に終えてシアトルに戻る予定は変更される。親友の鈴木壮大(浅野忠信)の妻で恩師・虎之助の娘である壇上深冬(竹内結子)が脳腫瘍に冒されていたのである。脳外科医である壮大に「お前が切るしかない」と言われ苦悶する一光である。

「どのくらい・・・だと思う」

「何もしなければ・・・半年」

十年前・・・心を通わせた深冬の病状は深刻だった。

一光は・・・手術方法の研究を開始する。

そして・・・壮大の心には・・・複雑な思いが渦巻くのである。

副院長として壇上記念病院を経営する壮大・・・一光と深冬の仲を引き裂いた壮大・・・妻と娘を愛する壮大・・・顧問弁護士の榊原実梨(菜々緒)と不適切な関係にある壮大・・・その胸に去来する光と影・・・その心情もまた謎めいている。

「沖田先生はこの病院向きじゃないと言ったのに・・・」

オペナースの柴田由紀(木村文乃)は沖田の私物の整理を手伝うのだった。

「でも歓迎しますよ・・・沖田先生のオペにまた参加できるので」

二人を嫉妬の目で睨む心臓血管外科医・井川颯太(松山ケンイチ)であった。

大河ドラマ「平清盛」で清盛を演じ、映画「デスノート」でLを演じた男が・・・いかにもな青二才を演じていて・・・澱みがないのである。

こういう役も似合うよなあ・・・。

ドラマ「1リットルの涙」(2005年)の心ない先輩・河本祐二役を思い出すよ。

あれも辛い役だったものな。

「沖田先生はどうして論文を書かないのですか」

「君はどうして論文を書くの」

「それは認めてもらうためです」

「誰に」「誰に」と息がぴったりのドクター沖田とナース柴田である。

「それは・・・えらい人たちに」

「ふ~ん」「ふ~ん」と颯太を凹ますコンビネーションを披露する二人。

「論文を書かなくては認めてもらえませんよ~」

「それで」「それで」とたたみこむ二人。

「それで・・・って」

常識の通じない相手に・・・戸惑う颯太なのである。

しかも・・・密かに心を寄せるナース柴田が向こう側なのだった。

だが・・・筋金入りのお坊ちゃんである颯太はめげずに闘志をかきたてる・・・。

「院長紹介の患者の件なんだけど・・・」

壮大が外科部長の羽村圭吾(及川光博)に声をかける。

「宮内庁御用達の和菓子職人の方ですか・・・VIP患者ですね」

「私がやります」

名乗りをあげる颯太なのである。

院内カンファレンス・・・。

「形成外科の医療ミスの件ですが・・・」

「ミスではなくトラブルです」

事務長の真田隆之(小林隆)を即座に訂正する榊原弁護士・・・。

「医療トラブルの件は・・・榊原先生のご尽力で・・・無事和解が成立しました・・・患者さまへの安易な発言は無用なトラブルの元です・・・医療に100%ということはありません。発言にはご配慮をお願いします。たとえば・・・大丈夫です・・・こういう言葉は慎んでください」

沈黙するドクターたち。

「続いて・・・院長の手術を執刀された沖田先生が・・・こちらに残ってくださることになりました・・・沖田先生・・・一言お願いします」

「よろしくお願いします」

一言だった。

ナース柴田と深冬は微笑み、颯太と壮大は複雑な心情を抱く。

壮大と不倫中の榊原弁護士は問う。

「どうして・・・沖田先生を引き留めたんですか・・・院長に有利なカードになりますよ・・・それに奥様の昔の男でしょう・・・」

壮大は水槽の熱帯魚の世話を無心に行う。

「わからないだろう・・・俺にだってわからないからな」

人の心ほど計り難いものはない。

この脚本家は・・・そういう心情を描くことが巧みなタイプである。

・・・颯太が担当した患者は森本洋造(平泉成)という頑固一徹で昔気質な職人だった。

森本は遠位弓部大動脈瘤を患っている。

「手術しないと・・・破裂の惧れがあります」

「お前みたいな若造に手術できるのかよ」

「こう見えて・・・優秀な外科医なんですよ」と外科部長が颯太をフォローする。

「へえ・・・人はみかけによらねえな」

「森本様の場合、交通事故による癒着の問題と年齢を考慮して開胸手術はリスクが高いと判断しカテーテルによるステントグラフト内挿術を・・・」

「難しい話はもういい・・・後遺症の心配はねえのかい」

「左鎖骨下動脈の虚血により・・・左手にしびれが生じることがあります」

「左手にしびれ・・・」

「あくまで・・・まれにです」

「右手はどうなんだよ」

「・・・医学的にはありません」

「大丈夫なのか・・・どうなんだよ・・・はっきりしろよ」

「・・・大丈夫です」

入院中の壇上院長の病室に颯太の父親である満天橋大学病院の院長・井川勇(堀内正美)が見舞いに訪れていた。

壮大は一光を伴って挨拶をする。

「沖田先生・・・君の噂は耳にしていたよ・・・アメリカではかなり活躍しているそうじゃないか」

「いえ・・・」

一光の評価の高さに微かに動揺する壮大。

「それにしても・・・二人も素晴らしい弟子をもって・・・羨ましい限りですな」

「いやいや」と微笑む壇上院長。

「沖田先生・・・息子をどうかよろしくご指導ください」

沖田は颯太に声をかける。

「準備はいいのか」

「充分です」

「これまでの経験は・・・」

掌を広げる颯太。

「五百か・・・それは・・・」

「五十です」

「こっちでは彼の若さで五十件は相当なものですよ」

「・・・」

夜勤の一光は・・・病室の照明に誘われる。

森本が鋏と紙で職人技の鍛錬をしているのだった。

「お休みになられた方がいいですよ」

「一日休むと鈍るんだよ」

「わかります・・・うちのおやじも職人なんで」

「おやじさん・・・何してるんだ」

「寿司屋です」

「馬鹿野郎・・・寿司屋のせがれが医者になんかなりやがって・・・」

森本の息子の達也(近藤公園)は和菓子職人なのである。

後継者問題の話である。

未明に「嘉月寿司」に帰宅した一光は就寝していた父親の一心(田中泯)を起こしてしまう。

「あ・・・ごめん」

「いいんだ・・・この年になれば朝までぐっすりってえことはねえ」

「年なんだから・・・朝はもう少しゆっくりすれば」

「馬鹿野郎・・・寿司はな」

「準備で九割決まるってんだろう」

「わかってるじゃねえか」

「もう・・・耳にタコだからね」

一光は「機動戦士ガンダム」のプラモデルに囲まれて眠りにつき・・・朝日と父親の仕込みの物音で目覚めるのだった。

食卓には父親の手作りの朝食が用意されていた。

しかし・・・野菜は食べない一光である。

「ごちそうさん」

「とっとと行きやがれ」

颯太による森本の遠位弓部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(TEVAR)が開始される。

一光は見学者として参加するのだった。

ステントグラフトは人工血管(グラフト)に針金状の金属を編んだ金網(ステント)を縫い合わせたもので・・・ステントグラフトをカテーテル(プラスチック製のチューブ)の中に納めて血管の中に入れ患部で広げて血管を補強するとともに動脈瘤の部分に血液が流れないようにする。

颯太は緊張気味だったが・・・手術は順調に進み・・・一光は見守る。

颯太もまた親の後継者なのである。

その頃・・・小児外科医の深冬は第四手術室で小児男子患者の肺静脈狭窄症の手術を行っている。

想定外の長さの肺静脈狭窄(PVO)を切り開くことが出来ず立ち往生する深冬。

「どこまで切っても開通しない・・・」

「このまま閉じますか」

「それはできない・・・このままじゃ・・・この子は一ヶ月も生きられないもの」

「循環停止二十分経過」

「このままでは・・・DOTもありますよ」

DOT(術中死)とは文字通り、手術中に患者が死亡することである。

ナース柴田は深冬にメスを差し出す。

「お願いします」

「・・・沖田先生を呼んで・・・」

召喚された一光は・・・手術室を移動する。

「どうした・・・?」

「左のPVOがいくら切り込んでも広がらないの・・・」

「外から剥離するのは無理だな・・・エコーでは」

「内側から・・・肺門部は開いてた」

「スーチャーレステクニックは?」

スーチャレステクニック(無縫合法)はシート状生物学的接着・閉鎖剤を用いた治療技術である。

一光の提案に閃く深冬だった。

「左心房の中からアプローチね」

「そうだ・・・肺門部で左肺静脈を切り離す」

手術スタッフたちは慣れない術式に戸惑う。

「俺が前立ちします」

手術助手に名乗りをあげる一光だった。

深冬は難局を突破した。

根治の難しい病状に対応する新技術は常に登場している。

たまたま行った病院が新技術に対応していたために命をとりとめたものも多いのである。

人間の一生が運に左右される時間稼ぎのくりかえしにすぎないにしても。

・・・命あってのものだねなのである。

「息がピッタリあってましたね・・・まるで恋人みたいに」

一光と深冬の腕の冴えを賞賛するナース柴田だった。

もちろん・・・一光の複雑な表情の見せどころである。

一方、歌舞伎役者のように手術のフィニッシュをポーズで決める颯太。

俺はやればできる・・・自画自賛する颯太なのである。

「いよっ・・・お見事」と心なく褒める外科部長・・・。

「あれ・・・沖田先生は・・・」

「途中で別室のオペナースに呼ばれていったけど」

「・・・」

颯太は一光に見ていてほしかったらしい・・・。

沖田専用と化したドクタールームで・・・深冬の脳幹の中脳部に巣食う腫瘍の除去方法を探索する一光・・・。

壮大は一光に深冬の主治医となることを依頼していた。

病状の告知の責務を負わされた一光だったが・・・光明が見出せず・・・宣告に至れない。

深冬が現れた!

「よろしいでしょうか」

「何でしょう」

「今日はありがとうございました」

「無事にすんでよかった・・・」

「あの子は・・・これで走ることができるようになるかもしれない・・・」

「なるといいですね」

「ご存じかもしれないけれど・・・父と夫は病院の経営方針をめぐって衝突しています」

「・・・」

「うちは・・・脳外科と心臓外科が売りで・・・小児科と産科はお荷物なのよ・・・だけど・・・父は小児科の存続を望んでいる」

「・・・少子化が続けばそのうち患者はゼロになるけどね」

「沖田先生がいてくれたら・・・小児外科の看板も掲げられるわ」

「・・・」

例によって一心が床に広げる医療資料に気がつく深冬・・・。

「なんで・・・脳外科の治療法を・・・」

「あ・・・もともと子供の脳もやってるから・・・」

「さすがね・・・」

微笑む深冬に言葉を失う一光・・・。

二人の姿を壮大は見ていた!

森本は回復し・・・退院し・・・仕事に復帰した。

しかし・・・予期せぬ病状が現れる。

「親父・・・どうした」

「手が・・・痺れて・・・痛い」

「何だって・・・左手かい」

「いや・・・右手だ・・・これじゃ・・・菓子が・・・」

颯太を急襲する森本父子・・・。

「話がちがうじゃないか」

颯太は再検査を行うのだった。しかし・・・。

「異常はありません・・・考えられるとしたら心因性のものですね」

「心因性ってなんだよ」

「病は気からと申しまして」

「なんだと・・・」

医師と患者は決裂した。

一光は職人である森本の病状が気になっていた。

「検査データを見せてもらえませんか」

「勝手にどうぞ」

ナース柴田の指導で院内データにアクセスするドクター沖田。

颯太は墓穴を掘ってしまったのである。

二人の職人同志の交流がイチャイチャしているようにしか見えない颯太の曇った目・・・。

「井川さん・・・子供の頃に何か病気をしたと言ってませんでしたか」

「いいえ・・・既往歴も確認しています・・・もう診察に来ないんだから・・・心因性のものだったと本人も納得したんでしょう・・・今頃・・・院長のお気に入りの和菓子でも作ってるんじゃないかな」

しかし・・・大量の精神安定剤を飲んで自殺を図った森本は緊急搬送されて病院に到着する。

森本の息子は颯太の診療室に怒鳴りこむ。

「あんたのせいで・・・親父は自殺を・・・訴えてやるからな」

「え」

壮大は外科部長と颯太から事情を聞く。

「訴訟となると問題ですな・・・」

「命を助けたのに文句を言われるなんておかしいですよ」

「責任問題だよ」

「え」

「井川先生だけの問題ではすまない」

「私も・・・ですか」

「院長だよ・・・すべての責任は院長にあるんだよ・・・院長の連れてきた患者と院長の連れてきた医者がトラブってんだ・・・全部、院長が悪い」

「・・・」

壮大は院長の病室に赴く。

鬼の形相となる院長。

「なぜ・・・もっと早く相談しなかった・・・」

「どこに行くんです・・・患者に・・・友人として謝るつもりですか・・・院長が謝罪したら・・病院が非を認めることになるんですよ・・・」

「・・・」

院長は・・・経営者として・・・足を止めた。

「ここは・・・私におまかせください」

壮大は院長の説得に成功した。

一光は入院中の森本を診察して・・・病因を推測する。

「血圧に左右で違いが生じています・・・詳しく検査をさせてもらえませんか」

「心因性ではないと・・・」

「おそらく・・・」

森本の息子は身動きのできない父親に代わって一光の提案に応じるのだった。

「森本さんをサジタール画像診断したところ・・・血管の起始異常があることがわかりました」

サジタル(矢状面)画像は横切りCTに対して縦切りCTのようなものである。

血管の起始異常とは先天性の奇形の一種である。

発見されるのは小児疾患としてのケースが多く、奇形に気付かずに一生を送るものもある。

「森本さんの場合は右冠動脈からの奇形部分が大動脈患部と繋がっていたために・・・手術によって奇形部分の血流を塞がれて障害を発していたのです・・・これを見落としていたのは・・・井川先生のミスですよ」

颯太は蒼ざめた・・・。

「しかし・・・腎機能に配慮して術前のCT検査を造影剤なしで行ったのは妥当な判断だ・・・これはレアケースで・・・ミスとは言えない」と外科部長。

「なんですって」

「前回の手術で血管を損傷させたということになれば・・・病院にも・・・井川先生のキャリアにも傷がつく・・・ここは何もしないのが得策だ」

「手術をすれば・・・助けられるのに?」

俯く颯太・・・。

「井川先生・・・あなたは医者失格だ・・・」

しかし・・・何者かによって素晴らしいインターネット上に・・・「医療ミスにより患者が自殺未遂」という暴露記事が投稿される。

壮大と経営スタッフは・・・森本の息子に対して示談交渉を開始するのだった。

「ミスはありませんでしたが・・・気持ちとして一千万円を用意しています」と事務長は切りだす。

「金の問題じゃありません」

壮大は立ち上がる。

「今後の生活のことも考えて・・・一億円でいかがでしょうか」

金額に心を奪われる森本の息子だった。

一方・・・一光は意識を回復した森本の病床を訪ねていた。

「右手の痺れは治療できます」

「もう・・・医者の言うことにゃ聞く耳持たねえよ」

「森本さんは・・・生まれつき・・・心臓の血管に普通の人とは変わっている部分がありまして・・・」

「なんだと・・・」

一光は紙芝居形式で・・・森本の病状を説明するのだった。

「で・・・ここの血管とここの血管がつながっちゃいまして・・・これはすごく珍しいことなんです・・・で・・・この動脈瘤に対して行ったこの前の手術で・・・本当はないはずの血管があったもんで・・・」

「もういいよ・・・わかったよ・・・そいつをとっちまえばいいってことなんだな」

「まあ・・・簡単に言うとそういうことになりますね」

「大丈夫なんだな」

「大丈夫ですよ」

「なら・・・助けてくれ」

「はい」

「やい・・・寿司職人の息子さんよ・・・お前さんもあれだな・・・職人ってこったな」

「親父に比べたら・・・まだまだです」

壮大は院長に解決案を提示していた。

「井川先生には辞めてもらいます・・・こうなっては特別扱いできませんから・・・それに事が露見した以上・・・院長にもなんらかの責任をとってもらわなくては・・・なりません・・・最善の判断をして下さることを・・・信じています」

暗に退任を仄めかす壮大だった。

結果として院長を引退させることになる結論だが・・・どこまでを壮大が望んでいるのかはまだ明らかにはならない。

壮大は・・・この物語の謎の核心にいるからである。

善と悪の境界線にいるものが・・・もっとも興味深いものなのだ。

その時・・・壮大の携帯端末に・・・一光の動向の報せが着信する。

走り出す壮大。

廊下で一光を発見する。

「示談交渉がまとまりそうなんだ・・・これ以上・・・問題を起こさないでくれ」

「森本さんは手術をすれば完治する」と一光。

「森本さんのオペを許すことはできない」

「壮大・・・それが医者の言うことか」

「病院を守るためだ」

対峙する経営者と医師・・・。

そこへ・・・院長が現れた!

「やってくれ・・・オペをしてくれ・・・大丈夫だ・・・全責任は私が負う」

手術室に向う一光を颯太が追いかける。

「見学させてください」

「君は医者失格だと言ったはずだ」

「森本さんは・・・私の患者です」

一光は笑みをもらすのだった。

職人として準備の整った一光は・・・無事に手術を終えた。

森本家は告訴をとりやめた。

森本は箱詰めされた「和菓子」を一光に贈る。

「これは・・・」

「息子の作ったもんで・・・まだ見栄えは悪いが・・・味はなかなかのもんだぞ」

「いや・・・美味しそうですよ」

「看護婦さん・・・あんたもどうだ」

「患者さんからの贈り物は規則で・・・」

「いや・・・美味しいから・・・食べなよ」とすでに味見を終えた一光。

「沖田先生・・・俺の右手を助けてくれてありがとうよ」

ドクタールームで颯太が進みでた。

「すみませんでした・・・私は・・・患者から命を奪っていたことに・・・気が付きませんでした」

「まあ・・・食べなよ」

「いただきます」

大人の階段を昇っては降りる颯太である。

院長の退院が決まった。

「退院おめでとうございます」と壮大。

「今日・・・私の快気祝いをしようと思うがどうだい」

「いいですね」

「レストランは私が予約しといたよ・・・」

壮大はレストランに到着した。

壇上一家は四人だが・・・用意されていたのは五席だった。

「おや・・・」

一光が現れた。

「あれ・・・快気祝いって・・・ご家族の集まりだったんですか」

「いいんだよ・・・沖田先生は私の命の恩人じゃないか・・・しかも・・・病院にとっても救いの神だ・・・なあ」

善と悪の境界線上で・・・壮大を見上げる院長。

「・・・」

善と悪の境界線上で仕方なく微笑む壮大。

「沖田先生には何か考えないとな・・・外科部長のポスト?・・・それとも院長がいいかな・・・わっははははははははははは」

壮大は凍りつき・・・院長は哄笑する。

残されたものたちは戸惑うしかないが・・・幼い娘・莉菜(竹野谷咲)はお腹がすいた。

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Alife002ごっこガーデン。対インフルエンザ防御抗ウイルスセット。

アンナ俺の大丈夫には根拠がある・・・そんなダーリンにうっとりぴょ~ん。 地球上のすべてのお医者様が病気と戦い何らかの成果をあげている・・・その成果をそれぞれのお医者様がフィードバックする・・・そのために論文を書くことにも意味はあると思うけれど・・・目の前の患者を助けるために知恵を借りて借りて借りまくる医者がいてもいいのぴょん。そのための仕込みの努力は惜しまない・・・それがドクター・ダーリンなのだぴょんぴょんぴょん。 なんてったって寿司職人の親の血を引きガンプラで鍛えた手先の器用さが抜群なのだから~。アンナもリピしてリピしてリピしまくるピョ~ン

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2017年1月23日 (月)

天文十四年、南渓和尚が井伊直盛の娘をお粗末と詰る(小林薫)

井伊信濃守直平は延徳元年(1489年)または文明十一年(1479年)に生れたとされている。

永正四年年(1507年)頃には父・直氏の家督を継いだと思われる。

この頃、尾張守護で遠江守護を兼ねる斯波義達は遠江国の領有権を賭けて今川氏親と対峙していた。

永正十年(1513年)に遠江国に侵攻した斯波義達は大敗を喫する。

この時、直平は斯波方に味方していたという。

永正十四年(1517年)に斯波義達は再び、遠江国に侵攻するが・・・またも大敗し今度は生きて虜囚の辱めを受けてしまうのである。

この敗戦で斯波家は求心力を失い、守護代織田家が台頭してくる。

今川家は遠江国を手中に収める。

天文五年(1536年)に今川家の相続争いである花倉の乱が起きる。

この時、直平は・・・玄広恵探を擁立する福嶋越前守助春(あるいは福島正成)側についたと言われる。

結果として恵探は瀬戸谷の普門寺で自刃。今川義元が家督を相続する。

天文六年(1537年)に北条家当主の氏綱は駿河へ侵攻する。

これに直平は呼応して今川を挟撃するために討って出る。

そのために・・・今川家は東駿河を北条家に占領されてしまう。

だが・・・遠江の反乱は鎮圧されてしまうのである。

直平の娘が・・・今川家の人質となったのにはそういう流れがあります。

直平の敗北の歴史・・・そして今川家にとって井伊家は油断のならない臣下なのである。

で、『おんな城主 直虎・第3回』(NHK総合20170122PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は井伊家を支配する今川義元とその軍師・太原雪斎の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。どうするのかと思っていたら井伊直平の娘・佐名(花總まり)の側室からのお下がりの屈辱を「おてつき」というストレートな表現で描いてきましたな。さすがは・・・ドラマ「白夜行」(2006年)で唐沢雪穂(福田麻由子→綾瀬はるか)を桐原洋介(平田満)が「おてつき」するのをストレートに描いた脚本家ですな。「女性に対する凌辱」や「不条理な運命」への拘りが感じられます。だから義元(春風亭昇太)がおとわ(新井美羽)を「おてつき」するのではないかとハラハラいたしましたーっ・・・そんなことできるかーっ・・・でございます。脚本家はドラマ「わたしを離さないで」(2016年)でも可憐な少女たちの残酷な運命をこれでもかというほどに描きつくしましたからねえ・・・ある意味、第一人者ですな。今回も・・・御転婆娘の冒険譚風を装いながら・・・これでもかというくらいに守護大名と国人衆のどす黒い軋轢を描き切っておりましたねえ。天晴でございました。

Naotora003 文明三年(1471年)、今川氏親生れる。文明八年(1476年)、氏親の父・義忠が戦死。長享元年(1487年)、義忠の従兄弟・小鹿範満永を自害させ氏親が家督を継承する。明応ニ年(1493年)、氏親の伯父・伊勢盛時(北条早雲)が伊豆を侵略。明応三年(1494年)、氏親は遠江国に侵攻。永正五年(1508年)頃、権大納言中御門宣胤の娘(寿桂尼)が氏親の正室となる。盛時は三河国で松平長親に敗北。永正十一年(1513年)今川氏輝が生れる。永正十四年(1517年)、玄広恵探が生れる。永正十五年(1518年)、象耳泉奘が生れる。永正十六年(1519年)、今川義元が生れる。大永二年(1522年)、今川氏豊が生れる。大永六年(1526年)、氏親が死去し氏輝が家督を継承する。天文四年(1535年)、氏輝・北条氏綱連合軍が甲斐国の武田信虎を攻める。天文五年(1536年)、氏輝が死去し花倉の乱が勃発。天文六年(1537年)、義元は武田信虎の娘を正室に迎える。天文七年(1538年)今川氏真(龍王丸)が生れる。天文十四年(1545年)、井伊直盛の娘が出家する。

今川義元が家督を継承して八年の歳月が過ぎていた。義元も数えで二十七歳になっている。

守護大名・今川家といえども・・・一瞬の油断も出来ない下剋上の世である。

父・氏親、兄・氏輝がようやく治めた駿河国と遠江国だが・・・東に北条、北に武田という強敵があり・・・国人衆たちの動向も油断はできなかった。

公家の娘である母親の寿桂尼と臨済宗の僧侶である太原雪斎に支えられ・・・義元はようやく・・・守りから攻めに転じようとしていた。

太原雪斎は庵原城主・庵原左衛門尉政盛を父に持ち、出家して京都五山の建仁寺で修行をした。

義元が出家すると雪斎はその教育係となったのである。

義元の家督相続に尽力し・・・甲斐の武田信虎との関係を修復したのも雪斎によるところが大きかった。

雪斎は軍事・政治両面で義元を支えていた。

母親の寿桂尼もまた・・・父・氏親の存命時から・・・国人たちの支配に抜かりがなかった。

隙を見せれば謀反の気配を示す国人たちを懐柔する手段を心得ている。

雪斎は禅により悟りを開いた達磨忍びであり・・・寿桂尼が藤原のくのいちであることは言うまでもない。

公家風の化粧をして・・・蹴鞠に熱中する・・・後に魔王・織田信長によって痛恨の戦死を遂げたことで・・・誤解されやすい義元だったが・・・生粋の源氏の忍びなのである。

白粉お歯黒は世を欺く仮の姿なのである。

太原雪斎、寿桂尼、そして今川義元が「敵」と定めたのは・・・北条家であった。

駿河の河東地方を占拠する北条勢を一掃することが至近の課題だったのである。

東に勢力を集中するために・・・北の武田と手を結び・・・北条の背後にある関東の旧勢力に呼びかける。

そして・・・父の代から反抗を繰り返す遠江国の国人衆を骨抜きにする。

特に井伊家には・・・あの手この手で陰謀をめぐらすのだった。

井伊直平の男子を三人まで暗殺し・・・後継者は追放した。

井伊の総領は今川のくのいちで籠絡する。

かくて・・・井伊家は後継者不在に追い込まれたのだった・・・。

幼い女子が出家しようが知ったことではないのである。

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2017年1月22日 (日)

なんてたって絶対音感(小泉今日子)もんじゃも大好き(早見あかり)マエストロブルー(島崎遥香)

なんとか・・・対応しているようだな。

のほほんとしていていいぞ。

全国の主婦が全員高圧的になったらと小心者が怯えるのだ。

だが・・・高圧的になってもいいのは・・・それなりの実力者だけですから~。

そこんところを間違えないで~。

誰にお願いしているんだよ。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第2回』(日本テレビ20170121PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。左江内氏(堤真一)は小心者の万年係長である。左江内家の事実上のボスは妻の円子(小泉今日子)である。都立源高校に通うはね子(島崎遥香)と公立骨川小学校に通うもや夫(横山歩)という二児の父親はフジコ建設営業3課の万年係長なのである。しかし・・・謎の老人(笹野高史)によってスーパーマンとして選ばれるのだった。小心者の左江内氏はできるなら・・・スーパーマンになどなりたくない・・・しかし・・・ついついスーパーマンに変身してしまうのである。

「なんとかしてくれよ」

スーパーマンの耳には助けを求める声が聞こえるのだった。

現場に到着すると自転車が出会いがしらに衝突していた。

「乾杯戦士アフターV」のトレジャーグリーンに似た男(飛永翼)はオレンジジュースをこぼし、「アオイホノオ」のきっちゃんに似た新聞配達の男(大水洋介)は新聞をジュースまみれにされてしまったのだ。

「100%のオレンジジュースがヨメのちょっとしたこだわりなんだよ」

「それ・・・絶対ですね」

恐妻家の左江内氏は激しく共感する。

「新聞が配達できないよ」

「なんとかしてくれよ」

「どうにもなりませんね」

「光の速さで地球の自転と逆に飛んで時間を戻せば・・・」

「それやっちゃうと完全にアウトですから・・・もう・・・結構ギリギリなので」

事件を解決せずに帰宅する左江内氏であった。

左江内氏では「怪獣のバラード/ヤング101」(1972年)が合唱されていた。

「真赤な太陽~沈む砂漠に~」

「近所迷惑じゃないのか・・・」

「もや夫がクラス対抗の合唱コンクールで指揮者に選ばれたのよ」

左江内氏のリビングにはピアノがあるのだった。

「もや夫には音楽の才能があるの・・・絶対音感があるのよ」

円子は有頂天なのである。

ピアノでAを弾く円子。

「これは?」

「ソ」

「惜しい・・・ラよ」

再びピアノでAを弾く円子。

「これは?」

「シ」

「惜しい・・・ラよ・・・ね・・・凄く絶対音感でしょ」

「絶対音感に惜しいってのはありなのか」

「ピアノが狂っているのかもよ」

「・・・」

基本的に・・・円子は親バカなのだ。

「とにかく・・・間違いない」

「長井秀和・・・復活の兆しか」

「いっそ・・・左江内モーツァルトに改名するべきかしら」

「やめろ・・・」

「バッハでもいいけど・・・変な髪型だから・・・」

「・・・」

平和である。

東京五輪のための建築熱に誘われて・・・部下の蒲田(早見あかり)と月島方面の調査に赴く左江内氏・・・。

「なんだか・・・いい匂いがしますね」

「もんじゃ焼きの匂いだな」

「せっかくだから食べていきましょうよ」

「仕事中だ」

しかし・・・結局、もんじゃ屋「はざま」に入店する左江内氏である。

女将(佐々木すみ江)は焼き加減にはうるさいのだった。

「昼間から・・・不倫かい」

「仕事中です・・・上司と部下です」

「上司と部下で・・・不倫かい」

「・・・タワーマンションの調査に来ているんです」

「売るよ」

「え」

「はざま」の大将(織本順吉)は周辺一帯の地主だった。

「そろそろ・・・店じまいして・・・のんびりしようと思う」

佐々木すみ江・・・88歳

織本順吉・・・89歳

働き者である・・・。

土地は地主が・・・建設費は開発者が負担して建物を作り、完成後にそれぞれがそれぞれの出費の割合に応じて土地と建物を取得する等価交換でのタワーマンション建設の申し出である。

「思わぬチャンスだな・・・」

「もんじゃ食べて正解でしょう」

「よくやった」

簑島課長は褒めるのだった。

「どんなもんじゃ」

「こんなもんじゃ」

「あっはっは」

平和である。

一方・・・もや夫は放課後・・・合唱の練習に挑む。

しかし・・・クラスメートの女子(岩崎未来)は・・・。

「まだ・・・男子が集まってないよ」

一部の男子たちはリーダー格のアキラ(五十嵐陽向)とゲームセンターに向うのだった。

「練習さぼるなよ」

「合唱なんてやってられか~」

「しょうがないな」

もや夫は残ったものたちで練習を開始するのだった。

担任教師(川面千晶)は児童たちの自主性を尊重するタイプらしい。

翌日・・・事件が発生する。

「はざま」の店先がスタイリッシュな落書きの餌食となったのである。

部下の下山(富山えり子)と月島に駆け付ける左江内氏・・・。

「別の女と不倫かい」

「ちがいます」

「単なる悪戯かもしれないけど・・・」

「何か・・・変わったことがありましたか」

「昨日・・・店子を集めて説明したけど・・・みんな賛成してくれたよ・・・みんなタワーマンションに住めるって喜んでた」

「・・・」

しかし・・・出世を狙う池杉(賀来賢人)はトラブルの存在を疑うのだった。

「何か・・・裏があるのかも」

左江内氏は役所に向う。

「道路の拡張計画があるんです」と担当者。

「立ち退きですか」

「というか・・・移転のお願いですね」

左江内氏は課長に報告する。

「良いじゃないか・・・建てちまえば」

「はあ・・・」

「道路の方がよけて通ればいいんだ・・・」

「いや・・・認可が」

「無理を通すのが仕事だろう」

一方・・・もや夫は体育の時間にうんていが出来ず・・・アキラたちに嘲笑される。

落書き事件の犯人探しのために・・・小池刑事(ムロツヨシ)と警察官刈野(中村倫也)が出動する。

左江内氏もスーパーマンとなって張り込むのだが・・・円子から着信があるのだった。

「ママ友連れて帰るから・・・掃除しておいて」

「まだ仕事中だよ」

「知るか・・・散らかってたら殺すぞ」

「はい」

あわてて・・・帰宅する左江内氏だった。

家でははね子が同級生のサブロー(犬飼貴丈)やさやか(金澤美穂)と勉強中だった。

スーパーマンの登場に驚くが忘却光線があるので大丈夫なのである。

もや夫のために生姜焼きも作る左江内氏だった。

「いらないよ」

「薄味にしたから~」

変なポーズをつけて「マエストロブルーなのよ」と言うはね子。

娘のポーズに魅了されて真似をしながら「マエストロブルーって?」と呟く左江内氏である。

月島に戻った左江内氏は・・・「はざま」に拳銃を向けるバイクの男(柾木玲弥)を発見する。

男は逃走するが・・・スーパーマンからは逃げられない。

「なんであんなことをしたんだ・・・」

「道路拡張に反対するから・・・道路が狭くて・・・救急車が入ってこれずに・・・婆ちゃんが死んだんだよ」

「火事とかあった時も・・・困るよなあ・・・でも・・・拳銃はだめだぞ」

「玩具だよ・・・」

そこに・・・小池&刈野コンビが到着。

「手錠忘れた」

「ユーハブ」

「アイハブ」

「ユーハブ」

「アイハブ」

「機長と副機長か」

しかし・・・ダウンコートに手錠が阻まれる。

「冬あるある」

「冬あるある」

逮捕である。

翌日・・・「はざま」の大将に説得を試みる左江内氏。

「道路計画に賛同したらどうでしょう」

「お宅が断るなら・・・別の業者に売るよ・・・」

「・・・」

一方・・・昼休みに一人で練習していたもや夫はウンテイから落下するのだった。

「ウンテイにワックスぬってあったのよ・・・担任が・・・悪戯だろうって言うから・・・どなりこんでやったわよ」

ゴジラとなった円子は口から火を噴くのだった。

だが・・・左江内氏は・・・もや夫の部屋でワックスを発見する。

もや夫は自作自演でウンテイを葬ろうとしたのである。

左江内氏は・・・困惑した。

バッティングセンターでバントをする左江内氏。

「おい・・・それって・・・なんか・・・なんかな・・・」

店員(佐藤二朗)はネット裏からアドバイスをする。

「当たらなくてもいい・・・思い切りスイングしてみないか」

「・・・」

「俺は・・・映っているのか」

「顔が大きいから大丈夫じゃないですか」

スーパーマンとなった左江内氏は大将と女将を空中散歩に連れ出す。

「空から月島を見てみよう」である。

生まれ育った土地の変貌を俯瞰する老夫婦。

「そうか・・・百年住むために・・・街づくりは・・・必要だな」

大将は・・・道路計画に賛同することにした。

スーパーマンの記憶は消えるが・・・決心は変わらないらしい。

円子は・・・もや夫のために・・・三万円の指揮棒をネットでゲットした。

しかし・・・もや夫は引き籠る。

変なポーズで・・・「もう間に合わないよ」と告げるはね子。

ポーズを真似して「大丈夫だ」と変身する左江内氏・・・。

「お父さん・・・その恰好・・・」

「お前・・・ついに頭がおかしいことに・・・」

しかし・・・学校までひとっ飛びの左江内氏である。

教室にもや夫と乗り込む左江内氏・・・。

「もや夫は嘘をついていました・・・申しわけありません」

土下座する左江内氏。

「嫌だ」

「この世は不条理だ・・・お父さんは謝る必要のないところでも謝る・・・それはみっともないことだ・・・しかし・・・あやまらなきゃいけないのにあやまらないのは・・・もっとカッコ悪いぞ」

「・・・」

もや夫は土下座するのだった。

「ごめんなさい」

「アキラ・・・あんたも」と女子たち。

「アキラ・・・下手だからさぼったんでしょう」

「俺はあやまらないよ・・・でも歌うよ」

アキラはもや夫に手を差し伸べる。

「アキラ・・・」

スーパーマンの記憶は消えるが・・・友情は深まるらしい・・・。

御世辞にも上手いとはいえない合唱・・・いや・・・最低だ。

しかし・・・左江内一家は・・・もや夫の晴れ姿に拍手喝采するのだった。

「愛と海のあるところ~」

着替えた左江内氏に激怒する円子。

「今まで何してたの・・・終わっちゃったじゃない」

「え」

「土下座よ、土下座~」

「えええええええ」

本当に平和である。

それは・・・誰にも評価されないスーパーマンのおかげなのだ。

あなたは・・・気が付いていないかもしれないが・・・。

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2017年1月21日 (土)

玄関マットじゃすまないのよ!(深田恭子)先生、小学生は児童です(小芝風花)

受験戦争は終わったのか・・・。

それは終わらないさ・・・。

永遠戦争だからな。

戦場から逃れたものだってそれなりに幸せになる。

しかし、戦わずに逃げれば一生、卑怯者と呼ばれるのだ。

いや・・・言われないだろう。

それは・・・陰口叩かれていることに気がつかないだけだよ。

まあ・・・そのうち・・・誰もAIに敵わない時代が来るんだけどな。

それはそれでスリリングなんだけどな。

で、『下克上受験・第2回』(TBSテレビ20170120PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・福田亮介を見た。父親・桜井信一(阿部サダヲ)・・・スマイベスト不動産勤務。中卒。母親・香夏子(深田恭子)・・・専業主婦。高校中退。祖父・一夫(小林薫)・・・大工。中卒。中卒一家に生まれた公立・大江戸小学校の五年生・佳織(山田美紅羽)はたまたま受けた共通学力テストの結果が20000~/25000であったために・・・このままでは「中卒」なのかと不安を感じる。職場の後輩の楢崎哲也(風間俊介)が名門・東西大学を卒業していると知った信一は胸に秘めている学歴格差劣等コンプレックスに魂を揺さぶられ・・・偏差値72を要する桜葉学園中等部を目指して・・・娘を戦場に送り出す決意を固めるのだった・・・。

書店員(ぼくもとさきこ)が怯えるほど・・・中学受験の参考書を購入する桜井父娘である。

ざっと・・・二十万円ほどに見えたが・・・サイフにそんなに入ってなかっただろう。

クレジットカードの請求額を見て・・・香夏子がパンチを繰り出すのか!

