愚帝に死を賜りて民を思い船上より身投げするプリンス一人(中村映里子)
さて・・・気がつけば三月である。
精霊(ナユグ)の世界でも春が近いが・・・この世の春のお彼岸も近い。
予定ではレギュラーレビューの終了とともに本格的な谷間に突入することになっている。
つまり・・・「忠臣蔵の恋」が終わった後は木曜日は谷間にする予定だ。
しかし・・・今朝の「べっぴんさん」のあまりの素晴らしさに・・・来週の木曜日は「べっぴんさん」をレビューするかもしれない。
大傑作だったよね・・・。
今季はどのドラマも再現率が高まりまくり・・・かなりの危険水域に達している。
問題は・・・大河ドラマを四月からどうするかである。
唯一・・・再現率ほとんどなしの妄想レビューなので・・・続く可能性はあるが・・・まあ・・・ある意味、なくなっても困らないとも言える。
さらに言えば・・・このドラマの場合・・・シーズン3があるわけである。
しかし・・・いろいろと微妙なところがあるので・・・まあ・・・コンプリートしなくてもいいかなあ・・・とは思います。
で、『精霊の守り人II 悲しき破壊神・第6回』(NHK総合20170225PM9~)原作・上橋菜穂子、脚本・大森寿美男、演出・中島由貴を見た。基本的におばちゃまの妄想世界である。もちろん・・・本当のおばちゃまでなくてもおばちゃまの魂を潜ませたおばちゃま的な感性の人は多い。おばちゃまの原作をおっさんが脚色していて・・・どことなく不具合な感じが漂うこのシリーズであるが・・・今回は下衆の思うところのおばちゃま感覚が激しく牙を剥いた感じが濃厚だったな。とにかく・・・おばちゃまは基本的に色白のグラマー美人をそれほど賛美しない。そのためにこのドラマでは・・・基本的に美人・美少女キャラは濃い目のドーランでハダツヤを煤けた感じに仕上げられてしまう。唯一の例外は二ノ妃(木村文乃)であるが・・・これは「スターウォーズ」の第二期のナタリー・ポートマンのように珍妙な衣装を着せることによってセクシーさを解消させられている。この世界でありのままで好ましいキャラは太ったおばちゃまだけなのである。マーサとか女漁師とかね。そして・・・少し淫靡な感じのおばちゃまは眉毛を消されて不気味に化粧させられるのが宿命である。そして・・・ねっとりした男たちの妖しい視線や・・・鍛え上げられた肉体の緊縛が最優先なのである。
・・・もういいか。
北の大陸の先住民ヤクーの呪術師トロガイ(高島礼子)は炎通信で得たシュガ(林遣都)の情報からチャグム(板垣瑞生)の近況をバルサ(綾瀬はるか)に伝える。
「チャグムは皇太子の死を願う帝によって敗色に塗られた戦場に送り出されタルシュ帝国の虜囚となった」
「あらすじをありがとう」
「バルサ・・・どうするつもりだ」
「タンダ・・・私にできることはない・・・裸祭りに参加できなくて残念だったな」
「別に構わないよ」とタンダ(東出昌大) は唇を尖らせる。
「守りしものには・・・それぞれの役割がある」とトロガイは思わせぶりに告げる。
「・・・」
精霊を守ったチャグムをバルサが守る・・・この世界は守備の世界なのである。
そして・・・守ることがこの世の正義なのだ。
だから・・・この世界では自分を守ることは・・・それほど悪ではないのである。
逆に自己保身を糾弾することには悪の香が漂うのだ。
タルハマヤ(精霊)を宿したアスラ(鈴木梨央)をタル(被差別民)のイアヌ(玄理)とカシャル(猟犬)のシハナ(真木よう子) に奪われたバルサは愉快な仲間たちとともに・・・約束の日である建国ノ儀を待って・・・潜伏を余儀なくされる。
虜囚となったチャグムをタルシュ帝国の兵士が護送するために現れる。
「これからチャグム殿下を・・・帝都にご案内する」とタルシュ帝国の密偵ヒュウゴ(鈴木亮平)が告げる。
