« 冬の終わりの打ち上げ花火はエビングハウスの忘却曲線のように(深田恭子) | トップページ | 天文二十四年、松平二郎三郎元信元服す(菜々緒) »

2017年2月19日 (日)

君の異常な愛情に縛られて海に沈む私でよかった(堤真一)

哀愁というものがどこから沸いてくるのか・・・多くの人々は知らない。

人の心は記憶の断片にすぎないので・・・哀愁には経験による個人差がある。

「あしたのジョー」といえばパンチドランカーである。

パンチドランカーは酔いどれ天使の一種である。

酔いどれ天使はパンチだけでなくギャンブルやもちろん酒にも溺れる。

スタジオの片隅てパンチドランカーと別の酔いどれ天使がやりあっているのを見たことがある。

酔いどれ天使が酒の匂いを漂わせてパンチドランカーの頭を小突き・・・私はヒヤヒヤした。

パンチドランカーというものはパンチを秘めているのである。

しかし・・・パンチドランカーはパンチを繰り出すことはなかった。

私はパンチドランカーも酔いどれ天使も好きだったので安堵した。

それからしばらくしてパンチドランカーは海で溺れて死んだ。

それからだいぶたって酔いどれ天使は酒に溺れて死んだ。

人は皆死んでいくのだ。

「あしたのジョー」がスーパーヒーローとして海に落ちて・・・帰らぬ人になったのかもしれないという流れは私を哀愁の海の底に招く。

しかし・・・多くの人々がそうとは知らずになんとなく哀愁を感じるのだろう。

人は感じやすい生き物だからである。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第6回』(日本テレビ20170218PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。スーパーサラリーマン左江内氏(堤真一)の本名は左江内英雄である。さえないヒーローなのである。自称警部の小池刑事(ムロツヨシ)は小池郁男で制服警察官の刈野(中村倫也)は刈野助造である。まあ・・・なんとなくそういう感じなのだろう。

左江内氏の忘却光線の恩恵を受けた小池警部は立て続けに警視総監賞をゲットして食べるラーメンもいつもの「来々軒」から「行列のできるラーメン店」から出前するようになっているというのがフリである。

刈野がやってきて「小池さんがラーメンを食べるのを妨害する」という藤子ワールドのお約束を「宿命」として位置づける。

「小池警部・・・事件です」

「なんだよ」

「爆弾を仕掛けた犯人が責任者の携帯電話を教えろというので・・・小池警部の番号を教えました」

「何してくれてんだよ」

そこにボイスチェンジャーで変声した犯人からの着信がある。

(八景島シーパラダイスに爆弾をしかけた・・・避難を開始したらただちに爆破する・・・爆弾の捜索は二人だけで行うこと・・・こちらには全警察官の写真入り名簿がある)

「どんな縛りなんだよ」

いつものんきなフジコ建設営業3課・・・。

簑島課長(高橋克実)が「土日に家族サービスで千葉の牧場にピクニックに行く」と聞いた蒲田(早見あかり)が饒舌を展開する。

「えええ課長が家族サービスするなんて意外です~私の中の課長の好感度急上昇です~課長は土日はずっとパジャマで寝ていると思ってたのです~娘が積木くずしになっていても一緒に風呂でも入るかとか検討違いの冗談でごまかして結局一人で風呂に入ってまた同じパジャマを着てまた寝て日曜日はゴルフに行ってど下手もど下手だふりにつぐだふりをします~」

