心太とテレビと家族の時間(深田恭子)ノルウェーの森は緑じゃないのよ材木だから(小芝風花)
ミドリは嫉妬の象徴である。
つまり・・・「となりの芝生は青い」のである。
バカ売れしたために販売部数的に小説家たちの嫉妬の対象である「ノルウェイの森/村上春樹」の登場人物・小林緑は親の見栄で四ツ谷駅付近の私立の女子中学・高校に進学する。
豊島区北大塚のしがない書店の娘である緑は・・・突然、お嬢様の群れに囲まれ、貧富の格差に喘ぐことになる。
学友とのちょっとした「お食事会」でさえ・・・彼女のお小遣いでは足りないのである。
思春期をそういう陰影の中で過ごしたことは彼女の精神を生傷だらけにするわけである。
まあ・・・それも人生だがな。
小山みどり先生(小芝風花)の物言いがいささか唐突に見えるのは彼女の原型が「小林緑」だと直感できない一部お茶の間の皆さんだけなのだ。
中卒の両親を持つ小学生が目指すのが桜葉学園中等部なのである。
四ツ谷駅付近の私立の女子中学・高校といえば雙葉中学校だ。
それに・・・文京区本郷の桜蔭中学校を足すと「桜葉」なのである。
これに千代田区一番町の女子学院中学校を加えれば中学入試の「「女子御三家」である。
そんなところに・・・中卒の両親を持つ女子が潜り込んだら人間形成に重大な過誤が生じる・・・。
みどりは・・・それを案ずるのである。
なんて児童思いの小学校教諭であることか・・・。
ちなみに・・・主題歌「遺伝/斉藤和義」のイントロは「ノルウェーの森/ビートルズ」を連想させる。
で、『下克上受験・第3回』(TBSテレビ20170127PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・吉田秋生を見た。中卒であるためにある種の幸福から疎外されているという閉塞感に追いつめられた桜井信一(阿部サダヲ)は公立・大江戸小学校の五年生・佳織(山田美紅羽)と偏差値72を要する桜葉学園中等部を父娘で目指そうと決意する。中卒の母親・香夏子(深田恭子)も夫と娘の夢を応援することになり、中卒の祖父・一夫(小林薫)は大工として勉強部屋「俺塾」を完成させたのだった・・・。
寝る間を惜しんで勉強を始める信一と佳織・・・。
寝不足の二人の心身を案ずる香夏子だった。
学習塾には通わせず自分で教えると言った手前・・・ドリルの予習をかかせない信一はさらに睡眠不足になり・・・ついに仕事中に居眠りをするようになるのだった。
スマイベスト不動産で信一に指導される立場の名門・東西大学を卒業した楢崎哲也(風間俊介)は顧客に見せる物件で仮眠をとる指導担当者に茫然とする。
「大変なんだよ・・・予習が」
「だから無理だと言ったんですよ」
「そんなこと言わないで協力してくれよ」
「塾には受験のためのそれなりのノウハウがあるんです・・・テキストだって違うんですよ」
「テキストか・・・お前持ってないの」
「僕が中学受験をしたの・・・何年前だと思っているんですか」
「そうか・・・」
公立の小学校では教わらない「つるかめ算」の「教え方」を考える信一。
中卒仲間たちの集う「居酒屋「ちゅうぼう」で鶴と亀の折り紙を強要する。
そもそも・・・信一のくせに・・・絶世の美女である香夏子を嫁にしているわけである。
どれだけ・・・周囲の男たちに妬まれているか想像するのも恐ろしいが・・・このドラマはそれについては触れないと思われる。
男たちは信一のために兜なども折るのだった。
それは本当は嫌がらせだよな。
「つるかめ算」とは・・・つるの足が二本、カメの足が四本と想定して・・・個体の総数と足の総数から・・・つるとかめの個体数を割り出す問題である。
つるとかめの総数が三十で足の数が百なら・・・つるは何羽いてかめは何匹いるか・・・と問うわけである。
「でも・・・折り紙のつるは足ないよ」
「あるとして・・・」
最初に全部がつるとして考えると足の数は六十である。
足は百なので・・・不足分をかめで補う必要がある。
百から六十を引くと四十である。
つまり・・・かめは二十匹いることになる。
三十から二十を引いてつるは十羽いるのである。
これを応用すると「あわせて四百万円の給与があって・・・三十人の労働力が必要な時に正社員が賃金三十万円、アルバイトが賃金五万円ならそれぞれ何人ずつ必要か」がたちどころに計算できることになる。
同一労働同一賃金の話はどうする。
それはまた別の問題である。
正社員とアルバイトの格差が激しすぎるだろう。
暴動が起きます。
この場合、正社員が十人で三百万円、アルバイトが二十人で百万円なので正社員は確実にアルバイトに半殺しにされます。
・・・もういいか。
佳織も寝不足で授業中に居眠りすることに・・・。
特別措置で・・・「授業中に試験勉強をすることが許された転校生」に悩む小山みどり先生は・・・抜き打ちテストを敢行する。
「私はパスします」と公立小学校の教育レベルを見下す東京大学卒の徳川直康(要潤)が経営する大企業「トクガワ開発」の社長令嬢・麻里亜(篠川桃音)である。
「それなりに難しく作ってあります」
麻里亜に挑戦するみどり先生・・・。
結果・・・麻里亜は80点しかとれず・・・あせりを感じるのだった。