「私が御一緒できるのはここまでよ」と海賊船長のセナ(織田梨沙)・・・。
「そなたと過ごした日々は・・・忘れぬ」と下心めいた好意を示すチャグムであった。
「殿下・・・私は帝都まで御一緒します」とヒュウゴ。
「かたじけない」
「これだけは・・・お忘れなきように・・・私は殿下と同じヨゴの民・・・」
「・・・」
「しかし・・・殿下の臣下ではございません」
この後・・・チャグムは乗馬で帝都に向うが・・・設計上のミスがある。
タルシュ帝国の第二王子・ラウル(高良健吾) の王城で壮大な帝都の全貌を見て威圧されるチャグムは・・・王城に着くまでに・・・どこまでも続く街路を進んだはずである。
それは・・・日本にきた外国人が成田から東京に着くまでに・・・どこまでも続く都市に圧倒される感覚をすでにチャグムにもたらしたことは明らかである。
だから・・・チャグムは密閉された護送車で帝都に侵入するべきだった。
護送車から降りたチャグムの前に姿を見せるタルシュ帝国の宰相・クールズ(小市慢太郎) は恭しく挨拶をする。
「遠路はるばる・・・殿下が帝都にお越しくだされたこと・・・御礼申し上げます」
「・・・」
「明日・・・殿下にはラウル王子殿下に御目通りが叶います」
「ラウル王子・・・タルシュの皇帝陛下ではないのか」
「新ヨゴ国についてはラウル王子が全権を委任されております」
「・・・つまり方面司令官ということか」
「いかにもさよう・・・今宵は旅の疲れを癒してくださりますように」
チャグムは王城のゲスト・ルームに案内される。
そこには繻を纏った侍女(中村映里子)が控えていた。
「このものが殿下のお世話をいたします・・・いかなる申しつけにも応じますのでおくつろぎください」
クールズは去った。
「お食事になさいますか・・・それともご入浴・・・何でもお申し付けくださいませ」
「童貞なので夜のサービスはいらぬ」
「さようでございますか・・・私は殿下の望みをすべて叶えるように申しつけられております」
「しかし・・・童貞なので」
「たとえば・・・殿下がこの城を脱出したいとお望みなら・・・手引きもいたしますよ」
「え・・・そなた・・・ヒュウゴの手のものか・・・」
「・・・」
「だが・・・私は逃げぬ・・・私の逃げ場は・・・黄泉の国だけだ・・・この世にある以上・・・ラウル王子とやらに会ってみるのも・・・一興だ」
「・・・では夜のサービスになさいますか」
「だから・・・童貞なので」
「童貞用のメニューもございますよ」
「え」
夜が更けた。
ヒューゴはラウルに罪を問われる。
「なぜ・・・チャグムとやらにヨゴを見せたのだ」
「そのような命令は与えなかったはず」とクールズ宰相。
「ヨゴの今の姿を見せることが・・・皇太子を屈服させるのに最適と考えました」
「それで・・・皇太子は屈服したのか」
「それは・・・判じかねまする」
「ヒューゴよ・・・何故・・・それほどまでにチャグムに肩入れする」
「皇太子は・・・精霊を見る異能を持っています・・・その力は必ずラウル殿下のお役に立つものと考えます」
「ふふふ・・・迷信深いのお・・・そのようなものに頼らずとも世界を従えることはできるぞ・・・」
「・・・」
「まあ・・・よい・・・チャグムが役に立つものかどうか・・・明日、私がとくと見定めよう」
一夜が明けた。
チャグムはラウルの前に引き出された。
「チャグム皇太子よ・・・よくぞ参られた」
「ラウル殿下・・・お目にかかれ光栄です」
「チャグム皇太子よ・・・そなたの思うところを述べよ」
「ラウル殿下・・・あなたの心を伺わぬうちは・・・私に申し上げる言葉はございません」
「チャグム皇太子よ・・・そなたは己が今・・・どのような立場か御存じか・・・」
「ラウル殿下・・・私はどこに立っていても新ヨゴ国の皇太子であるばかりです」
「なるほど・・・では私から一つだけ尋ねよう」
