泣いてご飯を食べる超能力少女とロッカーに安置された骨壷二つ(満島ひかり)
気がつけば2017年も二月である。
月は刺さりそうなほどに細い。
長身の暗殺者に切り刻まれて殺される夢を見て命乞いをしながら目をさます。
自分が「死」を惧れていることに驚く今日この頃である。
人間って面白いなあ・・・。
「わたしたちの教科書」からほぼ10年である。
胸が痛くなる境遇の人々を描き続けて傑作に仕上げてきた脚本家の円熟を感じさせる本作と言えるだろう。
熟れた果実のように芳香を漂わせている。
その香りを嗅ぎながら・・・なんだか潮時も感じるのだなあ。
いや・・・脚本家のことではなくて・・・キッドのレビューの話である。
ドラマを楽しんで・・・その記憶をなぞる・・・このレビュー・・・。
それも・・・そろそろ・・・店じまいなのかもしれない。
だって・・・きりがないものなあ。
人は確固たる思いが揺らぐものだから・・・。
もちろん・・・そういいつつ・・・新しいドラマが始れば・・・また書いてしまうかもしれないわけだが。
で、『カルテット・第3回』(TBSテレビ20170131PM10~)脚本・坂元裕二、演出・金子文紀を見た。カルテット・ドーナツホールは夫が失踪中の第一ヴァイオリン・巻真紀(松たか子)、世界的指揮者を祖父に持つ第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)、美容院でバイトリーダーを勤めるヴィオラ・家森諭高(高橋一生)、巻氏の失踪の謎を探るチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)からなる弦楽四重奏団である。
彼らは軽井沢にある別府家の別荘で合宿生活を送るのだった。
千葉市立青葉病院では一人の手品師が生涯を終えようとしていた・・・。
すずめの父親である綿来欧太郎(高橋源一郎)である。
欧太郎の世話をしているのは岩瀬寛子(中村優子)だが・・・欧太郎との続柄は明らかではない。
中村優子の実年齢が42歳、高橋源一郎が66歳である。
兄妹としては年齢差が大きすぎるので欧太郎の姉妹が寛子の母なのであろう。
つまり、欧太郎は寛子にとっておそらく叔父である。
そして・・・病床の欧太郎が見せるトランプを使った手品に目を輝かせる高校生らしき年頃の岩瀬純(前田旺志郎)は寛子の子供なのだろう。
「あいつ・・・いつ来るかなあ」
「そうねえ」
欧太郎とすずめの父娘関係についての事情をある程度は知っているらしく寛子は言葉を濁す。
父娘の離別は二十年以上前の出来事である。
「叔父さんは娘に会いたいの?」
純にとって欧太郎は大叔父にあたる。
寛子とすずめは従姉妹なので・・・すずめは純にとっていとこおばである。
そういう続柄は高校生にはどうでもいいことだ。
純は寛子に問う。
「どうして会いにこないのかなあ・・・」
「二十年以上会ってないそうだから」
「なんで・・・親子が別れてくらしているの」
「すずめちゃんのお母さんは早くに亡くなっているの・・・叔父さんは・・・大事件を起こして逮捕されちゃったから」
「逮捕?・・・あの人、犯罪者なの・・・」
八歳の頃の綿来すずめ(太田しずく)は「超能力少女」として一世を風靡していた。
もちろん・・・父親仕込みのトリックによるものである。
満島ひかりの実年齢31歳から察するにそれは1994年頃の出来事である。
超能力者すずめはマスメディアでももてはやされたが・・・やがて超能力がトリックによるものであることが発覚し・・・すずめは偽魔法少女としてバッシングを受ける。
娘の超能力を餌に・・・欧太郎は詐欺を行ったのだろう。
超能力の実在を信じて騙される人々はいつの時代にも一定数いるものである。
訴訟が起こされ・・・欧太郎と関係の深かったテレビ関係者が自殺するに至ったのだ。
父親が投獄中に・・・すずめは・・・親戚をたらいまわしにされて育ったという。
純が検索すると・・・動画がヒットする。
「超能力詐欺って・・・すげえな」
ある事件によってTBSテレビが一度死んでいることを知らない世代なのである。
しかも過去の断片はいつでも素晴らしいインターネットの世界を漂っているのだ。
まるで・・・悪霊のように。
岩瀬家もすずめの親戚の一つだったので・・・事件当時、二十歳前後だった寛子は岩瀬家で過ごしたすずめを知っているのだった。
