天文二十四年、松平二郎三郎元信元服す(菜々緒)
今川義元は清和源氏足利家筋吉良家の分家にあたる今川家の総領である。
ある意味で・・・時の将軍・足利義輝から血筋は遠いわけだが・・・実力的には駿河遠江二ヶ国の守護で三河国もほぼ領土化し・・・さらに尾張国を侵略中という太守となっている。
そのために全国から人材も集まってくる。
たとえば今川水軍を率いた伊丹康直は享禄ニ年(1529年)摂津国伊丹城が落城し父の元扶が討ち死にして諸国を放浪後、永禄元年(1558年)に駿河国に流れて今川義元に仕えることになる。
今回、検地の役人として登場する岩松氏が何者かは明らかではないが・・・岩松氏も足利氏流である。
しかし、母系に新田氏の流れもあり・・・南北朝時代には新田一族と足利一族の立場を使い分けて巧みに生き残ったと言われている。
岩松氏の一族には南朝方で戦った新田遠江又五郎経政(田島経政)などもいるわけである。
岩松氏本家は上野国新田金山城に拠ったが天文十七年(1548年)に家老の横瀬(由良)氏に岩松氏純が自害に追い込まれる。
没落した岩松一族が今川義元を頼ったことは充分に妄想できる。
今回・・・ドラマの中で小野但馬守政次は井伊の隠し田を「これは南朝の皇子の里」と言い逃れるわけだが・・・南朝方でもあった岩松氏としては「心得た」と言う他はなかったという妄想も成立するわけである。
基本・・・野武士経験のあるものは落ちぶれた南朝方にシンパシーを感じるのだ。
で、『おんな城主 直虎・第7回』(NHK総合20170219PM8~)脚本・森下佳子、演出・福井充広を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は三代続いた井伊家の家老で井伊直盛の家宰でもある小野政次の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ドラマの中では井伊一門衆と家老家の対立軸が強調されていますが・・・そもそもは・・・井伊総領家の相続争いが葛藤を生み出しているわけでございます。叔父である直満の嫡男が総領家の直盛の娘に婿入りすることには分家による主家乗っ取りの気配があり・・・総領家の家老としては危機を感じて当然なのですよねえ。総領家とは言うものの国人領主の寄合所帯でございますからねえ。その上で隠居した直平や事実上の支配者である今川家との関係も良好に保たなければならない。そもそも・・・小野家は文武の文の方を担当するために抜擢されたらしい流れもあるのでなかなかに陰惨な関係が構築されていくわけでございます。さらには井伊谷宮や小野宮という氏神的な神道系と・・・龍譚寺に代表される臨済宗ネットワークとの軋轢も妄想できるところでございます。龍譚寺の高僧が小野神社に巣食った鬼を討ったとか屈服させたとかいう伝承が生れる勢いでございます。勝者の歴史の中で闇に消えた怨念がなかなかに蘇っているようでございます。毎週、闇落ちしている政次・・・どこまで墜ちて行くのか・・・。
明応元年(1492年)、大河内左衛門佐元綱の娘とされる於富の方が生れる。明応二年(1493年)、水野清忠の次男として忠政が生れる。永正八年(1511年)、松平信忠の嫡男として清康が生れる。大永五年(1525年)、清康が鈴木重政を攻める。大永六年(1526年)、清康が西郷信貞を攻め岡崎城を築城。清康の嫡男として広忠が生れる。享禄元年(1528年)忠政の継室となった於富の方が於大の方を出産。享禄二年(1529年)、清康が吉田城、宇利城などを攻め、三河国統一をほぼ達成。忠政は清康に降伏し、於富の方を離縁し、於富の方は清康の継室となる。天文4年(1535年)、清康は尾張攻めの最中に家臣の阿部正豊に斬られ死亡。松平信定が岡崎城を横領。広忠は暗殺を逃れ潜伏。於富の方は川口盛祐に再嫁し川口宗吉を出産。天文九年(1540年)、今川義元の援助で広忠が岡崎城を奪還。天文十年(1541年)、於大の方が広忠の室となる。天文十一年(1543年)、於大の方が竹千代を出産。天文十三年(1544年)、広忠と於大の方が離縁。天文十六年、竹千代が織田家に拉致される。天文十八年(1549年)に広忠が死亡。今川軍捕虜となっていた織田信広との交換で竹千代は駿河で人質となる。未亡人となっていた於富の方は華陽院と名乗り竹千代祖母として付き添う。駿府で華陽院は源応尼の名で竹千代を元服まで養育した。
「それで父上はどうして死んだのですか」
「妾はしかとは知りませぬ・・・家来たちの申すには急な病だったとも言いますし、織田の刺客だった片目の岩松という忍びに毒針を打たれたとも言います・・・領地を御検分中に野伏せりに襲われたと申すものもありました」
「岩松と申すものは・・・今川家にもおりまする」
「岩松は源氏の忍びとして各地におるものでございます」
「そうなのですか」
「・・・妾は竹千代殿はお爺様のような名将になられると思いますよ」
「お爺様・・・」
「清康公はそれはもう猛々しいお方でございました・・・なにしろ・・・あっという間に三河一国を治めてしまわれたのです」
「しかし・・・結局、家来に斬られたのだろう」
「・・・」
「我は精々・・・家来に斬られぬ主になろうと思う」
「それはなかなかのお覚悟でございますね・・・」
駿府の松平屋敷の天井裏から今川の忍び岩松八弥が忍び出た。
その顔には鬱屈した影があった。
今川から派遣された検地の役人は二俣城主の松井宗信の配下で岩松三太夫と名乗った。
井伊谷の館で当主・直盛を始め・・・主だった国人衆が使者を饗応する宴を開いている。
そのざわめきが龍譚寺の次郎法師の庵にも聞こえてくる。
奥山のくのいちである伊予が庭先に現れた。
「伊予か・・・今川の使者はどのような男であった」
「なかなかの色男でございましたよ・・・しかし・・・あれは忍びでございますね」
「ふふふ・・・どちらにしろ・・・妾は男に興味はないがな・・・伊予・・・これへ」
伊予は縁側に寄った。
「もっと・・・近うに」
「はい」
次郎法師は伊予を抱きよせた。
伊予は豊かな胸乳を持っている。
次郎法師は襟元から手を差し入れて・・・その感触を楽しむ。
女として生まれながら・・・次郎法師は男というものに興味がわかなかった。
次郎法師は女が好きなのだ。
次郎法師に導かれ・・・伊予は喘ぎ始める。
「愛いのお・・・」
次郎法師は伊予を抱きあげる。
女に生まれながら女しか愛せない。
次郎法師の出家の理由である。
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