地獄の長いトンネルを抜けると地獄だった(吉岡里帆)
弱肉強食の世界において人を食いものにする人は普遍的な存在である。
金メダリストを育て上げる親も養豚場の経営者にどこか似ている。
芸能界に憧れる未成年者を選抜し消費者向けに出荷するビジネスも合法的なのである。
売買春は法律で罰せられるがグレーゾーンは常にある。
人間のどの部分を性的対象ととらえるかには個人差があるが売り手は売りどころを心得ているものだ。
競泳選手が競泳用水着姿をプールサイドで撮影されることに性的な意味合いがないと断言はできない。
話題の芸能人が一部報道で「水着姿が嫌だった」と主張したと第三者が発言している時に本人の水着写真を大きく掲載することが報道という名の印刷物を売りだすビジネスなのである。
一方で獲得した信者のお布施で成立する宗教団体はなるべく大きく報道されることが信者獲得のための広報手段として利がある場合が多い。
不特定多数のイメージの問題ではなく不特定多数の誰かを獲得できれば目的が達成できるのである。
朝鮮半島の利権を中露で争うような物騒な事態はそれなりに白熱するものだ。
もちろん・・・そういう舞台裏の事情はなるべく見せずに「夢」を売るのが王道だが・・・時には生々しい現場をさらしてしまう外道があってもいい。
吹けば飛ぶようなスタッフたちは右往左往することになるが・・・それがショー・ビジネスなのである。
人が人を食う世界で自分だけが安全だと思う方がどうかしている。
パンツをはかないでスボンをはく人もいればパンツをかぶる人もいるのが世界というものだ。
誰が何を食べるのかは食べられる方ではなくて食べる方が決めるのだ。
やろうとおもえばやれる。
こっちだってやれる。
人々が脅し合うのは・・・食べられたくない一心なので仕方ない。
で、『カルテット・第5回』(TBSテレビ20170214PM10~)脚本・坂元裕二、演出・土井裕泰を見た。カルテット・ドーナツホールの第一ヴァイオリン・巻真紀(松たか子)は夫が失踪中の人妻である。世界的指揮者を祖父に持つ第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)はまきまきのストーカーであるが・・・巻の自宅でまきまきに一方的な愛を告白する。そこで何者かが玄関の鍵を解錠しドアを開ける・・・。
巻氏の失踪の謎を探るチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)の依頼者はまきまきの夫の母親である巻鏡子(もたいまさこ)である。
「息子は嫁に殺された」という鏡子の疑いが・・・妄執ではないかという結論にたどり着いたすずめはまきまきに対するスパイ行為の放棄を鏡子に申し出る。
軽井沢の古い教会で・・・ボイスレコーダーを返却しようとするすずめだった。
「まきさんは人を殺すような人ではありません」
「あの女・・・夫婦の部屋に男を連れこんでいたんだよ」
チェックした寝室に性的な行為後の気配がなかったことに落胆した鏡子なのだった。
「別府さんはゴミを捨てに行っただけです」
「あの女は夫が失踪した後にパーティーで馬鹿笑いをするような女なんだよ」
「まきさんは裏表があるような人ではありません」
「何を今さら・・・あんただって・・・嘘をついてあの女に近づいたんじゃないか・・・綺麗事を言うんじゃないよ」
他人の弱みにつけ込むという恥ずべき行為を恥ずかしげもなく行う鏡子には正義はない。
ただ・・・ひたすらどす黒いのである。
何が彼女をそうさせたのかは明らかではないが生れつきなのかもしれない。
「とにかく・・・私はもう辞めます」
すずめは鏡子の綺羅綺羅しいバッグにボイスレコーダーを押しこんで教会を去った。
入れ替わりに元地下アイドルでライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)が年老いた悪魔の潜む教会に足を踏み入れる。
こうして教会は悪魔の巣窟と化すのだった。・・・おいおいおい。
別府家の別荘・・・。
時々ノーパンのヴィオラ・家森諭高(高橋一生)は練習の途中ですずめに問う。
「あの・・・まきさんがベランダから夫さんを突き落としたという話・・・まきさんにしたかい」
「しませんよ・・・イエモリさん・・・まきさんの夫さんにからかわれたんじゃないですか」
「かもしれないけど・・・本当かどうか・・・すずめちゃんなら聞きだせるんじゃないかと」
