冬の終わりの打ち上げ花火はエビングハウスの忘却曲線のように(深田恭子)
あまり多くは語られないが徳川家の家庭教師が大河原(岡山天音)が黒崎(菊田大輔)にチェンジしている。
チェンジの理由は「もっとかっこいい人にして」という児童の希望であった。
岡山天音といえば・・・時々、二枚目枠でも登場するのだが・・・どちらかといえば個性的な顔立ちの整ったブサイクだと思うので妥当だと思う。
今をときめく清水富美加がヒロインを演じた「リアル鬼ごっこ THE ORIGIN」の王様役なんかかなりのキモさだったものな。
岡山天音の所属事務所には安藤サクラ、門脇麦、岸井ゆきの、満島ひかり、山田真歩などが所属していて・・・ある種の不気味さを醸しだしている。
こういう特色もひとつの味わいだよなあ。
能年玲奈に続いて、清水富美加との間にもトラブルを起こした所属事務所の女優陣はそこはかとなく・・・暴走族のレディースを連想させる顔ぶれが揃っている気がする。
あくまで個人的な感想です。
いろいろな個性があるように組織にもいろいろな特色があっていいと思う。
トラブルはいろいろな面倒を撒き散らし・・・うんざりしちゃう現場の人もいるだろうが。
それが人生というものだと歯を食いしばるしかないよねえ。
で、『下克上受験・第6回』(TBSテレビ20170217PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・福田亮介を見た。春一番も吹いて冬ドラマも中盤戦である。下剋上は大雑把に言えば子分が親分をぶっ殺すということである。人の一生とは階級闘争の連続であると考えれば・・・それは忘れてはいけない・・・この世の核心部分と言えるだろう。親子の情で世襲的に継続されるシステムとテストによる実力選抜システムの両輪が社会をなんだかんだ維持しているわけである。そういうことに対してああだこうだ言っても仕方ないので・・・どのようなポジションでどのようなタイプであっても面白おかしく生きて行くしかないよ・・・このドラマはそんな風に語りかけているような気がする。
多くの人間は神についてあまり深く考えないで初詣に出かける。
桜井信一(阿部サダヲ)と妻の香夏子(深田恭子)、そして娘の佳織(山田美紅羽)はおみくじを引く。
香夏子は吉、佳織は中吉、信一は凶だった。
桜井一家は絵馬に願い事を書く。
氏神たちはこれを審査するわけである。
「みんな仲良く」と香夏子。
「微笑ましい」
「家族の幸せを願っている」
「受理」
「おいしいものを食べてたくさん寝たい」と佳織。
「微笑ましい」
「寝る子は育つ」
「受理」
「桜葉合格!」と信一。
「邪じゃな」
「身の程知らずじゃ」
「しかし・・・子を思う親心と言えないこともない」
「ただ浅ましいだけじゃ」
「ペンディング!」
神の心を人は知らないので・・・とにかく精進するしかないわけである。
全国オープン模試で偏差値が52に向上した佳織だったが・・・その後は一進一退を続けるのだった。
佳織の成績が伸び悩むことで信一の焦燥感は高まるのだった。
壁は一度は解けた問題が・・・再びチャレンジすると解けなくなっているという点にあった。
つまり・・・覚えたことを片っ端から忘れていくのである。
子供時代・・・信一はあまり覚えなかったので・・・人間が覚えたことを忘れるという基本的なことがわかっていなかったのだ。
つまり・・・馬鹿なのである。
信一は佳織が「忘れてしまうこと」に・・・恐怖を覚える・・・つまり・・・自分の馬鹿が娘に遺伝しているのではないか・・・と考えてしまうのである。
追い込まれた信一はついついスケジュールを逸脱し・・・佳織の睡眠時間を削るのである。
「どうして・・・できないんだ」
「・・・」
「睡眠不足なのか・・・それとも気迫が足りないのか」
「気迫不足だと思う・・・ごめん・・・ちょっと顔洗ってくる」
信一に追い込まれる佳織だった。
香夏子は佳織の身を案じるのだった。
「大丈夫なの・・・」
「大丈夫・・・学校で寝るから」
「先生に叱られない?」
「うん」
「昔は定規でビシッてやられたよな」と信一。
「デコピンとかね」と香夏子。
「デコピンって何?」
「こうやるんだよ」
香夏子は信一をデコピンするのだった。
お仕置きというより御褒美だよね。
大江戸小学校の小山みどり先生(小芝風花)は中学受験組の授業中の居眠りはスルーする方針になったらしい。
佳織・・・徳川麻里亜(篠川桃音)・・・大森健太郎(藤村真優)は熟睡するのだった。
佳織の友達であるアユミ(吉岡千波)とリナ(丁田凛美)は困惑するばかりである。
佳織たちは六年生になっていた。
受験まで残りおよそ300日・・・。
一学期の教師と親の個別面談・・・。
妻と別居中の徳川直康(要潤)と妻が就職した信一は顔を合わせる。
「緊張するよな」
「そうですか?」
