弘治元年、太原雪斎死す(貫地谷しほり)
登場人物の末期が描かれずにナレーション処理によって「死」が伝えられることを一部のお茶の間の皆さまは「ナレ死」と呼ぶらしい。
もちろん・・・歴史上の人々を描いている間にもその時代を生きている人々はどんどん死んでいるので一々描いていたら臨終のシーンぱかりになってしまうので仕方がないのである。
しかし・・・今川軍の軍師で・・・主人公・次郎法師(新井美羽→柴咲コウ)の出家にも深く関わり、主人公の父親・井伊直盛(杉本哲太)の軍事上の上官である太原雪斎(佐野史郎)が「ナレ死」どころかいつの間にか死んでいるという流れは急流の一言に尽きるのだった。
天文二十四年(1555年)には井伊直親(三浦春馬)の元服と奥山ひよ(ドラマではしの=貫地谷しほり)の婚姻や松平元信(阿部サダヲ)の元服と今川瀬名(菜々緒)との婚約などがあり・・・そこが見せ場だったらしい。
十月に改元があり・・・弘治元年(1555年)となって程ない閏十月十日(1555年11月23日)に太原雪斎は死去する。
あれだな・・・改元とか・・・閏月とかが・・・いろいろと面倒くさかったんだな。
そして・・・弘治年間は夢のように過ぎて行って・・・いきなり永禄年間に突入するわけである。
弘治四年(1558年)二月・・・正親町天皇即位のために永禄元年(1558年)に改元である。
直親・しの夫妻は結婚して四年がたったというのだから・・・永禄二年(1559年)のあたりを彷徨うドラマ的時空間である。
しかし・・・ドラマの中でしのが不妊で苦しんでいる間に・・・時は永禄三年(1560年)五月の桶狭間の戦い直前へと進んでいく。
弘治三年(1557年)に元信と今川義元の養女となって婚姻した瀬名は永禄二年に竹千代(松平信康)を出産し、永禄三年五月には第二子(亀姫)の出産直前となっている。
そういうところが・・・見せ場の大河ドラマなのだとそろそろ覚悟が必要なのかもしれない・・・。
来週の桶狭間の戦いも・・・そういう心構えで迎えたい。
で、『おんな城主 直虎・第8回』(NHK総合20170226PM8~)脚本・森下佳子、演出・福井充広を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は諸事情により描き下ろしイラスト公開はお休みですが・・・あくまでマイペースでお願い申しあげます。・・・まあ・・・ここまでは長いイントロダクションと言えるのではないでしょうか・・・。井伊谷の国人領主の姫として生まれて・・・親族のトラブルなどによって・・・出家することになったものの・・・安祥城攻めなど活躍した今川配下の有能な武将・井伊直盛という父親の庇護の元で・・・呑気に暮らしていた次郎法師が・・・奈落の底に転げ落ちて行く苦境の始りがすぐそこに迫っているわけですからな・・・。画伯のおっしゃる通りにここから面白くなるとよろしいですなあ。画伯のモチベーションも心配でございますからねえ。戦国絵巻が始ってもらいたいですよねえ。来週・・・織田信長は登場するのでしょうかねえ・・・少し・・・ドキドキします。信長抜きの桶狭間だったらどうしましょおおおおおおおおおおおおおお。