「聞き出せません!」
そこにまきまきと別府が合流し密談は中断する。
ライブレストラン「ノクターン」の楽屋・・・。
谷村大二郎(富澤たけし)と多可美(八木亜希子)のオーナー夫婦が言い争いながら登場。
「夫婦が互いの携帯を覗きあうことの是非」を問いかける。
「わぼみいたくるやしはけではだどす・・・・」
カルテットとして和する四人だった。
「一人ずつお願いします」
「私は別に構わないと思います」とまきまき。
「僕は大体平気です」と別府。
「見るけど見られるのは嫌だ」とヤモリ。
「嫌です」とすずめ・・・。
夫婦の間の秘密についてそれぞれの感覚は不一致しているのだった。
まきまきは鏡子が訪問した時に笑顔で応対する。
鏡子の腰を揉むほどの良い嫁ぶりである。
「息子が死んだ気がする」
鏡子は邪な目付を隠して探りを入れる。
「ごめんね」とまきまき。「もっと会いに行けばよかったね・・・そんなことを考えてたんだ・・・そんなことないのに・・・」
嫁として姑を気遣うまきまきの言葉に落胆する鏡子なのである。
それぞれの内面を抱えながら演奏するカルテット。
その夜の「ノクターン」には来客があった。
別府の弟の圭(森岡龍)である。
「別荘の件なんだけど・・・」
「売るのかい・・・」
「兄さん次第さ・・・他の人たち・・・無職なんだって」
「でも・・・みんな・・・一生懸命・・・」
「あきらめきれない人たちなんだろう」
「・・・」
「母さんとも話したんだけど・・・とにかく仕事として成立しないとね」
「仕事として・・・」
別府は弟の紹介で音楽事務所のプロデューサー・朝木国光(浅野和之)からの仕事を請負うことになる。
恐ろしいほどのタイムリーさは・・・それが普遍的な話であることの証明に過ぎない。
別府ファミリーが一流なのかどうかは定かではないが・・・朝木音楽事務所は・・・カルテットドーナツホールが夢見る大きなホールでの演奏の仕事を宛がう実力を持っている。
「夏のクラシック音楽のフェスティバルに参加しませんか」と誘う朝木・・・。
「無理です・・・ヘタクソだから生卵をぶつけられます」と消極性を発揮するまきまきだった。
「とにかく・・・演奏を拝聴しましょう」
「ノクターン」での演奏中・・・まきまきは渋い顔をする朝木を盗み見る。
「きっと・・・あきれて帰っちゃいましたね・・・」
しかし・・・朝木は楽屋にやってくる。
「素晴らしかった・・・どうしてあなた方がプロになれなかったのが不思議なくらいです・・・ファースト・・・あなたは何をしていたのですか」
「主婦です」
「とにかく・・・皆さんには華がある・・・あなたたちは売れます」
「・・・」
「しかし・・・問題点がないわけではない・・・たとえばチェロ・・・遊び過ぎです」
「はい」
「ヴィオラ・・・楽譜を読みこんで」
「はい」
「セカンドは・・・もっと自分を主張して」
「はい」
「そしてファースト・・・もっと音に酔ってください」
褒められてアドバイスされて・・・昇天しかかるカルテット。
「気をひきしめて」
「ああいう人は口が上手いから」
「でもうれしかった」
「あんなに褒められたの生れて初めて・・・」
カルテットは薔薇色の未来にうっとりした。
「僕は一度でいいから破天荒な男と言われたいという夢があります・・・」と別府。
「家内安全・・・無病息災」とまきまき。
「ジュノンボーイもしくはベストジーニストに」とヤモリ。
「お布団の中に住む事です・・・それから自分の部屋に回転ずしを引く事です」とすずめ。
「それぞれの夢は別として・・・今はカルテットドーナツホールとしての夢を見ましょう・・・僕たちは今・・・上り坂にさしかかっているのかもしれません・・・みんなで坂の上を目指しましょうよ」
別府の提案に笑顔で答えるメンバーたちである。
みんな・・・みぞみぞしてきたらしい。
夜更け・・・「インタビュー」の書き起こしのアルバイトをしていたまきまきは「くそっ」と罵る。
「なにが・・・くそなんですか」と通りすがりのすずめ・・・。
「このカメラマン・・・くそ野郎なのよ・・・結婚しているくせに・・・妻には愛を感じないとかなんとか」
「・・・」
「私・・・夫が消えた次の日・・・友達の結婚パーティーに出て・・・くそ野郎って叫んだもの」
「え・・・パーティーに・・・心配じゃなかったんですか」
