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2017年3月 7日 (火)

客も患者も家族も同然という気持ち(木村拓哉)

脚本家には「不毛地帯」という作品がある。

これは原作ありだったために・・・最後まで不毛地帯なのである。

しかし・・・世界が凍てついた不毛地帯であるように見せるのは脚本家の特色でもある。

けれど・・・凍てついた大地に春が訪れて・・・人間性の回復とも言うべき雪解けがあるのが一種のお約束なのである。

「僕と彼女と彼女の生きる道」では機械の歯車のようだった銀行員が妻に去られ残された娘を育むことで・・・自分が血の通った人間であることを発見していく。

「僕の歩く道」では自閉症の主人公を周囲のものたちが人間とは認めないという残酷な状況で始る。しかし・・・主人公はもちろん人間なのである。そして・・・周囲のものたちが主人公を人間として認めて行く過程で・・・自分も人間であったと気がついて行く巧妙な仕掛けになっている。

僕のいた時間」では主人公は難病で・・・進行性で身体の自由を失っていく。ある意味でどんどん不毛地帯へと進んでいくようなものだ。絶望し・・・苦悩する主人公。しかし・・・それでも主人公は最後まで人間であろうとあがき続ける。そして・・・一つの愛にたどり着く。

医師を主人公にした・・・この物語では・・・職人的な外科医の生き様が描かれているが・・・実は彼の心は凍てついているのである。

凍てついた彼の心が融けかかり・・・ミスを犯す。

冷徹に見えるが・・・実は人恋しい外科部長は「彼も人間だもの」とつぶやくのだった。

で、『A   LIFE~愛しき人~・第8回』(TBSテレビ20170305PM9~)脚本・橋部敦子、演出・平川雄一朗を見た。好みの問題もあるだろうが・・・この物語の演出は王道で・・・淡々としたこの演出家によるものが・・・一番馴染むような気がする。過去に縛られた登場人物たちが・・・なんとか呪縛を解こうともがく姿が物語の本質にある以上・・・そこを見せてくれれば充分なのである。

父親に捨てられた怒りをバネとした顧問弁護士の榊原実梨(菜々緒)は副院長の座にある鈴木壮大(浅野忠信)の心に自分と同じような傾斜を見出し愛人となる。

しかし・・・壮大が・・・愛人を作らなければ心の安定を得られないほどに妻の壇上記念病院の院長令嬢である小児科医・壇上深冬(竹内結子)を愛していることを悟り・・・怒りを増幅させるのだった。

だが・・・全体会議で「リスク管理についての見直し」を提言し・・・「病気を抱えた医者が外科的治療を行うことは患者さんに不利益をもたらす危険がある」と勧告し・・・「深冬の脳に腫瘍があること」を暴露し・・・「副院長の責任問題」を追及する榊原弁護士の胸に去来するのは・・・「手に入らぬならつぶしてしまえ」という「復讐心」だけではなかったのだろう。

自分の本心をすべてさらけ出したのではない・・・愛している相手に「訣別」というラブレターを届けているようなものなのである。

そういう風にしか愛を語れない人間なのである。

死地から回復したばかりの健康状態を考慮して・・・一人娘の病状を知らされていなかった院長の虎之助(柄本明)は動揺して・・・壮大を怒鳴りつける。

娘の配偶者にライバル意識を持つ典型的な舅のように描かれる虎之助であるが・・・実は壮大に対しては甘ったれているわけである。婿に無理難題を押し付けるのは・・・甘えん坊の発露なのだった。

当事者である深冬は困惑する。

壮大は言葉に窮する。

深冬の昔の恋人であり壮大の幼馴染である外科医・沖田一光(木村拓哉)は二人を守るために立ちあがるのだった。

「すいません・・・私も副院長に相談されていて・・・深冬先生の脳の腫瘍については知っていました・・・本人への告知前に問題が発生しないように配慮して・・・バックアップしていました」

