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2017年3月14日 (火)

黙っていると怒っているように見える人(木村拓哉)

人間は苦悩する存在である。

過去を思い出し・・・未来を惧れて・・・現在に震える。

この厄介な「心」というものと付き合わなければほとんどの人は生きていけないのである。

惧れを知らない子供に人が心を癒されるのは・・・その愚かさが羨ましくもあるからだ。

時には何もかも忘れてのんびりしたくてもそうはいかないのが「賢さ」というものなのだ。

しかし・・・何かを得ようとしなければ得ることは難しい。

欲望がなければすべては始らないのである。

その上で欲望をなだめすかし・・・ちょっとした辛抱をしなければならない。

生米をといでたかなければふっくらごはんにはありつけないのだ。

まして・・・御寿司を食べるまでには・・・長い準備期間が必要なのである。

その点・・・焼肉はお手軽だと考える。

・・・何の話だよ。

幸せの話である。

で、『A  LIFE~愛しき人~・第9回』(TBSテレビ20170312PM9~)脚本・橋部敦子、演出・木村ひさしを見た。友人と同じ異性を好きになるのは三角関係の古典中の古典である。魅力的な異性に心を奪われるのは動物の基本だからである。好きになった人が友人と相思相愛になり・・・やるせない気持ちを抱くことは容易に想像がつくわけである。もちろん・・・相思相愛になった方もなんとなく後ろめたい気持ちを抱いたりするわけである。その経験が辛すぎてドラマでも過去を思い出してもやもやするから見たくないという心弱き人もいるだろう。それでも・・・わかりやすいので・・・ドラマの骨格として何度でも使用されるのだった。痛いんだものね。心が痛いってわかるんだもんね・・・なのである。

愛する人の容体が急変・・・ということで病院の廊下を走る医師二人・・・。

ここで・・・壇上深冬(竹内結子)が天に召されてしまえば・・・沖田一光(木村拓哉)と鈴木壮大(浅野忠信)の間には恋の思い出と友情だけが残り・・・それなりにハッピーエンドなのだが・・・最終回ではないのでそうもいかないのである。

