スーパーマンを止めないで(小泉今日子)
自宅モードの円子が特にブスなわけではないが・・・バス旅行中のおでかけモードの円子はものすごく美人である。
女優魂だな!
つまり・・・自宅モードの時の円子は・・・アイドルらしさを消して子育て中の専業主婦なのである。
それを全身全霊で演じているわけだ。
小泉今日子の凄みだよな・・・。
51歳なんだぜ・・・。
40代後半からの「最後から二番目の恋」~「あまちゃん」~「続・最後から二番目の恋」のたたみかけから一呼吸置いてのコレなのである。
加齢・・・じゃない華麗だ。
アイドル女優として・・・円熟の極みだ。
あなたに会えてよかった・・・。
で、『スーパーサラリーマン左江内氏・最終回(全10話)』(日本テレビ20170318PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。なぜか・・・前回↗10.5%の*4.2%上げである。もう・・・視聴率は完全に終わってるんじゃないか。統計的な目安として・・・。まあ・・・それは裏番組との兼ね合いと言われればそれまでだけどな。だって毎週、面白いじゃんか。とてもじゃないが見たり見なかったりできるコンテンツじゃないだろう・・・いやいやいや・・・お前の感覚でものを言うなよ。
二週連続のフジコ建設営業3課からのスタートである。
簑島課長(高橋克実)の娘がインフルエンザを発症し・・・接待ゴルフに行けなくなったので・・・ゴルフ未経験の左江内係長(堤真一)に白羽の矢がたつ。
池杉照士(賀来賢人)も別件で行けないらしい。
ここで・・・三人は「接待ゴルフ」の基礎講座を行う。
「ナイスショ~」
「ナイト~」
「夜でも騎士でもないからショットだから」
「池ポチャ」
「トレビの泉に入ったからには満願成就ですな」
「すごい」
「惜しくものらず」
「淡谷のり子」
「なるほど」
「そこそこの距離」
「OK牧場」
「・・・」
ガッツ石松ネタに冷たい対応をするのは堤幸彦ネタだからだな。
先達者に敬意を表しつつ蔑むのか・・・。
蒲田みちる(早見あかり)と下山えり(富山えり子)は冷たく見守るのだった。
帰宅した左江内氏を居間で待つ円子(小泉今日子)、はね子(島崎遥香)、そして、もや夫(横山歩)・・・。
「明日・・・新作ゲームマグナムモンスターエースが発売になります」
「朝から並ばないと買えないくらいの人気なんだ」
「並ぶよね」
「無理なんだ・・・明日、接待ゴルフで」
「いいよ・・・パパ・・・ママ・・・仕事の方が大切だよ・・・ゲームが買えなくて・・・話題に乗り遅れて・・・仲間はずれにされて・・・やがていじめにあっても・・・我慢するよ」
「いじめはともかく・・・我慢は大切だ・・・ウチの家計は浪費気味だし」
「何言ってんの・・・お金を使って経済を活性化するのは・・・大切なことなのよ・・・トランプに負けない強い日本のために」
「えええ」
先週からトランプ・ブームらしい。
「ゴルフ何時から・・・」
「十時だけど・・・」
「電気店は・・・九時からです」
移動時間は・・・と言いかけれてスーパーマンになればなんとかなると口ごもる左江内氏。
夫婦の寝室で・・・。
「初めてやったら・・・はまったなんてやめてよね」
「仕事なんだから」
「土日に家族サービスしないで・・・仕事なんて許せない」
そこへはね子が登場。
「よく考えてみたんだけど・・・行列できてると思うよ」
「え」
「今から並ばないと・・・ゴルフに間に合わなくなる」
「ええっ」
弟思いの姉であり父親思いの娘である・・・。
ゴルフバックを担いで出動する左江内氏だった。
しかし・・・すでにかなりの行列が出来ているのだった。
午前九時・・・店頭販売が始るが・・・行列は遅々として進まない。
ついに制限時間いっぱいとなり・・・ゲームを購入できないままゴルフ場に向う左江内氏。
はじめてのゴルフに・・・接待相手も呆れる下手さを発揮した左江内氏だが・・・ついにスーパーマンの力と忘却光線を利用して・・・なんとか接待を乗り切るのだった。
樹木もなぎ倒すスーパーショットを放ち、ゴルフボールより早く飛んでカップインである。
接待終了後・・・電気店めぐりをする左江内氏・・・。