「お義母さんに連絡したら・・・お義母さんがとんできて・・・取り乱して・・・その時・・・思い出したのよ・・・彼がお義母さんと二人暮らしの時に・・・彼が面倒くさくなってお義母さんを捨てたって話してたこと・・・私は悟ったの・・・ああ・・・今度は私が捨てられたんだなって・・・だから・・・パーティーで夫のことをくそ野郎って罵って思いっきり笑顔で写真撮ってもらったの・・・」
「・・・その話・・・お母さんにしたんですか」
「できないわよ・・・可哀想だもの」
すずめはその話を信じ・・・自分の中でひとつの霧が晴れたような気分になった。
まきまきは・・・すずめのセーターに取付いた鏡子のバッグの綺羅綺羅の破片をゴミとして取り除く・・・。
すずめは秘密が発覚することの恐怖に慄くのだった。
カルテットをプロデュースする朝木は人気ピアニストの演奏補助の仕事をブッキングする。
それは・・・四人の想像を遥かに凌駕する「お仕事」だった。
「皆さんにはピアニストの若田弘樹さんと五重奏を演奏してもらいます」
演出家の岡中兼(平原テツ)はカルテットに説明する。
アシスタントの藤川美緒(安藤輪子)はファンタティックな翼を背負ったピアニストのセット模型に点灯して綺羅綺羅をサービスするのだった。
その華やかさにみぞみぞするカルテット・・・しかし。
ステージ衣装に着替えた四人はとてつもない違和感に包まれる。
「キュンキュンしますね」と藤川。
「キュンキュンするね」と岡中。
「あの・・・これは・・・」
「設定です」
「設定・・・」
「皆さんは地球外生命体の戦闘型カルテット・・・美剣王子愛死天ROOなのです」
「戦闘型カルテット・・・」
「それぞれのキャラは・・・アラサーキャラ、童貞キャラ、どS王子キャラ、妹キャラです」
「キャラ」
「お決まりのセリフもあります」
「ありがとう・・・ショコラ」とアラサーまきまき。
「時すでにお寿司」と童貞別府。
「よろしく頼ムール貝」とヤモリ王子。
「鬼茶碗蒸し」と妹すずめ・・・。
四人は異次元空間に足を踏み入れる。
「次は振付です」
「振付・・・」
「ダンスです」
「ダンス・・・」
踊らされるカルテットなのである。
キュンキュンするポーズを決める四人。
階段で弁当を使うのだった。
「なんか・・・なんかな」とイエモリ・・・。
そこへ・・・アシスタントフジカワがお茶を持ってやってくる。
「こんなところですみません」
「いえ・・・」
「皆さん・・・カルテットを組んで長いんですか」
「数ヶ月です・・・」
「それでこんな大きな舞台に立てるなんて凄いですね」
「・・・」
「私も・・・本当はピアニストなんです・・・でも舞台に立つのなんて夢のまた夢で・・・皆さんに憧れちゃいます」
「がんばります・・・」
何が綺羅綺羅して・・・何がくそなのか・・・計りかねるカルテットなのである。
演奏の練習ではなくダンスの練習に追われるカルテット。
「今日は以上です」
「え・・・」
「お客さんはキュンキュンを求めてくるので演奏の方は大体で大丈夫ですよ」
「しかし」
「お仕事ですから」
厳しい顔を見せるアシスタントフジカワだった。
そこに朝木が顔を出す。
「もう少し練習したいのですが」
「これから飲み会です」
「でも」
「飲み会も接待という仕事ですよ」
「要求に応えるためにベストを尽くしたいのです」
「要求に応えるのは一流の仕事・・・ベストを尽くすのは二流・・・我々のような三流は楽しく笑顔で仕事をすればよろしい・・・」
「しかし・・・せっかくの仕事なので」
「あなたがたに仕事を与えたのは・・・別府さんの弟に頼まれたからです・・・あの方にはいろいろと世話になっているので」
下積みの身から見ればめくるめく幸運・・・だが・・・彼らには奏者としてのプライドがあった。
求められなくても・・・深夜のカラオケボックスで・・・自分たちを追い込むのである。
たとえ「仕事の内容に心がおいつかない」としても・・・。
コンサート当日。
ピアニストの到着が遅れ・・・五重奏の当日リハーサルはスケジュールからカットされる。
「リハなしでは・・・さすがに無理です」
「大丈夫だ・・・音源を流すから・・・君たちは振りに専念してくれればいい」
カルテットは「ギリギリの状態」になった。
「こんなことしたくない」とすずめ。
「こんなことやる必要ないんじゃないか・・・」とイエモリ。
沈黙する別府。
すずめは楽譜をゴミにする。
「すみません」と白タイツ別府。
「帰ろう・・・」とイエモリ。