直康はみどり先生に「娘を休学させたい」と申し出る。
「まだ・・・一学期ですよ」
「勝負はもう始っています・・・この学校の他の児童の皆さんとも上手くいっているとはいえないみたいだし・・・前の学校でもいじめのようなことがあって」
「私も・・・最初は心配しましたが・・・桜井佳織ちゃんとは仲良しになったみだいだし」
「その佳織ちゃんが問題なんです」
「え?」
直康は・・・娘と佳織の交際が・・・娘の成績に影響を与えているのではないかと危惧しているのだった。
その件で直康は信一に直談判を試みるのだった。
信一は直康を営業前の居酒屋「ちゅうぼう」に案内する。
店主の松尾(若旦那)も元同級生である。
「佳織さんが・・・娘と仲良くなってくれたことには感謝しています・・・しかし・・・最近、娘の成績が思わしくないのです」
「え」
「佳織さんはどうなんですか」
「佳織は偏差値52にあがったけどな・・・」と見栄を張る信一。
「・・・」
「もしかして佳織のせいだと言いたいわけ?・・・麻里亜ちゃんの成績下がっちゃったのが・・・どのくらい下がったの?」
「偏差値65前後です・・・今までは68をきったことはなかったのです」
「え」
「もう・・・時間がありません・・・だから佳織さんと麻里亜は友達付合いを控えた方がいいと思うのです」
「・・・」
「このままでは・・・桜葉に合格できません」
偏差値52で伸び悩む娘を持つ信一は・・・偏差値65で悩む父親にショックを受けたのだった。
それは・・・信一の中の複合的な感情のもつれ(コンプレックス)を激しく揺さぶるのだった。
その頃・・・スマイベスト不動産では長谷川部長(手塚とおる)が香夏子に「見習い期間」の終了を宣告する。
「これからは・・・一人で顧客を担当して・・・歩合をガンガン稼いでください」
「でも・・・私・・・まだ色々とわからないことが」
「大丈夫・・・ナラザキがフォローしますから」
「何でも聞いてください」と頼もしい楢崎哲也(風間俊介)である。
・・・っていうか・・・香夏子・楢崎ペアなら最強ではないのか。
「私たちが売りました」と風が吹くのではないのか。
放課後・・・佳織は麻里亜の家でお勉強会中である。
しかし・・・家庭教師が来れば二人の時間は終わりである。
「私・・・家庭教師の回数を増やしたから・・・学校に行く回数が減ると思う」
「そうなんだ」
佳織は淋しさを感じた。
佳織にとって麻里亜は・・・他のクラスメイトとは違う特別な存在になっていたのである。
佳織は・・・シャープペンシルを置き忘れた。
それは・・・佳織の一種の自己主張だったらしい。
「私を忘れないで」である。
桜井家の一家団欒。
「今日から一人前のハウジング・アドバイザーになったんだよ・・・お客様に一人で応対したんだ」
「お母さん・・・凄い」
「佳織は麻里亜ちゃんと勉強したんでしょう・・・勉強以外のことは話さないの?」
「健太郎の話で盛り上がったよ・・・健太郎も受験するんだ」
「佳織・・・」と鬱屈した思いを吐き出す信一である。「麻理亜ちゃんのところに行くのはやめなさい・・・勉強がはかどらない・・・・もしかしたら麻理亜ちゃんも迷惑に思っているかもしれないじゃないか・・・」
お茶の間に暗雲が立ち込めるのだった。
「俺塾」で・・・佳織は信一の理不尽な申し出に叛旗を翻す。
「どうして・・・問題を解かないんだ・・・」
「・・・」
「そんなに・・・麻理亜ちゃんのことが好きか?・・・でもな・・・麻理亜ちゃんはお前のことそんなに好きじゃないと思うぞ・・・麻理亜ちゃんは偏差値65だそうだ・・・偏差値52のお前のことなんか・・・最初から相手に」
学歴がないために・・・信一が受けた様々な屈辱が・・・言葉の暴力となって佳織を苛むのだった。
佳織は恐ろしい悪鬼と化した父親から逃げ出し香夏子の胸に飛び込んで泣きじゃくるのだった。
誰もが佳織になりたい場面からの入浴シーンのサービスである。
これが「性的な売りもの」というのならそうですと言う他はないわけだが・・・。
名場面なのである。
人間が・・・父と子が・・・母と子が・・・家族が優しく美しく描かれているのです。
すべては・・・認識の深さの問題なのだ。
親として暗礁に乗り上げた信一は・・・父親の一夫(小林薫)を訪ねる。
電球を変えようとしていた一夫を首吊寸前とするコントが展開されるのだった。
「香夏子さんと喧嘩したのか」
「なんでだよ」
「お前が俺んとこに顔出す理由なんてそれしかないだろう」
「そんなことねえよ・・・佳織だっているよ」
「佳織と喧嘩したのかよ」
「・・・」
一方・・・業務連絡のために香夏子と合流したナラザキは・・・香夏子の様子がおかしいことに気がつく。
「どうかしましたか・・・」
「私・・・もう・・・どうしていいか」
「え」
泣きだす香夏子に戸惑うナラザキ・・・。
その様子を大工の杉山(川村陽介)が見ていた!