しかし・・・各店舗は軒並み売り切れなのである。
営業時間の終了が迫り・・・あせる左江内氏。
その時・・・およびがかかる。
「助けに行ってたら・・・お店が閉まってしまう・・・」
一瞬の躊躇である。
マンションのベランダから落ちかける幼児・・・母が手を掴んでいるが・・・ついに力尽きる。
間一髪・・・到着した左江内氏が手を伸ばすが・・・届かない。
子供は墜落してしまうのだった。
「すぐに病院に連れて行きます」
子供を搬送した左江内氏は・・・着替えて手術室に向う。
「あの・・・お子さんの容体は・・・」
「お医者様は・・・予断を許さないと・・・あなた・・・どなたですか」
「お子さんが落ちるところを見ていたものです」
「・・・心配して来てくださったのですね」
「・・・はあ」
胸に重い気持ちを抱えて帰宅する左江内氏だった。
「ゲーム買えた?」
「買えなかった・・・」
「話題に乗り遅れて・・・仲間はずれにされて・・・いじめにあうのか・・・」
「悲劇ね」
「ゲームなんてどうだっていいんだよ・・・そんなの悲劇でもなんでもないんだよ」
目の前で起った悲劇に押しつぶされる左江内氏だった。
気持ちを抑えきれず・・・家を飛び出すのである。
「え・・・」
「パパが本気で怒ったの初めて見た」
「・・・ぶっとばす」
戸惑う・・・左江内氏の家族たち・・・。
夜の街を彷徨う左江内氏の元へ謎の老人(笹野高史)が現れる。
「深刻そうだね」
「もう限界だ・・・やはり返却させてくれ・・・このスーパースーツを」
「これまで頑張ってきたじゃないか」
「昔から嫌なことでも・・・やってるうちに馴染んじゃう性質だから・・・でも・・・もう無理だ・・・仕事も家庭も・・・ヒーローの仕事もなんて・・・背負いきれない・・・今日も・・・助けられる命を・・・もう嫌なんだ・・・全ての責任を放棄したい」
「わかった・・・もう諦めるよ・・・明日からスーパーマンは他の人にやってもらう」
「本当に・・・」
「確認しておくがもう一度これが欲しいと言っても・・・もう取り返せないぞ・・・鉄の掟だ」
「大丈夫・・・そんなこと絶対に思わない」
スーツ・・・そして変身マークを返却する左江内氏・・・。
心はたちまち軽くなる。
その勢いで痛飲する左江内氏だった。
路上で目を覚ますと・・・なぜか・・出勤モードが用意されている。
本来・・・日曜日だが・・・すでに左江内氏は悪夢の世界に彷徨いこんでいるのである。
「よくわからないが・・・ラッキーだ」
晴々とした気分で出勤した左江内氏だったが・・・会社には・・・米倉係長(佐藤二朗)が存在する。
「どちら様でしょうか」と他人行儀な蒲田・・・。
「え」
「うわ・・・お酒臭い」
「なんだよ・・・蒲田くん」
「え・・・どうして私の名前を・・・」
「君は誰だ」と課長。
「いやだな・・・課長・・・係長の左江内ですよ」
「うちの係長は米倉くんだが・・・」
「え・・・」
「もう一度・・・ロビーで行き先を確認した方がよろしいでしょう」
「ええっ」
ランチタイム・・・物影から覗くと米倉係長は弁当のことでからかわれている。
「どうして・・・茶色いんですか」
「これは・・・僕の好きなもので」
「あ・・・御自分で作ってるんですね」
「奥さん・・・鬼嫁ですもんね」
「えええ」
会社の居場所を失った左江内氏・・・。
帰宅すると・・・円子もはね子も他人を見る目で・・・左江内氏を見る。
「君はだれなんだ・・・」
「お前は・・・」
家にも米倉がいるのだった。
「警察を呼ぶぞ」
あわてて退散する左江内氏・・・家の表札も「米倉」になっている。
「お風呂がヌルヌルなんですけど」
「ごめん・・・追い炊きした」
「パパは貧乏症だから」
「加齢臭が溶け込むのよね」
「人をメルトダウンした原子炉みたいに・・・」
「土下座して自分の不甲斐なさをフガフガとわびな」
「加齢臭を湯船に融け込ましてすみませんフガフガ」
左江内氏は米倉に自分の日常を見た。
「あいつの仕業か・・・」
左江内氏は・・・老人を捜し始める。
路上でチンピラたちがサラリーマン相手に暴力をふるっている現場に遭遇する左江内氏。
「やめたまえ」
「なんだと・・・」
