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2017年2月22日 (水)

彼らと彼女たちのすれ違い(吉岡里帆)

カルテットの名前は「ドーナツ・ホール」である。

ドーナッツの穴は・・・存在するが存在しないものの象徴である。

ドーナツの穴はドーナツではない。

しかし・・・人間はドーナツの穴を含めてドーナツだと考える。

ドーナツの穴はドーナツの不可欠な欠損なのである。

人間にはそんなことがどうでもいい人とそうではない人の二種類がある。

男は女にドーナツの穴を求めていた。

だが女はドーナツなのである。

しかも・・・女はドーナツとも言い切れない。

なぜならその穴はトンネルではなく・・・洞窟なのである。

そして男はバナナなのだ。

え・・・これは下ネタなの。

下ネタである。

で、『カルテット・第6回』(TBSテレビ20170221PM10~)脚本・坂元裕二、演出・坪井敏雄を見た。カルテット・ドーナツホールの第一ヴァイオリン・巻真紀(松たか子)は夫が失踪中の人妻である。巻氏の失踪の謎を探るチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)は「真紀が息子を殺した」と主張する真紀の姑である巻鏡子(もたいまさこ)との関係を断つ。しかし、後継者となった元地下アイドルでライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)はすべての秘密を暴露してしまう。いたたまれずに世界的指揮者を祖父に持つ第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)の別荘から脱走したすずめは・・・駅前で失踪中のまきまきの夫である巻幹生(宮藤官九郎)と遭遇するのだった。

