昇進に何が起こったか(小泉今日子)
雪(小泉今日子)の父と言えば雪彦(風間杜夫)である。
「少女に何が起ったか」(1985年)かよっ。
鴨居欣次郎(堤真一)といえば森野熊虎(風間杜夫)である。
「マッサン」(2015年)かよっ。
元気だなあ・・・。
「壇の浦夜枕合戦記」を見てからもう・・・40年も経つのか・・・。
つい・・・昨日のことのような気がするが・・・。
いやいや・・・四十年前だよっ。
当時二十代だった風間杜夫だってもう六十代だし・・・。
しかし・・・ちっとも変っていない気がする。
いやいやいや・・・さすがにそれは・・・ボケたのか。
風間杜夫と石野真子の夫婦ってなんだか落ち着くなあ。
二人とも丑年で一回り違うけどな。
で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第9回』(日本テレビ20170311PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。なぜか・・・第6話から↗*10.2%↘*7.9%↘6.3%と急落した視聴率である。どんどん面白くなっているのに不思議なことだなあ・・・いや、よくあることだろう・・・まあ・・・そうなんだけどね。みんなが面白くないことを面白いと思うことは人生の基本だしね。
フジコ建設営業3課からのスタートである。
簑島課長(高橋克実)が人事に呼び出され不在のために・・・憶測する蒲田みちる(早見あかり)と下山えり(富山えり子)・・・。
「昇進かしら」
「それはない・・・降格もしくは解雇」
心ここにあらずの簑島課長が戻ってくる。
「うわあ・・・解雇だ」
「とても聞けない」
「どうでしたか」と係長の左江内氏(堤真一)・・・。
「係長・・・空気読まないわあ」
「解雇ですか」と池杉照士(賀来賢人)・・・。
「ウィケ杉・・・限度なしだわあ」
「私・・・簑島に・・・部長の内示が出ました・・・」
走りだし踊りだす蒲田を筆頭にパニック状態となる課員一同・・・。
「部長になれたということは・・・重役・・・さらには社長の可能性も・・・」
「ないわあ・・・簑島社長になったら・・・禿げるし・・・うちの建てたビル全部禿げるし」
ほぼ意味不明の罵倒をする蒲田。
「重役や社長の線はないでしょうが部長で人生を終えられることは幸運なことです」
かなり微妙な賛辞を呈する下山である。
「課長が部長になったということは・・・空いた課長の椅子には・・・」
左江内氏に注目が集まるのだった。
「え」
「課長・・・左江内英雄・・・」と池杉が妄想空間を展開する。「課長は出張先で何故か・・・モテる・・・地方では方言美女に・・・海外では金髪美女が・・・課長の下半身を直撃・・・」
「ええっ」
ウィケ杉フィールドにとりこまれ・・・下半身を膨らませる左江内氏である。
「残念だが・・・後任の営業三課の課長は・・・営業二課の島係長になります」
「えええ」
颯爽と登場する島・新課長(宅麻伸)・・・。
「新しい・・・課長・島です」
説明しよう・・・「課長島耕作/弘兼憲史」(1983年)は男性サラリーマンの華麗なる出世と色恋沙汰を描く漫画である。フジテレビによるドラマ化では島耕作を宅麻伸が演じている。
「おい・・・久しぶりだなあ」と島は池杉に声をかける。
「お久しぶりです・・・おいって言うのはやめてください」
「二人は旧知の間柄なの」
「かって同じカテゴリーに属していました」
説明しよう・・・宅麻伸は1994年に賀来千香子と結婚し2012年に離婚している。
賀来賢人は賀来千香子の兄の子なのである。
そのために・・・賀来賢人は1994年~2012年の間、宅麻信の義理の甥だったのだ。
「なつかしいなあ・・・おい」
「だから・・・おいって言うのはやめてください」
「君が勇者ヨシヒコと魔王の城の第11話に友情出演した時は叔父と甥だったのになあ」
「ダンジョーさん」
完全なる私生活ネタであるが・・・避けては通れないらしい。
こうして・・・由緒正しい年度末の人事異動ネタが開始されるのである。
左江内氏の夕餉は水炊きである。
「ああ・・・てっちりが食べたい」と円子(小泉今日子)・・・。
「てっちりってなあに?」ともや夫(横山歩)・・・。
「フグ鍋だよ」とはね子(島崎遥香)・・・。