一光のアシストで息を吹き返す壮大。

「医師が外科的な治療を必要とする場合でも・・・法的に問題はありません。仮に裁判になったとしても負ける直接的な原因になることはありません。そもそも・・・裁判になるような医療ミスは全くないのです。しかし・・・榊原先生の訴訟になる可能性のご指摘には感謝します。すでに深冬先生には告知が行われ・・・外科手術の執刀を行わないことが確認されています」

「・・・」

深冬は立ち上がり頭を下げた。

「お騒がせして申し訳ありません」

医師たちは・・・それぞれの立場で・・・深冬を見つめるのだった。

外科部長であり壮大の友人でもある羽村圭吾(及川光博)は「知らなかったこと」に淋しさを感じるのだった。

虎之介の怒りは収まらない。

「私に隠すとは・・・何事だ」

「私がお願いしたのよ」

「これが・・・患部の画像データです」

壮大の差し出したデータを見て・・・虎之助は事態の深刻さを悟った。

娘の父親から・・・医師へとスイッチが切り替わったのである。

「大丈夫よ・・・ちゃんとオペが可能だから」

「沖田先生に執刀してもらいます」

娘夫婦のコンビネーションに虎之助は矛先を一光に向ける。

「本当に・・・できるのか」

「はい・・・浅側頭動脈と後大脳動脈に対してバイパス手術を行い・・・患部にアプローチします」

「脳内で・・・バイパス手術・・・大丈夫なのか」

「・・・大丈夫です」

虎之助は再び老いた父親に戻る。

「絶対に救ってくれ」

「一週間後に・・・オペをします」

副院長室で壮大は榊原弁護士に対峙する。

「どういうつもりなんだよ」

「あなたと同じことをしただけ・・・手に入らなければ・・・無くなってしまえって」

「一緒にするな」

「深冬先生のオペが失敗して死ねばいいと思っているのに・・・沖田先生が救えば深冬先生の心に一生残る・・・あなたの心の穴はどっちにしてももっと大きくなる・・・一生苦しめばいいのよ・・・今までお世話になりました」