「なんなりと」
「私に従う気はあるのか」
「ラウル殿下・・・あなたの心を伺っておりませぬ」
「くどい・・・話は終わりだ」
兵士たちは槍を構える。
「宮殿を私の血で汚すおつもりですか」
「血は洗い流せばよい」
「それは・・・無駄なことではないのですか」
「そうか・・・それではもう少し・・・時を与えよう・・・参るがよい」
ラウルはチャグムをバルコニーに案内した。
新ヨゴ国の国土がすっぽり入るかのような・・・帝都の威容。
「いかがかな・・・」
「言葉もございませぬ」
ラウルはチャグムに床に描かれた世界地図を披露する。
「新ヨゴ国にも世界地図はあるだろう」
「はい・・・しかし・・・このように正確なものではございません」
「初めて・・・世界というものを感じた時・・・どう思った?」
「世界はかくも広きものかと」
「私は世界の狭さに苛立った・・・征服するべき版図はこんなにも僅かなのかと」
「なぜ・・・征服をお望みなのですか」
「世界が一つであれば民はより豊かになるとは思わないか」
「しかし・・・民はもう充分に豊かなのではないですか」
「ヨゴ国には飢えて死ぬ民はいないのか」
「・・・」
「ヨゴ国には不作で子を売る親はいないのか」
「・・・」
「ヨゴ国には貧しいがゆえに盗むものはいないのか」
「・・・」
「私の国にはそのようなものはいない・・・」
「しかし・・・税は重く・・・厳しい兵役があると聞きます」
「税を重く感じるのも・・・兵役を厳しいと感じるのも・・・それは非国民だからだ」
「帝国の民であれば・・・すべては誇りに変わる」
「私にどうしろと言うのです」
「帝になるがよい」
「帝に・・・」
「お前はただ・・・帰ればよい・・・すでにヨゴのちっぽけな王宮には我が軍の手のものが入りこんでおる」
「なんですって・・・」
「今の帝は消え・・・お前が帝となり・・・我に従うだけのこと・・・」
「そのようなことはできませぬ・・・」
「なぜだ」
「帝は・・・ただ一人になられても・・・屈せぬお方です」
「ならば・・・我が軍が二十万ほどの兵を率いて進軍するばかり」
「二十万・・・」
「お前の国には兵と言っても一万ほどの人数があるばかりであろう」
「・・・」
「私は自ら軍を率い・・・帝も・・・お前の母親の妃も・・・お前の弟も・・・すべて骸とするだろう・・・帝の首は朽ちるまでしばらく晒しておく」
「なぜ・・・そのような惨い仕業をなさるのですか」
「そうするのに理由が必要なのか」
「・・・」
「では・・・お前に・・・決断というものを教えよう」
「決断・・・」
「為すべき時に為すということだ」
ラウルはチャグムを処刑場に誘う。
そこには全裸で吊るされたヒュウゴがいた。
「これは・・・どういうことです」
「このものは・・・お前に南のヨゴの地をみせ・・・要らぬ入れ知恵をしただろう」
「そんな・・・ヒュウゴは関係ありませぬ」
「では・・・この女はどうだ」
侍女が全裸で引き出される。
「この女は・・・お前に・・・何を申し出た」
「これは・・・罠でございましょう・・・すべてはラウル殿下の仕組んだこと」
「ほう・・・では・・・お前には無関係ということだな」
「・・・」
「処刑せよ・・・」
ヒュウゴに向けて衛兵の槍が繰り出される。
「お待ちくだされませ・・・」
「待つと何かが変わるのか」
「ラウル殿下に・・・私が忠誠を捧げます」
「どのようにそれを示すのか」
チャグムは膝を屈した。
「ラウル殿下の仰せのままに・・・」
「そうか・・・では・・・チャグム皇太子が帝となり・・・わが軍門に下るまで・・・ヒュウゴの命は私が預かるとしよう・・・」
すべてが茶番と知りつつ・・・命の恩人であるヒュウゴを殺すことは・・・チャグムには出来なかった。
バルサの教えが・・・チャグムを呪縛している。
「お前の力は見知らぬ民を守るためにこそ使え」