「ああ・・・小学生なのにフグを食べたことがないとは・・・」と円子。
「フグはそんなに食べたくないな」ともや夫。
「ああ・・・小学生なのにフグの美味しさを知らないとは・・・」と円子。
「小学生は・・・フグの美味しさ知らなくても普通だろう」
「まあ・・・係長の子供ならね・・・」
「ひでぶ」
「でも・・・今夜・・・簑島課長の奥様から連絡がありました・・・部長昇進だそうです・・・ということは・・・順番的に・・・」
「パパが課長になるの?」とはね子。
「今夜はお祝ね・・・パパ・・・ケーキ買ってきて」
「コーラも」
「アイスクリームも」
「え・・・」
自分は昇進しないとは言い出せない左江内氏だった。
その時・・・呼び出しがかかる。
行列のできるラーメン店である。
常連客(高橋努)がいつも贔屓にしているからと列に並ばずに他の客と揉めているのだった。
スーパーサラリーマン左江内氏は介入するのである。
「順番は守りましょう」
「こっちは忙しくて並んでいる時間なんてないんだよ・・・出世と縁のない暇な奴だけが並べばいいんだよ」
「出世」と言う言葉に思わず過剰に反応する左江内氏。
「順番を守らない人間が出世するなんておかしいでしょう」
思わず説教相手を突き飛ばし・・・虚空に消す左江内氏。
「えええええ」
「いくらなんでもやりすぎだ」
「ひどい」
我に返った左江内氏はあわてて・・・暴力の被害者を捜しに行くのだった。
被害者を病院に搬送した左江内氏の前に謎の老人(笹野高史)が現れる。
「反省してるの・・・」
「はい」
「心のもやもやを暴力で吐き出すのは・・・正義の味方のすることではないからね」
「はい」
「ちゃんと・・・家族に言った方がいいんじゃない」
「でも・・・うれしそうだったんですよね」
「だけど・・・本当に昇進するわけじゃないんだから・・・」
「ですよねえ」
「リストラ寸前とか・・・すでに解雇されました・・・とかじゃないんだから」
「今季・・・そんなドラマばっかりですよね」
「六年前にスーパーマンじゃなかったことを思えば・・・昇進できなかったことなんて何でもない」
「ああ・・・」
しかし・・・左江内家では最近、出番の少ないママ友の木手夫人(福島マリコ)やはね子の同級生・さやか(金澤美穂)やサブロー(犬飼貴丈)も参加して・・・昇進祝いのサプライズパーティーが準備されていた。
超高校級の実力を持つテニス・プレーヤーの竜崎麗香のコスプレをしている円子。
「課長夫人で~す・・・ってそりゃお蝶夫人だろう・・・っていう小ボケだよ~」
すべてを説明してしまう円子だったが・・・説明しよう。お蝶夫人は「エースをねらえ!/山本鈴美香」(1978年~1980年)の登場人物である。ドラマ版(2004年)では主人公・岡ひろみ(上戸彩)の父親役を高橋克実が演じている。
告白が遅かったために・・・円子に屈辱を与えてしまった左江内氏なのである。
「昇進できませんでした・・・課長になるのは別の人です」
「・・・」
「だから・・・せっかくのサプライズパーティーを台無しにしてしまって・・・すみませんでした」
解散する一同だった。
「冷静に考えたら・・・」とフォローをする円子。「お前が課長になれるわけないよね・・・スーツを十着も新調しちゃって・・・馬鹿みたい。課長になったらさすがにいい嫁にならなくちゃと思ったけど・・・係長程度なんだから・・・明日からも家事をよろしく」
円子の優しさが身に沁みる左江内氏である。
いや・・・お茶の間には伝わっていないかもしれんがな。
世の奥様方は・・・自分は円子ほどひどくないという姿勢で見ているらしいぞ。
小泉今日子でもないのにかっ。・・・おいおいおい。
真夜中の呼び出しである。
「午前三時って・・・」
寝ぼけ眼で出動する左江内氏。
フジコ建設の社長宅である。
ナイフを翳して社長(風間杜夫)を脅す強盗(やべきょうすけ)である。
「大人しく・・・金を出せ」
しかし、柔道の有段者である社長はナイフを叩き落すのだった。
「観念しろ」
「誰がするか」
強盗は拳銃を取り出し・・・形勢逆転である。
寝ぼけた左江内氏は窓ガラスを粉砕して突入してしまう。
「あああ・・・すみません・・・え・・・社長」
「なんだって・・・」
「営業三課で係長をしています・・・左江内と申します・・・ガラスは必ず弁償いたします・・・もし・・・即金が無理ならローンを組みます」