「ある日・・・すずめちゃんは家の蔵でおじいさんのチェロを見つけて・・・それ以来、蔵に籠ってチェロを引き続けていたの・・・」
「チェロ・・・」
すずめが世吹すずめを名乗っているのは・・・綿来すずめだった過去を隠すためだろう。
しかし・・・事情を何も知らず想像力にも恵まれていない高校生の純は・・・父親が会いたがっているのだから娘は会いに来るべきだと感じるのだった。
軽井沢の別荘・・・。
過去の悪夢がまたしても自分を追いかけはじめたことを知らないすずめが目を醒ます。
寝坊していた。
(午後から雪になりそうなので洗濯物は午前中にとりこんでください)
そんなメモも役に立たない昼下がりである。
雪は降る・・・沈む心。
すずめは洗濯物を暖炉で乾かすことにした。
しかし・・・ヤモリのパンツが炎の中に転がり落ちる。
仕方なく・・・すずめはパンツを灰にして証拠隠滅を図る。
そこへ・・・ライブレストラン「ノクターン」からの米の差し入れにやってくる元地下アイドルのアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)・・・。
笑わない目で微笑みかけるアリス。
「せっかくのおやすみなのにデートとかしないんですか」
「しませんね」
「彼氏を作らないんですか」
「告白とかが・・・苦手で・・・」
「告白は小学生のすることです・・・中学生以上は誘惑してください」
「誘惑とは」
「誘惑とは人間を捨てること・・・基本は三つ・・・猫になるのか・・・虎になるのか・・・雨に濡れた仔犬になるのか・・・どれにしますか」
「じゃ・・・猫で」
「ごろん・・・ああ・・・つかれちゃった」
アリスは実演を開始し・・・すずめを抱き寄せる。
「キスしてはダメですよ・・・いつキスしてもおかしくない距離を作るのが女の仕事です。ペットボトル一本分の距離を保つのです。女からキスしたら・・・恋は生まれないのです」
獣たちは見つめ合うのだった。
カルテット・ドーナツホールのメンバーが集結し、出発間際である。
「洗濯したはずのパンツが・・・ランジェリーがない」
「別府さんのランジェリー貸してあげたらどうですか」
「ランジェリー貸してって・・・変でしょう」
「途中のコンビニで買ってください」
まきまきが登場するとボーダーが別府とペアルックな感じに。
「特別な関係に見えますよ」
別府が着替えると白いシャツがヤモリとかぶるのだった。
「特別な関係に見えるじゃないですか」
ノクターンでは純がボーダーを着て待っていた。
「ボーダーがかぶっています」
「ボーダーを見かけた次の日が狙い目です」
「すみません・・・棉来すずめさん」
「・・・皆さん・・・先に行ってください」
「あなたのお父さん・・・もうすぐ亡くなります」
「・・・」
「最後に・・・娘に会いたいって・・・」
「・・・」
「僕と一緒に来てください」
「今日は仕事があるので行けません」
「・・・」
純は視線ですずめを咎める。
メンバーたちは・・・すずめの動揺を気遣う・・・。
「今日・・・テンポが・・・あれでしたね」
「遅かったですか」
「いえ・・・速かったです」
まきまきは・・・すずめをそっと見つめる。
ヤモリはアリスを誘うことに成功したらしい。
「でもね・・・パンツがね」
なぜかヒップに「ウルトラソウル」の文字が白抜きされたパンツである。
「競泳用ですか」
「これしかなかったんですよ」
ヤモリの下ネタにまきまきはすずめに微笑みかける。
あわてて笑顔を繕うすずめ。
まきまきは思慮深くすずめを見守るのだった。
別荘に戻ったすずめは風呂上りのアイスクリームを別府におねだりする。
「別府さん・・・明日・・・何かありますか」
「明日・・・そういえば餅つき大会があるそうですよ」
「別府さん・・・行きますか」
「明日は・・・実家に帰らないといけないんです・・・父が何か賞をもらったらしくて」
「すごいですね」
「僕以外はね・・・」
「餅つき大会の方が楽しいんじゃないですか」
「いや・・・家族の祝い事なので・・・帰らないわけにはいかないのです」
「家族・・・だから」
「そういえば・・・すずめちゃんの家族の話はしていませんね」
「家族は・・・岡山県でキビダンゴ作ってます」
もちろん・・・嘘である。
すずめの家族は死にかけているのだ。
そこへ・・・ヤモリが帰ってきて火照る身体を慰める強い酒を求めるのだった。