「なにこれ・・・」

「すべては佳織のためなんだよう」

「お金は?」

「ポケットマネーで・・・」

「わかってる?・・・ウチはギリギリなのよ」

香夏子は・・・信一の無謀なチャレンジを思い知らせるために・・・抜き打ちテストを行うのだった。

参考書から抜きだした問題をチラシの裏に書いて・・・父と娘をテストする。

娘はなんとか解答するが・・・全問不正解。

信一に至っては・・・解答すらできないのである。

「明日・・・全部・・・書店に返品しますから」

「お願いだから・・・やめてくれ」

「お金どうするのよ」

「マンションを売って売って売りまくるから」

しかし・・・顧客夫妻(山田明郷・梅沢昌代)への対応を楢崎にまかせ・・・参考書に熱中する信一だった。

「かなり・・・わかってきた」

「完全に変なおじさんですよ」

「今度は十問中・・・二問正解だったぞ」

「道が遠すぎます」

中卒仲間の溜まり場・居酒屋「ちゅうぼう」で・・・意見を求める信一・・・。

「中卒が小学生を教えるなんて無理だろう」

「愛があるのにか」

「それは単なる親馬鹿だろう」

「どうして・・・塾じゃ・・・ダメなんです」

もちろん・・・信一には「塾」に嫌な思い出があるのだった。

佳織が通う大江戸小学校に転校生がやってくる。

「有栖川小学校から転校してくるんだって・・・」とコマツコになれそうなリナ(丁田凛美)・・・。

「ありすがわ小学校?」

「すごいお嬢様学校で、お金持ちしか行けないんだよ」と相武紗季の少女時代を演じられそうな美少女のアユミ(吉岡千波)・・・。

やってきたのは・・・徳川直康(要潤)が経営する大企業「トクガワ開発」の社長令嬢・麻里亜(篠川桃音)である。

お約束で佳織のとなりの席に落ちつく麻里亜だった。

直康は娘に変わって教室で挨拶をするが・・・娘は父親を追い払う。

「パパ・・・余計なことはいわないで」

国語の授業で「吾輩は猫である」の朗読中に・・・小山みどり先生(小芝風花)は麻里亜が算数の受験勉強をしているのに気がついて注意する。

「他の児童に迷惑をかけていないと思いますが」

「今は国語の時間でしょう」

「授業中に受験のための勉強をすることについては校長先生に話が通ってるはずです」

「そんな話・・・聞いてません」

「では・・・校長室で確認してください」

「わかりました・・・しばらく自習していてください」

小学生に言い負かされる担任教師だった・・・。

「麻里亜ちゃんも・・・中学受験をするの」

「あなたも・・・この間の共通テストを受けたの」

「麻里亜ちゃんも・・・」

「今回は三桁だったけど次は二桁の順位を目指すわ・・・あなたは」

「同じようなものよ・・・」

「へえ・・・」

麻里亜は100~999/25000である。

佳織は20000~/25000である。

桁違いにも程があるだろう。

下校に際しては車でお迎えがくる麻里亜だった。

「毎日送り迎えか・・・いいなあ」とリナ。

「でも・・・あの親子うまくいってないみたい・・・」とアユミ。

「ウチだってうまくいってなけど・・・送り迎えもナシだよ」とリナ。

「ねえ・・・佳織ちゃん・・・中学受験するって本当?」

「うん」

「え~・・・無理だよ・・・バカが受験したって失敗するだけだよ」

「私・・・バカじゃないもん」

「え~・・・それって私たちみたいなバカとは付き合えないってこと」

「そんなこと・・・」

そこへ・・・チビの大森健太郎(藤村真優)が割り込むのだった。

「なによ~チビ~」

「うっせえ・・・ブース」

チビもまた・・・中学受験の戦友なのだった。

麻里亜は父親にクレームをつける。

「受験勉強に専念するために転校したのに・・・担任の先生に話が通ってなかったわよ」

「すまない・・・それから・・・進学塾に通う件だけど」

「それはパパに任せるわ」

娘に絶対服従の父だった・・・。

一方・・・中高一貫教育の名門校・・・開徳出身でもある楢崎は「進学塾」の必要性を信一に説くのだった。

「学校の勉強と・・・受験勉強はまったく違うんですよ」

「そうなの・・・」

「体験入学だけでもしてみればいいじゃないですか」

「体験入学・・・」

信一は香夏子に相談を持ちかけるのだった。

「とにかく・・・体験入学はタダなんだよ」

「風水チェックと同じで最初は玄関マップとかを買わせてから・・・物凄い金額の水晶とかを売りこんでくるのよ」

「変な商売と一緒にするなよ」

「同じようなものでしょう」

「香夏子・・・じゃ・・・お前・・・3/5と4/5どっちが大きいかわかるのか」

「アーアーアー聞こえない~」

父親の信一は・・・弟子の杉山(川村陽介)にギブスの解体を命じていた。

「勝手に外しちゃっていいんですか」

「痛くないからもう治ったんだよ」

「しょうがないなあ」

「他の若い衆はどうした」

「トクガワ開発の下請けしてますよ」

「あの社長も変わっちまったよなあ」

「え・・・徳川さんのこと昔から知ってたんですか」

「あれは・・・息子の同級生で・・・昔はウチによく遊びにきたもんさ」

「すげえ差がついちゃいましたね」

「うるせえよ・・・この足の怪我だって・・・工期短縮をせっつかれて・・・足場の確認が不十分だから・・・このザマじゃねえか」

「・・・」

居候の父親がいないので・・・合体に及ぼうとした信一だが・・・香夏子はご機嫌ななめである。

そこへ・・・帰宅する一夫。

「邪魔してすまん・・・」

「お父さん・・・足・・・」

「おう・・・もう治ったから自分の家に帰ろうと思ってな・・・ちょっと孫の寝顔を見にきたんだ」

「もっと養生してくださいよ」

「いいや・・・そうも言ってられねえよ・・・」

一夫は可愛い孫の顔を見てうっとりするのだった。

一夫が去った後で香夏子は信一に告げる。

「本当に香夏子のことを思ってのことなんでしょうね」

「そうだよ・・・」

「あの子が嫌だと言ったら・・・やめさせるわよ」

「わかった」

怪しい窓口の男・山之内(野間口徹)のいる「羽柴進学塾」にやってくる桜井父娘だった。

「ついに決心なさいましたか」

「体験学習はタダなんでしょう」

「ええ・・・一度体験したらヤミツキになりますから」

「なんか・・・ヤバイクスリをやらせるんじゃないでしょうね・・・」

「お客様は運がいい・・・今日の講師はあの樋口先生ですから」

「ハーイ!イッツユアターン!今度は君の番だ」でお馴染みのカリスマ講師らしい・・・。

そこへ・・・徳川父娘もやってくる。

塾の職員たちは総出で歓迎するのだった。

「徳川くん・・・」

「お父さん知ってるの・・・」

「小学校の同級生だよ・・・向こうは覚えてないだろうけど・・・」

体験教室は・・・予備試験の成績を参考にした算数の授業だった。

「今日は・・・過不足算について授業をします」

「過不足算・・・」

黒板に信一にとっては謎の出題がなされる。

「わかる人はいるかな」

数人の児童が挙手をする。

「じゃあ・・・君・・・」

「わかりませ~ん」

「そういうのは学校では受けるかもしれないけど・・・ここでは通用しないぞ」

過不足算はある個数のものを何人かに分けた場合の過不足の情報から人数と全体の個数を求める問題である。

最初の問題は女児の一人が正解を出す。

「正解です・・・エクセレント!」

塾側としては・・・出来る子がいることを見せつけて・・・出来なかった子に塾の必要性を感じさせる戦略なのだろう。

「さあ・・・次は・・・もう少し難しいよ」

麻里亜は無反応だが・・・佳織は挙手をするのだった。

「え・・・君には少し難しいんじゃないかな」

予備試験の結果から・・・判断するカリスマ講師。

「徳川さんなら・・・できるんじゃないかな」

「私は挙手していません」

「だけど・・・君は」

たまりかねて・・・口を出す信一である。

「ウチの子が手をあげてるじゃありませんか」

「そこまで言うのなら・・・」

佳織は黒板に解答を書き始めるが・・・途中で躓くのだった。

(できると思ったのに・・・)

「やはり・・・少し難しかったみたいだね」

「ウチの子が食べてる・・・解いてる途中でしょうが」

しかし・・・佳織は立ちすくむ。

すると・・・麻里亜が立ち上がり・・・解答を完成させるのだった。

信一は思い出した。

自分も塾で・・・解答できずに立ちすくんだ過去があったことを・・・。

(だから・・・塾は嫌なんだ)

信一は佳織の腕を掴むと学習塾から撤退するのだった。

麻里亜の父親は娘を褒めた。

「さすがだな」

「大した問題じゃなかったもの」

「でも・・・できない子もいたじゃないか」

「あの子だって・・・半分はできてた・・・もう少し時間があれば」

「時間には限りがあるものだよ」

「・・・」

「お父さん・・・いたい」

公園で信一は佳織の腕を放した。

「ごめん・・・」

「塾には戻らないの」

「お父さんはもう大人だから・・・塾には入れない・・・佳織が困っていても助けることはできない・・・だから・・・佳織と一緒に勉強しようと思うんだ」

「私と一緒に・・・」

「そうだ・・・佳織がわからないことがあったら・・・一緒に解き明かしたい」

「いいよ」

「お父さんと一緒に勉強してくれるかい」

「うん」

その夜・・・佳織は香夏子と入浴した。

「お母さんはどうして受験に反対なの」

「勉強することに反対じゃないのよ・・・でも友達がいなくなるかもよ」

「・・・」

「それに・・・何かを目指して・・・それが手に入らなかったら・・・がっかりするかも」

「友達は・・・いなくなるかも・・・だけど・・・新しい友達がみつかるかかも」

「・・・」

「それに・・・私は・・・もっと勉強してみたいんだ」

「そうなんだ」

信一は居酒屋「ちゅうぼう」で仲間たちと飲み明かしていた。

そこへ・・・突入する香夏子である。

「何時だと思ってんのよ」

「・・・」

「佳織と一緒に勉強するんじゃなかったの」

繰り出されるヤンキー拳である。

「だから・・・今日が最後です」

「え」

「明日から・・・俺はビールも焼酎も飲まない・・・パチンコも競馬もやらない」

「・・・」

「仕事以外はずっと・・・受験勉強をします」

しかし、香夏子の打撃が効いてダウンする信一だった。

翌朝・・・目を醒ますと・・・大工仕事の音がした。

「なんだ・・・」

「おじいちゃんが・・・リフォームだって・・・リフォームって何?」

「親父・・・何してんだ・・・」

「勉強部屋だよ・・・お前の机もあるぞ・・・」

「ここにあった・・・荷物は」

「銀シャリだ」

「断捨離じゃないの・・・」

「看板はお前が打ちつけろ」

「看板・・・」

こうして・・・「俺塾」はスタートしたのだった・・・。

中卒一家は・・・中卒には届かない幸せを目指す佳織に・・・夢を託したのである。

子供が何とかしたいと思ったら何とかしてやりたいのが親の情なのである。

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2017年1月20日 (金)

梅の香りと月の光そして女の祈り(武井咲)生まれてこなければよかったという自虐(成海璃子)

さて・・・冬ドラマもほぼ出そろって・・・残りは数本である。

東京タラレバ娘」はまだトリオの一角の話だが・・・ここからドタバタになるのかドロドロになるのか・・・スタッフの匙加減が気になるところだが・・・原作の33歳設定に対してドラマの実年齢28歳キャスティングは明らかに切実感が違い・・・失敗の可能性が大きいと思う。

この他に・・・ファンタジー大河も始るので・・・レビュー枠はかなり苦しいことになってくる。

「忠臣蔵の恋」と「リテイク」は分けてレビューしたいのだが・・・そうするとどちらかを打ち切る必要がある。

仕方ないので・・・。

(木)は二本立て体制となったのだった。

(月)「A LIFE~愛しき人~」

(火)「カルテット」

(水)未定

(木)「忠臣蔵の恋」&「リテイク」

(金)「下剋上受験」

(土)「スーパーサラリーマン左江内氏」

(日)「おんな城主直虎」

もう・・・結構、ハードである。

で、『土曜時代劇・忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第14回』(NHK総合201701141810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・清水一彦を見た。元禄十五年十二月十四日(1703年1月30日)・・・きよ(武井咲)が操を捧げた磯貝十郎左衛門(福士誠治)は赤穂義士として吉良上野介義央(伊武雅刀)を討ち取り、主君であった浅野内匠頭長矩(今井翼)の無念を晴らした。密偵として白金の上杉家下屋敷に潜入し・・・仇討ちの夜も吉良邸前に控えたきよは・・・十郎左衛門が本懐を遂げるのを見届けた後で・・・高熱を発する。張り詰めていた糸が切れて寝正月なのである。

きよが寝こんでている間に・・・吉田兼亮らの自首を受けた大目付仙石久尚により赤穂浪士討ち入りの報告を受けた幕府は対応を協議する。

江戸城に登城していた肥後熊本藩の藩主・細川綱利は老中稲葉正通より大石内蔵助良雄(石丸幹二)はじめ赤穂浪士十七人のお預かりを命じられた。

Ako001 十五日の深夜、泉岳寺から仙石久尚の屋敷に収容された十郎左衛門は内蔵助と共に白金の細川家下屋敷に移送される。左股に深手を負った近松行重らのために駕籠が手配され、白金到着は十六日未明のことになったという。

慶長四年(1599年)の石田三成襲撃以来、浅野家と細川家は昵懇の間柄である。

当主の綱利は「討ち入り」を「義挙」として感銘を受け・・・内蔵助らに対面・・・篤くもてなしたという。

江戸市中でもすでに「赤穂義士の快挙」は人気になっており・・・幕府は対応に苦慮する。

赦免か断罪か・・・断罪なら罪人としての斬首か・・・武士として名誉の切腹か・・・世論への配慮が求められ幕府閣僚の意見は割れたのである。

綱利は幕府に助命を嘆願した。

元禄十六年(1703年)正月・・・父親の勝田元哲(平田満)の居住する浅草稲荷町にある浄土真宗の寺・唯念寺林昌軒で養生を続けるきよの元へ兄の勝田善左衛門(大東駿介)と親類筋の佐藤條右衛門(皆川猿時)が見舞いにやってきた。

「兄上・・・おじさま・・・」

「きよ・・・もう良いのか」

「はい」

「江戸では・・・赤穂義士の討ち入りは大した評判じゃ」

「ご赦免の可能性もあるかもしれない」

「ご赦免・・・」

十郎左衛門の「死」を覚悟していたきよの頬が朱に染まる。

「まあ・・・夢のようなものだがな・・・」

(夢)ときよは心を引き締めるのだった。

「身体が癒えたら・・・瑤泉院様を訪ねるがよかろう」

「つま殿の話では・・・瑤泉院様はきよの容体を気にかけてくださっているそうじゃ」

つま(宮崎香蓮)は浅野家未亡人の瑤泉院(田中麗奈)の侍女であった。

「瑤泉院様が・・・」

きよは・・・赤坂の三次浅野家下屋敷に向った。

「本日は・・・仙桂尼様もお見えですよ」

きよを奥の間に案内しながらつまが微笑む。

「仙桂尼様が・・・」

十郎左衛門と別れてから・・・すべてが夢のように感じられているきよなのである。

仙桂尼(三田佳子)は瑤泉院に「赤穂浪士の助命嘆願」を申し出いた。

「助命とな・・・」

「世間では討ち入ったものたちの快挙を讃え・・・ご赦免を願うものも多いと聞きます。今こそ・・・助命を願い出る機会かと・・・」

「しかし・・・そのような伝手があるものか・・・吉良家は将軍家と繋がりの深い御家・・・」

「今・・・幕府を動かせるものといえば・・・桂昌院様」

桂昌院は将軍・綱吉の生母である。

「本所五ツ目の五百羅漢寺の松雲元慶様は桂昌院様の信望が篤いお方でございます」

「五百羅漢寺の・・・」

「しかし・・・大石たちが命を永らえても・・・赤穂藩はもうないのじゃ・・・俸禄を与えることもできぬ」

「瑤泉院様・・・」

きよには桂昌院の言う「命大事」の気持ちも・・・瑤泉院が案ずる「大義」の理もわかる。

命は大切だが・・・命を捨てて主に殉じたからこその義挙なのである。

浪士たちは・・・死を賜ってこそ・・・義士として完成するのである。

だが・・・瑤泉院とて情がないわけではない。

「わかった・・・家臣たちの命も大切じゃ・・・妾も助命嘆願に賭けよう・・・仙桂尼の配慮も許す」

「ありがたきことでございます」

「きよ・・・」

「はい・・・」

「帰りは気をつけるのじゃぞ・・・病み上がりの身じゃ・・・充分に養生いたせ」

「もったいない御言葉・・・」

きよは・・・深く頭を下げた。

十郎左衛門は存命だが・・・内匠頭はもうこの世にはいないのである。

内匠頭と十郎左衛門が主従であったように・・・瑤泉院ときよも主従の絆で結ばれているのだった。

仙桂尼はそんなきよの心を見とって言葉を続ける。

「幕府を今動かせるものと言えば・・・あとは・・・御側御用人の柳沢吉保様・・・」

「柳沢様・・・」

時は移り・・・梅がつぼみをつける。

唯念寺の寺内の梅を手折るきよであった。

細川家家臣で内蔵助らの預かりを担当している堀内伝右衛門(北見敏之)がきよを訪ねてやってくる。

「芝金杉町の貞柳尼様にお会いしてまいりました」

「貞柳尼様に・・・」

貞柳尼(風祭ゆき)は十郎左衛門の母である。

「私は勝手ながら・・・赤穂の皆さまの・・・御言葉を・・・御身内の方に伝えておるのです」

「それは・・・ありがたきこと・・・」

「皆さま・・・御元気になさっておいでですよ・・・我が殿は大の浅野贔屓でしてな・・・風呂は一人一人で湯を入れ替えよ、酒やたばこも振舞って毎日の料理も二汁五菜にせよ、菓子、茶なども馳走せよと・・・家臣がうらやむほどの大盤振る舞いでございます」

「まあ・・・」

伝右衛門の語り口に思わず笑いを誘われるきよだった。

「十郎左衛門殿は・・・琴の爪の入ったお守り袋を肌身離さず御持ちでございます」

「・・・」

「これが我が命と申しておりました」

「・・・」

「何か・・・お伝えすることはございますか」

「・・・ありません」

きよは・・・涙をこらえて微笑んだ。

伝右衛門はきよが飾った梅の枝を見る。

「これは・・・きよ殿が」

「はい・・・」

伝右衛門は細川下屋敷に梅の枝を持ちかえった。

「十郎左衛門殿・・・これなるは・・・唯念寺の梅でございます」

「唯念寺の・・・」

「手折ってくださったのは・・・誠に御美しい方でございました・・・」

「・・・良き香じゃ・・・お心使い・・・かたじけのうござる」

十郎左衛門は微笑んだ。

きよは堀部安兵衛(佐藤隆太)の妻・ほり(陽月華)と細井広沢(吉田栄作)の屋敷を訪ねていた。

「柳沢様に・・・ご赦免願いを・・・とな」

「細井様は・・・柳沢様の・・・儒学の師とお聞きしました・・・」

「ほり殿はどう思われる・・・武家の娘として・・・武士の妻として・・・」

「私は・・・父にも・・・夫にも・・・潔く・・・旅立たせてやりとうございます」

「ほり様・・・」

「さすがは・・・武家の女・・・天晴な覚悟でござる・・・儒学者としてはそう申す他はござらぬ・・・しかし・・・友として・・・拙者は安兵衛に生きていてもらいたい・・・命を助けたいとも思ってしまう・・・」

「細井様・・・」

「柳沢様がどのような決断をなさるかはわからぬが・・・拙者は・・・微力なれどお力添えいたす・・・」

人々は・・・それぞれの立場で・・・赤穂浪士の処分を待った・・・。

そして・・・元禄十六年二月四日(1703年3月20日)・・・。

きよは父に呼ばれた。

「そなたの母上を見送って・・・十一年になるのう・・・」

「父上・・・」

父は娘に・・・自分も連れ合いの死に耐えたことを前置きしているのだときよは悟る。

「細井様から・・・報せが参った・・・本日、切腹と決まったそうだ・・・」

「何処で・・・」

「お預かりのお屋敷にて・・・」

「参ります」

「行って・・・どうなるものではない」

「せめて・・・最後の時を・・・お側で・・・」

きよは走り出た。

足は白金村を目指す・・・しかし・・・十郎左衛門の遺した言葉がきよを縛る。

「きよは・・・生きよ・・・生きて・・・母上を看取ってくれ・・・我が妻として・・・」

きよは・・・足を芝金杉町へと向けた。

「きよ殿・・・」

「母上様・・・」

「報せが参ったのですね」

「本日・・・ご切腹とのこと・・・」

「武士の誉れじゃ・・・」

「まことに・・・」

「きよ殿・・・あの子は・・・十郎左衛門は・・・磯貝家の誇りでしたよ」

「・・・」

義理の母と娘は・・・お互いを慰めた。

「大石内蔵助殿・・・」

「各々方・・・御先に参る」

あら楽し 思ひは晴るる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし

赤穂義士たちは旅立った。

細川家では切腹の場所に最高の格式である畳三枚を敷いたと言われる。

きよが泉岳寺に到着すると・・・すでに十郎左衛門の埋葬は終わっていた。

十郎左衛門の戒名は刃周求劔信士と記されていた。

「せめて・・・御亡骸を一目・・・見とうございました」

「見なくて良かったのですよ・・・見なければ・・・夢枕に立つ旦那様は・・・きっと」

「ほり様・・・」

「きよ・・・人の死は綺麗事では済まぬのじゃ・・・」

「仙桂尼様・・・」

「吉良家を継いだ吉良左兵衛義周は信濃高島藩主諏訪安芸守忠虎にお預けとなった・・・浅野家と同じく両成敗となったのです・・・義挙は報われた・・・しかし・・・仏と成ったものたちと喜びを分かち合うことはもはやできませぬ」

「・・・」

「きよ・・・残された遺児らは・・・伊豆大島に遠島となりましたぞ」

「では・・・村松政右衛門殿も・・・」

村松政右衛門(井之脇海)はきよが後事を託された村松三太夫(中尾明慶)の弟だった。

「残された私たちは・・・遺児たちのお命を御救い申し上げなければならぬ」

「・・・」

「きよ・・・これは終わりではない・・・これははじまりなのです」

しかし・・・女の身で・・・何ができるだろう・・・。

きよの心は亡き人の面影を求めて彷徨っている。

しかし・・・運命は・・・きよを思ってもいない場所へと導くのだった。

儚くも華麗な残り六話である。

関連するキッドのブログ→第13話のレビュー

で、『リテイク 時をかける想い・第6回』(フジテレビ201701142340~)脚本・千駄木宗介(他)、演出・植田尚を見た。2022年にタイムマシンが発明される時空の2017年である。もちろん・・・2022年が未来である以上・・・それが実現されるのかどうかは未定である。しかし・・・政府の一部はそれを信じ・・・法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)の指揮下で未来人を保護するのが任務の戸籍監理課を運営している。別荘と呼ばれる施設のスタッフは相当数必要と推定できるが描写は一切ない。日本国以外の未来人対策も描かれない。それどころか・・・未来人が飛来するのは東京周辺に限定されている。それについての説明も一切ない。本当は・・・そういう「謎」の解明もタイムトラベルものの醍醐味なのだが・・・課長・新谷真治(筒井道隆)、正規職員・那須野薫(成海璃子)、パートタイマーのパウエルまさ子(浅野温子)の三人で・・・全未来から飛来する未来人のすべてに対処しているわけである・・・絶対におかしいだろう・・・。

新谷課長の運転で・・・未来人を別荘に送り届けた二人。ちなみに・・・薫は無免許である。未来人の特徴の一つが戸籍がないために免許を取得できないということなので・・・薫が未来人である可能性は大きいのである。

別荘の出口で政務官秘書の大西史子(おのののか)が立ちはだかるのである。

「ここに未来人が収監されているのですね」

「未来人・・・何の話ですか」

「とぼける気・・・」

「とぼけるも何も・・・ここは改修中の保養施設ですよ」

「保養施設・・・?・・・そこに何故・・・戸籍監理課が」

「お役所仕事的な雑用ですよ」

「説明になってないわよ」

「とにかく・・・お話することはありませんよ」

「私は機密文書を握っているの・・・すべてをマスメディアにリークするわよ」

「なぜ・・・そんなことを?」

「政府が国民に隠しごとをしてるなんて・・・許せないもの」

「おっしゃっている意味がわかりません」

「政治家の秘書が言うセリフとも思えませんね」

「私は・・・正義の政治家を目指しているのよ」

「えええええええええ」

「とにかく・・・帰りましょう・・・時間の無駄です」

「だな」

「待ちなさいよ」

しかし、戸籍監理課の二人はそそくさと立ち去るのだった。

「放置しておいていいんですか」

「未来から未来人が来ているって言われて・・・君は信じるかい」

「いいえ」

部署に戻った課長はパウエルまさ子に尋ねる。

「機密文書が紛失していますか」

「未来人のファイルが何点かなくなっているけど・・・」

「大西さんが盗み出したみたいなんですけど」

「あんなもの何にするの」

「リークするそうです」

「何のために・・・」

「純粋な正義感です」

「そりゃ厄介ね・・・純粋な正義感って悪意の蔑称だもの」

「ですね・・・」

「だけど・・・問題ないでしょう」

「だよね・・・」

「政務官に報告しましょうか」

「放置しておきましょう・・・面倒くさい」

「だね」

正義の炎に焼かれる大西は親友の雑誌記者・北見野絵(小島藤子)に相談するのだった。

「ののののの・・・」

「落ちついて」

「とにかく・・・これは大変なことなのよ」

「だけど・・・資料だけで・・・この人たちが未来人だと言われても・・・記事にはできないわ」

「ののののの・・・」

「落ちついて」

「どうしてよ・・・」

「せめて・・・責任ある立場の人の証言でもないと・・・」

「証言・・・」

「その秘密の部署の・・・課長さんとか・・・」

「新谷課長の・・・証言・・・」

考え込むののののの・・・大西だった。

ののののので遊んで楽しいのか・・・うん。

オバケ(未来人)が現時点に到着する天気雨(局地的低気圧)が観測される。

現場地点に向う課長・・・。

封鎖された事件現場に遭遇する。

「何かあったんですか・・・」

「婦女暴行事件だってよ」

「何でも犯人は全員白尽くめだったらしいぜ」

「白尽くめ・・・」

オバケは現時点に着地すると衣装が漂白されるのだった。

ののののの大西と別れた北見野絵は会社に戻るところだった。

北見を尾行する白尽くめの男(葉山奨之)は野絵と同じように二十歳前後だった。

課長は・・・尾行する男を発見する。

「もしもし・・・」

「何ですか」

「ちょっと話を聞かせてもらいえますか」

「急いでいるんです」

「彼女とあなたは・・・どんな関係ですか」

「・・・」

「私・・・未来から来た方を保護する仕事をしています」

「え」

「未来から来た人に現在に介入されると困るのです・・・まさか・・・あの女性に危害を加えるつもりですか」

「まさか・・・あの人は・・・僕の母親です」

「お母さん・・・すると・・・子供の時に何か問題が?」

「保護するって・・・どういうことですか」

「特別な施設にお連れして・・・2022年にタイムマシンが開発されるまでそこで過ごしてもらいます」

「五年後じゃ・・・ダメだ・・・僕が生まれてしまう」

「はあ・・・」

「僕は生れて来ない方がよかったんです」

「あ・・・待って」

二十代の若者が本気で走って逃げたら絶対に追いつけない課長なのである。

そこに警官がやってくる。

「今・・・女性から男に尾行されていると通報がありまして」

「え」

「ちょっとお話聞かせてもらえますか」

「僕は怪しいものではありません」

「それが・・・怪しいのでは・・・」

逃げ出そうとして逮捕されてしまう課長だった。

課長の元義理の弟・柳井研二(淳士)に薫が連絡することで解放される課長。

研二は刑事なのである。

「逮捕した警官が知りあいでよかったですよ」

「所轄の警官にも顔が広いのか」

「彼は・・・父親が・・・お偉いさんなんです」

「へえ・・・」

「知り合っておいて損はないんですよ」

「君らしいね」

薫は課長に文句を言う。

「おかげでデートすることになっちゃいましたよ」

「すまん」

「未来人には会えたんですか」

「どうやら・・・母親に自分を生ませないつもりらしい・・・」

「そんなことをしても時空が変遷するだけで・・・本人が消えるわけでもないのに」

「まあ・・・自殺したいだけとは限らんぞ・・・それに・・・彼は婦女暴行犯として警察にもマークされているらしい」

「え」

「しかし・・・時系列的に考えて・・・彼に犯行は無理だ・・・犯行後に到着してたまたま目撃されてしまったんだろう」

「何故・・・その人は・・・生れることを拒むのでしょうか」

「さあ・・・」

政務官に呼び出される課長。

「逮捕されたそうじゃないか」

「誤認逮捕です」

「君は誤認逮捕されるのが趣味なのか」

「・・・」

「とにかく・・・警察より先にオバケを確保してくれ」

「人員の補充の件はどうなってますか」

「何度も言わせるな・・・秘密を知るものは少ないほど良いのだよ」

「・・・」

秘書官にバレたことを口には出せない課長なのである。

課長を待ち伏せするののののの。

大西でいいじゃないか。

「良心があるなら・・・取材に対して証言してもらえませんか」

「良心・・・」

「良い返事を待っています」

「・・・」

大西の育ちをあれこれ考える課長だった。

相当な箱入りで・・・なにか極端な思想に感染しているのかもしれない。

その頃・・・未来人は・・・母親に接触していた。

「僕は・・・圭介と言います・・・未来から来たあなたの息子です」

「未来人・・・」

圭介は・・・古いタオルを差し出す・・・。

「これに見覚えはありませんか・・・これが唯一の証拠です」

「何を言ってるの・・・」

「あなたに逢うために未来から来たんです・・・信じてください」

「あなた・・・二週間ほど前から・・・私をつけている人ね」

「え・・・」

「何が目的なの」

「そんな・・・僕はまだ来たばかりで・・・」

「お巡りさん・・・」

野絵は通りすがりの警官を呼ぶのだった。

圭介は逃げ出し・・・課長の車に拾われる。

「あなたには・・・婦女暴行の容疑がかかっているんですよ」

「え・・・」

「事情を話して下さい」

「僕は・・・2018年・・・つまり来年生れます・・・この世界では母体優先のはずなのに・・・出産時に・・・あの人は・・・死んでしまうのです」

「つまり・・・あなたは生れついての母親殺し・・・ということですか」

「母は天涯孤独の身の上だったらしい・・・結婚もしていなくて・・・父親が誰かもわかりません・・・僕は最初から孤児院で育ちました。里親にも恵まれず・・・誰からも必要とされないまま僕は母親が僕を生んだ年齢になりました。けれど・・・生れてよかったと思ったことは一度もありません」

「・・・」

「ひょっとしたら・・・母は・・・婦女暴行犯に犯されて・・・僕を妊娠するのかもしれない」

「・・・」

「だから・・・僕には父親がいないのかもしれない」

「・・・」

「でも・・・どうしてそんな男の子供を生む気になったのか・・・僕にはわからない」

「・・・」

「だから・・・僕はお母さんに・・・僕を生まないように・・・頼みに来たのです」

「そのタオルは・・・」

「母が僕を生んだ時に握りしめていたものだそうです」

「・・・」

「僕にとって・・・このタオルが・・・お母さんなんです」

課長はまたしても・・・圭介に脱走されてしまう。

「情けない」

「すまん」

「彼はどうするつもりなのでしょう」

「おそらく・・・婦女暴行犯から・・・彼女を守るつもりなんだ」

「自分を生ませないために・・・ですか」

「・・・」

その頃・・・野絵は・・・婦女暴行犯に拉致されていた。

圭介は暴行寸前に割り込む。

「やめてください」

「なんだ・・・てめえは・・・」

圭介は暴漢と格闘を開始する。

しかし・・・暴漢は兇悪だった。

叩きのめされる圭介。

「やめて・・・母さんにひどいことをしないで・・・」

「母さんだと・・・お前・・・頭おかしいのか」

そこへ・・・パトロール中の警官が現れる。

二人組の一人は・・・課長を逮捕していた男だった・・・。

暴漢はついに逮捕されるのだった。

「大丈夫でしたか」

「向田さん・・・」

「無事でよかった・・・」

どうやら・・・野絵と警官は・・・知り合いらしい。

野絵はストーカーの存在に気が付き・・・警官に相談していたのだった。

警官は野絵にタオルを差し出した。

「出血しています・・・救急車が来るまでコレを・・・」

「ありがとう・・・あ」

野絵は・・・タオルに気がついた。

そして・・・圭介を見るのだった。

「あの・・・助けてくれた人に御礼を言いたいのですが・・・」

「ああ・・・あの人は・・・法務省の人だそうですよ」

「法務省の・・・」

「上司の新谷さんと言う人が・・・引きとりにきています」

野絵は立ちあがった。

「新谷さん・・・」

「え・・・」

「戸籍管理課の新谷さんですか」

「どうして・・・・私のことを・・・」

「のののののから・・・話を聞いています」

「え」

「本当に・・・この人は未来から来た・・・私の子供なんですか」

「・・・そうです」

「課長・・・」と薫。

「だって・・・しょうがないだろう」

薫は課長の意を汲んだ。

「信じなくても構いません・・・ただ・・・彼の言葉を聞いてあげてください・・・彼はすべてを捨てて・・・そのためだけに未来から来たのです」

「那須野・・・なんだか・・・熱いな」

唖然とする野絵。

「・・・」

薫は圭介の背中を押した。

「さあ・・・言ってしまいなさい」

「僕を生んだ人は雑誌記者の北見野絵だと聞かされています。北見野絵は僕を生んだために死にました。だから・・・僕を生まないで・・・このまま長生きしてください・・・お願いします」

「そんな・・・」

「我々の仕事は未来人に今を変えさせないことなんですがね・・・いつも・・・負けちゃうんですよ・・・だって・・・人生賭けてやってくる人たちの・・・本気・・・凄いので・・・」

「さあ・・・行きましょう・・・北見圭介さん・・・」

二人は未来人を別荘に送り届けた。

そこに・・・大西と野絵が現れた!