「いい加減にせんか~」

「今のはどちらかというと・・・左江内係長の土日なんじゃないのか」と池杉(賀来賢人)が矛先を変える。

「だけど係長は奥様がこわいから家では奴隷でしょう・・・会社では係長だけど家ではアルバイト扱いでしょう」

「ひどいな」と左江内氏。

「違うんですか・・・」

「土日の予定については毎週・・・私が提案している」

「えええええ」

左江内家の金曜の夜は週末プレゼンテーションが行われる。

左江内氏が家族に週末のレジャー計画を提案するのである。

「週末はまず河口湖までドライブします」

「ええ~・・・寒い」とお約束でクレームをつける妻の円子(小泉今日子)・・・。

「河口湖に何があるの」と都立源高校に通うはね子(島崎遥香)・・・。

「水があるだけでしょう」と円子。

「河口湖は水たまりではなく魚がいます・・・しかも釣った魚をその場で焼いて食べることができます」

「無理・・・私・・・頭のついてね魚無理~・・・私にとって魚はお刺身だけなの~」と円子。

「僕はステーキがいい」と公立骨川小学校に通うもや夫(横山歩)・・・。

「じゃあ・・・猟銃持ってバッファローを狩りに行くか・・・あはは」

左江内氏の冗談はスルーされるのだった。

「翌日はどうするの」

「富士急ハイランドに行きます」

「ええ~・・・二日続けて富士山周辺なんて・・・遭難するわ・・・天は我々を見放した!ってなるわ」

「それは八甲田山・・・」

「八甲田山って何?」とはね子。

「新田次郎原作の映画だよ・・・ちなみにこの子達は私の命だ~!は聖職の碑ね」

「もういいわ・・・提案は却下・・・明日は日帰りで八景島シーパラダイスに行くことにします」

「えええええええ」

真っ白な灰になる左江内氏だった。

こうして・・・左江内一家は・・・爆弾の仕掛けられた八景島シーパラダイスに突入するのである。

水族館と遊園地が複合したレジャー施設に到着した左江内ファミリーである。

「昨日・・・素晴らしいインターネットの世界で下調べしたんでしょう」

「いろいろとあるらしいね・・・水族館とか・・・乗り物とか」

「じゃあ・・・さっそと乗り物券を買ってきて・・・私たちはブランチしてるから」

「王様か」

チケット売り場を捜す左江内氏に「助けを呼ぶ声」が届くのだった。

「こんな時に」と思いつつ声に導かれバックヤードの事務所にたどり着く左江内氏。

そこには・・・小池刑事が爆弾魔からの指示待ちをしているのだった。

「何があったんですか」

「あなたは・・・」

「ああ・・・変身するのを忘れてました」

スーパーマンに変身する左江内氏。

「えええ」

「スーパーマンです」

「そんな馬鹿な」

左江内氏は刈野を小指で持ち上げてみせる。

「本物です凄いですスーパーマンです」

「実はこの施設には爆弾が仕掛けられているのです」

「えええ」

「潜伏中の犯人とか・・・仕掛けられた爆弾とか透視できませんか」

「それはちょっと無理ですね」

「意外とつかえませんね」

「それより・・・家族のことが心配なのでちょっと失礼します」

「え・・・スーパーマンに家族が」

「はい」

「ただし・・・爆弾のことは他の人には知られないようにしてください・・・避難指示をしたらすぐに爆発させると犯人が言っているので」

「わかりました」

食堂でブランチを楽しむ妻と子供たち。

「大変なんだ・・・爆弾が仕掛けられているらしいので・・・すぐに帰ってくれ」

「なんだって・・・そんな馬鹿なことあるわけないでしょう」

