天文十四年、南渓和尚が井伊直盛の娘をお粗末と詰る(小林薫)
井伊信濃守直平は延徳元年(1489年)または文明十一年(1479年)に生れたとされている。
永正四年年(1507年)頃には父・直氏の家督を継いだと思われる。
この頃、尾張守護で遠江守護を兼ねる斯波義達は遠江国の領有権を賭けて今川氏親と対峙していた。
永正十年(1513年)に遠江国に侵攻した斯波義達は大敗を喫する。
この時、直平は斯波方に味方していたという。
永正十四年(1517年)に斯波義達は再び、遠江国に侵攻するが・・・またも大敗し今度は生きて虜囚の辱めを受けてしまうのである。
この敗戦で斯波家は求心力を失い、守護代織田家が台頭してくる。
今川家は遠江国を手中に収める。
天文五年(1536年)に今川家の相続争いである花倉の乱が起きる。
この時、直平は・・・玄広恵探を擁立する福嶋越前守助春(あるいは福島正成)側についたと言われる。
結果として恵探は瀬戸谷の普門寺で自刃。今川義元が家督を相続する。
天文六年(1537年)に北条家当主の氏綱は駿河へ侵攻する。
これに直平は呼応して今川を挟撃するために討って出る。
そのために・・・今川家は東駿河を北条家に占領されてしまう。
だが・・・遠江の反乱は鎮圧されてしまうのである。
直平の娘が・・・今川家の人質となったのにはそういう流れがあります。
直平の敗北の歴史・・・そして今川家にとって井伊家は油断のならない臣下なのである。
で、『おんな城主 直虎・第3回』(NHK総合20170122PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は井伊家を支配する今川義元とその軍師・太原雪斎の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。どうするのかと思っていたら井伊直平の娘・佐名(花總まり)の側室からのお下がりの屈辱を「おてつき」というストレートな表現で描いてきましたな。さすがは・・・ドラマ「白夜行」(2006年)で唐沢雪穂(福田麻由子→綾瀬はるか)を桐原洋介(平田満)が「おてつき」するのをストレートに描いた脚本家ですな。「女性に対する凌辱」や「不条理な運命」への拘りが感じられます。だから義元(春風亭昇太)がおとわ(新井美羽)を「おてつき」するのではないかとハラハラいたしましたーっ・・・そんなことできるかーっ・・・でございます。脚本家はドラマ「わたしを離さないで」(2016年)でも可憐な少女たちの残酷な運命をこれでもかというほどに描きつくしましたからねえ・・・ある意味、第一人者ですな。今回も・・・御転婆娘の冒険譚風を装いながら・・・これでもかというくらいに守護大名と国人衆のどす黒い軋轢を描き切っておりましたねえ。天晴でございました。
文明三年(1471年)、今川氏親生れる。文明八年(1476年)、氏親の父・義忠が戦死。長享元年(1487年)、義忠の従兄弟・小鹿範満永を自害させ氏親が家督を継承する。明応ニ年(1493年)、氏親の伯父・伊勢盛時(北条早雲)が伊豆を侵略。明応三年(1494年)、氏親は遠江国に侵攻。永正五年(1508年)頃、権大納言中御門宣胤の娘(寿桂尼)が氏親の正室となる。盛時は三河国で松平長親に敗北。永正十一年(1513年)今川氏輝が生れる。永正十四年(1517年)、玄広恵探が生れる。永正十五年(1518年)、象耳泉奘が生れる。永正十六年(1519年)、今川義元が生れる。大永二年(1522年)、今川氏豊が生れる。大永六年(1526年)、氏親が死去し氏輝が家督を継承する。天文四年(1535年)、氏輝・北条氏綱連合軍が甲斐国の武田信虎を攻める。天文五年(1536年)、氏輝が死去し花倉の乱が勃発。天文六年(1537年)、義元は武田信虎の娘を正室に迎える。天文七年(1538年)今川氏真(龍王丸)が生れる。天文十四年(1545年)、井伊直盛の娘が出家する。
今川義元が家督を継承して八年の歳月が過ぎていた。義元も数えで二十七歳になっている。
守護大名・今川家といえども・・・一瞬の油断も出来ない下剋上の世である。
父・氏親、兄・氏輝がようやく治めた駿河国と遠江国だが・・・東に北条、北に武田という強敵があり・・・国人衆たちの動向も油断はできなかった。
公家の娘である母親の寿桂尼と臨済宗の僧侶である太原雪斎に支えられ・・・義元はようやく・・・守りから攻めに転じようとしていた。
太原雪斎は庵原城主・庵原左衛門尉政盛を父に持ち、出家して京都五山の建仁寺で修行をした。
義元が出家すると雪斎はその教育係となったのである。
義元の家督相続に尽力し・・・甲斐の武田信虎との関係を修復したのも雪斎によるところが大きかった。
雪斎は軍事・政治両面で義元を支えていた。
母親の寿桂尼もまた・・・父・氏親の存命時から・・・国人たちの支配に抜かりがなかった。
隙を見せれば謀反の気配を示す国人たちを懐柔する手段を心得ている。
雪斎は禅により悟りを開いた達磨忍びであり・・・寿桂尼が藤原のくのいちであることは言うまでもない。
公家風の化粧をして・・・蹴鞠に熱中する・・・後に魔王・織田信長によって痛恨の戦死を遂げたことで・・・誤解されやすい義元だったが・・・生粋の源氏の忍びなのである。
白粉お歯黒は世を欺く仮の姿なのである。
太原雪斎、寿桂尼、そして今川義元が「敵」と定めたのは・・・北条家であった。
駿河の河東地方を占拠する北条勢を一掃することが至近の課題だったのである。
東に勢力を集中するために・・・北の武田と手を結び・・・北条の背後にある関東の旧勢力に呼びかける。
そして・・・父の代から反抗を繰り返す遠江国の国人衆を骨抜きにする。
特に井伊家には・・・あの手この手で陰謀をめぐらすのだった。
井伊直平の男子を三人まで暗殺し・・・後継者は追放した。
井伊の総領は今川のくのいちで籠絡する。
かくて・・・井伊家は後継者不在に追い込まれたのだった・・・。
幼い女子が出家しようが知ったことではないのである。
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