「また・・・君か」

「今日は野絵の付き添いよ」

「私・・・警官の向田さんとお付き合いすることになりました・・・」

「死んでしまうかもしれない運命を選ぶのですか」

「私が・・・一人であの子を生むことになるのは・・・彼の家が・・・格式高いせいかもしれません。私は臆して結婚できなかったのかも・・・私にはそういう傾向があるのです。でも・・・あの子を一人ぼっちにしないために・・・死に物狂いになろうと思います・・・体調もしっかり管理して・・・無事に出産して・・・あの子を生むだけでなく・・・ちゃんと育ててあげたい・・・」

「あなたの気持ちを・・・彼に伝えますよ」

「ありがとう・・・」

「野絵は記事は書かないっていうけど・・・私はあきらめませんから」

「・・・」

薫は囁いた。

「無事に出産できるのでしょうか」

「そんなこと・・・誰にもわからないさ・・・もう未来は変わってしまったんだから」

未来人によって変貌し続ける現在。第一話の逃亡未来人・坪井信彦(笠原秀幸)は現在の坪井信彦に大金を渡しているのだった。

「誰にも・・・言うなよ」

「・・・」

残り二話である。

未来と現代の「謎」にはどんな決着が待っているのだろうか。

細部の辻褄があっていることを祈るばかりである。

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2017年1月19日 (木)

東京タラレバ娘(吉高由里子)あるいはタラレバ女(榮倉奈々)なんちゃって三十路だよ(大島優子)

女性に年令を問うのは失礼であるという伝説がある。

あるいは女性の年齢は分かりにくいという物語がある。

そして・・・女房と畳は新しいほど良いという諺がある。

「若さ」については様々な考え方があるが・・・科学的には二十歳を過ぎたら老化が開始されるわけである。

しかし・・・それは性差に関係なく、人類全体に起きる。

何も恥じることではない。

にもかかわらず・・・「若さ」を失うことは・・・何か・・・とんでもないことのような御時勢なのである。

このドラマの原作に登場する同級生女性トリオの設定年齢は三十三歳である。

それが・・・ドラマ化にあたって全員、三十歳の設定に引き下げられている。

演じる女優たちは・・・吉高由里子・・・1988年7月22日生れ(28歳)・・・。

榮倉奈々・・・1988年2月12日生れ(28歳)・・・。

大島優子・・・1988年10月17日生れ(28歳)・・・。

なぜ・・・こういうことが起きるのかは・・様々な事情があります。

で、『東京タラレバ娘・第1回』(日本テレビ20170118PM10~)原作・東村アキコ、脚本・松田裕子、演出・南雲聖一を見た。そもそも・・・親に対しては娘は何歳になっても娘だ。かしまし娘もいくつになってもかしまし娘である。だが・・・娘さんと呼びかける時、そこにはガラスの天井があるような気がする。女子もまた・・・女の子供という意味では・・・親に対してはいくつになっても女の子供である。しかし・・・女子大生のニュアンスで・・・いつまでも女子でいられるかというと・・・意見の分かれるところである。中卒や・・・高卒の女子社会人はありえるが・・・短大卒、大学卒の女子社会人は・・・微妙なんじゃないか。すくなくとも・・・おじさんたちは・・・おばさんたちの女子会には・・・わだかまるものがあると考えられます。

そういうわだかまりをスカッとさせるセリフが・・・この物語の核心にあり・・・一部お茶の間を騒然とさせることが妄想できるのである。

原作では相手が三十三歳なので・・・「酔って転んで男に抱えて貰うのは25歳までだろ・・・30代は自分で立ち上がれ・・・もう女の子じゃないんだよ?・・・おたくら」とストレートなのだが・・・ドラマでは・・・相手が実年齢二十八歳なので・・・「「いい年した大人は自分で立ち上がれ・・・もう女の子じゃないんだから・・・おたくら」とややカーブになっている。

それが・・・成功しているのか・・・失敗しているのか・・・よくわからないところが・・・このドラマの最大の謎なんだな。

高校時代から・・・仲良しの女性トリオ・・・脚本家の鎌田倫子(吉高由里子)、ネイリストの山川香(榮倉奈々)、居酒屋「呑んべぇ」の看板娘である鳥居小雪(大島優子)は揃って独身で恋人もいないのだった。

2020年夏季オリンピックが東京で開催されることが決まったのは2013年である。

その頃・・・二十代だった倫子たちは・・・東京五輪は・・・おそらく・・・夫と子供たちと一緒に楽しむことになるだろうとなんとなく思っていた。

何しろ・・・七年後の話なのである。

しかし・・・リオ五輪が終わり・・・新年となって残り三年・・・。

三十歳になった彼女たちは・・・漠然とした不安を感じていた。

このままでは・・・「ひとり東京オリンピック」になってしまうのではないか。

後・・・三年で・・・夫と子供のいる家庭の持ち主になれるのか・・・。

恐ろしい気がするのだった。

だが・・・仲間が三人いる以上・・・「お一人様」にはならないという慰めもある。

まあ・・・考え方によっては・・・「お一人様」が三人いるということなのである。

しかし・・・刻一刻と時は過ぎていく。

倫子は脚本家だが・・・まだ駆け出しである。

今回・・・深夜ながら・・・初めて地上波のドラマを書くことになった。

仕事も絶対に成功させなければならない瀬戸際にあるのだった。

ドラマのプロデューサーは倫子より五歳年上の早坂哲朗(鈴木亮平)で二人はかってアシスタント・ディレクターとして同僚だった過去がある。

倫子が脚本家としてやっていくための重要なコネクションの相手である。

しかも・・・倫子は八年前に・・・早坂に告白されたが・・・お断りした間柄である。

二十二歳だった倫子はピチピチで・・・早坂はダサダサだったらしい。

とにかく・・・そんな2017年の初詣・・・。

倫子は・・・香と小雪とともに神社に詣で・・・その帰りに・・・イケメンと衝突する。

相手は二十代半ばの金髪の美青年(坂口健太郎)である。

うっとりとする三人だった。

だが・・・いくらうっとりしても・・・恋は始らないのである。

そして・・・新年早々・・・倫子は「大切な話がある」と早坂から食事に誘われるのである。

「早坂さん・・・鎌田さんに気があるんじゃないですか」

八年前の自分と同じようにピチピチのアシスタント・ディレクター・芝田マミ(石川恋)に冷やかされて悪い気はしない倫子だった。

八年の歳月は・・・早坂をそれなりに洗練された男性に仕上げていたのである。

なにしろ・・・早坂はドラマプロデューサーなのだ。

溜まり場である居酒屋「呑んべぇ」で香と小雪に相談すると・・・「これはチャンス」と言われて・・・おつまみのタラやらレバーやらにも発破をかけられる倫子・・・。

タラちゃん(声・加藤諒)「このままではダメだっタラ~」

レバちゃん(声・Perfumeのあ~ちゃん)「チャンスを逃さずなレバー」

・・・あくまで倫子の妄想の産物である。

さて・・・「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」でもそういう感じがしたのだが・・・恋はともかくおしゃれはしておけというニュアンスがそこはかとなく匂うファッション・カタログ的なスタイルである。興味のあるなしに関わらず押しつけがましさを感じる。

感じながらデートのためにおしゃれをする人々は可愛いものと思うしかないわけである。

なんだかんだ理屈をこねながら・・・結局おしゃれかよと思うのは悪魔だからである。

倫子もまた胸の谷間を強調しつつ・・・早坂と料理の美味しいレストランで飲食するのである。

八年前はワインさえまともに注文できなかった男が「この店のムール貝は絶品なんだ」レベルまで成長し・・・倫子は胸のときめきを感じるのだった。

しかし・・・気をもたせてから・・・早坂が言うことにゃ・・・。

「芝田マミに告白しようと思う・・・どうだろうか」なのであった。

「なんですおおおおおおお」なのである。

またしても・・・居酒屋「呑んべぇ」に緊急出動する香と小雪だった。

「そうと知っていレバ・・・胸の谷間なんて強調しなかったのに」

「八年前に受け入れていタラ・・・今頃は素敵な家庭を築いていたかも」

「やってられんわあああああ」

大声で愚痴りまくるかしまし娘たち・・・。

どういう店なのかは知らないが・・・静かに飲みたかった男の気分を害したらしい。

「いい加減に静かにしてくれませんか・・・何の根拠もないタラレバ話で・・・よくそれだけ盛り上がれますね」

それは・・・金髪のイケメンという設定のKEYなのである。

「タラレバ話?」

「あの時ああしていたらとかこうしていればとか・・・仮定の話で実現しなかった現在を語っても虚しいだけでしょう」

「盗み聞きしていたの」

「イヤでも聞こえてくるんですよ・・・そういう話は個室のある店ですればいいのに」

「居酒屋が騒がしいのは当たり前でしょう」

「限度があると思うよ・・・まあ・・・うんざりしたから俺が帰るけどね」

「・・・」

「お勘定お願いします」

「すまなかったな・・・千円でいいよ」

看板娘の父親・鳥居安男(金田明夫)は「気持ち」で料金をサービスするのだった。

「あ・・・どうも」

倫子は気がつくのだった。

「あれは・・・初詣の時のイケメン」

「失礼なやつね」

「偉そうに・・・どう見ても年下よね」

しかし・・・一理あると思う倫子である。

だからといって・・・見ず知らずの若者に意見されたことは腹立たしいのである。

とにかくおしゃれをしなければならないので香のネイルサロンで爪に磨きをかける倫子。

「まるで・・・私たちが男に縁がないみたいな口ぶりだったわよね」

「私たちがその気になれば男なんて」

「だよねえ」

挙句の果てに三人が出かけていったのは・・・知らない男女が相席になることができる・・・相席フレンチである。

いつの時代も客寄せのために女性を優遇するのは水商売の基本である。

「同年代がいいかな」

「若い子でもいいよ」

「年上でも構わない」

相席する男性の条件を広めに設定する三人。

しかし・・・店内は結構、賑わっているのに・・・誰も来ないのである。

「どうなってんの・・・」

「すみません・・・現在、入店中の男性の御客様は・・・皆さん、二十代の女性をご指定でして」

「・・・」

おあずけを食らった仔犬のように意気消沈して店を出る三人。

「今日は運が悪かった」と香。

「だよね」と倫子。

「ウチで飲み直そう」と小雪。

居酒屋「呑んべぇ」から出てきたKEYと鉢合わせである。

「あんたのせいで・・・酷い目にあったわよ」

「?」

一方的に文句を言った倫子は勢い余って転倒し店頭の鉢植えをひっくり返す。

「女の子が目の前で転んだんだから・・・手ぐらい貸しなさいよ」

KEYは転倒した鉢植えを起こすのだった。

「せっかく・・・綺麗に咲いていたのに・・・」

花弁は散っていた。

「なんだってえ」

「いい年した大人は自分で立ち上がれ・・・もう・・・女の子じゃないんだから・・・おたくらは」

絶句する三人である。

(えええええええ)

(私たちって)

(もう女の子じゃないのかい)

・・・是非もないのだった。

信長が明智光秀に謀反されるが如く・・・二十代の男性にとって三十歳の女性は「女の子」ではないのだ。三十代の男性なら・・・社交辞令で・・・それ以上なら苦笑して「女の子」を許容する場合があります。

その時・・・倫子は大切なことに気がついた。

「あ・・・そういえば・・・マミちゃん・・・彼氏がいるんだった」

「え・・・」

「聞いたことのない大学の学生と付き合っているって言ってた」

「それじゃ・・・早坂さん・・・撃沈じゃない」

「だね」

「チャンスじゃないの」

「え」

「傷心につけこむのよ」

「そんな・・・」

「綺麗事言ってる場合じゃないでしょう」

「・・・」

「告白したら~」

「告白すれば~」

妄想上のタラちゃんとレバちゃんも囁くのだった。

意を決した倫子は・・・早坂に告白を試みる。

「あの・・・その・・・・・・」

その時、マミが現れる。

「早坂さん」

「マミちゃん・・・ちょうど良かった」

「話したんですか」

「いや・・・まだ・・・今、御礼を言おうと」

「御礼?」

「君のアドバイスの御蔭で・・・マミちゃんと付き合うことになったんだ」

倫子の背中に空想上の矢が突き刺さる。

(無念じゃ・・・本能寺を炎上させよ)

早坂は打合せのために妄想上の修羅場を去って行った。

「早坂さんは倫子さんが好きなのかと思ってました」

「マミちゃん・・・大学生の彼氏は・・・いいの」

「あ・・・彼とは別れちゃいました」

「え」

「だって話はつまらないし・・・貧乏だし」

「早坂さんのことは好きなんだよね」

「とりあえず・・・キープですね・・・そこそこ優良物件ですから」

「ああああああああああああ」

スクランブルで集合する三人。

「何と慰めていいか」

「まあ・・・しょうがないよねえ」

「金髪男が言っていたこと・・・当たってる・・・私たち・・・ベンチからヤジを飛ばしているようなものだった。自分では選手のつもりで・・・でもやっていることは観客と同じ。いつでもいけるつもりでいても・・・いざ・・・バッターボックスに立ったら・・・空振り三振がオチなのよ」

「なぜ・・・野球にたとえるの」

「日本テレビだから」

「行こう・・・とにかく・・・バッターボックスに立たなくては・・・」

「行くって・・・どこに?」

バッティングセンターである。

とにかく振って振って振りまくる左打席の倫子。

仕方なく・・・香と小雪もバットを持つのだった。

そんな・・・三人を金髪男が見ていた。

そして・・・缶ビールをそっとプレゼントするのだった。

誰かが置いて行ったビールを無頓着に飲み干す三人。

命知らずかっ。

「とにかく・・・恋を始めなくては・・・」

コンビニに入った倫子は・・・「大人の恋のはじめ方」という特集の組まれた雑誌を購入する。

雑誌を開くと・・・そこには・・・「一番人気の男性モデル」としてKEYが倫子を見つめている。

「えええええええええええええええ」

さて・・・またしても・・・当落線上のドラマだった・・・。

キャストは豪華なんだけどねえ・・・。

なんか・・・なんかな・・・。

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2017年1月18日 (水)

カルテット(松たか子)晴天より曇天(満島ひかり)唐揚と檸檬(高橋一生)軽井沢の別府(松田龍平)

ヴィオラ奏者を演じる高橋一生が行きずりの女子大生(青野楓)とキスをしている頃・・・二回目も拡大した「嘘の戦争」では主人公の陽一(草彅剛)が家族の仇の娘を演じる山本美月を凌辱していたのであった。

激しい鍔迫り合いである。

まあ・・・とっとと平常通り、午後九時と午後十時で棲み分けた方がいいと思うぞ。

せっかく・・・二本立てに付き合ってくれる人たちのためにもな。

さて・・・ほぼ・・・決まりだした・・・冬のドラマのラインナップである。

(日)は基本的に「おんな城主直虎」である。一昨年のようなよほどの不出来がない限り定位置で。

(月)は月9が始っていないが・・・日9から「A LIFE~愛しき人~」がこぼれてきている。

(火)は「カルテット」で決まりである。

(水)は未定である。

(木)は「リテイク」と「忠臣蔵の恋」が年越しで送られてくる予定である。

(金)は「下剋上受験」で決まりである。

(土)は「スーパーサラリーマン左江内氏」で決まりである。

つまり・・・もう・・・残り一枠しかないんだよな・・・誰か勝ち取るのか・・・それとも谷間になるのかは・・・未定です。

で、『カルテット・第1回』(TBSテレビ20170117PM10~)脚本・坂元裕二、演出・土井裕泰を見た。「ダメな私に恋してください」から始ったこの枠の回復の兆しを「重版出来!」で軽く温め、「逃げるは恥だが役に立つ」でついに蘇らせた演出家の・・・新たなるチャレンジである。月9だから見るという時代とまではいかなくても・・・火10だから面白いかもしれないというところまで持って行ってほしいものだ。まあ・・・今のシステムだと次のプロデューサーがとんでもなくやらかす場合があるので難しいんだけどね。まあ・・・NHKドラマも去り、フジテレビドラマも去って・・・まさにチャンス到来なので・・・去年の冬ドラマより清々しいだろう。

東京・・・銀座四丁目・・・夜・・・一人のチェロ弾きの少女が・・・路上演奏を始める。

稼ぎは小銭が少々で・・・テトラパックのコーヒー牛乳代くらいである。

そこへ・・・一万円札を差し出す怪しい老婆(もたいまさこ)が現れた!

後に明らかになるが・・・巻鏡子である。

「仕事をお願いしたいのよ」

「演奏なら・・・どこにでも・・・」

「この女性とお友達になってもらいたいの・・・」

差し出された写真には・・・鏡子の息子の妻である・・・巻真紀(松たか子)の姿が・・・。

まきまきかよっ!・・・である。

巻真紀はヴァイオリン奏者であった。関係者の話ではプロであった過去があるらしい。

数日後・・・「カラオケ館」の個室で・・・ヴァイオリンを練習するまきまきに偶然を装って接近しようとしたチェロ弾きの少女・世吹すずめ(満島ひかり)は驚愕する。

他の個室から・・・ヴィオラ奏者の家森諭高(高橋一生)と・・・ヴァイオリン奏者の別府司(松田龍平)が現れたのである。

そんな・・・偶然があるだろうか・・・おそらくないのである。

だが・・・一同は・・・おそらく・・・それぞれの事情で・・・奇跡のような出会いを「運命」にしようとしているわけである。

数日後・・・ある雨の日・・・世界的指揮者を祖父に持っているが「ふくろうドーナツ」のお荷物社員である別府司は・・・まきまきを車に乗せて・・・祖父・良明が所有する軽井沢の別荘へと向う。

「冬の軽井沢も素敵なんですよ」

「・・・」

「すみません・・・僕ばかりおしゃべりをして」

「・・・て・・・て」

「えっ」

まきまきは小声である。

「昨日・・・緊張して眠れなくて・・・鴨の赤ちゃんが次々に排水溝に落ちる動画を見てしまって・・・」

「・・・僕は・・・皆さんとの出会いは運命だと思っています・・・偶然、弦楽四重奏ができるメンバーがカラオケ屋に集まるなんて・・・僕らはきっと最高のカルテットになりますよ」

「・・・は・・・が」

「えっ」

「人生には三つの坂があるそうです・・・上り坂と・・・下り坂・・・そして」

そこで・・・道端で女子大生とキスをしている家森が合流する。

「ええと・・・今の人は」

「旅行中の女子大生・・・道を尋ねられて教えた」

家森はそれだけでキスができるスキルを持っているらしい。

唖然とする別府である。

やがて・・・豪勢な別府の別荘に到着する。

「まきさんは・・・」

「君は上の名で呼んでるの・・・下の名で呼んでるの」

「上のまきさんです」

「まきさんは・・・結婚されているから・・・泊まりは無理ですよね」

「・・・す」

「えっ」

「君の好きにしていいよと夫に言われています」

おい・・・この調子で行くのか。

また・・・果てしなく再現性の高い世界を目指しているぞ。

も、もう少しだけ・・・。

すずめは・・・テーブルの下に潜り込んで眠っていた。

しかし・・・後にそれは盗聴のための工作中であったことが判明する。

すずめは油断のならない女なのである。

一同は・・・早速・・・練習を開始する。

「アーをください」とまきまきが言うとすずめがチェロでAを奏でる。

そして・・・四人は・・・場末のファッションモールで「ドラゴンクエスト・マーチ/すぎやまこういち」を演奏してレベルアップするのだった。

こうして・・・謎を秘めたカルテットは誕生した。

ささやかな打ち上げのために・・・別府は唐揚を作る。

別府とすずめが添えられたレモンを大皿の唐揚に絞ると家森が文句を言い出すのだった。

「何してんだよ」

「レモンを絞っています」

「どうして・・・」

「唐揚にはレモンだから」

「そうじゃない人もいるって考えてもいいんじゃないか」

「え」

「第一・・・パリパリ感が損なわれる」

「でも健康のためには」

「唐揚食べてる時点で健康のことは横においてるじゃないか」

「そんなに怒らなくてもいいんじゃないか」

「まきさんはどう思いますか」

「・・・と」

「えっ」

「たかが唐揚ってことはないんじゃないかと」

「はあ・・・」

「まず・・・レモンを絞ってもいいか聞くべきだったと思います」

「そうだよ・・・そこなんだよ」

「・・・」

「でも・・・唐揚を見てください」

「え」

「冷えはじめています」

「・・・食べましょう」

「いただきます」

ワインで口が軽くなる奏者たちだった。

「いつか国立の劇場で演奏したいですね」

「それは・・・夢の話ですね」

「結婚してどのくらいですか」

「三年です」

「まきさんの夫さんは広告代理店に御勤めだそうだ」

「どうして好きになったんですか」

「彼は平熱が高めで」

「へえ・・・」

「耳の裏からいい匂いがするんです」

「・・・」

まきの夫の話に身を乗り出すすずめなのである。

こうして・・・最初の演奏旅行は幕を閉じた。

東京に戻ってくる奏者たち。

まきまきの家には・・・夫の靴が置かれ、床に靴下が脱ぎ捨てられており・・・テレビはつけっぱなしだが・・・まき以外の人の気配はないようである。

別府は会社ではVIP待遇である。

上司(ぼくもとさきこ)は「おじい様はドイツですか」と御追従を言う。

別府は仕事を与えられず・・・いてくれればいい存在である。

そんな別府の姿を同僚の九條結衣(菊池亜希子)は微笑んで見つめる。

家森は美容院で働いている。

客(松山尚子)は「あら・・・店長さんがシャンプーしてくれるの」と言う。

「いえ・・・僕はアシスタントです」

「あら・・・」

「三十五歳のバイトリーダーです」

すずめは・・・狭い部屋の万年床でジャンクフードを漁るのだった。

そして・・・まきまきは変な鼻歌を歌う。

「のぼりざか・・・フンフンフン・・・・くだりざか・・・フンフン」

ああ・・・もう・・・ずっとこの世界にいたい魔法が・・・。

きんぴらごぼうと生卵かけごはんを食べるまきまき。

ニュースが「杉並区の公園の池で身元不明の四十代男性の死体が発見された」と語るのだった・・・。

おやおや・・・。

ミステリアスな匂いが漂う都会。

しかし・・・軽井沢では軽やかな空気が漂う。

カルテットの仮名はドーナツとなり・・・ワゴンをデコレーションする奏者たち。

湖畔で記念撮影をすれば猿が樹上で笑い、別府が洗濯をすれば家森がノーパンになる。家森が転べば別府も転び、すずめも転ぶのだった。

バディーシャンプーなどを買い出しに出かけた奏者たちは・・・「あしたのジョー」の帽子をかぶった「余命九カ月のピアニスト」・・・ベンジャミン瀧田(イッセー尾形)に出会う。

まきまきは・・・バスローブの下に着衣の芸を披露する。

別府はまるで恋をしているようにまきまきの写真を眺め・・・家森はまるで恋をしているようにすずめの寝顔を見つめる。

この物語は「全員片思い」なのだが・・・それは・・・奏者たちのことではないのだろう。

奏者たちが片思いしているのは・・・「音楽」・・・あるいは「音楽」で生計を立てることなのではないか。

それが「夢」であることによる・・・どこか・・・ウキウキした日々なのである。

別府は・・・地元のコネクションで・・・耳よりな情報を仕入れる。

「ライブレストランで・・・週末にステージに空きが出るらしい」

ドーナツ一家は・・・勇んでライブレストラン「ノクターン」に出かけるのだった。

ライブレストラン「ノクターン」のシェフ・谷村大二郎(富澤たけし)は好意的に彼らを迎える。

店構えは申し分なく・・・ステージは彼らをうっとりとさせる。

だが・・・外出から戻った大二郎の妻でホール担当の谷村多可美(八木亜希子)は渋い顔だった。

「残念だけど・・・ベンジャミンさん・・・まだ当分演奏できるらしいわ・・・」

「え・・・」

ドーナツのライバルは・・・ベンジャミンだった。

ベンジャミンは「ラ・ヴィ・アン・ローズ(ばら色の人生)」を奏でる。

ドーナツは「ノクターン」の客席にいた。

アルバイト店員の来杉有朱(吉岡里帆)は事情を明かす。

「不入りなんですけど・・・なにしろ・・・きるにきれないというか・・・」

「ご病気じゃ・・・ねえ」

「あの人が最初に演奏した時は・・・すごく感動したんですよ」

「・・・」

「それから・・・一年です」

「え・・・余命九カ月なのに・・・」

「でも・・・そういう人をきると炎上しますからね」

「・・・」

「私・・・元地下アイドルだったんで・・・わかるんです・・・私もかなり炎上しましたから」

「それは・・・あなたの目が笑ってないからじゃない」と何故か毒を放つまきまき。

「ええっ・・・笑ってますよ」と目が笑わない演技もできる最新人気若手女優だった。

トレーなどであえて胸を隠すチラリズムである。

見事な攻撃だ。

しかし・・・まきまきは・・・ベンジャミンの正体を見極めていた。

「あの人・・・五年前に見た時も余命九カ月でした」

「え」

「つまりあの人は・・・ニセ余命九カ月の人です」

「ええ」

「死ぬ死ぬ詐欺です」

「えええ」

「どうしますか」

「どうするって・・・」

「お店の人に言えば・・・私たちが・・・この店で」

まきまきの提案に・・・戸惑う三人だった。

彼らは・・・なにしろ・・・夢見る人々なのである。

音楽に片思いをしているのは・・・それを手にいれるために悪魔に魂を売っていないからなのだ・・・おいおいおい。

そこへ・・・ベンジャミンがやってくる。

「来たな・・・カルテット・・・アリスちゃん・・・ボトル持ってきて・・・」

「は~い」

「飲もうじゃないか」

奏者たちは一瞬・・・クインテットとなった。

老いさらばえた奏者の貧しい棲家にドーナツは入った。

ベンジャミンはかってプロとして商品(レコード)も出した奏者だった。

しかし・・・ベンジャミンの部屋にレコード・プレーヤーはない。

酔った老奏者は若者たちに「プレイ」を語り酔いつぶれた。

壁には家族の写真があったが・・・家族はいない。

音楽に片思いをしたものの末路だった。

「アーをください」とまきまき。

「ベンジャミンさん・・・鼻毛のびてたね」とすずめ。

「抜いてあげればよかったね」とヤモリ。

「あの・・・スーパーでまた演奏できるかどうか交渉してみます」とVIP。

「いつか・・・イオンモールで演奏したい」

「・・・」

帰京する奏者たち。

「今頃・・・家は散らかり放題だわ」

「夫婦って・・・なんですか」

「夫婦って・・・だと思うの」

肝心なところをバスの走行音で聞き逃す別府。

「いいですね」とお茶を濁すのだった。

後にわかるが「別れられる家族」と言ったまきまきは怪訝な顔をする。

帰宅したまきまきは掃除機に躓き・・・床の靴下の匂いを嗅ぐ。

まきまきの夫は今・・・どこにいるのか・・・。

別府は・・・九條結衣の部屋で風呂掃除をして・・・カニの殻を剥く係であるらしい。

二人はそれなりにお似合いだ。

しかし・・・別府が恋をしているのは「音楽」なのである。

家森は・・・路上で・・・道行く子供から「音楽」を感じて立ち止まる。

世界には音楽があふれている・・・しかし・・・それで食べていくことは難しい。

「ふたりの夏物語 -NEVER ENDING SUMMER-/杉山清貴&オメガトライブ」をカーラジオで聞いていた怪しい男(Mummy-D)が家森を探し当てる。

奏者たちは冬の軽井沢に戻る。

ヤモリは・・・ベンジャミンの姿を冷蔵庫にマグネットで掲げようとするが・・・別府はピンで階段の途中に留める。

すずめはヤモリの「みかんつめつめゼリー」を取り出して食べる。

「それは俺のじゃないか」

「まきさんのですよ」

「だって俺のがないじゃないか」

「まきさんが食べたんじゃないですか」

「まきさんはまきさんのを食べたんだろう」

「まきさんが家森さんのを食べて・・・私がまきさんのを食べているだけです」

「ちょっと図解にして説明しようじゃないか」

「ああ・・・まきさん・・・今・・・どこですか」

まきまきはライブレストラン「ノクターン」でベンジャミンの仮病を密告していた。

三人が店に駆け付けると話は終わっていた。

「あなたに・・・演奏させるってことは・・・私たちが御客さんを騙してるってことになるから」

事実上のオーナーである谷村多可美はベンジャミンに引導を渡していた。

「・・・」

「あの・・・まきと言うものがこちらに・・・」

「控室の下見をしているわよ」

まきが姿を見せる。

「スペースとしては充分ですね」

「とりあえず・・・今夜からお願いね」

「はい」

三人はまきまきを密告者を見つめる目でとがめる。

ベンジャミンは無言で去って行くが・・・彼に声をかけるものはいない。

「一度戻って支度をしてきます」

奏者たちは車の中で鬩ぎ合う。

冬ざれた曲がり角で・・・ベンジャミンは赤い帽子を飛ばす。

ベンジャミンの明日はどっちだ・・・もうないのか。

思わず・・・車を降りる三人。

「今・・・拾いますから」

「ダンケシェーン」

冬枯れの森の中をベンジャミンは去って行く。

男たちは茫然とベンジャミンを見送って立ちすくむ。

すずめはふりかえる。

まきまきは前だけを見つめている。

その顔には覚悟が浮かんでいる。

別荘に戻った奏者たちはわだかまりを抱えたまま準備に入る。

しかし・・・別府の鬱屈はコーン茶に逃避する。

「しょうがないでしょう・・・ベンジャミンさんは嘘をついていたんです」

「あの人は・・・好きな音楽を続けたかっただけで・・・そのための嘘は」

「余命何カ月って・・・許せる嘘なんですか」

家森もコーン茶に逃避する。

「僕は別府くんと違って・・・あっち側だから・・・わかるよ・・・画鋲を刺せない人間は・・・嘘くらいつくんじゃないか」

「・・・もっとやり方があったと思うんです」

「どんな・・・」

「もっと・・・思いやりがある・・・」

「同情ってことですか」

「同情って言葉を悪く言わないでください」

「同類相哀れむでしょう・・・ベンジャミンさんに・・・自分たちの未来を見たんでしょう。私たち・・・アリとキリギリスのキリギリスじゃないですか。音楽で食べて行きたいっていうけど・・・もう答えは出てるんです。私たち・・・好きなことで生きていける人になれなかったんです。仕事にできなかった人は・・・決めなきゃいけないんです。趣味にするのか・・・それでもまだ夢を見続けるのか。趣味にできたアリは幸せかもしれません。でも夢を追い続けたキリギリスは泥沼でしょう。ベンジャミンさんは夢の泥沼に沈んで嘘をつくしかなかった・・・そしたら・・・こっちだって・・・奪い取るしかないじゃないですか」

すずめもコーン茶に逃避する。

「別府さんも家森さんも・・・ベンジャミンさんの家族になってあげればいいんです。ベンジャミンさんみたいに鼻毛のばせばいいんですよ。でも・・・まきさんは・・・キリギリスじゃないですよね・・・だって・・・結婚してるんだもの・・・旦那さんが・・・食べ物をくれるでしょう」