深冬は脳内出血に至ったが・・・状態は安定した。

「軽度の新鮮出血だったので・・・腫れが引けば・・・手の痺れなどは納まり・・・日常生活に復帰できる」

「手術はどうなるの・・・」

「経過次第だが・・・三週間後に・・・延期する」

「そう・・・」

「カズ・・・俺はしばらく・・・ここにいる」

「そうか・・・」

「沖田先生・・・御心配かけてすみません」

「いえ・・・」

壮大の握る深冬の手から視線をそらす一光。

十年間・・・目を背けていた嫉妬の炎が・・・一光の心を炙る。

だが・・・何が何でも深冬を手に入れようとしなかったのは・・・自分自身なのだということが一光にはわかっていた。

わかっていたが・・・二人を残して病室を去ることが・・・恐ろしく苦痛なのである。

だが・・・深冬と壮大が子まで生した夫婦であり・・・深冬と一光が患者と主治医に過ぎないことは明らかなのだった。

その上・・・壮大は・・・深冬の執刀医としての一光さえも否定するのだった。

まるで・・・一光と深冬の絆を完全に断ち切らなければ・・・安心できないとでも言うように。

一光は後悔する。

もっと早く・・・パイパス手術という結論に至っていれば・・・。

出血する前に執刀していれば・・・。

父親の手術でミスを犯す前に執刀していれば・・・。

一光は・・・実現しなかった過去の遡上の果てにたどり着く。

あの時・・・深冬と離れ離れにならなければ・・・。

しかし・・・すべては過ぎ去った過去の話である。

過ぎ去った過去を取り戻すことはできないのだった。

人間は・・・どうしようもないことに直面した時・・・怒りを感じる。

自分自身の至らなさを払拭するために。

「もっと・・・早く・・・オペをしておけば・・・」と思わず愚痴を言う一光。

「しかし・・・手術の方法はまだ有効なんでしょう」と井川颯太(松山ケンイチ)は一光を宥める。

「アプローチは可能ですよね」とナース柴田(木村文乃)・・・。

「難易度は高くなってしまったけれど・・・」と失敗に拘泥する一光。

一光は苛立ちの虜となっている。

それでも・・・一光を敬愛する医師と看護師は・・・心乱れるドクターに寄り添うのだった。

一光による手術ミス・・・深冬に対する独占欲・・・様々な状況に心を踊らされ・・・激しく動揺してしまう可能性のある・・・家族に対する執刀に偏執し始めた壮大。

「君がオペするというのか」と深冬の父親でもある院長の虎之助(柄本明)は壮大に厳しい目を向ける。

「皮膜外にも出血したために・・・腫瘍が分断されて正常神経との見極めの難度はあがってしまいました・・・脳実質の温存を見定めるためには・・・キャリアが要求されます・・・こうなってしまった以上・・・専門外の沖田先生よりも・・・私の方が適任です」