ミキオは「カルテットドーナツホール」のチラシを持っていた。

その夜・・・すずめとミキオは素晴らしいインターネットの世界に繋がる小部屋で夜を明かす。

ミキオは時々ノーパンのヴィオラ・家森諭高(高橋一生)の先輩を名乗り・・・「カルテットドーナツホール」の演奏を聞きたいのだとすずめに仄めかす。

巻鏡子が妄想する「殺人事件」の被害者が生きていることを知ったすずめは・・・ミキオを別荘に誘導することを決意していた。

すずめが家出した翌朝・・・まきまきはすずめを案じていた。

しかし・・・別府は素晴らしいインターネットのアプリケーションですずめと連絡がついていることを伝える。

「ちゃんと返事がありましたし・・・昨日はネカフェで・・・今日は帰ってくるって」

「でも・・・すずめちゃん・・・いつもはスタンプなんか使わないし」

すずめの心理的な「不安定さ」を推測するまきまき・・・。

そこへ・・・ヤモリが顔を出す。

「なんか・・・簡単に十万円がゲットできるアルバイトがあるそうなので・・・行ってきます」

「戸籍を・・・」と別府。

「売りません」

「シンジケートに・・・」とまきまき。

「入りません」

「・・・行ってらっしゃい」

まきまきは姑の鏡子を軽井沢駅に迎えに行く。

別府はドーナツ販売チェーン「ふくろうドーナツ」に出勤するのだった。

ヤモリにアルバイトを紹介したのはライブレストラン「ノクターン」のホール担当責任者・谷村多可美(八木亜希子)である。

「珍しい猿が逃げたんです」

「どんな風に珍しいんですか」

「ふぐりというか陰嚢というか金玉が青いのです」

「パタスモンキーかサバンナモンキーですね・・・」

そこに・・・アリスがやってくる。

「ふぐりってなんですか」

タカミの夫でシェフの大二郎(富澤たけし)はアリスが「ふぐり」を検索する様子にうっとりするのだった。

おそらく・・・アリスもまた・・・「青い金玉の猿」を捜すために召喚されたのだろう。

ヤモリは「青い金玉の猿を捕獲したら十万円」の「アルバイト」にアリスとチャレンジすることにスリルとサスペンスを感じるのだった。

雪が降る駅前で・・・道に倒れた通行人を助けたミキオとすずめは・・・鏡子を迎えに来たまきまきとすれ違う・・・。

まきまきは姑に教会で・・・「結婚生活の顛末」を語り、ミキオは別荘で「恋愛結婚の破綻」を語る。

お茶の間は・・・夫婦の心のすれ違いをそれぞれの立場で見せつけられるのだった。

2013年・・・広告代理店のクリエイターだったミキオは・・・プロのヴァイオリン奏者だったマキと送迎のためのタクシーで出会う。

「美人の音楽家」に一目惚れするミキオ。

「お仕事関係の人」と特に印象がなかったマキである。

クリエイターとして・・・アーティストと恋することの素敵さに目が眩んだミキオは積極的にマキにアプローチするのだった。

「音楽一筋」に生きてきたマキに・・・得意分野はないが・・・幅広い教養を持つミキオは時に新鮮で時に頼もしく映ったのだろう。

「アーティストへの憧れ」に支配されているミキオは「特別な存在」であるマキをゲットするために「素敵な交際」をプロデュースするのだった。

「マキマキになっちゃうけど・・・いいかな」

「ちゃんとプロポースしてください」

「僕と結婚してください」

「はい」

こうして・・・まきまきが誕生したのだった。

出会いのタクシーで制作の男は最初に幡ヶ谷で降りる。幡ヶ谷から早稲田までミキオとマキは小声で会話するわけである。

「・・・ですか」

「え」

「一度・・・お食事でもいかがですか」

「・・・ですよ」

「え」

「いいですよ」

早稲田から本郷までミキオは新しい冒険の始りにウキウキするのだった。

交際中のマキはミキオにとってそれなりにミステリアスである。

なにしろ・・・ミキオはオーケストラに参加してピエトロ・マスカーニ(1863~1945年)のオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ(田舎の騎士道)」でヴァイオリンを演奏したことがない。

マキにとってそれは「日常」なのである。

ミキオはマキに・・・自分が芸術を理解する男であることをアピールするためにお気に入りの詩集を贈る。

「あなたが書いたの?」

「いや・・・僕が好きな作家なんだ」

「へえ・・・」

ミキオにとって・・・自分が愛するものはミキオ自身を意味するのだが・・・マキにとってミキオはミキオ本人なのである。

ミキオはドーナツの穴をマキに示した・・・マキにはそれを見ることはできない。

マキは「カヴァレリア・ルスティカーナ」について簡単に語ることができるだろう。

演奏するためにはいろいろな解釈が必要だからである。

「トーリとローラは恋人だったんだけど・・・トーリが兵役についている間に・・・ローラはアルフと結婚してしまうの。仕方なくトーリはサンタと結婚することにしたんだけど・・・ローラのことをあきらめられなくて・・・アレしちゃうわけ・・・それがサンタにバレて・・・サンタはアルフに告げ口して・・・ここで有名な間奏曲が流れるわけ・・・怒ったアルフはトーリに決闘を申し込み・・・トーリは一巻の終わり・・・こんな感じの話よ」