左江内氏が暴行されてしまうのだった。
そこへ・・・一人乗りのフライングマシンに乗って・・・キャプテンマンが現れる。
キャプテンマンは屁の力でチンピラたちを撃退するのだった。
「どうも・・・元スーパーマン」
「君が・・・次のスーパーマンなのか」
「それは違うよ・・・」と老人が現れる。
「この人は・・・スーパーマンたちのリーダーだ」
「パーマンのバードマンみたいな」
「また・・・原作者が同じだからって・・・原作が違うと・・・もろもろのアレがね」
「キャプテンマンですねん・・・パーやんでもありまへんで・・・君はダメだったね」
「え」
「僕は君をずっと監視していた」
キャプテンマンの正体は米倉だった。
「そんな・・・あなたになんて会ったことはない」
「それは忘却光線を使ってたから・・・君が知らなくてもお茶の間の皆さんは知っている」
「お茶の間・・・」
「いい線まで行ったんだけどな・・・結局・・・スーパーマンとしての自覚が芽生えなかったね」
「・・・」
「だからといって・・・俺の家族や・・・仕事まで奪うなんて・・・」
「だって・・・君はすべての責任を放棄したいって言ったじゃないか」
「・・・」
「君は・・・一人で気楽な生活をすればいい・・・さぞや・・・快適なことだろう」
キャプテンマンはフライングマシンで飛び去る。
「相変わらず・・・血も涙もないお方だ・・・しかし・・・スーパーマンのリーダーはああでないとつとまらない・・・」と老人。
「・・・」
「じゃあ・・・私もこれで・・・君の替わりを見つけないとならないからね」
老人も去っていく。
失うものがなくなって・・・自由になった左江内氏は・・・拠り所を求めて病院にたどり着いた。
母親が左江内氏に気がつく。
「御蔭様で・・・息子が意識を取り戻しました」
「よかった・・・」
「あ・・・スーパーマン」
「え・・・」
「何を言ってるの」
「この人が僕を病院に運んでくれたんだよ」
「・・・」
「今でも覚えている・・・この加齢臭」
「失礼なことを言ってすみません・・・この子・・・まだ混乱しているようで」
「いいんです」
「これからもがんばってね・・・スーパーマン」
「ありがとう・・・」
あてどなく街を歩く左江内氏はうらぶれた「ホトケ電器」にたどり着く。
「マグナムモンスター一つだけあります」の張り紙に心奪われる左江内氏・・・。
ゲームを買い損ねてすべてを失った男なのである。
「あの・・・マグナムモンスター・・・ありますか」
「あるよ・・・十万円」
「え・・・なんで」
「スチームアイロンと羽毛布団・・・そしてカセットテープがついてくる」
「ドラクエの抱き合せ商法かよ・・・懐かしすぎる・・・」
「いらないのか」
店主はホトケ四号・・・じゃなかった米倉である。
もちろん・・・脚本ワールド的には繋がっている天上世界なのだろう。
「だから・・・高すぎる」
「じゃ・・・ゲームをもう一本」
「最後の一つじゃないのかよ」
電気店のテレビにニュース速報が映る。
「バスに立てこもった男が・・・乗客を人質に・・・」
「円子・・・」
乗客の中に・・・円子がいた。
「バス旅行なんて・・・貧乏人のすることよ・・・」と言っていた円子なのである。
いてもたってもいられずに・・・店を飛び出した左江内氏。
「もしもし・・・私の代わりにスーパーマンにならないかい」
「なるよ」
「また・・・あんたか」
「俺が返せと言ったんじゃない・・・ジジイの方から声をかけてきたんだから・・・鉄の掟に反さないだろう」
「まあね」
「俺はスーパーマンになる」
「その言葉・・・忘れるなよ」
謎の老人は消えた。
存在することに対する責任の所在。
人は皆・・・温もりを求めて・・・温もりに対しての責任を負い・・・自問自答しながら・・・生きて行くものなのだ。
「手に入れた居場所を守るのか・・・そこから逃げ出すのか」
人生とはただそれだけのものなのである。
「大人しくしろ」
「大人しくしてるじゃない」とマイペースの円子。
「ごめんなさい」と円子のママ友の木手夫人(福島マリコ)・・・。
「だまれ・・・」とバスジャック犯(菅田将暉)・・・。
小池警部(ムロツヨシ)と制服警官の刈野(中村倫也)は武装した警官隊とともに指を咥えていた。