「なんだ・・・てめえは」
「スーパーマンだ」
「ふざけるな」
強盗は発砲するが弾丸は弾き返される。
「え」
一撃で強盗を昏倒させる左江内氏。
社長夫人(石野真子)は警察に通報するのだった。
「それでは・・・私はこれで」
「待ちたまえ・・・まさか・・・我が社にスーパーマンがいたとは・・・ちゃんと礼をさせてくれ」
「いえ・・・お礼なんかとんでもない」と言いつつ・・・忘却光線をオフにする左江内氏だった。
善と悪の境界線は・・・いつだって気分次第なのである。
社長の記憶を残したまま・・・何らかの見返りを期待して左江内氏は去るのだった。
小池警部(ムロツヨシ)と制服警官の刈野(中村倫也)が現場に到着する。
社長夫人はネグリジェから着物に早着替えである。
「え・・・スーパーマンですって・・・」
小池警部の無意識的妄想力は・・・スーパーマンの存在を全否定するのだった。
「慣れないことで・・・混乱しているのでは」
小池刑事をフォローする刈野。
「しかし・・・拳銃の弾丸をはねかえしたんだぞ」
「それは・・・夢ですね・・・」
「弾丸が落ちてるじゃないか」
「それは・・・兆弾です」
「え」
「犯人が撃って・・・思わず社長が身をかわす・・・弾丸はビューンって飛んでガーンってぶつかってヒューッて落ちたのです」
「・・・」
「鑑識っち・・・そんな感じでいいよな」
「・・・」
「そんなこんなで社長さんがエイッて取り押さえて・・・奥様が我々をお呼びになった・・・こういう感じでいいんじゃないでしょうか」
「・・・つまり私は・・・気が動顛していたと・・・」
スーパーマンの存在を世間は信じない・・・社長は常識的判断を下す。
しかし・・・社員名簿は確かめるのだった。
そこに左江内氏は存在した。
社長室に呼ばれる左江内氏・・・。
「やはり・・・君は実在したのだな」
「・・・ガラスの件でしたら・・・早急に弁償を・・・」
「何を言うんだ・・・君は命の恩人じゃないか」
「・・・はい」
「さすがに私も・・・スーパーマンが実在するとは思わないが・・・たまたま通りかかった君は騒動を聞きつけて・・・勇気を出して飛び込んで来たのだろう・・・拳銃は本物そっくりの玩具で・・・君が飛び去ったように見えたのも・・・気のせいなんだろう・・・しかし・・・君が素晴らしい人間であることは確信できた・・・係長にしておくのは・・・我が社の損失だ」
ある意味・・・社長・・・少しアレなのでは・・・。
そして・・・営業部長の席を用意される左江内氏なのだった。
左江内氏は家族に報告した。
「うっそお・・・部長って・・・」と円子。
「社長になれるじゃん」ともや夫。
「それは無理だと思うけど・・・部長でも充分やばいよね」とはね子。
「明日・・・サプライズパーティーをしなくちゃ」
「おいおい・・・本人がいる前でサプライズパーティーの相談はないだろう」
ニヤニヤが止まらない左江内氏である・・・しかし・・・その時、簑島課長からの着信があるのだった。
おでん屋に呼び出される左江内氏。
「え・・・昇進の話が立ち消えに・・・」
「他の人間が部長になるらしい・・・」
「それが誰だか・・・御存じなんですか」
「いや・・・知らん・・・どうしよう・・・家族になんて言えば・・・」
「会社に・・・抗議するべきですよ」
「そんなことできるわけないだろう」
「ですね」
簑島課長の身を案じ・・・尾行する左江内氏。
帰宅した簑島課長は簑島夫人に激しく折檻されるのだった。
透視能力で上司の憐れな姿を確認する左江内氏だった。
揺れる左江内氏の心・・・。
そこに・・・サラリーマンスタイルの米倉(佐藤二朗)が現れる。
「お悩みのようですね・・・」
「あなたはどなたですか」
「こっちはあったことがあるのに・・・相手は知らないという・・・よくあることです」
「・・・」
「あなたは勝ち組ですか」
「いえ・・・」
「私は定年間際まで係長であっても・・・自分が負けたとは思わない」
「そうですか」
「家族には迷惑をかけますがね」
「え・・・結婚されてるんですか」
「おや・・・意外ですか」
「だって・・・そんなに顔が大きいのに」
「なんですと・・・顔が大きいと結婚できないとおっしゃる?・・・失礼な・・・子供だっています」
「やはり顔が・・・大きいお子さんですか」
