今宵、私とあなたと二人の子供の三人で(高橋メアリージュン)
やるせない人々の物語である。
ほぼ中流家庭の物語だった「逃げるは恥だが役に立つ」がアリさんたちの物語とすれば・・・こちらは冬のキリギリスの話なのだ。
メンバーの一人が軽井沢に別荘を持っていることに象徴されるように・・・彼らはどちらかといえば上流階級に属する出自を持っている。
そして・・・若者たちがバンドを組むのとは違い・・・彼らは一人一人がそれなりのプレイヤーである。
そうなるためにはある程度の音楽的教養が必要となる。
たとえば彼らが人前で演奏するための楽器は・・・素晴らしいインターネットの世界で一万円で買えるエレキギターではないのである。
彼らにとってヴァイオリンやヴィオラそしてチェロは高級乗用車なみの価格であることが最低限なのである。
そのあげく・・・彼らはダメ人間の烙印を押されつつある。
これは「夢は必ずしも叶うものではない」という現実をお茶の間につきつける。
それでも・・・彼らは音楽家としてそれなりに素晴らしい演奏をするわけである。
つまり・・・彼らはけして努力を怠ったわけではないのだ。
そういう人々の洗練された愛の物語である。
全編がわかる奴だけにわかればいい鎧をまとっている。
だから・・・視聴率については触れないでおきたい。
で、『カルテット・第4回』(TBSテレビ20170207PM10~)脚本・坂元裕二、演出・金子文紀を見た。カルテット・ドーナツホールは夫が失踪中の第一ヴァイオリン・巻真紀(松たか子)、世界的指揮者を祖父に持つ第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)、時々ノーパンのヴィオラ・家森諭高(高橋一生)、巻氏の失踪の謎を探るチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)からなる弦楽四重奏団である。
彼らが出会ったのはまきまきがヴァイオリンを練習するために使ったカラオケの館だった。
まきまき・・・練習のためにカラオケの館に。
別府・・・まきまきのストーカーだった。
ヤモリ・・・不明。
すずめ・・・失踪中のまきまきの夫の母親・巻鏡子(もたいまさこ)に雇われて。
彼らは別府家の所有する軽井沢の別荘で共同生活を送り、音楽家らしい情熱を発露する。
まきまき・・・夫に捨てられた女として意地をみせる。
別府・・・まきまきにアプローチしつつ年上の女に捨てられる。
ヤモリ・・・元地下アイドルでライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)にアプローチするがアリスの妹(渡辺優奈)の家庭教師を強要される。
すずめ・・・元超能力少女として詐欺師の父親に利用された過去を乗り越え、アリスの恋の手ほどきを無視して別府の唇を奪う。
いろいろとお盛んなのであった。
なんやかんやで軽井沢の長い冬は続いて行くのである。
「これをご覧下さい」
別府は他の三人に告げる。
別荘のゴミ集積場にはゴミ袋が溜まっていた。
「たまってますね」
「匂いますね」
「困りましたね」
三人は室内から呼び出され寒さをこらえながら困惑する。
「誰も捨てないからです」
「別府さんがいつも捨ててたから」
「僕が捨てなければ誰かが捨てるかもしれないと捨てるのをやめてみました」
「・・・」
「すずめちゃん・・・捨ててください」
「朝は無理・・・起きられない」
「僕だって眠りたい・・・まきさん」
「朝は寒いから・・・」
「僕だって寒い・・・イエモリさん」
「おこづかいくれる・・・」
「なんで僕があなたにお小遣いを・・・」
「アルバイトを辞めてしまって・・・苦しいんだよ」
「ゴミ袋を光学迷彩にすれば夜の間に出せます」
「草薙素子かっ・・・ゴミ収集車にも見えないので放置されちゃいますよ・・・ゴミたちはかくれんぼをして見つけてもらえなかった悲哀を味わうことになりますよ」
「シーズンごとに当番を決めましょう・・・私、春で」
「夏で」
「秋で」
別府を残し・・・室内に退避する三人である。
朝食の時間なのだ。
別府はついに怒りの虜となって・・・ゴミ袋を室内に持ち込むのだった。
「ゴミを捨てない人間はゴミから見てもゴミです・・・あなたたちは見捨てられたこの子たちの気持ちがわかるまで一緒に暮らすべきだ」
ゴミの臭気に満ちた朝食である。
「今に・・・ゴミ屋敷と呼ばれますよ・・・身体にゴミの匂いが染みつきますよ・・・友達いなくなりますよ」
「ゴミの匂いの好きな友達を作ればいいのでは」
「そんな人はいません」
「学生時代にいました・・・足の臭い美人と足の臭くない美人なら臭い方がいいって」
「変態じゃないですか」
「変態ですね・・・」
しかし・・・平気でお握りを食べるヤモリ・・・。
「ええええええ」
「とにかく・・・このままでは住民運動が起きて・・・ここを追い出されて・・・放浪の旅に」
そこに・・・半田温志(Mummy-D)と墨田新太郎(藤原季節)の二人組が現れた!