そこに飛来するスーパーマン左江内氏・・・。
「なんだ・・・お前・・・」
「妻を助けに来ました」
「パパ・・・」
「ふざけるな」
犯人は発砲するが・・・弾丸を弾き返すスーパースーツである。
「くそ・・・お前の嫁を殺してやる」
「仕方がない・・・いいだろう・・・その嫁はな・・・料理も掃除もしない・・・たまに洗濯だけはするが自分と子供たちの衣料が縮むのが嫌だからだ・・・日頃から私に暴力を振るうし・・・そんな嫁だ・・・遠慮なく殺してくれ」
「ここで生き延びたらマジで殺してやっからな」
「な・・・ひどいだろう・・・だけど顔を撃つのはやめてくれ・・・可愛いので」
「・・・」
「・・・と油断させておいて」
拳銃を奪い「くにゃり」と折り曲げる左江内氏。
「くそ・・・」
犯人はナイフを抜く。
しかし・・・円子の飛び蹴りが炸裂するのだった。
「イケメンだから大目に見てやっていたけど・・・あいつを殴っていいの私だけだから」
「菅田将暉に似てるって言われます」
「全然似てねえし・・・山崎賢人のほうが好きだし」
「あ・・・それは言っちゃダメなやつだな・・・」
「・・・」
「ほら・・・傷ついちゃった・・・君はなんでこんなことを・・・」
「田舎から上京してきたのにゲームが売り切れになってて・・・むしゃくしゃしてたら・・・おかしな仮面をかぶった男の人に拳銃を渡されて・・・勝手に体が動いて」
「ゲームってこれか・・・二つ持ってるから一つあげるよ」
「やった」
ゲームソフトを与えられた犯人は消失した。
「あ・・・そうか・・・これもテストか」
「テストって・・・」
「いや・・・旅行の続きを楽しんで」
左江内氏が下車するとバスは走り出す。
運転手は・・・米倉だった。
左江内氏は忘却光線を作動させた。
「あれ・・・」
長い長いネクタイを引きずって意識を取り戻す小池警部。
「どうして・・・みんな集まってるの」と刈野。
「これは・・・慰安旅行だ」
「え・・・え・・・どこに行くの」
「千葉の秘湯だ・・・」
「わ~い」
「今日まで本当にありがとう・・・これからもよろしく」
「はい・・・」
「い~あん」
「い~あん」
左江内氏は茶色い生姜焼きを調理する。
なるべく焦げていない肉を家族の皿に盛りつけする。
「バスの中でひどい夢を見た・・・」
「どんな夢」
「パパが犯人にママを殺させようとするの」
「ひどいね」
「むかつくからちょっと殴らせろや」
「え」
可愛い嫁に可愛くボコボコにされる左江内氏である。
最後のイチャイチャである。
ニヤニヤするはね子ともや夫だった。
フジコ建設営業3課・・・。
「2課にプレゼンを押しつけられた」と簑島課長。
「くそ・・・むかつく」と蒲田。
「ボイコットしましょう」と池杉。
「やりましょう・・・時間がもったいない」
「え」
「フジコ建設として・・恥ずかしくない仕事を」
「左江内係長・・・冴えてる」
屋上に飛来するキャプテンマン。
「たくましくなったね」
「がんばりますよ・・・前から気になってたっだけど・・・顔が大きすぎて・・・マスクが似合ってないよね」
「え・・・最後の最後でそこ・・・私はね・・・連続ドラマのラストシーンなんて・・・これが初めてなんだよ・・・それなのにそこ」
「ま・・・家庭も仕事も・・・そしてスーパーマンも責任もってやりますよ・・・何しろ・・・選ばれし男なんですから」
「その通り・・・最大公約数的常識を持つあたりさわりのない人・・・超人力を保持しても悪用できない小心者・・・そしてぱっと見が冴えない・・・目立たない存在・・・この条件を満たすものはざらにはいないからね」
「・・・」
そこでおよびがかかる。
「頼んだぞ・・・スーパーマン」
「はい・・・まあ・・・やれる範囲で」
悪と善の境界線は・・・深い霧に覆われて判然とはしない。
しかし・・・そこを適当な感じでひとっ飛びに乗り越える・・・それが正義のヒーローというものなのである。
変わらないものなど何一つない・・・この世界において。
彼らは今日も歯をくいしばる。
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