「唐揚おいしかったな」

「え」

「私・・・結婚前があまり・・・長くなかったので・・・主人に作る料理を悩み悩み作ってました。ある日・・・唐揚を作ると・・・主人は凄く美味しいって言って・・・それから・・・私は唐揚をよく作るメニューにしたんです。それから・・・しばらくたって・・・本郷の美味しい居酒屋で友達の悩み相談につきあっていると・・・主人が部下の人を連れて店にやってきたんです。声をかけようかどうか迷っていると・・・主人は唐揚を注文しました。部下の人がレモンをかけますかと言うと・・・主人はレモンは嫌いだと言ったんです。私はずっと・・・主人の食べる唐揚にレモンを絞っていたのに」

「でも・・・それは・・・優しさというか」

「気遣いというか」

「愛情があるから」

「部下の人はこう主人に聞いたんです・・・奥様を愛しているの・・・。すると主人はこう答えました。愛しているけど・・・好きじゃない」

「・・・」

「別府さんに・・・夫婦って何って尋ねられた時・・・私は言いましたよね・・・別れられる家族なんだと思うって・・・」

「え」

「人生には・・・三つの坂があるそうです」

「三つの坂」

「のぼりざか・・・くだりざか・・・まさか」

「まさか」

「人生にはまさかってあるんですよね・・・一年前・・・私がコンビニに出かけて戻ってくると夫は失踪してました・・・それきりです・・・だから・・・私には帰る家はありません・・・ここで皆さんと・・・音楽と一緒に暮らしたい・・・だからカーテンも買ってきたし」

「そんな・・・池袋ウエストゲートパークのヒロインの母親のエピソードみたいなことが本当に・・・」

「こけしか」

奏者たちはチューニングしてボウイングを決めた。

そしてレストラン「ノクターン」の控室にやってきた。

元地下アイドルは「カルテットドーナツ」の看板を見せた。

「ベンジャミンさんもドーナツのことを話していました。音楽を愛するのはドーナツの穴を愛するようなものだって。ないものがあるし・・・あるのにないもの・・・そんなものを愛せると思うのかって・・・ちょっと何を言ってるのかまったくわかりませんでしたけど。ふぇっへっへっへ」

匂い立つ・・・元地下アイドルの狂気。

「・・・」

奏者たちはステージに立って音楽に愛を捧げるのだった。

自己紹介替わりの一曲目は・・・「わが祖国/ベドルジハ・スメタナ」から「第2曲:ヴルタヴァ」のアレンジであった。

奏者たちは客からも元地下アイドルからも祝福される。

「はじめまして・・・僕たちはカルテット・ドーナツホールです」

奏者たちは存在していないのに存在しているものとして名乗りをあげた。

「あの日・・・偶然に皆さんとあえて・・・良かったです・・・私はそれを運命だと思っています」

まきまきの言葉に三人は複雑な表情を見せる。

すずめ以外の二人の経緯は不明だが・・・三人はそれぞれに偶然を装っていたのである。

出会いは偶然ではなかったのだ。

すずめを除く三人はトーストを食べた。

遅く起きたすずめは・・・窓辺で「エレンの歌 第3番/フランツ・シューベルト」(シューベルトのアヴェ・マリア)を奏でるまきまきの涙に気がつく。

「紫式部ありますよ」

「一箱1600円です」

高級ティッシュで涙を拭うまきまき・・・。

「家森さんのですけどね」

「さかむけをひじまではがされるわよ」

「みぞみぞしますね」

「みぞみぞって何?」

「みぞみぞすることです」

「今日はくもりね・・・私・・・晴れた日よりもこんな日の方がみぞみぞするわ」

「わたしもです」

そして・・・すずめは・・・テーブルの下から盗聴器を回収する。

密会したまきまきの義母に録音した会話を聞かせるすずめ。

「・・・夫は失踪してました・・・」

「息子は失踪なんかしませんよ・・・この女に殺されたんだ・・・必ず化けの皮ははがれる・・・それまで友達のふりを続けてくだざいね・・・」

「・・・」

こうして・・・秘密を抱えた奏者たちは・・・失われた何かを求めて・・・共同生活を始めたのである。

人生は長い・・・幸せになったり不幸せになったり・・・まっしろな灰になったりするけれど・・・秘密を守れるのが大人というものなのかしら・・・。

そして・・・わかりあえたような気がするのかしら。

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2017年1月17日 (火)

A LIFE~愛しき人~(木村拓哉)超音波手術器をあなたに(木村文乃)

壮絶な日曜日であったが・・・とりあえず、(日)「おんな城主 直虎」(月)「A LIFE〜愛しき人〜」の順番で書くことにした。

放送順である。

週末に恐ろしいほどドラマが集中していて・・・取捨選択が困難な今日この頃です。

当然、明らかに人材不足が・・・特にスタッフに・・・感じられる作品もあるが・・・欠乏するからこそ新しい波が来る可能性もあるわけである。

その点、「日曜劇場」枠はスタッフはもちろん・・・キャストも充実していると言える。

主演は「木村拓哉」だし、脇役も主役級の竹内結子、木村文乃、松山ケンイチに超個性派の菜々緒、及川光博、浅野忠信、そして柄本明である。

ゴージャスだなあ・・・。

子役主軸の大河ドラマが地味に見えるほどだ。

そして・・・医療もののラブ・ストーリーである・・・と思われる。

オーソドックスな立ち上がりだが・・・この脚本家はそういう作風なので問題はないだろう。

主人公にどんな過酷な運命が待っているのか・・・じっくりと楽しみたい。

で、『A LIFE~愛しき人~・第1回』(TBSテレビ20170115PM9~)脚本・橋部敦子、演出・平川雄一朗を見た。脚本家は「僕のいた時間」のように主人公が失われた何かを取り戻す物語の名手と言える。その過程で周囲の人々までもがリフレッシュしていくのが基本である。今回は腕のいい外科医が主人公なので患者たちを救うのが基本になるが・・・おそらく彼の心には失われた「何か」に対する切望が渦巻いているのだろう。はたして・・・彼はそれを認めるのか・・・そしてそれは取り戻すことが可能な「何か」・・・なのだろうか。

2006年・・・東京の病院の屋上で・・・結紮(外科的処置の際に身体の一部や医療機器を縛って固定する技術)を練習する若き日の沖田一光(木村拓哉)・・・それを見つめて微笑む壇上深冬(竹内結子)・・・。

仲睦まじい恋人たちを・・・物影から嫉妬の目で窺う鈴木壮大(浅野忠信)・・・。

壮大と一光は幼馴染で・・・親友同志だったが・・・。

「沖田を渡米させてはどうでしょうか」と壮大は壇上記念病院院長の壇上虎之助(柄本明)に進言する。

「沖田は・・・一流とは言えない医大の出身で・・・コネもありません・・・日本にいては手術の機会に恵まれません」

「腕を磨くチャンスを与えろと・・・」

「沖田には才能があります」

「何故・・・君が」

「親友だからです」

沖田は恋人と別れ・・・外科医修行のために渡米した。

そして・・・十年の歳月が流れる。

沖田はシアトルの病院で優秀な外科医として腕をふるっている。

壮大は深冬と結婚し一女・莉菜を儲け婿養子として壇上記念病院副院長におさまっていた。

脳外科医でありながら・・・経営手腕にも優れた壇上壮大副委員長は・・・病院を巨大化させている。

最近では・・・経営上の問題で・・・義父の虎之助と衝突するほどである。

「病院のさらなる発展のためには小児科と産科の縮小はさけられません」

「この病院は・・・本来、小児科と産科の充実を目的としている」

関東外科医学会会長の父を持ち将来は父の経営する満天橋病院を継ぐ予定のサラブレッドである心臓血管外科医・井川颯太(松山ケンイチ)は・・・壇上記念病院の第一外科部長である羽村圭吾(及川光博)に小声で質問する。

「院長と副院長は・・・仲が悪いんですか」

「理想の不一致と言う奴さ・・・見て見ぬフリをしておくことだ」

抜群のエリートである外科部長は・・・抜群のコネクションを持つ若者に諭すのだった。

颯太には気になる存在がいる。

オペナースの柴田由紀(木村文乃)である。

優秀なオペナースだが・・・何よりも美人なのであった。

颯太はさりげなくアプローチをするが・・・由紀は颯太にはまったく興味を示さない。

颯太は戸惑いを感じる。

父の理想を継いで小児外科医となった深冬は・・・良き医師であり、良き妻、そして良き母でもあったが・・・最近、眩暈を感じることがあった。

だが・・・医者の不養生なので放置である。

そして・・・深冬より先に・・・虎之助が発症するのだった。

外科部長の下した診断は「大動脈弁狭窄」だった。

「院長の年齢じゃ・・・手術は難しい・・・ベータブロッカー(交感神経β受容体遮断薬)を使って心臓の負担を減らすくらいしか」

「大動脈弁置換術は・・・ニックス法か・・・マノージャン法で」

「院長の場合・・・弁輪が18ミリしかありません・・・21ミリの人工弁すら入らない・・・弁輪を拡張するにしても院長の年齢と心機能ではかえって命に危険がある・・・」

「・・・」

「もって半年です」

深冬は病床の父に病状を説明する。

「羽村先生が・・・治療法を考えてくださってますから」

「でも・・・治せないんだろう」

「・・・」

「沖田先生をシアトルから呼んでほしい」

「え」

院長の言葉に愕然とする一同だった。

「どうしてですか・・・」

「日本の医者に治せないなら・・・海外から名医を呼ぶしかないだろう」

「・・・」

恩師の召還に・・・沖田は応じるのだった。

壮大と深冬は複雑な思いを秘めて沖田一光を迎える。

颯太は外科部長に質問した。

「沖田一光で検索しても論文一つ出て来ないんですが」

「書いてないからじゃない」

「え・・・そんなドクターがいるんですか」

「日本にいたんじゃ・・・オペのチャンスに恵まれないから渡米したのさ・・・シアトルじゃ・・・そうとう名をあげたらしいよ」

「チャンスなんて・・・自分で作るものでしょう」

「ま・・・君の場合はね・・・」

多くは語らない外科部長だった。

環境に恵まれたものは・・・恵まれている実感を持てないものなのだ。

「よく来てくれた・・・君の活躍ぶりはキッドマン教授から聞いてるよ」

「すべて・・・壇上先生のおかげです・・・早速ですが・・・胸の音を聞かせてください」

沖田医師は患者を診察した。

「オペ・・・すぐにやりましょう」

「治せるんですか」

深冬の瞳が輝く。

「ああ・・・大丈夫だ」

壮大は口元を歪めるのだった。

カンファレンスである。

「上行大動脈を右冠動脈4センチのところから右冠動脈左側8ミリを目指してらせん状に切り込んでいってそのまま右心室に切開を広げて大動脈と右心室をつなぎ合わせます・・・さらに大動脈弁輪を切開して心室中隔も切開そうすることで狭くなっていた弁輪の道が開きます」

「極端な狭小弁輪の場合の今野法ですか・・・」

「弁輪の道が開いたところに人工弁と人工血管を取り付ければ弁輪の大きさも今より3ランクアップの23ミリにすることができます」

「でも心室中隔と右室自由壁までの筋肉部分を切り込むなんて院長の年齢では・・・」

「テルニド(心筋保護液)を使えば大丈夫です」

「日本で認可されてるんですか?」

「アメリカでは普通に使ってるんで・・・」

「前例のない危険なオペを院長に勧めるわけにはいきません」

「前例ならあります・・・シアトルで僕が三年前にオペを・・・75歳の白人男性だったんですけど今年もトライアスロンの大会に出場してます」

「しかし・・・リスクが高すぎる」

「オペをしなかったら・・・ノーリターンですよ」

もちろん・・・患者はハイリスクを選択するのだった。

「死ぬよりマシだからな」

院長は副院長に言葉をかける。

「沖田先生にこの病院に戻ってもらいたいと思っている・・・構わんよね」

「・・・はい」

深冬は・・・一光を訪ねた。

一光は・・・結紮の鍛錬を怠らない。

深冬は・・・沸き上がる記憶を封じ込める。

「どんなオペでも・・・何が起こるかわからないから・・・父に伝えておくべきことは伝えようって思ったんだけど・・・私・・・何も伝えられなくて」

「大丈夫だよ」

「よろしくお願いします・・・」

孫とあやとりを楽しむ院長。

「院長・・・そろそろオペ室へ」

一光は手を洗った。

「コンノ法による大動脈弁置換術を行います・・・よろしくお願いします」

助手として参加する外科部長や颯太である。

オペナースはもちろん柴田由紀である。

「人工弁23ミリ準備できてます」とナース柴田。

「では始めます・・・メス」

副院長室には顧問弁護士の榊原実梨(菜々緒)が訪れている。

「院長のオペうまくいくといいですね」

「君は・・・何か変なものとか預かってないよな?」

「副院長に不都合な遺言書とかってことですか?」

「おいおい」

壮大の胸には大きな穴があいている。

その穴の代わりに・・・顧問弁護士に挿入する副院長なのだった。

榊原弁護士は壮大の愛人らしい。

「ポンプオン」

「フルフローです」

人工心肺が起動し、停止した心臓に心筋保護液が注入される。

ナース柴田は患部の石灰化の状況から超音波振動によって骨や腫瘍組織を削りながら吸引除去する医療機器「ソノペット」の出番を先読みする。

「石灰化が強くて切り取れないな・・・ダメだ・・・ソノペット用意して」

「はい」

超音波メスをナース柴田はすかさず差し出すのだった。

ナース柴田と阿吽の呼吸を感じるドクター沖田であった。

「フローハーフ」

「フローハーフになりました」

人工心肺技師ともいい感じになるドクター沖田である。

「ポンプオフ・・・」

手術は無事に終了した。

「お疲れ様でした」

ドクター沖田はナース柴田に囁く。

「動き・・・最高ですね」

「先生も」

颯太は外科部長に質問した。

「あれなら羽村先生がやった方が早かったんじゃ?」

「まあ・・・僕はやらないけどね」

手術の成功に・・・深冬は安堵した。

壮大は一光を食事に誘う。

「米屋の隣のもんじゃ・・・どう?」

「試合の帰りにコーチがよく連れて行ってくれた・・・」

「あの店・・・汚いけど美味いじゃん」

「俺は・・・補欠なのにいいのかなって思いながら食ってた」

「小学生なんだから無邪気に食ってろよ」

「だって・・・壮大はエースで4番だから」

「何だよそれ」

「今日は実家に顔出すよ」

「そうか」

「どうせ・・・壮大の爪のあかでも煎じて飲んどけって言われるんだけどな」

「おじさんによろしく言っといてよ」

「そうだ・・・結婚おめでとう・・・ちゃんと言ってなかったから」

「・・・ありがとう」

一光の父親の一心(田中泯)は頑固な寿司職人だった。

「なんで帰ってきやがった」

「壇上病院の院長の手術を」

「何でおめえがそんな偉い人の手術すんだよ」

「俺しかできない手術だったからさ」

「ふん・・・まるでおめえがすげえ医者みてえじゃねえか」

「いや・・・偉い人の手術・・・結構してるよ」

「誰だよ」

「ベルギーの王様の・・・家族とか」

「どうせ冗談こくなら王様にしときやがれ」

「・・・」

颯太はドクター沖田の手術の記録を見て・・・疑問を持つ。

(出血量が50ccって・・・ヒトケタ少ないだろう・・・書き間違えるなよな)

院長は颯太に声をかける。

「沖田先生のオペはどうだった?」

「見たことのないオペなので勉強になりました」

「普通の医者は手を出さないオペをすることについては・・・どう思った?」

「どうって・・・」

「医者としての・・・あり方の話だ」

「医者としての・・・あり方・・・・」

颯太の答えを待たず・・・容体が急変する院長だった。

「救急カート・・・エコー用意して」

人工弁が石灰化した部分に引っ掛かって血流が逆流したことによる心停止・・・さらに低酸素脳症を起こして意識不明の重体である。

「オペが失敗したってこと」

「不測の事態ではあるんですけどね」

「それに対応できなかったことが・・・失敗ってことだろう」

深冬は安堵から一転して絶望の淵に達し・・・ドクター沖田に当たるのだった。

ドクター沖田は資料を床に広げていた。

「何よ・・・これ」

「一目で分かるようにしてる・・・」

「これ整理されてるの?・・・何してるの?」

「左心室の出口が狭いから左室流出路狭窄解除の方法を全部調べてみたんだけど・・・壇上先生の症例にはどれも適用できない」

「またオペするつもり?」

「まだ考え尽くせてないから・・・」

「もうオペをするつもりはないから」

「本人がそう言ったの?」

「口なんかきけるわけないじゃない・・・父のオペはさせられない・・・私は娘よ」

「娘が諦めてどうすんだよ」

「大丈夫だって言ったじゃない」

「・・・」

「シアトルに帰ってください」

治療法の検索を続けるドクター沖田をナース柴田が援助する。

「弁付き人工血管に関する資料です」

「ありがとう」

「いつまでいるんですか」

「院長を治すまで」

「・・・」

外科部長は経営者としての医師の在り方を颯太に指南する。

帝都銀行の専務との会食である。

「羽村先生の手術がスケジュール的に難しいことは重々承知してますが何とか頭取のお嬢さんの手術をお願いしたいんです」

「おまかせください」

外科部長は袖の下を膨張させるのだった。

「技術を磨くだけでなく・・・人脈作りも大切だ・・・よく覚えておくがいい」

「モビルスーツの性能も大切ですよね」

深冬は病床の父の顔を見つめる。

「お父さん・・・」

大会議場。

「院長が受けられたオペは倫理的に問題の可能性があるオペでしたが・・・危険を承知で院長自らのご意志で受けられました・・・これがもし患者様とのことでしたら訴えられてもおかしくありません・・・今日はもう一度コンプライアンスの見直しを榊原先生と共にしていきたいと思います」

胃の痛くなるポジションとしてかかせない事務長の真田隆之(小林隆)が口上を述べる。

「皆様にもう一度認識していただきたいのはインフォームドコンセントの重要性・・・」

榊原弁護士の言葉を遮ってドクター沖田の入場である。

「院長のオペを考えました」

騒然とする一同。

「なんで切れるんですか・・・」

颯太は質問した。

「一回失敗したんですよ・・・怖くないんですか!」

「もうそっとしといてやれよ」

「どうせダメだから・・・実験的オペですか」

しかし・・・ドクター沖田は引き下がらない。

「まだできるオペがあるんですよ!・・・心尖下行大動脈人工血管吻合術を行います」

「人の命を何だと思ってるんですか!」

「答えを知ってるんだったら教えてくれよ・・・」

「・・・」

「まず前回取りつけた人工血管のあて布と人工弁23ミリを取り外して21ミリに付け替えます・・・2ミリ足りない分を左心房の心尖部を6ミリ切開・・・そこに18ミリの血流を確保できる人工弁付き人工血管を縫合します・・・その人工血管と心尖部の横5センチにきている下行大動脈を縫合します」

「外科部長として認められない・・・事務長・・・この件は以上です」

「いや・・・その・・・」

「ちゃんと生きてます!」と立ち上がる深冬である。「父は今生きてるんです・・・さっきからもう亡くなった人みたいに言われて・・・腹が立ちました・・・・誰よりも自分に腹が立ちました・・・私も・・・もう無理だって諦めてたから・・・父にしかられます」

「・・・」

「沖田先生・・・諦めないでオペの方法を探してくださってありがとうございます・・・よろしくお願いします」

大動脈弁再置換術および心尖下行大動脈人工血管吻合手術が開始された。

手術を見守る深冬の姿に・・・壮大の心の穴は広がる。

「ああああああああ」

広大は副院長室の壁に穴をあける。

そこに榊原弁護士が入室する。

「穴があいてますね」

「最初から・・・空いてたんだよ~」

「あらあら」

「クランプから何分ですか?」

「93分です」

「ちょっと急ぎます」

ドクター沖田の両手使いに驚く一同。

「ありがとうございました」

「お疲れ様でした」

深冬は一光を出迎える。

「父を救ってくれてありがとう」

「なんか・・・腹が・・・」

「野菜ジュース飲みすぎたんじゃない?」

「・・・ああ」

颯太は手術の記録に疑問を持つ。

「また・・・出血量ヒトケタ間違えてる・・・なんだよ・・・100ccって」

「合ってますよ・・・」とナース柴田。

「え・・・心臓切ったのに?」

「オペを見ていて気付かなかったんですか・・・それでも外科医ですか」

「・・・」

颯太は・・・ドクター沖田の軍門に降った。

「さっきのオペ素晴らし・・・何してるんですか」

沖田は手術経過の綿密なレポートを仕上げていた。

「すぐに・・・書かないと忘れちゃうから」

「いつもですか」

「自分の血と肉になるまで・・・何度も回想するのです・・・人の命を無駄にはできませんから」

「今まで何件ぐらいオペされたんですか?」

「今回で6364件・・・」

「それって・・・一日二軒で十年かかるじゃないですか・・・」

「・・・」

「だから・・・どんなオペも怖くないんですか」

「怖くないオペなんてありませんよ・・・だからこそ・・・準備をします・・・オペの手順・・・考えられるリスク・・・対処法・・・そして・・・手術をして・・・さらに検証する・・・良かったらこれどうぞ・・・」

颯太は出来上がったばかりのレポートのコピーをもらった。

外科部長は颯太にアドバイスをする。

「あんなふうになったらおしまいだよ・・・いつかつぶれるからね」

ナース柴田はドクター沖田に尋ねる。

「シアトルに戻るんですか?」

「ああ」

「よかった・・・ここは先生みたいな人がいつまでもいる場所じゃないから」

「柴田さんはどうしてここにいるの?」

「他に行くとこないから・・・」

一光は院長の誘いを断り・・・渡米の準備を開始する。

だが・・・壮大は・・・ドクター沖田を引きとめた。

「病院スタッフの健康診断の結果が出たんだ・・・」

壮大は脳腫瘍の患者の頭部画像を示した。

「厄介な部分だろう・・・日本のドクターには切れない部分だ・・・リスクが大きすぎるからな」

「壮大は脳外科医じゃないか・・・それこそ俺は専門外だ」

「俺には切れないよ・・・家族だから」

「なんだって」

「深冬の画像なんだ・・・お前が切るしかない・・・それとも・・・お前・・・まだ」

「・・・」

「俺と深冬が結婚して・・・ずっとふざけるなと思ってたか」

「思ってないよ・・・そんなこと思うわけないだろ・・・」

「じゃ・・・深冬の脳腫瘍を切ってくれ・・・深冬の夫として・・・お前の親友として頼む」

沖田一光は・・・渡米を断念した。

沖田一心はベルギー国王来日のニュースを見ていた。

「国王は王弟夫人の心臓手術を日本人の沖田医師が執刀したことに感謝を述べ・・・」

「てやんでえ・・・べらぼうめ」

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Alife001ごっこガーデン。愛と生命と生活の生存の棲家セット。

アンナいや~ん。面白かったぴょ~ん。戻ってきたのね。リピしてリピしてリピしまくるアンナとダーリンの日々が!・・・ 手術室でのダーリンの指使いが素晴らしいぴょんぴょんぴょん。・・・知ってるんだったらおしえてくれよに・・・ぴょ~んとなりましたぴょん。いろいろあった去年のことは・・・みんな押し流されて・・・ただただ今のダーリンを見つめる幸せ・・・生きていてよかった~・・・生きていたよかった~そんな日曜日が毎週やってくる奇跡だぴょ~んまこクールビューティーなナースまこ参上!エリ壁に穴を開けたら御仕置きデス~!

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2017年1月16日 (月)

天文十四年、井伊直盛じぇじぇじぇと叫ぶ(杉本哲太)

戸籍謄本のない時代の話である。

生没年が明らかでないものは多い。

この物語の主人公である井伊直虎の生年月日も不明とされている。

つまり・・・井伊直満が暗殺された天文十三年十二月二十八日(1545年2月4日)に直虎が何歳だったのかは不明なのである。

ちなみに直虎の父親・井伊直盛の生年にも諸説あるが定説では大永六年(1526年)ということになっている。

つまり、直盛はまだ二十歳前なのである。

民法第731条のない時代である。

男が何歳で結婚しても構わない。

直虎の幼年期を演じる新井美羽の実年齢が10歳なので・・・仮に天文三年生れだとすると直虎は十歳前に第一子を得たことになる。

つまり・・・かなり早熟だったわけだ。

十歳で精通があることはないわけではなく特に問題はない。

ただし・・・お茶の間がそれを受けとめるかどうかは別問題なのである。

直盛を演じる杉本哲太は51歳である。

映画「白蛇抄」(1984年)で日本アカデミー賞新人賞を受賞した頃を思い出しながら見るとちょうどいい感じだ。

今川義元が「花倉の乱」に勝利し、家督を継いだのは天文五年(1536年)のことである。

義元は仏門にあったために直盛の祖父・直平が娘を側室として駿府に送るのはそれ以後のこととなる。

同様に・・・義元が井伊氏の目付(監視役)として新野左馬助親矩を送り、左馬助の妹を直盛と婚姻させたとすると天文三年~五年の誤差が生じてくる。

天文十三年に直虎は八歳だったのかもしれない。

天文六年、数えで十九歳となる今川義元は武田信虎の娘(定恵院)を正室とする。

天文七年、定恵院は今川氏真を生んでいる。

直平の娘は今川家臣の関口親永に譲渡されて・・・徳川家康の正室となる築山殿を出産する。

築山殿の生年月日は不明だが・・・つまり・・・彼女の父親は今川義元だったかもしれないのである。

で、『おんな城主 直虎・第2回』(NHK総合20170115PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は主人公・井伊直虎の幼少時代・おとわの描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。柴咲コウが十歳の少女を演じることを回避したのに・・・ヤンパパとヤンママである両親を五十代の二人が演じることになっているのでございますよねえ。これが大河ドラマの宿命というものでございましょうか。祐椿尼は実年齢的に芳根京子でも未来穂香でも松井珠理奈でも黒島結菜でも中条あやみでもよかったのに・・・。それはそれとして主人公の「純愛妄想」にやや傾斜が激しい感じはいたしますねえ。まあ・・・暴走する女主人公が・・・大好きな人がいるのかもしれませんが・・・。少なくとも・・・今川の目付である新野左馬助親矩の妹である直虎の母の苦しい立場というものはもう少し見せた方がコクが出るような気がします。兄妹の関係がほとんど描かれておりませんからね。そういう大人の事情が理解できないからこその「子供の愚かさ」をハラハラ見守りたいものです。なにしろ・・・許嫁の親が殺された直後の話なのでございますから・・・。井伊谷の治安が少し・・・良すぎるのかもしれません。あるいは・・・よくある総領の地位をめぐる叔父と甥の確執成分が足りないのかもしれません。普通に考えて・・・直盛と小野和泉守は一蓮托生でございますよね。二人の父親はしめし合わせて娘と息子を結婚させようとしていますよね。井伊谷をなんとかする会的に・・・。袖が浜漁協の組合長もいることですし~。

Naotora002 天文三年(1534年)、織田信長生れる。天文四年(1535年)、今川氏親の娘(瑞渓院)、北条氏康の正室となる。天文五年(1536年)、北条氏綱が東駿河に侵攻。天文六年(1537年)、豊臣秀吉生れる。室町幕府第十二代将軍・足利義晴が退避していた近江から京に帰還。天文七年(1538年)、氏綱は小弓公方・足利義明を討ち取る。天文八年(1539年)、氏綱の娘(芳春院)が古河公方・足利晴氏の継室となる。天文十年(1541年)、武田晴信が父・信虎を追放。将軍・義晴、近江に再度退避。氏綱が死去。天文十一年(1542年)、晴信は諏訪頼重を自害させ信濃国諏訪を領土化。徳川家康生れる。将軍義晴、京に帰還。織田信秀と今川・松平連合軍が三河国小豆坂で最初の激突。天文十二年(1543年)、晴信は信濃国小県長窪城の大井貞隆を自害させる。将軍義晴、近江に三度退避。長尾景虎が元服する。天文十三年(1544年)、晴信は氏康と同盟を締結。今川義元は交戦中の北条氏に対して武田氏を通じて交渉を行う。景虎は初陣の栃尾城の戦いで越後国人衆を撃破。天文十四年(1545年)正月、亀之丞(井伊直親)は信濃国伊那郡松源寺へ落ち延びた。義元は北条氏に奪われた東駿河の奪回作戦を準備していた。

駿府は東国の都と呼ばれ栄華の中にあった。

京の都を模した街には正月の賑わいがある。

今川義元の父・氏親の代に遠江国守護の斯波氏を退け、駿河国、遠江国の二国の守護となり、さらに三河国を手中にしつつある。

かっての臣下であった北条氏に東駿河を奪われ、甲斐国の武田氏からの圧力も受けているが・・・義元は太守と呼ばれるに相応しい軍事力を築きつつある。

義元の住む今川館に近い今川関口屋敷で・・・自分は・・・かって義元の妻であった・・・と佐名は密かに想う。

今は・・・武田から来た姫が義元の正室となっている。

武田の姫は・・・今川家の嫡男を生んだ。

自分にも・・・機会はあったと佐名は幼い娘・瀬名を見つめて思う。

父・直平の命を受け・・・人質として今川屋敷に送られ・・・義元と情を通じて・・・もしも男子を生んでいれば・・・側室としてそれなりの地位を与えられただろう。

しかし・・・生れたのは女子だった。

佐名は・・・今川が武田と縁組するにあたり・・・一門衆とは言え臣下の今川刑部少輔親永に生れた女子とともに下されたのである。

佐名は屈辱を感じた。

自分も・・・井伊の姫だったのだ。

だが・・・国人衆の一人に過ぎない井伊家と・・・二カ国の守護である今川家の間には恐ろしい実力の差があった。

庭で・・・鳥が囀った。

佐名は庭先に出る。

庭には忍びの者がいた。

「光月法師か・・・」

「御意」

「兄の子は・・・どうなった」

「・・・おちのびましてございます」

「面倒なことだな・・・新野殿が責められよう」

「小野和泉守様にとっては・・・それが狙いでございましょう」

「法師は・・・小野の家のものであったな」

「今は・・・佐名姫様の影のものでございます」

「父上は達者か・・・」

「少し・・・御気落ちのようでした」

「欲をかきすぎたのじゃ・・・」

「・・・」

「父上にはこれ以上・・・咎められぬことのなきよう・・・務めると伝えよ」

「畏まって候」

光月法師は消えた。

修験の道を極めた法師は最初からそこにはいなかった。

気をこらした幻を佐名に見せていただけなのである。

井伊のくのいちである佐名は・・・夫である親永を操るための方策を案じはじめる。

佐名はまだ・・・自分の容姿に自信を持っていた。

今川にとって新参者である井伊が臣下として生き延びるために・・・佐名のできることをするしかないのだ。

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2017年1月15日 (日)

スーパーサラリーマン左江内氏(小泉今日子)ダンスがキレッキレなのは(早見あかり)アイドルだからだよ(島崎遥香)

大激戦の土曜日である。

あぶなく「なんどめだハッピーフライト」に逃避しそうになったよ。

レギュラードラマで見たいよね。

毎週、飛行機が墜落しそうになるんだよね。

いろいろなところから圧力がかかるわっ。

とにかく・・・年を越している「リテイク 時をかける想い」と「忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜」があるわけだが・・・とりあえず・・・二夜連続あばずれ妻ということで・・・これだ。

主人公も二夜連続で映画「舞妓Haaaan!!!」(2007年)の二人だよな。

少し「ダメおやじ/古谷三敏とファミリー企画」(1970年)が入っているんだよな。

藤子・F・不二雄が長いトンネルを抜けてドラえもんで「神」となった渦中の青年マンガだ。

「パーマン」からほぼ10年後の1977年の作品だからなあ。

40年前と・・・日本は本質的には何も変わっていない・・・というのがよくわかる。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第1回』(日本テレビ20170114PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。脚本・演出家もまた深夜の長いトンネルを抜けてゴールデン・タイムに帰って来たのだな。この作品で・・・この枠で・・・よかったと思う。大丈夫だ。「東京DOGS」のことなんか誰も覚えていないさ。楽しくやってくれ。