榊原弁護士は・・・深冬を羨んだ。

二人の男に愛される深冬を・・・自分を愛してくれる男は一人もいないのだ。

それでも榊原弁護士は・・・愛する男の幸せを祈っているようにも見える。

呪いの言葉で・・・。

榊原弁護士の傷心を受けとめて・・・壮大は・・・美しい風景画の裏に潜む・・・自身の心の穴の象徴に向き合うのだった。

困難な手術に「絶対」を求められ・・・結紮の修練を重ねる一光。

ナース柴田(木村文乃)がドクター沖田に寄り添うのだった。

「難しいオペになりますね」

「五万回練習しないと・・・安心して執刀できない」

外科部長は井川颯太(松山ケンイチ)に淋しさをぶつけるのだった。

「井川先生は・・・知ってたの」

「・・・たまたまです」

「知っていたんだ・・・」

深冬は入院の準備にとりかかっていた。

「どこかに・・・おでかけしようか」

「本当?」

娘の莉菜(竹野谷咲)は無邪気に喜びを示す。

「どこに行きたい?」

「・・・水族館」

深冬は娘に楽しい思い出を残そうとしている。

喜びが大きいほど悲しみも深まるものだが・・・深冬には他になす術がなかった。

「明日・・・大丈夫かな」

「もちろんさ・・・」

愛人がいなくなった壮大のスケジュールはタイトではなくなったのだ。

壮大は・・・カメラの手入れをした。

妻と娘のために思い出を記録しなければならないのだ。

ナース柴田はドクター沖田を案じていた。

「いかめしを買ってきました」

「おう・・・サンキュ」

「沖田先生ではなくて・・・お父様用ですよ・・・賞味期限は今日までです」

「・・・帰れっていうことか」

「ええ・・・急がば回れですよ」

「・・・」

一光は優秀な看護師のアドバイスに従った。

嘉月寿司に帰った一光は・・・胸を抑えて苦しむ沖田一心(田中泯)を発見する。

「親父・・・」

「大丈夫だ・・・」

しかし・・・意識を喪失する一心なのである。

「呼吸が・・・ある」

一光は救急車を呼んだ。

颯太もかけつけ・・・一心の検査を手伝う。

「心電図は問題ないですね」

「血液検査でトロポニン上昇(心筋梗塞などによる心筋の損傷によって生じる)もなかった・・・」

「冠動脈造影をしましょう」

検査の結果に基づく第一外科のカンファレンス(会議)・・・。

「上室性頻拍(心臓の刺激伝導回路に異常があって心拍数が増加している頻脈の一種)があって・・・冠動脈造影の結果・・・狭心症(冠動脈の異常による虚血性心疾患)で冠動脈3枝に病変があり、僧帽弁閉鎖不全症と診断しました」

「冠動脈バイパス手術と・・・僧帽弁形成術・・・心房細動に対するメイズ法(心房にメイズ=迷路のような複雑な切開を入れ心房細動の原因になる神経を遮断する治療法)が求められます」

「執刀は私が引き受けよう」

外科部長が名乗りをあげた。

外科医たちは基本的にサイコパスである。

なにしろ・・・人体を切り刻むのが仕事なのである。

誤解のないように言っておくが・・・サイコパスとは犯罪者的気質の代名詞ではない。理性と情動の間に一定の隔離がある精神のことである。

つまり・・・血を見て騒いでいるようでは仕事にならないからである。

職業的訓練によってそうなる人もいるが・・・生まれつきの傾向というものもある。

血が怖い人は内科医に怖くない人は外科医になっていると妄想できる。

しかし・・・女性にキスしたがる男性が・・・男性に対してはそれほどでもなかったりするように・・・生理的なメカニズムはまた別種で存在する。

他人にはメスを揮えても家族には揮いにくいという場合があるわけである。

そういう前提で・・・家族に対しての執刀はしないという不文律がある。

遺産相続がからむと・・・あえて手術ミスする場合もあるしな。

それはちょっと違うぞ。

ここまで・・・一光や壮大は・・・一般常識とは違う・・・深冬主体の行動を展開していたわけだが・・・ここからは・・・特別な人に対する平常心が問題になってくるのである。

壮大は・・・一心に対して特別室を用意する。

このドラマでは患者に対する医師の平等精神は基本的に問題外なのである。

一心が一光の父親という「特別な存在」である以上・・・「特別な待遇」が与えられるのである。

意識を取り戻した一心はわがままな患者になる。

「手術を担当する羽村先生です」

「なんでえ・・・お前がやらないのかよ」

「基本的に御身内の方の手術は行わない慣習なんですよ」と外科部長。

「どこぞのお偉い人の手術をしておいて・・・実の親の手術はしないのかよ」

「そういう問題ではなくて」

「だらしのねえ・・・医者も職人じゃなかったのかよ・・・俺がお前に寿司を握らねえって言うか・・・おめえ・・・だいたいなんのために医者になったんだ」

「羽村先生・・・すみません・・・僕がやります」

「え」

外科部長はまたもや寂寥感を感じるのだった。

沖田先生に恩を売りたかったのである。

人間の精神は複雑なものである。

特に肉親に対する感情は一筋縄ではいかない。

近親者の喪失による鬱状態の発生など理解しやすい例だろう。

そのための大前提を崩壊させる沖田父子なのだった。

職人として息子のようにお客様に寿司を握り、医者として父親のように患者を手術するべきという話なのである。

メイズ法は不具合を生じさせる神経伝達を遮断する手術である。

外科医もまた手術中に不具合を生じさせる可能性のある感情を遮断する精神制御を完成するべきだ・・・と寿司職人である父親は外科医の息子に教育的指導をしているわけである。