「外でお話ししましょう」
「おにぎりか・・・具はなんですか」
「・・・けと・・・かです」と人見知りのために小声になるまきまき。
「え」
「しゃけとおかかです」
「あ・・・それは僕のおかか」
「ヤモリさん・・・いい加減・・・この人の居場所を教えてもらえませんかね」
「イエモリです・・・だから・・・知らないと・・・何度言えば」
ヤモリと半田が問答をする間に手下の墨田はヤモリの部屋からヴィオラを持ちだす。
「みつけちゃいました」
「あ・・・それだけはやめて」
「いいお返事を待ってますよ」
「おにぎりを掴んだ手で・・・」と悲鳴をあげるすずめ。
「それがないと・・・演奏できません」
「ゴミを出す日ですか・・・ついでだから・・・出しておきますよ」
二人組はゴミとヴィオラを持ち去るのだった。
「いい人たちですね」と別府・・・。
「警察呼びます」とまきまき・・・。
「やめてください・・・あの人たちは・・・悪人ではないのです」
「え」
ヤモリの部屋に集合する一同。
「彼らが捜しているのは・・・僕の離婚した妻です」
「結婚してたのですか」
「子供もいます」
「・・・」
「すずめちゃん・・・トイレのスリッパ脱いで」
すずめはスリッパを脱いで部屋の隅のダンボール箱の上に置く。
「長い話になりますが・・・僕は子供の頃・・・自転車で日本一周をしたことがあって」
「そこからですか」
「Vシネマの俳優をやっていた時に・・・」
「Vシネマ・・・」
「六千万円の宝くじに当たったんです」
「え」
「でも・・・買ったことを忘れていて気が付いたら引き換え期間が終わってました」
「ええっ」
「僕はヤケ酒を飲みました・・・その席で・・・飼っていたハムスターが死んで泣いている彼女と出会ったのです」
「なんとなく一緒に映画を見に行って・・・映画の中でもハムスターが死にました」
そこがまきまきのツボだったらしい。
「僕も・・・元気がなかったので・・・結婚して・・・子供もできました」
「どうして・・・離婚しちゃったんですか」
「その年は猛暑で・・・僕は定職につかずに・・・結婚なんて地獄ですから・・・妻はピラニアです・・・婚姻届けはデスノート・・・」
「ダメ人間だったんですね」
「はい・・・彼らが捜しているのが元の妻の茶馬子です」
「どうして・・・」
「僕と別れた妻に恋人が出来て・・・資産家の息子なのに家業を嫌って小説家になりたいという西園寺誠人というアホボンで・・・二人は僕の息子の光太を連れて駆け落ちしたんです」
「なるほど・・・」
「西園寺家が息子をつれ戻すために組員・・・いや社員を派遣したわけです」
「居場所はわかっているんです」
「え・・・」
ヤモリはトイレのスリッパの下のダンボール箱を開く。
中からは子供用の1/2チェロのセットが現れた。
「かわいい・・・」
「息子用ですよ・・・茶馬子が送りつけてきました」
「この送り主の住所に・・・」
「それは嘘ですよ・・・でもコンビニの受付印が横須賀です」
「小学生の子供がいれば小学校で待ち伏せできるわね」
「・・・」
「子供のために・・・口を割らなかったのね」
「茶馬子に会って・・・西園寺家と話をつけるように話してきます」
こうして・・・ヤモリはすずめを連れて横須賀に向うのだった。
ヤモリはカルテット・ドーナツホールの車を運転しながらフランスの古謡「フレール・ジャック」のメロディーを口笛で吹く。
聖騎士ジャック
やすらかに眠れ
鐘を鳴らそう弔いの鐘を
キンコンカンキンコンカン
「どうして・・・私がイエモリさんの恋人役なんですか」
「茶馬子は・・・僕が孤独死するって心配してるんだ」
「だったら・・・まきさんの方が」
「茶馬子は僕の好みのタイプを知っている・・・」
「・・・それなのにどうして別れちゃったの」
「妻と猫とカブトムシがいたら・・・話が通じるのは猫、カブトムシ、妻の順だからね・・・冬でもサンダルはいてるし」
「・・・」