左江内氏(堤真一)は小心者の万年係長である。

「万年係長」とはうだつがあがらず一万年たっても係長どまりの意味である。

左江内氏は一家の主だが名前はまだない。

左江内家の事実上のボスは妻の円子(小泉今日子)である。家事は一切せずに・・・衰えぬ美貌によって夫の愛情を搾取しまくるのである。

夫が外で何をしているかについてはほぼ興味がない。

ただし・・・浮気だけは許さないらしい。

そして・・・他人による夫の悪口も許さない・・・良妻なのである。

朝食を作り、高校生の娘のためにお弁当を作るのも左江内氏の仕事である。

日曜日は小学生の長男・もや夫(横山歩)と遊ばなければならない。

しかし、もや夫は友達とゲームセンターで遊びたいのである。

もや夫に口止め料として五百円を支払い・・・左江内氏は公園で休息する。

そこに謎の老人(笹野高史)が現れて「スーパーマンにならないか」と言うのである。

左江内氏が拒絶すると・・・老人は飛び去っていった。

驚愕した左江内氏は円子に相談する。

「スーパーマンになって世界を救えと言われたんだ」

「世界の前に家を救いなさいよ」

「はい・・・」

左江内氏は恐妻家なのである。

左江内氏の職場は・・・フジコ建設営業3課である。

上司の簑島課長(高橋克実)は仕事上のミスの責任の所在を追及する。

ミスをしたのは下山(富山えり子)だが・・・左江内氏の部下の蒲田(早見あかり)は責任をかぶろうとする・・・それを制し・・・左江内氏は発言する。

「ミスをしたのは・・・」

「ミスをしたのは・・・」

「下山くんです」

ハラホレヒロハレ・・・である。

「ここは・・・係長が責任を負って男をあげるところでしょう」

強い上昇志向の持ち主で「君のためなら死ねる岩清水」一族の呼び声もたかい池杉(賀来賢人)が批判する。

「申しわけない・・・しかし・・・私は責任を追うことが苦手なのだ・・・小学生の生き物係をしていたときもハムスターが死んで」

「わかりました・・・とにかく・・・係長に頼ってはいけないということですね」

蒲田は左江内氏に冷たい視線を注ぐのである。

仕事中に・・・円子から電話がある。

「はね子がお弁当忘れたから届けて」

「無理だよ・・・これから会議なんだ」

「私だってこれから踊る円子御殿会議があるのよ」

「単なるママ友の集いじゃないか」

「とにかくアペタイザー(前菜)が出る頃だから」

仕方なく社を出る左江内氏を待ち伏せる謎の老人。

「スーパーマンスーツを着れば・・・弁当届けて・・・会議にも間に合うぞ」

「お借りします」

スーパーマンスーツを着用した左江内氏は高いビルもひとっ飛びなのである。

こうして・・・中年スーパーマン左江内氏・・・が誕生したのである。

スーツからは「忘却光線」が常に発せられており・・・左江内氏がスーパーマンであることの秘密は守られるのである。

しかし・・・一度、スーパーマンになってしまえば・・・その指名から逃れることはできない。

「助けを求める声」が耳に直接届くのだった。

円子たちにお風呂掃除を命じられた左江内氏はスーパーマンに変身してお風呂掃除を手早く済ませて救助活動を開始する。

公園で二人組の不良に絡まれて困惑するアベック。

「誰か助けてください」

「へへへ・・・待ってな・・・こいつを叩きのめしたら可愛がってやる」

「待ちなさい」

「なんだ・・・お前は」

不良たちは左江内氏に殴りかかるが・・・弾丸よりも早く動くことが出来るスーパーマンの敵ではない。

左江内氏が何気なく突き出した手で・・・数十メートルも吹っ飛ぶ不良・・・。

「おっさん・・・何者だ」

「ただのサラリーマンです」

「ば・・・化け物」

不良の一人は気絶し、残った一人は逃げ出す。

「では・・・私はこれで・・・」

左江内氏が去ると・・・その存在はたちまち忘れ去られてしまうのだった。

「忘忘忘忘忘・・・」と忘却光線が出ているからだ。

仕事中に「誰か・・・なんとかしろ・・・」と声がする。

「ちょっとトイレに・・・」

トイレから飛び出すスーパーマン。

女性が一人・・・飛び降り自殺をしようとしていた。

現場にやってきたのは山賀ヒロユキでもメレブでもない小池刑事(ムロツヨシ)と赤井タカミでも神堂大道でもない警察官刈野(中村倫也)だった。

「大丈夫だ・・・こういう時は相手の立場にたって・・・」

「さようなら」

「え」

飛び降りる女性・・・しかし左江内氏が空中でキャッチして・・・地上に降ろし・・・テレマーク姿勢を取らせるのである。

「私には価値がない」と思っていた女性は「奇跡」を成し遂げたことで自信を回復したらしい。

それが・・・左江内氏の助けだとは誰も気がつかない。

夜の接待中にも助けを求める声が届く。

「ちょっとトイレに」

「またですか・・・」

池杉は呆れるのだった。

火事である。

老女が叫ぶ。

「部屋にはまだ小百合ちゃんが」

現場に駆け付けた小池刑事と刈野の警察官コンビ。

「娘さんですか・・・それともお孫さん」

「犬よ・・・大切な家族なの・・・」

「犬ですか」

「犬か~」

しかし・・・左江内氏は燃えさかる炎もなんのそのである。

小百合は大火災の中で・・・餌を無心に食べていた。

そのメンタルの強さを羨ましく思う左江内氏である。

気がつくと・・・小池刑事は小百合のケージを抱いている。

「いつの間に・・・」

「いやあ・・・バックドラフトがね・・・バックからドラフトって」

失われた記憶は小池刑事の妄言で補完されるらしい。

子供たちが寝坊して遅刻しそうになれば・・・スーパーマンに変身して送迎である。

「すげえ・・・ドラえもんだよ」

「ははははははは」

「ドラえもんじゃないでしょ・・・」

「ははははははは」

満員電車による通勤地獄からも解放され・・・テレビ番組の気になる秘湯までもひとっ飛び・・・。

スーパーマン能力の私的流用に歯止めがなくなる左江内氏だった。

円子は夫の浮気を疑うが・・・高速指回しによるトンボ捕獲催眠法で窮地を乗り切る左江内氏・・・。

しかし・・・ある日・・・簑島と池杉が忘れた書類を届けに行くためにスーパーマンに変身し・・・強盗事件を無視してしまう左江内氏。

強盗の被害者は・・・拳銃で撃たれて重態となってしまうのだった。

責任の重さに耐えきれずカラオケで恋ダンスを歌い踊る左江内氏・・・。

カラオケ店の店員(佐藤二朗)は仏のように問う。

「お客さん・・・延長しますか」

「します」

責任から逃れるためにとりあえず偉い人の銅像にスーパーマン・スーツを着せて後ろめたさに背を向ける左江内氏である。

しかし・・・翌日・・・強盗事件の犯人は・・・都立源高校に立てこもるのだった。

はね子は担任教師や同級生たちと人質になってしまう。

左江内氏は・・・スーツを捜すがすでに清掃車の中に・・・。

仕方なく・・・左江内氏は教室に忍びこむ。

「殺されてしまうかもしれない・・・最後の思い出にキスしよう」と言い出す同級生のサブロー(犬飼貴丈)・・・嫌がるはね子を興味深く見守る同級生のさやか(金澤美穂)だった。

はね子もさやかも実年齢(22)のなんちゃって高校生である。

ちなみに蒲田は実年齢(21)だが三月に(22)であるそしてはね子は三月に(23)なのだ。

だが・・・はね子も蒲田もまだまだいけるぞなんちゃってである。

そこへ顔を出す左江内氏。

「パパ」

犯人(塚本高史)は血相を変える。

「なんだと」

「パパが・・・助けにきてくれたらと・・・」

「黙ってろと言ったはずだ・・・罰として撃つ」

「待ってくれ・・・」

「パパ・・・」

「本当にいたのか・・・」

「やめるんだ・・・今ならまだ罪も軽い」

「強盗傷害はすでに重罪なんだよ」

「家族が悲しむぞ」

「そういう話は嫌いだ」

犯人は発砲する。

驚いて逃げ出す左江内氏。

そこへ・・・謎の老人がスーツを持って現れる。

「どうした・・・責任を負うのは嫌なんじゃないか」

「家族のこととなれば・・・別です」

「人間だものな」

「・・・」

「まあ・・・いいさ・・・最初はそういう些細な責任から始めればいい」

「・・・」

「世界を救うのはその後だ」

左江内氏はスーツを着用した。

ベローン・・・いやドローンカメラによる偵察映像は何故か全国のお茶の間に中継されているのだった。

固唾を飲んで見守る一同。

特に言及はないが・・・画像や動画でも忘却光線は有効なのだろう。

記録に残っても記憶には残らないのだ。

「なんだ・・・お前は」

「変なおじさんではありません」

「まず・・・お前を殺してやる」

「やめて・・・パパを撃たないで」

涙ぐむはね子だった。

犯人は発砲するが・・・左江内氏は不死身だ。

「くそ・・・じゃ・・・娘は殺す」

「それだけはやめてくれ」

「じゃ・・・土下座しろ」

土下座する左江内氏。

「よし・・・娘を殺すぞ」

「約束が違うじゃないか」

「約束なんかしてない・・・そうだ・・・ついでにお前の一家・・・皆殺しだ・・・家族を呼べ」

「それは無理だ」

「なんだと」

「ママは一日十五時間眠らないと・・・死んじゃうタイプなんだ・・・今も昼寝中だ」

「ふざけんな・・・俺が電話してやる」

「やめてくれ」

妻が寝ているところを起こされて不機嫌になるのを惧れた左江内氏は思わず犯人を吹っ飛ばすのだった。

犯人を小池刑事に引き渡す左江内氏・・・。

左江内氏が去ると手柄は小池刑事のものに・・・。

「気がついたらダイがハードにね」

教室では・・・はね子が泣いていることに気がつく。

「私・・・なんで泣いているのかしら」

「お父さんが助けにきてくれたからじゃないの」

「でも・・・逃げちゃったし・・・」

また・・・朝が来る。

「パパ・・・私のジャージ知らない」

「ママに聞けよ」

「無理よ・・・ツタンカーメンだから」

円子は朝・・・棺に入ったように眠るのだった。

「トイレのオバケがでないように電球の買い置き忘れないでね」

「パパの目玉焼き・・・もう少しなんとかならないの」

「・・・」

左江内氏の物語はこうして始ったのだった。

そして・・・一同は踊るのだった。

小泉今日子 100点

島崎遥香   100点

早見あかり  100点である。

キレッキレですから・・・。

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2017年1月14日 (土)

下剋上受験(深田恭子)先生は格差を認めません(小芝風花)お母さん、娘をやめていいですか?(波瑠)できるものならば~(石井杏奈)

激戦の金曜日である。

もうなんだか殺意に満ちているわけだが・・・思わず「なんどめだナウシカ」に逃避しそうになったよ。

「連続ドラマ」で見たいよね。

毎週、巨神兵をナウシカが撃破するバトルアクションファンタジーで・・・。

予算がいくらあっても足りんわっ。

はまるとこわいベテラン作家の激突である。

「お金がない!」(1994年)と「白い巨塔」(2003年)みたいな・・・。

どこまでさかのぼってんだよっ。

結局、初回では絞り切れなかった・・・。

・・・単に深田恭子と波瑠をどちらも捨てられなかっただけだろうが。

まあ・・・そうなんだけどね。

で、『下克上受験・第1回』(TBSテレビ20170113PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・福田亮介を見た。親が中卒だから受験に不利ではなくて・・・合格するために勉強するノンフィクションが原作である。ある意味で「勉強しない子供たち」や「すでに普通の中学生」に真っ向からケンカを売って行くわけである。実に清々しいぞ。平和な社会では普通の能力の人々は学歴に頼るしかないわけである。人工知能が人間の労働分野をどんどん狭めていく時代なのだ。偏差値が低くても生きていけるが・・・それだけだと厳しいぞという話なのである。それが嫌なら革命とか戦争に逃避するしかなくなるからね。

スマイベスト不動産の営業マン・桜井信一(阿部サダヲ)は元気が取り柄の働き者である。

営業部長の長谷川(手塚とおる)から後輩の楢崎哲也(風間俊介)と共に「タワーマンション」の販売を命じられる。

面倒見のいい信一は楢崎の世話を焼く。

楢崎も素直な好青年だった。

顧客は安西夫妻(神保悟志・山下容莉枝)である。

会話の流れで出身大学の話となり・・・安西夫妻と楢崎が同じ東西大学出身とわかって盛り上がる・・・しかし・・・信一は中卒なのである。

信一の心に何か・・・毒々しいものが滴り落ちる。

信一の地元の仲間たち・・・居酒屋店主の松尾(若旦那)、理容師の竹井(皆川猿時)、酒屋の梅本(岡田浩暉)、そして大工の杉山(川村陽介)もみな・・・中卒だった。

和気藹々の仲間たちに囲まれて・・・特に不満のない信一。

信一には美人の妻・香夏子(深田恭子)がいる。元ギャルで趣味は韓流ドラマをレンタルして視聴すること。気立てのいい素晴らしい妻である。そして中卒なのだった。

小学校五年生の佳織(山田美紅羽)は信一の目から見て賢い子だった。

たまたま受けた全国一斉学力テストの結果を見るまでは・・・佳織が一位になるのではないかと・・・信一は期待していたのだった。

しかし・・・結果は・・・最下位の方に近かったのである。

またしても・・・信一の心に何か・・・毒々しいものが滴り落ちる。

大工の杉山の師匠は・・・信一の父親の一夫(小林薫)である・・・六十五を過ぎても現役の一夫だったが・・・現場で足を滑らし骨折し・・・入院中である。

入院中のテレビで大企業二代目社長の徳川直康(要潤)の姿を見た一夫は何故か癇癪を起こし・・・テレビを破壊しようとして強制的に退院となる。

香夏子は義父を迎えてすき焼きで退院祝いを行う。

テレビでは・・・レンタルDVD店の店員が誤認逮捕されたというニュースが流れていた。

「六人は逮捕されなかったんだな」

「六人は逮捕されなかったんですねえ」

父親と妻の会話に・・・違和感を覚えた信一は・・・娘にスマホで確認させる。

「五人逮捕ではなくて誤認逮捕だよ」

「だから六人じゃなかったんだろう」

どうしようもなく・・・信一の心に何か・・・毒々しいものが滴り落ちる。

顧客の指名でタワーマンションの営業から外された信一は駅前の物件を若い夫婦に売りこむ。

タワーマンションとの落差は明確なお安い部屋なのである。

しかし・・・若い妻(村井美樹)は「凄く素敵ね・・・でも高卒の私たちには少し贅沢かも・・・」

信一の心にとてつもなく毒々しいものが突き刺さるのだった。

佳織が通う小学校の担任の先生・小山みどり(小芝風花)は「差別的な発言は哀しい」というのが口癖である。

香織のクラスメートで広末涼子の少女時代を演じられそうな美少女のアユミ(吉岡千波)やコマツコになれそうなリナ(丁田凛美)は陰口を言う。

「先生・・・また同じ話をしてるよ」

「もう・・・聞き飽きたよねえ」

「そういえばDVD屋の店員・・・逮捕されたって」

「五人逮捕だって」

「へえ・・・一人じゃなかったんだ・・・」

「五人も逮捕するのは大変だよねえ」

香織の心にも何か・・・毒々しいものが滴り落ちるのだった。

香夏子は乗り気ではなかったが・・・信一は進学塾の入学テストを受けることを香織に奨める。

その気になった香織だが・・・結果は偏差値41という判定である。

学習塾の担当者(野間口徹)は微笑む。

「大丈夫ですよ・・・今から基礎をやりなおせば」

「東大に行けますか・・・」

「東大?・・・ふはっ」

父と娘の心にはそれが嘲笑に感じられた。

「ねえ・・・塾に入らないの」

「・・・そうだなあ」

「香織・・・勉強しなくていいの」

「・・・そうだねえ」

「そしたら・・・香織・・・中卒かな」

信一の心は何かに撃ち抜かれる。

信一は悪夢を見た。

香織は中卒の男と結婚していた。

「そのお金だけはやめて・・・ミルク代なの」

しかし・・・中卒の男は家を出る。

乳飲み子をかかえて・・・ミルクを万引きする香織。

警視庁の特殊部隊が出動し・・・包囲される香織。

「やめてくれ・・・その子は・・・悪くないんだ・・・中卒なだけなんだ」

特殊部隊の隊長は哄笑する。

「ははははは・・・六人逮捕してやったぞ・・・ははははは」

信一は父親と妻と娘に宣言する。

「中卒だって・・・真面目に働けば幸せになれるって・・・信じて生きてきた・・・でも・・・本当はガラスの天井があって・・・中卒の幸せの世界は狭いんだ・・・俺たちはもうやり直せない・・・でも・・・香織ならまだ・・・一流中学を目指せる」

「塾に行くの」

「いや・・・お父さんが教える・・・お父さんは・・・香織と一緒に勉強したい」

「・・・」

娘は答えなかった。

信一は・・・その理由に思い当たる。

(そうだ・・・俺は娘のためにではなく・・・自分自身のために・・・それを求めたのだから)

信一は・・・中卒の日常に戻ろうと決意した。

しかし・・・娘の中で「それ」はゆっくりと膨れ上がって行く。

下校の時間・・・。

「今日は・・・何して遊ぶ」

「ごめん・・・今日は・・・」

香織は走り出す。

香織は街中でポスティング中の信一に走りよる。

「お父さん」

「香織」

「私・・・一流中学に入りたい」

こうして・・・父と娘は一流中学を目指すのだった。

何やら・・・因縁のある徳川直康のゴージャスな住居で・・・娘の麻里亜(篠川桃音)がスタンバイ中である。

「お嬢様・・・制服をこんなところに脱ぎっぱなしですよ」

「もう着ないから捨てちゃって」

何やら・・・不敵なライバルらしい・・・。

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で、『お母さん、娘をやめていいですか?・第1回』(NHK総合20170113PM10~)脚本・井上由美子、演出・笠浦友愛を見た。妄想的には軽いタッチに挑もうとして加減がわからない感じになっている脚本家だが・・・十歳年上の人が結構、好調なので波のようなものがあるのかもしれない。今回はねっとりといい感じに立ち上がっているような気がする。母と娘、娘と彼氏の三角関係の方向の方が好みだが・・・ミセス・ロビンソンをやりたいような気配も感じる。やるなら父と息子を一人での方向が転換しているわけだが・・・すでに娘の恋人である松島太一(柳楽優弥)がいかにも上司の立原真紀(壇蜜)と性的交渉があるニュアンスが漂っていて・・・危うい感じもするのだった。

まあ・・・基本的には悩める早瀬美月(波瑠)が見たいわけなので・・・。

冒頭・・・水族館デートをする美月のお相手は年上の男性(眞島秀和)である。

交際三ヶ月で三回目のデートなのだが・・・美月は性的接触を避ける。

手を握られるのも嫌なので・・・一種の潔癖症・・・あるいは二十五歳の処女なのかもしれない。

(やっぱり合わないみたい)

美月は母親の顕子(斉藤由貴)にメールを送る。

(そうだと思ったわ)

すかさず母親から返信がある。

なにしろ・・・母親は変装して・・・娘のデートを尾行していたのである。

母親は娘に気付かれぬように一足先に帰宅するのだった。

五十歳の母親と・・・二十五歳の娘・・・その関係は・・・異様にも感じられる種類のようだ。

美月は・・・ファッションについて・・・母親の言うなりのコーディネートを行う。

ワンピースはあまり好きではないが・・・母親が似合うと言うので着用するのだ。

母親の顕子は大学時代からの友人である牧村文恵(麻生祐未)の主宰する「人形教室」でアシスタントをしている。

早瀬家には作りかけの人形が見え隠れする。

それは・・・美月が顕子の人形であることの象徴なのだろう。

美月は母親に支配されることに表面的には満足している。

しかし・・・心のどこかで解放を求めているのか・・・あるいは・・・母親の手が届かない現実のストレスからか・・・円形脱毛症を発症している。

美月にとって・・・それが唯一の母にも言えない秘密だった。

顕子には老人ホームに入居中の母親・川端玲子(大空眞弓)がいる。

玲子は顕子を呼び出して・・・「美月を連れてきなさいよ」と言う。

玲子は明らかに顕子を支配してるが・・・さらに孫の美月も支配しようとしているのだった。

「あんたには・・・裏切られたから・・・私には美月しかいないのよ」

顕子の裏切りとは食品会社に勤務する早瀬浩司(寺脇康文)との結婚を意味するのかもしれない。

浩司はマイホームの建設に着手しているが・・・実は職場ではリストラ寸前の立場にある。

退職を促すための閑職に追いやられているのである。

嫌がらせのような単純作業をする仲間たちは「この状況でよく思いきったな」と言う。

「だからこそさ」と嘯く浩司なのである。

早瀬邸新築を担当するハウスメーカー「オアシスハウジング」の工事部主任が松島太一である。

「字は違うのですが・・・母と同じアキコという名前なので・・・なんだか他人事とは思えないのです」と顕子に媚びる太一。

さらに「幼い頃に両親が離婚して母とは疎遠になってしまったので・・・仲睦まじいご家族に憧れます」などとサービスを追加するのだった。

「またサービスしてるのね」と設計技師の立原真紀は太一を揶揄する。

美月は私立女子高の英語教師である。

受け持っているクラスの生徒・後藤礼美(石井杏奈)の無断欠席が気にかかっている。

そういうことも母親に相談する美月である。

(もう・・・どうしていいのかわからない)

(家庭訪問してみれば・・・)

母親に言われるままに・・・後藤家を訪ねる美月。

礼美は幼い弟がいて・・・土産のドーナツを美味しそうに食べる。

そこへ礼美の母親(池津祥子)が帰宅する。

「なんだい・・・あんた・・・勝手に」

「担任の早瀬と申します」

「何しに来たんだ」

「娘さんのことで相談が・・・」

「あんたに何がわかるんだ・・・綺麗な顔しやがって」

「お母さん・・・やめて」

「生意気な口を聞くんじゃないよ」

粗暴な礼美の母親に恐怖を感じる美月だった。

母親のアドバイスに従って・・・問題が生じた時・・・美月のストレスは最高潮に達するのだ。

母親への依存に現実が介入してくる不安が生じるのである。

太一が美月をデートに誘い・・・顕子は賛成する。

「あの人はあなたに合うな気がするわ」

人形にボーイフレンドの人形をあてがうように太一を推す母親・・・。

美月は母親のコーディネイトしたファッションに身を包み「奇妙な写真展」にやってくる。

「君の部屋の壁紙だけど・・・本当は君が選んだ方が・・・素敵なんじゃないかな」

「え」

「君とお母さんは・・・面白い・・・奇妙な関係じゃないかと思ってね」

「・・・」

美月は・・・反発するべきところで・・・太一に吸引されるのだった。

その時・・・美月は・・・変装した母親が自分を監視していることに気がつく。

それはまるで・・・後頭部の円形脱毛症を母親が見透かしているような不安を美月に与えるのだった。

突然・・・美月は太一の手をとって・・・逃避行を開始する。

逃げなければいけない・・・そうでなければ・・・美月は顕子に食われてしまうのだ。

顕子は・・・娘が自分以外の誰かに奪われるのではないかと恐怖した。

そういう方向の三角関係だといいなあ・・・。

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2017年1月13日 (金)

就活家族~きっと、うまくいく~(三浦友和)パパからお小遣いをもらったよ(前田敦子)嫌われる勇気(香里奈)ナチュラル・ボーン・アドラーだよ(桜田ひより)

予定通り・・・谷間が濃厚な木曜日である。

呪われたように不吉な出来事に襲われ続けるがオカルトものではないホームドラマ。

目的達成して自己実現することだけが正しいような自己啓発的刑事ドラマ。

どちらも・・・エンターティメントとは言えないのではないかと思う。

(個人の感想です)

金銭目的のために周到な計画を実践して詐欺を完遂するのも全体的な個人が相対的マイナスから相対的プラスに向かって行動するアドラー的枠組みの中に納まってしまうからな。

ナチュラル・ボーン・キラーズはナチュラル・ボーン・アドラーだと言っても過言ではないのである。

まあ・・・ほどほどにしておけよ。

ポジティブ・シンキングなんてくそくらえなんだから。

おいおいおい。

で、『就活家族~きっと、うまくいく~・第1回』(テレビ朝日20170112PM9~)脚本・橋本裕志、演出・秋山純を見た。大手鉄鋼メーカー・日本鉄鋼金属の人事部長・富川洋輔(三浦友和)は人事担当常務・織部和久(山田明郷)から「リストラ」の手腕を認められ役員昇進の内定を伝えられる。私立中学校の国語教師を勤める妻・水希(黒木瞳)、宝飾メーカーに勤める長女・栞(前田敦子)、三流大学の学生で就職活動中の長男・光(工藤阿須加)という家族のために地道に働いてきた洋輔は「マイホーム購入」という男の夢に手が届くところまで昇りつめたらしい・・・。

しかし・・・突然、富川家の前途には暗雲が立ち込める。

結婚退職をする予定だった品質管理部社員・川村優子(木村多江)が「破談になったので・・・退職のとりけしを願いたい」とやってきたのが恐ろしい呪いの始りだったのである。おそらく優子は貞子的な何かだと思われます。

少し愚鈍なところのある光は次々と就職面接に失敗。

就職活動に疲れた帰り道・・・母親の水希がホストクラブから出てきたところを目撃してモヤモヤするのだった。

しかし・・・これについては水希は「ホストクラブに出入りしている生徒のための生活指導のため」とまことしやかに説明する。

一方で・・・電車の中で痴漢を発見した光は女性を助けようとして逆に痴漢の疑いをかけられてしまう。

「僕はやってません」

「でも・・・現行犯ですから」

駅員と被害者に責められて絶句する光である。

駆けつけた水希は「状況を確認しましょう」と強気の姿勢で臨み・・・光には犯行が難しいことを立証してしまう。

「冤罪じゃないですか・・・名誉棄損で訴えますよ」

母の迫力に圧倒される光なのである。

栞は配置転換を希望して外商部一課の真壁雄斗(渡辺大)に接近する。

外商部一課の課長は中原綾子(山本未來)であり・・・いかにも恐ろしそうなのだった。

就職活動が上手くいかない光の前には就職活動アドバイザーで「国原就活塾」の塾長・国原耕太(新井浩文)が現れる。

勧誘ではなくアンケートに答えてもらうだけでパンフレットが無料で入手できるというキャッチ・セールスに簡単にキャッチされる光だった・・・。

もう完全に恐ろしいわけである。

洋輔は社長の的場(中丸新将)に呼び出される。

「君が面接で落とした息子の父親からクレームが入った」

「しかし・・・縁故入社は避けるというのが社長の方針でした・・・」

「事情が変わったのだ・・・ヤマト銀行の融資が打ち切られたらわが社は経営上の危機に陥る・・・君が落したのは頭取の息子なんだよ」

「・・・」

「再面接したまえ」

再面接を拒む「ヤマト銀行」頭取の息子・加藤誠(柾木玲弥)に縋る洋輔である。

「君の事情にも配慮するべきだった」

「事情って・・・」

「面接に遅刻したことだよ」

「単に寝坊しただけですよ」

「・・・」

「どうしても・・・というのなら土下座してください」

大人しく土下座する洋輔である。

「くそったれな面接官ですみませんと謝ってください」

「くそったれですみません」

「日本鉄鋼金属なんてくそだまりだと」

「私はクソですが・・・会社はクソではありません」

「そうですか・・・僕は・・・プロのミュージシャンになろうと思います」

「え」

やけくそになってドラムを叩く洋輔だった。

富川家から現金三十万円が紛失するという事件が起きる。

「国原就活塾」への三十万円の領収書が見つかる光。

「お前ってやつは・・・」

「違うよ・・・自分でローンを組んだんだよ」

「・・・」

「もう一度探しましょう」と栞がとりなす。

しかし・・・三十万円を着服していたのは栞だった。

「パパからお小遣いもらっちゃった」

「えええ」

真壁とのデート費用に三十万円を使い、腰をふる栞だった。

蒼ざめた顔で・・・出勤した洋輔・・・。

「よくやった・・・ヤマト銀行の頭取から息子が世話になったと電話があって融資もしてもらえる」

「え」

「だが・・・もう一つ問題がある」

総務部長の綿引(神保悟志)がバーで撮影した洋輔と優子のツーショット写真を見せる。

「川村優子が君をセクハラで訴えると言ってる・・・彼女は君の子供を堕胎したそうだな」

「そんな・・・事実無根です」

「君は・・・それを証明しなければならん・・・とにかく・・・川村優子を説得しろ」

「・・・」

洋輔は顔色を失った。

洋輔は優子に電話をかける。

「・・・私に何か御用ですか」

これは・・・遊園地の嫌なアトラクション的な何からしい・・・。

一難去ってまた一難の連打・・・テンポがあって面白いと言う人もいるかもしれません。

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で、『嫌われる勇気・第1回』(フジテレビ20170112PM10~)原案・古賀史健(他)、脚本・徳永友一、演出・池澤辰也を見た。過去の出来事に囚われず目的達成のために何をするべきかを考える未来志向で事件を解決するという・・・明らかに頭がおかしいことになっている刑事の物語である。ある意味で一同爆笑するしかないわけである。アドラーは「他人と協力する共同体感覚」を重視しているが・・・生れついてのアドラーであるらしい主人公は「私をどう評価するか」は「私の役割ではない」と排他的とも言える言動を展開する。もちろん・・・主人公のライフスタイルとミステリ部分はほぼ無関係である。人間関係で悩まない最大の秘訣は人間関係などないと考えることだからな・・・おいおいおい。

警視庁捜査一課に異動してきた青山刑事(加藤シゲアキ)は相棒が携帯電話を携帯しないタイプと聞いて戸惑う。

「雑誌モデルが殺害された現場に迎え」と半田係長(升毅)は青山刑事に指示を下す。

青山のパートナーとなる庵堂蘭子(桜田ひより→香里奈)は断定的な口調で他者の推測を否定するタイプの刑事だった。

他人の顔色を窺うことが社会人としての常識と信じる青山刑事は庵堂の言動に戸惑うのだった。

二人目の殺人が起こり・・・現場の様子から「雑誌の表紙に関連性がある」と推理する刑事の浦部義孝(丸山智己)は殺された二人のモデルのライバルである真紀(南野陽子)を疑うのだが・・・庵堂蘭子は明確に否定するのだった。

「出た」と鑑識課の梶準之助(正名僕蔵)が呟くほどに庵堂蘭子は常に明確に否定するのである。

そんな庵堂蘭子をかわいい鑑識係の村上由稀菜(岡崎紗絵)は敬愛しているらしい。

遺体を検死した帝都大学医学部助教の相馬めい子(相楽樹)の見解も「妄想」と断定する庵堂蘭子なのである。

すでに・・・庵堂蘭子は真紀の主宰する美容教室に入会し・・・独自の潜入捜査を開始しているのだ。

同行した青山刑事も巻き込まれて入会しているのだった。

「何故・・・こんなことを・・・」

「犯人を発見するためです」

「?」

真紀は会員たちに「美容のための飲料」などを高額で売りつけていた。

とりまきの一人はマキラー(石田ひかり)であり、真紀のファッションを追従しているのだった。

「素敵なコートね」とマキラーを褒める真紀。

「寒いのにファーをしないのは貧乏くさい」と庵堂蘭子。

「なんですって・・・」

「私は嘘が嫌いなので」

「あなた面白いわね」

とりまきの一人はランラー(青山倫子)になるのだった。

「はっきりものを言えて素敵ですね・・・私にはとても真似できないわ」

「それはあなたがそのように決心しているからです」

「え」

「はっきりものを言わないことを・・・自分が素敵にはならないことを・・・自分自身で決めているのです」

「・・・」

庵堂蘭子の言動に違和感を覚える青山刑事。

「でもな・・・あれがうちのエースなんだよ・・・詳しいことが知りたかったら帝都大学文学部心理学科の教授に会ってこい」

半田係長のアドバイスに従い・・・可愛い助手の間雁道子(飯豊まりえ)のいる部屋を訪ねるのだった。

「彼女はナチュラルボーンアドラーなんだよ」と解説する大文字教授(椎名桔平)である。

「生れついての・・・アドラー?・・・突然、レストランで発砲するんですか」

「アルフレッド・アドラーは個人心理学の創始者だ」

「個人心理学?」

「すべての人間がそれぞれがマイナーと感じる場所からメジャーと感じる場所へ動いていくということが前提の前世紀の心理学だ」

「どういうことですか」

「つまり・・・勇気があれば人間には不可能はないという心の話だよ」

「勇気があれば・・・」

「そうだ・・・たとえば・・・ブサイクだからもてないと思いこんでいる人間がいるとする」

「はあ・・・」

「勇気を出して整形してブサイクでなくなればもてるわけじゃないか」

「なるほど」

「君・・・ちょろいね」

「え・・・つまり・・・彼女は先生に教えられて・・・」

「だから・・・彼女は生れついてのアドラーなんだって」

「・・・」

やがて・・・容疑者だった真紀は毒を飲んで死ぬ。

「自殺だな」と断定する浦部刑事。

「明確に否定します」

「なんだと」

「彼女を殺したのはストーカーですよ」

「ストーカー」

「被害者はストーカーの届けを出していて・・・ストーカーを事情聴取したところ・・・犯行を自供しました」

「じゃ・・・前の二人も・・・」

「明確に否定します」

「ああ・・・そうですか」

庵堂蘭子は真紀に対して損害賠償請求をしているマキラーの会に乗り込むのだった。

「何しに来たの」

「あなたを逮捕しに」

「なんですって・・・」

「あなたは・・・真紀さんを高く評価することで自分自身の存在を高めようとした。しかし、他に人気モデルが現れて・・・真紀さんの人気は降下する・・・このままではあなた自身の評価も下がってしまう・・・だから・・・邪魔ものを殺した・・・しかし・・・ライバルが消えても真紀さんの評価はあがらなかった・・・そこであなたは真紀さんを亡きものにして・・・自分の不幸を売り物にしようと考えた・・・かわいそうな私・・・特別な人に騙された特別に可哀想な私・・・」

「なんの証拠があるって言うの」

「あなたは死体の周囲を羽毛でデコレーションした・・・それは・・・あなたが殺人を為した時に被害者があなたのコートの毛皮のファーを引きちぎったから」

「・・・」

「現場から・・・毛髪が採取されているの・・・すでにDNA鑑定済みよ」

「真紀さんがいけないのよ・・・永遠に人気者であるべきだったのに」

「あなたを逮捕します」

ランラーは庵堂蘭子をうっとりと見つめるのだった。

毎度、お馴染みの・・・主人公の秘められた過去をかわいい子役で仄めかし・・・物語はつづく。

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2017年1月12日 (木)

愛を乞うひと(篠原涼子)母が祖母に虐待されていた話(広瀬アリス)

記憶は常に曖昧なものだ。

子供の頃の記憶は時に増幅されたり改竄されたりして実際に起きた出来事とは違う場合がある。

親が子供を折檻するのが当然だった時代、親の振るう暴力は想像を絶するものだったが・・・実際にはそれほどのことではなかったのかもしれない。

父はそんなにひどくは殴らなかったと言うが・・・玄関先で子供を殴り続け隣の家の老夫婦が止めに入ったほどには殴ったのである。

だが・・・そんなことは日常茶飯事だった。

そういう時代は確かにあった。

もちろん・・・今、同じことをすれば「問題」となるのは明らかである。

だから・・・「虐待」をする親は・・・こっそりとやるのだ。

気がつけば子供は死んでいる場合があるのだった。

で、『愛を乞うひと』(日本テレビ20170111PM9~)原作・下田治美、脚本・後藤法子、演出・谷口正晃を見た。過去と現在が交錯する物語だが・・・現在もまた過去なのである。原作小説が世に出たのが平成四年(1992年)ですでに二十五年前である。現代と二十五年前では親と子の関係はかなり変化していると言える。映画化されたのが平成十年(1998年)で前世紀の話である。映画版(脚本・鄭義信、監督・平山秀幸)も原田美枝子が虐待する母親役と成長した娘役の二役を演じている。そういう意味でこのドラマは映画版に依るところが大きいと思われる。

幼い娘に対する母親の暴力を目の当たりにして娘の友人が恐怖で失禁する場面を映画版では照恵の子供時代の友達(大沢あかね)が演じていたが、ドラマでは照恵の友達・康子(纐纈羅紗)が忠実に再現している。文部科学省選定作品として譲れぬシーンだったのだろう。