「ですよ・・・子供としては顔が大きい・・・だから何だと言うんです・・・子供だってオンエア見るんですよ・・・面白ければ何でもいいのか」
「・・・」
「確かに・・・いつも私はそうでしたけれどもおおおおお」
左江内氏は・・・部長への昇進を辞退することを決意する。
社長秘書(清水くるみ)が応対するのだった。
「アポイントメントはございますか」
「いや・・・ないけど・・・」
「面会のお約束がないとお通しできません」
「君・・・二年前にこの枠で高校生やってたよね」
「二年前は・・・二十歳ですよお」
「あ・・・なんちゃってだったのか」
そこへ社長が通りかかる。
「おや・・・左江内くんじゃないか・・・どうした」
「社長・・・」
社長の見せる親しげな態度が少しうれしい左江内氏だった。
「私の昇進を・・・なかったことにしていただきたいのです」
「謙虚な君の気持ちはわかるが・・・私は一度口に出したことは変えないのがポリシーなのだ。男に二言はないのだ」
「けれど・・・私には部長は荷が重すぎます」
「君を部長と決めたのは私だ・・・責任は私がとる」
「・・・」
営業三課に漂う微妙な空気・・・。
「まさか・・・左江内係長の二階級特進によって・・・」
「簑島課長の昇進がとりけされるとは・・・」
「課長・・・かわいそう・・・」
そこで・・・左江内氏は池杉を巻きこんで・・・一芝居打つことにしたのだった。
ブルースブラザースのように見えるが・・・実は「あぶない刑事」(1986年)の大下勇次と鷹山敏樹に扮したらしい左江内氏と池杉。
「タカ・・・」
「トシ・・・」
「いやいや・・・それじゃ・・・タカアンドトシだから・・・欧米か」
「社長じゃないですか・・・大丈夫なんですか」
「いいから・・・社長のピンチを簑島課長が救うというお芝居だから・・・しかし・・・絶対に顔を見られるな・・・顔を見られたら・・・終わりだぞ」
ドラム缶に社長を詰めて拉致して来たらしい。
「お前たち・・・一体なんなんだ」
「もちろん・・・あんたの財産をすべていただくつもりですよ」
「ふざけるな」
そこに颯爽と登場するはずの・・・簑島課長は・・・気付けの一杯で・・・完全に酔ってしまうのだった。
酒に酔うと言いたいことが言えるというサラリーマンの世界のお約束なのである。
「ある時は放送上問題を指摘される運転手・・・しかしてその正体はミノシマだ~」
小林旭の主演映画「多羅尾伴内」(1978年)モードで登場した簑島課長はすべてを台無しにする酒乱ぶりを発揮するのだった。
「俺の昇進を取り消すとはなんだ~バカ社長~くそ社長~」
暴れる簑島課長を制御しようとして・・・左江内氏も池杉も顔を晒してしまうのだった。
「君たちは・・・全員・・・クビだ」
三課で・・・身辺整理をする三人・・・。
「謎だわ・・・」
「簑島課長が部長になったり・・・」
「左江内係長が部長になったり・・・」
「三人が突然解雇されたり・・・」
「なんで・・・」
そこに社長がやってくる。
「社長・・・」
「妻から事情は聞いたよ・・・妻は君がスーパーマンだと信じているからねえ・・・すべては簑島課長の立場を救うためだったんだな・・・仲間を思うことは・・・チームワークの基本だ・・・営業三課の素晴らしい仲間たちを・・・私は誇りに思う」
「それでは・・・」
「昇進の話は白紙とする・・・簑島課長・・・左江内係長・・・そして部下の・・・」
「池杉です・・・」
「これからも社のために尽くしてくれたまえ・・・」
すべては振り出しに戻るのだった。
しかし・・・解雇されるより五億倍マシなのである。
それがサラリーマンというものだ。
円子はそれほど落胆した表情はみせないのである。
「係長と家事全般はセットだからね」
「わかってます」
「課長になったら・・・料理と掃除だけでいいわよ・・・洗濯は私がやってあげる・・・もしも部長になったら料理だけでいいよ・・・掃除と洗濯は業者に発注するから・・・」
「結局・・・君は何もしないのか」
「だ・か・ら・・・子育てしとると言っとるじゃろうが・・・」
「そうでした」
確かに・・・もや夫も・・・はね子もそれなりに良い子に育っているようだ。
円子はけして・・・悪妻ではないのである。
素晴らしい・・・良妻賢母であると言えないこともないのだった。
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