杉山が師匠の一夫に注進し・・・一夫はスマイベスト不動産に殴りこみをかけるのだった。
「ウチの大切な嫁を泣かせるとはどういう料簡なんだよ」
「ひええええ」
そこへ・・・香夏子が戻ってくる。
「一体・・・何の騒ぎですか」
「あれ?」
もちろん・・・香夏子が悩んでいたのは信一と佳織のことだった。
追いつめられた信一は・・・ついに居酒屋「ちゅうぼう」で禁酒の誓いを破るのだった。
「馬鹿の子は馬鹿で・・・中卒の子は中卒」という諦念である。
そこへ・・・我らがナラザキが疾風怒濤の勢いで登場する。
「何してるんですか・・・佳織ちゃんはもう帰って勉強していますよ」
「いいんだよ・・・もう」
「中学受験は諦めるんですか?」
「だって・・・努力して勉強しても・・・すぐに忘れちゃうんだもの」
「そんなの当たり前じゃないですか」
「当たり前?」
「人間は忘れる生き物なんですよ」
「・・・」
ナラザキは店のメニューを書いた黒板り文字を消し去る。
「おい・・・何するんだ」
「いや・・・なんか面白そうだ」
「・・・」
ナラザキはドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(1850~1909年)の研究による記憶の保存と忘却の関係について示す曲線を描いた。いわゆるエビングハウスの忘却曲線である。
統計的な研究成果を噛み砕いて説明するナラザキだった。
「いいですか・・・人間は覚えたことを一時間後には半分忘れます・・・一日後には七割忘れます・・・一週間後には八割忘れます」
「・・・そうなのか」
「しかし・・・一日後にもう一度同じことを覚えたら・・・一週間後に忘れるのは七割になります」
「一割減った」
「さらに一週間後にもう一度同じことを覚えたら・・・一週間後に忘れるのは五割になります」
「半分覚えたよ」
「だから・・・復習が大切なのです・・・人間は反復することによって記憶を定着させ・・・忘れなくなるのです」
「失恋がいつまでも辛いのと一緒だ」
「そうやって人間はストーカーになるんだよな」
「勉強とはそういうくよくよしたものなのです」
「ナラサキ・・・お前は神か」
「ナラザキです」
一方・・・学校では・・・。
佳織の忘れものであるシャープペンシルを持って学校にやってくる麻里亜。
ちびっこ天使である健太郎が声をかける。
「それ・・・佳織のか・・・俺が返してやろうか」
「ううん・・・いいの」
麻里亜は佳織に話した。
「もう・・・佳織ちゃんとは会わない」
児童の友情に担任としてみどり先生が首を突っ込むのだった。
「お父さんにそう言われたの」
「はい」
「成績が落ちたから?」
「やっぱり・・・私のせいかな」と佳織。
「ううん・・・佳織ちゃんといると楽しいし・・・でも・・・自分の勉強はできなくなる」
「それで・・・どうしたらいいものかと・・・困っていたのね」
「・・・」
「それなら・・・友達よりも素晴らしいものになればいいのよ・・・」
「友達より素晴らしいもの?」
「それは・・・ライバルよ」
「ライバルって敵じゃないんですか」
「いいえ・・・敵はただ憎むべき相手・・・ライバルは相手のことを尊敬し・・・相手ががんばれば自分もがんばるし・・・相手が苦しめば自分の苦しみのように思うことができる・・・飛雄馬と満、ジョーと力石、アムロとシャアのような関係よ」
「わかりません」
「先生もよ」
「ライバル・・・」
「二人はライバル」
なんとなくときめく佳織と麻里亜だった。
みどり先生のお茶の間での評価が一気に高まるのだった。
忘却曲線に光明を見出した信一が帰宅すると佳織は一心不乱にドリルに取り組んでいた。
「佳織・・・こっちをむいておくれ・・・お父さん・・・間違ってたみたいだ・・・佳織が忘れちゃうのは・・・誰のせいでもなくて・・・復習が足りないだけだった」
「お父さんのウソツキ・・・」
「え」
「佳織と一緒にドリルやるって言ったじゃん」
「佳織・・・一人でやってたのよ」と香夏子。
「え」
「私・・・もう麻里亜ちゃんとは会わない・・・麻里亜ちゃんと話して決めたの」
「ええっ」
「私と麻里亜ちゃんは・・・ライバルになったのよ」
「えええ」
娘の成長に・・・親として何か・・・祝福を与えたくなった信一である。