「やりましょう!」とスリットまきまき。「私たち・・・実力もないくせに・・・夢見たいだと思ったじゃないですか・・・私たち・・・大きなホールで演奏するなんてウソだろうって思ったじゃないですか・・・きっと・・・これが私たちの実力なんだと思います・・・これが現実なんだと思います・・・だったら三流の自覚をもって社会人失格の自覚をもって・・・演奏する振りを・・・してやりましょうよ・・・・プロとしての私達の仕事を見せつけてやりましょう・・・カルテットドーナツホールの夢を」
「・・・はい」
唯一のプロ経験者の言葉に従うアマチュアたちだった・・・。
すずめは涙を拭う。
綺羅綺羅したクソ仕事を完遂するカルテット・・・。
クソ仕事の本番はお茶の間向けではなかったので割愛された・・・。
見たかった人も多かっただろうが・・・。
「いやあ・・・素晴らしかった」
「キュンキュンしました」
プロデューサーとアシスタントはカルテットを送り出す。
「お疲れ様でした・・・」
頭を下げるカルテット・・・。
去って行く車を見送る三流のプロたち。
「楽しくなかったみたいですね」
「志のある三流は・・・四流だから」
朝木はすべてお見通しなのである。
カルテットは街かどで「Music for a Found Harmonium」を演奏する。
たまたま通りかかったアイリッシュ系の外国人が心を掴まれる。
カルテットは・・・プロであることを忘れ・・・単なる奏者となる。
音楽に身を捧げることは・・・心躍ることだった。
それを稼業にするのとは別の話なのである。
カルテットは・・・浮世の憂さを晴らした。
別府は弟に「断り」の電話を入れる。
別荘を売却する話が出るからには別府ファミリーにもなんらかの事情があるわけである。
しかし・・・執行猶予は与えられたらしい。
すずめは鏡子に電話をかけた。
「私の結論を伝えたいと思いまして・・・」
(もういいのよ)
「え」
(あなたはもういらないの・・・さようなら)
「・・・」
鏡子の禍々しい言葉に・・・不安を感じるすずめである。
別荘には・・・アリスが訪れていた。
「アリスちゃんが・・・衣装を持ってきてくれたのよ」とまきまき。
恐ろしい予感に心が震えるすずめ。
アリスは・・・鏡子のボイスレコーダーをすずめに誇示するのだった。
「アキバにいた頃の奴なんですが・・・直せば使えるかなと思いまして」
「ソーイング・セットを持ってきますね」
衣装の寸法を直し始める三人・・・。
「シェフたちの夫婦喧嘩は納まったのかしら」
「多可美さんがロックしたので・・・シェフが夫婦の寝室に鍵をかけるようなものだって」
「寝室って・・・」
「まきさんは・・・どうですか」
「私は・・・夫のことは知りたいとは思うけど」
「まきさんは・・・ずっと軽井沢にいて・・・大丈夫なんですか」
アリスが自分の後継者であることを確信するすずめ・・・。
「バームクーヘン食べますか」
「私はいいです」
アリスの言葉を封じようとデュオとなるすずめだった。
「バームクーヘンはなかったんじゃない」
すずめの言葉を聞きわけるまきまきである。
「鳥のマークの奴」
「ご主人は怒らないんですか」
「ああ・・・ロールケーキ」
「ロールケーキ食べましょう」
「私はいりません・・・酉年だし」
「それは・・・」
「鳥肉きらいだし」
「ロールケーキに鳥肉は入ってないわよ」
「すずめだけど人間です」
「夫婦だってドキドキするようなことは必要だと思うのよ」
「それって神話ですか・・・忌まわしい内緒話ですか」
「ロールケーキを」
「正義は大抵負けるってことでしょ・・・夢は大抵叶わない・・・努力は大抵報われないし・・・愛は大抵消えるってことでしょ・・・そんな耳触りのいいことを口にしてる人って現実から目を背けてるだけじゃないですか・・・夫婦に恋愛感情なんか・・・あるわけないでしょう」
「ううう」
「浮気はばれなければいいのです」
「アリスちゃん・・・それではズボンの下がノーパンみたいです」
「人間関係なんてみんな本当はノーパンでしょう」
「意味がわからない」
「人はみな本当と嘘が三対七ですよ」
「それじゃあ・・・人間は水ですか」
「私はロールケーキ食べたいな」
「ご主人はどうなんです」
「私の主人は・・・いなくなってしまって」
「ええっ・・・家出系ですか」
「・・・」
「どうしていなくなってしまったのですか」
「そんなこと・・・聞く必要ないでしょう」
「ええっ・・・すずめさんは知りたくないのですか」
アリスの死体の目による真顔攻撃!