「しかし・・・君には家族をオペするというリスクがある・・・沖田先生だって・・・家族のオペとなればミスをする・・・そういうものだ」

「だからこそです・・・僕と沖田先生は違います・・・僕は必ずやり遂げます・・・深冬は僕が救います」

一光が深冬に寄せる特別な気持ちについて言及しかかる壮大である。

もちろん・・・邪推と思われかねないのでギリギリで自重する壮大なのである。

「何が・・・ベストなのか・・・少し考えさせてくれ」

虎之助は病み上がりの老いた父親として俯く。

二人の医師は一人の患者を争って牙を剥くのである。

壇上記念病院に少年と老婆に付き添われた急患が搬送されてくる。

急患は少年の母親である。

少年・・・安井知樹(藤本飛龍)は診察した颯太に要求する。

「この病院の最高のお医者さんにお願いします」

颯太は一光に打診する。

「最高の先生に診てもらいたいと要求されまして」

「え」

「冠動脈バイパスおよび左内頸動脈内膜剥離術になると思います・・・僕にはちょっと難しいですね」

「それを先に言えよ」

出動するドクター沖田・・・しかし・・・母親を失うかもしれない恐怖にとりつかれた知樹は猜疑心の塊となっているのだった。

「ベルギーの王様を手術した先生がいると聞きました。その先生なら失敗しないですよね。その先生はお金持ちじゃないと手術しないんですか」

「これ・・・失礼なことを言うんじゃないよ・・・すみません・・・なにしろ・・・母一人子一人なもので」

知樹の祖母(茅島成美)が・・・孫の無礼を詫びる。

もちろん・・・一光には・・・知樹の姿が・・・幼い頃の自分とオーバーラップしているのだった。

医師から見放され・・・母を失ったあの日の一光・・・。

「僕がしっかり手術するから・・・大丈夫」

しかし・・・知樹の疑いは晴れない。

けれど・・・一光は間違いを訂正する気にはならないのだった。

ベルギーの王様を手術したのではなく・・・ベルギーの王様の家族を手術した一光なのである。

「脳神経外科学会」理事長の草野康浩教授(佐々木勝彦)が難しい患者について壮大に相談する。

「相手は・・・現職の大臣なんだ」

「眼窩内腫瘍ですか・・・」

「どうかね・・・」

「やれます」

壮大の心は目まぐるしく動く。

「百点でなければ意味がない」・・・父親の呪いを宿した少年時代から無理に無理を重ね・・・積み上げた心の塔はゆらりゆらりと揺れながら危ういパランスを維持している。

その素早い精神の動きは他人からは「やり手」とも思われるが・・・いよいよ・・・挙動不審の段階にまで差し掛かっているらしい。

「え・・・桜坂中央病院との提携話を白紙に戻すとおっしゃるのですか」

「あおい銀行」行員の竹中浩一(谷田歩)は耳を疑う。

同席していた外科部長の羽村圭吾(及川光博)も寝耳に水である。

「厚生労働大臣の横井充先生の難しいオペをすることになったのです」

「え」

「これは極秘にお願いします」

「・・・」

「このオペによって壇上記念病院のブランド力が上がる・・・その名を捨てるわけにはいかないでしょう」

「しかし・・・そのように・・・経営方針を替えられたのでは・・・当方としても上への説明に困ります・・・それに手術が成功するとは限らないのでは」

「成功しますよ・・・私が執刀するのだから」

壮大の言動に眉をひそめる外科部長を観察して竹中の危惧は高まる。

深冬は脳内出血の発症によって・・・さらに・・・自分に残された時について考え込む。

出血で高まった脳圧により痺れが出た・・・震える不自由な手で・・・遺書を書き始めるのだった。

(壮大さん・・・お父さんと仲良くしてください・・・莉菜・・・お父さんと仲良くしてね・・・それだけが・・・お母さんの・・・)

虎之助は壮大に対して癇癪を破裂させる。

「深冬のオペを控えているのに・・・なんで・・・今・・・そんなリスクを・・・」

「患者の命を救うためですよ」

「失敗すれば病院の名は地に堕ちる・・・君と心中しろというのか」

「生き延びるためです・・・特別な・・・大臣の命を救うことができれば深冬だって救えます」

「・・・」

虎之助は・・・壮大が追いつめられていることを察知する。

それを・・・自分の娘である・・・深冬の命のためと・・・考える虎之助。

しかし・・・壮大の追いつめられ方は・・・そんなに単純なものではないのだ。

壮大の心は走り続ける。

「大臣のオペがうまくいったら・・・深冬は俺が切るよ」

「あれだけ・・・家族だから・・・オペは無理だと言ってたじゃないか」

壮大の言動に気圧されながら一光は抵抗する。

「家族のオペは簡単じゃないからな・・・現にお前はミスをした・・・」

「だったら・・・」

「だからだよ・・・お前にはまかせられない・・・俺はお前とはちがう・・・どんな困難も自分の力で乗り越えてきたんだ」

「・・・」

「この件は・・・院長も了承済みだ」

「・・・俺も準備だけはしておくから・・・」

「深冬には・・・大臣の手術が終わったら俺から話すよ」

「壮大・・・」

「一光・・・お前はもう・・・シアトルに帰ってくれていいから」

すでに・・・狂気の気配を漂わせる壮大なのである。

一心(田中泯)の退院の日が来る。

病室に顔を出す壮大と一心。

「退院おめでとうございます」

「ソーダイ・・・いい部屋にしてくれてありがとうよ」

「懐かしいな・・・その呼ばれ方・・・」

「お前も一度・・・寿司を食いに来な」

「寿司もいいけど・・・久しぶりに鯛茶が食べたいですね」

「お安い御用だ・・・なあ・・・ソーダイ・・・こいつのことをよろしく頼むぜ」

「・・・」

「この野郎・・・俺の手術で失敗しやがった」

「・・・」

恋敵でもあり、医師として患者をとりあうライバルでもある壮大の前で父親に痛いところを突かれて・・・鬱積していく一光の苛立ち。

父親がわがままを言わなければ・・・深冬の手術はもう・・・終わっていたのかもしれなかったのに・・・。

考えまいとすればするほど・・・落ちつきを失う一光なのである。

だから・・・一光には・・・壮大の異常さがわからないのだった。

一光もまた・・・おかしくなっているのである。

「え・・・オペを頼めない」

「副院長のオペが入っていて・・・三日間・・・他のオペには参加できません」

ナース柴田に・・・知樹の母親のオペを断られ・・・緊張の糸が切れる一光だった。

「しかし・・・あのオペには・・・君が必要なんだ」

「申しわけありません・・・三条さんが」

「三条くんじゃ・・・」

ドクター沖田とナース柴田の会話をナース三条(咲坂実杏)が聞いていた!