弘治元年(1555年)閏十月、太原雪斎が死没。弘治二年(1556年)、柴田勝家が福谷城を攻め東三河衆の旗頭・酒井忠次によって敗走。東条松平忠茂が日近城攻めで討ち死に。四月、斉藤道三が討ち死に。弘治三年(1557年)八月、掛川城主・朝比奈備中守泰能が死没。九月、上ノ郷城主・鵜殿長持が死没。十一月、織田信行が暗殺される。弘治四年(1558年)正月、武田信玄が信濃守護に任じられる。二月、松平元信が初陣で寺部城主・鈴木重辰を攻める。西三河衆の旗頭・石川家成先鋒を務める。鈴木氏は降伏。元信は山中三百貫文の地を拝領し元康を名乗る。改元後の永禄元年(1558年)九月、木下藤吉郎が織田信長の家臣となる。今川氏真が家督を継承。永禄二年(1559年)三月、元康の嫡男として松平信康(竹千代)誕生。小野玄蕃朝直の嫡男・朝之が生れる。鳴海城の山口教継、教吉親子が今川義元の命により切腹。鳴海城に岡部元信、大高城に朝比奈輝勝が配置される。織田信長は鳴海城に対し丹下砦、善照寺砦、中嶋砦を大高城に対して丸根砦、鷲津砦を構築する。永禄三年(1560年)、義元は沓掛城に近藤景春、岡崎城に山田景隆を配置。井伊直盛に尾張攻め先鋒の大将を命ずる。大高城に鵜殿長照が入城。五月十二日、義元は駿府を発進。十七日、沓掛城に到着。十八日、元康率いる三河衆が大高城に兵糧を敵前搬送。本多忠勝は元服して初陣を果たす。
東海道には祭りの賑わいがあった。総勢一万人の軍勢が遠江を通過し、三河に向っていく。すでに三河、尾張には今川勢と呼ばれる一万五千の軍勢が集結している。合わせて二万五千人の軍勢が尾張国を領する織田信長を成敗するのである。
田植えの終わったばかりの水田の景色の中を・・・大軍勢が通過していくのである。
軍役を課せられた農民たちが兵糧・馬草を積んだ荷駄車を押す姿さえ猛々しい。
駿河・遠江・三河を制し・・・尾張も支配下に置こうとする今川義元の野望が西へと進んでいくのだった。
「これは見ものだがや」
信長の忍びである龍神は修験者の姿で行列を遠望する。
同じ装束の青衾が応ずる。
「さてもさても・・・この威勢を見れば・・・尾張の侍どもも気が萎えよう」
「だもんで・・・信長様は・・・乾坤一擲の戦をするしかにゃあのだに・・・」
二人の忍びは義元の座する中軍の動向を追い続ける。
井伊谷の龍譚寺では修行僧たちが武具を整えていた。
井伊家当主の直盛が先鋒の大将を命ぜられ・・・軍勢を引き連れて出発すれば当然の如く・・・井伊谷には兵力の真空状態が生じる。
隣接する奥山の地を領する今川家の家臣・天野景貫の使いのものが山中の賊に不穏な気配があると知らせてきたのである。
奥山の里でも男たちは出動し・・・女子供が留守を守るばかりなのである。
背後の山には・・・野武士とも山賊ともつかぬ流浪の民が潜んでいる。
「さあ・・・参ろうか」
次郎法師が姿を見せ・・・馬上の尼武将となる。
そして馬に早足を命じるのだった。
駆けだした馬の後を追い・・・傑山と昊天に率いられた坊主たちが走りだす。
白昼堂々・・・山を下って奥山の里に侵入しようとした盗賊たちは・・・待ちかまえる僧兵たちの姿に驚く。
「こりゃあ・・・坊主ども・・・怪我したくなかったらすっこんでろ」
鉞をかついだ顔面に刀傷を遺す大男が吠える。
「命の惜しくないものは参るがよい・・・拙僧が引導を渡して進ぜようほどに」
昊天が読経で鍛えたよく通る声で応じる。
長刀を構えた昊天が誘うように盗賊たちに歩みよる。
「どけどけ・・・男に用はないんだよ」
昊天の実力を読みとる力もない大男の首は一瞬で宙に舞った。
盗賊たちからどよめきがあがる。
「やりやがったな」
盗賊たちは数を頼んで昊天に殺到する。
昊天は一薙ぎで・・・三人の男を絶命させた。
「やれやれ・・・これでは出る幕がないわ」
弓を構えた傑山がぼやく。
「何をしておる・・・」と次郎法師。「さっさと経を読んでやれ」
奥山の里には血の匂いが漂い・・・僧侶たちの成仏を祈る唱和の声が木霊するのだった。
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