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2017年1月10日 (火)

大貧乏(小雪)お金があればなんとかなりますか(伊藤淳史)

さて・・・日曜日に集中するドラマたちである。

大河ドラマをレギュラーにすると・・・どうしてもサバイバルになるわけである。

ここまでこの脚本家については「リッチマン、プアウーマン」「失恋ショコラティエ」「She」「アンダーウェア」の四作品について言及しているが・・・シリーズを通じて語ったことはない。

「リッチマン、プアウーマン」(2012年)が平均視聴率12.4%、「失恋ショコラティエ」(2014年)が平均視聴率12.3%でそこそこ需要があるわけである。

だから・・・これはあくまで好みの話なのである。

つまり・・・キッドにはいつも少しものたりない感じがするわけである。

今回もせっかく・・・戦国時代のように夫婦が裏表で視聴率を争う感じの中、妻が先攻したわけだが・・・キッドの心はつかめなかったようだ。

まあ・・・小雪(40歳)、伊藤淳史(33歳)の実年齢差7歳のなんちゃって同級生カップルはすでに・・・キャスティングの段階で無理があったよね。

いや・・・同級生に見えないこともないよ。

そうかな。

で、『大貧乏・第1回』(20170108PM9~)脚本・安達奈緒子、演出・土方政人を見た。小雪と言えば「リーガルハイ」の安藤貴和役が記憶に新しい絶世の美人である。そして「池袋ウエストゲートパーク」の松井加奈役に代表されるように裏街道まっしぐらなのである。そんな彼女が今回演じるのは・・・真面目でちょっと小心者のシングルマザーなのだった。・・・いやあ・・・ものすごくむず痒いね。あえていえば・・・「僕と彼女と彼女の生きる道」の北島ゆら役でイメージを換装するしかないな。・・・そこかっ。

