天文二十四年、井伊肥後守直親元服す(三浦春馬)
天文五年(1536年)生れとされる井伊肥後守直親なので元服したのは数えで二十歳ということになる。
やや遅めの元服ということになる。
同じく天文二十四年(1555年)には松平元信も元服しており、こちらは数えで十四歳である。
この時すでに直親の嫡男・直政の姉・高瀬姫は生れていたという説もあるが・・・大河ドラマ的お茶の間モードが発動して未登場である。
場合によっては姉でなく妹になってしまう可能性も・・・キャスティングから妄想できる。
直政を演じる菅田将暉(23歳)で高瀬姫を演じる高橋ひかる(15歳)である。
ただし、高橋ひかるが直政の幼少期を演じる寺田心(8歳)に対応するなら姉の線も残っている。
直政誕生が永禄四年(1561年)とされているので実年齢差なら高瀬姫誕生は元服前である。
ドラマでは直親が逃亡先の保護者として「松岡様」を口にしている。
直親が潜伏していたのは信濃国の松源寺である。
松源寺は信濃国松岡城主の松岡氏の菩提寺で開山となった臨済宗妙心寺派の文叔禅師は松岡氏の一族だった。
井伊氏の菩提寺である龍譚寺もまた臨済宗妙心寺派に属する。
つまり・・・龍譚寺と松源寺の縁なのである。
「松岡様」とは文叔禅師の甥もしくは弟にあたる松岡城主・松岡頼貞ということになる。
ちなみに天文二十三年の武田信玄による信濃国伊那への進出により、松岡頼貞は降伏して、武田の武将・山県昌景の与力となっている。
直親の逃亡中の現地妻と娘の運命や如何に・・・というところなのである。
さて・・・ドラマでは何事もなかったように直親は奥山朝利の娘・奥山ひよを正室とする。
戦国時代には珍しく実名の伝わる「ひよ」なのだが・・・何故かドラマでは「しの」なのだった。
「ひよ」ではなく「しの」にしたいこだわりが誰かにあったのだろう・・・。
で、『おんな城主 直虎・第6回』(NHK総合20170212PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は次郎法師の従兄弟で井伊直盛の養子となる井伊直親の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。井伊家の一族であることから・・・謀反人の子でありながら井伊の総領家の養子として迎えられ・・・自分の妻となるはずだった女を正室にする直親に対して・・・井伊家家老として複雑な思いを抱く小野但馬・・・「お前は俺と同じ道をたどる」という父の呪いがじわじわと効いてくる感じでございますねえ。そんな心に油をそそぐのが・・・ヒロインの直親に対する「秘めた恋」ということになるのですな。このドラマにおける「井伊一族」の異常なほどの「空気を読まない感じ」が・・・小野但馬をガンガン追い込んでいくのでございましょうねえ。基本的に小野但馬は・・・「おとわ」への秘めた恋が原点にあるわけですが・・・瀬名の母親である佐名と・・・小野和泉の間にも・・・そういう関係があったのではと妄想できます。それにしても今川の対織田戦線に井伊がまったく関与していない風なのは少しものたりないですな。国人衆の兵力として農民たちも借りだされているでしょうし・・・井伊一党の武将たちもどんどん傷だらけになっていて・・・手足を失っているくらいの戦国モードもちょっぴり欲しい気もいたします。戦国大河なのに・・・六話まで・・・戦は噂だけというのも画期的でございますけれどもねえ。桶狭間の合戦も噂だけで終わったらどうしようか・・・と不安になるのでございます。主人公が戦場に出るわけではないので・・・「真田丸」方式なら・・・それもありでございますからねえ・・・。
天文二十四年(1555年)二月、ドラマの井伊直親が元服する。三月、松平元信(徳川家康)が元服。四月、尾張守護代の織田大和守信友は織田信長の叔父・信光によって殺害される。討ち取ったのは森可成ともいう。信長は清州城主となる。大和守家重臣の坂井大膳は駿河の今川氏を頼って逃亡するが消息不明となる。五月、信長の弟・信行は当主の名乗りである弾正忠を名乗る。六月、信長の叔父・信次が信長の弟・秀孝を殺害して逃亡。信行は信次の守山城下に放火。七月、武田晴信と長尾景虎が犀川で激突、第二次川中島の戦いに突入。長期対陣の後に今川義元が仲裁。九月、加賀一向一揆討伐中の朝倉宗滴が病没。閏十月、太原雪斎が死去。十一月、信光は家臣の坂井孫八郎に殺害される。美濃国守護代の斉藤義龍が弟の孫四朗、喜平次を殺害。父親の斉藤道三は大桑城に退去。北条氏康によって幽閉中の足利晴氏の嫡男・古河公方足利義氏が元服する。義元は駿河・遠江・三河で検地を実施する。三河国安祥城攻めで祖父と父を相次いで失った本田忠勝は叔父の本田忠真に養育されている。数えで八歳だった。
今川館での元服の後のささやかな宴で元信は初めての酒を飲んだ。
突然・・・悲哀が胸を襲う。
厠に立った元信は庭で天女のような姫を見た。
「いかがなされた・・・」
姫は家康が涙を流しているのを見て言う。
「これは・・・家臣を憐れむ涙でござる」
「三河殿と・・・お見受けしました」
「貴女は・・・関口刑部様の・・・瀬名姫様」
「家臣のどなたか・・・亡くなったのでございますか」
「わが家臣はたくさん討ち死にいたしておりまする」
「・・・」
「尾張の織田との戦で・・・三河衆が命を賭している時に・・・主たる我はこうして籠の鳥も同然で・・・無為の時を過ごしてございます」
「我が母の里は・・・遠江の井伊谷だと申します。井伊の里からの文が届けば・・・一族の訃報ではないかと心騒ぐと申しておりました。遠江衆もたくさん討ち死にしているそうでございますれば」
「武士たるもの・・・戦場で死ぬは誉れと申します・・・しかし・・・我は」
「元服もなされたからには・・・太守様の命により・・・戦場には遠からずお出ましになられましょう」
「さようでござろうか・・・」
「きっと・・・お手柄をたてられますよ」
「・・・」
美しい姫に励まされ・・・涙を拭った元信は宴の席へと戻って行く。
瀬名姫はその後ろ姿に何故か・・・心騒ぐものを感じるのだった。
見たこともない母の故郷である遠江国。年若い人質の貴公子の故郷はさらに遠い三河国である。
瀬名は遠い異国にロマンを感じるのだった。
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