しかし・・・そこには・・・一心にとっての妻・・・一光にとっての母の病死によって生じたとてつもない感情的な問題も絡んでいるのだった。

「そうか・・・やるか・・・こいつは弔い合戦だな」

「・・・」

颯太はナース柴田に感想を求める。

「身内のオペをやるなんて・・・すごいよね」

「お父さんのオペができないなら・・・深冬先生のオペもできないってことだから」

「そうそう・・・え・・・どういう意味?」

「のりつっこみかい」

虎之助は一光を呼び出した。

「深冬のオペの前に・・・家族のオペをやるなんて・・・大丈夫なのか」

「大丈夫です」

「深冬のオペを・・・最優先にしてもらいたい・・・君をシアトルに行かせたのは腕を磨かせるためだったんだから」

「本当に・・・それだけですか」

「なんだ・・・私を疑うのか・・・私を信じられないのか」

「だったら・・・私の腕も信用してください」

「・・・」

しかし・・・疑心暗鬼に囚われた虎之助は真田事務長(小林隆)を呼び出す。

「深冬の手術を受けてくれる脳外科をリストアップしてくれ」

「え」

「保険だよ・・・身内の手術で何かあったら・・・沖田先生は使い物にならなくなるかもしれん」

その頃・・・深冬は一心の病室に訪れていた。

「沖田先生のお父様ならご挨拶しなくてはならないと思いまして」

「壇上深冬先生です」

「一度・・・店に来てくれましたね」

「憶えていてくださったんですか」

「てっきり・・・嫁に来てくれる人なのかと期待しちまったからね」

「ぎょっ」とする居合わせた颯太だった。

「まあ・・・」

「女の人を連れてきたのは・・・あれっきりだったのか・・・そうか・・・壮大が相手じゃあ・・・仕方ねえな」

「そんな・・・」

「どうか・・・御夫婦そろってあいつの面倒をお願いしますよ」

「親父・・・」

「助けられているのは私たちです・・・父の命も救ってくれたし・・・沖田先生は立派な外科医です」

「へえ・・・お世辞でもうれしいねえ」

親馬鹿である。

壮大は一光を呼び出す。

一光の中で・・・胸に秘めて来た疑惑が・・・院長との会話から膨らみ始めている。

院長は・・・一光と深冬の仲を裂くために・・・シアトル行きを命じたのかもしれない。

そして・・・それに・・・壮大が手を貸しているのかもしれない。

ある意味で失われた十年は・・・一光の影となっている。

「親父さんのオペをやるんだってな・・・俺には到底無理だ・・・お前は俺には越えられない壁を軽々と越えて行く」

「俺に任せてくれた・・・壮大にも後悔はさせない」

「親父さんのオペの成功を祈ってるよ・・・そのあと・・・深冬のオペも控えているしな」

「・・・」

一光は揺らめく影をねじ伏せた。

一光はいつものように手術の内容を紙芝居形式で一心に伝える。

「で・・・ここの弁がバカになっちゃってるんで閉鎖できるように修理して・・・」

「まさか・・・おめえに本当に手術してもらうことになるとはな・・・母ちゃんに感謝だな」

「・・・」

「それにしてもあの人が壮大の嫁さんとはな・・・おめえ・・・壮大には叶わないと思ってアメリカなんぞまで逃げたのか」

「ちげえよ」

「まあいいや・・・母ちゃんの仏壇の花・・・替えておいてくれよ」

「・・・わかってるよ」

深冬と壮大は莉菜と水族館に出かけた。

「お母さんはどの魚が好き」

「う~ん・・・全部好き」

和気藹々の妻と娘を撮影する壮大。

「家族三人の写真を撮ってもらおう」

深冬の提案で・・・三人で並んだ壮大は妻の手を取る。

握った深冬の手を離し難い壮大・・・。

深冬を失うかもしれない期限が迫るに連れ・・・壮大の心はもがきだすのである。

自分は一体・・・何のために存在しているのかという・・・根源的な問いかけが・・・壮大の心に生れている。

心に穴をあけるためか・・・それとも・・・。

壮大は壁に開けた穴に・・・自らの手を重ねてみる。

それは・・・人体を切り刻み・・・命を救うために使われる手なのである。

百点満点でなければ医者失格・・・父にかけられた呪縛に拘泥し・・・家族写真に納まった幸福を見失っている壮大なのだ。

「どうすれば・・・百点満点の家族になれるのかな」・・・そう問いたい壮大なのである。

