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2017年1月29日 (日)

ステージママに憧れて(小泉今日子)迷宮のオーディション(島崎遥香)脱がされたセーラー服(浜辺美波)美人すぎたらアイドルにはむかない(早見あかり)

21世紀の黒沢明とも言える脚本・演出家である。

おい・・・いろんなところから石が飛んでくるぞ。

もっとゆるゆるでもっとちまちましてもいいが・・・物凄く大人になった感じがするな。

出オチのような豪華キャスティングもなく・・・淡々とホームドラマとスーパーヒーローものをミックスしている。

いい感じだなあ・・・。

人間って成長するんだなあ・・・。

まあ・・・薄めた毒でも・・・死ぬ人は死にます。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第3回』(日本テレビ20170128PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。脚本と演出を分業するのは設計士と建築士の職業適性が必ずしも同じとは言えないからである。素晴らしい脚本でなければ素晴らしいドラマはできないが・・・演出によっては素晴らしくならない場合がある。逆に素晴らしくない脚本によって素晴らしいドラマが出来上がることもまずない。だが・・・脚本家と演出家が一緒なら・・・素晴らしくない脚本を素晴らしいドラマに仕上げることができる可能性がある。二つの才能を併せ持つものだけが為せる奇跡とも言える。そういう意味で福田雄一は21世紀の黒沢明と言えないこともないのである。

