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2017年2月25日 (土)

ストレスが受験をダメにする(深田恭子)

「絵馬奉納で小学生のお小遣いが搾取されている」でもよかったけどな。

一枚三百円でも五枚で千五百円、五百円なら二千五百円、千円なら五千円だ。

結構・・・痛いよな。

小学生気分になってどうする。

人間は結局・・・神に頼るよなあ・・・。

全然、無宗教じゃないよな。

風水にも頼るよなあ。

人間は本当に・・・迷信深いよな・・・。

悪魔が言うセリフなのか。

まあ・・・神を信じるということは・・・同時に悪魔を信じることだからな。

で、『克上受験・第7回』(TBSテレビ20170224PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・吉田秋生を見た。暖かい日と寒い日が交互にやってきて乾燥注意報が発令する東京にも桃の花が咲き始めている。小学校五年生から受験体勢に入った桜井信一(阿部サダヲ)と香夏子(深田恭子)の娘の佳織(山田美紅羽)は大江戸小学校の六年一組に在籍中である。すでにドラマの中の季節は一学期なのである。

信一はパチンコ店のティッシュ配りのアルバイトを再開する。

スマイベスト不動産に就職した香夏子の営業成績が思ったより振るわず歩合が稼げないために・・・固定給だけでは・・・生活費を賄うのが精一杯なのである。

教材費やコピー機のレンタル代など出費が嵩む桜井家の家計。

中学受験にはお金がかかるのである。

そんなこと最初からわかっていただろうとお茶の間は茫然とするわけだが・・・何しろ二代続いた中卒家系なのである。

いろいろと・・・知らないことは多いのだった。

もちろん・・・大人である信一が・・・そのことに気付いていないわけではない。

わかっているが・・・暴走する機関車のように・・・佳織が中学受験をしなければ世界が破滅すると思いこんで・・・走り続けているわけである。

だが・・・小学校三年でスタートしなければ遅いと言われる中学受験の壁は高く・・・佳織の学力は伸び悩む。

「復習しても復習しても佳織の成績が向上しないこと」に「なぜ身長が伸びないのだ」と息子のトビオの代わりにアトムを作った天馬博士のような・・・不条理な怒りが・・・信一に蓄積していくのだった。