「ごめん」

「お母さんはなぜ・・・すぐ謝るの」

娘の山岡深草(広瀬アリス)に詰られて口ごもる山岡照恵(篠原涼子)・・・。

照恵は心に深い傷を隠していた。

そんなある日・・・警察から電話があり・・・異父弟の和知武則(ムロツヨシ)が詐欺容疑で逮捕されたことが告げられる。

弟と別れたのは昭和四十年(1965)頃で・・・二十年以上前である。

あの日・・・高校を卒業して就職したばかりの照恵は・・・給料袋を持って家出したのだった。

鬼のような形相で追いかけてきた母親の豊子(篠原涼子・二役)を幼い武則がむしゃぶりついて制止したのだ。

それから・・・照恵は山岡裕司(平山浩行)と出会い、結婚して娘の深草を授かった。

娘の深草がものごころがつく前に事故で夫と死別した照恵だったが・・・娘と二人今日まで生きてきたのである。

娘は大人になって照恵は四十歳になっていた。

「姉さんの顔が見たくなった」

「・・・」

「下着と煙草を差し入れてほしい」

「・・・」

「あの人には頼みたくないんだ・・・」

弟の言葉に頷く照恵。

「お婆ちゃんは死んだんじゃなかったの」

娘に問われて・・・照恵は昔話を始める。

「あの人の話」を・・・。

昭和二十八年(1953年)・・・五才の照恵(庄野凛)の手を引いて父の陳文英(上川隆也)は家を出た。恐ろしい顔をした女が叫んでいた。それが照恵の母親の陳豊子だった。

父は優しかったが、まもなく病に倒れた。

父が身を寄せた親類の台湾人・許育徳 (杉本哲太)と許はつ(木村多江)の夫婦も優しかった。

昭和二十九年(1954年)・・・父は他界した。照恵は父のくれたお守りを形見として施設に入所する。

そして・・・昭和三十三年(1958年)・・・十歳となった照恵(鈴木梨央)を母親の豊子が迎えに来たのだった。

中島武人(寺島進)と再婚した豊子は・・・すでに武則を生んでいた。

「これが新しいお父さんだよ」

「・・・」

「お父さんといいな」

「・・・お父さん」

「声が小さいよ」

中島と昼間から情交するために豊子は照恵に幼い弟を連れて外に出るように促すのだった。

やがて、夜の商売を始めた豊子は照恵に暴力を振るうようになる。

ある夏の夜。

「お祭りに行ってもいいですか」

「誰と・・・」

「康子ちゃんと一緒に・・・」

「行ってきな」

「あの・・・お小遣いを・・・ください」

「なんだってえ」

煙草の火を照恵に押し付けた豊子は殴る蹴るの虐待を開始する。

「何、見てんだよ」

豊子に睨まれた康子は玄関で失禁してしまうのだった。

照恵には無数の傷跡が残された。

やがて中島と別れた豊子は照恵と武則を連れて和知三郎(豊原功補)と暮らし始める。

しかし・・・照恵の虐待は止むことがなかった。

「あの娘可愛いや・・・カンカン娘・・・」

昭和二十四年(1949年)のヒットソングを口ずさむ豊子・・・。

豊子の機嫌をとろうと照恵も歌う。

「うまいねえ」

「・・・」

「歌いなよ」

「あの娘可愛いや・・・カンカン娘・・・」

「色気づきやがって・・・生意気なんだよ」

照恵は豊子に鼓膜が破れるまで殴られ、股関節が変形するまで蹴られるのだった。

「おまえなんか・・・誰の子だか・・・わかりゃしないんだ」

父親との思い出さえ汚されて・・・それでも・・・大人になるまで・・・豊子と暮らした照恵だったのである。

母親の凄惨な子供時代の話を聞き、呆れる娘の深草だった。

「なによ・・・それ・・・完全に虐待じゃないの」

「そういう時代だったんだよ」

「それにしたって・・・やりすぎでしょ・・・」

「私は・・・お父さんのお墓がどこにあるのかも知らないの」

「じゃ・・・探そうよ」

照恵と深草は・・・探索を開始する。

そして・・・ついには父親の故郷である台湾にたどり着くのだった。

そこに待っていたのは年老いた許夫妻だった。

許夫妻が照恵の身を案じていたと聞き・・・心が和む母と娘である。

許夫妻は照恵の両親について話す。

戦後の混乱期の中・・・豊子は女一人で生きていた。

明示されないが・・・売春婦(パンパン)だったのである。

闇市で商売をしていた文英は愚連隊と大立ち回りをして豊子を苦境から救い出したのである。

二人は仲陸じい夫婦となって・・・照恵を生んだのである。

「照恵と名づけたのは豊子さんだった・・・陽のあたる暮らしが出来るようにと・・・」

しかし・・・親の愛を知らずに育った豊子は・・・子供の愛し方を知らなかった。

「照恵ちゃんに暴力を振るうようになって・・・文英は豊子を捨てたのよ」

豊子は・・・夫を奪った娘を憎んだ。

憎みながら愛していたのだった。

ちなみに「東京カンカン娘」のカンカンには・・・パンパンとの関連性がある。

パンパンとは肉体と肉体がぶつかり合う音だが・・・カンカンとはそうせざるをえない時代への怒りが込められている。娘たちはカンカンに怒っているのである。

豊子にとって・・・「東京カンカン娘」は自虐的な歌だったと妄想できる。

その歌は豊子の怒りの導火線に着火する何かを秘めているのであろう。

許夫妻のアドバイスで・・・文永の遺骨は日本に葬られていたことがわかるのだった。

照恵と深草の旅は終わりに近づいていた。

「私・・・あの人に会いに行こうと思う」

「姉さん・・・」

照恵は収監中の武則に告げた。

小さな町でスナックを営む豊子に会いに行く二人・・・。

六十代になっている豊子は照恵に気付かない。

照恵は歌った。

「あの娘可愛いや・・・カンカン娘・・・」

豊子は照恵を振り返った。

そして・・・深草を見る。

「娘かい」

「娘です」

「かわいいね」

「・・・さようなら」

照恵は店を出た。

深草は追いかける。

「お母さん・・・」

「あんなに・・・小さい人だと思わなかった・・・もっと大きくて怖い人だと思っていた」

「ゴジラじゃないんだから」

「あの人に・・・愛されたかった・・・可愛いと言ってもらいたかった」

「言ってたんだよ・・・」

「え」

「あの娘可愛いや・・・カンカン娘・・・」

「・・・」

「お母さんのことだったんだよ・・・」

小さな町に夕暮れが訪れようとしていた。

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2017年1月11日 (水)

嘘の戦争(草彅剛)騙されたら地獄行き(山本美月)

さて・・・火曜日は先攻フジテレビである。

「草彅剛・復讐シリーズ」というバカっぽいネーミングで・・・前作は韓国ドラマのリメイクを展開したのだが・・・今回はオリジナルである。

国をあげて復讐に燃える韓国とは違い、復讐なんて虚しいというのが日本の風潮である。

それでも・・・「復讐」というエンターティメントは万国共通のものという考え方もある。

悪には悪の報いがないとやりきれないと思う人も多いのだろう。

複雑な人間関係では善と悪は判別しにくいのが基本である。

憎むべき相手を愛してしまうことはよくあることだ。

愛すべき人を憎んでしまうことなど日常茶飯事である。

だから・・・フィクションの世界でわかりやすく悪に報いることはそれなりに面白いということだ。

で、『嘘の戦争・第1回』(フジテレビ20170110PM9~)脚本・後藤法子、演出・三宅喜重を見た。1987年、家族で行ったバリ島旅行から帰国した小学生の千葉陽一(小林颯)は床に倒れた父(迫田孝也)と覆面の二人組に遭遇し驚愕する。男たちは母と弟を刺し、陽一も刺される。意識を失う前に陽一は自分を刺した男の腕の痣を見た。病院で意識を取り戻した陽一は事件が父による一家心中だったと決めつける刑事(六平直政)の言葉に驚く。陽一は家族が殺されたことを証言するが・・・それは「嘘」とされてしまう。執拗な刑事の取調に陽一は「嘘」を認めてしまう。

そして・・・三十年の月日が流れた。

陽一(草彅剛)は・・・一ノ瀬浩一を名乗る詐欺師となっていた。

タイのバンコクにやってくる日本人は一ノ瀬にとってすべてカモだった。

日本から移住してきた三枝(佐戸井けん太)に「合法的なバー」の経営権を買わないかともちかけ・・・フェイクの警察による摘発をしかけて契約金を騙し取るのである。

まんまと八百万円を騙し取られた三枝だが・・・ありもしない犯罪容疑を揉み消してくれたと一ノ瀬に感謝する間抜けぶりを・・・タイで知り合った日本人女性の十倉ハルカ(水原希子)に晒すのだった。

ハルカは・・・女詐欺師で一ノ瀬のアシスタントだった。

新たなカモを求めて・・・バンコクのホテルに出かけた一ノ瀬は・・・腕に痣のある男と邂逅する。

一ノ瀬の復讐劇の幕開けである。

ハルカとともに日本に帰国した一ノ瀬は・・・詐欺師の師匠である百田ユウジ(マギー)を尋ねる。

百田は甥のハッカーである八尋カズキ(菊池風磨)を詐欺師見習いとして紹介する。

「何故・・・詐欺師になろうと思った」とカズキに問う一ノ瀬。

「嘘が好きだから」

「俺は嘘は大嫌いだ」

「詐欺師のくせに・・・」

「騙すか騙されるか・・・それだけだよ」

「こいつの言うことを信じるな」と百田は嘲笑する。

唖然とするカズキだった。

一ノ瀬は少年時代を過ごした養護施設「宮森わかばの家」を尋ねる。

経営者はかっての父親の友人である三瓶守(大杉漣)である。

医師だった三瓶は事件後・・・何故か養護施設の経営者となったのである。

二人組の犯人の一人が・・・慶明医科大学病院の准教授である五十嵐久司(甲本雅弘)であることが判明した以上・・・もう一人の候補者として三瓶は限りなく怪しい。

しかし・・・一ノ瀬も三瓶もそういう気配は一切示さない。

三瓶はニューヨークを拠点に「経営コンサルタント」をしているという一ノ瀬に・・・日本での宿泊施設として空き部屋を提供するのだった。

五十嵐の周辺に盗聴器を仕掛け、五十嵐のCPにウイルスを侵入させた一ノ瀬はたちまち、五十嵐の隠しごとを暴いていく。

教授になるための運動資金、株式投資の失敗の補填などで五十嵐は多額の借金を抱え、妻や娘には内緒で海外で買春ツアーを重ねている。

復讐の準備を整えた一ノ瀬は宣戦布告である。

「お待ちしていましたよ」

「君は誰だ」

「三十年前に・・・あなたに御世話になったものです」

「・・・陽一くんなのか」

動揺した五十嵐は・・・仁科という男に連絡をする。

「彼が・・・やってきました」

盗聴していた一ノ瀬は新たなターゲットの名前を知った。

ニシナコーポレーション会長の二科興三(市村正親)は会長秘書の七尾伸二(姜暢雄)に調査を命じる。

しかし、「千葉陽一」はオーストラリアに在住していた。

「どういうことだ・・・」

「五十嵐医師は・・・騙されているのかもしれません・・・あるいは・・・五十嵐医師が会長を騙そうとしている可能性もあります」

「金か・・・」

ニシナコーポレーションは巨大企業だった。

「三十年前は倒産の危機にあった医療器具メーカーだったらしい」

カズキの報告に遠い目をする一ノ瀬。

「三十年前・・・か」

ハッキングによって盗み出した「買春の記念写真」で五十嵐を揺さぶる一ノ瀬。

「お前・・・本当は誰なんだ」

「あんた・・・終わりだよ・・・あんたの裏口座での不正な取引や・・・多額の借金などすべて把握している・・・あんたの家族はどう思うかね」

「やめてくれ・・・一体、何が目的だ」

「謝ってほしいんだよ・・・俺から家族を奪ったことを」

「すまなかった・・・でも・・・やったのは俺じゃない」

「もう一人・・・いたのは誰なんだ」

「知らない・・・仁科さんの手配した男だ・・・俺は金に困っていて・・・千葉先生の家を訪問する手引きをしただけで・・・あんなことになるなんて・・・」

「なぜ・・・父を殺す必要があったんだ」

「わからない・・・ただ・・・先生は何か知ってはいけないことを知って・・・それを明らかにしようとしたらしい・・・」

「教授になるのはあきらめた方がいいよ・・・あんたの不正はすべて・・・警察にたれこんでおいたから」

「ええええええ」

一ノ瀬は新たなターゲットの調査を開始する。

「会長はすでに表向きには引退していて・・・公の場には姿を見せないみたいよ」

清掃員としてニシナコーポレーションに潜入したハルカが報告する。

「会長には三人の子供がいて・・・そこが攻め口ね」

後継者として社長に就任している次男の隆(藤木直人)は医療ロボット市場に参入を目論むやり手だった。

子会社の仁科カテーテルの社長となっている晃(安田顕)は出来が悪いらしい。

兄弟の妹である楓(山本美月)は慶明医科大学病院の医師だった。

アオイホノオの庵野ヒデアキと森永とんこが兄妹なのか」

「何の話?」

「なんでもない」

自転車事故を装って楓に接近する一ノ瀬・・・。

巧みな話術で「兄弟の不仲」を聞きだす一ノ瀬である。

事情を知らない楓は「天使」のような存在だが・・・一ノ瀬の目的は仁科一族を「地獄」に叩き落すことなのである。

「また・・・兄たちが仲良くしてくれたらいいのに」

怪我の治療のついでに楓に「願いを叶える指輪」をプレゼントした一ノ瀬だった。

「どうして・・・」

「私は幼い頃に家族を失ったので・・・あなたの家族が幸せになることを祈りたいのです」

どうやら・・・楓は見知らぬ男に好意を抱いたようだ。

一方・・・ハーバード大学出身の経営コンサルタントとして・・・ガードの甘い晃に接近する一ノ瀬である。

フェイクの「東南アジアでの事業」を餌に・・・晃の信頼を勝ち取るのだった。

会長への紹介を頼む一ノ瀬だったが・・・社長と社長秘書の四谷果歩(野村麻純)が立ちはだかる。

「本当にハーバード出てるのか・・・名簿で確認するし・・・ニューヨークの本社がペーパーカンパニーでないか電話で確かめる」

「どうぞ」

名簿にあるから一ノ瀬浩一を名乗り、ハルカがニューヨークに出張済みなのである。

だが・・・愚かな兄の見つけてきた男を信用できない弟だった。

ニューヨークから戻ったハルカは霊能力のある弁護士として・・・五十嵐に接近していた。

茫然自失の五十嵐の心理を操作し・・・ヒットマンに仕上げるハルカである。

なんでもありだな・・・。

父親が出席する・・・どこかで見たようなパーティーに現れた晃は一ノ瀬を伴う。

隆は一ノ瀬を排除しようとするが・・・いがみ合う兄弟に割って入った楓によって断念する。

ついに・・・会長に名刺を渡す一ノ瀬。

「優秀な男なんです」と長男は口添えする。

「私には・・・経営コンサルは無用」と無関心な態度の会長・・・。

そこへ・・・ハルカにコントロールされた五十嵐がナイフをもって乱入する。

「やっちまいな」

「おおおおおお」

会長に向ってナイフを振りかざす五十嵐・・・。

しかし・・・そのナイフを身体で受けとめる一ノ瀬だった。

「救急車」と叫ぶ楓・・・。

だが・・・隆は負傷して横たわる一ノ瀬の口元に注目する。

「なんで・・・笑ってるんだ・・・」

一ノ瀬は・・・会長の命の恩人になったらしい・・・。

・・・馬鹿馬鹿しくて楽しいぞ。

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2017年1月10日 (火)

大貧乏(小雪)お金があればなんとかなりますか(伊藤淳史)

さて・・・日曜日に集中するドラマたちである。

大河ドラマをレギュラーにすると・・・どうしてもサバイバルになるわけである。

ここまでこの脚本家については「リッチマン、プアウーマン」「失恋ショコラティエ」「She」「アンダーウェア」の四作品について言及しているが・・・シリーズを通じて語ったことはない。

「リッチマン、プアウーマン」(2012年)が平均視聴率12.4%、「失恋ショコラティエ」(2014年)が平均視聴率12.3%でそこそこ需要があるわけである。

だから・・・これはあくまで好みの話なのである。

つまり・・・キッドにはいつも少しものたりない感じがするわけである。

今回もせっかく・・・戦国時代のように夫婦が裏表で視聴率を争う感じの中、妻が先攻したわけだが・・・キッドの心はつかめなかったようだ。

まあ・・・小雪(40歳)、伊藤淳史(33歳)の実年齢差7歳のなんちゃって同級生カップルはすでに・・・キャスティングの段階で無理があったよね。

いや・・・同級生に見えないこともないよ。

そうかな。

で、『大貧乏・第1回』(20170108PM9~)脚本・安達奈緒子、演出・土方政人を見た。小雪と言えば「リーガルハイ」の安藤貴和役が記憶に新しい絶世の美人である。そして「池袋ウエストゲートパーク」の松井加奈役に代表されるように裏街道まっしぐらなのである。そんな彼女が今回演じるのは・・・真面目でちょっと小心者のシングルマザーなのだった。・・・いやあ・・・ものすごくむず痒いね。あえていえば・・・「僕と彼女と彼女の生きる道」の北島ゆら役でイメージを換装するしかないな。・・・そこかっ。

全く事情は語られないが・・・シングルマザーの七草ゆず子(小雪)である。

ネーミングからして・・・冬の女だな。

仏壇に母らしき女性の写真が飾られている上に・・・夫の遺影がないことから・・・母の代から男運がないらしい。

子供は小学校二年生の翔太(今井暖大)と六歳の幼稚園児・実結(野澤しおり)の二人。

初詣に出かける三人からは・・・それほど「貧しい感じ」はしない。

初詣で念ずるのが「祈願」ではなく「感謝」であるという神社にとって都合のいいことを言う小生意気な翔太だった。

しかし・・・その頃・・・母子の住むアパートの洗濯機の蛇口ホースが破損し・・・仄暗い下水口には翔太の脱ぎ捨てた靴下が堤防を築く・・・という大洪水が始っていた。

これは認知症の独居老人を満載する都会の集合住宅の未来の姿である。

あらゆる階段から水が流れ・・・街は加湿されまくるのだ。

漏水事件の加害者として階下の住人から損害賠償を請求されるゆず子・・・。

二百万円ほどあった貯金はたちまちゼロに近い金額になった。

それでも・・・ゆず子にはまだ絶望感はなかった。

人材派遣会社「DOH」に勤務するゆず子は総務部の正社員だからである。

ところが・・・新年早々・・・会社は倒産してしまうのだった。

「あんた・・・社長はどこにいる」

「え」

「あんた・・・愛人なんだから・・・知ってるだろう」

「愛人ではありません」

「ええええええ」

どよめく社員たちである。

社員に対する事情説明会で・・・「DOH」代表取締役社長の天満利章(奥田瑛二)は「申しわけありませんでした」をひたすら繰り返す。

不祥事に対する二十五億円の賠償金支払いで経営が暗礁に乗り上げたらしい。

「社内預金はどうなりますか」

「契約条項に従って・・・返金不能です・・・申しわけありませんでした」

「ふざけんな」

たまたま隣にすわっていた経理部の野村梨沙(仲里依紗)はつぶやく・・・。

「私の二百万円・・・」

「私なんか・・・三百万円よ・・・」

思わず漏らすゆず子だった。

「毎月・・・天引される二万円は痛かったのに・・・」

とにかく・・・ゆず子は五百万円ほどあった貯金を全額失った上に・・・無職になってしまったのだった。

早速・・・ハローワークに通うが・・・御時勢である・・・四十歳のシングルマザーの条件に見合う職探しは難航する。

手元にある現金は・・・二万三千円・・・。

「失業保険までこれで・・・やりくりするのか」

蒼ざめるゆず子。

しかし・・・大家は水道の修理代二万円を請求するのだった。

「さ・・・三千円」

気絶寸前のゆず子である。

「ママ・・・お腹すいた」

「ママ・・・新しいシューズ買って」

「・・・」

子供たちだけは不幸にしないと誓ったゆず子だが・・・先立つものがないのである。

二十代のママ友である櫻沢まりえ(内田理央)はアドバイスする。

「同窓会行くべきっすね」

「こんな時に・・・」

「みんないい年だから・・・就職先、世話してくれるかもです」

「なるほど」

「独身男がいたらたぶらかすのも手です」

「私はそういうのは・・・ちょっと」

ゆず子は男をたぶらかさないタイプらしい・・・。

「えええええええ」

誰だよ・・・。

同窓会である。

しかし・・・親身になってくれる同窓生は一人も現れないのだった。

それどころか下劣な男に売春をもちかけられる始末である。

だが・・・そんなゆず子を見つめる柿原新一(伊藤淳史)である。

高校時代・・・ゆず子のクラスメートだった新一は今でも女神のように崇めているのだ。

そして・・・新一は年商100億円超の柿原法律事務所の弁護士なのである。

つまり・・・リッチマン、プアウーマンふたたびなのであった。

しかし・・・こちらでは・・・リッチマンは童貞の四十男で・・・プアウーマンは彼など眼中にないのである。

柿原は「DOH」の倒産に直感的に不審なところがあると気付く。

弁護士としての柿原は・・・ゆず子への思いを秘めて面会の約束をとりつける。

ゆず子は背に腹は変えられないところまで追いつめられていた。

子供たちの食事代さえないのである。

「この人が食事をごちそうしてくれるの」

「バカ・・・お腹がすいただろう」

幼い兄妹も必死であった。

その無邪気さに柿原の心も緩む。

「ごめんなさい・・・実は僕はあなたのクラスメートです」

「え・・・」

「黙っていて御免・・・」

「御免・・・あなたのこと・・・まったく覚えがない・・・」

「あはは」

うっかりアルコールを口にしたゆず子は漫画的な酒乱の症状を示す。

柿原の事務所に乗り込む母子・・・。

そのゴージャスな感じに・・・酔いが醒めるゆず子だった。

「あなたは・・・凄いね・・・それにくらべて・・・私は・・・」

生れて初めて女性とデートのようなものをしたらしい柿原は有頂天である。

ストーカーめいたメール攻勢を開始するのだった。

残務処理のために出勤したゆず子は・・・会社にやってくる柿原をもてあますのだった。

営業部社員の加瀬春木(成田凌)は火事場泥棒のように金目のデータを盗み出していた。

そこへ・・・経理部長の浅岡礼司(滝藤賢一)が姿を見せる。

加瀬はカムフラージュのためにゆず子を利用する。

そこで・・・ゆず子は加瀬を柿原に対する魔よけとして利用する。

「ごめんね・・・好きな人がいるの」

考えようによっては・・・ものすごく嫌な女であるが・・・ゆず子はただ・・・波風をたてたくないだけなのである。

そして・・・「女」を売らないことに頑ななのである。

おそらく・・・それがゆず子の「譲れない一線」なのであろう。

しかし・・・加瀬はゆず子との関係を維持したい一心で・・・「疑惑」について口にする。

「倒産の裏にはなんらかの不正がある」

「だとしても・・・私のような末端の人間にはどうすることもできないわ」

「末端なんて・・・誰が決めたんだ・・・」

「え」

「君が自分自身を貶しているだけじゃないのか」

「末端の人間を貶しているのはあなたじゃないの」

売り言葉に買い言葉である。

ゆず子は逃げ出した。

「今・・・追いかけるところですよ」

「え」

加瀬のアドバイスに従って追いかけた柿原だったが・・・ゆず子を見失う。

「で・・・会社の不正を暴くためにどうするんですか」

「まず・・・決算報告書などのデータを入手して・・・」

「ここにありますけど・・・いくらで買ってくれますか」

「え」

童貞だが敏腕弁護士である柿原は一夜で手掛かりを掴むのだった。

一方・・・「全部・・・僕のせいなんだ・・・初詣で新しいシューズが欲しいって御祈りしたから」と息子に言われたゆず子は・・・パートで働くことを決意する。

弁当屋で働くゆず子。

そこへ・・・柿原から着信がある。

(今日中に・・・会社に入って内部記録を確認したい)

「私・・・今、パート中で」

(不正な会計操作の可能性があった・・・およそ・・・30億円の内部留保が生じているかもしれない・・・つまり裏金だ)

「・・・」

(君が不当に奪われたものを取り戻すチャンスがあるんだよ)

「でも仕事が」

(代理のものを派遣する)

代理として派遣されたのは・・・新人弁護士の木暮祐人(神山智洋)だった。

小暮はコメディーの脇役としては結構、いい味出してるな。

他が弱すぎるからだろう。

加瀬もいい味出しているがクールでスマートだからな。

つまり・・・物足りないんだな。

しかし・・・肝心な経理データのファイルは紛失していた。

経理部員に電話で確認するが・・・ファイルの所在は不明である。

「捜査終了ね」

「・・・」

結局・・・息子のサッカーの試合の日に・・・新しいシューズは間に合わなかった。

この時・・・息子は拗ねた態度をとるが・・・描写が少し甘い。

弁当を投げ捨てるほどの態度をとって試合には行くのである。

子供だからですませてしまうと・・・なんだかなあと思うのである。

試合場には柿原が新しいシューズをもって現れる。

「これ・・・高いんじゃないの」

「君はそれに見合う働きをしただろう」

苦しい帳尻合わせである。

ゆず子は女を売ったわけではなく・・・柿原も買ったけではないという・・・譲れない一線なのである。

そこへ・・・経理部員の梨沙から着信がある。

「私・・・不正な送金をしていたかもしれません・・・ファイルは私が持っています・・・あなたになら・・・託せると思いました」

ゆず子は子供たちを柿原に託して・・・梨沙と待ち合わせた駅に向う。

反対側のホームにいる梨沙を発見するゆず子。

しかし・・・何者かに線路に突き落とされそうになった梨沙は逃げ出す。

ゆず子は梨沙を捜し・・・ファイルを抱えた浅岡経理部長を発見するのだった。

企業内犯罪がらみの窮乏と恋愛・・・ミステリーとラブコメ。

混ぜるな危険の気配が・・・濃厚に立ち込めるが・・・そういう手がないわけではなく・・・そこそこ面白いのかもしれない。

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2017年1月 9日 (月)

天文十三年、井伊直満死す(宇梶剛士)

歴史はそもそもフィクションである。

学者は史料によって過去の出来事の信憑性を問うが・・・そもそも史料となる文献に記されたことが事実とは限らないのである。

もちろん・・・それを言ったら御仕舞なので・・・ほぼ事実ということにするギリギリのラインが定説となる。

井伊直虎が実在の人物だったのか・・・井伊直虎は女性だったのか・・・井伊直虎は「おんな城主」だったのか。

そういうことは定かではないが・・・徳川四天王の一人とされる井伊直政が代を継いだ井伊本家の先代が・・・女城主で直虎と名乗っていたということがまことしやかに伝えられてきたのである。

ふりかえってみれば・・・。

2016年「真田丸」主人公・真田幸村(男性)、平均視聴率16.6%・・・戦国。

2015年「花燃ゆ」主人公・楫取美和(女性)、平均視聴率12.0%・・・幕末。

2014年「軍師官兵衛」主人公・黒田如水(男性)、平均視聴率15.8%・・・戦国。

2013年「八重の桜」主人公・新島八重(女性)、平均視聴率14.6%・・・幕末。

2012年「平清盛」主人公・平清盛(男性)、平均視聴率12.0%・・・源平。

2011年「江~姫たちの戦国~」主人公・江(女性)平均視聴率17.7%・・・戦国。

2010年「龍馬伝」主人公・坂本龍馬(男性)平均視聴率18.7%・・・幕末。

2009年「天地人」主人公・直江兼続(男性)平均視聴率21.2%・・・戦国。

2008年「篤姫」主人公・天璋院(女性)平均視聴率24.5%・・・幕末。

2007年「風林火山」主人公・山本勘助(男性)平均視聴率18.7%・・・戦国。

自称公共放送という視聴率乞食が何を求めているのか・・・いろいろと妄想できるのだった。

で、『おんな城主 直虎・第1回』(NHK総合20170108PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は主人公・直虎の両親である井伊直盛&千賀、直盛の祖父である井伊直平、直盛の叔父である井伊直満の三大イラスト描き下ろしでお得でございます。謹賀新年大サービスでございますねえ。まあ・・・井伊直満の場合・・・あわただしく去って行きましたからねえ。宇梶剛士の演じる大河ドラマの登場人物は非業の死を遂げる呪いがかかっているようですな。井伊家も徳川家康家臣となるまでは負け組の一族で・・・主君の今川家も負け組なので・・・いろいろと記録が錯綜いたしておりますねえ。今回もまたフィクションの腕の見せ所多数であること間違いなしでございます。まあ・・・昨年のヒロインのような一同大爆笑の展開は滅多にないとは思いますが・・・。そもそも・・・今回は瀬名が関口親永(瀬名義広)の娘ではなく、井伊直平の娘あるいは孫の設定なのか・・・。新事実発見もあり・・・いろいろと混乱する今日この頃でございます。なにしろ・・・直虎の母である新野左馬助親矩の妹とされる祐椿尼の出自も定かではございませぬからねえ。新野左馬助の兄弟とされる関口氏経についてもよくわからない。左馬助の養父とされる新野親種についても不明でございます。養子の左馬助が井伊谷(いいのや)に去った後で御前崎の舟ケ谷城には一体誰が在城していたのか・・・。謎は深まるばかりなのでございまする。

Naotora001 天文五年(1536年)、駿河国・遠江国の守護大名である今川家で御家騒動が起きる。当主の氏輝と上位継承者である弟の彦五郎が急死し、先代氏親の未亡人・寿桂尼の第三子・義元と福嶋助春の娘で氏親の側室の子・玄広恵探が相続争いを展開。玄広恵探は自害し、今川義元が継承者となる。この頃、遠江井伊谷城主・井伊直宗の嫡男・井伊直盛に長女・おとわ(仮名)が生れた。母は今川家臣の新野左馬助親矩の妹・千賀(祐椿尼)である。天文六年(1537年)、義元は甲斐国守護の武田信虎の娘を正室に迎え甲駿同盟を締結する。天文十年(1541年)、武田晴信が父・信虎を追放する。天文十一年(1542年)尾張国の織田信秀が守護不在の三河国に侵攻する。同様に三河国の領国化を目指す義元に従い、三河国田原城を攻めた直宗は野武士の奇襲によって討ち死にする。隠居していた直宗の父・直平は家督を直盛に継承させた。直盛は叔父の直満の嫡男・亀之丞(直親)を娘の許嫁とする。天文十二年(1543年)、種子島にポルトガル船が漂着し、日本に鉄砲が伝来する。天文十三年十二月(1545年2月)、井伊家に対する今川家の目付である井伊家家老・小野政直の讒言により、謀反の疑いで直満と弟の直義は自害。亀之丞は井伊家菩提寺の住職で叔父の南渓和尚の手引きで家臣の今村正実とともに信濃国に亡命する。天文四年(1535年)生れの亀之丞は数えで十一歳であった。おとわは許嫁を失った。この年、織田信長は十二歳、徳川家康は三歳である。家康の母・於大の方の実家である水野家が織田に下ったために・・・家康の父・松平広忠は今川家を慮って於大の方と離縁した。

井伊谷宮館は騒然としていた。

大人たちが右往左往して騒ぐのを音羽は物珍しげに見つめる。

「音羽・・・来よう」

音羽は曾祖父の井伊直平に呼ばれ奥の間に入る。

「見よう・・・」

直平は神棚を目で示す。

音羽は素直に神棚を見上げてから直平に視線を戻す。

「この世でもっとも尊ばにゃならんお方は京の都におる」

「都・・・」

「俺っちの倅・・・お前っちの祖父は・・・一昨年に死んだら・・・」

「爺様・・・」

音羽は戦に出かけ、そのまま帰ってこなかった祖父・直宗の姿をぼんやりと覚えている。

「今度は直宗の弟たちが死んだずら」

「・・・」

「お前っちの許嫁も命を狙われておる・・・お前っちの親父もどうなるかわからんだら」

音羽の幼い心に冷たいものが生じる。

「だもんで・・・お前っちに話しておかねばならんことがあるずら」

「・・・」

「昔のことだら。井伊介様は都から宗良皇子(みこ)様をお迎えして時の天皇(みかど)様のための御戦(みいくさ)をなさった・・・」

「みこ様・・・」

「そうずら・・・尊ばねばならんお方のお子ずらよ」

「仏様より・・・尊ぶのか」

「人はあの世に行けばみな仏だら・・・みかどはこの世で一番に尊ばねばならん」

「この世で・・・」

「この世がかように戦にまみれておるのは・・・みかどをたっとぶ心がのうなってしもうたからぞ」

「・・・」

「だに・・・井伊介様は戦にやぶれて・・・足利将軍が世をおさめた・・・井伊谷も足利の家来の今川に頭を押さえられておるずら」

「今川に・・・」

「お前っちの母も今川の家来の家から嫁いできたら・・・」

「母様が・・・」

「長いものにはまかれろ・・・と申すが・・・首根っこつかまれて・・・息もできんのは・・・苦しいことずら」

「・・・」

「だけえが・・・井伊介様の志を忘れてはならんずら・・・井伊の家のもんはそのことだけは心にとどめねばならん」

「心に・・・」

「お前っちの許嫁は・・・野伏せりの道を通じて信濃に逃がす」

「のぶせりのみち・・・」

「井伊介の代から遠江信濃越後には野伏せりの道が通じておる」

「・・・」

「志を同じくするものの道ずら・・・そのことを忘るな」

「こころざし・・・のぶせりのみち」

「心得たら・・・みなの元へ戻れ・・・今のことは他言無用」

「・・・」

「母にも言うてはならぬ」

「心得たずら」

音羽は夢にも似た昔話を聞かされたような・・・恐ろしい現実の理を諭されたような・・・曾祖父の言葉に心を踊らされていた。

慌ただしく天文十三年が暮れていく。

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2017年1月 8日 (日)

不幸せな結婚するって本当ですか?(成海璃子)

「話が長い話」でもよかったのだが・・・今回は特に長かったな。

しかも・・・少し・・・あらゆるものが古臭いぞ。

タイトルは「結婚するって本当ですか/ダ・カーポ」(1974年)のもじりだからこっちだって古いわけだが。

映画「卒業」(1967年)だからな。

・・・似たようなものだぞ。

フジテレビは去年の春ドラマで「早子先生、結婚するって本当ですか?」というのをやっているからな。

しかし、映画おタクには「古き良き名画好き」というジャンルがあるからな。

「ローマの休日」(1953年)と「卒業」を同じパッケージにするわけだな。

だけどグレゴリー・ペックは生きていたら101歳、ダスティン・ホフマンだってもう79歳だぜ。

まあ・・・32歳の映画おタクが半世紀前の映画に憧れたっていいじゃないか。

でも・・・なんか・・・なんかな。

で、『リテイク 時をかける想い・第5回』(フジテレビ201701072340~)脚本・本多隆朗、演出・小野浩司を見た。ものすごく説教臭いぞ。夜中にそんなことをやられてもなあ・・・。しかも・・・構成的にもかなり無理がある。そこそこ複雑な話なので・・・すべてが納まると達成感があるはずなのだが・・・それがないのである。ピースの一つ一つがサイズミスで最初からはまらないジグゾーパズルみたいだ。