沖田が気配に気が付き振り向くとナース三条がいる。

気まずさに耐えきれず退散する一光だった。

一方・・・横井大臣が入院し・・・スタッフを集合させた壮大は自信満々にスピーチを行う。

「このオペは画期的なオペです・・・壇上記念病院の未来がかかったオペです・・・我々はそのオペを行う大事な仲間です」

壮大は高い塔の上で針の先に立ち・・・人々を見下ろすのである。

恐ろしさのあまり・・・壮大はにこやかな表情を浮かべる。

ナース三条とのリハーサルを行う一光。

「遅い・・・それに必要なのは・・・小さい方・・・そこは予測して・・・すでに15秒オーバーしている」

「すみません」

「・・・」

ドクター沖田とナース三条の相性は最悪らしい・・・。

「俺しか言えないことだから言いますけど・・・」と颯太は声を大にする。「三条さんにちょっと冷たいんじゃないですか」

「患者のために・・・準備しているだけだ」

「あれで・・・いいオペできますか・・・三条さんにプレッシャーかけてるだけじゃないですか」

「難しいオペだと・・・自覚してほしいから」

「それがベストだと思いますか・・・」

「・・・」

「今の沖田先生には・・・深冬先生のオペは無理だと思います」

言うだけ言って・・・後悔に苛まれる颯太だった。

颯太は救いを求めて・・・深冬の病室を訪れる。

「まったく・・・沖田先生ときたら」

「どうしたの・・・沖田先生と何か・・・あったの」

「いや・・・ちょっとした意見の相違です」

「沖田先生・・・あなたがいてくれることを・・・喜んでいると思うわよ」

「え」

「ほら・・・なんだかんだ・・・とっつきにくい人だから・・・あなたに構われてうれしがってると思うの」

「そんな風に見えないですよ」

「いいえ・・・きっと二人は相性抜群よ」

「嫌ですよ・・・あんな面倒な人・・・」

まんざらでもない颯太だった。

深冬は微笑むのだった。

死期が迫り天使化しているらしい。

思いつめた知樹が一光を待ち伏せる。

「ベルギーの凄い先生に渡してもらいたいものがあります」

「え」

「これで・・・お母さんの手術をお願いします・・・大人になったら・・・必ず約束を果たしますから」

拙い文字で書かれた「一億円の借用書」だった。

「・・・」

「必ず渡してください」

退院した一心を案じて・・・帰宅する一光。

一光の心身も疲れ果てている。

一心は・・・一心不乱に包丁を研いでいた。

「心配して損したよ」

「いてて・・・」

「ほら・・・今日くらい休めよ」

「・・・半人前のくせに」

「半人前、半人前ってうるせえんだよ・・・どこまでいったら一人前なんだよ・・・こっちだって俺にしかできないオペを色々とやってんだ」

「俺にしかできねえとかぬかしやがるから半人前なんだよ」

「本当だから・・・俺にしかできないオペがあるんだから」

「関係ねえんだよ・・・自分がどうだとか・・・相手がどうだとか・・・どんな時にもただひたすらに準備する・・・心を一点にだけ集中するんだ・・・てめえがやってるなんていう雑念なんか入らねえ・・・一途一心だ・・・それをお客に出す・・・ただそれだけだ・・・それが職人ってえもんだろう」

「・・・」

一心から一光へ・・・職人気質の以心伝心である。

「いてて・・・」

「痛みどめ・・・飲んどけよ」

「べらぼうめ」

「俺・・・病院に戻るから」

手術室では・・・柴田が加わり・・・リハーサルを再開していた。

「三条さん・・・ごめん・・・やりづらくしていたのは・・・僕だった」

「私の方こそ・・・すみませんでした・・・柴田さんに準備不足を指摘されて・・・反省しているところです」

「柴田さん・・・ありがとう」

「いえ・・・患者さんのためですから」

「ですよね」と颯太が微笑む。

チーム沖田は本格的に準備を始めた。

あぶれ者が集うバー。

「うちの顧問弁護士・・・辞めて正解だったかもねえ」と外科部長。

「・・・何かありましたか」と元顧問弁護士の榊原実梨(菜々緒)・・・。

「副院長に振り回されるのはもううんざりだよ・・・壇上記念病院を乗っとるって言う話・・・あれを今度はひっくり返した」

「副院長は心の奥に不安を抱えているから・・・何をしても・・・不安定なんですよ・・・目移りしちゃうんです・・・もっといいことがあるんじゃないかと・・・本人はベストを求めているのかもしれないけれど・・・回りから見れば気まぐれにしか見えない」