「まきさん・・・答える必要ないですよ」
すずめの捨て身の防御!
「どうしてですか・・・私は変なことを聞きましたか」
「私は片思いだったみたい・・・」
「もう・・・やめて」
アリスは笑わない目ですずめを観察する。
「みんなウソツキですよね」
アリスは獲物をいたぶる猫のようにすずめに微笑む。
「アリスちゃん・・・私に何か・・・含むところが」
「夫婦に恋愛関係なんかあるわけないでしょ・・・夫婦に恋愛感情なんかを持ち込むから夫婦間の殺人が起こるんでしょ・・・大好き大好き大好き大好き大好き殺したい・・・って」
「ロールケーキ食べましょう」
「ご主人・・・もう生きてなかったりして・・・」
「やめて」
すずめはアリスにすがり・・・反動でまきまきの足元にボイスレコーダーが転がり落ちる。
どこまで計算されているのかわからない・・・アリスの魔性にお茶の間は呼吸を忘れる。
思わずボイスレコーダーを手に取り再生ボタンを押すまきまき・・・。
流れ出した音声は・・・別荘でのカルテットの懐かしい会話だった。
すずめはまきまきを裏切っていた日々の報いを受けるのだった。
「すずめちゃんは嘘のない子・・・そういう子と一緒に暮らす喜びがある」とまで言ってくれたまきまきにずっと嘘をつき続けた日々が・・・すずめにふりかかる。
とめどのない涙があふれ・・・首をたれるすずめ。
茫然とするまきまき。
修羅場を楽しんだアリスはまとめるのだった。
「鏡子さんに頼まれたんです・・・あの人・・・まきさんのこと疑ってて・・・まきさんがご主人を殺したんじゃないかって・・・私たちはそんなことないと思ってて・・・まきさんがそんなことするわけないって教えたくて・・・私たちは真紀さんの味方ですからね」
「・・・そうなの・・・ありがとう」
まきまきの顔からはすべての表情が抜けおちる。
笑わない目のまきまきは笑わない目のアリスを無視するのだった。
緊張の現場に宅配便が到着する。
すずめは・・・後悔に苛まれ・・・別荘から脱出するのだった。
残されたまきまきとアリスの間には冷たい静電気が通い合うのだった。
夜の帳が降りるまで町を彷徨うすずめは奇妙な男と衝突する。
「ごめんなさい」
「・・・です」
散乱した男の荷物の中にカルテットのパンフレットを発見するすずめ。
「ドーナツホールをご存じなんですか」
「ご存じっていうか」
「怪我をしてるんですか」
「犬に・・・まれた・・・けです」
「え」
「かまれた」
「え」
「だけです」
「え」
「ラブラドール」
「レトリーバー」
別荘に戻ってくる別府とイエモリ。
「バイト見つかりましたか」
「割烹着を着るやつなんだよね」
「割烹着・・・」
灯りの消えた別荘に異変を感じる二人・・・。
「何かありましたか・・・」
まきまきは二人に携帯端末の画像を見せる。
「この人が・・・」
「夫です」
母親を捨てたことがあり・・・いい会社に勤めてるエリートで・・・まきまきをはじめての花火デートに誘い優しくエスコートして・・・花火の火が落ちてきたら僕が手を引いて逃がしてあげると言い・・・唐揚げにレモンは無理ということはずっと隠し続け・・・妻を愛してるけど好きじゃないと部下に言い放ち・・・平熱高くて首筋から匂いがする・・・靴下脱ぎっぱなしにしてちょっとコンビニ行ってくると言ってそのまま帰ってこなかった夫(宮藤官九郎)である。
その・・・すべてを蒸発させてしまう暴力的な存在感・・・。
一部お茶の間は叫ぶ・・・「クドカンかよ」・・・。
関連するキッドのブログ→第4話のレビュー
| 固定リンク
コメント