未来人を保護するのが任務の戸籍監理課課長・新谷真治(筒井道隆)は居酒屋「へのへのもへじ」で学生時代の友人たちと飲んでいる。

明日は立野義弘(鈴木浩介)の結婚式なのである。

義弘は花嫁の彩乃(横田美紀)を同席させている。

新郎新婦の年齢差は17歳である。

鈴木浩介の実年齢42歳で横田美紀の実年齢が27歳である。

彩乃は三十歳前で結婚を焦っていたというから・・・28歳として、鈴木浩介は筒井道隆の実年齢である45歳と考えると一応、年の差17歳が成立する。

結婚式でスピーチを頼まれた新谷だったが・・・義弘の憂い顔が気になるのだった。

平日の結婚式である。

新谷が早退したところに・・・法務大臣政務官の国東修三(木下ほうか)が現れる。

土産として芋けんぴが持ち込まれ、唯一の正規職員・那須野薫(成海璃子)は意外に美味しい顔を披露するのだった。

パートタイマーのパウエルまさ子(浅野温子)は都内某所で天気雨が発生したことを告げる。

それは・・・義弘と彩乃の結婚式場の近辺だった。

式場に向う新谷は離婚した妻の弟である柳井刑事(敦士)に呼びとめられる。

「姉さんは・・・これからお見合いパーティーなんだ」

「・・・」

そこへ離婚した妻の紗栄子(西丸優子)が現れる。

「ハルは元気か」

「時々・・・覗きに来ているでしょう・・・今さらよね・・・結婚していた時は仕事中心で・・・あの子のさしだした手も握らなかったくせに」

「・・・」

「あなたがあの子の手を払いのけて仕事の電話に出た時に・・・離婚を決意したの」

「そんなことでかよっ」

唐突に現れた姉弟が退場すると薫が現地に到着する。

「どうした」

「オバケ警報が発令しました」

未来人は時間を遡行すると衣装が漂白されるためにオバケと呼称されている。

二人は結婚式場で・・・全身白い衣装の男(水上剣星)を発見する。

男は逃げ出すが・・・薫が確保に成功する。

「今年の紅白歌合戦はどっちが勝ったか・・・知ってますか」

「審査員の票で赤が勝った」

「何故・・・逃げたのですか」

「卒業だよ・・・ダスティン・ホフマンだよ・・・彩乃を奪いに来たんだよ」

「え・・・彩乃さんのお母さんとそんな関係に」

「そこまで真似できないよ」

「花嫁を略奪して幸せになれると思うのか・・・相手は童貞キラーのミセス・ロビンソンの娘だぞ」

「誰だって未来のことを考えたら不安になろだろう」

「だよね」

「でも・・・結局、ダスティン・ホフマンになれなかったよ」

「早世に注意しないとな」

結婚式場では新谷の友人の一人が声をかける。

「大変だ・・・」

「どうした」

「新郎がいなくなった」

「なんだって」

その頃・・・義弘にそっくりの白い衣装を着た男が路上で途方にくれていた。

そこにまさ子が現れる。

「どうかしましたか」

「いや・・・」

「結婚式場から逃げて来たの?」

「結婚したのは五年前です・・・これは・・・たまたま」

「私は結婚記念日なのに夫の仕事が終わらないから散歩しているのよ」

「ああ・・・そうですか」

「よろしかったら・・・お茶でもどう?」

二人は結婚式場のカフェに向う。

「夫婦仲がよろしいのですね」

「もちろん」

「うちは年齢差が十七歳もあって・・・」

「喧嘩なさったの」

「喧嘩なんかしませんよ・・・ただ・・・妻の心は醒めてしまった」

「うちは喧嘩するわよ」

「仲がいいのに?」

「喧嘩するほど仲がいいって言うじゃない」

「なるほど・・・」

「妻には・・・僕と知り合う前に恋人がいたんです・・・そいつのことを・・・妻が今でも思っているんじゃないかと・・・ずっと思っていました」

「聞いてみたの」

「そんなこと聞けませんよ」

「臆病なのね」

「それが・・・波風を立てない生き方というものでしょう」

「ただの現実逃避よ・・・」

「逃避か・・・まあ・・・逃げてきたわけだ」

「逃げて来たのね」

「・・・」

まさ子は「オバケ発見」のメールを送信した。

花嫁の控室で悲鳴があがる。

新谷と薫が駆けつける。

「どうしました」

「白い服を着たおばさんが・・・結婚をやめろって・・・自分は未来の私だって」

二人は白い女を追う。

花婿の控室で白い女(芳本美代子)を発見する二人・・・。

「あなたは・・・彩乃さんなんですか」

「新谷さん・・・」

「いつ頃から来たんですか」

「2039年からよ」

「22年後ですか・・・」

「私・・・すっかりおばさんになっちゃったでしょう」

「・・・」

「否定しないのかよ・・・でも・・・仕方ないわ・・・夫に捨てられて十七年・・・苦労したもの」

「義弘があなたを・・・」

「結婚五年目に・・・突然、蒸発しちゃって・・・」

「2022年に・・・ですか」

彩乃は50歳になっている。

芳本美代子の実年齢が47歳なので誤差の範囲である。

「私には・・・元カレがいたの・・・彼はしょうもない映画おタクで貧乏だったから別れたんだけど・・・未来では世界的な映画監督になるのよ・・・今なら・・・」

「それを選ぶのはあなたではない・・・この世界の彩乃さんなんですよ」

「それに・・・あなたと結婚したら・・・彼は映画監督として成功しないかもしれない」

「人をサゲマンだと」

「二人の初めての共同作業を邪魔してやるわ」

「ケーキカットをですか」

「台無しでしょ」

「それは・・・俺がやるよ」

「え」

五年後の世界からやってきた義弘が現れた。

「君の願いを叶える・・・それが俺の望みだ・・・」

「義弘さん・・・」

義弘はウエディングケーキを破壊した。

「新郎の友人・・・新谷くんのスピーチです」

「薫・・・ケーキの手配を頼む」

「イチゴの花言葉は・・・子沢山ですが・・・幸福な家庭と言い換えることが可能です」

「わかった・・・」

新谷はマイクの前に立った。

「実は・・・僕の友人の不手際で・・・ウエディングケーキにトラブルが生じました」

ざわめく会場。

「予定したケーキとは違うケーキが出てきて新郎新婦はとまどうかもしれません」

さらにざわめく会場。

「新郎と新婦の年の差は十七歳もあります・・・新郎はそのことに悩んでいた」

ざわめきがとまらない会場。

「しかし・・・新婦だってきっと悩んでいる・・・二人に必要なのは・・・お互いの悩みを隠し通すことではなく・・・分かち合うことだと思います。僕は二年前に離婚しました」

ついにどよめく会場。

「妻は僕が仕事の電話に出るために繋いでいた娘の手を振り払ったのが嫌だったと言いました。・・・それを言われたのはついさっきのことです・・・そんなことを今さら言われてもどうなるものでもありません。ですから・・・新郎新婦の二人にはどんなケーキが出てきても・・・お互いの手でしっかりとナイフを握ってもらいたいと考えます。そして・・・どうか・・・切磋琢磨して・・・素晴らしい家庭を築いてもらいたい・・・ケーキにはきっとイチゴが乗っています。イチゴの花言葉は・・・幸福な家庭です」

仕方なく拍手する会場だった。

「君を置き去りにしてすまなかった・・・」

「まったくよ・・・私がどんだけ苦労したと思っているのよ」

「まさか・・・帰れなくなるとは思わなかった」

「私もよ・・・過去を変えたら幸せになれると・・・私、あなたと同い年になっちゃった」

「十七年か・・・長いな」

「長いわよ」

「これって・・・奇跡なんじゃないか」

「かもね」

見つめ合う二人を・・・新谷と薫は強制収容所に移送した。

帰路の二人の前に黒づくめの女が現れた。

「あそこが・・・未来人の収容所ですか」

秘書の大西史子(おのののか)は何故か勝ち誇って叫ぶ。

「ののののののの」

「ののののののの」

時間差で邂逅した未来人夫婦は囁く。

「新谷さんって確か事故で・・・」

「きっと・・・何かがあったのだろう」

二人の未来人の過去では・・・新谷はこの時点ですでに死んでいたらしい。

とにかく・・・歴史は改変に次ぐ改変をされているのである。

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2017年1月 7日 (土)

山田孝之のカンヌ映画祭(芦田愛菜)パルム・ドールを狙って(長澤まさみ)

さて・・・前夜から2017年冬ドラマが始っているわけだが・・・何がレギュラーになるかは未定である。

このジャンルの特定が難しい・・・疑似ドキュメンタリーで疑似ドラマである作品はおそらく・・・これ以上は語らない。

しかし・・・前作と位置付けられる「山田孝之の東京都北区赤羽」より・・・題材的には魅了された。

もう・・・うわあ・・・の連続である。

かなり・・・エンターティメントの要素が強くなっている感じなのだが・・・うわあ・・・なのである。

第一回、終盤ではうわあああああああ・・・という感じになっている。

凄いもの見ちゃった感じがします。

で、『山田孝之のカンヌ映画祭・第1回』(テレビ東京201701070052~)脚本(構成)・竹村武司、演出・松江哲明(他)を見た。「失われた週末・・・かくも長き不在・・・」と「カンヌの休日 feat. 山田孝之/フジファブリック」は歌う。コート・ダジュール(フランスの風光明媚な保養地)に山田孝之(山田孝之)が颯爽と現れる。

転じてゴジラと七人の侍でおなじみの東宝撮影所である。

「映画監督の山下敦弘は山田孝之に突然、呼び出された」

語りは長澤まさみである。

山下敦弘(山下敦弘)は自分撮りで撮影所のゲートを潜りスタジオへと向う。

山下は「リンダ リンダ リンダ」でキネマ旬報ベストテンの2005年6位を獲得した監督である。

山田は「勇者ヨシヒコと導かれし七人」の最終回の撮影中だった。

「今度、カンヌで賞を取ろうと思って」

「カンヌ?」

「もうすぐ、ヨシヒコが終わるので・・・次の仕事として」

「カンヌ映画祭ということですか」

「そうです・・・カンヌの一番いい賞を取ります」

「えーと」

「そういうことですので」

ヨシヒコ(山田孝之)は撮影に戻っていく。

通りすがりのメレブ(ムロツヨシ)が現れる。

「山下監督じゃないですか・・・これは北区赤羽的なアレですか」

「山田くんって強引だよね」

「巻き込みますよね」

山下は「赤レンガ倉庫」「中華街」にほど近いビルの一室に招かれる。

山田はすでに「合同会社カンヌ」を立ち上げていた。

山下は少数の撮影クルーを同行させている。

「会社・・・」

「そうです・・・企画もあります」

「山田くんは受賞してたよね」

山田は「第34回ヨコハマ映画祭」(2012年)で助演男優賞を獲得していた。

「・・・」

「どうして、カンヌのパルム・ドールなの・・・ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞やベルリン国際映画祭の金熊賞じゃだめなの」

「ですね」

パルム・ドールはフランシス・フォード・コッポラが「地獄の黙示録」などで、今村昌平が「うなぎ」などで獲得している泣く子も黙る権威のある賞である。

昨年の第69回カンヌ国際映画祭では障害者差別を背景に雇用支援金の現状を描いたケン・ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」が受賞している。

是枝裕和監督による第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品の「海街diary」は惜しくも受賞を逃した。

だから・・・「カンヌ国際映画祭」のパルム・ドールは特別でそれ以外は眼中にないらしい。

山田の中に・・・山田を評価しない世界の映画界に対する・・・「何か」が渦巻いているらしい。

「それで・・・」

「題材はこれです」

山田の提示した企画は「エドマンド・エミール・ケンパー三世の映画」であった。

エドマンドは身長206cm、体重140kgのアメリカ合衆国の連続殺人者である。

1948年生れで1964年に15歳だったエドマンドは好奇心から祖父母を殺し、精神病院に入院する。

1972年にヒッチハイカーの女性二人と15歳の少女を殺害、1973年に18歳の学生など三人を殺害。さらに母親を撲殺し、頭を切断した後、母親の頭部を使って自慰行為を行う。さらに母親の友人も殺害した。

十人を殺害した後でエドマンドは警察に出頭し、終身刑となった。

「う・・・」

「面白くなると思います」

「これを君が・・・」

「いえ・・・僕はやりません」

「え」

「お金を集めたりして・・・作品を作るだけです」

「つまり・・・カンヌのパルム・ドールをとる作品をプロデュースしたいと」

「ですね」

漫☆画太郎先生が描いた山田の「絵」の下で悠然とする山田である。

「しかし・・・これを誰が」

「主演者は決まっています」

「ええっ」

「本人に直接話して・・・事務所的にもほぼ・・・」

「そうなんだ」

「これから・・・監督に直接会ってもらいます」

山田は待ち合わせ場所に山下を案内する。

「それって・・・綾野剛?」

「まあ・・・いいじゃないですか・・・会えばわかります」

待ち合わせ場所のカフェにやってきたのは・・・。

ランドセルを背負った芦田愛菜(12)であった。

「ええええええ」

「芦田さんです」

「あ・・・山下です」

身長206cm、体重140kgのアメリカ合衆国の連続殺人者である。

好奇心から祖父母を殺し、ヒッチハイカーの女性二人と15歳の少女を殺害、18歳の学生など三人を殺害、さらに母親を撲殺し、頭部を切断した後、母親の頭を使って自慰行為を行い、さらに母親の友人も殺害した・・・十人殺しの終身刑の男を・・・誰が演じるって・・・。

もはや人外魔境である。

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2017年1月 6日 (金)

増山超能力師事務所(田中直樹)燃やしてやろうか(中村ゆり)

超能力と妄想力はほぼ同じ概念である。

原子で爆弾を作ろうなんてひどい妄想だが・・・実現すれば原子爆弾である。

そういうものを作ってしまう科学者、技術者、軍事関係者はものすごい超能力者と言える。

民族というものも妄想の一種である。

民族的な遺恨というものにほぼ無関係な人々が妄想に酔いしれ嫌がらせを続けるエネルギーもまた超能力的なものである。

しかし・・・そういう悲惨な出来事に対する国家的な責任というものが存在しないとは断定できないので条理を尽くして対応する必要もある。

謝罪しても相手が赦免しないというのであれば謝罪し続ける必要がある。

だが・・・どんどん・・・言いがかりに近いものになっていくと一方で理不尽さが生じる。

いい加減にしろよなと思うわけである。

もしも・・・パイロキネシス能力があれば・・・全世界のあの像を燃やしてしまいたくなる人もいるだろう。

それに対する報復が始ればすばらしき超能力戦争の時代が幕開けするのである。

で、『増山超能力師事務所・第1回』(日本テレビ201701052359~)原作・誉田哲也、脚本・櫻井剛、演出・櫻井剛を見た。別に田中直樹が悪いわけではないのだが・・・ホットパンツはいて笑いを醸しだしている男が二枚目の主人公をやっている違和感に時々、耐えられない気持ちになる。そういう気持ち悪さを乗り越えればそこそこ面白いファンタジーである。

理由は明示されないが・・・この世界では突然、いわゆる超能力者が増加し、一般人と超能力者が共存する時代に突入した。超能力は「足が速い」「頭がいい」などと同様の個性にすぎないわけである。

昔、なつかしいジュニアSF「すばらしき超能力時代/北川幸比古」(1967年)のように「誰もが超能力者になれるわけではない」が「超能力は日常茶飯事」なのである。

しかし・・・個性的な能力というものには負の側面がある。

たとえば・・・すばらしき瞬間移動(テレポーテーション)も転移先の物質と融合することで恐ろしい大量破壊兵器になる可能性があるわけである。

自爆兵器としてこれほど恐ろしいものはないだろう。

まして・・・身近に超感覚的知覚能力者(テレパス)がいれば絶対に迫害されるのである。

ところが・・・この世界ではある程度、一般人側が自制的である。

個性を尊重する社会が実現しているらしい。

それが・・・素晴らしきユートピアなのか・・・恐ろしいディストピアなのか・・・物語は始ったばかりなのでわからないのだった。

政府が認定した一級超能力師の増山圭太郎(田中直樹)は日本超能力師協会専務理事の高鍋逸雄(鹿賀丈史)が所長を務める「高鍋リサーチ」で超能力者のスカウトマンとして勤務している。

在野の超能力者にアプローチして登録を推奨し、超能力を活用した職業を斡旋するのが仕事である。

相棒はまだ善悪定かならぬ河原崎晃(忍成修吾)である。

二人には「超能力者が関与していると思われる事件」の調査も命じられている。

対象者が犯罪に関与している場合もありえるからである。

スカウト対象者である住吉悦子(中村ゆり)には「放火犯」の容疑がかかっていた。

悦子には発火能力(パイロキネシス)があるのだった。

圭太郎は・・・超能力者に対しては慎重なアプローチが必要だと考えるが・・・高鍋所長にはどこか謎めいた部分があり・・・悦子に特別な関心を寄せる。

悦子は不良少女あがりであり・・・交友関係は反社会的な匂いがする。

圭太郎は悦子に執着する高鍋所長の本心を探ろうとするが「心のフタ」を閉じられてしまう。

圭太郎には・・・人の「心を読む能力」があるが・・・一級の超能力師ともなれば・・・「心を読ませない能力」も身につけているのである。

就職活動中の大学生・中井健(柄本時生)は自分の超感覚的知覚に悩まされている。

周囲の人々の思考が流れ込み・・・容姿に劣等感のある健の心を苛むのである。

人々は・・・健を見ると反射的に「醜い」と思うのである。

「できれば・・・誰もいない世界で暮らしたい」

「そうか・・・君はフタの仕方を知らないのか」

圭太郎は・・・健に「心にフタをする方法」を手紙で伝授する。

健は・・・静寂を感じた。

超能力を使った大道芸人への接触を試みた圭太郎は観客の中に犯罪的素質を持った超能力者を発見し追跡するが逃げられてしまう。

そこへ荒川中央警察署の刑事・榎本克己(六平直政)が現れる。

「逃げられちまったようだな」

「ええ・・・あなたも」

「たまたまだよ」

超能力師協会と警察機構は協力関係にあるのだった。

超能力者の情報が「証拠」となるのかどうかは別として・・・ある程度の有益性があるのは確実である。

相手が一般人なら・・・「犯意を隠すこと」は不可能なのだ。

圭太郎は・・・サイコメトリー(痕跡知覚)能力を持つ高校生・高原篤志(浅香航大)を監視していた。

触れたものの残留思念を感知できる篤志は・・・邪悪なクラスメートの玩具となっていた。

友人の成田史哉(雨野宮将明)と二人でいじめの対象者なのである。

邪悪なクラスメートたちは成田を監禁し、篤志を警察犬に見立てて監禁場所を捜させる遊びに熱中していた。

邪悪なクラスメートの言うがままに・・・監禁されている友人を捜すことに疲弊する篤志。

人の心に直接、メッセージを送ることができる圭太郎は「会いたい」と呼びかける。

「僕の能力なんて何の役にも立ちませんよ」

「しかし・・・君はいつも・・・友達を探すことができる」

「それは・・・いいことですか」

「少なくとも・・・君が捜してくれることを・・・君の友達は待っているだろう」

「・・・」

篤志は邪悪なクラスメートと対峙する。

「もう・・・やめてくれ」

「嫌だよ・・・俺に逆らうのかよ」

「そうだ」

篤志はクラスメートに戦いを挑むが集団で暴行を加えられてしまう。

そこへ・・・圭太郎が現れる。

「何をしている」

「おっさん・・・誰だよ」

「君たちがしていることは傷害罪だぞ」

「何もしてないよ」

「じゃあ・・・なんでポケットの中にナイフを隠しているのだ」

圭太郎は透視能力も持っているのだった。

「化け物だ」

邪悪なクラスメートたちは身の危険を感じて逃げ出すのだった。

「なんでもできるんですね」

「僕も高校生の頃は君と同じだったよ」

「・・・」

圭太郎は高鍋所長に辞表を提出する。

「何故だ」

「あなたの方針には如何わしい部分がある」

「そんなことはないぞ」

「じゃあ・・・何故・・・心を隠すのです」

「超能力者を管理するためには必要なことだ」

「私も・・・あなたに管理されているということですか」

「・・・」

圭太郎は・・・探偵会社を発足した。

所長は圭太郎。

経理担当の大谷津朋江(平田敦子)は一般人である。

所員は・・・二級超能力師の悦子と健、そして超能力師見習いの篤志である。

相棒の河原崎は別の道を歩むようだ。

「超能力を使って人助けをする」と圭太郎。

「ちゃんと給料出るんだろうな」と悦子はつぶやいた。

彼らの活躍は・・・これかららしい。

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2017年1月 5日 (木)

富士ファミリー 2017(薬師丸ひろ子)日本生れろ!(小泉今日子)

「生」と「死」は同じものだ。それはどこからかやってくる。

家の中に入るためのドアと家から外に出るドアが同じなのと一緒である。

ドアノブの表と裏のようなものだ。

人間はこの世にこだわり・・・この世の中にいることが大切だと思う。

しかし・・・それは単なる思い込みにすぎない。

もちろん・・・それを言ったらおしまいなのだが・・・お正月気分で言っておきたい。

テレビジョンという夢を見させる機械がお茶の間にある時代が終焉しつつあるという人もいる。

けれど・・・私の家にはまだある。

そういう人は多いと考える。

テレビジョンの中とテレビジョンの外は同じだ。

すべてはうたかたの夢なのだから。

で、『富士ファミリー 2017』(NHK総合20170103PM9~)脚本・木皿泉、演出・吉田照幸を見た。荘厳な富士山が見下ろすコンビニエンスストア「富士ファミリー」は2016年の師走を迎えていた。店を支えてきた長女の小国鷹子(蒔田彩珠→薬師丸ひろ子)は春田雅男(高橋克実)と結婚し新居を構えたので春田鷹子になったのかもしれない。八年前に逝去した次女のナスミの夫だった木下日出男(吉岡秀隆)は樋口愛子(仲里依紗)とできちゃった結婚をして長女・光が誕生している。鷹子の叔母の笑子(片桐はいり)と三人で店を切り盛りしているのである。三女の月美(ミムラ)は夫の栗林和己(深水元基)と幼稚園に通う長男の大地(鴇田蒼太郎)と滞りなく生活をしている。

住み込み店員の果澄(中村ゆりか)は去り、新たにぷりおこと黒松平蔵(東出昌大)が雇用されている。

笑子はぷりおに懸想していて・・・レオナルド・ディカプリオより「ぷりお」と命名していた。

「新春TV放談2017」に登場した地味な作曲家の娘で作詞家の湯川れい子と名前が紛らわしい湯山玲子のような下世話さはないが「イケメンのハダカ」には心躍る笑子なのだった。

いかがわしさとは紙一重なんだよな。

二次元世界のコスプレをする愛子が中学生男子にモテモテなことに嫉妬する笑子は「あんなこといつまでやらせとくんだい」と難癖をつける。

「いいんじゃないの」と受け流す日出男。

「私の友達はみんなそう言ってる」

「婆ちゃん・・・友達いたの?」

失礼な話である。

しかし・・・笑子の友達は近所の神社の宮司である百合稙道(小倉一郎)と宮司見習い・行田万助(マキタスポーツ)しかいないのだった。

百合は愛子のコスプレ仲間である。

最近、見合いをした京子(筒井真理子)について愛子に相談をもちかける百合・・・。

「趣味のことは話したの?」

「それはまだ・・・」

「大丈夫じゃないかな」

「どうして?」

「お見合い写真で眼鏡をかけているというのは・・・個性的で自分をしっかり持っている人だと思うから・・・認めてくれると思う」

独身三羽烏の結束に亀裂が入ることを恐れる笑子と万助である。

忘年会のシーズン・・・新婚一年目の終わり・・・鷹子にぞっこんの雅男はいろいろと気を使う。

大学時代のサークル仲間の忘年会に女子も出席することを・・・鷹子が快く思わないのではないかと額に汗を浮かべるのである。

男友達と飲むと嘘をつく雅男だが・・・鷹子に嘘をついていることの呵責に耐えきれず・・・結局、告白してしまう。

人の心の・・・煩わしさである。

しかし・・・そういう些細なことが心に棘を刺すこともある。

雅男を会社に送り出した鷹子は・・・雑誌「Bestbiz」の表紙に目を留める。

「世界を変える100人・・・日本で唯一選ばれた・・・予言者・キティ・トーヤマ」

キティ・トーヤマは鷹子の幼馴染で霊能力に優れた遠山霧子(秋田汐梨→YOU)だった。

実家でもある「富士ファミリー」にやってきた鷹子は古い日記を捜す。

霧子について記述した遠い記憶があったのだ。

しかし・・・中学生時代の鷹子の日記に記されていたのは・・・「鷹子が2016年の大晦日に人生が終わる」という霧子の予言だった。

世界的な予言者による死の告知に・・・心が揺れる鷹子なのである。

未来を予測するのは簡単なことだ。

予測が必ずしも実現しないことが明らかだからである。

未来には思いがけないことが起きるに決まっているのである。

歴史家は歴史は繰り返すと言いながら未来を占う。

経済学者は好景気の後には不景気が来ると言う。

そして占い師は確率でものを言う。

だが・・・この世界では霊的な力が強く働いている。

なにしろ・・・笑子には・・・ナスミの幽霊が見えるのだ。

「ひええ」

「幽霊を見たような顔しないでよ」

「幽霊なんだよ」

「わかってるわ」

「こんなに春子とか鈴鹿さんとか安部ちゃんとか若大吉までいるのにアキちゃんはいないんだねえ」

「しがらみよ・・・だから・・・私、そろそろ生まれ変わろうと思う」

「こっちに戻ってくるのかい」

「だって・・・みんな私のことなんか忘れてるみたいだし」

「じゃ・・・合言葉を決めよう」

「合言葉?」

「ナスミだってわかるように」

「じゃ・・・おはぎちょうだい・・・で」

自分が死ぬ・・・不吉な予言のショックで吐き気を感じた鷹子だったが・・・平静を取り戻すと目に映るすべてのものがたまらなく愛しく思えてくる。

思わず撫でてしまいたくなるほど・・・世界が可愛いのである。

撫でまわされて雅男は照れ臭くなるのだった。

「でも・・・上司に妻が予言者に死を宣告されましたから出張に行けないとは言えない」

「だよね」

雅男は年末年始に海外出張があるのだった。

「ドアって呼吸しているみたいだね」

「?」

「いってきます・・・で・・・ただいま」

雅男は一度出かけてすぐ戻ってくる。

「これは深呼吸・・・」

「どっちかというと過呼吸じゃないの」

福袋の準備に忙しい「富士ファミリー」である。

笑子は自分のいらないものを紙袋に詰め込んで顰蹙を買う。

ぷりおは・・・不用品を問われて・・・過去のすべてと答える。

大学で「新規な重合触媒で合成したポリマーの分子量解析」を研究していたぷりおは・・・師事していた片山教授(萩原聖人)のデータ改竄により・・・すべてを失ったのである。

しかし・・・教授を愛しているぷりおは・・・不祥事を受け止めきれずにいた。

だが・・・「不吉な予言」に科学者として立ち向かうことで人間性を回復するのだった。

お詫びにやってきた片山元教授に・・・福袋を渡すぷりお・・・。

「当たり・・・おはぎ百年分?」

「あ・・・それ・・・書き間違いです・・・本当は一年分です」

「だよな」

「間違いは誰もがしますものね」

「だな」

見つめ合う解雇された教授と弟子だった。

ナスミは荷物をたくさん持った新人幽霊のテッシン(羽田圭介)と駅のホームで出会う。

「捨てきれないのね」

「あなたは・・・身軽ですね」

「ベテランだから」

ナスミはテッシンの荷物をどんどん捨てるのだった。

「自分は何事もなしとげていないような気がして」

「何かを成し遂げた人なんて・・・一人もいないわよ」

「そうですかね」

「逆に言えば・・・誰だって何かを成し遂げているのよ」

「そうですか」

「そうよ・・・あなただって生れて死ぬという人生を成し遂げたでしょう」

「そうか・・・」

「とっとと生れ変われば~」

「それって死ねば~と同じニュアンスですね」

ナスミの遺品の処理を巡って夫婦喧嘩をする日出夫と愛子。

「捨てるなんてひどい」

「だってしょうがないじゃないか」

「私のこともいつか捨てるの」

「君に嫌われたくなくて・・・捨てる決心をしたんだ」

「日出夫さん・・・」

「愛子ちゃん・・・」

新婚さん、いらっしゃいである。

月美は息子の大地の嫌われ者の友達のことで頭を悩ませる。

「嫌われ者と付き合っていたら・・・嫌われてしまう」

月美は・・・大地に・・・友達を選ぶように告げる。

そして・・・月美自身が大地に嫌われてしまうのだった。

月美は鷹子に悩みを相談する。

「仕方ないよ・・・大地は母親より友達を選ぶ・・・お年頃なんだよ」

「ひでぶ」

しかし・・・鷹子は一つの記憶を蘇らせる。

霊能力者の霧子は・・・周囲から忌み嫌われていた。

鷹子も・・・母親に霧子との交際を禁じられていた。

あの日・・・公園で・・・霧子から遊びに誘われた日・・・。

幼い月美が言ったのだ。

「霧子ちゃんとは遊んじゃダメってお母さん言ってたよ」

霧子は笑顔で去って行った。

鷹子は・・・自分が嫌な言葉を吐かずに済んで安堵したのだった。

中学生の鷹子は思う・・・よかった・・・霧子ちゃんは・・・怒っていない。

しかし・・・大人になった鷹子には分かった。

どれだけ・・・自分が霧子を傷つけたかを・・・。

だから・・・私は呪われたのだ。

大晦日・・・霧子がやってくる。

「あのね・・・」

「うん」

「あれね・・・」

「うん」

「嘘だから・・・」

「うん」

二人は和解するのだった。

「ごめんね」

「私こそごめん」

「いいの・・・だって私たちは・・・もう大人だもの」

大晦日・・・予定をくりあげて雅男は戻って来た。

「どうしたの」

「だって・・・ずっと後悔するのは嫌だから」

「おかえりなさい」

「ただいま」

鷹子はカラオケで松任谷由実の「A HAPPY NEW YEAR」(1981年)を歌うのだった。

笑子にはコンビニお握りを分けあう老いた仲間・・・徳三(鹿賀丈史)ができた。

テッシンはナスミに無理矢理荷物を捨てられて生まれ変わった。

名札を捨てられないナスミは生まれ変わるのをやめた。

来年こそは住み込み店員ゲストにのん(本名・能年玲奈)が迎えられるといいなあと思う一部お茶の間である。

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2017年1月 4日 (水)

Eテレシアター 鉄腕アトム「地上最大のロボット」より「プルートゥ PLUTO」 (森山未來)ううううううああああああ・・・・・・(永作博美)

コミック「鉄腕アトム/手塚治虫」が登場したのは昭和二十六年(1952年)である。

昭和三十八年(1963年)にはアニメ化され、お茶の間に登場する。

「史上最大のロボット(前後篇)」は昭和四十年(1965年)にオンエアされている。

「鉄腕アトム」のエピソードの中でも屈指の人気を誇ると言ってもいいだろう。

特にアトムの妹であるウランとロボット殺しのプルートゥの密会には「萌え」の要素が満載されている。

コミック「PLUTO」/浦沢直樹」(2003年~2009年)は「鉄腕アトム・地上最大のロボットの巻」のリメイク作品である。

舞台「プルートゥ PLUTO」は平成二十七年(2015年)に上演された演劇作品で、その年に Eテレシアター(NHKEテレ)で放送されている。

今回はその再放送である。

で、『Eテレシアター 鉄腕アトム「地上最大のロボット」より「プルートゥ PLUTO 』(201701032350~)原作・手塚治虫(他)、舞台脚本・谷賢一、舞台演出・シディ・ラルビ・シェルカウイ、収録演出・安西志野、番組演出・大谷千明樹を見た。渋谷・Bunkamuraシアターコクーンで収録された舞台作品である。アトムを演じるのは森山未來でダンサーとしての魅力も発揮している。手塚治虫の「アトム」、アニメーションの「アトム」、浦沢直樹の「アトム」、そして森山未來の「アトム」というキャラクターの遍歴である。

限りなく人間に近いロボットということでは・・・森山未來の「アトム」は一種の到達点と言えるだろう。

・・・人間だけどな。

ここではない別の世界の別の未来・・・。

アメリカ合衆国のようなトラキア合衆国のアレクサンダー大統領の主導により、イラクのようなペルシア王国に独裁者ダリウス14世が製造させた大量破壊ロボットが存在する疑惑が深まり、第39次中央アジア紛争が発生する。

世界最高水準の五体のロボットが平和維持軍として参加し、紛争はペルシア王国の崩壊によって終結する。

しかし、戦後・・・平和維持軍に参加した五体のロボットのうち、スイスのモンブラン、スコットランドのノース2号、トルコのブランド、ギリシャのヘラクレスが次々に殺害される事件が発生する。

この世界ではロボットは市民権を得ているので殺ロボット事件となる。

残された世界最高水準のロボットの一人でユーロポール特別捜査官ロボット・ゲジヒト(寺脇康文)はロボット殺害犯を求めて捜査を開始する。

やがて・・・殺害犯として謎のロボット・プルートゥが浮かび上がる。

しかし、プルートゥは戦後処理に参加し、戦災孤児達を引き取って、オーストラリアで一緒に暮らしている光子エネルギー型ロボット・エプシロンや平和の使者であったアトムも殺害してしまう。