「さすがに・・・ベッドを共にした相手の心はお見通しなのか・・・で・・・彼は一体何を抱えているの」

「さあ・・・とにかく・・・土台が不安定なんだから・・・そのうち・・・崩れ落ちますよ・・・自滅しちゃえ・・・いい気味だ・・・ですよ」

「怖いね」

「自業自得です」

「そんな君に・・・頼みたいことがあるのだけど」

「どうぞ・・・伺いますよ」

陰謀とは無縁のチーム沖田の準備は整った。

「冠動脈バイパスおよび左内頸動脈内膜剥離術を行います・・・よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

特訓の成果により・・・ナース三条もそれなりにドクター沖田と呼吸を合わせる。

「脳酸素いくつ」

「脳酸素フォワード85に低下しました」

突発事項にも落ちついて対応する三条である。

「キットの準備できてます」

「ありがとう」

手術は無事に終了した。

一方で・・・ナース柴田を従えた壮大は・・・手術のリハーサルを重ねる。

「ここは・・・どうしよう」

「これで」

「うん・・・いいね」

手術を終えた一光に恐怖のために正気を失った知樹が迫る。

「手術は成功です・・・お母さんは大丈夫だよ」と一光は「一億円の借用書」を取り出す。「こういうことをしなくても・・・僕たちは全力でやっているからね」

しかし・・・正気を失っている知樹は聞く耳を持たない。

「誤魔化さないでください・・・結局・・・ベルギーの先生はやってくれなかったじゃないか」

困惑する一光。

「この人がベルギーの先生ですから」と助け舟を出す颯太。

「え」

「ベルギーの王様の家族を手術したんだけどね」

「マジですか」

「マジです」

「本当にベルギーの先生」

「べルギーの先生って・・・」

「なんだか美味しそうですね」

「チョコレートじゃねえよ」

一時退院することになった深冬のために荷物運びを手伝う一光。

「ご機嫌ね・・・何かいいことあったの」

「え」

「沖田先生は黙っていると怒っているように見えるけど・・・今日はそうでもないから」

「いいオペができたから・・・え・・・俺って黙っていると怒っているように見えるの」

「うふふ・・・私の時も・・・よろしくお願いします」

「はい」

颯太は・・・外科部長にアドバイスを求めるのだった。

「羽村先生は・・・留学しようと思ったことはありますか」

「おやおや・・・沖田先生の影響がそこまで来たか」

「いえ・・・そんなんじゃ」

「武者修行に行ったからって・・・全員が成功するわけじゃないからね・・・成果をあげることなく帰ってきて・・・居場所がなくなっちゃた人の方が多いよ・・・海外に行くってことは日本との関係を断つことになるからね・・・沖田先生みたいに特別なスペックを身につけて凱旋できる人の方が稀なんだ」

「ですよね・・・」

「まあ・・・君はまだまだこれからさ」

「羽村先生は・・・いずれ・・・副院長とご一緒に経営にタッチなさるんですか」

「さあ・・・それはどうかな」

「・・・」

外科部長の謎めいた言葉に戸惑う颯太・・・。

「前方アプローチによる眼窩内腫瘍摘出術を行います・・・よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