「ウルトラソウルはなかったんですか」
アリスがヤモリを連れこんだのは・・・実家だった。
アリスは何か恐ろしいものに変身していたらしい。
「本当にあがっていいの~」
「何しにきたんですか」
「へへへ」
背後からあすなろ抱きを決めようとするヤモリ。
「あ・・・そこ・・・おじいちゃん・・・寝ているので」
「え」
明らかに夜逃げした一家の逃亡生活的就寝である。
狭い部屋に・・・アリスの祖父と両親が三人で眠っている。
奥の部屋を開くと・・・そこではアリスの妹(渡辺優奈)が勉強机に向っていた。
すずめの過去が地獄なら・・・アリスの現在も地獄である。
「妹・・・高校受験なんです・・・勉強教えてあげてください」
「はい」
「私・・・明日早いので帰ります」
「はい」
どこかへ帰って行くアリスである。
「あの人は・・・やめた方がいいよ」
「・・・」
「お姉ちゃんの小学生の時の仇名・・・淀君だったの・・・クラスが変わる度にお姉ちゃんのいたクラスだけ学級崩壊しちゃったの・・・お姉ちゃんと付き合ってた人・・・Apple Storeで働いていたのに・・・今は朝からパチンコ屋に並んでいるよ」
・・・ヤモリは今日の出来事を語り終えた。
「何があったんでしょうね」
「目が笑わない人の話ですからね」
「何があってもおかしくないですよね」
「すずめちゃん・・・もう・・・眠ったら」
「大丈夫です・・・」
すずめは一人になりたくなかったらしい。
目が覚めるとまきまきがパソコンを使っていた。
机の上のボイスレコーダーに驚くすずめ。
しかし・・・それはまきまきのものだった。
「在宅で仕事を始めたんです・・・テープ起こしの仕事です」
まきまきはボイスレコーダーを再生する。
「国はたくさんの借金をしています。借金はいつか返さなければなりませんが返す人数がどんどん減っているわけです」
「すずめちゃん」
「はい」
「後で一緒に餅つき大会に行きませんか」
「私・・・今日はちょっと」
すずめは・・・机の下の盗聴用ボイスレコーダーを回収し・・・失踪中のまきまきの夫の母親・巻鏡子(もたいまさこ)と密会するためにいつもの喫茶店に向う。
鏡子は・・・息子がまきまきによって殺されたと信じているのである。
「今月分です」
お金を渡す鏡子。
「私・・・もう・・・こういうのやめようかなって思うんです」
「あなた・・・ロッカーの鍵持ってるんでしょう・・・海の見える場所に移してあげたいんでしょう・・・お金が必要じゃありませんか・・・それにね・・・私はあなたの経歴を見込んで・・・お願いしてるんですよ・・・なんなら・・・これからみなさんに・・・あなたの昔話を聞かせに伺ってもいいんですよ・・・ねえ」
そこへ通りすがりのアリスが現れる。
「すずめちゃんじゃないですか・・・こんにちは」
「あ」
あわてて金を隠すすずめ。
不気味なにこやかさを示すアリス。
「では失礼します・・・さようなら」
去っていくアリス。
「紅茶のおいしい喫茶店ね・・・あなたにとってこれが一番むいている仕事なのよ」
すずめの心は行ったり来たりである。
ノクターンの楽屋に谷村夫妻(富澤たけし・八木亜希子)が現れる。
「知り合いの旅館仲居さんがお金を横領していることが発覚しました」
「・・・」
「まさか・・・皆さんの中に犯罪者はいませんよねえ」
一同は家森を見つめるのだった。
「なんで僕?」
ちょっとした世間話にも動揺するすずめをまきまきは見逃さない。
「天気予報」の言葉遊びなどで和やかな湯豆腐の夕餉。
しかし・・・カルテット宛てのメールに動画が添付されている。
「なんだこれ・・・超能力少女って・・・スパムかな」
「やばい奴じゃないの」
「ウイルスとか」
「課金とか」
「急いで削除して」
思わず張りすぎたチェロの弦を切るすずめだった・・・。
すずめは・・・アリスの伝授した技にチャレンジしてみた。
別府のベッドに潜り込んで猫になったのである。
しかし・・・別府の反応は鈍い。
「あ、Wi-Fi繋がらないんですか?」
ペットボトル一本分の距離。
「あ、部屋に虫的なものが?」
ペットボトル一本分の距離。
「あ、お腹空いているんですね・・・ドーナツありますよ」
ペットボトル一本分の距離を縮めない別府である。
「ごめんなさい・・・こんなことするつもりじゃなかったんです」
「ドーナツ・・・どうぞ」