「僕はケガして入院した事があるんだ・・・その時・・・息子だけがお見舞いに来た・・・息子は僕に早く大人になりたいって・・・言うんだ。ぼくは・・・心底・・・自分自身をダメ奴だと思ったよ・・・だって僕はその頃・・・いつも・・・子供の頃に戻りたいと思っていたから・・・」
しかし・・・ヤモリの身の上話の途中ですずめは眠っていた。
その頃・・・過去を乗り越えたすずめが任務を放棄したために自ら・・・別荘周辺を嗅ぎまわっていた鏡子は眼鏡を落してしまう。
そこへ別府がやってくる。
「落し物ですか」
「眼鏡を・・・」
「大変だ・・・捜すのを手伝いましょう」
そこへまきまきがやってくる。
「別府さん・・・キスしましたよね」
「え」
「なかったことにしようとしているでしょう」
「でも」
「すずめちゃん・・・待ってますよ」
「あ・・・動かないで」
別府はまきまきの足元から鏡子の眼鏡を拾い上げる。
「別府さんのですか」
「いえ・・・」
別府は鏡子の姿を捜すが・・・鏡子は停車していたトラックの荷台に潜り込んでいた。
トラックは走り出し・・・荷台から身を起こした鏡子はまるで市場に売られていく子牛のようにわびしく去って行った。
横須賀の小学校で小学生の下校を見張るヤモリ。
教員たちがヤモリを見る目は厳しい。
爽やかな笑顔で応えるヤモリ。
その頃、車中のすずめはリコーダーの音色で目覚める。
右手がパーで左手がグー
合体だ妊娠だ
大橋光太(大江優成)は波止場の公園のベンチで海を見る。
すずめに導かれ・・・ヤモリは接近した。
「光太・・・誰だかわかるか」
「パパ」
「光太・・・」
「ちょっとこれ持ってて・・・ちょっと待ってて」
光太は水飲み場へ向かう。
昔の記憶に操られ・・・光太を抱いて持ち上げようと身構えるヤモリ。
しかし・・・光太はもう・・・一人で水が飲めるほどに成長していた。
「光太・・・大きくなったな」
「パパ・・・帰ろう・・・家はあっちだよ」
屈託のない光太である。
光太の指さす方向からサンダル履きの女がやってくるのに気がつくすずめ。
大橋茶馬子(高橋メアリージュン)と西園寺誠人(永島敬三)である。
「カブトムシ・・・」
「え」
「あ・・・なにしてんねん」
ヤモリは光太を抱き抱えて逃げ出した。
追いかけようとする茶馬子の前に風邪気味の半田が立ちふさがる。
「なんやねん」
「半田・・・」
「坊ちゃん・・・」
「・・・」
家森が光太を連れ帰ったことに驚くまきまき・・・。
「ここ・・・パパのお屋敷?」
「パパのお屋敷だよ」
今夜の夕食のおかずは・・・アジフライだった。
アジフライに醤油をかけるまきまきとすずめと別府・・・。
「ちょっと・・・なにかけてんの」
「醤油ですけど・・・」
「アジフライにはソースでしょうが」
「ママが・・・醤油でもソースでも食べた方がみんなと仲良くできるって」
光太の言葉に動揺するヤモリだった。
息子と同じようにアジフライに醤油をかけようとするヤモリだったが・・・最後の一線を越えられない。
「別府くん・・・ソースいただけますか」
「中濃ですか・・・ウスターですか」
「ウスターで・・・」
光太は就寝する時に・・・消灯しても平気だった。
「パパ・・・いつ離婚終わるの・・・大体何ヶ月くらい」
離婚はいつか終わるものではないと・・・説明できないヤモリなのである。
ヤモリは階下で待つ一同に相談する。
「カルテットやめようかな・・・」
まきまきは驚いた・・・。
「定職について・・・そしたら・・・茶馬子だって・・・」
そこで呼鈴が打ち鳴らされる。
ピンポンピンポンピンポンピンピンピンビンポン・・・。
「これは・・・茶馬子のチャイム・・・」
「えええ」
思わず身を伏せるヤモリだった。
「そうしているとまるでヤモリですね」
応対するまきまきとすずめ・・・。
「何か御用ですか・・・」
「半田という人にここに家森が住んでいると聞きました・・・光太もおるんやろ」
「二階でぐっすり眠ってますから」
「家森は・・・」
「二階でぐっすり」
「起こしてえな」
「イエモリさん・・・いつも茶馬子さんの話をしていました」
「ハムスター死んだんですよね」とすずめ。
「・・・」
「他に何死にました」
「いきているものの話をしましょうよ」