前例のない術式と・・・横井大臣というVIP患者によってショーアップされた壮大の手術。

手術室の内外に・・・多数の見学者が集うのだった。

集中した壮大は・・・自信に満ち溢れた態度でセレモニーを主催するのだった。

「凄い・・・本当に凄い」と思わず呟く一光。

「ですよね・・・柴田さんの器具出し・・・完璧ですよね・・・副院長先生・・・一度も持ちかえてないし・・・手渡しの角度までバッチリです」

視点がやや違う颯太だった。

壮大は見事に手術を成功させるのだった。

記者会見が行われ・・・虎之助も壮大に賛辞を贈る。

壮大の中で悪魔が囁く。

(どうしたんだ・・・なにもかもぶちこわすのはやめたのか)

(馬鹿なことを言うな・・・俺には大切なものがある・・・俺は大切なものを自分の力で守るのだ)

(おやおや・・・そうかい・・・)

(そうだとも・・・俺にはできる)

(もう・・・手遅れじゃないのか)

(何がだ)

真田事務長(小林隆)は執刀医を紹介する。

「これは・・・前例のない・・・画期的な手術でした」

壇上記念病院の名声は高まった・・・。

一光は親友を祝福した。

「見事だったよ」

「そんなことないよ」

「あのプレッシャーの中で・・・初めてのオペを成功させるなんて・・・信じられないよ・・・やっぱり凄いな・・・壮大は」

「・・・カズ・・・深冬のオペは・・・俺がやるよ」

「・・・」

打ちのめされ沈黙する一光・・・。

怪気炎を上げながら帰宅する壮大・・・。

「オペは俺がやる」

「どうして・・・バイパスは沖田先生のほうがふさわしいって言ってたじゃない」

「今回の出血で神経の選別は難しくなった・・・腫瘍と正常神経の選別はカズより俺のほうが経験がある・・・バイパスのほうはオペまで二週間で十分な準備ができるし・・・総合的に俺のほうが適してる・・・お父さんも了承してくれた」