ゲジヒトは・・・事件の裏に・・・ダリウス14世に仕えたロボット工学者・アブラー博士(松重豊)の深い「憎しみ」があることを探り当てる。

紛争により妻子を失ったアブラー博士は世界に復讐しようとしていたのだった。

ゲジヒトはついにプルートゥと対決し、撃破に成功するが・・・プルートゥの「心」に「深い悲しみ」を発見し・・・破壊することができなかった。

ゲジヒトは真相を探るために世界唯一の殺人ロボットとしてベルギーに拘束されている青騎士ブラウ1589(柄本明)と面会する。

「私の人工知能に生じた混乱の意味を知りたい」

「人工知能は混乱などしないだろう」

「だが・・・私は使命を全うできなかった」

「君の使命とは何だ?」

「市民の安全と平和を守ることだ」

「そのために殺人が必要な場合はどうする」

「人命の尊重は・・・最優先される」

「だが・・・限りなく人間に近い人工知能の持ち主は・・・感情を学習することができる」

「感情・・・だって」

「ロボットは忘れることはできない・・・しかし、記憶を抹消することはできるのだ」

「私の記憶が改竄されていると言うのか」

「君のメモリにアクセスを許可してくれてありがとう・・・君のメモリには空白があるよ」

「私は・・・何をしたのだ」

「君は・・・二番目の殺人ロボットなんだよ」

「なんだって・・・」

「君は人間を守るために・・・人間を殺したのだ」

「そんな・・・馬鹿な・・・システム設計上そんなことはありえない」

「ロボット工学者たちは言う・・・ロボットはあくまで平和利用されるために作られると・・・しかし・・・馬鹿と鋏は使いよう・・・と言うだろう」

「私たちは学習能力を与えられた・・・憎しみを覚えたっておかしいことは一つもないよ」

「・・・」

「人間を殺した君を・・・人間たちは処分することができなかった・・・君は役に立つロボットだから・・・君は記憶を消されて職務に復帰したのだ」

絶望に襲われたゲジヒトはアブラー博士の放った刺客・・・花売りのロボットのモハメド・アリに内蔵されたクラスター砲によって破壊される。

ロボット墓地に埋葬されたゲジヒトのボデイ。

墓参りに訪れた天馬博士(柄本明)はゲジヒトの未亡ロボット・ヘレナ(永作博美)と対話する。

「ゲジヒトのデータ・チップをどうなさるのですか」

「ゲジヒトの最後の記憶が・・・アトムを覚醒させるために必要なのだ」

「私・・・ゲジヒトの記憶を消去してしまおうかとも考えたのです」

「苦しみを感じるのだな」

「これが・・・苦しみというものなのでしょうか」

「大切なものが不在になってしまうということは人間にとっても辛いことだ」

「人間はそういう時にどうするのですか」

「泣くのさ・・・君も泣いてみるといい・・・」

「泣く・・・」

「最初は真似でいい・・・やがてそれは君の心を楽にするだろう」

「うううう・・・ああああ」

「そうだ・・・その調子だ」

「ううううううう・・・・あああああ」

「・・・」

「うううううううううううあああああああああああううううううううううあああああああああああ」

天馬博士は日本の科学省にやってきた。

アトムの妹であるウラン(永作博美)と対話する天馬博士。

「お兄ちゃんを生き返らせて」

「ウラン・・・死んだ者は生き返らないのだ」

「天馬博士・・・あなたの心は悲しみでいっぱいね」

「人間の心を感知するセンサーか・・・お茶の水博士も・・・妙な機能を開発したものだ」

「お兄ちゃんを生き返らせて」

「眠っているアトムに・・・ゲジヒトの記憶を接続すれば・・・アトムは目覚めるだろう・・・しかし・・・それはもはやアトムではないのだ」

「そんなことはないわ・・・お兄ちゃんはお兄ちゃんだもの」

「・・・」

アトムは覚醒した。

そして反陽子爆弾の計算式を完成させる。

お茶の水博士(吉見一豊)は驚愕する。

「天馬博士・・・アトムに何をしたのだ」

「アトムに欠けていたものを与えたのだ・・・私はかって同じ方法で作動しない人工知能を作動させたことがある」

「人間の記憶を転写できるという・・・テンマ型データチップ」

「その通り・・・人間の記憶をロボットに転写できるのだから・・・ロボットの記憶をロボットに転写することなど簡単なんだよ」

「アトムに何を与えたのです」

「ゲジヒトの憎悪だ」

「・・・」

アトムは科学省を脱走する。

「お茶の水博士・・・お兄ちゃんはどうなっちゃうの」

「信じるんだ・・・ウラン・・・アトムは天馬博士の最高傑作なのだから」

「お兄ちゃん・・・」

葛藤を経て・・・一つの安定に到達するアトム。

それは・・・生き物に対する「優しさ」に収斂する。

路上を歩む蝸牛をそっと植え込みの葉に移すアトムの姿に・・・お茶の水博士は安堵するのだった。

天馬博士はアブラー博士と対峙する。

「もう・・・終わりにしたらどうだ」

「復讐に終わりなどない」

「君の気持ちはわかる」

「わかるものか・・・あなたが・・・いかに優秀なロボット工学者であっても・・・家族を殺された人間の気持ちは・・・」

「わかるよ・・・なにしろ・・・君は私の作ったロボットなんだから・・・」

「なんだって・・・」

「君はゴジ・・・目覚めない君に・・・世界を呪詛しながら死んだアブラーの記憶を移植したのも私だ」

「嘘だ」

「君は目覚めた・・・ロボット工学者ロボットのゴジ博士と・・・人間の憎悪を継承したアブラー博士の二重人格ロボットとして・・・」

「嘘だ」

「アブラー博士は人間のアブラーが作った園芸用ロボット・サハドをプルートゥに改造した。そして・・・ゴジ博士に耕作用ロボット・ボラーの改造を命じたのだ」

「・・・」

「ボラーに何をさせる気だ」

「世界を・・・滅ぼすことを命じた」

「・・・」

「もう・・・遅い・・・人間はとっくに取り返しのつかないことをしてしまったのだから」

「そうかもしれんね・・・私も息子を失って・・・そう感じたことがある」

「天馬博士・・・」

「私のもう一人の息子は・・・完璧ゆえに出来そこないだったが・・・馬鹿な子ほど可愛いと言うだろう」

「・・・」

「私はアトムを憎みながら愛しているのだ」

トラキア合衆国のエデン国立公園に異変が生じていた。

アレクサンダー大統領はスーパー・人工知能であるDr. ルーズベルト(吉見一豊)に諮問する。

「すべては計画通りなのか」

「もちろんさ・・・」

「しかし・・・アトムが復活したぞ」

「アトムはプルートゥには勝てない・・・よくて引き分けだ」

「これでトラキア合衆国の繁栄は約束されたな」

「いや・・・まだボラーがいる」

「ボラー?」

「ボラーはエデンに人工火山を作るよ」

「なんのことだ・・・」

「エデンの火山が噴火すれば・・・ほとんどの生命体は死滅する」

「何を言っている?」

「トラキア合衆国の繁栄はロボットによってもたらされる」

「え」

「安心したまえ・・・君のことは生かしておくよ・・・ロボットの奴隷としてね」

「えええ」

アトムとプルートゥは対峙する。

「プルートゥ・・・僕は君に負けないよ」

「・・・」

「何故なら・・・僕の憎しみは君の憎しみより大きい」

「・・・」

「君が殺したロボットたちの怨みを背負っているからね」

アトムは巨大な影と踊る。

アトムの心に触れるプルートゥ。

「君の・・・心は・・・あたたかい」

「プルートゥ・・・」

「僕は・・・ただ・・・花畑を作りたかっただけだ」

プルートゥは「アトム/ゲシヒト」のシステムによって「憎悪」を解消した。

その時、エデンの地下でボラーが起動する。

「ボラーは反陽子爆弾を内蔵している・・・惑星改造ロボットだ」

「説得してやめさせよう」

「いや・・・ボラーにはそういう機能はない・・・命令を忠実に実行するだけの・・・いや何も知らない赤ん坊のようなロボットなんだ」

「それなら・・・僕が反陽子爆弾を解体する・・・君はボラーを抑えてくれ」

「やってみよう」

しかし・・・ボラーの二百万馬力は百万馬力のプルートゥを凌ぐ。

「アトム・・・君は脱出しろ」

「プルートゥ」

プルートゥはロケットパンチでアトムを地上に射出する。

ボラーは爆発するがプルートゥは空冷式システムを全開にする。

ボラーとプルートゥは一つの巨大な氷の柱となった。

「お兄ちゃん」

「ウラン」

「アトム・・・」

「お茶の水博士・・・ロボットたちの犠牲は・・・希望になるのでしょうか」

「さあ・・・そんなことは・・・誰にもわからんよ」

拘束を脱した青騎士は殺すべき相手を求めて・・・シェルターに侵入する。

人間の生み出した暗闇は深淵へと続いているのだ。

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2017年1月 3日 (火)

正月時代劇 陽炎の辻 完結編~居眠り磐音 江戸双紙~(山本耕史)田沼意知暗殺事件(中越典子)

真田丸」は大坂夏の陣で幕を閉じた。

慶長二十年(1615年)で徳川将軍は二代秀忠である。

歳月は過ぎて・・・「忠臣蔵の恋」では赤穂事件が起きる。

赤穂浪士の討ち入りは元禄十五年(1703年)で徳川将軍は五代綱吉となっていた。

そしてまた歳月は過ぎる。

老中の田沼意次の嫡男で若年寄の田沼意知が暗殺されるのは天明四年(1784年)のことである。

徳川将軍は十代家治となっている。

徳川幕府がゆっくりと衰退していく時代・・・。

明治維新まで百年を切っているのだ。

そして・・・歴史は刻まれていく。

で、『正月時代劇 陽炎の辻 完結編~居眠り磐音 江戸双紙~』(NHK総合20170102PM9~)原作・佐伯泰英、脚本・尾西兼一、演出・西谷真一を見た。第一シリーズが開始されたのが2007年である。つまり、十年の歳月を経て完結したわけである。2010年に正月スペシャル「海の母」が放送されてからかなり・・・間があいているので・・・なぜ・・・今頃という気もしないではないが・・・とにかく・・・完結できたのはめでたいと言えるだろう。

田沼意次の時代を借りたフィクションは色々とあるが・・・田沼意次の「政治」をどのように解釈するかで・・・色合いは変わってくる。「自由の風」を感じるか・・・「腐敗の極み」を感じるか・・・それは人それぞれと言えるだろう。

このドラマでは・・・田沼意次は・・・主人公の仇役である。

主人公は一種の剣客なので・・・権力者とヒーローの対決の構図となる。

しかし・・・最終的な着地点は・・・「人情」なのだった。

いつの時代にも変わることのない「人情」があるものなのか・・・どうなのか・・・そういうコンセプトも時代劇の楽しみの一つと言えるだろう。

八代将軍・徳川吉宗の側近として登用され、足軽の身分から旗本へと出世し、九代将軍・家重の代では大名となった田沼意次(長塚京三)・・・。十代将軍・家治の代には老中として比類ない権力者となっている。

この物語では権力に溺れ・・・田沼の政治を批判する将軍後継者の家基の暗殺に手を染める。

豊後関前藩(フィクション)出身の坂崎磐音(山本耕史)は藩内の陰謀に巻き込まれ、許嫁の奈緒(笛木優子)の兄を討ち・・・出奔して牢人となる。江戸に出た磐音は神田三崎町の直心影流佐々木道場の主・佐々木玲圓(榎木孝明)と共に家基を警護するが・・・安永八年(1779年)、家基は鷹狩りの帰りに毒殺されてしまう。

そして・・・佐々木道場はつぶされてしまう。

田沼意次は坂崎磐音の命を狙い・・・次々と刺客を送り込むのであった。

長屋の大家・金兵衛(小松政夫)の娘・おこん(中越典子) と昵懇の仲となった磐音は・・・おこんを養女とした御側御用取次・速水左近の婿となる。

おこんが女中頭をしていた江戸で一、二を争う両替商「今津屋」の元締め番頭・由蔵(近藤正臣)、公儀御庭番の弥助(小林隆)などが磐音をバックアップするのだった。

おこんとの間に嫡男・空也(大西利空)を儲けた磐音は小さな町道場の主として穏やかな日々を送っていたが・・・八代将軍・吉宗の孫であり、次期将軍の有力候補であったが、田沼意次によって、白河藩へと養子に出された松平定信(工藤阿須加)が弟子入りすることによって・・・再び命を狙われることになるのだった。

ちなみに・・・剣客仲間の竹村武左衛門(宇梶剛士)の娘・早苗(木村茜→優希美青)も成長している。

定信の父の田安宗武(山本學)は九代将軍家重の弟であり・・・将軍職に執着した男である。

明和八年(1771年)に死去するまで・・・定信は田安家から将軍を出すことを父親から命じられていた。

「私は強くならなければならないのです」

「急いてはなりませぬ」

定信にかけられた父親の呪いを案ずる磐音だった。

安永三年(1774年)に陸奥白川藩の養子となった定信である。

天明三年(1783年)に浅間山が噴火し、日射量低下による冷害は農作物に壊滅的な被害をもたらした。

天明の大飢饉の始りである。

国難に際し・・・田沼意次は嫡男の意知(滝藤賢一)とともに対策にあたった。

そんな田沼家に旗本の佐野善左衛門(山崎銀之丞)がまとわりつく。

立身出世した田沼意次に・・・三河以来の譜代である佐野家の系図を持ちこんだのである。

佐野自身の立身出世を目論んだことだったが・・・田沼は取り合わず・・・善左衛門は妄執を育てていく。

一方で・・・意次は磐音に次々と刺客を送り込むが・・・演出がエスカレートしてついに四刀流使い(塩野瑛久・・・獣電戦隊キョウリュウグリーン)まで登場する。

もう少しオーソドックスな殺陣も見たいものである。

松平定信から脇差を借り受けた佐野善左衛門は・・・城内で刃傷沙汰を起こす覚悟である。

狙うのは田沼意次父子・・・。

「出世欲に目が眩んで頭に血が昇ったようです」

「定信様の脇差で事が起きれば大事じゃ・・・」

磐音は・・・佐野を止めるために登城を決意するが・・・意次の放った刺客に妨害される。

「弥助・・・先に行け」

しかし・・・時すでに遅し・・・善左衛門は意次に斬りつけ・・・父親をかばった意知は深手を追う。

混乱にまぎれて弥助は脇差をすり替えた。

八日後・・・意知は死亡する。

善左衛門は乱心による刃傷沙汰として切腹を命じられた。

一部の反田沼勢力は善左衛門の行為を快挙として「世直し大明神」として崇めたという。

いつの時代も同じである。

「すべて磐音のせいじゃ・・・」

田沼意知の母・おすな(神野三鈴)は逆恨みにも程がある感じで主人公を呪うのだった。

磐音は妻子を人質に取られ・・・刺客の集団に襲われる。

主人公による暗殺集団皆殺しである。

息子の墓参りをする意次の前に姿を見せる磐音。

「儂を笑いに来たのか」

「同じ子を持つ父として・・・心中お察しする」

「わかるものか・・・ならば・・・お前も我が子を失ってみよ」

磐音に斬りかかる意次だが・・・無論、敵ではない。

「これで終わりにいたしとうござる」

「殺せ・・・」

しかし・・・おすなは夫の前に身を投げるのだった。

「御免・・・」

磐音は去っていくのだった。

「殺せーっ」

意次の絶叫がこだまする。

天明六年(1786年)・・・十代将軍家治死去。

天明七年(1787年)・・・田沼意次は失脚し、松平定信は十一代将軍・家斉の老中首座となる。

松平定信は寛政の改革を行うが・・・幕府の衰退を食い止めることはできなかった。

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2017年1月 2日 (月)

地図にない町の駐在所から警視庁特命係への帰還(水谷豊)炬燵が似合わない私たち(仲間由紀恵)

奥多摩町の西にある黒水(くろうず)町・・・もはや東京都のチベット・・・いや、何でもありません。

そこへ行けば前科者のどんな夢も叶うと言う・・・いや、何でもありません。

悔い改めたものの罪は許され、悔い改めないものは地獄行きなのである。

そこは言いきるのか。

とにかく・・・架空の田舎町で・・・事件はどんどん起きるのだった。

素晴らしいインターネットの世界を支配する恐ろしい獣の出現に・・・プログラマー以外の人々は戦々恐々としている。

だが・・・道行く人々が突然、恐ろしいものに変わることは日常茶飯事なのである。

だから・・・心穏やかに過ごすのが一番だ。

すべての終焉を迎えるまでは・・・。

で、『相棒 元日スペシャル season15・第10回』(テレビ朝日20170101PM9~)脚本・真野勝成、演出・兼﨑涼介を見た。善と悪の境界線の番人であり、自分以外の正義を認めない男・杉下右京(水谷豊)は相棒の冠城亘(反町隆史)は東京都の秘境・黒水町に派遣されるのだった・・・。

警視庁黒水署の黒水南駐在所に欠員が生じる。

警察官たちはホッキョクグマの仮面をかぶった何者かに拉致監禁されていた。

しかし・・・それはまだ事件ではなかった。

警察官の無断欠勤によって生じた欠員を・・・警視庁刑事部の参事官・中園照生警視正(小野了)は「特命係」の厄介払いに利用したのである。

「花の里」の女将・月本幸子(鈴木杏樹)に別れの挨拶をする二人・・・。

「黒水町は前科者に優しい町なんですって・・・」

自らが前科者である幸子は遠い目をするのだった。

現在の黒水町の町長である和合(八嶋智人)は素晴らしいインターネットの世界で財を成し、政治家に転身した男だった。

彼は前科者を積極的に町に受け入れ・・・「更生」させることを「町おこし」の「手段」としているのである。

一方・・・警視庁黒水署は・・・「問題ある警察官」の左遷先として機能しているのだった。

前科者と・・・札付き警官の住む町・・・恐ろしい設定である。

現地に到着した杉下右京は早速・・・警察官たちの無断欠勤に注目する。

しかし、黒水署の署長(小宮孝泰)は釘をさす。

「お前たち・・・何をやらかした」

「存在そのものがやらかしているようです」

「これ以上、やらかすなよ」

もちろん・・・やらかすに決まっているのである。

行方不明の警察官の一人、有本警部(森岡豊)について・・・消息不明となる直前まで行動を共にしていた地域課の警察官・半田(内野謙太)に事情を訊く二人・・・。

「団地から通報があって・・・パトカーで有本警部を送り届けたんです」

「君は何をやらかしたの」

「地元なんです・・・親の介護のために希望したんですよ・・・とにかく・・・通報のあった部屋に行くと・・・何も起こっていなくて・・・ふと気がつくと・・・有本警部は消えていたのです」

「人間消失ですか・・・興味深い・・・」

捜査を開始した二人は・・・有本警部の自宅で・・・未指定の幻覚剤を発見する。

「どうやら・・・失踪した五人の警察官たちはドラッグで小遣い稼ぎをしていて・・・なんらかのトラブルに巻き込まれたようですねえ」

「やらかすにも程がありますね」

そこへ・・・黒水ケーブルテレビのニュース・キャスターである若月詠子(伊藤歩)が現れた。

「ようやく・・・警察も捜査を始めたのね」

「あなたは・・・」

「真実を求めるジャーナリストよ」

「取材は広報を通して下さい」

「そうさせてもらうわ」

「しかし・・・どこで警察官が失踪していることをお知りになったのですか」

「ネタ元は言えません」

「なるほど・・・」

若月は警視庁総務部広報課課長の社美彌子(仲間由紀恵)を訪ねる。

「ノーコメントです」

社は警視庁の内部情報が漏洩している可能性に気付き、 警視庁生活安全部サイバーセキュリティ本部専門捜査官の青木年男(浅利陽介)に調査を依頼する。

一方、杉下と冠城は黒水署で警視庁警務部人事第一課首席監察官の大河内春樹(神保悟志)に遭遇する。

「おやおや・・・」

何か・・・よからぬことが起きていると直感する杉下右京だった。

署長を追及する杉下右京。

「警察官の連続失踪をなぜ放置しているのですか」

「上からの指示だ」

「上と言いますと・・・」

「警視総監だよ」

「日本の安全を守る会」を主催する四方田警視総監(永島敏行)・・・。

会場には警察庁長官官房付の甲斐峯秋(石坂浩二)も姿を見せる。

そして・・・和合町長も現れる。

「息子さんの件では大変でしたね」

「よくご存じで・・・」

「何かあったら・・・相談にのりますよ」

「なかなか面白いプロジェクトをなさっているようですな」

「再生は私の終生の主題なのです」

そこへ・・・警視庁副総監の衣笠藤治(大杉漣)が割り込む。

「和合さん・・・警視総監がお呼びですよ」

衣笠は甲斐の元に留まる。

「和合町長は・・・警視庁の情報システムのアドバイサーだとか」

「ええ・・・優秀な男です・・・落ち目のあなたとは違う」

「・・・」

兇悪な犯罪者を息子に持った甲斐は悲哀を感じる・・・。

次々と繰り出される・・・人間模様である。

美味しいお茶を求めて町へ出た右京は・・・喫茶「森のあしあと」を経営する藤井利佳子(仁村紗和)と槙野真理男(平岡拓真)という元受刑者カップルと知り合うのだった。

彼らに店の経営を推奨したのは和合町長だった。

右京は・・・喫茶「森のあしあと」を監視する不審人物に気がつく。

「そこで何をしているのです」

「同業者か・・・上からの命令だ」

そこへ・・・和合町長が現れ・・・不審人物の写真を撮影する。

「大胆なことをしますね」

「なんだか偉そうな態度だったので・・・」

不審人物を追い払った和合町長は言葉巧みに右京に近付くのだった。

油断ならない微笑みの応酬である。

「僕のやり方が気に入らない人が警察にはいるらしい」

「・・・」

「犯罪者を優遇するのかってね」

「再生は・・・あなたの終生のテーマでしたね」

「私のことをご存じですか」

「もちろん・・・」

そして・・・和合町長は不審人物の調査を右京に依頼する。

右京は簡単に引き受けるのだった。

当然のことながら・・・右京は自分以外の何者も信じないので・・・和合町長を疑っているのである。

和合町長はホワイト・テディベアに問いかける。

「面白そうなやつだよな」

「細かいことが気になるタイプだね」

「どんなプランが想定できるかな」

「誰かを生かすために誰かを殺さなければならないケース?」

「いや・・・殺したい相手を殺してしまうケースで」

「それはなかなか困難だよ」

「へえ?」

弁護士が判例をA.I.に尋ね弁護プランを作成してもらうように・・・。

犯罪者も犯罪計画をA.I.に作成してもらう時代である。

右京が元受刑者の若者たちや怪しい町長と親睦を深めている頃・・・冠城は若月キャスターと食事をとっていた。

「この町にこんなレストランがあるとはね」

「大人の隠れ家的辺境なのよ・・・」

「つまり・・・隠匿された貧富の差か・・・」

「前科者を元受刑者と言ったり、不平等を格差と言ったりして隠蔽するのが世の倣いよ。真実が科学的な事実でなくても構わない愚民は絶えることはないわ」

「それがジャーナリストのセリフかよ」

「アクセス数を稼がなければやってられないわ」

「人間は・・・情報によって支配されるからね」

「・・・」

署長に呼び出される二人・・・。

「本庁の人間と揉めたそうだな」

「おや」

「とにかく・・・上から手を出すなと言ってきた」

「おやおや」

「右京さん・・・何をやらかしたんですか」

「おやおやおや」

右京は喫茶「森のあしあと」を監視していた警察官について話す。

「いないじゃありませんか」

「おそらく・・・監視ポイントを変更したのでしょう」

「それにしても・・・町長の方針を・・・町民たちはよく受け入れたものですね」

「なんでも・・・この町にはかって新興宗教の拠点があったそうですよ」

「閉鎖空間で・・・うさんくさいものが流行るのは常套手段ですね」

「そうですねえ・・・村社会というものは一種の宗教組織のようなものですからね・・・相互扶助的な意味で・・・」

「そういえば・・・十年くらい前に・・・何か事件があったような気がします」

「九年前です・・・信者が犯罪を冒し・・・教団が匿った・・・」

「確か・・・教祖は・・・責任を取って自殺したんですよね・・・なんていったかな」

「通称タカハシですよ」

「ところで・・・なぜ、団地の屋上に」

「監視ポイントとしては・・・最適な条件を整えています」

「なるほど・・・」

しかし・・・「右京が歩けば死体にあたる」のシステムが発動するのだった。

「おや」

「事件になっちゃいましたね」

「ですねえ」

警視総監直属の見崎刑事(中山研)の死体が発見され・・・警視庁捜査一課から伊丹刑事(川原和久)や芹沢刑事(山中崇史)が現地入りする。

冠城刑事は甲斐に依頼して・・・黒水南駐在所に大河内監察官と社課長を召喚するのだった。

「情報を共有すべきだと思いまして」

「それでは奥へどうぞ」

「事件の発端は・・・九年前の犯人隠匿事件のようです・・・その時、宗教団体の捜査の指揮をとったのが・・・当時、方面部長だった四方田警視総監でした」

「一年後・・・当時、十四才だった槙野真理男が・・・四方田を半殺しにしています」

「マッチョが売りだった四方田は事件の詳細を伏せ、怪我の療養のために有休をとっています」

「子供にボコボコにされたのが恥ずかしかったんだろうな」

「槙野は少年院出所後・・・都内を転々としていましたが・・・町長の元犯罪者支援策で・・・この町に帰還したそうです」

「つまり・・・見崎刑事は・・・槙野を監視していたわけか」

「刑事たちの失踪事件とどうつながるんだ」

「あの団地では・・・品種改良した薬草を栽培してました・・・」

「つまり・・・ドラッグ・サークルか・・・それがタカハシの正体・・・」

「ええ・・・一種の・・・大麻は無害妄想の発露ですね」

「それ以上はおっしゃる必要はありません」

「悪徳刑事たちは・・・指定外ドラッグに目をつけて・・・商売をしていたようです」

「ラテン語でもっともらしい落書きがありましたね」

「獣が帰還する・・・ですか」

「槙野は・・・タカハシに養育されたアサシン・・・暗殺者だったようです」

「警察は敵・・・という一部テレビ朝日的な妄想が爆発するのですね」

団地の主である下地房江(山本道子)は教団幹部だった。

「獣が・・・還ってくる・・・警察に最後の戦いを仕掛けるために・・・タカハシの怨みを晴らすために・・・」

「極めて文学座的な芝居ですね」

「すると・・・容疑者は・・・槙野真理男・・・ということでしょうか」

「彼は今・・・山に入って山菜を採っています」

若月キャスターの元に・・・情報提供がある。

黒水ケーブルテレビのイブニングニュースのクルーたちは・・・警察官五人の撲殺死体を発見するのだった。

現場に残された指紋などから・・・槙野真理男が容疑者として指名手配される。

「森のあしあと」を訪ねる右京と冠城。

店では不安げな表情の利佳子が待っていた。

「彼はまだ帰っていませんか」

「彼のこと・・・嫌いにならないでください」

「信じてくださいではなく・・・」

「前科のある人間は・・・そんなこと・・・言えません」

「これだけは・・・約束しましょう・・・私は彼が何故・・・この町に帰還したのか・・・その理由を明らかにします」

山から真理男が降りてきた張り込んでいた四人の刑事は包囲する。

しかし・・・アサシンである真理男は包囲を突破して山に逃げ戻るのだった。

その頃、四方田警視総監と和合町長は・・・都内の料亭で密会中だった。

突然、現れた外国人武装勢力が二人を拉致するのだった。

「警視総監が誘拐されただと」

驚愕する衣笠副総監。

「警備システムがシステムエラーで機能しません」

「警視総監は体内にGPS発信器を挿入している・・・追跡は可能だ」

しかし・・・黒水村の野原で重傷の和合町長とともに・・・四方田警視総監は死体となって発見される。

入院した和合町長を右京と冠城が見舞うのだった。

「四方田警視総監は・・・頭蓋骨を踏み抜かれていました」

「・・・」

「あなたは足を骨折したとか・・・」

「・・・」

「これまでの死体は撲殺死体だったのに・・・何故でしょう」

「さあ・・・」

「警備システムを納品したのは・・・あなたの関連する会社ですよね・・・あらかじめウイルスを仕込んでおくのは・・・あなたにとって容易なことでしょう」

「うふっ・・・そうだねえ・・・でも・・・今さら捜査方針は変わらないでしょう」

「世論を操作することは可能ですよ・・・あなたがしたように」

「うふっ・・・やはり・・・あなたは面白い人だ・・・わかりますか・・・無敵状態でゲームをしても・・・退屈になる時がある」

「それで・・・私を黒水村にご招待いただいたのですか」

「そうだよ・・・情報を制すれば・・・人事なんて簡単に操作できる。武装を解除すれば警察官だって簡単に拉致できる。金があれば外人部隊を雇用できる・・・村落ごと買い占めることができるし、人の心も簡単に操れる。人間は情報が欲しくて欲しくてたまらない生き物だからね」

「あなたは・・・時々・・・殺人衝動を抑えられなくなるのではないですか」

「そうだよ・・・人間にとって人間が死んじゃうのは最高に面白いことだからね・・・このドラマだってそういう意味で成立しているわけだから」

「・・・何故。警視総監を踏み殺したのですか」

「そりゃもう・・・踏みつけてやりたくてたまらなかったからさ」

右京と冠城は・・・録音した和合町長の証言を黒水ケーブルテレビにリークした。

「皆さん、新たな情報を入手し・・・」

黒水町にあるすべての施設は・・・和合町長の支配下にあった。

黒水ケーブルテレビはあらかじめ仕掛けられた爆発物により・・・消滅した。

「私としたことが・・・」

右京の携帯電話がなる。

「次は・・・利佳子ちゃんをやっちゃうよ」

「やめなさい」

「止めたかったら一人でおいで・・・」

待ち合わせ場所に現れたのは利佳子だった。

「またしても・・・私としたことが・・・」

惚れた女を殺された冠城は・・・拳銃に装弾して・・・呼び出しに応じていた。

民家を改造した個人的監獄で・・・冠城を待つ和合町長。

先着したの槙野真理男だった。

「あれれ・・・君のこと忘れてた・・・」

「・・・」

「獣と獣の対決か・・・面白い」

無言で和合を殴りはじめる真理男。

「うわあ・・・面白いなあ・・・計算外の出来事は・・・まさに痛快だ」

そこへ・・・冠城が登場する。

「遅いよ・・・ほら・・・どうするの・・・撃つの・・・それとも・・・憎い相手が殴り殺されるのを高みの見物するのかい」

一瞬、躊躇する冠城。

そこへ・・・右京が登場する。

冠城は発砲し・・・真理男の脚部に銃弾を撃ち込み・・・檻の鍵を撃ち抜く。

「確保」

警官隊が到着した。

「真理男くん・・・君には君の正義があるのでしょう・・・しかし・・・どんな正義も暴力を伴っては無価値です・・・あなたは罪を償って・・・利佳子さんのところへ・・・帰りなさい・・・愛はどんな正義よりも価値があるのです」

「・・・ありがとうございました」

「右京さん・・・俺は警察官失格です」

「僕を呼んだでしょう・・・つまり・・・君は境界線に踏みとどまった・・・僕にはそれで充分です」

あくまで・・・愛の話である。

「ふはっ・・・月並な幕切れだねえ・・・これがテレビの限界ってやつ・・・まあ・・・いいか・・・私は充分に楽しめたから・・・」

「あなたは・・・何もかも知っているつもりかもしれませんが・・・本当に大切なことは何一つ知らない愚か者ですよ・・・人間そのものの姿をあなたは知らない。永遠に理解できない。あなたは人生の本当の楽しみを知ることはないでしょう。今までもこれからも・・・憐れな人だ」

「ぷぴゃひゃおう・・・・受ける~!」

どれだけ蔑まれても和合には感情は生れない。

神にとって人間的感情など無用だからである。

人智を越えるシステムを次々と生み出すこの世界で・・・杉下右京は孤独な戦いを続けるのだった。

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2017年1月 1日 (日)

2017年冬ドラマを待ちながら(キッド)

愛すべき読者の皆様、あけましておめでとうございます。

皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。

2006年の戌年に始ったブログもめでたく十二支最後の酉年を迎えたわけである。

2017年は丁酉である。

酉は金の属性で十干の丁は火の属性。

火剋金(火は金属を熔かすこと)の相剋である。

何かが何かを討ち滅ぼしていく相である。

もちろん・・・そうでなければ刀剣も鍋薬缶も加工が難しい。

原子爆弾によって人類が滅びるならさっぱりするという考え方もある。

もちろん・・・戦いがあって・・・新時代が始るのは世の常なのである。

悪魔としては人類には仲良くしてもらいたいが・・・切磋琢磨して人間同士が憎悪の応酬をするのもそれはそれで面白いのである。

おいおいおいっ。

で、(月)である。混迷を続ける月9は専業主婦願望女と独身主義のアナウンサーの恋という「逃げ恥」から数周遅れた感じのコンセプトのマンガ原作を西内まりや(第49回 日本有線大賞・有線音楽優秀賞受賞歌手)とドラマ初出演の山村隆太(flumpool)で描く「突然ですが、明日結婚します」である・・・これはもう・・・ものすごく危険な匂いがする・・・杉本哲太が出るから見るけどね。さすがに・・・谷間候補なんだな。

(火)は後藤法子の脚本で山本美月の「嘘の戦争」があるわけだが・・・坂元裕二脚本で・・・松たか子、満島ひかり、吉岡里帆を揃えた「カルテット」が圧倒的じゃないか・・・。

(水)は「海月姫」の東村アキコの原作による「東京タラレバ娘」が吉高由里子、榮倉奈々、大島優子というトリオを揃えている。脚本とプロデュースは「花咲舞が黙ってない」のコンビなのでそこそこ手堅い気がするよ。

(木)は「表参道高校合唱部!」の脚本家・櫻井剛の「増山超能力師事務所」があるが・・・主演が田中直樹である・・・。「就活家族~きっと、うまくいく~」は前田敦子、「嫌われる勇気」は香里奈・・・みんな・・・もう何かを少し学ぶべきじゃないのか。まあ・・・谷間があることはいいことだけどな。

(金)は深田恭子の「下克上受験」があるわけだが・・・それに加えて波瑠の「お母さん、娘をやめていいですか?」もあるわけである。ここは激戦区だ。

(土)は早見あかりの「中年スーパーマン左江内氏」があり・・・すでに成海璃子の「リテイク」と武井咲の「忠臣蔵の恋」が年越し継続中なので・・・調整しなければならない。つまりだ・・・(月)と(木)が調整予定地になった方が好ましいわけだな・・・もしも意外と面白かったらどうするつもりだ・・・こわいことは考えたくない。・・・おいっ!・・・言っとくが「精霊の守り人 2 悲しき破壊神」も始るからな。・・・どうした・・・死んだのか。

(日)は大河ドラマ「おんな城主 直虎」と「A LIFE~愛しき人~」の一騎討ちだ・・・多部未華子、木南晴夏、臼田あさ美の「視覚探偵 日暮旅人」もあるぞ・・・。

ま・・・アレだな・・・なんだよ・・・明日は明日の風が吹くんだよな・・・ふふふ。

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Hc2017wi ごっこガーデン。恒例雪山サバイバルの宴新年会々場。

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