前回のオープニングは喧嘩の仲裁だったが・・・今回は自殺志願者のスケッチである。

すでに第一回でやっているのでリフレインということになる。

刑事ものの定番でもある。

スーパーヒーローものでもお馴染みのシチュエーションだ。

「屋上での対話」というものの一つのヴァリエーションとも言える。

喧嘩の仲裁は「放置」というオチのないオチになっていたが・・・今回は凸凸警察コンビの出番も作り一応のオチもある。

そういう駆け引きも「一人」だから可能なのである。

東京のとあるビルの屋上。

自殺志願者は若者(戸塚純貴)である。

すでに小池刑事(ムロツヨシ)と警察官刈野(中村倫也)が現場に到着し説得に当たっている。

「入試に落ちた・・・もうだめぽ」

「どこの大学落ちたんだよ」

「京都大学だよ・・・東大は受かったのに・・・」

「え・・・」

「第一志望は京大なんだよ」

「一般論としてさ・・・東大でいいんじゃね」

「・・・これだから一般人は・・・」

「いや・・・俺なんて東京理科大学理学部数学科中退だぜ」

「そんな・・・名もなき大学を中退しておめおめと生き恥さらしてんのか」

「ひどいな・・・刈野・・・お前はどこ」

「警視庁警察学校です」

「あそこは・・・学校という名の職業訓練所だからな」

「Artist☆Artist・・・」

「それはトップコートの養成所」

「・・・高卒です」

「俺も中退だから・・・学歴一緒な」

「そんな人たちがボクを説得できるのか」

「いや・・・今・・・死んだら・・・お前も高卒だぜ」

「え」

説得されかかる自殺志願者。

そこへ・・・スーパーサラリーマン左江内氏(堤真一)が登場する。

「あ・・・今・・・あなた・・・飛んできましたよね」

「スーパーマンですので・・・長引きそうですか」

「ええっと」

「困るんですよ・・・会議があるので」

「会議?」

「スーパーマンですがサラリーマンです」

「えええ」

「君、飛び降りるなら早くして」

「くそ・・・死んでやる」

しかし、弾丸より早いスーパーマンは自殺の完遂を許さない。

救助マットに降ろされる自殺志願者・・・。

そこへ・・・自殺志願者の母親が到着する。

「あなた・・・京都大学合格していたのよ」

「え」

「受験番号・・・間違えて・・・東大の時のを持って行ったのよ」

「早く言ってよ・・・ママ~」

こういう子が数年後に社会に出てエリートと呼ばれることの恐ろしさである。

「もってけ~セーラー服を♪脱がさないで~」

左江内家の事実上のボスで妻の円子(小泉今日子)、都立源高校に通うはね子(島崎遥香)と公立骨川小学校に通うもや夫(横山歩)の姉弟は居間で盛り上がっている。

「早いじゃない・・・ご飯用意してないよ」

「いつものことでしょ・・・これから自分で作ります」

「連絡ぐらいしなさいよ」

「しました」

「ママ・・・パパを着信拒否リストに入れてるでしょう」

「あ・・・忘れてた」

「パパ・・・私・・・明日、オーディションなんだ」

「オーディション?」

「アイドルグループのルージュパンク」

「はね子なら・・・来年はセンター確実だよ」

「親馬鹿にもほどがある」

「はね子・・・私の作戦通りにやるのよ」

「わかった・・・友達のつきそいできたけど受かっちゃいました作戦ね」

「そうそう・・・その気はないけど・・・世の中がほっとかない・・・伝説の始りよ」

「世の中・・・そんなに甘くないぞ・・・」という左江内氏の言葉を聞くものはいない。

家庭でも疎外されているが職場であるフジコ建設営業第三課でも期待されていない左江内氏・・・。

重要な商談のための会食に・・・簑島課長(高橋克実)が同行させるのはお調子者の池杉(賀来賢人)である。

「君には・・・四代目マイホームガールのCM撮影に立ちあってもらいたい」

「広報課の仕事じゃないですか」

しかし・・・広報課の財前(植木祥平)には別件があるらしい。

「とにかく・・・我々はお得意様と鰻を食べなければならんのだ」

「・・・」

その頃・・・はね子はクラスメートのさやか(金澤美穂)とおっかけのサブロー(犬飼貴丈)を伴って第一次面接会場へ。

「私はつきそいなんですけど」と参加条件である気合の入りまくったジャージ・スタイルでアピールしまくるのだった。

「ジャージを着て来てくれたので大丈夫ですよ」

「ジャージは普段着なんです~」

四代目マイホームガールはルージュパンクのセンターの真中ありさ(浜辺美波)なのだった。

現場に到着した左江内氏に礼儀正しく挨拶するありさ・・・。

「うちの娘がオーディション受けに言ってるんです」

「すごい~左江内さんの娘さんなら可愛いんでしょうね~」

「どちらかというと妻に似ているんです」

「左江内さんて・・・代理店の方?」

「いえ・・・不動産屋です・・・今日限りのピンチヒッターです」

「な~んだ・・・いい子ぶって損した」

「え」

ありさは・・・表の顔と裏の顔を使い分けるベタなアイドルだった。

東宝シンデレラ系だけにアイドルらしからぬ正当派美少女である。

「今日限りの人にお愛想言っても無駄だもの」

「さっきまでいた下っ端っぽい助監督の人にはお愛想ふりまいていたじゃない」

「わかってないな・・・助監督ってやつは監督になったりするのよ・・・まあ・・・なれないやつもいるけどさ」

「なるほど」

「左江内さんがいろいろとお世話してくれるなら・・・娘さんのこと・・・最終審査で私がプッシュしてあげるけど」

「いやいや・・・そんなことしなくていいよ・・・全然期待してないから・・・最終審査まで行かないだろうし・・・まあ・・・娘がやりたいって言うから応援はするけどね」

「甘いな」

「え」

「アイドルの仕事・・・なめたらあかんで」

しかし・・・第一次審査を突破するはね子だった。

「今日・・・ありさって子に会ったよ」

「なんで?」

「うちの四代目マイホームガールなんだ・・・最終審査ではね子をプッシュしてくれるって言うから断っておいた」

「何してくれてんだよ」

「だって・・・はね子にはあんな生意気な子になってもらいたくないもの」

「ああいう子はね・・・芸能界の荒波に揉まれて生意気になってんの・・・そこいくとウチのはね子は最初から生意気だから大丈夫なんだよ」