「・・・」
「イエモリさん・・・やり直したいって言ってましたよ」
「この世で一番鬱陶しいのは・・・もう一回やりなおそうって言う奴や」
「でも・・・イエモリさん・・・いつも言ってます・・・結婚は天国だった・・・茶馬子さんはノドグロだ・・・婚姻届は夢を叶えるドラゴンボールだって・・・」
「まさか・・・」
「本当だよ」と階段で王子のように振る舞い出すヤモリ。「茶馬子はノドグロでキンキだ」
「他には」と茶馬子。
「イセエビだ・・・」
「魚で」
「魚・・・魚で・・・」
「セキサバ・・・」とまきまきが小声で支援する。
「関さばだ・・・」
微笑む茶馬子・・・。
「西園寺くんはどうした」
「若い衆に泣きついて帰ったわ・・・ホッとしたんやろう・・・お金もなくなったし・・・私にも飽きてきたところやったんやろ」
仲を取り持つことができたと思った三人は退場する。
別府は仲直りのお祝いに自分の生れ年の秘蔵ワインを振る舞う勢いである。
しかし・・・。
居間に戻ると茶馬子とヤモリは言い争っている。
「子供をかすがいにしたら・・・夫婦は終わりやねん」
「でも・・・光太は三人で暮らしたいって」
「たまに・・・子供に構って父親面する男が一番腹立つんじゃ」
「う」
「光太が高熱出した時・・・病院連れてって言ったのに・・・風邪薬ですませようとしたやろ・・・肺炎になりかけたんやで」
「結局・・・病院に行っただろ」
「となりのおばはんが言ってくれたからやろ」
「・・・」
「どうして・・・赤の他人にいい顔して・・・女房の言うこと聞かんのや」
「・・・」
「あんた・・・一番言ってはあかんことをいったんや」
「・・・」
「ああ・・・宝くじ・・・六千万・・・引き換えてたらなあって・・・」
「・・・」
「そしたら・・・私と会わんかったし・・・光太も生れてないやろう・・・」
ヤモリは本当のことを言われて辛かった。
それは・・・自分がダメな男であることと同じ意味だからである。
「お前だって・・・音楽している俺が・・・好きだったんだろう」
「若い時の夢はええ・・・三十過ぎたらごくつぶしじゃ」
「ひでぶ」
翌朝・・・体調を回復した半田がヴィオラを返しにやってくる。
「それから・・・これ・・・奥さんに」
トリオは囁く。
「奥さんじゃないよね」
「元だよね」
「往年の・・・」
「手切れ金か・・・」
思わず半田をビンタする茶馬子。
女を殴らない主義なのか反射的にヤモリをどつく半田である。
金額を改めてバッグに納める茶馬子。
「受け取るのか」
「当たり前やろ」
「組長・・・いえ・・・半田さん・・・そろそろ」
つまり・・・西園寺組系半田組である。
「あんた・・・怖い目にあわせてすまんかったな」
組員たちは去って行った。
ヤモリは自暴自棄になり・・・自分の分身であるヴィオラを破壊しようとする。
それを制止する茶馬子。
「あんたはそのままでええで・・・それしかあかんやろ」
四人のダメな人々と・・・唯一まともな大人である茶馬子の鮮やかな対比・・・。
しかも・・・浪花節テイストだ・・・。
別れの儀式である。
開店前の「ノクターン」でアリスを加えたメンバーたちは父子競演のステージに拍手を送る。
「フレール・ジャック」を奏でるヤモリと光太・・・。
フレールジャック フレールジャック
中京記念で予後不良
安楽死安楽死
サンタクロース サンタクロース
いつかいっぱい
玩具を買って
ジングルベル ジングルベル
開店した「ノクターン」でヤモリはフランスの作曲家・ヤン・ピエール・ティルセンのアルバム「Les Retrouvailles 」収録の一曲「La Veillée」を奏でる。
日本版の「再会」では「宵」と訳されるが・・・それは「夕食後の団欒のひととき」と言うには物悲しい・・・。
父親と元夫の晴れ姿を見おさめて・・・光太と茶馬子は黒塗りのタクシーで去って行った。
残された大人になれなかった男は涙をこらえることができない。
トリオは自分の姿を見るように落涙するヤモリを見守る。
トリオは乙女の瞳をメイクしてつぶやく。