「本当なんだよ」

「で・・・君はどうするつもり」

「私は爆弾処理の手伝いを」

「えええ・・・ただのサラリーマンがどうしてよ・・・嘘確定じゃん・・・どうせ・・・課長から接待の仕事でも急にふられたんでしょう」

「じゃあ・・・仕事ってことでもいいから」

「そんな下らない仕事に行かせるわけないでしょう」

「くだらないって・・・僕が働いているからこうして遊びにも来れるわけだし」

「あ・・・パパ・・・それダメよ」とはね子。

「なんだって・・・ちがうでしょう・・・私がきちんと子育てしてるから・・・君は安心して働いていられるんでしょう」

「すね夫・・・お前も男ならわかるだろう」

「無理・・・小学生にサラリーマンの悲哀なんてわかんない」とすね夫。

「とにかく・・・今日は家族サービスを優先してね・・・さあ・・・誓って・・・私はみんなのおかげで安心して働かせていただいています」

「私はみんなのおかげで安心して働かせていただいています」

「よろしい」

子は鎹と言うが・・・一方的に鎹を打ちこまれている左江内氏なのである。

しかし・・・家族とはそういうものなのである。

子を思う父親はみんなそうやって生きている。

そうでない男は人でなしなのだ。

円子ほどの悪妻ではないとか・・・左江内氏ほど恐妻家ではないと言う人もいるかもしれないが・・・それは単なる体裁にすぎない。

左江内夫妻が夫婦のあるべき姿と言っても過言ではないのである。

そうでない夫婦は夫の暴力に耐えかねて妻が家出をするようなろくでもない家に決まっている。

おいおいおい。

とにかく・・・夫の指示に従うような家族ではなかった。

「せっかくの休日に仕事に行こうとして申しわけございませんでした」と謝罪する左江内氏なのである。

犯人からの指示を待つ小池警部。

逆探知装置が設定された小池警部の端末だが・・・爆弾魔は意表をついて事務所の電話にかけてくるのだった。

「なぜだ」

(逆探知をさけるために決まってる)

「さすがだな・・・どうだ・・・ついでに爆弾の隠し場所を教えてくれないか」

(そうでんな・・・ついでに・・・って誰が教えますかいな)

「うまい・・・ノリツッコミがうまい」

「犯人は芸人です・・・プロダクション人力舎を重点的に」とどこかにあるらしい捜査本部に連絡する刈野・・・。

「よせ・・・人力舎にしぼるな・・・事務所の先輩のシティボーイズさんも元は人力舎なんだから」

「アッシュ・アンド・ディ・コーポレーションにしますか」

「やめろ・・・それは俺の事務所だから・・・芸人専門の事務所じゃないから」

(こちらが本気であることをお知らせしようと思いましてね)

「どうするつもりだ」

(そこから出て・・・海を見てください)

「なぜ・・・そんなことを」

(いやなら・・・爆発させますよ)

「待て・・・言う通りにするから」

(だけど・・・いちいち逆らうから)

「そんなことないよお・・・それは勘違いだってばあ・・・ほらあ・・・事務所の人とかあ・・・いろいろ言われてえ・・・ちょっと心が揺れただけでえ・・・あなたのことを・・・信じてるってばあ」

犯人に対して甘えんぼ彼女モードで応対する警部だった・・・。

海上で大爆発が発生する。

「うわあ・・・」

「本気ですね・・・犯人・・・本気ですね」

(どうだった・・・)

「すごかった」

(わかったら・・・携帯電話の逆探知を解除して・・・)

「しました」

(それでは・・・小池警部の宝探しゲーム・・・スタート!)