ミキオは自分の知らない物語を話すマキにうっとりして・・・性的な衝動にかられるのだった。

後に・・・二人には子作りが難しいことが明らかにされるが・・・それがどちらの生殖能力に問題があるのかは明らかにされない。

しかし・・・それについて主体的に語るのがミキオであり・・・マキが「残念だ」と感想を述べるので・・・欠陥があったのはミキオだったと推測できる。

性的に不能ではないが無能であることは・・・ミキオの精神を蝕んでいくわけである。

マキが家族になろうと決めた相手は・・・性的な劣等コンプレックスによってダメ人間から社会のクズへと転落していくのである。

ミキオは社会的常識である「結婚したら家族」という前提から逸脱して・・・「恋人夫婦」であることに偏執し・・・一種の変質者となっていくのである。

ミキオは自分の「魂」の琴線に触れる「傑作映画」をマキと感動を共有しようとする。

しかし・・・すでに「芸術家」としての「魂」を確立しているマキにとって・・・それは「退屈」な映画だった。

ミキオはマキとの関係が・・・「自分の思った通りのものではないこと」に怒りを感じる。

「大好物のトリの唐揚に大嫌いなレモンを無造作にかける」まきまきが許せないのだった。

同時に「自分」をさらけ出しマキに「自分」を否定されることになった場合のみじめさにも耐えられないと考える。

だから・・・「レモンは絞らないで」とは言えないミキオなのである。

マキはミキオという家族を入手して・・・奏者であることを止めて専業主婦として生き始める。

まきまきとなったマキは・・・「夫が寂しい気持ちにならないように家で帰りを待つ妻」になったのである。

奏者でなくなったマキは平凡な女だった。

話題はテレビがお茶の間に示す範囲内。

近所のちょっとしたもめごとが最大のトラブルである。

ときめきからは程遠い女なのだ。

それは・・・ミキオがうんざりして逃げ出した母親の鏡子を連想させる。

しかし・・・そういうことに耐えるのが夫婦生活だという人もいるだろう。

さらに・・・そういうことを楽しむべきだと。

だが・・・勤務先の人事異動により・・・クリエーティブ課から人事課に異動になった時・・・ミキオは追い込まれるのだった。

マキは「独立」をミキオに奨める。

しかし・・・ミキオは「才能」を自分に見出せない。

だからこそ・・・特別な女として・・・マキを求めたのである。

しかし・・・気がつくと巻家は・・・サラリーマンの夫と専業主婦で形成されているのだった。

ないものねだりを続けたミキオはドーナツの穴には何もないことに気がついてしまったのである。

体調を崩して入院したマキ。

その病名が明らかでないことも一つのミステリーである。

音楽から家庭へ乗り換えたことへのストレス・・・あるいは不治の病。

しかし・・・平凡な女になってしまったまきまきから解放されたミキオはつかのまの安堵を感じる。

自分を守るだけで生きていける気安さ・・・。

映画館でいかにも「趣味」に生きる昔の同棲相手・・・水嶋玲音(大森靖子)と再会するミキオ。

おそらく・・・ミズシマは・・・ミキオと似ている女なのである。

ないものねだりを続ける女。

だから・・・ミズシマとミキオは意気投合する。

しかし・・・ミキオはたちまち・・・自分自身を見ることに飽きたのだろう。

「結局・・・長続きする愛ってのは見下している相手に寄り添うことができる人間と・・・尊敬している相手にひれ伏し続ける人間にしか許されないんじゃないかな」

「生ハムと焼うどんはおつまみに最高だしな」

ミズシマはミキオを求めるが・・・ミキオは答えない。

「自分のような他人」よりも「今は普通だが昔は特別だった他人」を選んだのである。

ミキオはマキにヴァイオリンを弾いて欲しかった。

しかし・・・マキはミキオのために挽肉をこねるのだった。

そして・・・マキはミキオが愛した詩集を鍋敷きとして使う。

たまたま・・・それがそこにあったので。

誰が悪いというわけではない。

そして・・・ミキオには更なる転勤の辞令が降りる。

それはおそらく左遷だったのだろう。

ミキオは自分で評価するほどには社会に評価されない現実に喘ぐ。

ミキオはマキと温泉旅行に行く。

ひょっとすると・・・ミキオはミズシマを誘うつもりだったのかもしれない。

そこで・・・熟年夫婦と出会う。

まきまきは共に老いて行く二人に憧憬を感じる。

ミキオは・・・ずっと連れ添うことに・・・倦怠を感じる。

誰が悪いというわけではない。

しかし・・・ミキオの中で破壊衝動が高まって行く。

それは・・・自分自身に向っていく。

ミキオはベランダから飛び降りた。