全く事情は語られないが・・・シングルマザーの七草ゆず子(小雪)である。

ネーミングからして・・・冬の女だな。

仏壇に母らしき女性の写真が飾られている上に・・・夫の遺影がないことから・・・母の代から男運がないらしい。

子供は小学校二年生の翔太(今井暖大)と六歳の幼稚園児・実結(野澤しおり)の二人。

初詣に出かける三人からは・・・それほど「貧しい感じ」はしない。

初詣で念ずるのが「祈願」ではなく「感謝」であるという神社にとって都合のいいことを言う小生意気な翔太だった。

しかし・・・その頃・・・母子の住むアパートの洗濯機の蛇口ホースが破損し・・・仄暗い下水口には翔太の脱ぎ捨てた靴下が堤防を築く・・・という大洪水が始っていた。

これは認知症の独居老人を満載する都会の集合住宅の未来の姿である。

あらゆる階段から水が流れ・・・街は加湿されまくるのだ。

漏水事件の加害者として階下の住人から損害賠償を請求されるゆず子・・・。

二百万円ほどあった貯金はたちまちゼロに近い金額になった。

それでも・・・ゆず子にはまだ絶望感はなかった。

人材派遣会社「DOH」に勤務するゆず子は総務部の正社員だからである。

ところが・・・新年早々・・・会社は倒産してしまうのだった。

「あんた・・・社長はどこにいる」

「え」

「あんた・・・愛人なんだから・・・知ってるだろう」

「愛人ではありません」

「ええええええ」

どよめく社員たちである。

社員に対する事情説明会で・・・「DOH」代表取締役社長の天満利章(奥田瑛二)は「申しわけありませんでした」をひたすら繰り返す。

不祥事に対する二十五億円の賠償金支払いで経営が暗礁に乗り上げたらしい。

「社内預金はどうなりますか」

「契約条項に従って・・・返金不能です・・・申しわけありませんでした」

「ふざけんな」

たまたま隣にすわっていた経理部の野村梨沙(仲里依紗)はつぶやく・・・。

「私の二百万円・・・」

「私なんか・・・三百万円よ・・・」

思わず漏らすゆず子だった。

「毎月・・・天引される二万円は痛かったのに・・・」

とにかく・・・ゆず子は五百万円ほどあった貯金を全額失った上に・・・無職になってしまったのだった。

早速・・・ハローワークに通うが・・・御時勢である・・・四十歳のシングルマザーの条件に見合う職探しは難航する。

手元にある現金は・・・二万三千円・・・。

「失業保険までこれで・・・やりくりするのか」

蒼ざめるゆず子。

しかし・・・大家は水道の修理代二万円を請求するのだった。

「さ・・・三千円」

気絶寸前のゆず子である。

「ママ・・・お腹すいた」

「ママ・・・新しいシューズ買って」

「・・・」

子供たちだけは不幸にしないと誓ったゆず子だが・・・先立つものがないのである。

二十代のママ友である櫻沢まりえ(内田理央)はアドバイスする。

「同窓会行くべきっすね」

「こんな時に・・・」

「みんないい年だから・・・就職先、世話してくれるかもです」

「なるほど」

「独身男がいたらたぶらかすのも手です」

「私はそういうのは・・・ちょっと」

ゆず子は男をたぶらかさないタイプらしい・・・。

「えええええええ」

誰だよ・・・。

同窓会である。

しかし・・・親身になってくれる同窓生は一人も現れないのだった。

それどころか下劣な男に売春をもちかけられる始末である。

だが・・・そんなゆず子を見つめる柿原新一(伊藤淳史)である。

高校時代・・・ゆず子のクラスメートだった新一は今でも女神のように崇めているのだ。

そして・・・新一は年商100億円超の柿原法律事務所の弁護士なのである。

つまり・・・リッチマン、プアウーマンふたたびなのであった。

しかし・・・こちらでは・・・リッチマンは童貞の四十男で・・・プアウーマンは彼など眼中にないのである。

柿原は「DOH」の倒産に直感的に不審なところがあると気付く。

弁護士としての柿原は・・・ゆず子への思いを秘めて面会の約束をとりつける。

ゆず子は背に腹は変えられないところまで追いつめられていた。

子供たちの食事代さえないのである。

「この人が食事をごちそうしてくれるの」

「バカ・・・お腹がすいただろう」

幼い兄妹も必死であった。

その無邪気さに柿原の心も緩む。

「ごめんなさい・・・実は僕はあなたのクラスメートです」

「え・・・」

「黙っていて御免・・・」

「御免・・・あなたのこと・・・まったく覚えがない・・・」

「あはは」

うっかりアルコールを口にしたゆず子は漫画的な酒乱の症状を示す。

柿原の事務所に乗り込む母子・・・。

そのゴージャスな感じに・・・酔いが醒めるゆず子だった。

「あなたは・・・凄いね・・・それにくらべて・・・私は・・・」

生れて初めて女性とデートのようなものをしたらしい柿原は有頂天である。

ストーカーめいたメール攻勢を開始するのだった。

残務処理のために出勤したゆず子は・・・会社にやってくる柿原をもてあますのだった。

営業部社員の加瀬春木(成田凌)は火事場泥棒のように金目のデータを盗み出していた。

そこへ・・・経理部長の浅岡礼司(滝藤賢一)が姿を見せる。

加瀬はカムフラージュのためにゆず子を利用する。

そこで・・・ゆず子は加瀬を柿原に対する魔よけとして利用する。

「ごめんね・・・好きな人がいるの」

考えようによっては・・・ものすごく嫌な女であるが・・・ゆず子はただ・・・波風をたてたくないだけなのである。

そして・・・「女」を売らないことに頑ななのである。

おそらく・・・それがゆず子の「譲れない一線」なのであろう。

しかし・・・加瀬はゆず子との関係を維持したい一心で・・・「疑惑」について口にする。

「倒産の裏にはなんらかの不正がある」

「だとしても・・・私のような末端の人間にはどうすることもできないわ」

「末端なんて・・・誰が決めたんだ・・・」

「え」

「君が自分自身を貶しているだけじゃないのか」

「末端の人間を貶しているのはあなたじゃないの」

売り言葉に買い言葉である。

ゆず子は逃げ出した。

「今・・・追いかけるところですよ」

「え」

加瀬のアドバイスに従って追いかけた柿原だったが・・・ゆず子を見失う。

「で・・・会社の不正を暴くためにどうするんですか」

「まず・・・決算報告書などのデータを入手して・・・」

「ここにありますけど・・・いくらで買ってくれますか」

「え」

童貞だが敏腕弁護士である柿原は一夜で手掛かりを掴むのだった。

一方・・・「全部・・・僕のせいなんだ・・・初詣で新しいシューズが欲しいって御祈りしたから」と息子に言われたゆず子は・・・パートで働くことを決意する。

弁当屋で働くゆず子。

そこへ・・・柿原から着信がある。

(今日中に・・・会社に入って内部記録を確認したい)

「私・・・今、パート中で」

(不正な会計操作の可能性があった・・・およそ・・・30億円の内部留保が生じているかもしれない・・・つまり裏金だ)

「・・・」

(君が不当に奪われたものを取り戻すチャンスがあるんだよ)

「でも仕事が」

(代理のものを派遣する)

代理として派遣されたのは・・・新人弁護士の木暮祐人(神山智洋)だった。

小暮はコメディーの脇役としては結構、いい味出してるな。

他が弱すぎるからだろう。

加瀬もいい味出しているがクールでスマートだからな。

つまり・・・物足りないんだな。

しかし・・・肝心な経理データのファイルは紛失していた。

経理部員に電話で確認するが・・・ファイルの所在は不明である。

「捜査終了ね」

「・・・」

結局・・・息子のサッカーの試合の日に・・・新しいシューズは間に合わなかった。

この時・・・息子は拗ねた態度をとるが・・・描写が少し甘い。

弁当を投げ捨てるほどの態度をとって試合には行くのである。

子供だからですませてしまうと・・・なんだかなあと思うのである。

試合場には柿原が新しいシューズをもって現れる。

「これ・・・高いんじゃないの」

「君はそれに見合う働きをしただろう」

苦しい帳尻合わせである。

ゆず子は女を売ったわけではなく・・・柿原も買ったけではないという・・・譲れない一線なのである。

そこへ・・・経理部員の梨沙から着信がある。

「私・・・不正な送金をしていたかもしれません・・・ファイルは私が持っています・・・あなたになら・・・託せると思いました」

ゆず子は子供たちを柿原に託して・・・梨沙と待ち合わせた駅に向う。

反対側のホームにいる梨沙を発見するゆず子。

しかし・・・何者かに線路に突き落とされそうになった梨沙は逃げ出す。

ゆず子は梨沙を捜し・・・ファイルを抱えた浅岡経理部長を発見するのだった。

企業内犯罪がらみの窮乏と恋愛・・・ミステリーとラブコメ。

混ぜるな危険の気配が・・・濃厚に立ち込めるが・・・そういう手がないわけではなく・・・そこそこ面白いのかもしれない。

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