「おい・・・ちょっと・・・待て」

不安げに見守る施設の職員たち。

「・・・大丈夫です・・・もう目星はついてますから」

コートの裾をたくし上げる挙動不審な態度で出動する小池警部。

「ここだけの話ですが・・・あれは・・・全く目星がついていないということです」

何故か職員たちに解説する刈野である。

まあ・・・一応ツッコミポジションなのでお茶の間向けに解説しているわけだ。

左江内一家は水族館へ。

「ほら・・・もや夫・・・美味しそうな魚だよ・・・夕飯は魚にしようか」

「ママが焼いてくれるの」

「無理~海鮮居酒屋に行くの」

「バカだね・・・ママは魚を焼くコンロに触ったことないんだよ」と姉として弟を諭すはね子だった。

「ちょっと・・・何・・・そわそわしてるの」

爆弾が気になって心ここになしの左江内氏ほ咎める円子である。

「いや・・・魚が凄いなあって思って」

「パパ・・・演技下手すぎ~」

「ちゃんと家族サービスしたら・・・仕事に行かせてあげようと思ったけど・・・そんなんじゃダメだね」

「そんな~・・・ちょっとトイレに行ってくる」

なんとか抜け出す左江内氏は小池警部と合流する。

「どうなりましたか・・・」

「とにかく爆弾を発見しないと」

「五分だけ・・・お手伝いします」

「なにそれ・・・ウルトラマンより二分長い自慢?」

「いえ・・・種族は違います」

「そうなの」

手分けをして捜索を開始することになるが・・・左江内氏の前にデート中の池杉と蒲田が現れる。

「課長・・・何してるんですか」

「その恰好・・・アトラクションのアルバイトか何かですか」

「君たち付き合ってるのか」

連続美人局事件の時に池杉が語っていた「本命」とは蒲田だったらしい。

超絶なよなよもったいぶる演技の池杉に呼応して超絶ぶりぶりカマトトする蒲田である。

「このことは内緒にしてください・・・課長は社内恋愛に厳しいので」

「もちろん」

「いいえ・・・係長は言っちゃいます・・・だって嘘がつけない人だもの」

「言わないよ」

「言ったら・・・バイトのことをバラしますからね・・・会社はバイト禁止ですからね」

「しかし・・・君たちが付き合ってたとはなあ」

「実は・・・係長が私たちのキューピットなんですよ」

「ええっ」

「言っちゃう・・・」

「言っちゃおう・・・うふふ」

「言うの・・・えへへ」

「言えない・・・ふふふ」

超絶バカップルのコントによって貴重な五分が経過するのだった。

「トイレ長い・・・」

「ちょっとお腹こわしちゃったみたい」

「うそ・・・どうせ・・・課長と仕事の電話してたんでしょう」

「違うよ・・・」

「はい・・・チェック」

円子は左江内氏の携帯端末の履歴をチェックする。

「あら・・・本当ね」

「だから・・・してないってば」

円子の表情が微かに和らぐのだった。

恐ろしいことだが・・・左江内夫妻は・・・円満なのである。

わかる人にはわかる夫婦の機微というものなのだ。

爆弾探しを続ける小池警部は広場にさしかかる。

そこで爆弾魔からの着信がある。

(ここで・・・指令があります)

「なんだ・・・あれか・・・爆弾魔が刑事に無理難題をしかける奴か」

(あれ・・・あるでしょう・・・ペンとアップルの奴)

「流行を追うのは嫌いだ」

(っていうか・・・もう・・・いまさら・・・って奴でしょう)

「深夜で来週・・・マンガ家と作曲家の番組で曲作るって言ってた」

(アレをさ・・・焼売と小龍包やって見せて)

「ええ~・・・そんな恥ずかしいこと~」

(じゃあ・・・爆発させる)

「やります・・・やりますから~」

薄く物悲しいBGMがかかり・・・ペン焼売小龍包ペンを演じる小池刑事だった。

小龍包の肉汁の熱々な感じを熱演する小池刑事にいつしか観客が集まってくるのだった。

水族館の出口でもや夫は「戦隊ヒーロースカマンショー」のポスターに魅かれる。

「これが見たい」

「じゃあ・・・そうしようか」

「ええ・・・私はあんまり・・・」とはね子。

「わかった・・・じゃあ・・・別行動にしよう・・・はね子はアトラクションに乗りたいんでしょう・・・パパはレストランの席取りね」

「ええ~」

とにかく・・・爆弾捜索を再開する左江内氏。

そこにはね子がやってくる。

「レストランの席取りは私がするから・・・パパは仕事に行っていいよ」

「え」

「私も実は友達と待ち合わせしているんだ・・・それに・・・別行動にしたのは・・・仕事に行っていいということだと思うよ・・・ママはただパパが家族サービスしてるってことを子供たちにアピールしたいだけなんだから・・・」

「はね子・・・」

つまり・・・円子は・・・左江内氏が子供思いであることを子供たちに伝えようとしている妻であると見切っているのだった。

そういう家族関係の複雑さを理解できない人は一定数存在します。

左江内家は・・・夫婦は仲良く・・・親子の絆も固いのである。

そう見えない人は本当の家族というものを誤解しているだけなのだ。

上空より捜索を開始した左江内氏は観客の輪の中で芸を披露する小池警部を発見する。

今回・・・忘却光線発生器は手動操作で・・・小池警部の記憶は継続している。

おそらく・・・左江内氏はマニュアルを少し読んだのでスーパーマンスーツの㊙テクニックに精通し始めたのだろう。

よくあることである。

「何をしているんですか・・・」

「爆弾は時限式でもあるらしい・・・私が犯人の気を引いている間になんとか捜してくれ」

「それは大変だ」

あせって捜索を開始する左江内氏だが・・・例の男(佐藤二朗)タイムである。

今回はヒーローアトラクションの演出のアルバイトをしているらしい。

ヒーローショーの敵役が衣装とともに渋滞にまきこまれ・・・到着が遅れているという事態が発生。

コスプレおじさんとしてスカウトされてしまう左江内氏だった。

「いいんじゃないか・・・今はスーパーマンVSバットマンとか何でもありだし・・・ヒーローがダークヒーローになっちゃってアイドルがカルトかカルトがアイドルか仏が神に神が仏に悪魔が天使に天使が悪魔に毒針がスプレーにスプレーが毒針に純情・愛情・過剰に課長に係長に元AKBと元ももクロの交差点なんちゃってママはアイドルなんてったって艶姿なのです」