真田事務長が虎之助に状況を報告する。

「主だった方には打診しましたが・・・手術は困難と断られました」

「そうか・・・他にはいないのか・・・」

虎之助は・・・再び一光を呼び出す。

「沖田先生・・・君なら必ず・・・乗り切れる。誤解をされていては困るので明言しておくが・・・十年前のシアトル行きに・・・他意はない。君と深冬の仲を裂こうなんて野暮な気持ちは一切ないぞ。あれは・・・壮大君が君の将来のことを思って提案してきたことだ・・・日本では君のチャンスは限られると言ってな・・・それが本心かどうかまでは・・・いまとなってはわからんが・・・・実際・・・君は素晴らしい経験を積んで・・・成長したことは間違いないだろう・・・君だから・・・深冬を救えるんだ」

虎之助の言葉は・・・一光の心の影を揺らめかせるが・・・患者の家族に応える言葉はひとつしかないのだった。

「はい・・・安心しておまかせください」

虎之助は一光を伴って入院した娘の元へ赴く。

「何も心配しなくていいからな・・・沖田先生がオペしてくれるんだ・・・お任せすれば大丈夫だ」

「沖田先生・・・よろしくお願いします」

深冬自身の生死を分ける手術への圧倒的な信頼に一光の心は揺れる。

颯太は・・・一光に手を差し出す。

「今なら・・・お父さんのオペ・・・代わってもらえますよ」

「自分で救いたいんだ・・・親父があんなこと言うのも・・・俺の気持ちを読んでのことなんだ・・・」

「・・・」

「うちの母は・・・もうできるオペはないって言われて・・・大きな病院から小さな病院に移されて・・・そこの先生はいい先生で・・・最後まで諦めずに治療してくださった・・・母もこの先生で治らないなら仕方ないねなんて言ってたよ・・・でも・・・俺は正直・・・母には助かってほしかったし・・・全然納得できなかった・・・だけど・・・自分には何もできなくて・・・それで医者になるって決めたんだ・・・俺が医者になるなんて無理だろうってみんな言ったけど・・・親父だけは黙って・・・信じてくれた・・・今なら・・・母を救える技術はあるし・・・自信もある・・・完全に手遅れだけどな・・・でも親父は救うよ」

「お父さんを切るのは・・・怖くありませんか」

「ちょっと・・・」

「怖いなら・・・オペしちゃダメなんじゃ・・・」

「準備はちゃんとできている・・・」

「・・・」

「明日・・・よろしく」

「はい」

颯太はナース柴田を誘った。

ナース柴田はちょっといい感じの枯れ枝を拾った。

「沖田先生が一度だけ結婚を考えた相手って・・・深冬先生だよね」

「かもねえ」

「お父さんが無理なら・・・深冬先生も無理って・・・そういうことだよね」

「かもねえ」

「実の親で・・・お試しって・・・凄すぎる」

「あなたは・・・自分の父親をオペ出来る?」

「絶対無理だよ・・・今だって・・・一生現場の外科医でやっていくか・・・満天橋病院に戻って経営者の道を進むか・・・はっきりしろって言われて・・・」

「ねえ・・・自分の父親のことパパって呼んでる?」

「馬鹿な・・・流石に三十過ぎてからはパパなんて言わないよ」

「うふふ」

「とにかく・・・そんなことで迷ってるんだ・・・沖田先生とは次元が違う」

「でも成長してんじゃないの・・・迷うってことは・・・言われた通りにはまだしてないってことだから」

「それって・・・褒めてるの・・・それとも貶してるの」

「貶してるのに決まってるでしょう」

「げっ」

ナース柴田は枯れ枝で颯太を鞭打った。

「それそれ・・・しっかり考えよ」

「あはん」

イチャイチャである。

一光は・・・深冬の病室で家族写真を見る。

揺らめく心の影・・・。

壮大は・・・深冬の寝顔を見つめる。

それをファインダー越しに覗いた後・・・思いにふけるのだった。

一心の手術前日・・・。

一光に「お手並み拝見だな」と笑う一心。

「麻酔効いてるから・・・無理だよ」

「・・・頼むぞ」

「・・・」

一心の手術当日である。

手術の様子を外科部長と壮大はモニターで見つめるのだった。

「冠動脈3枝バイパス手術、僧帽弁閉鎖形成術およびメイズ法の手術を行います・・・よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