「なぜだ・・・なぜ・・・できない」

佳織に対してこみあげてくる激情を自制できなくなりかけている信一。

親が教えることにはデメリットがある。

子供に感情的になってしまうこと・・・と信一は自分に言い聞かせるが・・・そもそもあまり自制心がないタイプである。

空腹の佳織のために・・・夕食を作るが・・・調理はぞんざいになり、皿に盛りつけずフライパンで食卓に出すような攻撃性を示す信一。

悪霊に憑依された状態である。

成績があがらないわが子を罰したくて罰したくて仕方ない気持ちが抑えられないのだ。

そのために・・・意地悪がしたい。その上・・・手順が省略できて・・・一石二鳥だと耳元で悪魔が囁くのだ。

帰宅した香夏子はまったく邪気がないために・・・食卓に置かれたフライパンに反応する。

「テーブルが焦げちゃうよ」

香夏子はフライパンを持って台所に行き・・・味を調える。

自分が佳織に与えた罰を妨害されたと感じた信一の怒りの矛先は香夏子に向う。

「だったら・・・さっさと帰ってきて夕食を作れよ」

「え」

驚いた香夏子の様子に・・・正気に戻る信一。

「あ・・・そんなつもりじゃなかったんだ・・・ただ・・・時間がもったいないと思っただけで」

「信ちゃん・・・大丈夫?」

「・・・」

信一は自分に囁きかけていた悪霊を捜すが・・・そんなものはいない。

自分で自分がコントロールできなくなっているだけなのである。

慣れないことをしているストレスが・・・信一の自律神経を失調させていた。

翌朝・・・香夏子は登校する佳織とともに出勤する。

「お父さんがイライラしちゃうのは・・・私のせいなんだ・・・私はやっぱり麻里亜ちゃんみたいになれないのかな・・・」

「そんなに落ち込んでもしょうがないよ・・・やることはたくさんあるんだから」

「やることって・・・」

「とりあえず、角のお店でシュークリーム買って食べよう」

信一は悪魔に憑依されているが・・・香夏子は生れついての天使だった。

佳織は小山みどり先生(小芝風花)の授業中に睡眠を確保する。

徳川麻里亜(篠川桃音)は欠席である。

家庭教師の黒崎(菊田大輔)によって指導される麻里亜は・・・佳織の友情のペンをお守りに精進するのだった。

このままでは・・・家庭が崩壊するという危惧を感じた信一は・・・「朝比奈こころのクリニック」の扉を開く。

診療するのは朝比奈院長(佐野史郎)だった。

受診室には・・・何故か木馬や蜘蛛のオブジェが置かれている。

「ずっとあなたが好きだった」(1992年)から25年・・・冬彦さんが帰って来たらしい。

いや・・・「ゾ~ン!」と叫ぶんじゃないか。

いや・・・医者だから「沙粧妙子-最後の事件-」の池波宗一なのかもしれん・・・。

「心が落ち着くクスリを処方してください」

「まずは・・・不安の原因をお聞きしましょう」

「いえ・・・とりあえずクスリが欲しいのです」

「お気持ちはわかりますが・・・精神に作用するクスリは転売などの惧れがあるのでまずはあなたの状況を伺いたいのです」

「娘の中学受験が上手くいかない」と本当のことを言えない信一は「夫婦関係が上手くいかない」と嘘をつく。

「奥さんの浮気ですか・・・あなたの子供を宿していながら・・・学生時代の恋人とヨリを戻したいとか言い出しているわけですか」

「このままではDVDになりそうで」

「それは・・・DVですね・・・わかりました」

なんとか・・・精神安定剤の処方を受ける信一である。

クリニックに徳川直康(要潤)が現れた。

時系列では今は2016年の五月頃・・・東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設問題についてのイザコザがまだ尾を引いている段階である。