バルサの言葉は・・・チャグムにとって約束を違えぬことのできぬ師の教えなのである。
新ヨゴ国には・・・カンバル王のログサム(中村獅童) が訪れていた。
「皇太子の姿が見えませぬな」
「外交におでかけです」と帝(藤原竜也)に代わって聖導師(平幹二朗)が答える。
「ほう・・・どちらに」
「サンガル王国へと」
「なるほど・・・」
「手間を省こう・・・いくらほど用立てればよいのか」
「なんと・・・話が早いことだ・・・それでは新ヨゴ国のすべてをいただきたいものです」
「・・・」
「いや・・・戦をしようというのではありません・・・新ヨゴ国とはすなわち帝のこと・・・そのお心のままに差し出されるものを有り難く頂戴いたしたい・・・それだけのことです」
「真心の話ですか・・・」
「もちろんでございます・・・帝がいかほどの真心をお示しくだされるか・・・私はそれが楽しみでなりませぬ・・・」
二人の会話を・・・陸軍大提督のラドウ(斎藤歩)は舞踊家の踊りを眺めつつ盗み聞く。
果たして・・・この中に・・・タルシュ帝国の密偵は潜んでいるのだろうか・・・。
トゥグム(高橋幸之介)の教育係であるガカイ(吹越満)は幼い王子とともに庭にいた。
「立派な皇太子になられませ」
その言葉を二ノ妃が聞き咎める。
「どういう意味ですか・・・」
「いえ・・・チャグム様が帝になれば・・・トゥグム様は・・・皇太子になられますので」
「さようか・・・しかし・・・不謹慎とも言えますからな・・・お言葉には気をつけなされますように」
「肝に銘じまする」
ガカイは・・・恭しく礼をした。
チャグムは・・・サンガル王国の捕虜収容所に戻って来た。
チャグムの無事を喜ぶシュガ・・・。
「タルシュ帝国との交渉を行い・・・帰国の許しを得た」
「なんと・・・」
捕虜たちは全員解放され・・・サンガル王国の船が帰国用にチャグムに与えられる。
喜び勇む新ヨゴ国の海軍兵士たち・・・。
帰国船は出港した。
その後を・・・サンガルの戦闘船が追尾する。
「あの船は・・・送り狼ですか」とシュガは尋ねる。
「今夜・・・秘事を話す・・・ジンとモンを呼んでくれ」
狩人頭のモン(神尾佑)と狩人のジン(松田悟志)が船室に招かれる。
チャグムは経緯を話した。
「なんと・・・王宮に・・・すでにタルシュ帝国の手の者が入りこんでいるのですか」
「どこまでが真実かはわからぬ・・・」
「それで・・・殿下はいかがなされるのですか」
「私は・・・逃げようと思う」
「逃げる・・・」
「私もお供いたします・・・」とモンが申し出る。
「いや・・・モンは戻って・・・帝に報告するのだ・・・命令通りに私を殺したと」
「え」
「そうすれば・・・父は心おきなく・・・タルシュ帝国との戦に挑めよう」
「・・・」
「ジンとモンは・・・帝のお命をお守りせよ」
「殿下・・・」
「今宵・・・チャグム皇太子はモンに殺され・・・死体は海に投げ込まれる・・・」
「そんな・・・」
「私は泳いで・・・サンガル辺境の島になんとしてもたどり着く」
「えええ」
「ラウル王子から軍資金としてもらった財宝がある・・・これを金に換え・・・船を仕立ててロタ王国に向うつもりだ」
「・・・殿下」
「新ヨゴ国単独では・・・タルシュ帝国には到底・・・勝ち目がない・・・私はロタ王国と交渉し・・・なんとか援軍を引き連れて参る」
「ご武運を御祈りいたします」
「皆の者・・・帝をお守りせよ・・・頼んだぞ」
そして・・・チャグムは海に飛び込んだ・・・。
チャグムを守る精霊の力が淡い光を放つ。
精霊たちは南の大陸から北の大陸へと群れをなして移動を続けている。
その流れに導かれ・・・チャグムは夜の海を泳ぎ出す・・・。
裸祭りのフィナーレである。
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