「大丈夫って・・・」

「明日も行って土下座して頼みこめ・・・最強のプッシュをお願いしてこい」

「そんなの無理だよ」

「だったら・・・一ヶ月小遣いなしだかんな」

「う」

「おなしゃす(お願いします)」

ママはジャイアンなのか・・・パパはのび太なのか・・・。

困惑する左江内氏・・・しかし・・・広報課の財前がやってくる。

「あの・・・ありさちゃんが左江内さんを御指名なんですよ」

「え」

「一体・・・どうして気に入られたんですか」

ママに鍛えられている左江内氏は使いっパシリの達人なのだ。

「どうして・・・私を呼んだんですか」

「いい仕事をするからに決まってるじゃん」

「・・・」

左江内氏は現場で様々な人々に愛想をふりまき・・・仕事をこなすありさに尊敬の念を抱く。

「がんばるねえ」

「私は・・・センターだし・・・いろいろと責任があるから」

「おじさん・・・なるべく責任はとりたくないな・・・責任なんて大嫌いだよ」

「あのね・・・そんなこといって許されるのは大学生までなんじゃないの」

十六歳のありさに説教される左江内氏である。

「ええと・・・お願いしたいことがあって」

「なに?」

「いや・・・やはりいい」

「気持ち悪いな・・・やっぱり・・・娘をプッシュしてほしいの?」

「それはない」

・・・といいながら土下座をする左江内氏だった。

そこへ・・・ありさの母親(村岡希美)がやってくる。

「おじさん・・・ちょっと席をはずしてくれる」

「はい」

「スポンサーの方に・・・あんな口の利き方をして・・・」

「大丈夫・・・あの人は今日だけの人だから」

「気を抜いてはダメよ・・・やっとセンターになれたんだから・・・これまでの努力を思い出して」

「わかってるよ」

「ちゃんとしてね」

「ちゃんとするよ」

母親が去った後で・・・左江内氏は呟く。

「辛いなら・・・やめちゃえばいいのに」

「そんなわけにはいかないのよ・・・わかるでしょう」

「なんで・・・ファンのため・・・それともお母さんのため?」

「・・・」

悩ましい問題から逃避するためにマンガ喫茶に向う左江内氏。

店員(佐藤二朗)はラストオーダーの時間を告げる。

「早いね」

「24時間が当たり前の時代の終焉・・・一つの時代はすでに死んでいる」

「北斗の拳を読んでます」

「おう・・・ピッコロの」

「それはドラゴンボール・・・」

「九時閉店です」

「せめて終電までやれよ」

左江内氏はママに問うのだった。

「はね子はまさか・・・君のためにやりたくもないことをやってるんじゃ・・・」

「何言ってんの・・・はね子は昔からアイドルに憧れてたじゃん」

「・・・そうだったっけ」

「このタイミングで真中ありさとお近づきになれるなんて・・・なんてったって相手はトップアイドルよ・・・たまには父親らしいことしなさいよ」

「・・・」

仕方なく・・・翌日も現場に向う左江内氏である。

「え・・・また」と簑島課長。

「聞きましたよ」と下山(富山えり子)・・・。「ありさちゃんに気に入られたそうじゃないですか」

「え・・・なんで」と池杉。

「だったら・・・俺が行けば良かった」と簑島部長。

「しかし・・・係長には毛髪がありますからね」と口火を切る蒲田(早見あかり)・・・。

「オレもそろそろカツラにするかな」

「えええええ・・・なんでですか」と池杉。「課長がハゲだって周知の事実なのに今さらなんでカツラなんですか。課長といえばハゲ、バゲと言えば課長でしょう・・・みんな陰ではハゲ丸課長って呼んでるのに・・・トランプみたいなカツラでも被るつもりですか」

「もうやめてください・・・」と火消しにかかる蒲田。「それにトランプはカツラじゃありません。髪型ですよ。国際問題になりますよ。マルハゲの課長とは違いますから」

よろめく課長である。

「俺が気に入られたのは・・・パシリとして使い勝手がいいからだと思います」と係長。

「ああ」と一同納得するのだった。

現場に到着する左江内氏・・・しかし・・・ありさの姿はない。

真中ありさ誘拐事件が発生していたのだった。

芸能プロダクションの社長(大河内浩)は「犯人は身代金一億円を要求してきました」と凸凸警察コンビに伝える。

「私におまかせください・・・得意ジャンルです」と小池刑事。

調子に乗って警笛を吹く刈野。

その頃・・・スーパーサラリーマン左江内氏は犯人の部屋の扉を破壊していた。

犯人は・・・マネージャー(郭智博)だった。

ありさは縛られてベッドに寝かされている。

「なんだ・・・お前は」

「変なおじさんではありません」

「ふざけるな」

襲いかかった犯人は地球の果てまで吹っ飛ばされるのだった。

ありさを乗せてオーディション会場までひとっ飛びである。

「あのバカマネージャーに脅されて・・・このまま死ぬかもしれないと思ったら・・・まだまだアイドルを続けたいと思ったんだよね」

「そうですか・・・」

ありさは仕事に復帰した。

「ありさは解放されました」と社長。

「すべて・・・予定通りです」と手柄を立てる小池刑事である。

調子に乗って警笛を吹く刈野。

忘却光線によってなぜ助かったかは忘れたが・・・アイドルとしてさらにステップアップしたありさだった。

「私はつきそいだったんですけど」

「心からアイドルになりたいと思わなければできないお仕事です」

「ええと・・・わかんないですね」

「覚悟のない人には向きません」

はね子は・・・計画通りにならない世界を知った。

「はね子は美人すぎたのよね・・・ファンがもしかしたら俺でも付き合えるかもと思える程度の可愛さでないと・・・だからさやかちゃんは受かったのよ」と円子。

「私って可愛すぎたのか・・・」とはね子。

「そうそう・・・どっちかというとトイレ行かない系なのよ」

左江内氏はお祝いのケーキを買ってきた。

「なによそれ・・・」

「敢闘賞だ」

「・・・」

「だって・・・はね子はなんてったって我が家のアイドルだもの」

不貞寝していたはね子は微笑んだ。

心温まる話である。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

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