「いただきます」
「Wi-Fi繋がらないか・・・」
すずめを残し別府は去った。
翌日・・・すずめは別荘から姿を消した。
「何か変わったことはありませんでしたか」
「Wi-Fiが・・・」
「とにかく・・・私は一日別荘にいます・・・すずめちゃんが帰ってきたらお知らせしますから」
「・・・」
まきまきは・・・すずめに何かが起こっていることを察知していた。
すずめは病院に向っていた。
しかし・・・病院前の停留所で下りることができなかった。
財布の中身は心細い。
例のお金に手をつけることができないのだった。
公園でチェロを弾き小銭を稼ごうとするが警官に咎められる。
すずめはなけなしの五百円で花屋で花束を作ってもらった。
ロッカー式納骨堂にやってくるすずめ。
亡き母の骨壷に幼い子供のように挨拶をするのだった。
超魂がそこにあるのかい。
お腹がすいたすずめはドーナツを食べた。
地獄はいつまでもいつまでも続いて行く。
まきまきは病院からの電話をとった。
カルテットのワゴンで軽井沢から千葉へゴー!である。
すずめの父親は虫の息だった。
「一度・・・息を引き取ったんですが・・・また・・・戻って来たんですよ・・・すずめちゃんに会いたいのかもねえ」
寛子はつぶやく。
すずめの父親はまきまきと目を合わせた。
(ごめんなさい・・・人違いです)
すずめの父親は地獄に堕ちた。
純は・・・まきまきに話しかける。
どうしても・・・自分の知っていることを伝えたい年頃である。
おなじみの「超能力少女すずめの動画」である。
「なんだか・・・大変だったみたいです」
「・・・」
「検索してたら・・・こんなのも見つけました」
ブログ「OL辞めてロンドンで暮らしています」は声・安藤サクラで届けられる。
「OLだった頃・・・つばめちゃんという同僚がいた。よく笑う子だったけれど・・・自分の話は絶対にしない変な子だった。ある日・・・誰かがその子の名前で検索をしてみると・・・みんなが子供の頃を思い出した。つばめちゃんはあの超能力少女だったのだ。たくさんの人を不幸にしたという詐欺事件の張本人が同じ会社にいたのだった。誰が始めたのかはわからないけれど・・・つばめちゃんの机の上に出ていけというメモが置かれ始めた。つばめちゃんはそれでもよく笑う子だったけれど・・・ある日・・・会社を辞めた。机の中が出ていけメモでいっぱいになってしまったからだ・・・つばめちゃん・・・今はどこにいるのでしょう。今もよく笑うのでしょうか」
「これって・・・すずめちゃんのことですよね」
「目上の人をちゃん付けでは呼ばない方がいいですよ」
まきまきはいたたまれない気持ちで外の空気を吸う。
そして病院前を漂うすずめを発見するのだった。
すずめは逃げた。
まきまきは追いかけた。
「お腹がすきませんか」
まきまきは定食屋にすずめを誘った。
二人はカツ丼を注文した。
店には「稲川淳二の深夜の浴場」が流れている。
「食べたら・・・病院に戻りますか」
「稲川淳二さんですよね・・・これ」
「すずめちやん」
「まきさん・・・こわい話は好きですか」
「すずめちゃん」
「真夜中に温泉とか」
「すずめちゃん・・・お父さん・・・さっき亡くなられました」
「ホーンテッドマンションなら」
「すずめちゃん」
「・・・ごめんなさい・・・なんか・・・聞きましたか・・・昔のこととか」
「・・・」
「昔・・・父がお世話になった人が大怪我して入院したことがあったんです・・・でも父は絶対に見舞いに行かなかった・・・病院に行って風邪をうつされたら嫌だって・・・父が基礎工事を請け負ったビルがあったんです・・・ビルが八割方出来あがったところで・・・基礎工事に問題があることが発覚しました・・・一からやり直しになって倒産する会社とかあったのに・・・その日・・・父はラーメン屋でスープが温いってクレームつけて作り直させたんですよ・・・ひどいですよね」
すずめはビールのポスターの水着美人に語りかける。
「こわいな・・・こわいな・・・なんだろう・・・身体がどうにも動かない・・・やだなやだな・・・どうしよう」
「私の父は稲川淳二の怪談より恐ろしい人でした」
そこへカツ丼がやってくる。
「食べ終わったら・・・病院に行きますね・・・怒られちゃうかな・・・ダメかな・・・家族だから・・・行かなきゃダメかな」
まきまきは割りばしを差し出した。