「私たちも孤独死ですかね」
「ずっと一緒だったらどうかな」
「死ぬまでカルテットをやる気ですか」
「少子化問題もありますしね」
「なにしてんの・・・」とヤモリ・・・。
「イエモリさん・・・少子化問題をどう思いますか」
思わず噴き出すヤモリは・・・同化させられるのだった。
四人は乙女の道化となった。
しかし・・・ゴミ袋の増殖は止まらなかった。
「どうするつもりですか・・・」
「いろいろあったから・・・」
その時・・・まきまきの携帯端末に着信がある。
「マンションでもゴミを放置していたので・・・異臭騒ぎになってしまいました」
「・・・」
カルテット・ドーナツホール車はゴミ袋を満載して軽井沢を出発する。
「一緒に捨てて叱られないでしょうか」と別府。
「もう・・・叱られているので」とまきまき・・・。
いつまでも大人になれないキリギリスたちは叱られる宿命である。
すずめは買い出しに出たスーパーマーケットで・・・鏡子に出会う。
「あの女のスマホを持ちだして下さい」
「私・・・もう・・・やめましたから」
「・・・」
「夫さんは・・・ただ・・・家出をしただけなのではないのですか」
「それならば・・・なぜ・・・私のところに帰ってこないのです」
「親に会いたくない子供だっていますよ」
「ひでぶ」
「とにかく・・・私は・・・まきさんが殺してないと信じます」
鏡子を置き去りにするすずめ・・・しかし・・・隣の通路にはアリスが待ち構えていた。
「アリスちゃん」
「すずめさん・・・千円貸してくれませんか」
「いいですよ」
「やっぱり・・・二千円」
「え」
アリスはすずめの財布を覗きこむ。
「五千円ありますね・・・」
「ひ・・・」
2015年、映画「明烏」で福田雄一。
2016年、ドラマ「ゆとりですがなにか」でクドカン。
そして・・・ココと・・・鬼才・天才たちを虜にする魔性が爆発する吉岡里帆でアール。
とにかく・・・なんとか危機を脱したすずめは・・・風邪を発症したヤモリのためにおかゆセットを作るのだった。
「食べますか・・・」
「食べる」
「階段から落ちて入院した時の傷を見る」
「あ・・・」
「これ・・・入院してた時の写真」
「ミイラ男ですか」
「これ撮ったの・・・まきさんの夫さんなんだよね」
「え」
「入院していた夫さん・・・ベランダからまきさんに突き落されたんだって言うのさ」
「ええっ」
「あの日・・・金に困った僕は・・・まきさんを強請うと思ってたんだ」
「えええ」
まきまき・・・練習のためにカラオケの館に。
別府・・・まきまきのストーカーだった。
ヤモリ・・・まきまきの夫さんの言葉を信じてまきまきを強請うとしていた。
すずめ・・・失踪中のまきまきの夫の母親・巻鏡子(もたいまさこ)に雇われて。
まきまきと別府はマンションに到着した。
ベランダでゴミ袋を整理する作業にとりかかる別府である。
「気をつけてくださいね・・・夫は一度うっかり転落して入院したことがあるんです」
作業が一段落してまきまきは出前を取ることを提案する。
別府は・・・脱ぎ捨てられたままの男物の靴下を発見する。
「出前が来るまで天津甘栗でも食べましょうか」
別府は栗の実をまきまきに差し出す。
「別府さんも食べてください」
しかし・・・不気味な気配を発しつつ栗を剥き続けまきまきに実を差し出す別府である。
「この靴下も捨てましょうか」
「それはゴミではありません」
別府はまきまきの手を取った。
「僕は靴下相手に三角関係しなくちゃならない・・・いつまで夫さんの帰りを待っているのですか・・・今頃・・・別な女といるのかもしれませんよ・・・愛していないけど好きな女と・・・夫さんはベッドでどこからキスするんですか・・・あなたといると二つの気持ちが混ざります・・・楽しいは切ない・・・嬉しいは悲しい・・・優しいは冷たい・・・愛しいは虚しい。愛しくて愛しくてむなしくなります。語りかけても触ってもそこには何もない。じゃあ・・・僕は一体・・・何からあなたを奪えばいいんですか」
別府・・・まきまきにアプローチしつつ年上の女に捨てられる。すずめに唇を奪われるがまきまきのことをあきらめたわけではなかった。