「妻に背中をおされたんですよ」

心理的に・・・という話を・・・ミキオは入院中のヤモリに話したのである。

病院で同室となったヤモリはミキオの贅沢な悩みを聞き流した。

しかし・・・ミキオより堅気ではないヤモリはいざとなったら・・・強請の材料にしようと心の奥にメモしたのだった。

「三階から落ちたくらいじゃ人は死なないよ」

「二階から落ちて亡くなる人だっていますよ」

男たちはバナナを食べた。

ミキオはギロチンが死んでもミズシマを助けにはいかなかった。

ミキオはマキに無断で会社を辞めた。

それでもあの日が来なければ・・・二人の人生は続いたのかもしれない。

だが・・・地球は偶然の出会いのために回り続けているのだ。

居酒屋で元部下の村上(阿部力)に愚痴を言うミキオ。

「レモンは嫌いなんだよ」

居合わせたまきまきは雷に打たれる。

「愛してるけど好きじゃないんだよ」

まきまきはどしゃぶりの中を立ち去るのだった。

ミキオは聞かれてはいけない言葉を聞かれてしまったことに気がつくのだった。

ミキオを愛そうとして・・・そこに幸せを感じていたまきまき。

最後まで自分だけを愛し続けるミキオ。

子孫繁栄という人類としての目的にも逃避できない不毛夫婦である。

ベッドサイドに花を飾り・・・それなりに愛を交わした日々。

価値観が合わない妻と器の小さい夫は小洒落たカフェのコーヒーと特価のコーヒーの間で宙吊りになってしまったのだった。

マーガレットも枯れ・・・ガーベラも枯れ・・・スイートピーも枯れ果てたのだ。

それでもミキオとまきまきは修復の糸口を探してあえぐ。

ミキオはとりあえず靴下を脱ぐ。

まきまきは・・・餃子につきもののラー油を口実に部屋を出る。

追いつめられたミキオは裸足ですべてから逃げ出すのだった。

まきまきの二年間の結婚生活を聞いた鏡子は・・・平手打ちまでしておいて・・・すべてに納得してしまうのだった。

「かならず・・・バカ息子を捜してきますので・・・待っていてください」

「いいえ・・・お義母様・・・私・・・離婚届を出したいと思います」

「・・・」

「もう・・・愛されていないことを知ってしまったので」

それ以上の説得をあきらめる姑だった。

その頃・・・別府は会社の倉庫に閉じ込められていた。

その頃・・・ヤモリはアリスに別荘の鍵を奪われていた・

別府は充電残量1%の携帯端末でヤモリに救援を求める。

その頃・・・まきまきは別荘に向っていた。

「なんか・・・別府くん・・・会社で閉じ込められちゃったみたいです・・・携帯の充電切れで」

「別荘に帰ったら別府さんの名刺を捜して・・・会社に連絡してみます」

その頃・・・すずめは宅配便の人に・・・ミキオのスニーカーに残るカラーボールの痕跡を指摘されていた。

「それからどうしたんですか」

「退職金を全額引き出して・・・関西方面に立ちまわりました・・・金に不自由しない一人旅って・・・楽しいし・・・」

「資金が尽きて・・・銀行強盗ですか」

「コンビニです」

「コンビニ強盗ですか」

「強盗って言うか・・・七十円しかなくて・・・コンビニの店員さんがいないのにレジが開いていて・・・三万九千円ほどいただいて・・・そしたら店員さんが出てきて・・・肉まんケースを倒してカラーボール投げられて」

「通報します・・・ああ・・・まきさんになんと言ったらいいか」

その頃・・・まきまきは別荘に向っていた。

その頃・・・すずめは後ろ手に縛られ二階の部屋で猿ぐつわをかまされていた。

別荘にアリスが侵入する。

何故か・・・アリスはまきまきのヴァイオリンケースを愛おしそうに抱きしめる。

ケースを肩にかけ・・・二階へ向かおうとするアリス。

階上から降りてくるミキオ。

お互いの正体を知ってか知らずか・・・格闘戦に突入。

「なんですか!」

フライパンでミキオを怯ませたアリスはケースを抱えたままベランダへと逃れる。

「それは・・・まきちゃんの・・・大切なヴァイオリンだ」

叫びながらアリスに武者ぶりつくミキオ。

振りまわされたアリスはベランダから飛び出して真っ逆さまに落下するのだった。

階下で何かが起こっていると知りながらすずめは呻くことしかできない。

ヤモリは猿を捜す。

別府はため息をつく。

ミキオは立ちすくむ。

まきまきは・・・。

そして・・・アリスは。

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受信: 2017年2月23日 (木) 00時07分

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