「トクガワ開発」もこの問題に巻き込まれ・・・直康は精神を失調したらしい。

「徳川・・・お前も娘のことか・・・」

「娘の偏差値は68に戻りました・・・私は仕事のことで・・・」

「嫌味かよ・・・そんな仕事やめちゃえよ」

「一応・・・社長なので・・・」

心は通じあったが・・・会話の噛みあわない同級生なのである。

香夏子はお惣菜の補給ついでに舅の一夫(小林薫)に愚痴るのだった。

「なかなか契約がとれなくて・・・」

「そりゃあ・・・大変だなあ・・・」

息子の家庭の経済問題が・・・一夫の心に波紋を投げかけるのだった。

一夫はスマイベスト不動産の長谷川部長(手塚とおる)を訪ね・・・家の「売却」を申し出る。

楢崎哲也(風間俊介)が査定のために派遣されるのだった。

「どうだい・・・高く売れそうかい」

「持ちかえって・・・検討してみます」

「くれぐれも信一たちには内緒にしてくれ」

「・・・」

今回・・・入浴サービスがない代わりに小学校では体育の授業がサービスされる。

サービスって言うなよ。

一組二組の合同授業で・・・二組の担任(TBS石井大裕アナウンサー)は体育会系らしい。

跳び箱の授業でゼッケンからリナが河瀬リナ(丁田凛美)、アユミが遠山アユミ(吉岡千波)という役名であることが判明する。

「よし・・・もっと高く」と熱血先生。

「無理・・・怖い」とリナ。

「私も自信ない」と佳織。

「怖いなら無理にやることないよ」とアユミ。

見守る小山みどり先生である。

同級生たちに煽られて・・・チャレンジする佳織だった。

チャレンジは成功し・・・帰宅した香夏子に嬉しげに報告する佳織。

しかし・・・精神的に不安定な・・・最近使われない言葉ではノイローゼである・・・信一が物議を醸すのだった。

「跳び箱なんか跳んで・・・失敗して突き指でもしたらどうするつもりだ」

「そんな・・・跳べたんだから・・・いいじゃない」

「ダメだ・・・麻里亜ちゃんなんか・・・中学受験のために欠席しているんだぞ」

「佳織がやりたいって言ってんだから・・・」

「とにかく体育なんてとんでもない」

学校に出かけて行き・・・体育の授業を見学させることを申し出る信一。

「しかし・・・体育も立派な授業です・・・教育者の責任として」と反論する熱血教師。

「何が教育者の責任だ・・・そんなら・・・佳織の将来を先生が責任もって面倒みてくれんのか」

「え・・・」

「あ・・・」

モンスターペアレントを自覚する信一だった。

小山みどり先生は信一を案ずる。

「すみません・・・また暴言を・・・」

「うちの親は自分の考えを押しつけるだけでしたが・・・お父様の場合は佳織ちゃんを愛しているゆえのことだとわかっておりますので・・・」

小山みどり先生の優しい言葉さえも・・・自分を見失いつつある信一の心に突き刺さる。

「今日は社会だ・・・周年の問題・・・2016年は徳川家康の死後400周年ですが・・・家康と同じ年に亡くなった英国の劇作家と言えば誰でしょう?」

「ウィリアム・シェイクスピアさん」

もはやクイズである。

まあ・・・テストというものは基本的にクイズなのだがな。

ついに・・・心のもつれが・・・身体に現れ・・・あるいは精神安定剤の副作用で・・・眩暈を感じた信一は・・・俺塾で卒倒してしまう。

信一は古のクレイジーキャッツとザ・ピーナッツのコントの悪夢に囚われる。

貧しい農家の寝床に寝たきりになっている信一。

「おとっつあん・・・お粥ができたわよ」と佳織。

「いつもすまねえな」

「それは言わない約束でしょう」

そこへ現れる借金取りの一夫と子分の杉山(川村陽介)・・・。

「娘は借金のカタにいただいていくぜ」

「それだけは勘弁してください」と香夏子。

「親分・・・母子まとめて売れば儲かりますぜ」

「やめてくれ・・・」

「待ちな・・・」

そこへ現れる西洋貴族風ガンマンの竹井(皆川猿時)・・・。

「お前・・・誰だ・・・」

「忘れたのかよ・・・俺だよ・・・ヘルマン・エビングハウスだよ・・・」

「ああ・・・さすらいの忘却曲線の人・・・」

素晴らしいな・・・。

ほぼ同じトーンで時代劇の「忠臣蔵の恋」も現代劇「下剋上受験」もこなす皆川猿時・・・さすがだという他はない。それを赦しちゃう演出家がな。

再び体育の授業のサービスである。

だからサービスって言うなよ。

ドッジボールを見学中の佳織を・・・麻里亜の泥靴事件の主犯格である藤本沙理菜(安武風花)が「弱虫さん」と煽るのだった。

闘志に着火する佳織・・・。

ドッジボールにチャレンジするが・・・こんどはチャレンジ失敗・・・突き指してしまうのだった。

父親の言いつけに背いて負傷してしまったことに罪悪感を覚える娘・・・。

そして・・・父親は完全に精神を失調してしまうのだった。

「なんでだよ」

「ごめんなさい」

「なんで・・・お父さんの言うこと聞かないんだよ」

「・・・」

「もう・・・やめるか・・・ちっとも成績あがんないし」

「そんなに・・・佳織のことを責めないで」と香夏子が援護する。

「責めてないよ」と香夏子を責め始める信一だった。「最初に香夏子が言った通りだったな・・・充分に幸せだったのに・・・俺が会社を辞めて・・・香夏子が働いて・・・佳織は友達と遊べなくなって・・・それなのに佳織の成績は上がらない・・・みんなを不幸にして・・・佳織の成績があがらない・・・」

「ごめんなさい・・・佳織・・・もっと頑張るから」

「もういいよ・・・もう終わりにしよう・・・受験なんてクソだ・・・佳織・・・勉強なんてやめちまえ」

「信ちゃん・・・」

「ごめん・・・一人にさせてくれ」

最悪の父親である。

もはや泣くしかない佳織だった。

香夏子は慰めるしかないのだった。

そこへ・・・一夫からの電話がある。

酒とつまみを買って・・・「お金の心配がいらないこと」を告げようとする一夫。

「すみません・・・今・・・取り込み中で・・・」

家出した信一を追いかける佳織。

佳織を見かけて追いかける一夫。

一夫を見かけて追いかける香夏子。

なんとなく・・・ユーモラスな空気が漂うのだった。

家族を思いやる愛のおいかけっこだからな・・・。

信一は・・・初詣をした神社にやってくる。

「桜葉合格祈願」の絵馬を見る信一だった・・・。

佳織は信一に声をかける。

「お父さん・・・」

「佳織・・・」

「一緒に帰ろうよ」

一夫に制されて夫と娘を見守る香夏子。

「お父さん・・・疲れちゃった・・・桜葉合格なんて無理だったんだ・・・夢は夢なんだよ・・・佳織が悪いんじゃない・・・遺伝だもの・・・佳織はお父さんの娘なんだもの・・・」