受け取ろうとするすずめの手をまきまきは握った。
「すずめちゃん・・・カツ丼食べたら軽井沢へ帰ろう」
「でも」
「いいよ・・・病院に行かなくていいよ」
「でも・・・父親が死んだのに」
「いいの」
「・・・知られたら・・・カルテット辞めなきゃいけないのかなって・・・」
「そんなことはない」
「怖かった・・・みんなから離れたくなかったから」
「私たちみんなでトイレの芳香剤みたいなシャンプーを使ってるじゃないですか・・・家族じゃないけど洗濯物まとめて洗濯してるじゃないですか」
二人はカツ丼を食べた。
「美味しい・・・」
「泣きながらご飯を食べたら・・・人は生きていけます」
軽井沢へ向かう車の中で蔵の中のチェロの話を始めるすずめ。
「蔵の中でおじいさんにチェロを教えてもらったんです。おじいさんはチェロはおじいさんより年上なんだって言いました。そして私が年をとっても死んでもまだ生きていくって。チェロは凄く長生きなんだって。私は思ったんです。私より長生きなら・・・私は死ぬまでチェロと一緒なんだって。ずっとずっと一緒なんだって」
「それって・・・まさか・・・怖い話じゃないよね」
「私・・・まだ・・・まきさんに隠していることが」
「あら・・・」
まきまきは前方に注意を奪われていた。
別府の別荘はイルミネーションで飾られていた。
餅つき大会はあるし、すずめは赤、まきまきは緑のクリスマスカラーだし・・・軽井沢はまだ年末なのか・・・。
二人を出迎えようとして別府は脚立から転げ落ちた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
すずめは別府に手を差し伸べる。
そしてキスをした。
すずめは虎になったらしい。
「Wi-Fi、繋がりました~」
「ノクターン」のステージ・・・。
「無伴奏チェロ組曲/J・S・バッハ」を弾きかけたすずめは思いなおして「無伴奏チェロのための組曲/ガスパール・カサド」を奏でる。
ウルトラソウルを鎮めるレクイエムのように・・・すずめは忌まわしい過去と訣別するのだった。
祝福を求めるならば自分で扉を開くしかないのである。
プレイヤーは今という瞬間の音を楽しむしかないのだ。
すずめはロッカーのキーを二つ持つことになった。
「すずめちゃん・・・金庫もってるんですか」
「金庫の中身はキビダンゴです」
家森は例によって怪しい男(Mummy-D)にキャッチされる。
いよいよ・・・本性を現す男は・・・家森を簀巻きにして階段をゴロゴロさせる勢いである。
「このお姉さん・・・どこにいるのかなあ」
「この人に愛情ないし・・・知らないですよ」
「転がしちゃおうかなぁ」
「や・・・やめて」
男の差し出す写真に写っているのは高橋メアリージュンにそっくりな女である。
・・・本人だろう・・・。
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コメント
こんばんわ。
私にとっては好きだったり好きじゃ無かったりする脚本の方ですが、今回は「最高の離婚」以来久々の珠玉の名作感を感じていますわ。
キャストも私が望む範囲での最高の組み合わせだし、その人たちがそれぞれ見せてほしかった役を演じてくれているという感じ。
そっか、TBSが良かったのかなって思いました。(この方の日テレのもの…子育てに関するもの?はことごとく嫌悪感持ってしまうので(笑))
じいやの口から、口じゃないけど、潮時という言葉が出るのは何だかとても寂しいです。
でも解らなくもないですわ。
私も、いつまで続けるんだろうって時々思いますもの。
いつか、みんなが潮時だと思った時、年末に皆さんに協力して頂いたベストみたいに、みんなで書きたい時だけに書ける場を作れるといいね、とかボンヤリ考えたりもしていますわ。ブログの老人ホームみたいなね(笑)まだまだ早いけど(笑)
投稿: くう | 2017年2月 1日 (水) 19時24分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
「最高の離婚」テイストでよろしゅうございました。
今回は母性を漂わせているのがもたいまさこですからねえ。ほとんど目立たない感じに仕上がってますな。
十年くらい前で八千草薫だったら
生々しかったかもしれません。