一方・・・コマツコになれそうなリナ(丁田凛美)と美少女のアユミ(吉岡千波)は明るく零点の答案を発表する。
向学心に燃える佳織は30点だったので・・・答案を見せるのを渋るのだった。
そこへ・・・10点だったが・・・0を書き足して100点に偽装した大森健太郎(藤村真優)が割って入るのだった。
リナとアユミは零点シスターズと命名される。
中学生にもなれば・・・零点シスターズが佳織を校舎裏で「リンチ」する展開もあるが・・・基本的にみんないい子である。
まあ・・・小学校高学年でも「無視」くらいはする場合があるけどな。
そういう「世界」と折り合うのも重要な人格形成だ。
寝坊して遅刻しそうになった佳織を校舎裏の抜け道で助けた上に手まで握った健太郎は・・・少し火照っているわけである。
子供たちの世界の「平等」を目指すみどり先生は・・・自動車通学の禁止を・・・徳川直康に申し出るのだった。
このために・・・麻里亜は遅刻しそうになるが・・・今度は佳織が麻里亜の手をとって抜け道に導く。
佳織の手のぬくもりが麻里亜を火照らすのである。
こうして・・・中学受験トリオが結成されたのだった。
信一は仕事をさぼって・・・怪しい窓口の男・山之内(野間口徹)のいる「羽柴進学塾」の卒業生を待ち伏せる。
合格の御礼に来た母親(遊井亮子)からいらなくなったテキストの入手に成功する信一。
しかし・・・仕事をしない信一に楢崎の不信感は募っていく。
「付き合う相手はよく考えろ」と営業部長の長谷川(手塚とおる)は囁く。
「住む世界が違う人間はいるんだよ・・・」
香夏子は娘と連続入浴サービスである。
「がんばるわね」
「うまく問題が解けると楽しい」
「無理しないでね」
「学校のお勉強は座って聞いてるばっかりだから眠くなっちゃう・・・」
浴槽で居眠りして溺死しかかる佳織だった。
病み上がりの舅・一夫のために手作りお惣菜を届ける中卒だが・・・徳においては純真で義務においては堅実な立派に日本婦人の鑑といえる香夏子である。
香夏子はあえて聞いてみる。
「信一さんにチャンスをあたえなかったんですか」
「あたえたさ・・・中学卒業する時におれの弟子にしてやった・・・だが長続きしなかった・・・あいつは何をやっても長続きしないんだ・・・」
「・・・」
高校に行っていれば違う人生があったと・・・信一が思い続けるのは仕方のないことかもしれないと聡明な香夏子は思うのである。
授業中に頻繁に居眠りする佳織を案じて家庭訪問を決意するみどり先生。
「最初に御両親だけに申し上げたいことがあります」
「では・・・俺塾・・・いえ・・・勉強部屋で伺います」
「中学受験を決めたのはお父様ですか」
「はい・・・」
「中学受験のほとんどは・・・親の見栄によるみのです」
「え」
「失礼を承知の上で申します・・・身上書によりますとお父様の最終学歴は中学校ですよね」
「ええ」
「自分の夢を叶えるために子供に中学受験を無理強いなさらないでください」
「えええ」
「受験は佳織の希望でもあります」と香夏子・・・。
「そりゃあ・・・子供は親のために・・・そう言いますよ・・・でも世の中には本当に何もしなくても勉強が出来る子はたくさんいるんです・・・親の見栄でそういう子たちの集団に送り込まれたら・・・普通の子がどれだけ傷つくことになるのか・・・」
盗み聞きをしていた佳織が泣きながら飛び出す。
「先生・・・どうしてお父さんをいじめるの・・・お父さんは佳織のためにがんばってくれているのに・・・私・・・お父さんと勉強ができて楽しいよ・・・お父さんのためにいい中学に入っていい高校に入って・・・いい大学にはいって・・・お金持ちになるのは・・・悪いことですか」
「先生・・・今日のところは・・・」
「・・・はい」
娘の涙に両親は泣いた・・・みどりももらい泣きである。
小学校の廊下で・・・。
「佳織ちゃんは・・・お父さんのことが本当に好きなのね」
「先生は自分のお父さんのこと好きじゃなかったんですか?」
「本当はどうだったのか・・・もう・・・わからなくなってしまったなあ」
「・・・」
みどり先生は算数の時間に特別に「つるかめ算」を出題する。
喜んで挙手する佳織。
「正解です・・・よく勉強していますね」
「やったね」と佳織を讃える零点シスターズである。
「イェーイ!」と弓手のポーズで答える佳織だった。
屈託がないように見える教室だった。
信一は一日の無理のない時間割を作る。
香夏子は一緒にテレビを見て一緒に楽しむ時間も必要だと思いつつ・・・お風呂場に漢字を覚えるための装置を手作りするのだった。
誰もが羨む良妻賢母なんだなあ。
しかし・・・信一の職場には暗雲がたちこめていた。
契約が取れたことを部長の報告する楢崎・・・。
「お前はどうなんだ・・・」と部長は信一を睨む。
「楢崎くんとはいいコンビになりました・・・」
「いえ・・・この契約は・・・僕だけの力で獲得したものです」
「え・・・」
そりゃ・・・そうだ・・・。
それは本当のことだから。
どう考えても社会人失格の信一なのである。
所詮・・・中卒だからな。
おいおいおい。
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