その時・・・ふと・・・絵馬にかおりの名を見出す信一だった。

(漢字をわすれませんように・・・かおり)

(頭が良くなりますように・・・かおり)

(偏差値があがりますように・・・かおり)

(お父さんのイライラが治りますように・・・かおり)

「どんだけ・・・お願いしてんだよ」

「だって・・・お父さんに教えてもらっても・・・佳織・・・すぐに忘れちゃうし・・・毎日・・・学校の帰りにお願いしてたの・・・でも絵馬は高くて・・・お小遣いなくなっちゃうし・・・いつもは買えなかった・・・お父さん・・・いつも間違えてごめんなさい・・・偏差値があがらなくてごめんなさい・・・だけど・・・佳織を見捨てないで」

「バカだな・・・見捨てるわけないじゃないか・・・俺の娘じゃないか」

思わず佳織を抱く信一。

「信ちゃん・・・」

辛抱たまらず飛び出して家族の輪に参加する香夏子だった。

神社のベンチで肩を並べる一夫を加えた桜井ファミリー。

「雨降って地固まるだな・・・」

「どういう意味・・・」

「雨が降ると親父の痔の具合がよくなるってことだよ」

「雨なんかふってないよ」

「見なよ・・・月が綺麗じゃないか」

一夫は・・・馬鹿な息子と息子の嫁と孫娘にアイ・ラブ・ユーを告げるのだった。

「とにかく・・・もう金の心配はいいぞ・・・近々・・・まとまった金が入りそうなんだ・・・香夏子さんも仕事が辛かったら・・・やめてもいいし・・・入学金の心配もしなくていい」

「え・・・」

後日・・・楢崎から・・・一夫の家の売却の件を聞かされる香夏子・・・。

「お義父さん・・・私があんなことを言ったからですか・・・」

「誰のせいでもないよ・・・俺も・・・信一も・・・香夏子さんだって・・・できることはたかがしれてる・・・でもよ・・・信一は生き方を変えようとしている・・・」

「・・・」

「俺は釘を打って・・・鉋で削って・・・そうやって仕事を覚えて一人前になれると思っていた・・・だけど時代はどんどん変わっちまう・・・そしたら生き方を変えるしかねえ・・・だけど・・・それは大変なことなんだ・・・あいつは今・・・自分を犠牲にして・・・佳織の人生を変えようとしている・・・親として・・・俺も何かしてやりてえ・・・それだけだよ」

再び・・・全国模試にチャレンジする佳織と麻里亜・・・。

麻里亜も佳織に友情の証としてペンを贈る。

しかし・・・結果発表の日・・・信一の心身の不調はピークに達するのだった。

「あれ・・・お父さんは」と佳織。

「なんか具合が悪いからって病院に行ってる」と麻里亜。

「うちのお父さんもだよ」

「最近の大人は弱いよね」

朝比奈こころクリニックで遭遇する信一と直康。

「どうしたんですか」

「お宅と違って・・・ウチは遺伝的に・・・おちこぼれだからね」

「・・・私と麻里亜は血は繋がっていないのです」

「え」

直康のショッキングな告白が信一に致命傷を与えたらしい。

悶絶する信一・・・。

朝比奈院長は直ちに救急車を呼ぶのだった。

「あなた・・・仲がよろしいのでしょう・・・同乗してください」

院長の調子に踊らされる直康・・・。

救急隊員ものるのだった。

「ご家族の方ですか」

「友人です」

「手を握って励ましてください」

「はい・・・桜井~俺がついてるぞ」

「徳川~・・・ありがとう」

信一と直康の友情がさらに深まるのだった。

受験まで残り三十五週間である。

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