笑うしかない左江内氏だった。

左江内氏がスーパー戦隊とともに舞台に登場するとどよめく観衆。

その中には円子ともや夫の姿もあった。

「パパ・・・」

敵役としてカスレッドたちの波状攻撃に適当にやられる左江内氏。

思わず父親を応援するもや夫。

「パパがんばって」

さらに円子も。

「パパしっかり」

うっかり本気を出す左江内氏。

スーパーパンチでカスレッドは虚空に消えた。

確実に死んだよな・・・。

「スーパーマンが戦隊ヒーローに勝っても諸行無常である」と演出家は語った。

もや夫も円子も観客も喜び・・・なんとなくうれしい左江内氏である。

カスレッド・・・安らかに眠れ。

人が死ぬのは哀しいことだが・・・いつまでも哀しんではいられないのだ。

そういう問題なのか。

タイムリミットが迫り・・・あせる小池刑事と左江内氏。

そこに謎の老人(笹野高史)が現れる。

「ピーターパンというアトラクションにおかしなものが置いてありますよ」

神の助けである。

神に対し「ありがとう・・・くそじじい」と暴言を吐く嘘をつけない左江内氏。

癇癪を起こすくそじじいだった。

出前用の岡持ちの中に隠された爆弾。

「うわあ・・・もう一分前だよ」

「どうしますか」

「とにかく・・・アトラクションだと思ってる周囲の人を・・・」

「避難させられません」

「三十秒切っちゃったよ」

「どうしますか・・・」

「スーパーマン・・・これを海に捨てちゃってください」

「ええ・・・もう残り時間が・・・」

「助けて・・・スーパーマン・・・みんなを助けて・・・スーパーえもん」

「・・・」

いつの間にか・・・円子ともや夫、はね子といつものクラスメイト・・・さやか(金澤美穂)とサブロー(犬飼貴丈)、そして池杉と蒲田までもが・・・集合している。

律儀な左江内氏は忘却光線を発動させてから海へ向って飛翔する。

「パパ・・・」

大爆発である。

人々は記憶を失った。

刈野が辻褄をあわせる。

「投げましたか・・・」

「投げた・・・俺は・・・昔・・・ピッチャーだったから」

肩を故障して投げられなくなった過去まで遡る偽りのエピソードに激しく頷くはね子だった。

しかし・・・父親に託されたゴキブリの次に行列に並ぶことが嫌いな母親のための席取りの使命を思い出しレストランに走るのだった。

「今・・・係長がいたような気がする」

「いるわけないでしょう」

ぼんやりしている池杉は記憶の残滓を感じるが・・・ドライな蒲田は幻想を振り払うのだった。

ただ・・・円子ともや夫は何かもやもやとしたものを感じながら・・・海を見つめていた。

父親不在のまま・・・帰宅した左江内一家・・・。

ぼんやりとした不安を抱える三人。

「遅いわねえ・・・何やってんのかしら」と円子。

「仕事でしょう」とはね子。

「パパは・・・もう帰ってこない気がする」ともや夫。

無意識の底で・・・爆炎の中に消えた左江内氏の記憶が燻っている三人。

そこへ・・・帰宅する左江内氏。

「なんでビショビショなの」

「イルカショーを見てたらイルカに襲われて気絶」

「おかげで渋滞の中・・・私が運転して帰って来たのよ」

「むしろ・・・僕を残して帰るなんてひどいじゃないか」

「仕事に行ったんだと思ってたから」

「僕が無事に帰ってきてうれしいんだろう」

「何言ってんの」

「またまた~」

熱烈に円子とイチャイチャする左江内氏だった。

家族に広がるやすらぎの輪・・・。

「じゃあ・・・パパはお風呂いただきます」

「沸いてないわよ」

「自分で沸かしま~す」

爆弾魔は「来々軒」の出前持ち(矢本悠馬)だった。

「お前・・・焼き鳥屋のアルバイトじゃなかったのか」

「ゆとりですがなにかじゃないよ」

「小池さん・・・あんたはひどい人だ・・・出世したからといって二十年間贔屓にしていた店に来なくるなんて・・・おやっさん・・・ショックで寝込んじゃいましたよ」

「あんちゃん・・・すまなかった・・・今からラーメン食べてくる・・・ダンカンこのやろう」

「殿・・・僕もたべたい~」

ビートたけしの物まねをしながら小池刑事は去った。