直後に肺動脈損傷を起こす一光だった。

「あ」

一瞬、硬直する一光。

信じられないミスに・・・動揺する執刀医に騒然とする手術室。

「沖田先生」

「どこだ・・・見えない」

「血圧下がってます」

「出血箇所・・・ありました」と颯太・・・。

「そっちから見えるの」

「はい」

「じゃ・・・替わって」

「はい」

モニターを見守る外科医たち。

「沖田先生があんな初歩的なミスを・・・」

「これが・・・身内を切る怖さか・・・」

「持ち直した・・・」

壮大も息を飲む。

最初の危機を乗り越えて・・・一光は平常心を取り戻す。

しかし・・・手術中・・・一光は動揺と戦っていたのだった。

なんとか・・・手術を成功させる一光。

「すみませんでした・・・すみませんでした」

スタッフに謝罪をくりかえしながら・・・逃げるように手術室を出る一光だった。

「しかし・・・沖田先生がミスをするなんて」

外科部長は・・・微笑む。

「いいんじゃない・・・人間だもの」

壮大は一光に声をかけた。

「見てたよ・・・お前でも・・・特別な人のオペだと・・・ああなるのか」

「・・・」

「三日後の・・・深冬のオペ・・・お前にまかせて・・・大丈夫なのか」

「・・・」

一光と壮大の間にこれまでとは違う緊張感が生まれている。

一心は意識を回復した。

「手術は完璧だったんだな」

「まあ」

「なんとか無事に成功しましたよ」と助け舟を出す颯太・・・。

「なんとかってなんだよ」

親に嘘をつけない一光である。

「いや・・・一瞬・・・指が思うように動かなくなって・・・やべえって感じに」

「・・・ったく・・・お前って男はまだまだ半人前だな・・・父親一人満足に切れねえで・・・他人様の命を預かれんのかい」

「自分を刺し身みたいに言うなよ」

「で・・・俺はいつから寿司を握れるんだ」

「順調に行けば・・・十日後には握れるようになります」

「そうか・・・また食いに来な・・・」

「あざあす」

「大穴子楽しみです」とナース柴田。

「干瓢巻も美味かったです」と颯太。

「お・・・結構わかってんな」

「そうですか」

「お坊ちゃまは幼い頃から・・・美味しいものばかり食べてますものね」

「えへへ」

和気藹々である。

深冬の手術のために修練を続ける一光の前に壮大が現れる。

壮大もまた・・・結紮を修練していた。

「あの日のこと・・・覚えているか」

「あの日って・・・」

「お前が俺をリリーフしてさ・・・連続四球で・・・連続押し出しで・・・逆転負け・・・」

「・・・」

「お前にマウンド明け渡した結果だ・・・俺は肩の痛みなんか我慢して・・・監督に続投させてくれって直訴しておけばよかったって・・・何度思ったことか」

「・・・」

「今回は・・・深冬の命がかかったオペだ・・・自滅されたら困るんだよ」

「何が言いたいんだ・・・」

「深冬は・・・俺が切るよ」

一光の中で・・・影の中で息を潜めていた何かが・・・突然、立ち上がるのだった。

「何それ・・・それも・・・親友としての提案なの・・・十年前・・・院長に勧められて・・・俺はシアトルに行った・・・今は・・・もうあの頃の俺じゃないんだ」

「・・・深冬は俺の家族だ」

「・・・深冬は俺の患者だ」

激突である。

しかし・・・深冬の容体が急変し・・・それどころではなくなるのだった。

「深冬先生の意識レベルが低下して・・・脳出血の惧れがあります」

「ええええええええ」

一光と壮大は病院の廊下を疾走するのだった。

医師である前に昔の恋人と夫なのである。

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