「母なる自然」への憧憬はどんな創作者のベースにあるものだと思いますがいい年した大人の少年的な「理想の母親」はご婦人方には鬱陶しいものなのでしょう。
「幼くして母を失った娘」という主題が今回はすずめによって描かれましたね。
それにしてもくう様に嫌悪感を持たれてしまうということは
万人受けするドラマがいかに存在困難なものかというひとつの証明と申せましょう。
「リモート」とか「あなたの隣に誰かいる」とか
とんでもドラマもある脚本家ですが
ここ数年は毎回うっとりさせられているじいめでございます。
今季はドラマのTBSの面目躍如になっておりますな。
このブログはほぼ引き籠っているキッドにとって
一種の一応生きていますという標識のような役割もあるのですがココログ自体に少し先行き不安な状況があり
少々・・・潮時を感じるのでございます。
ふっと消えるというのもよろしいのですが
往生際が悪い感じの方が性にあっているのでございますよ。
前回の休眠前もかなり断末魔な感じでございましたでしょう。
しかし・・・まだ冬ドラマも途中ですので・・・
結論は先の話でございます。
いろいろと考えながらかなり充実している冬ドラマを楽しみたいと考えます。
わざわざのお運びありがとうございました。
投稿: キッド | 2017年2月 1日 (水) 21時17分
ご無沙汰しています。
キッドさん、インフルエンザなどかかっていませんか。お元気ですか。
坂元脚本ドラマは近年欠かさず観ているので、そのレビューも欠かさず読んでいます。いつもありがとうございます。
わたしたちの教科書から10年もたつんですね。
私はあの最終回の日は引越しで、ささやかですが人生の区切りでした。新しい人生がもう10年もたったのだなあと年月の早さを、いや速さを?しみじみと感じています。以上、私事でしたっ。
カルテット、いいですねえ。
今話は骨壺に涙です。
中学生以上は誘惑してください、にちゃぶ台をひっくり返されました。私は基本的に小学生でした。いやあ、赤面です。
目が笑わない女の子の実家ですが、なるほど、夜逃げですか。きっとそうですね。違和感がありましたが答えを想像することができなかったんです。ありがとうございます。
我が家は家族で交代で風邪をひきました。私は治ったんですが、親がまだゲホゲホやっています。
風邪には気を付けて。
それではまた。
投稿: mi-mi | 2017年2月 4日 (土) 10時23分
aDayinOurLife~ mi-mi様、いらっしゃいませ~アタラシイナニカヲミツケルネェ
永年のご愛読、ありがとうございます。
キッドは悪魔なのでインフルエンザに感染しても
問題ないようでございます。
坂元脚本ドラマは快進撃続行中でございますよねえ。
愛されるポエム、ナンバーワンではないでしょうか。
十年は一昔ですからねえ・・・なにしろ小学生が社会人になってしまう歳月でございます。
十年あれば日本でも一千万人くらいが生れ
一千万人くらいが亡くなって行く・・・。
いろいろと顔ぶれが変わるわけでございますな。
しかし、志田未来も谷村美月も菅野美穂も健在で喜ばしい限りでございます。
「カルテット」も素晴らしい。
「わらってますよおまきさんひどい」
「さんいさんいですねえ」
「わたしひけない」
なんでもない言葉がすべてポエム化しておりますな。
そして・・・カルテットを守るためなら
老いたキリギリスを駆逐する非情のまきまきの可憐さ。
カルテットの部外者である元地下アイドルも
手を出せば火傷する氷の精霊でございましょう。
どんな氷の世界を見て来たのか・・・。
一言一言にみぞみぞいたします・・・。
夜逃げでなくても
深刻な経済的問題を抱えているのでしょうな。
三人とも寝たきりだったりして・・・。
淀君は一家を養っているのか・・・。
ハローグッバイで去って行くアリス。
カップとお皿に文字があるのか・・・。
それとも私がイエスと言えばノーという君なのか。
ツンデレなのかあまのじゃくなのか
単に素直なだけなのか・・・。
恋の魔術にうっとりする他ございません。
風邪は万病の元ですが
人類百万年の歴史は
菌やウイルスとの共生の物語でございます。
「あんまり苦しくしないでくれよん」
とお願いすれば
「今回だけはこのぐらいでパステル」
と手加減してくれるかもしれません。
投稿: キッド | 2017年2月 4日 (土) 12時46分