追いかける刈野。

出前持ちは放置されたので仕方なくダンスを踊るのだった。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

|

« 冬の終わりの打ち上げ花火はエビングハウスの忘却曲線のように(深田恭子) | トップページ | 天文二十四年、松平二郎三郎元信元服す(菜々緒) »

コメント

この時間 ドラマが被りすぎていて
複数録画できるレコーダーなのに
佐江内氏の録画を諦めなくちゃならない事が多くて
毎回見てはいなかったんですが
ギャクはちょっと長すぎる気もしたけれど
第6話とっても良かったです
全編通してのバカバカしさの中に
ちょっと歪んでいるのかもしれないけれど
夫婦の愛 家族愛にホッコリできて逆に心に残りました
超お気に入りかも*\(^o^)/*

火曜日 やや高尚なカルテットを楽しみ
金曜日は シンプルな下剋上
土曜日の佐江内氏 で締める

テイストが違うドラマがたくさんあって楽しい冬クールに
なりました(*^o^*)


投稿: chiru | 2017年2月20日 (月) 23時47分

シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン

それぞれに味わい深いドラマが揃いましたよね。

今季は大河と時代劇とアライフが女流作家。

残りが男性作家なのですが・・・女流ものの方が
たくましい感じで
男性ものはどことなく物悲しい感じがいたします。

物悲しい用心棒と・・・。
物悲しい中卒・・・。
物悲しいスーパーマン・・・。
物悲しいカルテット・・・。

男は哀しい生き物なんだな・・・。

その中でも
やってることはいかにもドタバタハチャメチャなのに
物凄く物悲しい左江内氏・・・。

ペーソスという懐かしい言葉が思い出される感じでございます。

とくに・・・今回の左江内氏不在の左江内家の
心温まる不安感は・・・素晴らしい仕上がりで
ございましたよねえ。

傑作と言ってもよろしいのではないでしょうか。

くだらないことをやり続けてきたあげくの
この境地・・・トレビアンでございます。

寂しいドラマのラインナップで
最終回を迎えると・・・物凄く寂しいのではと
予感する今日この頃でございます。


投稿: キッド | 2017年2月21日 (火) 01時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 君の異常な愛情に縛られて海に沈む私でよかった(堤真一):

» 土曜ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』 第6話 [レベル999のgoo部屋]
「爆破予告で家族サービス崩壊」 内容遊園地に爆弾を仕掛けたと言う連絡を受け、小池(ムロツヨシ)は、刈野(中村倫也)とともに遊園地へ。 そんななか、左江内(堤真一)は、家族サービスで遊園地にいた。相変わらず愚痴る円子(小泉今日子)たちだったが、その時、危険を知らせる音が!遊園地の事務室にいくと、小池達が居た。...... [続きを読む]

受信: 2017年2月20日 (月) 00時02分

» スーパーサラリーマン左江内氏 (第6話・2017/2/18) 感想 [ディレクターの目線blog@FC2]
日本テレビ系・土曜ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(公式) 第6話『爆破予告で家族サービス崩壊』の感想。 なお、原作:藤子・F・不二雄氏の漫画『中年スーパーマン左江内氏』は未読。 刑事の小池(ムロツヨシ)はここ数カ月、無意識のうちに事件を解決しては、警視総監賞を幾つも手にしている。実のところ、左江内(堤真一)の手柄なのだが、それを知る者はいない。休...... [続きを読む]

受信: 2017年2月20日 (月) 06時50分

« 冬の終わりの打ち上げ花火はエビングハウスの忘却曲線のように(深田恭子) | トップページ | 天文二十四年、松平二郎三郎元信元服す(菜々緒) »