「・・・」

正気を取り戻した知樹が一光を訪ねる。

「ベルギーの先生だとは知らずに・・・ごめんなさい」

「いや・・・お母さんが心配だったんだよな」

「お母さんを助けてくれて・・・ありがとう」

「いえ・・・こちらこそ・・・ありがとう」

「僕・・・ベルギーの先生みたいなお医者さんになりたいんです」

「・・・」

「でも・・・勉強が苦手なんです」

「あのさ・・・テストの時とか・・・何点くらい」

「この間の算数のテストは・・・59点」

「へえ・・・いや・・・全然大丈夫でしょう・・・僕なんかもっとひどかったし・・・」

「そうなんですか」

「医者になろうと思ってから・・・死ぬ気で勉強したから・・・それで医者になれてるし」

「マジですか」

「マジです」

「ベルギーの先生・・・ありがとう」

「・・・」

知樹は外科部長にも話を聞くべきだがな。

焼肉屋に集合するチーム沖田・・・。

三条も呼んでやればいいのに・・・。

「野菜も食べてください」

「無理だから・・・」

「仕方ないですね」

「あの子が頑張って医者になったら凄いですよね・・・ベルギー先生物語ですよね」

「どんたけ略すんだよ・・・僕が手術したのはベルギーの王様の家族だよ」

「ニンジンどうですか」

「だからといって・・・患者はあくまで患者なんだよな・・・」

「そうですよ・・・王様の家族も知樹くんのお母さんも同じですよ」

「雑念は置いておいて・・・目の前の準備に集中するってことですよね」

「うん・・・一途一心にオペをする・・・それだけだ・・・まあ・・・親父の受け売りなんだけどね」

「それに気づかれた沖田先生は・・・もうお父さんのオペをした時の沖田先生とは違うってことですよね」

「うん」

「じゃあ・・・もう大丈夫ですよね・・・これでもう大切な人のオペちゃんとできますよね」

「だけど・・・この前・・・ある人に・・・深冬先生のオペは無理だと思いますって言われて・・・」

「ひどいことを言うやつがいるな」

「まあ・・・図星だったんだけどね」

「おやおや・・・」

「あ・・・これ・・・もう焼けてるぞ」

さて・・・焼肉を食べにいくしかない気持ちでいっばいだ。

院長室に外科部長と榊原弁護士が現れる。

「折り入って・・・院長に話があります」

「まさか・・・お二人は結婚を・・・」

「ち、違いますよ」

ニュース番組で紹介される大臣の手術成功の話題・・・。

「パパが二人いる・・・」

幼い愛娘・莉菜(竹野谷咲)の言葉に微笑む深冬・・・。

「莉菜はパパのことが好き?」

「大好き・・・」

深冬は一光と壮大を呼び出すのだった。

「私のオペのことでお願いがあります」

「・・・」

「色々考えたんだけど・・・私のオペは沖田先生にお願いしたいのです」

おそらく深冬は・・・手術に失敗した場合の・・・壮大と・・・残された娘のことを案じての決断なのだろう。

しかし・・・壮大の中の悪魔は哄笑するのだった。

「なんでだよ・・・なんでカズなんだ」と沸き上がる怒りで目が眩む壮大。「カズの方が腕がいいからか・・・それとも・・・カズの方が信用できるって言うのか・・・失敗しても・・・カズになら殺されてもいいってか」

「おい・・・お前・・・いい加減にしろよ」

一光は壮大の言葉に・・・胸に秘めた思いを蹂躙されるのだった。

「え」と錯乱する夫に驚愕する天使の深冬・・・。

そこに・・・外科部長と榊原弁護士を従えて虎之助が登場する。

「お父さん・・・聞いてください・・・深冬が・・・」

「壮大くん・・・君を解任する」

「え・・・」

「どうしたの・・・お父さん」

「この男は・・・この病院を乗っ取ろうとしていたんだ」

「・・・そんなことはしていませんよ」

「じゃあ・・・これはなんだ」

虎之助は・・・融資を引き出すための計画書を壮大に突きつける。

「違います・・・これは・・・違うんです」

「副院長は・・・壇上記念病院を桜坂中央病院に飲み込ませる準備を進めていたんです」

外科部長は・・・共犯者でありながら・・・すべてを暴露するのだった。

とにかく・・・忌々しかったのだろう・・・。

書類にざっと目を通し・・・事情を把握する一光・・・。

深冬という妻と可愛い娘と・・・副院長という地位。名医としての実績・・・すべてを持っている親友の行動が一光には不可解だった。

「お前・・・何やってんだよ・・・」

「いやいや・・・誤解です・・・勘違いですよ」

うろたえる壮大に引導を渡す虎之助・・・。

「今すぐ・・・この病院を出ていきたまえ」

おそらく一光は・・・深冬を救うだけではなく・・・壮大も救わねばならないのだ・・・。

何故なら・・・壇上夫妻はいろいろな意味で絶体絶命であり・・・次は最終回だからである。

可愛い莉菜ちゃんを泣かせるわけにはいかないのだった。

一心不乱にしかも完璧に患者を救うのが医師の使命なのだから。

Alife009ごっこガーデン。愛と宿命の焼肉店セット。

アンナ野菜も食べた方がいいのぴょん。沖田先生の腸内環境が心配ぴょ~ん。 裏番組がWBCオランダ戦で25.2%だったにもかかわらず14.7%をキープしたアライフにホッと胸をなでおろすアンナぴょんなのでしたぴょん。 嫉妬する沖田先生、やるせない沖田先生、空回りする沖田先生、貧乏ゆすりの沖田先生、つっけんどんな沖田先生・・・苛立つ姿もキュートな沖田先生なのでした~。人付き合いが上手いとは言えない沖田先生を支える仲間たちの気持ちも素敵・・・それに対して壮大は自ら・・・孤立していくのが憐れなのぴょん・・・はたして・・・どんな結末がまっているのか・・・とにかく焼肉をダーロイドにあ~んしてもらいながらリピそしてリピなのぴょ~ん

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受信: 2017年3月16日 (木) 22時07分

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