信一は・・・仕事中の直康に面会する。
「娘たちのために・・・バーベキューパーティーをやろうと思うんだ」
「この大切な時期にですか」
「だから・・・けじめだよ・・・これを境に・・・二人はライバルになるんだ」
「ライバル?」
「つまり・・・もう会わないということだ」
しかし・・・直康には信一の言うところを娘に伝えるコミュニケーション能力が欠けていたのである。
娘は・・・会えば別れがつらいので会えない気分なのである。
「私は行かない」
「・・・」
仕方なく・・・バーベキュー・パーティー会場に娘の欠席を伝えに行く直康である。
居酒屋「ちゅうぼう」のメンバーが集まり・・・準備中の河川敷・・・。
「桜井さん・・・悪いけれど・・・娘は来ません・・・家で勉強しています」
「お前・・・そりゃ・・・ねえだろ・・・連れてくるって約束だっただろう」
「・・・麻里亜が自分で決めたことなんです」
「・・・」
「佳織ちゃんは友達じゃない・・・ライバルなんだと麻里亜はいいました」
「まったく・・・これだから頭のいい連中はよ・・・人の気持ちがわからねえのかよ」と理容師の竹井(皆川猿時)・・・。
「皆さんには・・・私や麻里亜の気持ちがわかるんですか・・・私は父に無理矢理・・・転校させられてしまいました・・・友達なんか一人もいない・・・私は勉強するしかなかったんです・・・運動もできない・・・楽器もできない・・・手先が器用でもない・・・そんな私が父に認められるには・・・勉強ができること・・・それしかなかったんです・・・私は皆さんが遊んでいる時に受験問題をひたすら解きました・・・この会に参加しないと決めた娘の気持ちを愛おしく思います・・・皆さんにはわからないかもしれませんが・・・私は娘を誇らしく思う」
がり勉仲間として激しく胸を打たれるナラザキだった・・・。
「おい・・・これでいいのか・・・佳織が泣いちゃうんじゃないか」と一夫。
去って行く直康を反射的に追いかける信一だった。
直康の車に乗り込む信一。
「お前の言ってることはわかったよ・・・だから・・・麻里亜ちゃんに会わせてくれ・・・俺が説得するよ・・・麻里亜ちゃん・・・我慢してるんだよ」
「我慢・・・」
「今日・・・バーベキューしなかったら一生後悔するよ」
「受験に落ちたらもっと後悔します」
「だから・・・あの子はなんていうか・・・ひねくれているだけなんだよ」
「麻里亜を悪く言うな!」
「悪く言ってないよ・・・素直じゃないってことだよ」
運転手がドアを開けたために転がり落ちた二人は流れで河原をゴロゴロするのだった。
その時・・・頭上から子供たちの歌声が聞こえる。
「線路は続くよ・・・どこまでも」
「え」
みどり先生が児童たちと橋を渡ってくる。
その中には麻里亜の姿もあった。
「お招きに与って参上しました」とみどり先生。
香夏子が声をかけていたのだった。
「どうして・・・ウチの子が・・・」
天使の健太郎が微笑む。
「せっかくだから・・・俺が誘ったんだ・・・ピンポン攻撃したらなんてことはなかったぜ」
健太郎の評価も鰻登りなのである。
河川敷のバーベキュー大会は盛り上がるのだった。
傷だらけの父親たちはなんとなくしょんぼりするのだった。
「佳織ちゃん・・・シャーペン忘れたでしょう」
「いいのよ・・・それ・・・麻里亜ちゃんが持っていて」
それは二人のライバルの証らしい・・・。
「佳織ちゃん・・・一緒に桜葉に行こうね」
「うん」
微笑み合う二人。
そんな二人を肩を並べて見守る信一と直康・・・。
「なんか声をかけてやれよ」
「こういう時・・・なんて言ってやったらいいのか」
「笑って髪の毛をくしゃくしゃってしてやればいいのさ」
緊張して小動物に近寄る直康・・・。
「よかったな・・・それ・・・もらったのか」
「うん」と微笑む麻里亜。
思わず直康は髪の毛タッチに成功するのだった。
夜空を焦がす「春」の花火・・・。
季節は「タイトル」とは違うが・・・受験が終わった頃に・・・全国一斉で花火を打ち上げればいいのにと思う今日この頃である。
受験まで残り40週間らしい・・・。
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