ヴァイオリンを奏でる指は・・・ヴァイオリンを奏でる指を弄る。
別府はゴミがゴミを愛して何が悪いという心境なのか・・・。
そして・・・一切の心を隠すまきまき・・・。
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コメント
茶馬子‼︎
ネーミングも凝りまくってますね
今回は高橋メアリージュンさんの演技に圧倒されちゃいましたが
見応えあって超面白かったです
結局 茶馬子が一番大人で庶民だった
共感できるキャラでした
このドラマ とりあえず録画してオンエア時もチャンネルは合わせていたんですが
正直2話くらいまでは集中力が続かなくって後でちゃんと見ようと
流し見していたので 内容をしっかり理解することができずにいました
第3話めくらいからすんなり見れるようになって
もう4話はリアルタイムもガッツリ見て 録画したものを見返して楽しんでます
会話劇だけでなくサスペンス要素もあってクラシック音楽がベースに流れて なんて贅沢なドラマなんでしょうか
火10のラインナップの中でも最高峰な気がします
これからは1.2話も復習してガッツリ楽しみたいと思います(*^o^*)
吉岡里帆さん
ゆとり でも不思議な役でしたが今回も何を考えているのかよくわからない役どころですね
ご本人について調べたら ものすごく努力家でプロ意識をもって
がんばってる女優さんなんだと知りました
これから ますます活躍しそうで楽しみですね^ ^
P.S.
芦田愛菜ちゃんが超難関中学に合格したと知り
以前キッドさんが彼女は6歳くらいで
高校生くらいの知能があると言ってらした事を思い出しました
幼い役を演じていた時はややわざとらしい気もしてましたが
最近 彼女はやっぱり格が違うと思っていたところなので
学業と両立しつつ世界を視野に活躍できる女優さんになって欲しいです
投稿: chiru | 2017年2月11日 (土) 14時40分
高橋メアリージュンさんといえば
昔風に言えばエキゾチックな美人さん・・・。
「サインはV」ならジュン・サンダースでございます。
いつの時代だよ・・・。
音楽に魂を奪われているイエモリくんには
その素晴らしさがわからないが・・・
実によき母だったのでございますねえ。
そして・・・夫としては失格だけれど
茶馬子はまだ・・・イエモリを愛してるのですな。
しかし・・・アリとキリギリスは
結ばれない宿命なのでございましょう。
まあ・・・茶馬子は関西系のサラブレッドなわけですが。
まあ・・・ポエムなので・・・。
心にしみればこんなにうっとりするものは
ないとも思うのですが
しゃらくさい・・・と思う方も多いのかもしれませんねえ。
それほど・・・高尚なものではなく・・・
基本・・・芸のためなら女房も捨てる~♪なので
もっと人気になってもいいと思うのでございます。
例によってどんどん再現率が高まり
心の臓に負担がかかる名作でございます。
妄想でごまかすのも限界がございますので・・・。
とにかく・・・何気ない会話も
リピートすると
表情の変化などで
そういうことだったのかというシーンが
どんどん発見できるという
伏線につぐ伏線展開です。
楽しゅうございます。
吉岡里帆は世に出るのが
遅すぎたくらいの魅力的な素材ですが
だからこそ・・・素晴らしい仕上がりになっているとも
言えるのですよねえ。
ガッキーと長澤まさみの魅力を併せ持つタイプという賛辞を捧げたい今日この頃でございます。
芦田愛菜ちゃんは今、深夜の山田くんのドラマで
キュートな魅力を発揮しているところですが
その収録から半年後・・・リアル下剋上受験に成功。
やはり・・・ただならぬ知性を持っていたのでございます。
いよいよ中学生で・・・子役時代は終了するわけですが・・・。
女優の道はまた別でございますからねえ。
素晴らしい道が待っていることを祈るばかりでございます。
投稿: キッド | 2017年2月11日 (土) 22時35分