天文二十三年、小野和泉守政直死す(柴咲コウ)
遠江国人衆の一族である井伊氏は遠江の東北部に分布する古い豪族である。
井伊介は正式な官職名ではないが遠江の国府の次官クラスの権威を持っていたらしい。
一族は井伊谷宮を中心に遠江東北部に勢力を広げ、戦国期に入ると本家分家の攻防も行われる。
生き残った井伊家は我こそが本家と言うわけであるが・・・真実は定かではないわけである。
それが歴史というものなのだ。
一部の系図によれば奥山氏は井伊の分家ということになる。
井伊共保から八代目の盛直の子・俊直が赤佐家を興す。
赤佐俊直から四代目の朝清が奥山家を興す。
奥山朝清から盛朝-朝良-直朝-朝藤-朝実-親朝-朝利と続く。
ちなみに赤佐俊直の弟は貫名政直を名乗り数えて五代目が日蓮(1222~1282年)となる。
井伊氏が古き一族であることを示す一端と言えるだろう。
奥山親朝の娘は新野左馬助親矩の室となっている。
新野左馬助親矩の妹は井伊信濃守直盛の室である。
つまり、奥山因幡守朝利と新野左馬助親矩、そして井伊信濃守直盛は義理の兄弟なのである。
朝利の娘たちは井伊直親、中野直由、小野朝直、鈴木重時など多くの家に嫁いで行き・・・奥山家は分家筋ながら井伊の血縁を繋いでいく。
で、『おんな城主 直虎・第5回』(NHK総合20170205PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに主役登場となった井伊直盛の娘・次郎法師の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。素っ頓狂な感じの子役の演技を引き継いで乙女モードの柴咲コウの演技は賛否両論巻き起こる感じでございますねえ。ほぼ架空の人物と言ってもいいほどの井伊直虎の物語ですので・・・子役と繋ぐ演技をすることはリアリティー形成の作戦としては悪くない感じがいたしました。これは「白夜行」でも「ごちそうさん」でも使われた脚本家の基本テクニックでもございますな。「白夜行」は別格としても・・・人間の成長を描くための常套手段でもございましょう。あの子が大きくなると・・・こうなるのかあ・・・という感動がございますからねえ。守護大名・今川家と・・・国人領主・井伊家の軋轢については説明不足のようにも見えるし・・・淡々とじわじわと浸透を図っているようにも見える・・・先行きに期待が持てる感じがいたします。天文二十三年(1554年)から成人篇をスタートさせるとなると六年後の永禄三年(1560年)の桶狭間の戦いが一つのクライマックスとなるでしょうから・・・まずは青春篇ということになるのでしょうねえ。そこまで・・・亀と鶴の明暗の別れをじっくりと描いて行くのでしょう。これは・・・戦国絵巻だけど戦は当分おあずけということなのかもしれませんな・・・。まあ・・・井伊谷を何とかするずら会議とか・・・行間を主張する小野但馬守政次とか・・・井伊直満の一同爆笑怨霊とか・・・いろいろと楽しい感じはいたします。
天文二十一年(1552年)、今川義元の娘が武田義信の室となる。天文二十三年(1554年)一月、今川勢は尾張国への侵攻を開始する。織田信長・斉藤道三の連合軍は今川勢の村木砦を強襲しこれを殲滅した。七月、尾張守護の斯波義統が守護代の織田信友に攻められ自害する。北条氏康の娘が今川氏真の室となる。八月、井伊直盛の家老・小野政直が病没。十二月、武田信玄の娘が北条氏政の室となる。甲相駿三国同盟が成立した。信玄は信濃国伊那郡に侵攻し、松尾小笠原氏の小笠原信貴・小笠原信嶺父子が信濃先方衆として鈴岡小笠原氏の小笠原長時・小笠原信定兄弟の松尾城を攻め落城させる。天文二十四年三月、松平元信が元服する。四月、信長は清州城を奪取する。八月、今川義元は松平親乗を将とする三河衆を尾張国に侵攻させる。十月、三河国の吉良義安が織田方に通じる。厳島の戦いで毛利元就が陶晴賢を自害に追い込む。二十三日、弘治に改元される。この頃、謀反の疑いで今川義元に誅された井伊直満の嫡男・亀之丞が潜伏中の信濃国から井伊谷に帰参し、井伊直盛の養子となる。
駿河国善得院で龍潭寺の南渓和尚は太原雪斎と面会した。
「小豆坂、安祥城と軍師の御采配はお見事でございました・・・」
「辛勝であった・・・褒められるほどのものではない」
「しかし・・・井伊の総領・直盛殿はお褒めにあずかったとか・・・」
「井伊党の活躍には助けられましたぞ・・・直盛殿には安祥城の城代を見事にお勤めなされ・・・井伊谷に無事戻られたであろう」
「それについては・・・願いたきことがございます」
「・・・申されよ」
「跡目相続の件でござりまする」
「・・・直盛の娘を還俗させて・・・婿をとるか・・・」
「いえ・・・太守様のお叱りを受けて逃亡中の直満の一子を帰参させたく・・・」
「それは・・・難しいな」
「しかし・・・直満を訴えた小野和泉守もすでに世を去り・・・謀反の疑いも・・・北条氏と通じたということ・・・もはや・・・今川と北条が御親類となられた今は・・・ご赦免があってもよろしいのではございませんか」
「それはそれ・・・これはこれよ・・・」
「しかし・・・井伊は今川の寄子として忠節を励んでおりまする。寄親として・・・子の相続を気にかけていただきませぬか・・・」
「御隠居の直平殿には・・・直元という末子があったな・・・」
「直元はわが弟ながら・・・天文十年に身罷っておりますが・・・」
「それの遺児ということでどうじゃ・・・」
「遺児・・・」
「直満の一子は行方知れず・・・が・・・直元の遺児があり・・・直平殿が養育していたということじゃ・・・まずは直平殿の養子として世にだし・・・直盛殿の養子と直せばよろしかろう・・・」
「それでお許しがいただけますか・・・」
「他言は無用じゃ・・・太守様のご機嫌よろしき時に拙僧から言上つかまつる」
「ありがたきことでございまする」
「何・・・井伊が忠誠は・・・疑うこともないこと・・・今川の軍には欠かせぬ・・・」
こうして・・・直満の子・亀之丞は・・・井伊直元の忘れ形見として井伊直盛の養子となり・・・井伊直親と名乗った。
関連するキッドのブログ→第4話のレビュー
| 固定リンク
コメント